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明細書 :液晶の加熱測定方法及びこれに用いるサンプルの加熱機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5515033号 (P5515033)
公開番号 特開2012-008235 (P2012-008235A)
登録日 平成26年4月11日(2014.4.11)
発行日 平成26年6月11日(2014.6.11)
公開日 平成24年1月12日(2012.1.12)
発明の名称または考案の名称 液晶の加熱測定方法及びこれに用いるサンプルの加熱機構
国際特許分類 G02F   1/13        (2006.01)
G01N  25/00        (2006.01)
G01N  25/02        (2006.01)
FI G02F 1/13 101
G01N 25/00 K
G01N 25/02 Z
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2010-142340 (P2010-142340)
出願日 平成22年6月23日(2010.6.23)
審査請求日 平成25年5月29日(2013.5.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】太田 和親
審査官 【審査官】右田 昌士
参考文献・文献 特開2012-78285(JP,A)
特開2012-122861(JP,A)
特開2005-345385(JP,A)
特開2004-287368(JP,A)
登録実用新案第3151516(JP,U)
特開2006-119139(JP,A)
特開平2-287128(JP,A)
特開平3-197381(JP,A)
特開平3-131729(JP,A)
調査した分野 G02F 1/13
G01N 25/00 - 25/72
G01K 1/00 - 19/00
特許請求の範囲 【請求項1】
サンプルを付着させて支持するセット部が形成されたサンプルプレートと、該サンプルプレートの裏面に配されるヒータ板とを備え、
前記ヒータ板を加熱し、前記サンプルプレートに支持されたサンプルを所定の設定温度に加熱して測定を行う液晶の加熱測定方法であって、
前記サンプルを所定の設定温度に制御する方法として、
前記サンプルプレートのセット部に、液晶となる温度が既知の液晶材料を供給し、前記ヒータ板により前記サンプルプレートを加熱しながら前記液晶材料の転移点を検知する方法により、前記ヒータ板によるサンプルの加熱温度をあらかじめキャリブレーションする工程を備え、
前記キャリブレーションの結果にしたがって前記ヒータ板による加熱を制御して、前記サンプルプレートにセットされたサンプルの温度を制御することを特徴とする液晶の加熱測定方法。
【請求項2】
前記サンプルの加熱温度をキャリブレーションする工程においては、
液晶となる温度が異なる複数種の液晶材料を前記サンプルプレートに供給し、前記ヒータ板によりサンプルプレートを加熱して、これら複数種の液晶材料についての転移点を検知する方法によってキャリブレーションすることを特徴とする請求項1記載の液晶の加熱測定方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の液晶の加熱測定方法に使用するサンプルの加熱機構であって、
液晶のサンプルを付着させて支持するセット部としての凹部が表面に形成されたサンプルプレートと、
該サンプルプレートの裏面に接して、少なくとも前記セット部が形成された領域を含む範囲に配されるヒータ板とを有するサンプルの加熱部を備えることを特徴とするサンプルの加熱機構。
【請求項4】
前記サンプルの加熱部が、前記サンプルプレートと前記ヒータ板との間に介装され、ヒータ板からの熱をサンプルプレートに伝導させる熱伝導板を備えることを特徴とする請求項3記載のサンプルの加熱機構。
【請求項5】
前記サンプルの加熱部が、該加熱部における温度を検知する温度センサを備え、
前記温度センサに接続される温度検知装置と、前記ヒータ板への通電を制御してサンプルの温度を制御する制御装置とを備えることを特徴とする請求項3または4記載のサンプルの加熱機構。
【請求項6】
前記サンプルの加熱部が、ケーシング内に収納されていることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項記載のサンプルの加熱機構。
【請求項7】
前記ケーシング内において、支持プレートに吊りワイヤを介して前記サンプルの加熱部が吊持されていることを特徴とする請求項6記載のサンプルの加熱機構。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか一項記載のサンプルの加熱機構を備える測定用ホルダと、前記加熱機構に送風して冷却する冷却機構とを備えることを特徴とする液晶の測定装置。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、液晶の加熱測定方法及びこれに用いるサンプルの加熱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶の相構造や配向性等の特性を研究する方法として、X線回折測定や光吸収測定が利用される。液晶は加熱温度によって相構造や配向性等が変わるから、相構造等の特性を測定する場合は、サンプルの液晶を所定の温度に加熱して測定を行う必要がある。
液晶のサンプルを所定温度に加熱して測定を行う方法としては、ヒータブロックにサンプルを支持し、ヒータブロックを加熱してサンプルを加熱する方法(たとえば、特許文献1)、サンプルの周囲に電気炉等の加熱装置を配置して加熱する方法、フィルムヒータを用いてサンプルを加熱する方法(たとえば、特許文献2)等がある。
【0003】
サンプルの温度を制御する方法としては、サンプルホルダ(ヒータブロック等)の温度をセンサを用いて検知し、加熱ヒータの通電を制御する方法が常法として行われている。サーミスタ式の温度計を使用し、ペルチェ式の加熱冷却手段を使用してサンプルを所定温度に制御するといった方法(特許文献3)もある。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開平2-107980号公報
【特許文献2】特開平10-274593号公報
【特許文献3】特開2005-351847号公報
【特許文献4】特開2001-4489号公報
【特許文献5】特開2007-17258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、液晶の相構造や配向性等の特性を測定する際には、サンプルの温度を変えながら測定を行う。したがって、加熱温度を変えて何度も測定を繰り返す場合は、短時間のうちに所定の設定温度に正確にサンプルを加熱できることが要請される。
従来のヒータブロック等の比較的熱容量が大きなホルダにサンプルを保持して測定を行う方法は、サンプルの温度を安定化できるという利点はあるものの、サンプルの温度を安定化させるまでに時間がかかるため、設定温度を変えながら何点も測定を行う場合には、測定に長時間を要し、効率的な測定ができないという問題がある。
また、ヒータブロックを使用せず、熱容量の小さな支持プレートにサンプルを支持して測定する場合は、サンプルを所定の設定温度まで加熱することは容易であるものの、温度センサ等を用いてサンプル温度を制御する方法は、サンプル部分の温度を精度よく反映しているとは限らないという問題がある。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、液晶材料についてX線回折や光吸収測定を行う際に、サンプルの設定温度を変えて測定する操作を効率的に行うことを可能とし、サンプルの分量が少ない場合であっても、正確にサンプルの温度を制御して測定することができる液晶の加熱測定方法及びこれに用いるサンプルの加熱機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願に係る液晶の加熱測定方法は、サンプルを付着させて支持するセット部が形成されたサンプルプレートと、該サンプルプレートの裏面に配されるヒータ板とを備え、前記ヒータ板を加熱し、前記サンプルプレートに支持されたサンプルを所定の設定温度に加熱して測定を行う液晶の加熱測定方法であって、前記サンプルを所定の設定温度に制御する方法として、前記サンプルプレートのセット部に、液晶となる温度が既知の液晶材料を供給し、前記ヒータ板により前記サンプルプレートを加熱しながら前記液晶材料の転移点を検知する方法により、前記ヒータ板によるサンプルの加熱温度をあらかじめキャリブレーションする工程を備え、前記キャリブレーションの結果にしたがって前記ヒータ板による加熱を制御して、前記サンプルプレートにセットされたサンプルの温度を制御することを特徴とする。
また、前記サンプルの加熱温度をキャリブレーションする工程においては、液晶となる温度が異なる複数種の液晶材料を前記サンプルプレートに供給し、前記ヒータ板によりサンプルプレートを加熱して、これら複数種の液晶材料についての転移点を検知する方法によってキャリブレーションすることを特徴とする。
【0008】
また、前記加熱測定方法に使用するサンプルの加熱機構であって、液晶のサンプルを付着させて支持するセット部としての凹部が表面に形成されたサンプルプレートと、該サンプルプレートの裏面に接して、少なくとも前記セット部が形成された領域を含む範囲に配されるヒータ板とを有するサンプルの加熱部を備えることを特徴とする。
また、前記サンプルの加熱部が、前記サンプルプレートと前記ヒータ板との間に介装され、ヒータ板からの熱をサンプルプレートに伝導させる熱伝導板を備えることにより、サンプルをより効率的に加熱することができる。
また、前記サンプルの加熱部が、該加熱部における温度を検知する温度センサを備え、前記温度センサに接続される温度検知装置と、前記ヒータ板への通電を制御してサンプルの温度を制御する制御装置とを備えることにより、サンプルの加熱温度を高精度に制御して測定することができる。
【0009】
また、前記サンプルの加熱部が、ケーシング内に収納されていること、また、前記ケーシング内において、支持プレートに吊りワイヤを介して前記サンプルの加熱部が吊持されていることにより、サンプルを効率的に加熱することができる。
また、液晶の測定装置であって、前記サンプルの加熱機構を備える測定用ホルダと、前記加熱機構に送風して冷却する冷却機構とを備えることにより、前記加熱機構の熱により測定装置が損傷することを防止し、的確な測定を可能にする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る液晶の加熱測定方法及びサンプルの加熱機構によれば、サンプルの液晶材料の加熱温度を正確に制御して測定することができ、液晶の相構造や配向性等の特性を測定する操作を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】サンプルの加熱機構を備える測定用ホルダの斜視図である。
【図2】サンプルホルダのケーシングを開いた状態の測定用ホルダの正面図である。
【図3】加熱機構の第1の実施の形態の斜視図(a)及び断面図(b)である。
【図4】測定用ホルダに冷却機構を付設した状態の斜視図である。
【図5】加熱機構の第3の実施の形態を示す背面図(a)及び側面図(b)である。
【図6】従来の測定用ホルダの斜視図である。
【図7】キャリブレーション結果に基づいてサンプルの温度の制御に用いるグラフである。
【図8】サンプルの加熱温度を変えて測定した液晶の吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
本発明に係る加熱機構の実施の形態として、加熱機構を液晶の光学測定装置(UV装置)に適用した例について説明する。

【0013】
図6は、光学測定装置に装着して用いられる従来の測定用ホルダの構成例を示す。この測定用ホルダ5は、ベース6上に、サンプルホルダ7とレファレンスホルダ8とを起立固定して形成されている。サンプルホルダ7とレファレンスホルダ8は、サンプルを収納したセルを上方から挿入してセットできるように、上部が開口する筒状に形成される。両ホルダ7、8は、測定光の光路に位置に合わせして配置され、ホルダの前面と後面は、光路を遮断しないようスリット状に開口する。
この測定用ホルダ5は、測定装置の筐体の上部に設けられたホルダの装着部に、上方から挿入するようにしてセットして用いる。図6の破線は、凹部状に形成された筐体のホルダの装着部を示したもので、装着部に測定用ホルダ5をセットした状態を示す。

【0014】
図1は、図6に示した従来の測定用ホルダ5にかえて、本発明に係る加熱機構を備える測定用ホルダ10を測定装置の装着部にセットした状態を示す。
この測定用ホルダ10は、矩形の平板体に形成された金属製のベース11上に、サンプルホルダ20とレファレンスホルダ50とを起立形状に取り付けて形成されている。

【0015】
サンプルホルダ20は、液晶のサンプルを加熱する熱が外部に発散しないように、サンプルをケーシング21内に収納して支持する構造を備える。
ケーシング21は、ベース11上に起立して固定支持された支持蓋22と、支持蓋22の側部にヒンジを介して開閉可能に取り付けられた開閉蓋23とからなる。図1は、開閉蓋23を閉じて液晶のサンプルをケーシング21内に収納した状態である。開閉蓋23を閉じた状態で、ケーシング21は前面下部を除いて箱形に閉止した形態となる。サンプルホルダ20の前面下部からは、加熱用のヒータに接続される配線24と、温度検知用のセンサに接続されるリード線25とが延出する。

【0016】
ケーシング21の開閉蓋23には測定光の光路に位置合わせして、測定光を通過させる透孔23aが開口する。図示例では、開閉蓋23の前面の透孔23aの周縁に短筒部を設けている。ケーシング21の支持蓋22にも測定光の光路に位置合わせして、測定光を通過させる透孔が開口する。
本実施形態においては、透孔23a及び支持蓋22に設ける透孔を、開口径4.7mmの円形としたが、開閉蓋23と支持蓋22に透孔の位置、開口径、形状は測定装置、測定対象物に応じて適宜選択することができる。

【0017】
レファレンスホルダ50は、サンプルホルダ20のケーシング21に設けた透孔と同一径の透孔52aを設けたレファレンス板52と、レファレンス板52をベース11上に起立させて支持する支持棒51とを備える。支持棒51は、レファレンス光の光路に透孔52aを位置合わせしてレファレンス板52を支持する。
レファレンス板52は、必要に応じてレファレンス用のガラス板等を取り付けて使用する。

【0018】
図2は、サンプルホルダ20の開閉蓋23を開放した状態で、測定用ホルダ10を正面方向(測定光の光軸方向)から見た状態を示す。ケーシング21の開閉蓋23は、ヒンジ26により支持蓋22と連結されて回動可能となっている。開閉蓋23には前述した透孔23aが開口する。

【0019】
ケーシング21の支持蓋22の内側には、支持蓋22の両側板の内面に沿って、それぞれ支持ロッド27が固定されている。支持ロッド27の上部と下部には、ヒータ板31を支持する支持プレート28a、28bが支持ロッド27間に掛け渡されて固定される。
ヒータ板31は、正面形状が長方形となる平板状の発熱体であり、ステンレスからなる吊りワイヤ29を用いて、4点支持により支持プレート28a、28bに吊持される。本実施形態においては、吊りワイヤ29にステンレスワイヤを用いている。
ヒータ板31の下縁部に通電用の配線24が接続され、ヒータ板31は配線24を介してヒータ板31への通電を制御する制御装置(不図示)に接続される。

【0020】
吊りワイヤ29を用いてヒータ板31を支持プレート28a、28bに吊持しているのは、ケーシング21内においてヒータ板31を確実に位置決めして支持できるようにすることと、ヒータ板31からの熱が支持プレート28a、28bを介して外部に伝導することを抑制し、効率的にサンプルを加熱できるようにするためである。
吊りワイヤ29に用いる素材や、吊りワイヤ29による支持位置、支持本数等は適宜選択可能である。

【0021】
ヒータ板31はサンプルを加熱する熱源となるものであり、本実施形態においては、板面の全体が均一に発熱する素材からなり、ヒータ線を使用しない製品を用いている。この製品は、ヒータ線を使用していないので、ヒータ板31に測定光を通過させる透孔31aをあけることが容易にできる。なお、ヒータ板31には適宜材質及び構造の製品を使用することが可能であり、サンプルを加熱する温度領域(上限温度)等の条件により、適宜製品を選択して使用すればよい。もちろん、ヒータ線を用いて加熱するヒータ板であってもよい。
ヒータ板31を支持プレート28a、28bに支持する際に、ヒータ板31に設けた透孔31aの位置が測定光の光路に一致するように組み立てる。

【0022】
ヒータ板31の前面には、熱伝導板32が接合される。熱伝導板32はヒータ板31の熱を均一化してサンプルを均一に加熱する目的で用いている。本実施形態においては、熱伝導板32としてアルミニウム板を使用した。アルミニウム板は熱伝導性が良く、軽量であるという利点がある。熱伝導板32には、アルミニウム板以外に銅板等の他の材料を使用してもよい。熱伝導板32にも測定光を通過させる透孔32aを光路に位置合わせして開口させる。

【0023】
熱伝導板32に、温度センサ33を装着する。熱伝導板32の下縁から中央部側に向けて、熱伝導板32の背面(ヒータ板31に接する面側)で開口する凹溝を設け、凹溝に温度センサ33を挿入し、センサの基部を接着剤により封着する。温度センサ33の封着部分からリード線25を引き出し、温度検知装置(不図示)に接続する。

【0024】
熱伝導板32の前面にサンプルプレート40を取り付ける。本実施形態においては、サンプルプレート40として、表面に測定対象となるサンプルを付着させて支持するセット部40aを設けたガラス板を使用した。サンプルプレート40は、測定波長域において透明であること、所定の耐熱性と繰り返して昇温、降温させる操作に耐える素材を選択する必要がある。

【0025】
サンプルプレート40は熱伝導板32の表面に密着させて装着する。サンプルプレート40を熱伝導板32に固定して使用する場合は、サンプルプレート40の背面を熱伝導板32の表面に密着させた状態で、接着剤によりサンプルプレート40を熱伝導板32に接着すればよい。サンプルプレート40を取り外し可能として使用する場合は、所要の耐熱性を有する粘着テープを使用して、サンプルプレート40を熱伝導板32に密着させて装着すればよい。係止部材を用いて、ねじ止め等の係止手段を用いてサンプルプレート40を熱伝導板32に脱着可能に取り付けることも可能である。

【0026】
図3に、上述したヒータ板31、熱伝導板32、サンプルプレート40の構成を拡大して示す。図3(a)は、熱伝導板32の前面に、粘着テープ42によりサンプルプレート40を密着させて取り付けた状態を示す。サンプルSを付着させたセット部40aの位置を、熱伝導板32、ヒータ板31の透孔32a、31aの位置に位置合わせしてサンプルプレート40を取り付ける。

【0027】
図3(b)は、ヒータ板31と熱伝導板32に透孔31a、32aが形成されていること、透孔31a、32aの位置にセット部40aを位置合わせしてサンプルプレート40を取り付けること、熱伝導板32のヒータ板31に接する面側に凹溝を設けて、温度センサ33を凹溝に装着したことを示す。温度センサ33は接着用の樹脂33aを用いて、熱伝導板32とヒータ板31とにかけて封着されている。
ヒータ板31は、ヒータ電流を制御する制御装置35に接続され、温度センサ33は温度検知装置36に接続される。

【0028】
図3(b)に示すように、サンプルプレート40の表面(測定光が入射する面)には、サンプルをセットするための、内底面が平面の凹部に形成されたセット部40aが形成されている。セット部40aはサンプルプレート40の表面から0.5mm程度の深さに掘り込んで形成され、サンプルはこのセット部40aを充填するようにセットする。
液晶材料は室温で粉体となっているものが多い。これらの液晶材料は弱い粘着性を有するから、サンプルをセットする際に、セット部40aの表面に液晶材料を押さえつけるようにすることでセット部40aに容易にサンプルを付着させてセットすることができる。
サンプルをセットしたサンプルプレート40は、起立状態(面を鉛直向き)としてもサンプルがセット部40aから剥離したりすることはない。また、サンプルを加熱して液晶状態になった場合でも、サンプルはセット部40a内に止まり、そのまま測定を行うことができる。

【0029】
本実施形態の加熱機構は、温度検知装置36の検知結果に基づいて制御装置35を操作してヒータ板31への通電を制御することにより、サンプルを所定の設定温度に制御するように用いる。
図3において、ヒータ板31、熱伝導板32、サンプルプレート40がサンプルの加熱部30を構成する。サンプルの加熱部30は狭い意味でのサンプルの加熱機構であり、ヒータ板31を吊持する吊りワイヤ29、支持プレート28a、28b、ケーシング21等を備えるサンプルホルダ20の構成を含めて加熱機構としてとらえることもでき、さらに温度センサ33、制御装置35、温度検知装置36等の制御機構を含めてサンプルの加熱機構ととらえることもできる。

【0030】
(サンプルの温度制御方法)
サンプルの温度を制御する方法として温度センサを使用する方法は常法である。本実施形態においても温度センサ33を用いてサンプルの温度を制御するが、本実施形態においては、制御装置35を制御してサンプルを加熱した際における実際のサンプル部分の加熱温度をあらかじめキャリブレーションし、このキャリブレーションの結果に基づき制御装置35を制御してサンプルを所定の温度に加熱する。

【0031】
本実施形態において、サンプルの温度をキャリブレーションする方法として採用した方法は、液晶になる温度が既知のサンプルで、液晶となる温度が異なる複数種の液晶材料を用意し、これらのサンプルを個別に加熱機構30のサンプルプレート40のセット部40aに供給し、制御装置35を操作してサンプルが液晶状態に転移するときの温度センサ33の出力値(温度センサによる検知温度)を検知する方法である。
液晶になる温度が既知で、液晶になる温度が異なる液晶材料は多種ある。室温から250℃程度の温度範囲にわたってキャリブレーションするために使用する材料として、以下の1~4の液晶材料がある。

【0032】
サンプル1:相転移温度 47.4℃
【化1】
JP0005515033B2_000002t.gif

【0033】
サンプル2:相転移温度 126.8℃
【化2】
JP0005515033B2_000003t.gif

【0034】
サンプル3:相転移温度 141.6℃
【化3】
JP0005515033B2_000004t.gif

【0035】
サンプル4:相転移温度 241.9℃
【化4】
JP0005515033B2_000005t.gif

【0036】
サンプル1~4は、相転移温度が低温から高温にまでわたっているから、これらのサンプルをサンプルプレート40にセットして、相転移が生じた時点での温度センサ33の出力値を検知することによって、サンプルの温度をキャリブレーションすることができる。

【0037】
サンプルプレート40にサンプルをセットして室温からサンプルを加熱していくと、相転移温度の近傍でサンプルプレート40にセットしたサンプルが液晶状態に転移する(粉体から液晶状態になる)ことが視認できる。この確認方法は、サンプルプレート40上のサンプルをセットした位置における温度が、まさにそのサンプルの相転移温度になったことを示すものであり、温度センサ33が当該出力値を示す際における、サンプルプレート40のサンプル位置における実際の温度を示す。

【0038】
図7は、上記サンプル1~4について、キャリブレーション測定を行った結果をグラフに示したものである。横軸がサンプル部分の温度、縦軸が温度センサ33に基づく温度(出力値)である。4種類のサンプルについての測定結果は、いずれも直線上にのっている。
このキャリブレーション結果に基づけば、サンプルを所定温度に加熱する場合、この希望温度に対応する温度センサの温度となるように制御装置35を制御すればよい。たとえば、サンプルの温度を100℃(希望温度)に設定する場合は、温度センサによる温度が104.90℃となるように制御すればよい。
なお、制御装置35を制御する操作は、温度センサ33による出力値に基づいて制御する場合に限らず、たとえばヒータ板31を加熱する制御装置の電流値をモニターして制御するといったことも可能である。このように、制御装置35を制御してサンプルの温度をキャリブレーションするときの指標は、温度センサ33の出力値に限るものではない。

【0039】
上述したサンプル温度をキャリブレーションする方法は、サンプルプレート40上における実際のサンプルの温度を反映しているから、単に温度センサを用いて検知する方法では、サンプル部分の温度と温度センサを配置した位置とで温度が相違する可能性があるのに対して、より正確にサンプルの温度を制御することができる。本実施形態のキャリブレーション方法を利用すれば、サンプル部分の温度は±0.1℃の精度で制御することが可能である。
温度センサ33は、サンプルのセット位置とは離間した位置にあるが、そのセッティング下において上述したキャリブレーションを行っているから、温度センサ33とサンプル位置とが離間していてもなんら問題はない。

【0040】
液晶の測定実験においては、液晶材料を大量に用意して実験することができない場合が多い。このように微量のサンプルしか使用できない場合でも、本実施形態の測定方法によれば、サンプルプレート40上のセット部40aのみにサンプルをセットして測定することができる。セット部40aは小面積で1mm以下の浅い凹部に形成されているから、凹部内に液晶材料を充填するようにしても、使用する液晶材料の分量はごく僅かである。
このように、サンプルプレート40上の限られた領域にサンプルをセットして測定する場合に、サンプルの位置における実際の温度を制御して測定できることは、きわめて有効である。

【0041】
また、本実施形態の加熱機構は、ヒータ板31により熱伝導板32を介してサンプルプレート40を加熱しているから、サンプルの昇温、降温を短時間で行うことができ、測定作業を効率的に行うことができるという利点がある。短時間で昇温、降温した場合でも、キャリブレーションの結果に基づいてサンプルの温度を正確に制御できるから、高精度に温度を設定して測定することが可能となる。
また、サンプルホルダ20は、ケーシング21の内部にサンプルや加熱機構を包囲して収納する構造となっているから、加熱機構から外部に熱が放散されることを抑制し、効率的にサンプルを加熱することができ、測定用ホルダ10の周囲に配置されている測定器の光学系等を熱から防護することができるという利点がある。

【0042】
(第2の実施の形態)
上述した測定用ホルダ10は、サンプルを加熱する機構を備えているから、サンプルを200℃もしくはそれ以上といった高温に加熱した場合に、測定装置の光学系等を損傷するおそれがある。このような場合は、測定用ホルダ10を冷却する冷却機構を付設する方法が有効である。

【0043】
図4は、測定用ホルダ10に冷却機構60を付設した状態を示す。冷却機構60は筐体の測定用ホルダ10を装着する装着部の上部に取り付ける支持ベース61に、装着部内に連通する送気筒62を設け、送気筒62に送気ファン64を取り付けて形成されている。測定用ホルダ10のサンプルホルダ20の上方の、送気筒62と支持ベース61との連結部に開口部65が設けられ、送気ファン64によりサンプルホルダ20に向けてエア流が送入する。
筐体の装着部には、測定用ホルダ10を装着した状態で外光が入らないように蓋を被せる構造となっている。この蓋のかわりに冷却機構60を装着すればよい。装着部に支持ベース61を装着した状態で、支持ベース61と装着部との間に若干の隙間が生じるように設計し、装着部内でエア流が通流するようにするとよい。

【0044】
本実施形態の冷却機構60は送気ファン64を利用して冷却する構造としたものであり、小型化によって、簡単に装着部に取り付けて使用することができるという利点がある。また、簡易な構成によって装着部内が過熱することを防止できる点で有用である。
液晶の測定実験では、サンプルの温度を200℃以上の高温に加熱する場合がある。このような場合でも、上述した冷却機構60を使用すれば、測定装置を損傷させたり、測定に影響を与えずに測定することができる。

【0045】
(第3の実施の形態)
上述したサンプルの加熱機構は、UV測定装置のような光学測定装置に限らず、サンプルの加熱温度を適宜設定しながら測定するX線回折装置などの他の測定装置に利用することができる。
図5は、X線回折装置に用いる加熱機構の例を示す。この加熱機構は、ヒータ板72と、熱伝導板74と、サンプルプレート70とを重ね合わせ、一体に接合して形成したものである。サンプルプレート70はガラス製であり、この例では他の部材よりも大きく形成され(80×35mm)ている。サンプルプレート70の表面を浅い凹部状(10×10×0.5mm)に形成してサンプルのセット部70aが形成されている。

【0046】
ヒータ板72として本実施形態では板体状に形成されたセラミックヒータ(25×25mm、厚さ1.75mm)を使用している。ヒータ板72にセラミックヒータを使用しているのは、300~400℃程度以上に加熱するためである。熱伝導板74にはアルミニウム板(34×28mm、厚さ2mm)を使用している。熱伝導板74に装着する温度センサ75には白金センサを使用した。
X線回折装置では、サンプルにX線を反射させて測定するから、ヒータ板72と熱伝導板74に透孔を形成する必要はない。

【0047】
X線回折装置では、サンプルプレートを測定装置のセット台に起立させるようにセットして測定する。図5に示すように、加熱機構はサンプルプレート70の背面に接着されて取り付けられているから、このままサンプルプレート70を測定装置のセット台にセットして測定することができる。
ヒータ板72は配線72aを介して制御装置に接続され、温度センサ75はリード線75aを介して温度検知装置に接続される。

【0048】
前述したサンプル温度のキャリブレーション方法と同様に、図5に示す組み立て状態で、液晶となる温度が異なる複数種の液晶材料を使用してサンプルのセット部の温度をあらかじめキャリブレーションし、そのキャリブレーション結果に基づいて制御装置を制御することにより、サンプルを所定温度に加熱して測定する。本実施形態においても、サンプルの加熱温度を正確に制御してせX線回折測定を行うことができる。

【0049】
(測定例)
図8は、図1に示す測定用ホルダ10を用いて、下記の液晶材料(サンプル)について吸収スペクトルを測定した結果を示す。

【0050】
【化5】
JP0005515033B2_000006t.gif

【0051】
測定は、サンプルの温度を25℃、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃、160℃、170℃、180℃、190℃、193℃、200℃の13点とって行った。サンプルの温度を変えることにより吸収スペクトルが変化し、液晶の配向性、配向度が変化していることがわかる。
本測定においては、前述した加熱機構を利用したことにより、およそ3分間でサンプルの温度を変えて1回の測定を行うことができ、およそ39分で、25℃~200℃の間で13回の測定を行うことができた。
従来の銅ブロックを備える加熱機構を使用して測定する場合には、サンプルの温度を変えて1回の吸収測定を行うのに、少なくとも数十分を要することと比較して、本実施形態の測定方法によれば、きわめて効率的な測定が可能であることがわかる。

【0052】
上記測定例は、加熱機構を可視領域での光学測定に使用した例である。本発明に係る加熱機構は、可視領域以外のUVスペクトル測定、IRスペクトル測定等にも使用でき、その他、X線回折測定、蛍光スペクトル測定、ラマンスペクトル測定等にも利用することができる。
これらの各種測定においては、サンプルのホルダ部分の構成(サンプルの支持方法、レファレンスホルダの有無等)はさまざまであるから、それぞれの測定装置に応じて、サンプルの加熱機構を構成する各部材の材質、大きさ等について適宜選択して設計すればよい。前述した加熱機構の実施形態においては、ヒータ板とサンプルプレートとの間に熱伝導板を介在させたが、場合によっては、ヒータ板にサンプルプレートをじか接合して、熱伝導板を省略する構成とするといった変形も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、液晶材料の加熱温度を変えて吸収スペクトル、X線回折、IRスペクトル、蛍光スペクトル、ラマンスペクトル測定等に利用でき、液晶材料の相構造や配向性等の特性の評価に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
5 測定用ホルダ
10 測定用ホルダ
20 サンプルホルダ
21 ケーシング
22 支持蓋
23 開閉蓋
23a 透孔
28a、28b 支持プレート
29 吊りワイヤ
30 加熱機構
31 ヒータ板
31a、32a 透孔
32 熱伝導板
33 温度センサ
35 制御装置
36 温度検知装置
40 サンプルプレート
40a セット部
42 粘着テープ
50 レファレンスホルダ
52 レファレンス板
52a 透孔
60 冷却機構
64 送気ファン
70 サンプルプレート
70a セット部
72 ヒータ板
74 熱伝導板
75 温度センサ


図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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