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明細書 :生体組織切断・接着用装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5316944号 (P5316944)
公開番号 特開2010-207385 (P2010-207385A)
登録日 平成25年7月19日(2013.7.19)
発行日 平成25年10月16日(2013.10.16)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 生体組織切断・接着用装置
国際特許分類 A61B  18/04        (2006.01)
H01L  35/30        (2006.01)
FI A61B 17/38 310
H01L 35/30
請求項の数または発明の数 2
全頁数 11
出願番号 特願2009-056483 (P2009-056483)
出願日 平成21年3月10日(2009.3.10)
審査請求日 平成24年3月8日(2012.3.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】山口 栄雄
個別代理人の代理人 【識別番号】110000545、【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
審査官 【審査官】宮部 愛子
参考文献・文献 特開2008-141161(JP,A)
特開2007-311440(JP,A)
特開昭64-59876(JP,A)
特表2004-534386(JP,A)
特開平1-214073(JP,A)
特開2006-129659(JP,A)
特開平11-23091(JP,A)
特開2002-151750(JP,A)
国際公開第2006/046590(WO,A1)
特開2008-28293(JP,A)
特開平6-97512(JP,A)
調査した分野 A61B 18/04
H01L 35/30
特許請求の範囲 【請求項1】
対向させて配置したものでそれぞれ異なる特性を有する素材から成る第1の半導体部及び第2の半導体部と、これらの第1及び第2の半導体部のそれぞれに配置された第1及び第2の電極兼熱交換部と、前記第1の半導体部と前記第2の半導体部との間に介在されて前記第1の半導体部と前記第2の半導体部とを接合するもので熱伝導性を有する接合部と、前記第1の電極兼熱交換部と前記第2の電極兼熱交換部とにそれぞれ配置された第1及び第2の電極とから少なくとも構成され、前記接合部には前記第1の半導体部及び前記第2の半導体部の端よりも外部に突出した切断・接着用部位が形成されていると共に、
前記第1の半導体部及び前記第2の半導体部に直流電流を供給する電流源を有する電気回路と、液状の熱交換媒体が循環して流れる熱交換媒体循環路と、この熱交換媒体循環路上に配置されて液状の熱交換媒体の送出を行うポンプと、前記熱交換媒体循環路上に配置されて液状の熱交換媒体を一時的に貯める貯液槽とを有し、
前記熱交換媒体循環路は、前記第1の電極兼熱交換部及び前記第2の電極兼熱交換部の内部を通過する経路が採られていることを特徴とする生体組織切断・接着用装置。
【請求項2】
前記電気回路は、前記電流源から前記電極に流れる電流の向きを正逆自由に切り換えることができる電流切換え手段を有することを特徴とする請求項1に記載の生体組織切断・接着用装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、外科手術等の医療措置における人体細胞等の生体組織の切断・接着についてペルチェ効果を利用して行う装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
外科手術等の医療措置で人体細胞等の生体組織の切断を行う場合において、発熱による止血を図ると共に処置箇所周辺の生体組織への熱影響を抑制することの双方を目的とした手術装置は、例えば特許文献1等に示されるように既に公知である。この特許文献1に示される手術装置は、処置箇所を熱して止血、組織接着をなすものでメス部と熱吸収部とからなる作用部と、この作用部へエネルギーを供給するもので光源及びこの光源からメス部に照射される光線の導路を備えた駆動部と、これら作用部及び駆動部の一部を収納する筐体とで構成されたものとなっている。
【0003】
また、ペルチェ(peltier)効果による冷却及び加熱を利用して、針部の先端部を加熱したり冷却したりするペルチェモジュールが、例えば特許文献2等に示されるように、本願の出願人等により既に公知となっている。この特許文献2に示されるペルチェモジュールは、所定の間隔を空けるかたちで対向させて配置した第1の半導体プレート及び第2の半導体プレートと、この第1の半導体プレートと第2の半導体プレートとの間に介在してこれらの第1の半導体プレートの内面のうち長手方向の一方端側及び第2の半導体プレートの内面のうち長手方向の一方端側とを接続する接合部と、第1の半導体プレートと第2の半導体プレートとについて、外面のうち長手方向の接合部とは反対側端に配置された電極とで構成され、接合部には第1の半導体プレート及び第2の半導体プレートの長手方向に沿って突出した針部が設けられたものとなっている。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2008-17917号公報
【特許文献2】特開2008-141161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示される手術装置では、メス部の加熱をするための機構として光源、光源の導路及び光反射防止層を必要とし、メス部の消熱をするための機構として熱吸収部を必要とするものであり、メス部の加熱用、消熱用として個別に構成を採らなければならないので、部品点数の相対的な増大、これに基づく製造コストの相対的な上昇、並びに形態の小型化の困難性を招くという不具合を有する。
【0006】
これに対し、特許文献2に示されるペルチェモジュールは、ペルチェ効果として、加熱及び冷却の双方の機能を1つの機構に持たせることができるもので上記不具合を有しないところ、消費電力に対して吸熱することのできる熱量が少なく、大きな吸熱量を得るためには大容量の電源が必要となるもので、切断・接着用部位の冷却をしようとしても、図6及び図7に示されるように、10A又は20Aの電源での切断・接着用部位の計測温度が最低でも0℃以上に留まりさほど低くならないものである。
【0007】
また、特許文献2に示されるペルチェモジュールでは、20Aの電源を用いた場合でも、切断・接着用部位が約30℃から所望の温度の200℃まで上昇するのに要する時間が図8に示されるように実験結果では5.6秒であるが、切断・接着用部位が加熱状態の温度の200℃強から約30℃まで下降するのに要する時間は、図9に示されるように実験結果では4.8秒と、相対的に経過時間が長いものとなっている。
【0008】
そこで、本発明は、ペルチェ効果を利用して切断・接着用部位の加熱と冷却とを行うにあたり、切断・接着用部位の計測温度を冷却時に相対的に低くすることができ、切断・接着用部位が所定の温度まで下降するための時間の短縮化も図ることができる生体組織切断・接着用装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る生体組織切断・接着用装置は、対向させて配置したものでそれぞれ異なる特性を有する素材から成る第1の半導体部及び第2の半導体部と、これらの第1及び第2の半導体部のそれぞれに配置された第1及び第2の電極兼熱交換部と、前記第1の半導体部と前記第2の半導体部との間に介在されて前記第1の半導体部と前記第2の半導体部とを接合するもので熱伝導性を有する接合部と、前記第1の電極兼熱交換部と前記第2の電極兼熱交換部とにそれぞれ配置された第1及び第2の電極とから少なくとも構成され、前記接合部には前記第1の半導体部及び前記第2の半導体部の端よりも外部に突出した切断・接着用部位が形成されていると共に、前記第1の半導体部及び前記第2の半導体部に直流電流を供給する電流源を有する電気回路と、液状の熱交換媒体が循環して流れる熱交換媒体循環路と、この熱交換媒体循環路上に配置されて液状の熱交換媒体の送出を行うポンプと、前記熱交換媒体循環路上に配置されて液状の熱交換媒体を一時的に貯める貯液槽とを有し、前記熱交換媒体循環路は、前記第1の電極兼熱交換部及び前記第2の電極兼熱交換部の内部を通過する経路が採られていることを特徴としている(請求項1)。ここで、第1及び第2の半導体部は、温熱を発生させる温熱源及び/又は冷熱を発生させる冷熱源として機能するものである。第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部は、熱交換媒体との熱交換により放熱することでこの第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部と接する第1及び第2の半導体部、ひいては接合部を冷却することが可能であるのみならず、熱交換媒体との熱交換により吸熱することでこの第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部と接する第1及び第2の半導体部、ひいては接合部を加熱することも可能である。液状の熱交換媒体は、第1及び第2の半導体部、ひいては切断・接着用部位の冷却用及び/又は加熱用として用いられるもので、液状の熱交換媒体の種類としては例えば水等が挙げられる。また、切断・接着用部位は、先端が鋭利なメスやナイフ等の刃体状をなしていても、細い棒体とその先端が錐状に尖った部分とからなる針状をなしていても良い。電流源は、実験では10Aと20Aとのものを用いたがこれらのアンペア数のものに限定されない。
【0010】
これにより、生体組織切断・接着用装置を構成する第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部内を液状の熱交換媒体が通過するので、切断・接着用部位の冷却を図る場合には、相対的に温度の低い熱交換媒体について熱交換媒体循環路内を循環させることにより、ペルチェ効果による冷却以外に熱交換媒体との熱交換でも第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部が冷却されるので冷却能力を向上させることができる。反対に、切断・接着用部位の加熱を図る場合には、相対的に温度の高い熱交換媒体について熱交換媒体循環路内を循環させることにより、ペルチェ効果による加熱以外に熱交換媒体との熱交換でも第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部が加熱されるので加熱能力を向上させることもできる。
【0011】
そして、この発明に係る生体組織切断・接着用装置では、前記電気回路は、前記電流源から前記電極に流れる電流の向きを正逆自由に切り換えることができる電流切換え手段を有することを特徴としている(請求項2)。電流切換え手段は、スイッチ等のハードウエア的なものであっても、ソフトウエア的なものであっても良い。
【0012】
これにより、例えば第1の半導体部をN型半導体とし、第2の半導体をP型半導体とし、電気回路の電流の向きを第1の半導体部から第2の半導体部に流れるようにした場合には、接合部の一部をなす切断・接着用部位に対しペルチェ効果による吸熱作用で対象物を冷却することができ、電流切換え手段で電気回路の電流の向きを第2の半導体部から第1の半導体部に流れるように逆にした場合には、接合部の一部をなす切断・接着用部位に対しペルチェ効果による発熱作用で対象物を加熱することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部内を液状の熱交換媒体が通過する熱交換媒体循環路を有するので、切断・接着用部位の冷却を図る場合には、相対的に温度の低い熱交換媒体について熱交換媒体循環路内を循環させることにより、熱交換媒体との熱交換で第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部が冷却されてその冷却能力がペルチェ効果による冷却のみよりも相対的に向上するため、第1の半導体部及び第2の半導体部ひいては接合部の冷却をより一層図ることができるので、更に切断・接着用部位が冷却されることから、相対的に短時間で且つ相対的に低い温度まで、切断・接着用部位を冷却することができる。また、切断・接着用部位の加熱を図る場合には、相対的に温度の高い熱交換媒体について熱交換媒体循環路内を循環させることにより、熱交換媒体との熱交換で第1の電極兼熱交換部及び第2の電極兼熱交換部が加熱されてその加熱能力がペルチェ効果による加熱のみよりも相対的に向上するため、第1の半導体部及び第2の半導体部ひいては接合部の加熱をより一層図ることができるので、更に切断・接着用部位が加熱されることから、相対的に短時間で且つ相対的に高い温度まで切断・接着用部位を加熱することもできる。もっとも、相対的に温度の低い熱交換媒体について熱交換媒体循環路内を循環させたままの場合でも、ペルチェ効果を利用して切断・接着用部位を所定の温度まで加熱することは可能である。
【0014】
また、この発明によれば、例えば第1の半導体部をN型半導体とし、第2の半導体をP型半導体として、電気回路の電流の向きを第1の半導体部から第2の半導体部に流れるようにした場合には、接合部の一部をなす切断・接着用部位に対しペルチェ効果による吸熱作用で対象物を冷却することができ、電流切換え手段で電気回路の電流の向きを第2の半導体部から第1の半導体部に流れるように逆にした場合には、接合部の一部をなす切断・接着用部位に対しペルチェ効果による放熱作用で対象物を加熱することができるので、この発明に係る生体組織切断・接着用装置について、止血しつつ生体組織を切断する目的にも、周囲の細胞を生かしたまま生体組織を切断する目的にも用いることができ、汎用性を持たせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、この発明に係る生体組織切断・接着用装置の一例を示した概略図であり、図1(a)は、同上の生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位、電気回路、熱交換媒体の循環路を説明するための図面、図1(b)は、同上の生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位の変形例を示すための図面である。
【図2】図2は、同上の生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を10Aとした場合の切断・接着用部位における温度変化を示す特性線図である。
【図3】図3は、同上の生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を20Aとした場合の切断・接着用部における温度変化を示す特性線図である。
【図4】図4は、同上の生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を20Aとした場合の切断・接着用部位が所定温度まで上昇するのに要する時間を示す特性線図である。
【図5】図5は、同上の生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を20Aとした場合の切断・接着用部位が所定温度まで下降するのに要する時間を示す特性線図である。
【図6】図6は、従来の熱交換媒体循環路を有しない生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を10Aとした場合の切断・接着用部位における温度変化を示す特性線図である。
【図7】図7は、従来の熱交換媒体循環路を有しない生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を20Aとした場合の切断・接着用部位における温度変化を示す特性線図である。
【図8】図8は、従来の熱交換媒体循環路を有しない生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を20Aとした場合の切断・接着用部位が所定温度まで上昇するのに要する時間を示す特性線図である。
【図9】図9は、従来の熱交換媒体循環路を有しない生体組織切断・接着用装置について電流源のアンペア数を20Aとした場合の切断・接着用部位が所定温度まで下降するのに要する時間を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

【0017】
図1において、この発明に係る生体組織切断・接着用装置の一例が示されており、かかる生体組織切断・接着用装置は、半導体部2及び半導体部3と、接合部4と、電極兼熱交換部5、6と、半導体部2と接合部4との間に介在した導電性ペースト部7a、半導体部3と接合部4との間に介在した導電性ペースト部7b、半導体部2と電極兼熱交換部5との間に介在した導電性ペースト部7c、及び半導体部2と電極兼熱交換部6との間に介在した導電性ペースト部7d、電極兼熱交換部5、6に各々配置された電極8、9により基本的に構成される生体組織切断・接着用装置本体1と、電気回路10と、熱交換媒体循環路11とを備えたものである。

【0018】
このうち、生体組織切断・接着用装置本体1を構成する半導体部2、半導体部3は、相互に異なる特性を有する金属(導体)又は半導体で形成されている。半導体部2は例えばN型BiTeが用いられ、半導体部3は例えばP型Bi0.5Sb1.5Teが用いられている。

【0019】
また、生体組織切断・接着用装置本体1を構成する電極兼熱交換部5、6は、電極として機能すると共に半導体部2、3からの熱を放す放熱手段、熱を吸収して半導体部2、3に伝達する吸熱手段として機能するもので、この実施形態では、厚みが相対的に薄い長尺の直方体形状(プレート形状)をなしている。これに伴い、電極兼熱交換部5、6は、それぞれ相対的に幅の広い略長方形状の面5a、5b又は面6a、6bを有している。更に、電極兼熱交換部5、6は、この実施形態では面5aと面6aとが対向し且つこの面5aと面6aとの間に上記半導体部2、3及び後述する接合部4、導電性ペースト部7a乃至7dが介在可能な寸法での間隔を開けるようにしつつ配置されたものとなっている。

【0020】
そして、電極兼熱交換部5、6の面5a、6a間のうち当該面5a、6aの長手方向の一方側端近傍部位には、後述する接合部8が介在され、面5b、6bのうち当該面5b、6bの接合部4とは反対側の長手方向の端近傍部位には、後述する電極8、9がそれぞれ配置されている。

【0021】
更に、上記生体組織切断・接着用装置本体1を構成する接合部4は、熱伝導性に優れていると共に硬質な素材で形成されているもので、その先端が図1(a)に示されるように、半導体部2、3及び電極兼熱交換部5、6の長手方向に沿った方向の端部より外部に突出し、その突出した先端部部位は手術用メスやナイフ等の先端が鋭利な刃状体の形状をなした切断・接着用部位15となっている。もっとも、この切断・接着用部位15の形状は、この図1(a)に示される形状に限定されず、例えば図1(b)に示されるように、細い棒体とその先端が錐状に尖った部分とからなる針状をなしていても良い。

【0022】
更にまた、接合部4と半導体部2との間には導電性ペースト部7aが層状に介在し、接合部4と半導体部3との間には導電性ペースト部7bが層状に介在していると共に、半導体部2と電極兼熱交換部5との間には導電性ペースト部7cが層状に介在し、半導体部3と電極兼熱交換部6との間には導電性ペースト部7dが層状に介在したものとなっている。

【0023】
そして、上記生体組織切断・接着用装置本体1を構成する電極8、9は、電極兼熱交換部5の面5bと電極兼熱交換部6の面6bとにおいて、その長手方向のうち接合部4とは反対側端の近傍部位に配置されている。これらの電極8、9は金属製のもので、例えばCu電極等が用いられると共に、直流電流を供給する電流源18と配線19等を通じてそれぞれ電気回路10と電気的に接続されている。この電流源18には、蓄電池、発電機、一般商用電源等が用いられるが、直流電流を供給することができればその種類は問わない。

【0024】
また、この実施形態では、電流源18から供給される電流の向きを正逆自由に切り換えるための変換器20が電気回路10上に配置されている。変換器20は、この実施形態では、電流源18を有する配線部21、電流源18をバイパスする配線部22、23及び、この配線部21と配線部22又は配線部21と配線部23との切り換えを行うスイッチ24、25で構成されたものとなっているが、一例を示したものにすぎず、この構成に限定されないものである。

【0025】
このような構成とすることにより、この発明に係る生体組織切断・接着用装置でも、半導体部2をN型半導体、半導体部3をP型半導体とし、例えば変換器20で電流源18から電極8側に向けて直流電流が流れるように設定した場合には、半導体部2から接合部4、接合部4から半導体部3へと直流電流が流れるため、ペルチェ効果による吸熱作用により接合部4の一部を構成する切断・接着用部位15の温度が低下するので、生体組織切断・接着用装置を周囲の細胞を生かしたまま生体組織を切断する目的で用いることができる。また、例えば変換器20で電流源18から電極5側に向けて直流電流が流れるように設定した場合には、半導体部3から接合部4、接合部4から半導体部2へと直流電流が流れるため、ペルチェ効果による発熱作用により接合部4の一部を構成する切断・接着用部位15の温度が上昇するので、生体組織切断・接着用装置を止血しつつ生体組織を切断する目的で用いることができる。

【0026】
ところで、熱交換媒体循環路11は、水等の液状の熱交換媒体を一時的に貯めることができる貯液槽27と、この貯液槽27から熱交換媒体を汲み上げるポンプ28と、貯液槽27からポンプ28、ポンプ28から貯液槽27へと熱交換媒体を循環させるべく貯液槽27とポンプ28とを適宜配管接合する配管29とを有して構成されている。

【0027】
この配管29は、電極兼熱交換部5内をその長手方向に沿って電極8側から切断・接着用部位15側に向けて延びるかたちで貫通した後、電極兼熱交換部6内をその長手方向に沿って切断・接着用部位15側から電極9側に向けて逆方向に延びるかたちで貫通した部位を有しているもので、少なくとも電極兼熱交換部5内及び半電極兼熱交換部6内では熱伝導性に優れた素材で形成されている。もっとも、電極兼熱交換部5内及び電極兼熱交換部6内に配管29を通す代わりに電極兼熱交換部5及び電極兼熱交換部6に貫通孔を設け、これらの貫通孔と配管29とを接続させたものとしても良い。

【0028】
この発明に係る生体組織切断・接着用装置は、熱交換媒体循環路11を有することにより、相対的に温度の低い水等の液状の熱交換媒体を流した場合には、熱交換媒体との熱交換により電極兼熱交換部5、6が冷却されて半導体部2、3からの放熱能力が相対的に向上するので、半導体部2、3が吸熱・冷却されて、これに伴い切断・接着用部位15も更に冷却され、相対的に温度の高い水等の液状の熱交換媒体を流した場合には、熱交換媒体との熱交換により電極兼熱交換部5、6が加熱されて半導体部2、3への加熱能力が相対的に向上するので、半導体部2、3が加熱されて、これに伴い切断・接着用部位15も更に加熱されることとなる。

【0029】
このことは、図2から図5に示される本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の実験結果と図6から図9に示される特許文献2に係る生体組織切断・接着用装置の実験結果からも導くことができる。

【0030】
すなわち、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置において、約0℃から10℃までの範囲の温度の水が熱交換媒体循環路11内を循環して流れる条件と電流源18のアンペア数を10Aとした条件との下、切断・接着用部位15の温度変化を計測した場合には、図2に示されるように、切断・接着用部位15は、最低温度で約-10℃まで下降し、最高温度で70℃まで上昇するとの結果を得ることができた。

【0031】
また、約0℃から10℃までの範囲の温度の水が熱交換媒体循環路11内を循環して流れる条件と電流源18のアンペア数を20Aとした条件との下、切断・接着用部位15の温度変化を計測した場合には、図3に示されるように、切断・接着用部位15は、最低温度で約-25℃まで下降し、最高温度で175℃まで上昇するとの結果を得ることができた。

【0032】
これにより、電流源18のアンペア数を10Aとした共通条件で、熱交換媒体循環路11を有する本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位15の図2に示す温度変化と、熱交換媒体循環路11を有しない従来例に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位15の図6に示す温度変化とを対比すると、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の方が切断・接着用部位15の最低温度が著しく低くなっている。

【0033】
また、電流源18のアンペア数を20Aとした共通条件で、熱交換媒体循環路11を有する本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位15の図3に示す温度変化と、熱交換媒体循環路11を有しない従来例に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位15の図7に示す温度変化とを対比した場合でも、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の方が切断・接着用部位15の最低温度が著しく低くなっている

【0034】
しかるに、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置は、従来例に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位が冷却時にあっては切断・接着用部位があまり低くならなかったという課題を解決していると認定することができる。

【0035】
しかも、この発明に係る生体組織切断・接着用装置は、熱交換媒体循環路11を有することにより、約0℃から10℃までの範囲の温度の水が熱交換媒体循環路11内を循環して流れる条件と電流源18のアンペア数を20Aとした条件との下、図3で示される最低温度の約-25℃から最高温度の約175℃まで切断・接着用部位15の温度が上昇する時間を計測したところ、図4に示されるように、6.9秒との結果を得ることができた。

【0036】
また、約0℃から10℃までの範囲の温度の水が熱交換媒体循環路11内を循環して流れる条件と電流源18のアンペア数を20Aとした条件との下、今度は反対に、図3で示される最高温度の約175℃から最低温度の約-25℃まで切断・接着用部位15の温度が下降する時間を計測したところ、図5に示されるように、3.0秒との結果を得ることができた。

【0037】
これにより、電流源18のアンペア数を20Aとした共通条件で、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位15と従来例に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位とについて、各々の最低温度から最高温度まで上昇するための時間は、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の方が長いものの、各々の最高温度から最低温度まで下降するための時間は、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置の方が短くなっている。

【0038】
しかるに、本願発明に係る生体組織切断・接着用装置は、従来例に係る生体組織切断・接着用装置の切断・接着用部位が冷却時にあっては切断・接着用部位の所望の温度まで低下する時間が相対的に長いという課題を解決していると認定することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 生体組織切断・接着用装置本体
2 半導体部(第1の半導体部)
3 半導体部(第2の半導体部)
4 接合部
5 電極兼熱交換部
6 電極兼熱交換部
8 電極(第1の電極)
9 電極(第2の電極)
10 電気回路
11 熱交換媒体循環路
15 切断・接着用部位
18 電流源
19 配線
20 変換器(電流切換え手段)
21 配線部
22 配線部
23 配線部
24 スイッチ
25 スイッチ
27 貯液槽
28 ポンプ
29 配管
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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