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明細書 :遺伝子導入のための分子複合体の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4765061号 (P4765061)
公開番号 特開2006-230343 (P2006-230343A)
登録日 平成23年6月24日(2011.6.24)
発行日 平成23年9月7日(2011.9.7)
公開日 平成18年9月7日(2006.9.7)
発明の名称または考案の名称 遺伝子導入のための分子複合体の製造方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A61K  48/00        (2006.01)
FI C12N 15/00 A
A61K 48/00
請求項の数または発明の数 1
全頁数 8
出願番号 特願2005-052965 (P2005-052965)
出願日 平成17年2月28日(2005.2.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成16年9月1日 社団法人高分子学会発行の「高分子学会予稿集 53巻2号第4304-4305ページ」に発表
審査請求日 平成20年2月1日(2008.2.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】岸田 晶夫
【氏名】木村 剛
【氏名】吉澤 秀和
個別代理人の代理人 【識別番号】100081271、【弁理士】、【氏名又は名称】吉田 芳春
審査官 【審査官】鈴木 崇之
参考文献・文献 特開2003-261777(JP,A)
高分子学会予稿集,2003年,Vol.52, No.13,P.3736-3737
Mater. Sci. Eng. C,2004年,Vol.24,P.797-801
高分子学会予稿集,2003年,Vol.52, No.13,P.3852-3853
バイオ・高分子シンポジウム講演要旨集,2003年,Vol.13th,P.43-44
調査した分野 C12N 15/09
A61K 48/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
PubMed
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
培養細胞又は生体を構成する細胞に対し遺伝子を導入するための分子複合体の製造方法であって、
最初に、水素結合性の官能基又は結合を有し、遺伝子と水素結合を形成し得る高分子と、ハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)の結晶を混合して両者を結合させ、その後に遺伝子を加えて、これらの混合物を10000~15000気圧の高圧で処理することにより、ナノあるいはマイクロメートルサイズの分子複合体を形成することを特徴とする分子複合体の製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、培養細胞もしくは生体を構成する細胞に対しDNA等の遺伝子を導入するための分子複合体(非ウイルス性ベクター)の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子を細胞へ導入する技術は、構造遺伝子や、アンチセンスヌクレオチド、デコイ型ヌクレオチド、リボザイム等を細胞に導入する遺伝子治療等の臨床応用において極めて重要であり、そのため安全性、安定性に優れ、かつ高効率な遺伝子の細胞への導入法の開発が強く望まれている。
【0003】
従来、遺伝子を細胞へ導入する際には、アデノウイルスやレトロウイルス等のウイルス性ベクターが多く用いられている。特に、in vivoでは、感染という自然現象を転用した導入効率の高さ、再現性の高さによってウイルスベクターは有用な材料となっている。しかし、遺伝子治療に用いる場合、サイズの大きい遺伝子の導入に適用できなかったり、ウイルスの安定性、免疫機構による頻回投与の制限などに問題があり、またウイルス自体の安全性にも改良すべき点が残されている。そこで、デンドリマーに代表される高分子化合物や、脂質の会合体であるリポソームなどのポリカチオンと遺伝子との複合体からなるナノパーティクルを用いる非ウイルス性ベクターの開発が進められている。
【0004】
上記の非ウイルス性ベクターの例として、(特許文献1)には、リン脂質及び第4級アンモニウム塩を主要膜構成成分とし、当該膜中にN-アシル化アシアロフェツインを含有し、肝疾患治療ペプチド発現遺伝子を内包してなる肝疾患治療用リポソームベクターが記載されている。
【0005】
また、(特許文献2)には、カチオン性ポリマーを担持した磁性粒子よりなる非ウイルス性ベクターと核酸とを混合して複合体を形成する技術が開示されている。この核酸含有複合体は、生体内へ投与した後、体外又は体内へ挿入したデバイスからの磁力印加によって血管の特定の部位へ集合させて血管内疾患等の治療を行うものである。さらに、ポリリジンと遺伝子の複合体も細胞への遺伝子導入に効果的であることが知られている。
【0006】
上述のようなリポソーム等の非ウイルス性ベクターを用いる方法は、一般に遺伝子の導入効率が低いという問題がある。ベクターの効率を向上させるためには、外部遺伝子を細胞内に導入するまでは安定な複合体を形成し、細胞内では逆に安定性を低下させ遺伝子を核内へリリースするという相反する機能が要求されるが、この要求を十分満たすような非ウイルス性ベクターは未だ提案されていない。
【0007】

【特許文献1】特開平7-69933号公報
【特許文献2】特開2004-129602号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記従来の状況に鑑み、安定性、安全性に優れ、また高い遺伝子導入効率を有する非ウイルス性ベクター(分子複合体)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、請求項1として、培養細胞又は生体を構成する細胞に対し遺伝子を導入するための分子複合体の製造方法であって、最初に、水素結合性の官能基又は結合を有し、遺伝子と水素結合を形成し得る高分子と、ハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)の結晶を混合して両者を結合させ、その後に遺伝子を加えて、これらの混合物を10000~15000気圧の高圧で処理することにより、ナノあるいはマイクロメートルサイズの分子複合体を形成することを特徴とする分子複合体の製造方法を提供するものである。
【0010】
上記構成によれば、高圧処理によって遺伝子を含有する安定な分子複合体が形成される。この分子複合体はゲル状又は微粒子状であり、エンドサイトーシス等により細胞内に取り込まれた際には無機塩の作用によって遺伝子が分離し易くなる。
【0012】
上記構成によれば、超高圧下で処理することにより水素結合性が強調され、官能基周囲の水和状態が変化して強い構造体が形成される。
【0016】
上記構成によれば、ハイドロキシアパタイトは結晶表面に極性基を有しており、高分子との相互作用によって安定な分子複合体を形成する。また、細胞内ではカルシウムイオン、及びリン酸イオンとなり、浸透圧が変化して分子複合体が不安定化する。
【0018】
上記構成によれば、細胞への遺伝子導入に用いることが可能なナノあるいはマイクロメートルサイズの安定な分子複合体を形成するため、混合物を処理する圧力の範囲が最適化される。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、遺伝子導入効率が高く、非ウイルス性ベクターとして利用可能な分子複合体を得ることができる。この分子複合体は、核酸酵素耐性を有し、また長時間にわたり遺伝子発現性を示すため、「持続型」のベクターとして機能し得るものである。
また、血清存在下においても細胞内への遺伝子導入が可能であり、それゆえ遺伝子治療に応用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の分子複合体は、高分子と、細胞内でイオン化し得る無機塩と、遺伝子との混合物を高圧で処理することにより形成される。この高圧処理により、分子周囲の水和構造が破壊され、全体のエントロピーが減少してゲル状又は微粒子状の安定な分子複合体が得られる。
【0021】
高分子としては、水素結合性の官能基又は結合を有する高分子を用いることが好ましい。これらは、高圧処理によって遺伝子との間の水素結合が強調され、常圧に戻しても安定であるかもしくは崩壊の半減期が非常に長い安定な構造体を形成する。
【0022】
上記の水素結合性の官能基又は結合を有する高分子としては、合成及び天然高分子を用いることができ、また水溶性、非水溶性のいずれも適用可能である。ここで水素結合性の官能基とは、ヒドロキシル基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン基、アシル基、アルデヒド基、アセチル基、ニトリル基等であり、水素結合性の結合とは、アミド結合、エーテル結合、エステル結合等をいう。これらを有する高分子の他、アルカロイド(窒素)を含む高分子、求電子及び求核性部位を有する高分子、共役部位を有する高分子、ヘテロ原子を主鎖に有する高分子等を用いることもできる。
【0023】
具体的には、合成高分子として、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリビニルアミン、ポリビニル硫酸、ポリビニルスルホン酸、ポリメチルメタクリレート、ナイロン類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリフォスファゼン、ポリ乳酸、ポリグリコール類、ポリεカプロラクタム、ポリ-N-イソプロピルアクリルアミド、ポリ-γ-ベンジル-L-グルタメート、ポリオルソエステル、ポリ酸無水物、ポリアクリロニトリル、ポリスルフォン、ポリアリルアミン、ポリメタクリロイルホスファチジルコリン、ポリグルコシルオキシエチルメタクリレート、ポリ-N-パラビニルベンジル-4-o-β-ガラクトピラノシル-D-グルコンアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。特に、ポリビニルアルコールは形成する分子複合体が安定であり、かつ細胞内に取り込まれた後の遺伝子の発現効率に優れるため好適に用いられる。また、ポリエチレングリコールは人体への投与が認められており、遺伝子治療への応用に当たり安全性に優れる物質として好適に用いられる。
【0024】
さらに、天然高分子としては、タンパク質、糖、微生物由来粘質物、植物由来粘質物、デンプン質等が挙げられ、具体的には、デキストラン、IgG等の抗体、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギニン酸、デンプン、ペクチン、フィブロイン、セルロース、γ-ポリグルタミン酸、フィブリン、リグニン、エラスチン、キチン、キトサン等が挙げられる。また、半合成高分子としては、セルロース系、デンプン系等が挙げられ、具体的には、再生セルロース、酸化セルロース、セルロースアセテート、ショ糖エステル等を挙げることができる。
なお、本発明では、上述のように水素結合性の高分子を用いることが好ましいが、それ以外にも、分子鎖の屈曲性に優れ、高圧処理によって遺伝子もしくは無機塩と相互作用してエントロピーが減少し易い高分子であれば適宜採用することができる。具体例として、ポリエチレン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0025】
高分子の分子量は、混合物に加える圧力や高分子の種類によって最適値が異なり特に限定されるものではないが、形成する分子複合体のサイズに影響するため、分子複合体の用途等を考慮して適宜設定される。一般に、分子量が大きいと複合体のサイズは大きくなり、逆に分子量が小さくなると複合体のサイズは小さくなる。例えば、ポリビニルアルコールを10000気圧程度で処理する場合、鹸化度や液体媒体中に溶解させる濃度によっても異なるが、最終的な分子複合体を毛細血管に入るようなサイズ(200nm以下)に形成するには分子量を1~5万、分子複合体を1μm以下程度のサイズに形成するには分子量を10~30万程度とすることが好ましい。
【0026】
次に、本発明では無機塩を添加することを特徴とする。この無機塩は、高分子の分子鎖と相互作用することによって分子複合体を安定化させるものである。例えば、ハイドロキシアパタイト(水酸化リン酸カルシウム)を添加した場合には、ハイドロキシアパタイトの結晶におけるリン酸の面と高分子(特にPVA等の水素結合性の高分子)との相互作用によって、より安定な複合体を形成する。また本発明者は、無機塩を添加した場合に、遺伝子の発現効率が高まることを知見している。これは、分子複合体がエンドサイトーシス等の作用によって細胞内に取り込まれ、その後エンドソームによって運搬される際に、エンドソーム内が酸性(pH5程度)であるため、ハイドロキシアパタイトがカルシウムイオンとリン酸イオンとにイオン化し、それによって分子複合体に水分が流入し、浸透圧が変化して分子複合体が崩壊し、その結果として遺伝子をリリースし易くなることが原因であると考えられる。このような無機塩の具体例としては、細胞内でのpH変化(pH7からpH5への環境変化)に伴ってイオン化し得る無機塩であれば適用可能であり、具体的には、ハイドロキシアパタイトの他、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、リチウムブロマイド等を挙げることができる。
【0027】
また、本発明における遺伝子とは、DNA、RNA、あるいはDNA、RNAとハイブリッドを形成する合成ヌクレオチド、及びそれらの修飾されたものをいう。また、これらの2つ以上の混合物であっても良い。さらに、遺伝子には、構造遺伝子の他、アンチセンス遺伝子、デコイ型遺伝子、リボザイム等の遺伝子が含まれる。
【0028】
上記各物質の混合物を高圧処理する際には、通常、所定の高分子、無機塩、及び遺伝子を液体媒体中に加え、その溶液に圧力を加えることにより行う。液状媒体としては特に制限はなく、水又は有機溶媒を用いることができる。また、有機溶媒は極性又は非極性溶媒のいずれも適用可能である。有機溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素、DMF、アセトニトリル、DMSO、MEK、アセトン、低級アルコール、THF等を挙げることができる。
【0029】
液体媒体中の高分子及び無機塩の濃度は、分子複合体のサイズに影響を与えるため、用途等を勘案して適宜設定される。一般的には、濃度を高くすると分子複合体のサイズは大きくなる傾向がある。具体的な濃度としては、高分子や液体媒体の種類によって異なり特に限定されるものではないが、例えば高分子として分子量17万程度のポリビニルアルコール、無機塩としてハイドロキシアパタイト、液体媒体として水を用いた場合、10000気圧を加えてサイズが200nm以下の分子複合体を形成しようとする場合には、ポリビニルアルコールを0.005~0.015wt%、無機塩を0.0005~0.0015wt%程度とすることが適当である。
【0030】
混合物に加える圧力は、液体媒体に溶解させた状態で1000~15000気圧、好ましくは3000~15000気圧、より好ましくは4000~15000気圧が適当であり、超高圧処理装置等を用いて行う。液体媒体に混合物を加える際には、高分子、無機塩、及び遺伝子を同時に加えても良いが、まず最初に高分子と無機塩の結晶とを混合し、超音波振動等を加えて両者を結合させ、その後に目的の遺伝子を加えて高圧処理すると、複合体の安定性が増すため好ましい。高圧処理により形成される分子複合体の形態は、ゲル又は微粒子であり、混合物の濃度が低い場合には微粒子が生成する。高圧処理する際の温度は、常温~50℃程度が好ましいが、必要に応じて、より高温あるいは低温で処理しても良い。
【0031】
以上の手順により目的の分子複合体が得られる。この分子複合体を細胞に作用させることにより遺伝子を導入することができる。遺伝子を導入する対象である細胞としては、導入する遺伝子に応じて適宜選択される。具体的には、血管内皮細胞、骨髄細胞、血球幹細胞、血球細胞、骨細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、骨格筋細胞等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。
【0032】
本発明の分子複合体を用いた細胞の形質転換方法は、培養細胞に導入する場合、適切な培養液で培養した培養細胞の培地に分子複合体を加え、適切な温度で適切な時間、適切な条件下で処理(インキュベート)することによって行われる。この際、本発明では培地としてFCS(ウシ胎仔血清)等を用いた場合であっても高い遺伝子発現性を示すことが分かっている。血清存在下においても細胞内への遺伝子送達が可能であることから、抗原性が低く、頻回投与に耐えることができ、遺伝子治療に有効であることが示唆される。
【0033】
なお、遺伝子自体は一般に生体内において不安定であり、核酸酵素によって分解されるが、本発明の分子複合体は、高分子及び無機塩によって遺伝子が保護されており、十分な遺伝子発現性を保ちながら高い核酸酵素耐性をも有している。したがって、「持続型」の非ウイルス性ベクターとして好適に利用することができる。
【0034】
また、本発明の分子複合体は、上記培養細胞だけでなく、直接生体に接種して、生体を構成する細胞に対し遺伝子を導入することができる。生体へ投与するに際しては任意の方法を採用することができるが、持続的かつ局所的な遺伝子発現のためには非経口的な投与が好ましい。すなわち、本発明の分子複合体に、必要に応じて安定化剤、保存剤、可溶化剤、pH調整剤、増粘剤等の製剤上許容し得る担体を加え、これを生体に注入することにより行うことができる。静脈内又は動脈内への注入が好ましいが、筋肉内、脂肪組織内、リンパ節内、皮下、体腔(心膜腔、胸腔、腹腔、脳脊髄腔)内、骨髄内への投与の他、病変組織内に直接投与することも可能である。なお、投与量は、遺伝子の種類、治療する部位等に応じて適宜設定される。
【0035】
非経口的に投与する際には、液状の薬剤を調製して投与する場合のみならず、固形、半固形状の製剤としても良い。この場合は、遺伝子導入する部位に製剤を直接埋め込む方法、ペースト状製剤を注射器にて注入する方法、粒子状の製剤を懸濁注射により注入する方法、経皮経管的にカテーテルを挿入し、ステントに付着させた分子複合体を血管内に留置する方法、分子複合体の微粒子をカテーテルにより注入し、遺伝子発現を期待する部位に局在させる方法等を挙げることができる。
【0036】
本発明の分子複合体は、非ウイルス性のベクターとして、培養細胞の形質転換の他、遺伝子治療に好適に応用することができる。適用可能な疾患としては、癌(脳腫瘍、転移性悪性腫瘍、乳癌等)、HIV等の感染症、遺伝性疾患、循環器領域での疾患等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
ポリビニルアルコール(PVA117、クラレ(株)製、けん化度99.3%、分子量74800)と、約50nmのハイドロキシアパタイト(HAp)の結晶とを水に加え、3分間超音波振動を行った。PVA及びHApの濃度はそれぞれ1重量%、0.1重量%とした。その後、1kbラダーDNAマーカーを加え、超高圧処理装置(Dr.CHEF;(株)神戸製鋼所)を用いて40℃、10000気圧の条件で10分間処理した。得られた超高圧処理溶液を目視および顕微鏡下で観察した。
実験の結果、高圧処理後の溶液のSEM観察により約200nmの粒子が認められたことから、PVA-HAp-DNAの分子複合体の形成が示唆された。
また得られた分子複合体の相互作用が水素結合性であることを確認するために、尿素を用い相互作用阻害実験を行った。尿素を添加して超高圧処理を行った場合には複合化は確認できなかった。これは尿素による水素結合阻害の結果であり、分子複合体の相互作用が水素結合性であることが示唆された。
【0038】
(実施例2)
遺伝子として蛍光剤(ローダミン)ラベル化pEGFPを用いて遺伝子発現の効率を評価した。細胞内に取り込ませる分子複合体は、DNAラダーに代えて上記Rhラベル化pEGFPを用いた以外は上記実施例1と同様の手法により形成した。また、遺伝子導入する細胞としてはサル由来の腎臓細胞(COS7)を用いた。
比較例として、(1)DNA(Rh-pEGFP)のみを高圧処理したもの、(2)PVAとDNAのみを高圧処理したもの、(3)従来のリポソームベクター(Lipofectamine2000)とDNAとを混合したもの(圧力加えず)、(4)HApとDNAのみを混合したもの(圧力加えず)、(5)PVAとHApとDNAとを混合したもの(圧力加えず)、のそれぞれ細胞に取り込ませ遺伝子発現を評価した。遺伝子発現させた後の蛍光顕微鏡観察の結果を、実施例2については図1に、上記(3)の比較例について図2に示す。
図に示すように、本発明の分子複合体は、従来のリポソームベクターと同等以上の遺伝子発現効率を示すことが明らかとなった。なお、その他の比較例は遺伝子発現能を示さないか又は非常に効率が低いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例2における蛍光顕微鏡観察の結果を示す図である。
【図2】比較例における蛍光顕微鏡観察の結果を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1