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明細書 :チタン酸バリウム系結晶の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5273468号 (P5273468)
公開番号 特開2010-215450 (P2010-215450A)
登録日 平成25年5月24日(2013.5.24)
発行日 平成25年8月28日(2013.8.28)
公開日 平成22年9月30日(2010.9.30)
発明の名称または考案の名称 チタン酸バリウム系結晶の製造方法
国際特許分類 C30B  29/32        (2006.01)
C30B   7/14        (2006.01)
C30B  33/02        (2006.01)
C04B  35/468       (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
H01L  41/187       (2006.01)
H01L  41/39        (2013.01)
FI C30B 29/32 C
C30B 7/14
C30B 33/02
C04B 35/46 D
C01G 23/00 C
H01L 41/18 101B
H01L 41/22 A
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2009-063809 (P2009-063809)
出願日 平成21年3月17日(2009.3.17)
審査請求日 平成24年1月5日(2012.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】秋重 幸邦
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開2007-326768(JP,A)
特開2004-026641(JP,A)
調査した分野 C30B 1/00-35/00
C01G 23/00
C04B 35/468
H01L 41/187
H01L 41/39
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
Tiのモル比をBaのモル比より多く原料調整し、
BaアルコキシドとTiアルコキシドとKFとが混合されたゾル溶液から、ゾルゲル法によって前駆体ゲルを作製して1000℃未満の温度で有機分を除去し、これにより、BaTiO結晶のBaの一部がKにOの一部がKと同量のFに置換された結晶粉末を得ることを特徴とするチタン酸バリウム系結晶の製造方法。
【請求項2】
Ba1-xTiO3-xと表記したときに、0<x≦0.15であることを特徴とする請求項1に記載のチタン酸バリウム系結晶の製造方法。
【請求項3】
請求項1若しくはに記載のチタン酸バリウム系結晶の製造方法により得られた結晶粉末をスパークプラズマ焼成し、セラミックスを得ることを特徴とするチタン酸バリウム系セラミックスの製造方法。
【請求項4】
相対密度が90%以上であることを特徴とする請求項に記載のチタン酸バリウム系セラミックスの製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、KとFを含有するチタン酸バリウム系結晶の製造方法に関し、特に、室温における比誘電率が大きく成形性に優れるチタン酸バリウム系素材に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸バリウム(BaTiO)は強誘電体として知られている。強誘電体は圧電材料として用いることができるので、電子部品材料として広く利用されている。中でも、セラミック系圧電材料としては、チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)が、その圧電定数も大きなため最もよく用いられてきた経緯がある。
【0003】
ここで、PZTは鉛を含むため、環境面への配慮から近年では鉛フリーな圧電材料が求められている。本願発明者は先にKおよびFを含有させることによりPZTと同等以上の物性を有するチタン酸バリウム系結晶を発明している(特許文献3)。
【0004】
しかしながら、従来の技術では以下の問題点があった。
特許文献3に係る技術は、新規かつ画期的な発明であるが、単結晶として成長させるため、大きさや用途が限定されるという問題点があった。たとえば、そのままでは積層コンデンサ等への利用が困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第3751304号公報
【特許文献2】特開2003-104796号公報
【特許文献3】特開2007-326768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、解決しようとする問題点は、成形性に優れ鉛を含まない強誘電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のチタン酸バリウム系結晶の製造方法は、Tiのモル比をBaのモル比より多く原料調整し、BaアルコキシドとTiアルコキシドとKFとが混合されたゾル溶液から、ゾルゲル法によって前駆体ゲルを作製して1000℃未満の温度で有機分を除去し、これにより、BaTiO結晶のBaの一部がKにOの一部がKと同量のFに置換された結晶粉末を得ることを最も主要な特徴とする。チタンリッチとすることを意味する。
【0008】
なお、原料(BaアルコキシドとTiアルコキシドとKF)は、メタノールなどのアルコールに溶解させた溶液とすることができる。また、結晶粉末とは、ナノクリスタルと表現してもよい。径は特に限定されないが、たとえば、数十nmの粒を挙げることができる。
【0010】
また、請求項に記載のチタン酸バリウム系結晶の製造方法は、請求項1に記載のチタン酸バリウム系結晶の製造方法において、Ba1-xTiO3-xと表記したときに、0<x≦0.15であることを主要な特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載のチタン酸バリウム系セラミックスの製造方法は、請求項1若しくはに記載のチタン酸バリウム系結晶の製造方法により得られた結晶粉末をスパークプラズマ焼成し、セラミックスを得ることを最も主要な特徴とする。いわゆる緻密セラミックスを得るものである。
【0013】
また、請求項に記載のチタン酸バリウム系セラミックスの製造方法は、請求項に記載のチタン酸バリウム系セラミックスの製造方法において、相対密度が90%以上であることを主要な特徴とする。なお、相対密度とは、同じ体積の単結晶の密度に対する割合をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形性に優れた鉛フリーな強誘電体ないし圧電体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】KFがドープされたBaTiOの結晶粉末の透過電子顕微鏡写真である。
【図2】得られた粉末が単結晶であることを示すブラッグ回折の観測結果である。
【図3】KFがドープされたBaTiOのX線回折結果である(KF10%:仮焼き温度650℃)。
【図4】KFがドープされたBaTiOのX線回折結果である(KF10%:650℃で仮焼き後1000℃で2時間焼成)
【図5】KFを10%ドープしたBaTiOの比誘電率と温度の関係を示した図である。また、周波数依存性もあわせてプロットしている。
【図6】先に得られた単結晶Ba0.9K0.1TiO2.9F0.1の比誘電率と温度の関係を示した図である。
【図7】先に得られた単結晶Ba1-xKxTiO3-xFxのxと比誘電率曲線との関係を示した図である。
【図8】KFがドープされたBaTiOのX線回折結果である(KF15%:仮焼き温度650℃)
【図9】KFを15%ドープしたBaTiOの比誘電率と温度の関係を示した図である。また、周波数依存性もあわせてプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ゾルゲル法を用い、仮焼き温度が比較的低温であってもKおよびFがBaTiOのそれぞれBaおよびOとそれぞれ置換するという予想外の発見に基づきなされたものである。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。

【0017】
<結晶粉末の製造>
原料として、Tiアルコキシド、Baアルコキシド、および、KF粉末を用いる。具体的には、Ti(OCH(CH(キシダ化学社製、チタニウムテトライソプロポキシド、純度99%up)、Ba(OC(高純度化学研究所社製、ジエトキシバリウム、純度99%up)、KF(メルク社製、フッ化カリウム、純度99%up)を、Ba:K:Tiのモル比が1-x:x:1となるように調整した。ここで、xは、KFの添加割合を示す。配合が示すように、バリウムよりチタンを多くしてチタンリッチとすることにより、KおよびFの置換を促進させる。

【0018】
溶媒は、2-メトキシエタノールとメタノールを体積比2:3に混合したものを用意した。混合液1リットルあたり、上記配合比の原料を1.0mol添加した。添加後、室温にてNガス雰囲気下で混合攪拌した。

【0019】
次に、加水分解および重縮合をおこなう。これは、0℃の溶液に水を吹き付け、つづいて、50℃で3日間加熱することによりおこなった。

【0020】
<評価:結晶性の確認>
上記の操作で得られたドライジェルを粉末化した。つづいてこれを650℃で8時間仮焼きし、不要な有機物等を除去して粉末を得た。粉末の透過電子顕微鏡写真を図1に示す。スケールと比較すると粒径は20nm~100nmの大きさであることが分かる。次に、この粒子に対して電子線を照射したところブラッグ回折が現れたので(図2)、得られた粉末は、単結晶であることが確認できた。

【0021】
次に、この粉末結晶をX線回折により測定した。結果を図3に示す。純粋なBaTiOはキュリー温度(約120℃)より高い温度で立方晶であり、それより低い温度では正方晶である(5℃以下では斜方晶となる)。立方晶でも正方晶でも回折ピークの位置は同じであって、立方晶の場合はシングルピーク、正方晶の場合はツインピークとなる。

【0022】
図3から明らかなように、回折ピークはシングルピークであるため、得られた粉末結晶は立方晶に近く、キュリー温度が大幅に低下した結晶、すなわち、特許文献3で得られたKおよびFがドープされた結晶が作製されていることが確認できた。なお、フッ化カリウムの融点が860℃であることを考慮すると、650℃のような低温でKおよびFの置換が生じていることは予測ができず、ゾルゲル法を用いた元素置換は想定外であった。

【0023】
650℃で仮焼きした後に1000℃で2時間焼成した結晶粉末のX線回折結果を図4に示す。なお、純粋なBaTiOのX線回折像もあわせて示した。また、75°付近の拡大図も示した。1000°で焼成した場合も、立方晶に近いことが確認できた。

【0024】
<セラミックス化>
次に、この結晶粉末をセラミックス化した。粉末を平板状に整え、1000℃でスパークプラズマ焼成し、緻密化した。収縮や膨潤等はおこらず、成形性に優れることが確認できた。密度を測定したところ5.4g/cmであり、BaTiOの密度が6.02g/cmであるので、得られた結晶粉末の相対密度は90%であるといえる。
<評価:誘電率>
次に、このセラミックスの誘電率を測定した。測定結果を図5に示す。周波数が高いほど比誘電率が小さくなる傾向があるものの、図6(特許文献3図2と同一)に示したように、先に単結晶として得たBa0.9K0.1TiO2.9F0.1と略同じ誘電曲線を描き、ピーク温度(キュリー温度)である50℃付近で比誘電率が約12000(300Hz)に達し、極めて高いことが確認できた。

【0025】
図7に、先に単結晶として得たBa1-xKxTiO3-xFxのxと比誘電率曲線との関係を示す(特許文献3図3と同一)。これから明らかなように、x=0.1付近でキュリー温度が最大となることが分かるが、この曲線と図5の曲線は極めて近似し、比誘電率の絶対値も同等である(x≒0.1でないと急激に比誘電率の最大値が小さくなる)。また、仮焼きの際にはKFは散逸し得ない。よって、本発明では、添加したKFはそのまま結晶中に取り込まれるといえる。換言すれば、本発明において、Ba:K:Tiのモル比を1-x:x:1となるように調整すれば、得られる結晶はBa1-xKxTiO3-xFxとなるといえる。

【0026】
また、圧電定数d33を測定した。25℃における圧電定数d33=68pC/N(0.94MV/mで分極後)であり、PZTの圧電定数には及ばないものの、室温における純粋なBaTiOの圧電定数がおよそ50pC/Nであるので、4割以上向上した物性であることが確認できた。圧電定数は相対密度に依存するので、セラミックス製造の際には相対密度を90%以上とすることが好ましい。これにより、従来の純粋なチタン酸バリウムに比して比誘電率も圧電定数も格段に向上し、条件によってはPZTより優れた物性のセラミックスを得ることができる。

【0027】
<15%KF置換>
上述と同様の方法で、15%のKFを原料に用いた(x=0.15)チタン酸バリウム系結晶粉末を作製した(仮焼き温度650℃)。得られた結晶粉末のX線回折を測定した結果を図8に示す。図示したように、六方晶の相の出現が確認された。また、誘電率を測定した結果を図9に示す。図5と比較すると分かるように、キュリー温度は、およそ50℃であり、10%添加の場合とほとんど変わらないものの、比誘電率曲線は全体にブロードとなり、最大誘電率も小さくなることが確認できた。これから、KFの添加量は15%以下とすることとした。なお、わずかでも添加するとそれに伴いキュリー温度の低下、比誘電率の上昇、圧電定数d33の上昇が生じると考えられる。特許文献3も考慮すると、5%以上15%以下添加することが好ましい。

【0028】
以上説明したように、本発明によれば、粉末である利点を生かし成形性を高め、形状の自由度高くセラミックス化が可能であり、極めて高い比誘電率を有し、また、高い圧電定数を有するチタン酸バリウム系セラミックスを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、圧電定数d33の値が高く、鉛フリーであるので、コンデンサ材料としてはもとより、広く圧電材料として、インクジェットプリンタのプリンタヘッド、液晶画面のバックライト用の圧電トランスなどにも適用可能である。すなわち、本発明である物質または本発明である製造方法により得られる物質は、強誘電体としても圧電体(または圧電材料)としても使用できる。
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図1】
7
【図2】
8