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明細書 :ピリジルピリミジン誘導体を有効成分とする植物病害防除剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5618235号 (P5618235)
公開番号 特開2011-201825 (P2011-201825A)
登録日 平成26年9月26日(2014.9.26)
発行日 平成26年11月5日(2014.11.5)
公開日 平成23年10月13日(2011.10.13)
発明の名称または考案の名称 ピリジルピリミジン誘導体を有効成分とする植物病害防除剤
国際特許分類 A01N  43/54        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
A01P  21/00        (2006.01)
FI A01N 43/54 B
A01P 3/00
A01P 21/00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 21
出願番号 特願2010-071912 (P2010-071912)
出願日 平成22年3月26日(2010.3.26)
審査請求日 平成25年1月9日(2013.1.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
発明者または考案者 【氏名】鳴坂 義弘
【氏名】鳴坂 真理
個別代理人の代理人 【識別番号】110001047、【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
審査官 【審査官】天野 宏樹
参考文献・文献 特開2003-026675(JP,A)
特開昭62-169778(JP,A)
特開昭63-099068(JP,A)
特開平09-151184(JP,A)
特開平06-199792(JP,A)
特開2007-022999(JP,A)
D.J.Brown,et al,Australian Journal of Chemistry,1982年,Vol.35,pp1203-1207
調査した分野 A01N43
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、植物におけるPR-1遺伝子の発現誘導剤
【化1】
JP0005618235B2_000025t.gif
〔式中、R1は水素原子または炭素数1から7のアルキル基を表わし、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基を表わし、R3は
【化2】
JP0005618235B2_000026t.gif
または、
【化3】
JP0005618235B2_000027t.gif
を表わし、R4は水素原子またはトリハロゲン化メチル基を表わす。〕
【請求項2】
下記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、植物における病害抵抗性遺伝子の発現を介して植物病害防除するための薬剤。
【化4】
JP0005618235B2_000028t.gif
〔式中、R1は水素原子または炭素数1から7のアルキル基を表わし、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基を表わし、R3は
【化5】
JP0005618235B2_000029t.gif
または、
【化6】
JP0005618235B2_000030t.gif
を表わし、R4は水素原子またはトリハロゲン化メチル基を表わす。〕
【請求項3】
植物病害が、アブラナ科野菜類炭疽病菌またはアブラナ科黒斑細菌病菌による病害である、請求項2に記載の剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジルピリミジン誘導体を有効成分とする、植物における病害抵抗性遺伝子の発現誘導剤および植物病害の防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
植物に対する微生物の感染による病害(生物ストレス)は、植物にとって致命的になりうる重大なストレスの一つである。植物は、動物における免疫系のような、感染防御のために特殊化した細胞・組織を有しない。しかしながら、植物は、病原体を非自己として認識して起こる過敏感反応に代表される誘導性の防御応答によって、感染部位の周辺に抗菌性の化学的環境と物理的障壁を形成して抵抗する植物特有の機構を有しており、これにより微生物などの病原体の侵入に際して感染の拡大を抑制して生体防御を行っている。
【0003】
一方、病原体は、宿主である植物を認識して、胞子発芽、付着器および侵入菌糸の形成、宿主内への侵入、並びに伸展を行う。例えば、アブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)は、アブラナ科植物を宿主とする糸状菌であり、感染した植物に灰褐色から白色の病斑を形成する。シロイヌナズナのエコタイプ(生態型)であるコロンビアや、ハクサイを代表とするアブラナ科植物の多くは、炭疽病菌に対して感受性である。炭疽病菌をこれら植物に接種すると、接種72時間から96時間後に水浸状の病斑を形成する。これに対して、炭疽病菌を、抵抗性のシロイヌナズナエコタイプWsに接種すると、接種48時間から72時間後に過敏感細胞死様の病斑を形成する。この現象は、植物特有の抵抗反応として知られており、病原菌の侵入に対し、植物が自ら積極的に細胞(組織)を殺すことで、病原菌の感染の拡大を阻止する“植物におけるアポトーシス”として注目されている。
【0004】
病原体の感染から過敏感細胞死に至るまでの作用機序に関する防御シグナル伝達には、サリチル酸がシグナル物質として関与していることが知られている。病原体の攻撃に対して、植物はシグナル物質を介して感染緊急シグナルを全身的に発信し、感染部位のみならず未感染組織の防御態勢をも誘導する。植物の生物ストレスに対する防御反応の発現誘導には、サリチル酸以外に、ジャスモン酸、エチレン、および活性酸素がシグナル物質として同定されている(非特許文献1~3)。
【0005】
サリチル酸は、植物に病原菌が感染したときに植物体内で合成される病害防御応答のためのシグナル物質であり、抗菌性のタンパク質をコードしているPR-1遺伝子およびPR-2遺伝子は、サリチル酸のシグナルで発現が制御されている。また、ジャスモン酸は、植物に病原菌が感染したときに植物体内で合成される病害防御応答のためのシグナル物質であり、抗菌性のタンパク質をコードしているPDF1.2遺伝子は、ジャスモン酸のシグナルで発現が制御されている。その他の、植物病害に対する防御応答のための病害抵抗性遺伝子としては、キチナーゼ遺伝子、PR-3遺伝子、VSP2遺伝子などが知られている。
【0006】
このように植物においては、病害抵抗性遺伝子が植物病害の防御に重要な役割を担っていることから、これら遺伝子の発現を誘導しうる薬剤は、植物病害の防除剤として有用であると考えられる。
【0007】
一方、イネいもち病、イネ紋枯病、コムギ眼紋病、リンゴ黒星病、キュウリ炭疽病、キュウリ灰色かび病、ラッカセイ褐斑病、コムギ赤さび病、トマト疫病に対して防除効果がある薬剤として、特定のピリジルピリミジン誘導体が有効であることが報告されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、これまでに、植物における病害抵抗性遺伝子の発現を誘導する効果を有するピリジルピリミジン誘導体については、何ら知られていない。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特許第2517251号公報
【0010】

【非特許文献1】Narusaka M. et al. (2009) Plant J. 60, 218-226
【非特許文献2】Penninckx, I. A. et al. (1998) Plant Cell 10, 2103-2113
【非特許文献3】Thomma, B. P. H. J. et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95, 15107-15111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、植物における病害抵抗性遺伝子の発現を誘導する効果を有するピリジルピリミジン誘導体を見出し、当該ピリジルピリミジン誘導体を利用して、植物病害を防除しうる薬剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、いくつかのピリジルピリミジン誘導体が、植物における病害抵抗性遺伝子であるPR-1遺伝子などの発現を誘導し、これによりアブラナ科野菜類炭疽病菌などによる植物病害に対して、優れた防除効果を発揮することを見出し、本発明を完成した。
【0013】
従って、本発明は、ピリジルピリミジン誘導体を有効成分とする、植物における病害抵抗性遺伝子の発現誘導剤および植物病害の防除剤に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
【0014】
[1] 下記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、植物におけるPR-1遺伝子の発現誘導剤。
【0015】
【化1】
JP0005618235B2_000002t.gif
〔式中、R1は水素原子または炭素数1から7のアルキル基を表わし、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基を表わし、R3は
【0016】
【化2】
JP0005618235B2_000003t.gif
または、
【0017】
【化3】
JP0005618235B2_000004t.gif
を表わし、R4は水素原子またはトリハロゲン化メチル基を表わす。〕
【0018】
[2] 下記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、植物病害の防除剤。
【0019】
【化4】
JP0005618235B2_000005t.gif
〔式中、R1は水素原子または炭素数1から7のアルキル基を表わし、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基を表わし、R3は
【0020】
【化5】
JP0005618235B2_000006t.gif
または、
【0021】
【化6】
JP0005618235B2_000007t.gif
を表わし、R4は水素原子またはトリハロゲン化メチル基を表わす。〕
【0022】
[3] 植物病害が、アブラナ科野菜類炭疽病菌またはアブラナ科黒斑細菌病菌による病害である、[2]に記載の防除剤。
【発明の効果】
【0023】
本発明のピリジンピリミジン誘導体を利用することにより、植物の病害抵抗性遺伝子の発現を通じて、効果的に植物病害を防除することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】20ppmの各種ピリジンピリミジン誘導体を噴霧処理したシロイヌナズナにおける、PR-1遺伝子の発現を解析した結果を示すグラフである。
【図2】50ppmのピリジンピリミジン誘導体(「9640」および「7827」)を灌水処理および噴霧処理したシロイヌナズナにおける、PR-1遺伝子およびPDF1.2遺伝子の発現を解析した結果を示すグラフである。
【図3】50ppmのピリジンピリミジン誘導体(「9640」および「7827」)を灌水処理したシロイヌナズナにおける、VSP2遺伝子、CHI620遺伝子、CHI570遺伝子、PR-2遺伝子、PR-3遺伝子の発現を解析した結果を示すグラフである。
【図4】50ppmのピリジンピリミジン誘導体(「9640」および「7827」)を噴霧処理したシロイヌナズナにおける、VSP2遺伝子、CHI620遺伝子、CHI570遺伝子、PR-2遺伝子、PR-3遺伝子の発現を解析した結果を示すグラフである。
【図5】50ppmのピリジンピリミジン誘導体(「9640」および「7827」)を噴霧処理および灌水処理し、48時間後にアブラナ科野菜類炭疽病菌を噴霧接種したシロイヌナズナの、噴霧後6日目における病斑を観察した結果を示す写真である。
【図6】20ppmの各種ピリジンピリミジン誘導体を噴霧処理後したシロイヌナズナに、黒斑細菌病菌を噴霧接種し、接種後3日目におけるシロイヌナズナ葉に感染した黒斑細菌病菌のrpoD遺伝子のmRNA量を定量した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、下記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、植物におけるPR-1遺伝子の発現誘導剤を提供する。

【0026】
【化7】
JP0005618235B2_000008t.gif
〔式中、R1は水素原子または炭素数1から7のアルキル基を表わし、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基を表わし、R3は

【0027】
【化8】
JP0005618235B2_000009t.gif
または、

【0028】
【化9】
JP0005618235B2_000010t.gif
を表わし、R4は水素原子またはトリハロゲン化メチル基を表わす。〕

【0029】
また、本発明は、下記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体またはその塩を有効成分として含有することを特徴とする、植物病害の防除剤を提供する。

【0030】
【化10】
JP0005618235B2_000011t.gif
〔式中、R1は水素原子または炭素数1から7のアルキル基を表わし、R2はアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基を表わし、R3は

【0031】
【化11】
JP0005618235B2_000012t.gif
または、

【0032】
【化12】
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を表わし、R4は水素原子またはトリハロゲン化メチル基を表わす。〕

【0033】
上記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体において、R1の「水素原子または炭素数1から7のアルキル基」としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基、ヘキシル基、4-メチルペンチル基、シクロヘキシキル基、3-メチルシクロペンチル基、ヘプチル基、イソヘプチル基などの鎖状または環状のアルキル基を挙げることができる。R1は、水素原子またはシクロプロピルメチル基であることが好ましい。

【0034】
R2の「アルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1から5のアルキル基」における「炭素数1から5のアルキル基」としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、シクロプロピルメチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、シクロブチルメチル基を挙げることができ、「アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基を挙げることができる。R2は、メチル基、エチル基、プロピル基またはメトキシメチル基であることが好ましい。

【0035】
R3は、

【0036】
【化13】
JP0005618235B2_000014t.gif
または、

【0037】
【化14】
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であるが、R4の「水素原子またはトリハロゲン化メチル基」としては、例えば、水素原子、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基を挙げることができる。R4は、水素原子またはトリフルオロメチル基であることが好ましい。

【0038】
上記一般式[I]で示されるピリジンピリミジン誘導体は、最も好ましくは、下記5つの化合物である。

【0039】
「7827」

【0040】
【化15】
JP0005618235B2_000016t.gif

【0041】
「7827-A1」

【0042】
【化16】
JP0005618235B2_000017t.gif

【0043】
「7827-A2」

【0044】
【化17】
JP0005618235B2_000018t.gif

【0045】
「7827-A3」

【0046】
【化18】
JP0005618235B2_000019t.gif

【0047】
「9640」

【0048】
【化19】
JP0005618235B2_000020t.gif

【0049】
本発明のピリジンピリミジン誘導体は、優れたPR-1遺伝子の発現誘導能を示した。特に、「9640」および「7827」においては、PDF1.2遺伝子、VSP2遺伝子、CHI570遺伝子、CHI620遺伝子、PR-2遺伝子、PR-3遺伝子の発現誘導能をも示した。また、本発明のピリジンピリミジン誘導体は、これらの遺伝子の発現により抵抗性が付与される植物病害に対して、優れた防除効果を示した。従って、本発明のピリジンピリミジン誘導体は、これら遺伝子の発現を誘導するための試薬として、あるいは、これら遺伝子の発現を介して植物病害を防除するための薬剤として、有用である。

【0050】
本発明の植物におけるPR-1遺伝子の発現誘導剤および植物病害の防除剤を適用する植物としては、例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、ハクサイ(Brassica rapa)などのアブラナ科植物、トウモロコシ(Zea mays)およびイネ(Oryza sativa)などのイネ科植物、タバコ(Nicotiana tabacum)およびトマト(Solanum lycopersicum)などのナス科植物、キュウリ(Cucumis sativus L.)などのウリ科植物、並びに、ダイズ(Glycine max)などのマメ科などに属する植物を挙げることができるが、本発明の目的を達成しうる限り、これらに制限されない。

【0051】
なお、シロイヌナズナにおける各種病害抵抗性遺伝子とAGIコードを以下に示すが、本発明のピリジンピリミジン誘導体は、これらシロイヌナズナ由来の遺伝子以外に、他の植物のオーソログの発現を誘導することも可能である。

【0052】
PR-1遺伝子(At2g14610);PR-2遺伝子(At3g57260);PR-3遺伝子(At3g12500);VSP2遺伝子(At5g24770);CHI570遺伝子(At2g43570);CHI620遺伝子(At2g43620);PDF1.2遺伝子(At5g44420)
例えば、イネにおけるPR遺伝子は、文献(Mitsuhara I, et al., Mol Genet Genomics (2008) 279:415-427)に、タバコにおけるPR遺伝子は、文献(Matsuoka M, et al., Plant Physiol. 1987 Dec;85(4):942-946)に開示されている。

【0053】
本発明において「遺伝子の発現」とは、遺伝子自身がもつ情報をRNAまたはタンパク質という機能を有する遺伝子産物を産生することである。従って、本発明における「遺伝子の発現」は、遺伝子からmRNAへの転写およびmRNAからタンパク質への翻訳の双方を含む意である
遺伝子の発現量は、当業者に公知の任意の方法・手段で測定することができる。例えば、発現されたmRNA量の測定としては、DNAマイクロアレイ、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ、ノーザンブロッティング(ノーザンハイブリダイゼーション)、インサイチューハイブリダイゼーション、RNA分解酵素プロテクションアッセイ、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)および定量的転写ポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)などを用いることができる。一方、タンパク質量の測定としては、ウェスタンブロッティング、ELISAアッセイ、タンパク質アレイ(プロテインチップ)、免疫組織染色、二次元電気泳動、およびイーストツーハイブリッドなどを挙げることができる。

【0054】
発現量を測定するための遺伝子の取得源としては、植物体全体、植物器官(例えば、葉、花弁、茎、根、種子など)、植物組織(例えば、表皮、師部、柔組織、木部、維管束など)、植物培養細胞などの植物体の任意の部分を使用することができる。

【0055】
本発明の薬剤が適用される「植物病害」としては、PR-1遺伝子の発現誘導により抵抗性を付与することが可能な植物病害であれば特に制限はないが、好ましくは、アブラナ科野菜類炭疽病菌またはアブラナ科黒斑細菌病菌による植物病害である。

【0056】
本発明のピリジンピリミジン誘導体は、植物病原菌からの感染を防御するために必要な濃度において、植物体に対し適用される。使用に際しては、植物体の地上部に対しての薬剤処理、台木および種子に対しての薬剤処理および土壌灌水処理が可能である。

【0057】
また、本発明のピリジンピリミジン誘導体は、農園芸用殺菌剤の有効成分として用いる場合は、他の何らの成分も加えずそのまま使用してもよいが、通常の製剤形態に製剤化することができる。通常は、固体担体、液体担体、界面活性剤その他の製剤用補助剤と混合して、例えば、液剤、水和剤、エマルジョン、懸濁剤、粉剤、泡沫剤、ペ-スト、錠剤(ジャンボ剤)、粒剤、エアゾ-ル、活性化合物浸潤-天然および合成物、マイクロカプセル、種子用被覆剤、燃焼装置を備えた製剤(燃焼装置としては、例えば、くん蒸および煙霧カ-トリッジ、かんおよびコイルを挙げることができる)、ULV(コ-ルドミスト、ウオ-ムミスト)などを挙げることができる。

【0058】
これらの製剤は、それ自体既知の方法で製造することができる。例えば、本発明のピリジンピリミジン誘導体を、展開剤(例えば、液体希釈剤、液化ガス希釈剤、固体希釈剤、担体など)、場合によっては界面活性剤(例えば、乳化剤、分散剤、泡沫形成剤など)と混合することによって製造することができる。

【0059】
展開剤として水を用いる場合には、例えば、有機溶媒を補助溶媒として使用することもできる。

【0060】
液体希釈剤または担体としては、一般に、芳香族炭化水素類(例えば、キシレン、トルエン、アルキルナフタレンなど)、クロル化芳香族またはクロル化脂肪族炭化水素類(例えば、クロロベンゼン類、塩化エチレン類、塩化メチレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど、パラフィン類(例えば、鉱油留分など))、アルコ-ル類(例えば、イソプロパノール、ブタノ-ル、グリコ-ルおよびそれらのエ-テル、エステルなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、強極性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなど)、植物油(大豆油、綿実油など)および水を挙げることができる。

【0061】
液化ガス希釈剤または担体は、常温常圧でガス状の物質を液化したものであり、その例としては、例えば、ブタン、プロパン、窒素ガス、二酸化炭素、およびハロゲン化炭化水素類のようなエアゾ-ル噴射剤を挙げることができる。

【0062】
固体希釈剤としては、例えば、土壌天然鉱物(例えば、カオリンクレ-、アッタパルジャイトクレー、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、チョ-ク、石英、アタパルガイド、モンモリロナイトまたは珪藻土など)、土壌合成鉱物(例えば、高分散ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩など)などを挙げることができる。

【0063】
粒剤のための固体担体としては、例えば、粉砕かつ分別された岩石(例えば、方解石、大理石、軽石、海泡石、白雲石など)、有機物質(例えば、おがくず、ココヤシの実のから、トウモロコシの穂軸粉、クルミ殻粉そしてタバコの茎など)などの細粒体を挙げることができる。

【0064】
乳化、分散、湿展などのために用いられる界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、アルキル(アリール)スルホン酸塩、ジアルキルスルホこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルりん酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤などが挙げられる。製剤用補助剤としては、リグニンスルホン酸塩、アルギン酸塩、ポリビニルアルコール、アラビアガム、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PAP(酸性りん酸イソプロピル)などが挙げられる。

【0065】
固着剤も製剤(粉剤、粒剤、乳剤)に使用することができ、その際に使用しうる固着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロ-ス、天然および合成ポリマ-(例えば、アラビアゴム、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルアセテ-トなど)などを挙げることができる。

【0066】
上記製剤には、着色剤を配合することもでき、該着色剤としては、無機顔料(例えば、酸化鉄、酸化チタン、プルシアンブル-など)、アリザリン染料、アゾ染料または金属フタロシアニン染料のような有機染料、更に、鉄、マンガン、ボロン、銅、コバルト、モリブデン、亜鉛などの金属の塩のような微量要素を挙げることができる。

【0067】
該製剤は、一般に、本発明のピリジンピリミジン誘導体を0.1~99重量%、好ましくは0.5~90重量%の範囲内で含有することができる。

【0068】
本発明のピリジンピリミジン誘導体は、上記製剤またはさまざまな使用形態において、他の公知の活性化合物、例えば、殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺センチュウ剤、除草剤、鳥類忌避剤、生長調整剤、肥料および/または土壌改良剤を共存させて用いることにより、防除効果の増強が期待できる。

【0069】
本発明のピリジンピリミジン誘導体を使用する場合、そのまま直接使用するか、または散布用調製液、乳剤、懸濁剤、粉剤、錠剤、ペ-スト、マイクロカプセル、粒剤のような製剤形態で使用するか、または、さらに希釈して調製された使用形態で使用することができる。本発明のピリジンピリミジン誘導体は、通常の方法、例えば、液剤散布、浸漬、噴霧、くん蒸、潅注、懸濁形成、塗布、散粉、散布、粉衣、湿衣、湿潤被覆、糊状被覆または羽衣被覆で使用することができる。

【0070】
本発明のピリジンピリミジン誘導体を農園芸用殺菌剤の有効成分として用いる場合、その処理量は、気象条件、製剤形態、処理時期、方法、場所、対象病害、対象作物などによっても異なるが、一般には0.0001~1重量%、好ましくは0.001~0.5重量%の範囲内とすることができる。

【0071】
種子処理に際しては、本発明のピリジンピリミジン誘導体を、種子1kg当り、一般に0.001~50g、好ましくは0.01~10gの範囲内で、使用することができる。

【0072】
土壌処理に際しては、作用点に対し、0.00001~0.1重量%、特には0.0001~0.02重量%の濃度の本発明のピリジンピリミジン誘導体を一般に使用することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
[試験例1] 薬剤処理による病害抵抗性遺伝子(防御応答遺伝子)の発現誘導
化合物処理による植物の免疫の活性化は、防御応答のマーカー遺伝子であるPR-1遺伝子とPDF1.2遺伝子の発現をモニターすることにより行った。PR-1遺伝子は植物の主たる防御応答経路であるサリチル酸シグナル伝達経路のマーカー遺伝子である。PDF1.2遺伝子は植物の防御応答経路であるジャスモン酸およびエチレンのシグナル伝達経路のマーカー遺伝子である。
【実施例】
【0075】
植物材料として、土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として4週間栽培したシロイヌナズナ(生態型:コロンビア)を用いた。0.01%の展着剤マイリノーを添加した20ppmの各種薬剤(表1)を、上述したように培養したシロイヌナズナに対し、1鉢当り3~5mlの噴霧で処理した。
【実施例】
【0076】
【表1】
JP0005618235B2_000021t.gif
【実施例】
【0077】
処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置し、2、5、10、24および48時間後にサンプリングした。サンプリングした植物体は液体窒素で凍結し、「RNA tissue Kit II」(富士フイルム社製)を用いて全RNAを抽出した。続いて、「PrimeScript RT reagent Kit」(タカラ社製)を用いて全RNAから一本鎖cDNAを合成した。さらに、「SYBR Green I PCR Master Mix」(タカラ社製)を用いて定量的RT-PCRを行った。また、定量的RT-PCRは、1×「SYBR Green I PCR Master Mix」、200nMのフォワードプライマーとリバースプライマーの反応液を、95℃10秒間の変性ステップの後、95℃5秒、65℃20秒のステップを1サイクルとし、40サイクル行った。
【実施例】
【0078】
各サンプル間の標準化は、植物で恒常的に発現しているCBP20遺伝子を用い、各サンプルにおける目的遺伝子の発現量をCBP20遺伝子の発現量で除することにより行った。
【実施例】
【0079】
シロイヌナズナにおける各遺伝子の定量的RT-PCRに用いたプライマーの配列は以下の通りである。
【実施例】
【0080】
CBP20(At5g44200;フォワードプライマー5’-TGTTTCGTCCTGTTCTACTC-3’/配列番号:1,リバースプライマー5’-ACACGAATAGGCCGGTCATC-3’/配列番号:2)
PR-1(At2g14610;フォワードプライマー5’-CCCACAAGATTATCTAAGGGTTCAC-3’/配列番号:3,リバースプライマー5’-CCCTCTCGTCCCACTGCAT-3’/配列番号:4)(Jirage et al. (2001) Plant J 26: 395-407)
PDF1.2(At5g44420;フォワードプライマー5’-CCATCATCACCCTTATCTTCGC-3’/配列番号:5,リバースプライマー5’-TGTCCCACTTGGCTTCTCG-3’/配列番号:6)
その結果、7827、7827-A1、7827-A2、7827-A3、9630、9640は、防御応答遺伝子PR-1を強く発現誘導した(図1)。一方、7826、9642は防御応答遺伝子の発現誘導活性が低かった(図1)。
【実施例】
【0081】
[試験例2] 薬剤処理による防御応答遺伝子の発現誘導
植物の免疫の活性化は、防御応答遺伝子の発現を測定することにより判断することができる。既に明らかになっている3つの防御シグナル伝達経路であるサリチル酸シグナル伝達経路、ジャスモン酸シグナル伝達経路およびエチレンシグナル伝達経路について検定した。マーカー遺伝子としてPR-1遺伝子に追加して、サリチル酸シグナル伝達経路のマーカー遺伝子であるPR-2遺伝子、ジャスモン酸およびエチレンシグナル伝達経路のマーカー遺伝子であるPDF1.2遺伝子とPR-3遺伝子、ジャスモン酸シグナル伝達経路のマーカー遺伝子であるVSP2遺伝子、抗菌性タンパク質をコードする防御応答遺伝子であるキチナーゼ遺伝子(At2g43570/CHI570、At2g43620/CHI620)を用いた。
【実施例】
【0082】
植物材料として、土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として4週間栽培したシロイヌナズナ(生態型:コロンビア)を用いた。0.01%の展着剤マイリノーを添加した50ppmの「9640」および「7827」を、上述したように培養したシロイヌナズナに対し、1鉢当り3~5mlの噴霧または1鉢当り30mlの灌水で処理した。処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置し、2、5、10、24および48時間後にサンプリングした。サンプリングした植物体は液体窒素で凍結し、「RNA tissue Kit II」(富士フイルム社製)を用いて全RNAを抽出した。続いて、「PrimeScript RT reagent Kit」(タカラ社製)を用いて全RNAから一本鎖cDNAを合成した。さらに、「SYBR Green I PCR Master Mix」(タカラ社製)を用いて定量的RT-PCRを行った。また、定量的RT-PCRは、1×「SYBR Green I PCR Master Mix」、200nMのフォワードとリバースプライマーの反応液を、95℃10秒間の変性ステップの後、95℃5秒、62℃(PR-2、PR-3、At2g43570/CHI570、At2g43620/CHI620、VSP2)または65℃(CBP20、PR-1、PDF1.2)20秒のステップを1サイクルとし、40サイクル行った。
【実施例】
【0083】
各サンプル間の標準化は、植物で恒常的に発現しているCBP20遺伝子を用い、各サンプルにおける目的遺伝子の発現量をCBP20遺伝子の発現量で除することにより行った。
【実施例】
【0084】
シロイヌナズナにおける各遺伝子の定量的RT-PCRに用いたプライマーの配列は以下の通りである。
【実施例】
【0085】
CBP20(At5g44200;フォワードプライマー/配列番号:1,リバースプライマー/配列番号:2)
PR-1(At2g14610;フォワードプライマー/配列番号:3,リバースプライマー/配列番号:4)(Jirage et al. (2001) Plant J 26: 395-407)
PDF1.2(At5g44420;フォワードプライマー/配列番号:5,リバースプライマー/配列番号:6)
キチナーゼ(At2g43570;フォワードプライマー5’-CCAAGAAACAGGGTTCATGTGT-3’/配列番号:7,リバースプライマー5’-TAGTAGCCCTTTCCTTGTGC-3’/配列番号:8)
キチナーゼ(At2g43620;フォワードプライマー5’-CTGGAAAGTTCCTCGGACTC-3’/配列番号:9,リバースプライマー5’-GGACGAACATTTAGGTTCCAG-3’/配列番号:10)
PR-3(basic endochitinase)(at3g12500;フォワードプライマー5’-GGCAAACGCTACTACGGAAG-3’/配列番号:11,リバースプライマー5’-AAGCGATCACTGCGTCGTT-3’/配列番号:12)
PR-2(at3g57260;フォワードプライマー5’-CTTCAACCACACAGCTGGA-3’/配列番号:13,リバースプライマー5’-GCATTCGCTGGATGTTTTGT-3’/配列番号:14)
VSP2(at5g24770;フォワードプライマー5’-GGATACGGAACAGAGAAGACC-3’/配列番号:15,リバースプライマー5’-GTTCAATCCCGAGCTCTATG-3’/配列番号:16)
【実施例】
【0086】
その結果、灌水処理において、7827と9640はともに、PR-1遺伝子を強く発現誘導した。また、灌水処理において、7827は、VSP2遺伝子をやや強く発現誘導し、9640は、VSP2、CHI570、PR-2遺伝子をやや強く発現誘導した。一方、噴霧処理においては、7827と9640はともに、PR-1遺伝子を強く発現誘導した。また、7827は、VSP2、CHI620、CHI570、PR-2遺伝子をやや強く発現誘導し、9640は、CHI620、CHI570、PR-2遺伝子をやや強く発現誘導した(図2から4)。
【実施例】
【0087】
[試験例3] アブラナ科野菜類炭疽病菌に対する防除効果(その1)
また、植物材料として、土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として4週間栽培したシロイヌナズナ(生態型:コロンビア)を用いた。0.01%の展着剤マイリノーを添加した50ppmの「9640」および「7827」を、上述したように培養したシロイヌナズナに対し、1鉢当り3~5mlの噴霧または1鉢当り30mlの灌水で処理した。処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置した。散布2日後、人工培養したアブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)胞子の懸濁液(5×105胞子/ml)を噴霧接種し、22℃、相対湿度100%の湿度に保ち感染させた。接種6日後に病徴を観察した。その結果、灌水処理では大きな防除効果は示さなかったが、両薬剤について噴霧処理において病徴の抑制が認められ、防除効果を示した(図5)。
【実施例】
【0088】
[試験例4] アブラナ科野菜類炭疽病菌に対する防除効果(その2)
植物材料として、直径7cmのプラスチックポット中の土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として4週間栽培したシロイヌナズナ(生態型:コロンビア)を用いた。上述したように培養したシロイヌナズナに、予め調製した0.01%の展着剤マイリノーを添加した20ppmの各種薬剤の溶液を、1鉢当り3~5mlの噴霧で処理した。処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置した。散布2日後、人工培養したアブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)胞子の懸濁液(5×105胞子/ml)を噴霧接種し、22℃、相対湿度100%の湿度に保ち感染させた。接種6日後、鉢当りの罹病度を下記基準により類別評価した。結果を表2に示す。結果は1区9~15試料の平均である。181、2219、7827、9640、7827-A1、7827-A2、7827-A3が防除効果を示し、その中でも、特に、7827、9640、7827-A1、7827-A2、7827-A3が20ppmで優れた防除効果を示した。
【実施例】
【0089】
罹病度
0:病斑を認めない.1:病斑がわずかに認められる.2:病斑が葉面積の1/4未満を占める.3:病斑が葉面積の1/4~1/2未満を占める.4:病斑が葉面積の1/2以上を占める.5:枯死.
防除価(%)=(1-(処理区の罹病度÷無処理区の罹病度))×100
【実施例】
【0090】
【表2】
JP0005618235B2_000022t.gif
【実施例】
【0091】
[試験例5] アブラナ科野菜類炭疽病菌に対する防除効果
植物材料として、直径7cmのプラスチックポット中の土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として16日間栽培したハクサイ(品種:無双)を用いた。各種薬剤を上述したように培養したハクサイに、予め調製した0.01%の展着剤マイリノーを添加した40ppmの「9640」および「7827」を、1鉢当り3~5mlの噴霧で処理した。処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置した。散布1日後、人工培養したアブラナ科野菜類炭疽病菌(Colletotrichum higginsianum)胞子の懸濁液(5×105胞子/ml)を噴霧接種し、22℃、相対湿度100%の湿度に保ち感染させた。接種6日後、鉢当りの罹病度を下記基準により類別評価した。また、薬害も同時に調査した。結果を表3に示す。結果は1区3個体の平均である。「9640」および「7827」は、アブラナ科野菜類炭疽病菌に対し40ppmで優れた防除効果を示した。
【実施例】
【0092】
罹病度
0:病斑を認めない.1:病斑がわずかに認められる.2:病斑が葉面積の1/4未満を占める.3:病斑が葉面積の1/4~1/2未満を占める.4:病斑が葉面積の1/2以上を占める.5:枯死.
防除価(%)=(1-(処理区の罹病度÷無処理区の罹病度))×100
【実施例】
【0093】
【表3】
JP0005618235B2_000023t.gif
【実施例】
【0094】
[試験例6] アブラナ科黒斑細菌病菌に対する防除効果
植物材料として、直径7cmのプラスチックポット中の土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として4週間栽培したシロイヌナズナ(生態型:コロンビア)を用いた。上述したように培養したシロイヌナズナに、予め調製した0.01%の展着剤マイリノーを添加した20ppmの各種薬剤の溶液を、1鉢当り3~5mlの噴霧で処理した。処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置した。
【実施例】
【0095】
処理2日後に黒斑細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. maculicola)を用いて防除効果を調べた。黒斑細菌病菌をKing's B液体培地中で一晩振とう培養した。菌を10mM MgSO4液に懸濁して1×108(cfu)/mlに調製し、この菌液を植物全体に噴霧することで病原菌を接種した。接種後3日目に接種葉をサンプリングし、黒斑細菌病菌の感染量を定量した。黒斑細菌病菌の植物への感染量の定量は、黒斑細菌病菌において恒常的に発現しているrpoD遺伝子の発現量を指標に行った。
【実施例】
【0096】
サンプリングした植物体は液体窒素で凍結し、「RNA tissue Kit II」(富士フイルム社製)を用いて全RNAを抽出した。続いて、「PrimeScript RT reagent Kit」(タカラ社製)を用いて全RNAから一本鎖cDNAを合成した。さらに、「SYBR Green I PCR Master Mix」(タカラ社製)を用いて定量的RT-PCRを行った。また、定量的RT-PCRは、1×「SYBR Green I PCR Master Mix」、200nMのフォワードプライマーとリバースプライマーの反応液を、95℃10秒間の変性ステップの後、95℃5秒、60℃(rpoD)または65℃(CBP20)20秒のステップを1サイクルとし、40サイクル行った。
【実施例】
【0097】
各サンプル間の標準化は、植物で恒常的に発現しているCBP20を用い、各サンプルにおける黒斑細菌病菌のrpoD遺伝子の発現量をCBP20遺伝子の発現量で除することにより行った。
【実施例】
【0098】
各遺伝子の定量的RT-PCRに用いたプライマーの配列は以下の通りである。
rpoDフォワードプライマー5'-CCGAGATCAAGGACATCAAC-3'/配列番号:17
rpoDリバースプライマー5'-GAGATCACCAGACGCAAGTT-3'/配列番号:18
CBP20(At5g44200)フォワードプライマー/配列番号:1
CBP20(At5g44200)リバースプライマー/配列番号:2
【実施例】
【0099】
その結果、無処理に対して、181、2219、9640、7826、7827、7827-A2、7827-A3は、20ppmで有意に感染を抑制した。3339、6953はわずかに抑制した(図6)。
【実施例】
【0100】
[試験例7] アブラナ科黒斑細菌病菌に対する防除効果
植物材料として、直径7cmのプラスチックポット中の土(ダイオ化成社製)に播種し、24時間の明暗サイクルを明時間12時間および暗時間12時間として16日間栽培したハクサイ(品種:無双)を用いた。上述したように培養したハクサイに、予め調製した20ppmの「9640」および「7827」を1鉢当り3~5mlの噴霧で処理した。処理後、22℃で明時間12時間および暗時間12時間のサイクル条件下で静置した。
【実施例】
【0101】
処理2日後に黒斑細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. maculicola)を用いて防除効果を調べた。黒斑細菌病菌をKing’s B液体培地中で一晩振とう培養した。菌を10mM MgSO4液に懸濁して1×108(cfu)/mlに調製し、この菌液を植物全体に噴霧することで病原菌を接種した。接種6日後、鉢当りの罹病度を下記基準により類別評価した。また、薬害も同時に調査した。結果を表4に示す。結果は1区3個体の平均である。「9640」および「7827」は、アブラナ科黒斑細菌病菌に対し20ppmで優れた防除効果を示した。
【実施例】
【0102】
罹病度
0:病斑を認めない.1:病斑がわずかに認められる.2:病斑が葉面積の1/4未満を占める.3:病斑が葉面積の1/4~1/2未満を占める.4:病斑が葉面積の1/2以上を占める.5:枯死.
防除価(%)=(1-(処理区の罹病度÷無処理区の罹病度))×100
【実施例】
【0103】
【表4】
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【産業上の利用可能性】
【0104】
以上説明したように、本発明のピリジンピリミジン誘導体を利用することにより、植物の病原抵抗性遺伝子の発現を通じて、効果的に植物病害を防除することが可能となった。本発明は、農作物をはじめとする植物の生産性の向上などに大きく貢献しうるものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図6】
4
【図5】
5