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明細書 :タンパク質又は遺伝子導入用試薬

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5403324号 (P5403324)
登録日 平成25年11月8日(2013.11.8)
発行日 平成26年1月29日(2014.1.29)
発明の名称または考案の名称 タンパク質又は遺伝子導入用試薬
国際特許分類 C07C 237/12        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C07C 237/12 CSP
C12N 15/00 A
C12N 5/00 102
請求項の数または発明の数 23
全頁数 48
出願番号 特願2008-545466 (P2008-545466)
出願日 平成19年11月26日(2007.11.26)
国際出願番号 PCT/JP2007/073266
国際公開番号 WO2008/062911
国際公開日 平成20年5月29日(2008.5.29)
優先権出願番号 2006317841
優先日 平成18年11月24日(2006.11.24)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成22年10月19日(2010.10.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】武岡 真司
【氏名】武田 直也
【氏名】胡桃坂 仁志
【氏名】坂根 勲
【氏名】池ヶ谷 菜海子
【氏名】小幡 洋輔
【氏名】齋藤 俊介
個別代理人の代理人 【識別番号】100092783、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 浩
【識別番号】100095360、【弁理士】、【氏名又は名称】片山 英二
【識別番号】100120134、【弁理士】、【氏名又は名称】大森 規雄
【識別番号】100153693、【弁理士】、【氏名又は名称】岩田 耕一
【識別番号】100104282、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 康仁
審査官 【審査官】濱田 光浩
参考文献・文献 国際公開第2006/118327(WO,A1)
STEPHENS, DJ and R. PEPPERKOK,The many ways to cross the plasma membrane.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2001年,Vol. 98, No. 8,p. 4295-4298
SELLS, M. A. et al,Delivery of protein into cells using polycationic liposomes.,Biotechniques,1995年,Vol. 19, No. 1,p. 72-76, 78
KIM, H. S. et al,In vitro and in vivo gene-transferring characteristics of novel cationic lipids, DMKD (O,O'-dimyrist,J. Controlled Release,2006年10月10日,Vol. 115, No. 2,p. 234-241
調査した分野 C07C 237/12
C12N 5/00
C12N 15/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(I)-1:
【化1】
JP0005403324B2_000037t.gif
(式中、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH- 又は-(CHCHO)- (kは11の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す。)
で示されるカチオン性アミノ酸型脂質を含む組成物を含有する、細胞へのタンパク質導入用試薬。
【請求項2】
次式(I)-1:
【化2】
JP0005403324B2_000038t.gif
(式中、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH- 又は-(CHCHO)- (kは11の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す(但し、m1及びm2がいずれも15である場合は除く。)。)
で示されるカチオン性アミノ酸型脂質を含む組成物を含有する、細胞への遺伝子導入用試薬。
【請求項3】
組成物が、さらにジアシルホスファチジルコリン、コレステロール、及びポリエチレングリコール鎖が結合した両親媒性分子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものである、請求項1又は2に記載の試薬。
【請求項4】
ジアシルホスファチジルコリンのアシル鎖の一部又は全部がオレオイル基である、請求項3記載の試薬。
【請求項5】
組成物が、水性媒体中に分散してなる分子集合体である、請求項1又は2に記載の試薬。
【請求項6】
分子集合体は、二分子膜小胞体構造を形成し、内水相にタンパク質又は遺伝子を含むものである、請求項5記載の試薬。
【請求項7】
組成物が、乾燥粉末品である、請求項1又は2に記載の試薬。
【請求項8】
乾燥粉末品は、水性媒体中に分散したときにタンパク質又は遺伝子を包含した二分子膜小胞体構造を形成し得るものである、請求項7記載の試薬。
【請求項9】
細胞が、生体組織の一部を構成しているもの、又は血漿、血清若しくは血液、若しくはそれらの成分の一部を含む培地にて培養された細胞である、請求項1又は2に記載の試薬。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の試薬を含む、細胞へのタンパク質又は遺伝子導入用キット。
【請求項11】
次式(I)-3:
【化3】
JP0005403324B2_000039t.gif
(式中、Mは、-(CHk’- 又は-(CHCHO)k’- (k’は1~14の整数である。)であり、p1及びp2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す。)
で示される、カチオン性アミノ酸型脂質。
【請求項12】
次式(I)-1:
【化4】
JP0005403324B2_000040t.gif
(式中、Lは、-CONH-又は-S-S-であり、Mは、-(CH- 又は-(CHCHO)- (kは2~14の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す。)
で示されるカチオン性アミノ酸型脂質を含む組成物を含有する、細胞へのタンパク質導入用試薬。
【請求項13】
次式(I)-1:
【化5】
JP0005403324B2_000041t.gif
(式中、Lは、-CONH-又は-S-S-であり、Mは、-(CH- 又は-(CHCHO)- (kは2~14の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す(但し、m1及びm2がいずれも15である場合は除く。)。)
で示されるカチオン性アミノ酸型脂質を含む組成物を含有する、細胞への遺伝子導入用試薬。
【請求項14】
組成物が、さらにジアシルホスファチジルコリン、コレステロール、及びポリエチレングリコール鎖が結合した両親媒性分子からなる群から選ばれる少なくとも1つを含むものである、請求項12又は13に記載の試薬。
【請求項15】
ジアシルホスファチジルコリンのアシル鎖の一部又は全部がオレオイル基である、請求項14記載の試薬。
【請求項16】
組成物が、水性媒体中に分散してなる分子集合体である、請求項12又は13に記載の試薬。
【請求項17】
分子集合体は、二分子膜小胞体構造を形成し、内水相にタンパク質又は遺伝子を含むものである、請求項16記載の試薬。
【請求項18】
組成物が、乾燥粉末品である、請求項12又は13に記載の試薬。
【請求項19】
乾燥粉末品は、水性媒体中に分散したときにタンパク質又は遺伝子を包含した二分子膜小胞体構造を形成し得るものである、請求項18記載の試薬。
【請求項20】
細胞が、生体組織の一部を構成しているもの、又は血漿、血清若しくは血液、若しくはそれらの成分の一部を含む培地にて培養された細胞である、請求項12又は13に記載の試薬。
【請求項21】
請求項12~20のいずれか1項に記載の試薬を含む、細胞へのタンパク質又は遺伝子導入用キット。
【請求項22】
kが3~5の整数である、請求項1に記載の試薬。
【請求項23】
kが3~5の整数である、請求項2に記載の試薬。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する複合脂質を含む組成物を含有する、細胞へのタンパク質導入用試薬及び遺伝子導入用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
人工の二分子膜からなる小胞体又はリポソームに有用物質を内包させる技術は、医薬品、香粧品、食品、染料などの分野で盛んに研究されている。
リポソームの膜構成脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン及びコレステロールなどの膜構成脂質と、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジルイノシトール、ジアシルホスファチジルセリンなどの負電荷リン脂質との混合脂質が広く用いられている。
近年では、カチオン性脂質単独またはそれを含むリポソームを用いて、遺伝子と複合体を形成することにより、細胞内に遺伝子を導入する研究が行われている(Hong Sung Kim et al.,Gene-tranferring efficiencies of novel diaminocationic lipids with varied hydrocarbon chains.Bioconjugate Chem.2004,15,1095)。既存の遺伝子導入用カチオン性脂質、例えば1,2-dioleoyloxy-3-trimethylammonium propane(DOTAP)、3β-N-(N’,N’,-dimethyl-aminoethane)-carbamoyl cholesterol(DC-Chol)、1,2-dimyristoyloxypropyl-3-dimethylhydroxyethyl ammonium(DMRIE)、2,3-dioleyloxy-N-[2(sperminecarboxamido)ethyl]-N,N-dimethyl-1-propanaminum trifluoroacetate(DOSPA)、dioctadecyldimethylammonium chloride(DODAC)、N-(2,3-dioleyloxy)propyl-N,N,N-trimethylammonium(DOTMA)、didodecyldimethylammonium bromide(DDAB)、リポフェクトアミンなどは、脂質成分の親水部に正電荷を付与させるために4級アミンを有するものがほとんどである。これらカチオン性脂質を用いた遺伝子導入系においては、ポリエチレンイミンなどのカチオン性高分子を用いた遺伝子導入キャリアとは異なり、DNAとの複合体がエンドソームから離脱するプロトンスポンジ効果を有さない。そのため、既存の遺伝子導入用カチオン性脂質には通常、膜融合性脂質である1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン(DOPE)が混合されている。カチオン性脂質によりDNAを濃縮安定化させる作用を有し、DOPEによりエンドソーム膜との融合を促すことで、このカチオン性脂質-DNA複合体がエンドソーム膜外に放出される。これにより、カチオン性脂質により濃縮安定化されたDNAの核内への導入が達成される(L.Stamatatos et al.,Interactions of cationic lipid vesicles with negatively charged phospholipid vesicles and biological membranes.Biochemistry 1988,27,3917;特表平 11-504631号公報)。
しかし、上記遺伝子導入用カチオン性脂質の合成はその化学構造が複雑であるために容易に合成できず、これらの遺伝子導入試薬の価格が高いのが現状である。また、4級アミンを有する遺伝子導入用脂質はそのカチオン性が強力なため、血清成分との凝集を引き起こしやすく、血清存在下での遺伝子導入効率を著しく低下させる要因になる。さらに、これらのカチオン性脂質は細胞膜表面のリン脂質にも強く相互作用するため、細胞毒性も高い。
一方、タンパク質を外部から細胞内に導入する場合も運搬体が必要であり、その運搬体として、脂質系(Profect P-1、BioPORTER、SAINT-MIX等)やペプチド系(Profect P-2、Chariot等)などの試薬がすでに市販されている。しかし、これらの運搬体のほとんどは、単純にタンパク質と混合して複合体を形成させ、細胞に添加して使用するため、複合体の大きさの制御ができないことが多い。また、特に脂質系運搬体については、細胞培養液に血清タンパク質が含まれている場合には目的タンパク質の導入効率が大幅に低下するため、血清不含有培地での実験を行なう必要がある。さらに、過剰の脂質運搬体が遊離して存在すると、顕著な細胞毒性が現れることがある。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、タンパク質又は遺伝子を細胞に効率よく導入することができ、容易に且つ安価で合成可能であり、生体適合性が高い(すなわち低毒性の)、タンパク質又は遺伝子導入用試薬を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、カチオン性アミノ酸型脂質により構成される二分子膜小胞体のような分子集合体にタンパク質や遺伝子を封入し、細胞へのタンパク質導入や遺伝子導入の試験を行なうと、当該タンパク質又は遺伝子が効率よく細胞に導入され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示すカチオン性アミノ酸型脂質を含む組成物を含有する、細胞へのタンパク質又は遺伝子導入用試薬を提供するものである。さらに、本発明は、当該試薬を含む、細胞へのタンパク質又は遺伝子導入用キットを提供する。
一般式(I):
JP0005403324B2_000002t.gif(式(I)中、Rは、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して、鎖状炭化水素基であり、A及びAは、それぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CONH-及び-NHCO-からなる群から選択される結合基であり、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-又は-(CHCHO)-(ここで、kは0~14の整数である。)であり、nは1~4の整数である。)で示されるカチオン性アミノ酸型脂質。
カチオン性官能基としては、アミノ基、グアニジノ基、イミダゾール基、及びこれらの誘導体からなる群から選択されるものが挙げられる。
式(I)において、Rは、式(a)で表されるものを例示することができる。
JP0005403324B2_000003t.gif また、式(I)において、A及びAはいずれも-COO-であることが好ましい。さらに、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、イソプレノイド基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選択される置換基を有していてもよい、主鎖の炭素数が12~30の飽和又は不飽和の鎖状炭化水素基であることが好ましく、さらに好ましくは、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数12~22、好ましくは炭素数14~18のアルキル鎖である。また、式(I)において、nは2であることが好ましい。
さらに、本発明においては、式(I)-1で表されるカチオン性アミノ酸型脂質を使用することができる。
JP0005403324B2_000004t.gif(式(I)-1中、式中、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-又は-(CHCHO)-(kは0~14(好ましくは0~11)の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す(但し、細胞への遺伝子導入用試薬、及び当該試薬を含む細胞への遺伝子導入用キットを提供する場合は、m1及びm2がいずれも15である場合は除く。)。)
また、式(I)-1で表されるカチオン性アミノ酸型脂質としては、具体例としては、式(I)-2で表されるカチオン性アミノ酸型脂質が挙げられる。
JP0005403324B2_000005t.gif(式(I)-2中、m1及びm2は、式(I)-1の場合と同様である。)
本発明において、カチオン性アミノ酸型脂質を含む組成物には、ジアシルホスファチジルコリンを含めることができる。この場合、ジアシルホスファチジルコリンのアシル鎖の一部又は全部がオレオイル基であることが好ましい。具体的には、上記組成物には1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)を含めることができる。
上記組成物には、さらにコレステロールを含めることができ、また、ポリエチレングリコール鎖が結合した両親媒性分子を含めることも可能である。
上記組成物は水性媒体中に分散してなる分子集合体であっても、乾燥粉末品の形態であってもよい。分子集合体は、二分子膜小胞体構造を形成し、内水相にタンパク質又は遺伝子を含むものである。乾燥粉末品の場合は、水性媒体中に分散したときにタンパク質又は遺伝子を包含した二分子膜小胞体構造を形成し得る。ここで、タンパク質又は遺伝子導入の対象となる細胞としては、例えば血漿、血清若しくは血液、又はそれらの成分の一部を含む培地にて培養された細胞が挙げられる。
さらに、本発明は、-般式(I’):
JP0005403324B2_000006t.gif(式(I’)中、Rは、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して、鎖状炭化水素基であり、A及びAは、それぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CONH-及び-NHCO-からなる群から選択される結合基であり、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CHk’-又は-(CHCHO)k’-(ここで、k’は1~14の整数である。)であり、nは1~4の整数である。)
で示されるカチオン性アミノ酸型脂質である。
、R及びR並びにA及びAは、前記と同様である。また、nは2であることが好ましい。
さらに、本発明は、次式(I)-3で示されるカチオン性アミノ酸型脂質である。
JP0005403324B2_000007t.gif(式中、Mは、-(CHk’-又は-(CHCHO)k’-(k’は1~14(好ましくは1~11)の整数である。)であり、p1及びp2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す。)
また、式(I)-3で表されるカチオン性アミノ酸型脂質としては、具体例としては、式(I)-4及び式(I)-5で表されるカチオン性アミノ酸型脂質が挙げられる。
JP0005403324B2_000008t.gif(式(I)-4中、p1及びp2は、式(I)-3の場合と同様である。)
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1は、COS-1細胞に導入されたリポソーム/Dmc1複合体の共焦点レーザ顕微鏡写真である。
図2は、細胞内導入Dmc1の局在部位をウエスタンブロッティングにより解析した結果を示す図である。
図3は、NIH-3T3細胞に導入されたリポソーム/Dmc1複合体の共焦点レーザ顕微鏡写真である。
図4は、COS-1細胞に導入されたリポソーム/rHSA複合体の共焦点レーザ顕微鏡写真である。
図5は、COS-1細胞に導入されたリポソームの共焦点レーザ顕微鏡写真である。
図6は、COS-1細胞に導入されたリポソーム/rHSA複合体の共焦点レーザ顕微鏡写真である。
図7は、カチオン性リポソームの生体膜への融合度の測定結果を示すグラフである。
図8は、pDNA内包リポソームのTEMによる観察像を示す図である。
図9は、カチオン性リポソームへのpDNAの内包をゲル電気泳動により確認した結果を示す図である。
図10は、pDNA内包リポソームの遺伝子発現効率の算出結果を示すグラフである。
図11は、カチオン性リポソームの遺伝子運搬能評価としての、ルシフェラーゼアッセイによる発現量の算出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2006-317841号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
本発明は、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する複合脂質を構成成分とする分子集合体をタンパク質又は遺伝子導入用試薬として利用するものである。
本発明者は、細胞表面への吸着性や細胞毒性の低い成分組成からなるリポソームにタンパク質又は遺伝子を内包させて複合体を安定化させ、Extrusion法により粒径を調製したリポソームによるタンパク質又は遺伝子運搬体システムを構築した。タンパク質又は遺伝子をリポソームに内包させて粒径が揃ったナノ粒子とすることにより、細胞への取り込み能を向上させ、細胞内のプロテアーゼによる内包タンパク質の分解やヌクレアーゼによる内包遺伝子の分解を阻害することが可能となる。
以下、本発明のカチオン性アミノ酸型脂質及びそれを含む組成物について詳細に説明する。
1.カチオン性アミノ酸型脂質
1-1)カチオン性アミノ酸型脂質
本発明において使用されるカチオン性アミノ酸型脂質は、一般式(I):
JP0005403324B2_000009t.gif(式(I)中、Rは、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する炭化水素基であり、R及びRは、それぞれ独立して、鎖状炭化水素基であり、A及びAは、それぞれ独立して、-COO-、-OCO-、-CONH-及びNHCO-からなる群から選択される結合基であり、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-又は-(CHCHO)-(kは0~14の整数である。)であり、nは、1~4の整数である。)
で示されることを特徴としている。
式(I)中、Rは、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する炭化水素基である。ここで「カチオン性官能基」とは、水溶液中でカチオン性を示す基をいい、このような性質を有するものであれば特に限定されない。例えば、カチオン性官能基としては、アミノ基、グアニジノ基、イミダゾール基、及びこれらの誘導体が挙げられる。「誘導体」としては、アミノ基、グアニジノ基、イミダゾール基に含まれる水素原子が、低級(例えば炭素数1~6)アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル等)、アミノアルキル基(アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなど)や対応するオリゴアミノアルキル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど)、オリゴオキシアルキル基(オリゴオキシメチル基、オリゴオキシエチル基、オリゴオキシプロピルなど)などの置換基で置換された化合物が挙げられる。
は、カチオン性官能基を少なくとも一つ有していればよいが、カチオン性官能基を二つ以上有していることが好ましい。特に、カチオン性官能基を二つ以上有している化合物は、タンパク質、あるいはポリアニオンであるDNA及びRNA等の核酸と安定な複合体を形成できる点で、あるいは細胞表面の負電荷が密集している部分に安定に結合し細胞内移行性が高まる点で好ましい。カチオン性置換基を二つ以上有している場合は、カチオン性置換基の組み合わせは特に限定されない。
これらの中でも、Rとしては、次式(a)で表される基であることが好ましい。
JP0005403324B2_000010t.gif 次に、式(I)中、R及びRは、それぞれ独立して、鎖状炭化水素基である。「鎖状炭化水素基」は、結合基AまたはAに共有結合にて導入できる疎水性の基であれば特に限定されない。鎖状炭化水素基は、直鎖または分岐鎖のいずれであってもよいが、直鎖が好ましい。鎖状炭化水素基の主鎖の炭素数は、12~30が好ましく、12~22がより好ましく、14~18がさらに好ましい。このような鎖状炭化水素基は飽和又は不飽和であってもよいが、鎖状炭化水素基に二重結合または三重結合などの不飽和結合がある場合、その数は1~4であることが好ましい。鎖状炭化水素基の主鎖としては、アルキル鎖、アルケニル鎖またはアルキニル鎖が好ましく、アルキル鎖がより好ましい。
また、鎖状炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、イソプレノイド基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、及びメルカプト基からなる群から選択される置換基を有していてもよい。ここで、アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、炭素数1~6のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル等が挙げられる。アルキニル基としては、炭素数1~6のアルキニル基が好ましく、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等が挙げられる。
これらの鎖状炭化水素基の中でも、R及びRとしては、置換基を有していてもよい、炭素数12~22のアルキル鎖が好ましい。
また、式(I)中、A及びAは、それぞれ独立して、-COO-、-OCO-、—CONH-及びNHCO-からなる群から選択される結合基である。A及びAの組み合わせは特に限定されるものではないが、A及びAが、いずれも、-COO-であることが好ましい。
式(I)中、nは、1~4の整数である。nが1~4であるときは、二分子膜中で式(I)の化合物の鎖状炭化水素基を膜平面に対して垂直に配向させることができる点で好ましい。また、nが1~4であるときは、水溶液中でカチオン性アミノ酸型脂質が集合して形成する二分子膜の親-疎水界面が安定であり小胞体構造を形成しやすいため、分子集合体の構成脂質成分として用いることにより、小胞体構造ならびに分散状態を安定化させる効果が期待できる。特に、nが2のときは、上述の効果に加えて、グルタミン酸やその誘導体を原料にできるため、低価格や低毒性の点でより好ましい。
具体的には、本発明のカチオン性アミノ酸型脂質は、下記式(I)-1で表される化合物であることが好ましい。
JP0005403324B2_000011t.gif(式(1)-1中、式中、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-又は-(CHCHO)-(kは0~14(好ましくは0~11)の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す(但し、細胞への遺伝子導入用試薬、及び当該試薬を含む細胞への遺伝子導入用キットを提供する場合は、m1及びm2がいずれも15である場合は除く。)。)
(式(I)-1中、式中、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-又は-(CHCHO)-(kは0~14(好ましくは0~11、より好ましくは1~11、さらに好ましくは3~5))の整数である。)であり、m1及びm2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す(但し、細胞への遺伝子導入用試薬、及び当該試薬を含む細胞への遺伝子導入用キット(後述する)を提供する場合は、m1及びm2がいずれも15である場合は除く。)。)
また、式(I)-1で表されるカチオン性アミノ酸型脂質としては、具体例としては、式(I)-2で表されるカチオン性アミノ酸型脂質が挙げられる。
JP0005403324B2_000012t.gif(式(I)-2中、m1及びm2は、式(I)-1の場合と同様である。)
本発明においては、式(I)で示される化合物のアミノ酸由来のカチオン性官能基部分にスペーサー(M及びL)を結合させることができる。式(I)で示される化合物をタンパク質又は遺伝子導入用試薬として使用するときは、スペーサーMは、-(CH-又は-(CHCHO)-で示され、kは0~14の整数である。また、Lは、単結合、又は-CONH-若しくは-S-S-である。これらのスペーサーを導入することにより、ζ電位(ゼータ電位)を調整することが可能である。
本発明においては、スペーサーM及び/又はLを導入した次式(I’)で示される化合物(カチオン性アミノ酸型脂質)も提供する。
JP0005403324B2_000013t.gif(式(I’)中、R、R及びR、A及びA、L並びにnは前記と同様であるが、Mは、-(CHk’-又は-(CHCHO)k’-(k’は1~14の整数である。)である。)
スペーサーを導入した脂質としては、下記式(I)-3で示される化合物であることが好ましい。
JP0005403324B2_000014t.gif(式(I)-3中、Mは、-(CHk’-又は-(CHCHO)k’-(k’は1~14(好ましくは1~11、より好ましくは3~5)の整数である。)であり、p1及びp2はそれぞれ独立して、11~21の整数を表す。)
また、式(I)-3で表されるカチオン性アミノ酸型脂質としては、具体例としては、式(I)-4で表されるカチオン性アミノ酸型脂質が挙げられる。
JP0005403324B2_000015t.gif(式(I)-4中、p1及びp2は、式(1)-3の場合と同様である。)
また、本発明において、スペーサーを導入した脂質としては、下記式(I)-5で示されるカチオン性アミノ酸型脂質も好ましく挙げられる。
JP0005403324B2_000016t.gif(式(I)-5中、Lは、単結合、又は-CONH-、-NHCO-若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-、-(CHCHO)-又は、-CHi’-(CHCHO)-(CHi’’-(iは0~14(好ましくは0~11、より好ましくは1~11、さらに好ましくは3~5)の整数、i’は1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数、i’’は1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数である。)であり、Lは、単結合、又は-CONH-、-NHCO-、若しくは-S-S-であり、Mは、-(CH-、-(CHCHO)-又は、-CHj’-(CHCHO)-(CHj’’-(jは0~14(好ましくは0~11、より好ましくは1~11、さらに好ましくは3~5)の整数、j’は1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数、j’’は1~10(好ましくは1~5、より好ましくは1~3)の整数であり、p1及びp2は、式(I)-3の場合と同様である。)
上記式(I)-5のカチオン性アミノ酸型脂質としては、例えば、後述する実施例中に記載の化合物で示されるものが好ましい。
1-2)カチオン性アミノ酸型脂質の製造方法
このような本発明のカチオン性アミノ酸型脂質は、公知の反応を組み合わせることによって極めて簡便に製造することができる。例えば、本発明のカチオン性アミノ酸型脂質は、次式:
JP0005403324B2_000017t.gif(式中、A11及びA12は、それぞれ独立して、カルボキシル基、水酸基、またはアミノ基であり、nは、1~4の整数である。)
を有する三官能性コア化合物に、鎖状炭化水素基の供給源及びカチオン性官能基を有する炭化水素基の供給源を順次反応させることによって製造することができる。
本発明のカチオン性アミノ酸型脂質を製造するための代表的な合成経路を示すと、以下の通りである。
まず、三官能性コア化合物のA11やA12部に、鎖状炭化水素基の供給源を反応させる。この際、必要に応じて、カチオン性官能基を有する炭化水素基の供給源と反応させる官能基を、tert-ブトキシカルボニル基等の保護基で保護しておくことが好ましい。
次いで、得られた化合物のアミノ基にカチオン性官能基を有する炭化水素基の供給源を反応させる。カチオン性官能基を有する炭化水素基の供給源は、予めアミノ基をtert-ブトキシカルボニル基などにより保護し、反応させるカルボキシル基はスクシンイミドなどにより活性化しておくことが望ましい。反応は、第三級アミンなどの触媒の存在下で行うことが好ましい。
スペーサーを導入する場合は、鎖状炭化水素基を導入した化合物にカチオン性官能基とカルボキシル基を有する炭化水素基の供給源を反応させる。カチオン性官能基とカルボキシル基を有する炭化水素基には、片末端がtert-ブトキシ基などにより保護されたアミノ基を有し、もう一方の末端にカルボキシル基を有する化合物が望ましい。炭化水素基部位はオリゴオキシエチレンとしてもよい。
上記反応はいずれも、室温で行うことができる。また、反応は、加圧、減圧または大気圧いずれの圧力下でも行うことができるが、操作が簡便であることから、大気圧雰囲気下で行うことが望ましい。
反応終了後は、トリフルオロ酢酸などの酸で処理して脱保護し、常法により精製してカチオン性アミノ酸型脂質を得ることができる。なお、反応の終点は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、質量分析装置、薄層クロマトグラフィー、核磁気共鳴スペクトル、及び赤外吸収スペクトル等によって確認できる。
本発明のカチオン性アミノ酸型脂質の製造方法は、上記方法に限定されるものではない。例えば、三官能性コア化合物のアミノ基にカチオン性官能基を有する炭化水素基の供給源と先に反応させ、次いで、A11やA12部に鎖状炭化水素基の供給源と反応させることもできる。
以下、本発明のカチオン性アミノ酸型脂質の合成に用いることができる原料化合物を例示する。
鎖状炭化水素基の供給源としては、三官能性コア化合物と共有結合し得る、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を有するものであれば特に限定されない。
カルボキシル基を有する鎖状炭化水素基の供給源としては、脂肪酸が挙げられる。例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等であり、それぞれ分岐鎖体も含まれる。また、それらの酸無水物、または酸クロライドも含まれる。
アミノ基を有する鎖状炭化水素基の供給源としては、直鎖第一アミンとして、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ドコシルアミン、オレイルアミン等が挙げられ、それらの分岐鎖体も含まれる。さらに分岐状のイソプレノイド等のアミンも使用できる。また、アミノ基を有する脂肪族炭化水素基の供給源には、N-メチル-ドデシルアミン、N-メチル-テトラデシルアミン、N-メチル-ヘキサデシルアミン、N-エチル-ドデシルアミン、N-エチル-テトラデシルアミン、N-エチル-ヘキサデシルアミン、N-プロピル-ドデシルアミン、N-プロピル-テトラデシルアミン、N-プロピル-ヘキサデシルアミン、ジオレイルアミン等の第二アミンも含まれ、それらの分岐鎖体も用いられる。
水酸基を有する鎖状炭化水素基の供給源としては、直鎖第一飽和アルコールとしてラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。その他、1,1-ドデセノール、1-オレイアルコール、リノレニルアルコール等の直鎖第一飽和アルコール、分岐第一飽和アルコール、分岐第一不飽和アルコール、第二飽和アルコールあるいは第二不飽和アルコールが挙げられる。また、これらアルコール類をグリセリンの1,3-位あるいは1,2-位に結合したジアルキルグリセロール、第一飽和アルコール及び第一不飽和アルコールで構成されたジアルキルグリセロールが挙げられる。
その他、鎖状炭化水素基の供給源としては、ステロール類が挙げられる。例えば、コレステロール、コレスタノール、シトステロール及びエルゴステロール等である。
カチオン性官能基を有する炭化水素基の供給源としては、アミノ酸またはその誘導体を使用できる。中でも、リジンまたはこれらの誘導体が好ましい。ここで、アミノ酸の誘導体には、アミノ酸に含まれる水素原子が、低級アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル等)、アミノアルキル基(アミノメチル、アミノエチル、アミノプロピル、アミノブチルなど)や対応するオリゴアミノアルキル基、水酸基、ヒドロキシアルキル基(ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピルなど)、オリゴオキシアルキル基(オリゴオキシメチル基、オリゴオキシエチル基、オリゴオキシプロピルなど)などの置換基で置換された化合物が含まれる。
本発明においては、上記脂質単独のほか、さらに1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)を混合して脂質との複合体を形成させることができる。これにより、脂質とエンドソーム膜との融合を促すことで、高効率にタンパク質を導入することができる。脂質とDOPCとの複合体を形成する場合、脂質とDOPCとの混合比は、例えば1:1~10:1、好ましくは3:1~5:1である。
2.組成物
次に、本発明の試薬として使用される組成物について説明する。本発明において、組成物は水性媒体中に分散してなる分子集合体の形態であってもよく、凍結乾燥や噴霧乾燥等により乾燥させた乾燥品の形態であってもよい。
2-1)分子集合体
本発明において分子集合体は、構成脂質として、上述した本発明のカチオン性アミノ酸型脂質を含むものであれば特に限定されない。そのような分子集合体としては、例えば、高分子集合体、高分子ミセル、エマルジョン、リピドマイクロスフィア、二分子膜小胞体(リポソーム)、ヘキサゴナル構造を有する集合体およびその他のチューブ状やキュービック状の集合体などが挙げられるが、本発明においては、タンパク質又は遺伝子を内包させるためにリポソームなどの小胞体構造を有するものであることが好ましい。本発明のカチオン性アミノ酸型脂質の含有量は特に制限はないが、分子集合体の構成脂質の全モル数に対し、20~100モル%であることが好ましく、50~100モル%であることがより好ましい。
本発明においては、組成物は、ポリエチレングリコール鎖が結合した両親媒性分子を含むものであることが好ましい。ポリエチレングリコールの分子量は1,000~20,000であり、好ましくは2,000~6,000である。
本発明の分子集合体に含まれるその他の構成脂質は、本発明のカチオン性アミノ酸型脂質と分子集合体を形成することができ、分子集合体の構成脂質として一般に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、リン脂質、脂肪酸、ステロール類、多種の糖脂質などが挙げられる。
リン脂質としては、卵黄レシチン、大豆レシチン、水添卵黄レシチン、水添大豆レシチン、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリンなどが挙げられる。本発明において、ジアシルホスファチジルコリンやジアシルホスファチジルエタノールアミンのアシル鎖の一部又は全部がオレオイル基であることが好ましい。これらのリン脂質は、エン(二重結合)、イン(三重結合)、ジエン、ジイン、トリエンなどの不飽和部を含有しても良いし、ビニル基などの重合性基、例えばスチリル基を含有しても良い。リン脂質の含有量に特に制限はないが、分子集合体の構成脂質の全モル数に対し、0~70モル%であることが好ましく、0~50モル%であることがより好ましい。
リン脂質のアシル鎖を構成する脂肪酸としては、炭素数12~22の飽和または不飽和脂肪酸が用いられる。例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、オクタデカ-2,4-ジエン酸などがある。更には、グリセロール骨格ではなく、3官能性アミノ酸、例えばグルタミン酸やリジン骨格を持つ両イオン性などのアミノ酸型脂質も使用することができる。脂肪酸の含有量に特に制限はないが、分子集合体の構成脂質の全モル数に対し、1~70モル%であることが好ましく、5~30モル%であることがより好ましい。
また、分子集合体には、脂質小胞体の膜成分としてステロール類を安定化剤として添加してもよい。そのようなステロール類としては、例えば、エルゴステロール、コレステロール等、ペルヒドロシクロペンタノフェナントレン骨格を有する全てのステロイドが挙げられるが、好ましくはコレステロールである。ステロール類の含有量に特に制限はないが、小胞体膜の安定性を考慮すれば、分子集合体の構成脂質の全モル数に対し、5~50モル%であることが好ましく、より好ましくは15~40モル%である。
分子集合体の製造方法は、特に限定されるものではなく、一般に公知の方法を用いることができる。例えば、リポソームの製造の手法としては、単独または混合脂質の粉末もしくは薄膜を水和させ分散させた後、高圧押出し(エクストルージョン)法、超音波照射法、撹拌(ボルテックスミキシング、ホモジナイザー)法、凍結融解法、マイクロフルイダイザー法などで製造する方法、単独または混合脂質を有機溶媒に溶解させた溶液を水相に注入した後、エタノールやエーテルなどの有機溶媒を減圧または透析で除去して形成する方法、あるいは、単独または混合脂質をコール酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、Triton X-100またはラウリルエーテルなどの界面活性剤と共に水相に分散させてエマルジョンを形成させ、透析によって除去して形成する方法、その他、逆相蒸発法、インキュベーション法などを採用することができる。
分子集合体の粒子径は、上記製造方法の組み合わせによって自在に制御することが可能であるが、分子集合体の粒子径として50~2,000nmであることが好ましく、より好ましくは100~500nmである。
2-2)乾燥品
本発明において使用される乾燥品は、上記脂質又は分子集合体を乾燥させることにより得ることができる。乾燥処理は特に限定されるものではないが、凍結乾燥又は噴霧乾燥であることが好ましい。
凍結乾燥処理は、例えば、上記脂質又は分子集合体を滅菌後、所定量をバイアルに入れて純水、生理食塩水、緩衝液等に分散させ、液体窒素等で脂質分散液を凍結させた後に15~30℃で減圧下に乾燥を行なう。凍結乾燥保護剤としてすくロースやトレハロースなどを脂質分散液に予め溶解させておいても良い。最期にバイアル内部を窒素ガスで置換することにより凍結乾燥品を得ることができる。
噴霧乾燥処理は、例えば溶液又は微粒子懸濁液を熱気流中に一気に噴霧すればよい。これにより、微小粒状乾燥品を得ることができる。噴霧乾燥は、公知のスプレードライヤーを用いて実施することができる。
本発明の乾燥品を使用するには、任意の再溶解液を添加することによって、用時調製すればよい。再溶解液としては、例えば純水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等が挙げられる。
3.タンパク質又は遺伝子導入用の試薬及びキット
本発明において、式(I)で表される化合物を含む組成物は、タンパク質導入試薬として用いることができる。
本発明において細胞内へのタンパク質導入の対象となる「タンパク質」は、任意のペプチド又はポリペプチドを意味し、分子量やアミノ酸配列の長さに限定されるものではない。また、上記タンパク質は単量体であっても多量体であってもよく、さらに、1種類のタンパク質に限定されず複数種類のタンパク質の混合物でもよい。組成物に内包するタンパク質の量は、細胞内に導入するタンパク質の種類や量により適宜設定できるが、タンパク質の変性を防ぎ、あるいはタンパク質を内包した分子集合体の構造、特に、二分子膜小胞体の構造、粒子径、膜安定性や分散安定性に影響を及ぼさないように設定することが好ましい。
また、本発明において細胞内への遺伝子導入の対象となる「遺伝子」は、タンパク質の発現の有無を問わず、任意の核酸又はポリヌクレオチドを意味し、例えばDNAであってもRNAであってもよく、またペプチド核酸(PNA)やLNA(Locked Nucleic Acid)のような核酸誘導体であってもよい。さらに、当該遺伝子には、適当なプラスミドに組み込んだ組み換えベクターも含まれる。組成物に内包する遺伝子の量は、細胞内に導入する遺伝子の種類や量により適宜設定できるが、核酸の塩基(対)数が小さく、さらに高濃度となるように設定することが好ましい。
このような分子集合体にタンパク質又は遺伝子を内包させる方法は、タンパク質又は遺伝子の種類等に応じて適宜選択すればよい。
内包させるタンパク質の水溶性が高い場合にはこのタンパク質水溶液に凍結乾燥した混合脂質粉末に分散させ、充分に水和後、例えばエクストルージョン法によって内包することができる。更に凍結乾燥法を組み合わせることによって内包効率を高めることができる。内包させるタンパク質の水溶性が低い場合には、ラウリルエーテルなどの界面活性剤の水溶液に、タンパク質と混合脂質を分散させて混合ミセル状態とし、透析や限外濾過によって界面活性剤を除去することによって内包させることができる。内包されなかったタンパク質は、ゲルろ過、超遠心分離または限外ろ過膜処理などにより内包小胞体と分離することができる。
また、内包させる遺伝子がプラスミドなどの高分子量核酸の場合には、例えば、公知の方法により数十μmサイズの巨大な分子集合体内に内包させたり、又はカチオン性高分子に被覆させて電荷を中和することにより調製することができる。内包させる物質がデコイDNA(二重鎖DNA)やsiRNA、アンチセンスDNAなどの低分子量核酸の場合には、上記の方法に加え、例えば、分子集合体の形成後に核酸水溶液中で撹拌分散することにより調製することができる。内包されなかったDNA又はRNAは、ゲルろ過、超遠心分離または限外ろ過膜処理などにより内包小胞体と分離することができる。
本発明のタンパク質導入用試薬の使用量は、細胞1×10個あたり0.1~200pmol、好ましくは0.1~10pmol程度の量であるが、従来のタンパク質導入試薬として用いられてきたProfect 1、BioPORTER等の使用量を参考にして適宜設定することができる。この用量により、効率よくタンパク質を導入することができる。
また、本発明の遺伝子導入用試薬の使用量は、細胞1×10個あたり0.001~200pmol、好ましくは0.001~100pmol、より好ましくは0.1~10pmol程度の量であるが、従来の遺伝子導入試薬として用いられてきたリポフェクトアミン、トランソーム、DOTAPおよびDMRIEなどのカチオン性脂質を構成脂質にしたリポソーム試薬等の使用量を参考にして適宜設定することができる。この用量により、従来の遺伝子導入試薬(リポフェクトアミン)に比べて細胞毒性を伴うことなく同程度の導入効率が得られる。
一般的にタンパク質又は遺伝子導入に使用する分子集合体の粒子径は、様々なサイズを用いることが可能であり特に制限はないが、分子集合体試薬の粒子径は、タンパク質又は遺伝子の導入効果や細胞毒性の面から、50~2,000nmであることが好ましく、より好ましくは100~500nmである。
また本発明は、上記試薬を含むタンパク質又は遺伝子導入用キットを提供する。キットには、緩衝液、pH調整剤、細胞保護液などを単独で、又は適宜組み合わせて含めることができる。必要に応じて、対照として用いられる標準タンパク質や、トランスフェクションの対照として用いられる標準核酸を含んでもよい。このような標準タンパク質としては、例えば、レポーター又はマーカータンパク質(例えばルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、GFP等)等が挙げられる。また、標準核酸としては、例えば、レポーター又はマーカータンパク質(例えばルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、GFP等)をコードする核酸が挙げられ、当該核酸は、プラスミドベクターの形態であってもよい。さらに、本発明のキットには、必要に応じて、例えばDEAEデキストラン等のトランスフェクション増強試薬、及び他の添加剤を含めることが可能である。さらに、本発明のキットには、細胞へのタンパク質又は遺伝子を導入するための使用説明書を含めることができる。キットに含まれる各成分は、例えば、各成分を容器中に封入した包装形態としてもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0006】
カチオン性アミノ酸型脂質の合成
(A)p-トルエンスルホン酸一水和物(4.56g、2s4mmol)のベンゼン溶液(100mL)を85℃にて沸点還流し、ジンスタークを用いて反応前に水を除去した。反応液にグルタミン酸(2.96g、20mmol)とヘキサデシルアルコール(10.7g、44mmol)を添加し、10時間生成水を除去しながら沸点還流した。反応の進行に伴い、懸濁液は徐々に溶解し透明に変化した。
反応終了後、溶媒を減圧除去し、クロロホルムに溶解して、炭酸ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄した。クロロホルム層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、溶媒を減圧除去した。残留物はメタノールから4℃にて再結晶し、ジアシルグルタミン酸誘導体()(収率83%)を白色粉末で得た。
JP0005403324B2_000018t.gif ジアシルグルタミン酸誘導体()の分析結果は、以下の通りであった。
薄層クロマトグラフィー(シリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール(4/1)(容量/容量):R:0.83(モノスポット))。
赤外吸収スペクトル(cm-1):1737(νC=0,ester).
H-NMR(CDCl、500MHz、δppm):0.89(t,6H,-CH);1.25(s,52H,-CH-CH-);1.62(m,4H,-CO-O-C-CH);1.84(m,1H,glu β-CH);2.08(m,1H,glu β-CH);2.45(t,2H,glu γ-CH);3.45(t,1H,glu α-CH);4.06,4.10(t,4H,-CO-O-CH).
MS(ESI)Calcd:595.9;Found:597.3(MH)
(B)工程(A)で得られたジアシルグルタミン酸誘導体(1.0g、1.67mmol)と、トリエチルアミン(202mg、2.0mmol)をジクロロメタン30mLに溶解し、1時間室温で撹拌した。その後、アミノ基をt-ブトキシカルボニル基で保護し、スクシンイミドにより活性化されたリジン(617mg、1.4mmol)を添加し、さらに6時間室温で撹拌した。
反応終了後、溶媒を減圧除去し、クロロホルムに溶解して、炭酸ナトリウム飽和水溶液で3回洗浄した。クロロホルム層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、溶媒を減圧除去した。残留物はメタノールから4℃で再結晶し、グラスフィルター(G6)ろ過して、アミノ基を保護したリジン誘導体をそれぞれ得た。
得られた誘導体にフルオロ酢酸(20mL)を加え、4℃で、2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧除去し、クロロホルムに溶解して、炭酸ナトリウム飽和水溶液で4回洗浄した。クロロホルム層を硫酸マグネシウムで脱水し、ろ過後、溶媒を減圧除去した。残留物はメタノールから4℃で再結晶し、ろ過し、乾燥して、カチオン性アミノ酸型脂質(収率80%)を白色粉末として得た。
JP0005403324B2_000019t.gif カチオン性アミノ酸型脂質の分析結果は、以下の通りであった。
薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール(4/1)(容量/容量):R:0.63(モノスポット))。
赤外吸収スペクトル(cm-1):1737(νC=0,ester);1673(νC=0,amide).
H-NMR(CDCl、500MHz、δ(ppm)):0.88(t,6H,-CH);1.25-1.29(br,44H,-CH-);4.51(d,1H,-CO-N-CH-);7.8,8.2(br,2H,-C-NH).
【実施例2】
【0007】
Dmc1内包カチオン性リポソームを用いたDmc1細胞核内導入確認
本発明者は、減数分裂期におけるDNAの相同組換え機構に重要な役割を担うDmc1タンパク質に着目した。ヒト由来のDmc1は、pI=5.6,37kDaのタンパク質であり、8量体からなるリング構造を取ることが明らかにされている(T.Kinebuchi,et al.,Molecular Cell,2004,14,363-374.)。減数分裂期以外でも、相同組換えは、二重鎖切断などの重篤な損傷を受けたDNAの修復にも用いられる機構である。このようなDNA損傷の修復時のエラーなどにより、DNAに変異が引き起こされ、そのことがガンや遺伝病の原因となることが知られている。本発明者は、減数分裂期細胞においてのみ発現しているDmc1を、体細胞へ外部から導入することにより、損傷もしくは変異を受けたDNAをDmc1依存的な相同組換えにより正確に修復して、ガンなどの細胞治療に応用できるものと考えた。そこで本実施例では、Dmc1内包カチオン性リポソームを用いて、Dmc1が細胞核内に導入されるかどうかの確認試験を行なった。
2.1. Dmc1内包リポソーム調製
2.1.1. 凍結乾燥脂質の調製
混合脂質(リポソーム)として、DOPC/chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18=2.5/2.5/5/0.03(モル比)を用いた。
まず、混合脂質の各混合比における全成分に、それらが完全に溶ける程度のtert-ブチルアルコールを加え、60℃で加熱融解させた。これらを凍結乾燥させ、得られた粉末を混合脂質とした。
リポソームを構成する脂質分子を以下に示す。
JP0005403324B2_000020t.gif 2.1.2. リポソーム調製
まず、Dmc1を20mM HEPES buffer(pH7.4)にて18μMに希釈した。このDmc1溶液(18μM)中、上記2.1.1.項において調製した混合脂質を、常法である水和法により、室温で3時間攪拌した。脂質とDmc1との比は75:1である。撹拌後、エクストルージョン(PVDF filter:孔径5,0.65,0.45×2,0.22×2μm)にて、リポソームの粒径をある程度揃えた。最後に、超遠心分離(100,000 x g,30分×2)を行い、未内包Dmc1を除去後、20mM HEPES buffer(pH7.4)にて、分散しDmc1内包リポソームを調製した。
物性評価として脂質の定量はコリン型リン脂質定量より、内包タンパク質の定量はHPLC(220nm)にて行った。また、動的光散乱法(BECKMAN COULTER、N4PLUS)にて粒径、ζ電位を測定した。
2.2. 結果
調製したリポソームは粒径300nm前後であり、ζ電位が+29mVであった。少なくとも1カ月程度は、粒径はそれ程変化せずに安定であった(粒径<500nm)。また、Dmc1内包率(リポソーム調製後でのDmc1量/仕込みのDmc1量)は20~40%程度、脂質収率(リポソーム調製後での脂質量/仕込みの脂質量)は40~50%程度であった。
【表1】
JP0005403324B2_000021t.gif
また、表1に示したように、分散媒としてPBS(-)を用いた場合では、時間の経過と共に粒径の増大が見られ、20mM HEPES bufferを用いることで粒径がある程度制御できることが確認された。表1で示した20mM HEPES bufferで調製したDmc1内包リポソームの粒径は、1ヶ月経過後も447±200nmであり、粒径の増大を抑えることができた。
【実施例3】
【0008】
細胞取込み評価
実験前日に細胞を培養ディッシュに播種し、当日細胞密度80%となるようにした。細胞はCOS-1細胞(アフリカミドリザル由来株腎細胞)を用い、血清存在下でインキュベーションした。細胞培養液には血清含有、または血清不含有のものを使用した。Dmc1内包リポソームをディッシュに添加後([脂質]=120μg/φ35mmディッシュ)、37℃で4時間培養した後、PBS(-)にて2回洗浄しHoechstにて核染色(室温、15min)を行った。細胞をPBS(-)にて再度洗浄し、リソソーム染色色素であるLysotrackerにて染色し、共焦点顕微鏡にて観察した。また、Dmc1にはCy3標識し共焦点顕微鏡により細胞内動態を観察した。
Dmc1へのCy3標識方法は次の通りである。Cy3-マレイミド(monofunctionaldye labeling kit(GE Health Care))を用いて、2バイアル(300nmol/vial)を20μlのDMSOに溶解し、bufferで1/5に希釈した。そこに900mL Dmc1溶液(20mg/900mL)を加え、10分撹拌し、ゲルろ過により未結合のCy3を除去することで、Cy3標識Dmc1を得た。
<結果>
図1に、COS-1細胞に導入されたリポソーム/Dmc1複合体の共焦点レーザー顕微鏡像([Dmc1]=1.3mM)を示す。中央はxy平面像、右と下はxy平面像上の赤線で垂直に切ったz軸断面像である。
血清存在下、非存在下どちらにおいても、Cy3-Dmc1(赤の輝点)が細胞内に見られ、またエンドソーム(緑の輝点)と局在がずれていることから、Dmc1内包リポソーム(Cy3-Dmc1)が細胞に効率的に取り込まれることが示された。
赤:リポソーム/Cy3-Dmc1複合体
青:細胞核(Hoechst 33342)
緑:エンドソーム(FM-1 43)
スケールバー:20μm
Alamar blueによりリポソームの細胞毒性を評価したところ(ミトコンドリアの酸化還元酵素活性を測定)、インキュベーション時間が4時間ではほとんど毒性は見られず、またインキュベーション時間を24時間に伸ばしても約80%の細胞が生存していた。この結果から、Dmc1内包リポソームは、細胞毒性が低い特長を有することも強く示唆された。
【実施例4】
【0009】
Western blottingによる核内移行の確認
Dmc1は核内タンパク質であり、DNA修復に応用し得るためには、外部から導入したDmc1が核に移行する必要がある。そこで、導入したDmc1が細胞質、細胞核のいずれに存在するのかをウェスタンブロット法により解析した。
4.1. 細胞の調製
実施例3の細胞取り込み実験と同じ条件で実験を行い、トリプシン-EDTA処理により、細胞(COS-1)をペレットとして回収した。回収した細胞は直ちに-80℃にて凍結保存した。
4.2. 細胞質と核の分離
2種類の界面活性剤(NP-40とSDS)により、細胞質成分と細胞核成分を分離した。その後、RC-DCプロテインアッセイキットによりそれぞれのサンプルの総タンパク質を定量した。
細胞のペレットをPBSで洗浄し、0.6% NP-40を含有するBuffer Nに細胞を懸濁した。この細胞懸濁液を遠心し(4,700rpm,5分)、上清を細胞質画分とした。一方、遠心後のペレットをBuffer Nで洗浄し、2×SDSサンプルバッファーに懸濁した。懸濁液を100℃で10分加熱した後遠心し(1,500rpm,5分)、上清を核画分とした。
4.3. Western blotting
細胞質画分、核画分及びDmc1標品(対照)のそれぞれのサンプルの総タンパク質量を一定として、SDS-PAGE電気泳動(200V,1時間)、及びPVDF膜への転写(150mA,1hr)を行なった。その後、Dmc1抗体と共に、核、細胞質分離の確認として、それぞれヒストン抗体、チューブリン抗体も用いた。最後に、2次抗体(抗ウサギHRP抗体)のHRP基を利用した化学発光法によりDmc1、チューブリン、ヒストンのバンドを検出した。
4.4. 結果
図2aにおいて、細胞質及び核は、共にDmc1の位置にバンドが見られることから、Dmc1内包リポソームにおいてDmc1の核内導入が確認された。また、チューブリンは細胞質成分のみ、ヒストンは細胞核成分のみにバンドが現れたことから、細胞質、細胞核成分が正確に分離できていることが確認された。
さらに、図2bにおいてリポソームのみ(空リポソーム)、リポソーム未導入のインタクトな細胞のみでは核成分のDmc1の位置にバンドが現れないことから、Dmc1内包リポソームにおけるバンドがDmc1由来であることを確認した。この結果より、リポソームにより導入されたDmc1は核に移行していることが示された。以上の結果は、Dmc1内包リポソームはDmc1を細胞内の適切な部位(ここでは核)まで運搬する機能を有することを示すものであった。
【実施例5】
【0010】
COS-1以外の細胞でのDmc1内包リポソームの細胞導入の確認
Dmc1内包リポソームがCOS-1細胞(アフリカミドリザル腎由来株化細胞)以外の細胞でも取り込まれるのを確認するため、NIH-3T3細胞(マウス胎児由来繊維芽細胞)で細胞取り込み実験を行った。
Dmc1内包リポソームは実施例2で調製したものと同じものを用いた。また、細胞をNIH-3T3に変えたこと以外は、実施例3と同様の方法で細胞取込み評価を行った。
<結果>
図3に示す通り、Cy3-Dmc1(赤の輝点)がNIH-3T3細胞内に見られ、またエンドソーム(緑の輝点)と局在がずれていることから、Cy3-Dmc1のNIH-3T3細胞質への取り込みが確認された。よって、Cy3-Dmc1内包リポソームによってCOS-1細胞以外の細胞においてもDmc1が細胞質に取り込まれることが確認された。
導入:Cy3-Dmc1内包リポソーム
細胞:NIH-3T3
赤:Cy3-Dmc1
青:核
緑:エンドソーム
【実施例6】
【0011】
Dmc1以外のタンパク質でのリポソームによる細胞導入の確認
用いたリポソーム(DOPC/chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18=2.5/2.5/5/0.03(モル比)が他のタンパク質においても細胞導入能があることを確かめるため、TRITC(ローダミン)標識アルブミン(rHSA)内包リポソームによるアルブミンの細胞取込みを評価した。
6.1. TRITC-rHSA内包リポソームの調製
6.1.1. rHSAへのTRITC標識
まず、TRITC(2mg)を0.1N NaOH(200μl)中でボルテックスし、さらにPBS(-,600μl)を加えボルテックスしTRITC溶液(5.64mM)を調製した。rHSAにこのTRITC溶液を加え攪拌後、カラム(Sephadex G25)にてフリーのTRITCを除去しTRITC標識rHSA(TRITC-rHSA)とした。カラムを通した際のbufferには、20mM HEPES bufferを用いた。調製したTRITC-rHSAは、ビウレット法にてrHSAの定量を行った。
6.1.2. TRITC-rHSA内包リポソームの調製
調製方法はDmc1内包リポソームの調製においてDmc1をTRITC-rHSAに変えたこと以外は、実施例2と同様である。まず、調製したTRITC-rHSAを20mM HEPES buffer(pH7.4)にて18μMに希釈した。このTRITC-rHSA溶液(18μM)中で、実施例2の2.1.1.項により調製した混合脂質を室温で3時間攪拌し、エクストルージョン(PVDF filter:孔径5,0.65,0.45×2,0.22×2μm)にて、粒径を揃えた。最後に、超遠心分離100,000 x g,30分×2)を行い、未内包TRITC-rHSAを除去後、20mM HEPES buffer(pH7.4)に分散させてTRITC-rHSA内包リポソームを調製した。
物性評価として脂質の定量はコリン型リン脂質定量より、内包タンパク質の定量はHPLC(220nm)にて行った。また、動的光散乱法にて粒径を測定した。
<結果>
調製したTRITC-rHSAリポソームは粒径300nm前後であり、少なくとも1週間程度までは粒径はそれ程変化せず(<500nm)安定であることを確認した。
6.2. TRITC-rHSA内包リポソームの細胞取込み評価
リポソーム組成は実施例2と同様に、DOPC/chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18=2.5/2.5/5/0.03(モル比)である。細胞取り込み評価方法は実施例3で示した方法と同様である。
実験前日に細胞をディッシュに播種しておき、当日、細胞密度が80%となるように調整した。細胞はCOS-1細胞(アフリカミドリザル腎由来株化細胞)を用い、血清存在下でインキュベーションした。
まず、細胞の培養液を血清あり、または血清なしのものと交換し、TRITC-rHSA内包リポソーム添加後([脂質]=120mg,/φ35mmディッシュ)4時間インキュベーションした。その後、PBS(-)にて2回洗浄しHoechst 33342にて核染色(室温、15min)、再びPBS(-)にて洗浄しLysoTrackerにてエンドソーム染色(37℃,5%CO,60min)を行い、共焦点顕微鏡にて観察した。
<結果>
血清存在下、非存在下どちらにおいても、TRITC-rHSA(赤の輝点)が細胞内に見られ、またエンドソーム(緑の輝点)と局在がずれていることから、TRITC-rHSAの細胞質への取り込みが確認された(図4)。よって、Dmc1以外のタンパク質であってもリポソームに内包させることにより細胞内の細胞質にまで運搬されていることが確認された。
導入:TRITC-rHSA内包リポソーム
細胞:COS-1
〔比較例1〕
DOPCがない場合
リポソーム組成:Chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18=2.5/5/0.03(モル比)
実施例2で示したDOPC/chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18=2.5/2.5/5/0.03(モル比)でのDmc1内包リポソームと全て同様の手順で、Chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18=2.5/5/0.03(モル比)でのDmc1内包リポソームを調製した。調製後3日程度は粒径300nm前後で安定であったが、1週間以内には完全に凝集、沈殿してしまった。
ポリエチレングリコール鎖が結合した両親媒性分子がない場合
リポソーム組成:DOPC/chol/カチオン性脂質=2.5/2.5/5(モル比)rHSAを用いてポリエチレングリコール鎖が結合した両親媒性分子としてPEG-Glu2C18の影響を調べた。まず、25wt% rHSA溶液をPBSにより希釈し0.4wt% rHSA溶液を調製した。0.4wt% rHSA溶液に、前記2.1.項と同様の手順で調製した表2の組成の混合脂質を加えて水和及び撹拌し、エクストリューダー(PVDF filter:孔径5,0.65,0.45x 2,0.22 x 2μm)にて、粒径をある程度揃えた。最後に、超遠心分離(100,000 x g,30min x 2)を行い、分散媒(PBS)にて再分散させることでrHSA内包リポソームを得た。
【表2】
JP0005403324B2_000022t.gif
表2より、PEG-Glu2C18を用いないリポソームは用いたリポソームに比べ、粒径の増大が見られた。カチオン性リポソームはアニオン性のrHSAを介して凝集し易く、PEG鎖にて表面修飾することで分散安定性はかなり向上した。また、このrHSAを用いた系ではPEGを用いることでrHSA内包率も向上した。アニオン性タンパク質の内包には粒径制御のためPEGが有用であることが確認された。
【実施例7】
【0012】
リポソーム表面電荷の違いによる細胞取込みへの影響
本実施例では、ローダミン標識したカチオン性、両イオン性、アニオン性の空リポソームを用いて、細胞内取り込みにおけるリポソーム膜成分の最適化を行った。
7.1. リポソーム調製
リポソームの調製方法は実施例2の2.1.項と同様である。表3に示したそれぞれの混合比での脂質成分にそれらが完全に溶ける程度のtert-ブチルアルコールを加え、加熱融解させた。これらを凍結乾燥させて得られた粉末を混合脂質とした。
【表3】
JP0005403324B2_000023t.gif
次に、PBS(-)中で、調製した混合脂質を、室温で3時間攪拌し、エクストルージョン(PVDF filter:孔径5,0.65,0.45 x 2,0.22 x 2μm)にて、粒径をある程度揃えた。最後に、超遠心分離(100,000 x g,30min x 2)を行い、PBSにて分散しリポソームを調製した。ここで用いたDHSGはアニオン性脂質である。
7.2. 細胞取込み評価
エンドソーム染色を行っていないこと以外は実施例3で示した方法と同様である。実験前日細胞を播種し、当日細胞密度80%となるようにした。細胞はCOS-1細胞(アフリカミドリザル腎由来株化細胞)を用い、血清存在下でインキュベーションした。まず、細胞の培養液を血清あり、または血清なしのものと交換し、Dmc1内包リポソーム添加後([脂質]=120mg,/φ35mmディッシュ)4時間インキュベーションした。その後、PBS(-)にて2回洗浄しHoechst 33342にて核染色(室温、15min)、再びPBS(-)にて洗浄した後、共焦点顕微鏡にて観察した。
<結果>
Hoechst 33342で染色した核を指標にして、ローダミン標識リポソームの細胞内局在を調べた結果、カチオン性、アニオン性、両イオン性のリポソームの順に細胞内への取り込みが多かった(図5)。アニオン性、両イオン性リポソームでは細胞内取込みはわずかであり、細胞膜への吸着も見られた。取り込まれたリポソームでは核移行は見られなかったが、リポソームが核と同じ面上に存在し、細胞内に取り込まれていることが確認できた。
〔比較例2〕
市販のタンパク質導入試薬との比較
本比較例では、下記3種類の市販されているタンパク質導入試薬とCy3-Dmc1内包リポソームにより細胞内へのDmc1導入に関する比較を行った。
・Profect P-1(Lipid系)及びP-2(非Lipid系)(Targeting System):タンパク質溶液と混合することにより複合体形成
・BioPORTER(Lipid系)(Gene Therapy Systems,Inc.):フィルムを形成させた後にタンパク質溶液と水和させ複合体形成
導入方法はそれぞれの試薬キットのプロトコールに従った。Dmc1添加量を0.1、1、5μg/mLとし、インキュベーション時間を4、20時間として、タンパク質導入試薬によるDmc1導入効率の最適化、及び共焦点顕微鏡観察を用いたDmc1の細胞内挙動の比較を行い、カチオン性リポソームを用いた場合と比較した。ただし、インキュベーション時は全て血清非存在下で行った。また、インキュベーション後の細胞核、エンドソーム染色に関しては、実施例3と同様の手順で行った。
タンパク質導入試薬Profect P-1、P-2ではどれも細胞表面にDmc1(赤の輝点)が吸着してしまっているように見え、細胞内に効率よく導入されているようには見えなかった。BioPORTERでは、細胞内でDmc1がエンドソーム(緑の輝点)の位置に観察されカチオン性リポソームの場合と似たような挙動が確認できた。また、インキュベーション時間が20時間では、どの試薬を用いても細胞表面に吸着してしまっているように見られるものが多かった。
そこで、BioPORTERの場合について、インキュベーション時間4時間とし、試薬量とDmc1の比を今回と同じように変えるが、1ディッシュあたりのDmc1量を揃えることで最適比を確定し、リポソームの場合と比較した。ただし、1ディッシュあたりのDmc1の量を0.1μgとして比較した。
細胞内においてエンドソーム(緑の輝点)とDmc1(赤の輝点)の局在がずれて見られ、Dmc1が細胞質に取り込まれたのが確認できるのは、(0.1μg Dmc1+1μl BioPORTER)の比の場合のみであり、この比をBioPORTERのDmc1導入のための最適比とした。
また、先の実験においてBioPORTER、Dmc1内包リポソーム共に最適なDmc1のアプライ量は1dishあたり1μgであったため、本実験でのBioPORTERの最適化された比を用いて、この1μg/dishの濃度において再びDmc1内包リポソームの場合と比較した。
どちらの場合においても、細胞内でDmc1(赤の輝点)がエンドソーム(緑の輝点)とずれて存在しており、Dmc1が細胞質に取り込まれたのが確認された。
次に、血清存在下でこれら2つを比較した。
どちらの場合についてもDmc1が細胞質に取り込まれているのが確認された。Dmc1が細胞質に取り込まれた細胞の数としては、Cy3-Dmc1内包リポソームの方が多少多く観察された。
【実施例8】
【0013】
スペーサー導入カチオン性アミノ酸型脂質の合成
リン脂質等との混合系では従来のカチオン性脂質では親水部が小さいためDOPCの親水部に埋没してしまう。そこでカチオン性脂質の親水部と疎水部間にスペーサーを導入したカチオン性脂質脂質(Lys-C5-Glu2C16)の検討を行った。
(A)ジアシルグルタミン酸誘導体は、実施例1で作製したものを使用した。
(B)ジアシルグルタミン酸誘導体(1.0g、1.67mmol)とトリエチルアミン(202mg、2.0mmol)をジクロロメタン30mLに溶解し1時間室温撹拌した。その後アミノ基をt-ブトキシカルボニル基で保護しスクシンイミドにより活性化された6-aminohexanoic acid(323mg、1.4mmol)を添加しさらに6時間室温撹拌した。反応終了後、溶媒を除去、炭酸ナトリウム飽和水/クロロホルムにて分液(各3回)後、硫酸マグネシウムにて脱水、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)ろ過し、スペーサー導入ジアシルグルタミン酸誘導体を得た。得られた誘導体にフルオロ酢酸(20mL)を加え4℃、2時間撹拌する。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水/クロロホルムにて分液(×4)後、硫酸マグネシウムにて脱水、メタノール4℃にて再結晶を行いろ過、乾燥後スペーサー導入アミノ酸型脂質(化合物)(収率63%)を白色粉末として得た。
JP0005403324B2_000024t.gif スペーサー導入ジアシルグルタミン酸誘導体の分析結果は、以下の通りであった。
薄層クロマトグラフィー(シリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール(8/1)(容量/容量):R:0.12(モノスポット))。
赤外吸収スペクトル(cm-1):1737(νC=0,ester).
H-NMR(CDCl、500MHz、δppm):0.87(t,6H,-CH);1.25(s,52H,-CH-CH-);1.60(m,4H,-CO-O-C-CH);1.73(m,2H,-CH-CH-CO-NH-);1.94(m,1H,glu β-CH);2.14(m,1H,glu β-CH);2.25(m,2H,NH-CH-CH-);2.41(t,2H,glu γ-CH);2.98(m,2H,-CH-CH-CO-NH-);4.04,4.11(t-4H,-CO-O-CH);4.50(t,1H,glu α-CH);7.02(d,1H,-CO-NH-);8.07(br,2H,-NH
MS(ESI)Calcd:709.1;Found:709.8(MH)
(C)ジアシルグルタミン酸誘導体(1.0g、1.41mmol)とトリエチルアミン(171mg、1.69mmol)をジクロロメタン30mLに溶解し1時間室温撹拌した。その後アミノ基をt-ブトキシカルボニル基で保護しスクシンイミドにより活性化されたリシン(743mg、1.69mmol)を添加しさらに6時間室温撹拌した。反応終了後、溶媒を除去、炭酸ナトリウム飽和水/クロロホルムにて分液(各2回)後、硫酸マグネシウムにて脱水、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)ろ過しアミノ基を保護したリジン誘導体をそれぞれ得た。得られた誘導体にフルオロ酢酸(20mL)を加え4℃、2時間撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水/クロロホルムにて分液(×4)後、硫酸マグネシウムにて脱水、メタノール4℃にて再結晶を行いろ過、乾燥後スペーサー導入カチオン性アミノ酸型脂質(化合物)(収率38%)を白色粉末として得た。
JP0005403324B2_000025t.gif スペーサー導入カチオン性アミノ酸型脂質の分析結果は、以下の通りであった。
薄層クロマトグラフィー(シリカゲルプレート、クロロホルム/メタノール(8/1)(容量/容量):R:0.05(モノスポット))。
H-NMR(CDCl、500MHz、δppm):0.87(t,6H,-CH);1.25(s,52H,-CH-CH-);1.60(m,4H,-CO-O-C-CH);1.80(m,1H,glu β-CH);1.98(m,1H,glu β-CH);2.38(t,2H,glu γ-CH);2.93(m,2H,Lys・・-CH-NH);3.18(m,2H,-CO-NH-CH-CH-);3.83(t,1H,Glu α-CH);4.06,4.11(t,4H,-CO-O-CH);4.55(m,1H,Lys・・-CH);7.08(d,1H,-CO-NH-)
MS(ESI)Calcd:836;Found:837.8(MH)
【実施例9】
【0014】
カチオン性リポソームの調製
DOPC、cholesterol、PEG-Glu2C18の混合脂質にカチオン性リシン型脂質またはスペーサー導入カチオン性アミノ酸型脂質()をそれぞれ混合し5mL t-ブチルアルコールに溶解後、凍結乾燥した。その後、脂質濃度が2wt%になるようにHEPES緩衝液20mMに水和後(室温、12hr)、extrusion法にて最終孔径0.22μmまで透過させた。超遠心分離にて外水相を洗浄後、リン脂質定量で濃度を調整し、粒径が250nm程度のリポソームを調製した(表4)。
【表4】
JP0005403324B2_000026t.gif

【実施例10】
【0015】
アルブミン内包リポソームの調製
Tetramethylrhodamineisothiocyanate(TRITC)2mgを0.1N-NaOH aqに溶解させ、pHを7.4に調製した。その水溶液を25g/dL rHSA 1mLと混合し6時間撹拌後、ゲルカラム(Sephadex G-25)にて未結合ローダミンを除去し、ローダミン標識アルブミンを調製した。3種類の混合脂質(表5)をそれぞれ30mgに1mLの3g/dLのローダミン標識アルブミンを混合し6時間水和後、高圧押出法(最終孔径0.22μm)にて粒径を制御した。その後超遠心分離(100,000 x g,30min)にて未内包TRITC標識アルブミンを除去し、HEPES緩衝液にて再分散しTRITC標識アルブミン内包リポソームを調製した。
調製したTRITC標識アルブミン内包リポソーム物性を測定した。調製したリポソーム(脂質濃度1mg/mL)のpH7.4でのζ電位を測定した(表5)。スペーサー導入カチオン性脂質を導入したリポソームcが最もζ電位が高く、スペーサーによってカチオン部がより外側に位置していることが示された。また、HPLC(カラム:Shodex protein KW-803,溶離液:PB(pH7.0)/methanol 10/1(V/V),検出:UV 280nm)にて内包rHSAの濃度を測定し、リポソームのrHSA内包効率及び内包率を算出した。
【表5】
JP0005403324B2_000027t.gif
調製したリポソームのrHSA内包効率及び内包率を表5に示した。rHSAは表面がアニオン性のタンパク質であるため、リポソームのζ電位が大きくなるほど、多くのrHSAを内包できたものと考察される。
【実施例11】
【0016】
アルブミン内包リポソームの細胞内導入
COS-1(サル腎臓由来株化細胞)を2×10cellsガラスボトムディッシュに播種し、24時間後にリポソームを脂質濃度2μg/mLで1mL添加した。4時間培養後、PBSにて2回洗浄し、Hoechst 33342にて核、LysoTracker(150nM)にてエンドソームをそれぞれ染色し細胞導入動態を共焦点顕微鏡にて観察した。
コントロールリポソームa(DOPC/chol/PEG-Glu2C18)に関しては細胞内にTRITC-rHSAがほとんど観察されなかった(図6、左パネル)。細胞に取込まれるリポソーム量が少なかったためと考察される。
次に、カチオン性脂質を膜成分としたリポソームb(DOPC/chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18)では、細胞内に多くのTRITC-rHSAが観察された(図6、中央パネル)。しかしエンドソームとの局在が一致するものも多く観察された。
リポソームc(DOPC/chol/カチオン性脂質/PEG-Glu2C18)では、リポソームbよりもTRITC-rHSAがより多く導入された様に考えられた(図6、右パネル)。これは、リポソームb及びcにおいては、HEPES分散媒中ではζ電位はそれほど変わらないが、細胞添加中ではカチオン性脂質の親水部が細胞表面に吸着しやすく細胞内導入量が増したことを示すものであると考えられた。
【実施例12】
【0017】
スペーサー導入カチオン性脂質の合成
JP0005403324B2_000028t.gif 上記スキームに示すように、Lys-(CH-Glu2C16(6)、Lys-(CH-Glu2C16(5)、Lys-(CH-Glu2C16(7)、及びLys-(CH11-Glu2C16(8)の合成を行った。以下に、これら各脂質の合成方法を具体的に説明する。
(A)Lys-(CH-Glu2C16)の合成法
NH-(CH-COOH(5.00g、48.5mmol)と(BOC)O(11.6g、53.4mmol)とトリエチルアミン(5.39g、53.4mmol)をメタノール200mLに溶解し、60℃にて12時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧除去し、酢酸エチル100mLに再溶解させ、0.2mol/l HClで2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、ヘキサン4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収し、Boc-NH-(CH-COOH(6.98g、34.4mmol、収率71%)を得た。
Boc-NH-(CH-COOH(0.751g、3.70mmol)とBOP(1.96g、4.07mol)をジクロロメタン100mLに溶解し1時間室温にて攪拌後、ジアシルグルタミン酸誘導体(、2.00g、3.36mmol)とトリエチルアミン(373mg、3.70mmol)を添加しさらに12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌する。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、NH-(CH-Glu2C16を得た(1.33g、1.95mmol、収率58%)。
NH-(CH-Glu2C16(1.00g、1.47mmol)とBoc-Lys(Boc)OSu(719mg、1.62mmol)とトリエチルアミン(164mg、1.62mmol)をジクロロメタン100mLに溶解後、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、カチオン性脂質を得た(680mg、0.838mmol、収率57%)。
カチオン性脂質の分析結果は、以下の通りであった。
H-NMR(CDCl,500MHz,δppm):0.88(t,6H,CHCH);1.20-1.34(br,54H,CH),1.42-1.52(m,2H,NHCHCHCHCO),1.54-1.71(m,6H,OCOCHCH,NHCHCH)1.76-1.86(m,2H,NHCH(CO)CH),1.98-2.13(m,2H,CONHCHCH),2.28(t,2H,NHCOCH),2.35-2.47(m,2H,CHCOO),2.92(t,2H,NHCH),3.25-3.30(m,2H,CONHCH),3.43-3.47(m,1H,NHCH),4.05-4.12(m,4H,COOCH),4.50-4.57(m,1H,CONHCH),7.36(d,1H,CHNH),7.82(t,1H,CHNH).MS(ESI):(M+H)calcd.for C4792,809.7;found,809.9.
(B)Lys-(CH-Glu2C16)の合成法
NH-(CH-COOH(5.00g、38.2mmol)と(BOC)O(9.16g、42.0mmol)とトリエチルアミン(4.24g、42.0mmol)をメタノール200mLに溶解し、60℃にて12時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧除去し、酢酸エチル100mLに再溶解させ、0.2mol/l HClで2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、ヘキサン4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収し、Boc-NH-(CH-COOH(6.35g、27.5mmol、収率72%)を得た。
Boc-NH-(CH-COOH(0.855g、3.70mmol)とBOP(1.96g、4.07mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し1時間室温にて攪拌後、ジアシルグルタミン酸誘導体(、2.00g、3.36mmol)とトリエチルアミン(373mg、3.70mmol)を添加しさらに12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌する。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、NH-(CH-Glu2C16を得た(1.13g、1.61mmol、収率48%)。
NH-(CH-Glu2C16(1g、1.42mmol)とBoc-Lys(Boc)OSu(693mg、1.56mmol)とトリエチルアミン(158mg、1.56mmol)をジクロロメタン100mLに溶解後、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、カチオン性脂質を得た(419mg、0.497mmol、収率35%)。
カチオン性脂質の分析結果は、以下の通りであった。
H-NMR(CDCl,500MHz,δppm):0.88(t,6H,CHCH);1.20-1.35(br,58H,CH),1.40-1.51(br,4H,CONHCHCH,NHCHCH)1.52-1.68(m,6H,OCOCHCH,NHCH(CO)CH),1.81-1.99(m,2H,CONHCHCH),2.13-2.25(br,2H,NHCOCH),2.33-2.41(m,2H,CHCOO),2.90-2.98(br,2H,NHCH),3.16-3.25(br,2H,CONHCH),3.75-3.90(m,1H,NHCH),4.02-4.13(m,4H,COOCH),4.53-4.56(m,1H,CONHCH),7.09(d,1H,CHNH),8.19(t,1H,CHNH).MS(ESI):(M+H)calcd.for C4996,837.7;found,837.8.
(C)Lys-(CH-Glu2C16)の合成法
NH-(CH-COOH(5.0 0g、31.4mmol)と(BOC)O(7.52g、34.5mmol)とトリエチルアミン(3.48g、34.5mmol)をメタノール200mLに溶解し、60℃にて12時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧除去し、酢酸エチル100mLに再溶解させ、0.2mol/l HClで2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、ヘキサン4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収し、Boc-NH-(CH-COOH(5.93g、22.9mmol、収率73%)を得た。
Boc-NH-(CH-COOH(0.958g、3.70mmol)とBOP(1.96g、4.07mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し1時間室温にて攪拌後、ジアシルグルタミン酸誘導体(、2.00g、3.36mmol)とトリエチルアミン(373mg、3.70mmol)を添加しさらに12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌する。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、NH-(CH-Glu2C16を得た(1.37g、1.88mmol、収率56%)。
NH-(CH-Glu2C16(1g、1.37mmol)とBoc-Lys(Boc)OSu(670mg、1.51mmol)とトリエチルアミン(153mg、1.51mmol)をジクロロメタン100mLに溶解後、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、カチオン性脂質を得た(534mg、0.617mmol、収率45%)。
カチオン性脂質の分析結果は、以下の通りであった。
H-NMR(CDCl,500MHz,δppm):0.88(t,6H,CHCH);1.14-1.34(br,60H,CH),1.40-1.52(br,2H,NHCOCHCH)1.54-1.70(m,8H,OCOCHCH,NHCHCH,CONHCHCH),1.75-1.82(m,2H,NHCH(CO)CH),1.92-2.24(m,2H,CONHCHCH),2.21(t,2H,NHCOCH),2.30-2.46(m,2H,CHCOO),2.85(t,2H,NHCH),3.16-3.24(m,2H,CONHCH),3.34-3.76(m,1H,NHCH),4.02-4.15(m,4H,COOCH),4.57-4.61(m,1H,CONHCH),6.47(d,1H,CHNH),7.52(t,1H,CHNH).MS(ESI):(M+H)calcd.for C51100,865.8;found,866.1.
(D)Lys-(CH11-Glu2C168)の合成法
NH-(CH11-COOH(5.0 0g、23.3mmol)と(BOC)O(5.58g、25.6mmol)とトリエチルアミン(2.59g、25.61mmol)をメタノール200mLに溶解し、60℃にて12時間攪拌した。反応終了後、メタノールを減圧除去し、酢酸エチル100mLに再溶解させ、0.2mol/l HClで2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、ヘキサン4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収し、Boc-NH-(CH11-COOH(6.17g、19.6mmol、収率84%)を得た。
Boc-NH(CH11-COOH(1.17g、3.70mmol)とBOP(1.96g、4.07mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し1時間室温にて攪拌後、ジアシルグルタミン酸誘導体(、2.00g、3.36mmol)とトリエチルアミン(373mg、3.70mmol)を添加しさらに12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌する。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、NH-(CH11-Glu2C16を得た(1.09g、1.41mmol、収率42%)。
NH-(CH11-Glu2C16(1.00g、1.29mmol)とBoc-Lys(Boc)OSu(630mg、1.42mmol)とトリエチルアミン(143mg、1.42mol)をジクロロメタン100mLに溶解後、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水した。その後、メタノール4℃にて再結晶を行い、グラスフィルター(G6)で回収した。精製物を回収し、溶媒を除去後、トリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム飽和水溶液で2回、水で2回分液し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、カチオン性脂質を得た(617mg、0.670mol、収率54%)。
カチオン性脂質の分析結果は、以下の通りであった。
H-NMR(CDCl,500MHz,δppm):0.88(t,6H,CHCH);1.14-1.34(br,68H,CH),1.40-1.52(br,2H,NHCOCHCH)1.52-1.71(m,8H,OCOCHCH,NHCHCH,CONHCHCH),1.78-1.86(m,2H,NHCH(CO)CH),1.94-2.24(m,2H,CONHCHCH),2.21(t,2H,NHCOCH),2.30-2.46(m,2H,CHCOO),2.80(t,2H,NHCH),3.10-3.24(m,2H,CONHCH),3.33-3.40(m,1H,NHCH),4.02-4.14(m,4H,COOCH),4.58-4.62(m,1H,CONHCH),7.60(d,1H,CHNH),8.21(t,1H,CHNH).MS(ESI):(M+H)calcd.for C55108,1026.8;found,1026.9.
【実施例13】
【0018】
Lys-PEG-DHSG(化合物9)の合成法
JP0005403324B2_000029t.gif 上記スキームに示すように、化合物の合成を行った。以下に、これら各脂質の合成方法を具体的に説明する。
ジアシルグルタミン酸誘導体(3.5g、5.87mmol)と無水コハク酸(0.88g、8.8mmol)をジクロロメタン25mL、テトラヒドロフラン25mLに溶解し12時間室温にて攪拌後。反応終了後、反応溶液を300mLのアセトンに滴下して4℃で再結晶し、濾過後乾燥してDHSGを得た(3.47g、4.99mmol、収率85%)。
DHSG(1.66g、2.39mmol)及びBOP(1.12g、2.82mmol)をジクロロメタン100mLに溶解し、1時間室温にて攪拌後、Trt-(PEG)-NH(1.0g、2.16mmol)及びトリエチルアミン(0.24mg、2.37mmol)を添加し、さらに12時間攪拌した。反応終了後、カラム(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製した。得られた精製物にトリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、カラム(クロロホルム/メタノール=5/1)で精製し、NH-(PEG)-DHSGを得た(0.66g、0.73mmol、収率34%)。
NH-(PEG)-DHSG(0.50g、0.56mmol)とBoc-Lys(Boc)OSu(0.28g、0.62mmol)とトリエチルアミン(0.063g、0.62mmol)をジクロロメタン50mLに溶解後、室温にて12時間攪拌した。反応終了後、カラム(クロロホルム/メタノール=20/1)で精製した。さらに、得られた精製物にトリフルオロ酢酸5mL加えて、4℃にて2時間攪拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、ジエチルエーテルを加え、沈殿した結晶をグラスフィルター(G6)にて回収した。回収した結晶を、NaOHを敷き詰めたデシケーター内に5時間静置し、化合物(Lys-PEG-DHSG)(0.23mg、0.22mmol、収率39%)を得た。
化合物の分析結果は、以下の通りであった。
H-NMR(CDCl/MeOD=4/1,500MHz,δppm):0.88(t,6H,CHCH);1.14-1.34(br,52H,CH),1.46-1.52(br,2H,CHCHCH)1.58-1.66(m,4H,OCOCHCH),1.69-1.81(m,6H,NHCH(CO)CH,CONHCHCH),1.82-1.89(m,2H,NHCHCH),1.93-2.19(m,2H,CONHCHCH),2.33-2.41(m,2H,CHCOO),2.45-2.55(m,2H,NHCOCH),2.96(t,2H,NHCH),3.25-3.34(m,4H,CONHCH),3.50-3.65(br,12H,OCH),3.88-3.92(m,1H,NHCH),4.02-4.15(m,4H,COOCH),4.46-4.51(m,1H,CONHCH),6.27(d,1H,CHNH),7.35(t,1H,CHNH).MS(ESI):(M+H)calcd.for C51100,922.1;found,921.8.
【実施例14】
【0019】
リポソームの調製
実施例12及び13において合成した各カチオン性脂質等と、Dioleylphosphatidylcholine(DOPC)、cholesterol(chol)及びPEG-Glu2C18とを、下記表6に記載のモル比で混合した後、tert-ブチルアルコールに溶解し、凍結乾燥して混合脂質を調製した。調製した混合脂質30mgを、HEPES緩衝液(pH7.4)1.5mLに6時間水和し、Extrusion法(最終孔径0.22μm)により粒子径約250nmのリポソームを調製した。
【表6】
JP0005403324B2_000030t.gif
JP0005403324B2_000031t.gif リポソーム物性
調製したカチオン性リポソームの粒子径及びζ電位の測定を行った。粒子径測定は、脂質濃度30μMの粒子径を動的光散乱法により測定した。ζ電位は、HEPES緩衝液(pH7.4)でリポソーム分散液を希釈し、30μM時のζ電位を測定した。これらの結果を表7に示した。
【表7】
JP0005403324B2_000032t.gif
スペーサーが無いカチオン性脂質をリポソーム膜成分とした場合(I)、ζ電位は+2.4mVであったのに対し、スペーサーとしてアルキル基を導入するとζ電位が増加した(II~V)。アルキルの鎖長が0→3→5と増加するとζ電位は増加したが、5→7→11と増加した場合は減少した。次に、ポリオキシエチレン型のスペーサーを導入した場合には、ζ電位が最も高くなった(VI)。比較として、遺伝子運搬体として汎用されているDOTMAを利用した場合、そのリポソームのζ電位は14.6mVであった(VII)。スペーサーの導入によってζ電位が変化し、また、スペーサーの長さや種類にも関係することが明らかとなった。
次に、調製したカチオン性リポソームの生体膜への融合度を測定した。生体膜モデルとしてDOPC/DOPS/chol(モル比:3/0.3/1)からなるリポソームに、蛍光脂質NBD-PE及びRho-PEを導入し、FRETの解消度から融合率を算出した。100mMの生体膜モデルリポソームと100mMカチオン性リポソームとを37℃で混合し、5分後の蛍光強度(励起:460nm、蛍光:534nm)と0.1%Triton-Xを添加したときの蛍光強度とから融合率を算出した。この結果を図7に示した。
図7に示すように、スペーサーが炭素数7のアルキル型であるカチオン性脂質で、最も融合度が高くなった(IV)。一方、ポリオキシエチレン型のスペーサーを導入したカチオン性脂質からなるリポソームは、ζ電位が大きかったものの融合度は低かった(VI)。
【実施例15】
【0020】
pDNA内包リポソームの調製
実施例12及び13において調製したカチオン性リポソーム等にpDNA(4045bp)の内包を試みた(下記スキームA参照)。90vol%エタノール(1mL)に混合脂質を溶解し、同量の20mM PB緩衝液(pH5)に、分散させたpDNAを混合した。次いで、攪拌しながら、2mLの300mM NaClを滴下し、さらに1時間攪拌混合した。その後、アニオン交換クロマトグラフィーにより、リポソーム表面に静電結合するpDNAを除去した。超遠心分離(1,600,000 x g)で遠心し、その後PBSにて再分散した。調製したpDNA内包リポソームの物性を、表8に示した。
スキームA
JP0005403324B2_000033t.gif【表8】
JP0005403324B2_000034t.gif
TEMによる観察
調製したpDNA内包リポソームをTEMにより観察した。脂質濃度700μMのリポソーム分散液3μLを銅グリッド上に置き、3分間静置した。その後に余分な水分をフィルター紙で吸い取り、3μLリンタングステン酸ナトリウム水溶液を滴下した。3分間静置後、フィルター紙で水分を吸い取り、測定用サンプルとした。このTEMによる観察結果を、図8に示した。
図8に示すように、リポソームVIを除くすべてのリポソームで、小胞体構造を有する集合体が観察された。一方、リポソームVIでは、小胞体構造以外にチューブ状の構造も見られた。
ゲル電気泳動によるpDNAの内包の確認
カチオン性リポソームへのpDNAの内包を、ゲル電気泳動により確認した。pDNA内包リポソームにDNaseを混合し、37℃で1時間インキュベーションし、その後、pDNAをクロロホルム抽出して、1%アガロースゲルで1時間電気泳動を行った。その結果を図9に示した。
pDNA単独又はカチオン性リポソームとpDNAとのコンプレックスは、DNaseによる分解が認められた。一方、pDNA内包リポソームでは、DNase添加時においてもpDNAのバンドが見られたことから、pDNAが内包されていることが確認された。
遺伝子発現効率
pDNA内包リポソームの遺伝子発現効率を算出した。COS-1細胞を1 x 10個96ウェルプレートに播種し、12間後にpDNA内包リポソームをpDNA濃度で2μg/mL添加した。72時間後に2回PBSで洗浄し、細胞を可溶化した。可溶化液20μLにルシフェリンを100μL添加し、発光強度(RLU)を測定した。さらに、細胞可溶化液の5μLのタンパク質濃度を測定し、遺伝子発現効率(RLU/Protein)を算出した。この結果を、図10に示した。
図10に示すように、遺伝子発現効率は、リポソームIVで最大の値となった。アルキルスペーサーの鎖長が0から7となると遺伝子発現が高くなった。しかし、アルキル鎖長が11となると著しく遺伝子発現効率が低下した。ポリオキシエチレン型のスペーサーを用いた場合(リポソームVI)、ζ電位は大きいものの、遺伝子発現はそれほど大きくならなかった。遺伝子発現は、細胞膜への融合率と導入効率に関与しているものと考えられた。
【実施例16】
【0021】
カチオン性脂質の遺伝子導入用試薬への使用の検討
遺伝子導入用試薬としてのカチオン性脂質としての使用を検討した。膜融合性脂質であるDOPEとカチオン性脂質との混合膜からなるカチオン性リポソームを調製した。混合膜のカチオン性脂質膜導入量を20,30,40,50mol%とした混合脂質15mgを1.5mLのHEPES緩衝液(pH7.4)に分散させ、プローブ型超音波装置にて粒子径約100nmのリポソームを調製した。動的光散乱法によって粒子径を測定した。その結果を表9に示した。なお、表中、Aはカチオン性脂質、カチオン性脂質、Bはカチオン性脂質、Cはカチオン性脂質、Dはカチオン性脂質である。
【表9】
JP0005403324B2_000035t.gif
次に、調製したカチオン性リポソームのζ電位測定を行った。その結果を表10に示した。表中のA~Dは、表9と同様である。
【表10】
JP0005403324B2_000036t.gif
スペーサーが長くなるにしたがってゼータ電位が大きくなる傾向があり、しかしスペーサー含有脂質ではと比較してややゼータ電位が小さくなった。それぞれの膜含有量を比較すると、含有量が多くなるにつれて、ゼータ電位も大きくなる傾向があった。
遺伝子発現量の定量
調製したカチオン性リポソームの遺伝子運搬能評価として、ルシフェラーゼ発現プラスミドベクター(phRL-TK)を用いてルシフェラーゼアッセイにより発現量を算出した(n=3)。
実験プロトコールは以下の通り行った。トランスフェクションしたDNA量はすべて200ngとした。培地100μL中1 x 10個/wellのCOS-1細胞を96穴プレートに播種し、COインキュベーター内で12時間培養した。脂質とプラスミドDNAとの複合体(脂質/pDNA複合体)を10分間静置し、培地で希釈して細胞に添加した。その後COインキュベーター内で24時間培養した。培地を除き、PBS(-)で2回洗浄した後、MilliQ水で5倍希釈した溶解バッファーを培地に加え(25μl/well)、細胞を可溶化した。軽く撹拌し、室温で15分間静置した。細胞溶液20μLにセレンテラジン溶液100μLを添加し、ルミノメーターで発光強度を測定した。この結果を、図11に示した。
図11に示すように、スペーサー含有脂質を膜成分とした際に、高い発現効率が得られた(図中B)。最も高い発現効率が得られた条件は、DOPE/脂質=6/4(mol ratio)から成るカチオン性リポソームで、プラスミドDNAとの混合比が10/1(w/w)の時であった。スペーサーを導入していない脂質あるいはスペーサー含有脂質dを膜成分とした際では、膜含有量、混合比等を変化させても遺伝子発現レベルは低い(図中A,D)。スペーサー含有脂質では、遺伝子発現に至ったもののスペーサー含有脂質には劣る。つまりDOPEとの混合膜からなるリポソームにおけるスペーサー脂質の構造はであることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明により、アミノ酸由来のカチオン性官能基を有する複合脂質を含む組成物を含有する、細胞へのタンパク質又は遺伝子導入用試薬が提供される。
タンパク質や遺伝子を外部から細胞内に導入し細胞の形質転換をする技術は、バイオテクノロジーや細胞治療などへの応用が期待され注目されている。タンパク質導入の場合、導入されたタンパク質は継続的に複製されることはないが、一過性の発現でも十分な機能が発揮されるタンパク質を対象とすれば本発明は極めて有用な技術となる。
本発明において使用されるカチオン性アミノ酸型脂質は、原料の調達及び合成が容易であるため、安価で且つ大量に合成が可能である。本発明において使用されるカチオン性脂質は、単独あるいは複数の化合物から構成される組成物として用いられる。組成物は相溶した状態の無定形でもよい。本発明の好ましい態様によれば、これらの組成物は、ミセル、リピッドマイクロスフェア、リポソーム等の水性媒体に分散している分子集合体の構成成分に用いてもよいし、当該分子集合体の分散液を乾燥させたものでもよい。この態様によって、細胞に対する親和性を高め、極めて細胞内移行性の高い試薬として使用することができる。
また、本発明において使用されるカチオン性アミノ酸型脂質の中でも、リジン型脂質(アミノ酸型脂質)は、リポソーム形成能が高いためタンパク質又は遺伝子を安定に内包させることができる。
リジン型脂質はエンドソーム内の低pH環境下でリジン残基の側鎖にあるアミノ基がより正電荷を帯びるため、エンドソーム内でのプロトンスポンジ効果や、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスフォエタノールアミン(DOPE)と同様にアニオン性に帯電するエンドソーム膜と融合が生じている可能性がある。遺伝子導入の場合、実際、DOPEを混合しなくてもリジン型脂質単独でプラスミドDNAを複合体化させるだけで高効率に遺伝子発現を示すことが明らかとなっており、また、このリジン型脂質を用いた遺伝子導入系では、血清中での遺伝子発現効率の低減が見られないのも特徴である。
さらに、前記アミノ酸型脂質は生分解性が高く、分解物はアミノ酸又はその誘導体あるいは長鎖アルコール等であるため、低毒性である。
従って、本発明の試薬は、タンパク質又は遺伝子の細胞内導入用として極めて有用なものである。
図面
【図7】
0
【図10】
1
【図11】
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【図1】
3
【図2】
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【図3】
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【図4】
6
【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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