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明細書 :セラミックスの分極処理方法及び分極処理したセラミックスを含む生体材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5414021号 (P5414021)
公開番号 特開2009-279259 (P2009-279259A)
登録日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発行日 平成26年2月12日(2014.2.12)
公開日 平成21年12月3日(2009.12.3)
発明の名称または考案の名称 セラミックスの分極処理方法及び分極処理したセラミックスを含む生体材料
国際特許分類 C01B  25/32        (2006.01)
A61L  27/00        (2006.01)
A61F   2/00        (2006.01)
FI C01B 25/32 B
A61L 27/00 M
A61L 27/00 J
A61F 2/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2008-135751 (P2008-135751)
出願日 平成20年5月23日(2008.5.23)
審査請求日 平成23年5月11日(2011.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】山下 仁大
【氏名】伊藤 聰一郎
【氏名】永井 亜希子
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100133765、【弁理士】、【氏名又は名称】中田 尚志
審査官 【審査官】延平 修一
参考文献・文献 特開2003-300712(JP,A)
特開2003-325553(JP,A)
特許第2984112(JP,B2)
特開2003-093497(JP,A)
特開2001-187133(JP,A)
調査した分野 C01B25/00-25/46
特許請求の範囲 【請求項1】
正極として作用する第1の電極と、該第1の電極に対向して配置された負極として作用する第2の電極との間に、リン酸カルシウム系化合物の微粒子が、前記第1の電極及び前記第2の電極の双方と非接触状態で配置された状態で、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、0.5kV/cm以上の電場勾配が形成されるように前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することにより、前記微粒子を分極処理することを特徴とする、セラミックスの分極処理方法。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム系化合物の微粒子が、0.1~1000μmの平均粒径を有する、請求項1に記載のセラミックスの分極処理方法。
【請求項3】
リン酸カルシウム系化合物の微粒子を請求項1に記載の方法によって分極処理することにより得られる分極処理されたセラミックス微粒子、生体適合性高分子化合物及び液体媒体を含有する生体材料。
【請求項4】
前記リン酸カルシウム系化合物が、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、及びそれらの組み合わせ、からなる群より選択される、請求項3に記載の生体材料。
【請求項5】
前記リン酸カルシウム系化合物の微粒子が、0.1~1000μmの平均粒径を有する、請求項3に記載の生体材料。
【請求項6】
前記生体適合性高分子化合物が、フィブロイン、アガロース、コラーゲン及びキトサンから選択される、請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項7】
前記液体媒体が水である、請求項3乃至請求項6のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項8】
創傷を治療するための、請求項3乃至請求項7のいずれか一項に記載の生体材料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスの分極処理方法、及び当該方法で分極処理されたセラミックスを含む生体材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工歯根(インプラント体)や人工骨等の生体材料として、分極処理された生体親和性のセラミックスを用いることが知られており、例えば、ヒドロキシアパタイト等の生体親和性を有する物質を分極処理して得られるセラミックスが生体細胞を増殖するための材料及び歯骨材料等として利用できることが知られている(例えば、特許文献1、2、3)。また、このような分極処理されたセラミックスに貯蔵される電荷量を調整するために、分極処理時の温度を制御する方法が考案されている(特許文献4)。
【0003】
一方、リン酸カルシウム、親水性バインダ材料及び水性液体媒体を含む流動性骨補填材組成物が知られている(特許文献5)。また、フィブロイン等の基材にリン酸カルシウム等の生体活性を有する無機化合物が化学結合された無機化合物複合体からなる医療用材料が知られている(特許文献6)。また、バイオセラミックス粒子と生体分解性高分子との複合体からなる骨補填材が知られている(特許文献7)。しかしながら、医療手段の進展に伴い、生体に対する悪影響の少ない生体材料のさらなる開発が求められている。
【特許文献1】特開2002-355304号公報
【特許文献2】特開2002-335947号公報
【特許文献3】特開平10-324584号公報
【特許文献4】特開2003-300712号公報
【特許文献5】特開2005-177096号公報
【特許文献6】特開2005-319022号公報
【特許文献7】特開2008-54908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の分極処理されたセラミックスは、分極処理前のセラミックスに電極を取り付けて、電圧を印加することにより作製される。しかし、複雑な形状を有するセラミックスや、セラミックス膜がコーティングされた部材に対して分極処理する場合、単純な平面状の電極では十分な分極処理を行なうことが困難である。このため、部材の表面形状にフィットする形状を有する電極を用いて分極処理を行なう必要があった。しかし、このような電極は、非常に高い形状精度が求められるために作製が困難である上にコストが高く、さらに、異なる形状を有する部材の分極処理に利用できないため、汎用性に欠ける。また、表面の清浄性が要求される部材では電極との接触面の汚染が問題となり、滅菌処理後包装済みの生体材料などは分極処理できないという制約があった。
【0005】
さらに、従来の方法では、セラミックスに正極及び負極の双方の電極を取り付けることから、微粒子状態のセラミックスに対して適用することは困難であった。また、従来の方法では、セラミックスに正極及び負極の双方の電極を取り付けることから、電極によってセラミックスに圧力が負荷されることがあった。そのため、微粒子状態のセラミックスを用いて分極処理を行なった場合、処理中に、圧力により粒子間での接着等が起こることがあり、微粒子状態のセラミックス、特にナノ粒子等の微粒子状態のセラミックスに対して、その微粒子の状態を損なうことなく分極処理を行なうことは困難であった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、如何様な形状を有するセラミックスを含む部材に対しても容易に分極処理することができると共に、分極処理に用いる電極に起因する表面汚染を防止することができるセラミックスの分極処理方法を提供することを目的とする。また、本発明は、微粒子状態のセラミックスに対して分極処理を行なう方法、並びに、当該方法によって分極処理されたセラミックス微粒子を用いた生体材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
1.正極として作用する第1の電極と、該第1の電極に対向して配置された負極として作用する第2の電極との間に、セラミックスを含む部材が、前記第1の電極及び前記第2の電極から選択される少なくとも一方の電極と非接触状態で配置された状態で、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、0.5kV/cm以上の電場勾配が形成されるように前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することにより、前記セラミックスを分極処理することを特徴とする、セラミックスの分極処理方法、
2.前記セラミックスを含む部材が、金属部材と、該金属部材表面の少なくとも一部分を被覆するセラミックス膜からなることを特徴とする、前記1に記載のセラミックスの分極処理方法、
3.前記金属部材が、ネジ部分を有し、前記ネジ部分表面を被覆するセラミックス膜が形成されていることを特徴とする、前記2に記載のセラミックスの分極処理方法、
4.前記セラミックスを含む部材が、セラミックスの微粒子である前記1に記載のセラミックスの分極処理方法、
5.前記セラミックスが、リン酸カルシウム系化合物である、前記1乃至4のいずれか一つに記載のセラミックスの分極処理方法、
6.前記セラミックスを含む部材が、生体材料である、前記1乃至4のいずれか一つに記載のセラミックスの分極処理方法、
7.前記セラミックスの微粒子が、0.1~1000μmの平均粒径を有する、前記4に記載のセラミックスの分極処理方法、
8.セラミックスの微粒子を前記1に記載の方法によって分極処理することにより得られる分極処理されたセラミックス微粒子、生体適合性高分子化合物及び液体媒体を含有する生体材料、
9.前記セラミックスの微粒子が、リン酸カルシウム系化合物である、前記8に記載の生体材料、
10.前記リン酸カルシウム系化合物が、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト、及びそれらの組み合わせ、からなる群より選択される、前記9に記載の生体材料、
11.前記セラミックスの微粒子が、0.1~1000μmの平均粒径を有する、前記8または9に記載の生体材料、
12.前記生体適合性高分子化合物が、フィブロイン、アガロース、コラーゲン及びキトサンから選択される、前記8乃至11のいずれか一つに記載の生体材料、
13.前記液体媒体が水である、前記8乃至12のいずれか人血に記載の生体材料、
14.創傷を治療するための、前記8乃至13のいずれか一つに記載の生体材料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、如何様な形状を有するセラミックスを含む部材に対しても容易に分極処理することができると共に、分極処理に用いる電極に起因する表面汚染を防止することができる、セラミックスの分極処理方法を提供することができる。また、微粒子状態のセラミックスに対して分極処理を行なうことができる分極処理方法、及び分極処理されたセラミックス微粒子を用いた生体材料を提供することができる。また、本発明の生体材料は分極処理したセラミックス微粒子を含んでいることから、高い細胞の活性化作用を有する。そのため、本発明により、分極処理したセラミックス微粒子と生体適合性高分子化合物とを含む生体材料、特に生体組織損傷や欠損の治療に適した生体材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のセラミックスの分極処理方法は、正極として作用する第1の電極と、該第1の電極に対向して配置された負極として作用する第2の電極との間に、セラミックスを含む部材が、前記第1の電極及び前記第2の電極から選択される少なくとも一方の電極と非接触状態で配置された状態で、前記第1の電極と前記第2の電極との間に、0.5kV/cm以上の電場勾配が形成されるように前記第1の電極と前記第2の電極とに電圧を印加することにより、前記セラミックスを分極処理することを特徴とする。
【0010】
このように、本発明では、第1の電極及び第2の電極のうちの少なくとも一方の電極が、セラミックスを含む部材と非接触な位置に配置された状態で、分極処理が行なわれる。それゆえ、如何様な形状を有するセラミックスを含む部材に対しても容易に分極処理することができる。また、セラミックスを含む部材の特定の表面部分について、電極に起因する汚染を防止したい場合、あるいは滅菌処理後包装済みの生体材料などを分極処理する場合には、部材表面に接触させないよう電極を配置することによって分極処理できる。また、本発明の方法では、第1の電極及び第2の電極の少なくとも一方の電極をセラミックスに接触させる必要がないことから、セラミックスに圧力が負荷され形状を損なうことなく、また微粒子状態のセラミックスに対しても分極処理を行なうことができる。ここで、非接触、とは、電極がセラミックスを含む部材に電気的に接触していないことを意味する。電極がセラミックスを含む部材に接触していなければ、両者の間隔に特に制限はないが、電極とセラミックスを含む部材との間隔は例えば、0.1mm~5cmの範囲であり、または0.5mm~1cm、または1mm~5mmの範囲である。
【0011】
上述したように、第1の電極と第2の電極との間に形成される電場勾配は、0.5kV/cm以上であることが必要である。電場勾配が0.5kV/cm未満の場合には、セラミックスを分極処理することができない。
【0012】
一方、電場勾配が0.5kV/cm以上であっても、値が比較的小さい場合は、セラミックスを分極処理するために長時間を要することになる。このような観点から、電場勾配は1kV/cm以上であることが好ましく、5kV/cm以上であることがより好ましい。
【0013】
なお、電場勾配の上限は特に限定されるものではないが、電圧の印加に利用可能な電源などの実用上の観点からは、20kV/cm以下であることが好ましい。
分極処理時の処理温度は特に限定されず、例えば、室温(20℃)~1000℃程度の範囲で、目的に応じて任意に選択できる。例えば、作業の容易さの観点からは、室温前後の温度域で分極処理を実施することが好ましい。
【0014】
一方、短時間で分極処理したい場合には、処理温度は高いほうが好ましい。この場合、処理温度は200℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。なお、処理温度の上限は、分極処理に用いられるセラミックスを含む部材が、加熱により分解、破損及び酸化劣化等しない範囲であればよい。例えば、セラミックスを含む部材を構成する材料がすべて無機材料からなる場合には、一般的に500℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。
【0015】
分極処理に用いられるセラミックスを含む部材は、セラミックスのみから構成される部材(以下、「バルク部材」と称する場合がある)であってよいが、金属部材などのセラミックス以外の固体部材(以下、「支持部材」と称する場合がある)と、この固体部材表面の少なくとも一部分を被覆するセラミックス膜とから構成される部材(以下、「セラミックス膜コーティング部材」と称する場合がある)であってよい。
【0016】
セラミックス以外の固体部材を構成する材料としては、上述した金属以外にも、例えば、ガラス及び樹脂等が挙げられる。
金属部材を構成する金属材料としては特に限定されず、セラミックス膜コーティング部材の用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ステンレス鋼やチタン、チタン合金等、公知の金属材料が利用できる。
【0017】
なお、セラミックス膜コーティング部材を、人工骨や人工歯根、骨折固定材などの生体内で使用する生体材料として利用する場合は、金属部材を構成する金属材料として、例えば、SUS316Lなどのステンレス鋼、Co-Cr合金、COP合金(Fe-20Cr-20Ni-20Co-4Mo-0.2P[単位は質量%])、チタン、及び、Ti-Al-V合金、Ti-Al-Nb合金等のチタン合金、を用いることができる。
【0018】
セラミックス膜コーティング部材に設けられるセラミックス膜の膜厚は、特に限定されず、その用途に応じて適宜選択することができるが、生体材料として利用する場合は、1μm~100μmの範囲内であることが好ましく、5μm~50μmの範囲内であることがより好ましい。
【0019】
また、セラミックス膜は、支持部材表面の任意の領域を被覆するように形成することができ、用途に応じて支持部材表面の一部分のみを被覆するように形成されてもよいし、支持部材表面の全面を被覆するように形成されていてもよい。
【0020】
バルク部材や支持部材の形状は特に限定されず、平板状やディスク状、柱状等の単純な形状であってよい。また、大腿骨など、ヒトや動物の骨格を成す骨の代替部材として利用可能な人工骨や、人工歯根などの複雑な形状を有するものであってもよい。
【0021】
複雑な形状を有するバルク部材や支持部材の一例としては、これらの部材がネジ部分を有する場合が挙げられる。この場合、支持部材が金属部材からなるセラミックス膜コーティング部材の場合、ネジ部分表面を被覆するようにセラミックス膜が形成されていてもよい。このような構成を有する部材の応用例としては、例えば、金属部材としてチタンを用い、ネジ部表面にコーティングされたセラミックス膜としてヒドロキシアパタイトを用いた人工歯根が挙げられる。
【0022】
なお、複雑な形状を有する部材を分極処理する場合、平板状などの単純な形状の電極を用いても分極処理することは可能である。しかし、複雑な形状を有する部材と電極との距離が部材表面の位置によって異なるため、複雑な形状を有する部材がセラミックス膜コーティング部材である場合、支持部材表面にコーティングされたセラミックス膜の一様且つ均一な分極処理が困難となる場合がある。それゆえ、このような場合には、複雑な形状を有する部材の表面形状と略相似形で且つ一回り大きい形状の電極(以下、「相似形電極」と称する場合がある)を用いることが好ましい。
【0023】
ここで「一回り大きい形状」とは、複雑な形状を有する部材表面と、当該表面に対して垂直な方向に位置する相似形電極表面(複雑な形状を有する部材と対向する面)との距離がいずれの位置においても一定となるように、複雑な形状を有する部材に対して相似形電極を配置した場合、複雑な形状を有する部材と相似形電極との距離(マージン距離)が1mm~5mmの範囲内にあることを意味する。
【0024】
相似形電極を用いて非接触で分極処理を行なえば、複雑な形状を有する部材の表面形状と密着するように形成された電極(密着式電極)を用いて接触方式で分極処理を行なった場合と同様に、支持部材表面にコーティングされたセラミックス膜の一様且つ均一な分極処理が可能である。これに加えて、相似形電極は、密着式電極のように極めて高い形状精度が求められないため、作製が非常に容易で、低コストである。
【0025】
また、バルク部材やセラミックス膜の表面は、平滑であってもよく凹凸が設けられていてもよい、凹凸の程度としては特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができる。さらに、バルク部材表面やセラミックス膜が形成される支持体表面は多孔質状であってもよい。
【0026】
なお、セラミックスを含む部材を生体材料、特に人工骨として利用する場合、生体内で生体組織と強固な結合が速やかに形成されることが求められる。このような観点から、バルク部材やセラミックス膜の表面は、サンドブラストにより粗面化処理した程度の粗さ(中心平均粗さRaで1μm程度)~高低差5mm程度の凹凸が形成された程度の粗さを有していることが好ましい。また、同様の観点から、バルク部材表面やセラミックス膜が形成される支持体表面は多孔質状であってもよい。
【0027】
また、分極処理に用いられるセラミックスを含む部材は、セラミックスの微粒子であってもよい。例えば、平均粒径が0.1~1000μm、または1~500μm、または10~300μm、であるセラミックスの微粒子を用いることができる。セラミックスを含む部材がセラミックスの微粒子である場合、当該部材は、セラミックスの微粒子のみから構成されてもよく、また、セラミックス以外の固体部材の微粒子と混合されたものであってもよい。平均粒径は、例えば、顕微鏡法、光走査法及びレーザー回折散乱法等によって測定することができる。また、セラミックスの微粒子は多孔質状の微粒子であってもよい。
【0028】
セラミックスを含む部材を構成するセラミックスとしては、分極処理可能なセラミックス材料であれば特に限定されず、例えば、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト及びフッ化アパタイト等のリン酸カルシウム系化合物、チタン酸バリウム、ストロンチウム水酸アパタイト、カルシウム及びストロンチウム固溶水酸アパタイト、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸ナトリウム、ニオブ酸カリウム、ジルコニア、β-アルミナ、及び、これらの無機材料のうち少なくとも2種類の無機材料を含む材料が挙げられる。これらのセラミックスの中でも、特に、生体材料として優れた親和性を発揮する点で、ヒドロキシアパタイト、α型リン酸三カルシウム、β型リン酸三カルシウム、また、これらを混合した無機材料が特に好ましい。
【0029】
次に、本発明のセラミックスの分極処理の方法の具体例について、図面を用いてより詳細に説明する。
図1は、本発明のセラミックスの分極処理方法の一例を示す概略模式図である。図中、10、20が平板状電極、30がディスク状サンプル(セラミックスを含む部材)、40が直流電源、50が非導電性部材である。
【0030】
ここで、分極処理に際しては、直流電源40に接続された二つの平板状電極10、20を電極面同士が平行となるように対向配置し、これら一対の電極10、20間にディスク状サンプル30を設置する。そして、この状態で、電極10、20間に電圧を印加して、ディスク状サンプル30の分極処理を行なう。
【0031】
この際、ディスク状サンプル30は図1(A)に示すように、一方の電極10に接触し、他方の電極20とは接触しない状態となるように配置してもよく、図1(B)に示すように、双方の電極10、20に接触しない状態で配置してもよい。さらに、図1(C)に示すように、一方の電極10に接触し、他方の電極20とは接触しない状態となるように配置した状態で、電極20とディスク状サンプル30との隙間に樹脂フィルムなどの絶縁性部材50を配置することもできる。
【0032】
図1(A)において、電極20とディスク状サンプル30との距離Xは、電極10、20間に形成される電場勾配の強さ等の分極処理にも依存するものの、通常は、0.1mm~5cmの範囲とすることが好ましく、通常は、0.5mm~1cm、または1mm~5mmの範囲とすることがより好ましい。距離Xが0.1mm未満では、電極20やディスク状サンプル30を配置する際に、両者が接触しやすくなる。それゆえ、特に、ディスク状サンプル30の表面の汚染や傷の発生が問題となるような場合には、好ましくない。また、距離Xが5cmを越える場合には、分極処理に必要な電場勾配を得るために、電極10、20間に非常に大きな電圧を印加することが必要となる場合がある。
【0033】
なお、高温下で分極処理を行なう場合、例えば、電極10、20、ディスク状サンプル30、絶縁性部材250(ただし、熱により分解劣化、ディスク状サンプル30に熱融着等しない部材からなる材料)を、加熱炉中に配置して分極処理を行なうことができる。
【0034】
分極処理されるセラミックスを含む部材がセラミックスの微粒子である場合は、図1(A)のディスク状サンプル30に代えて、電極10上にセラミックスの微粒子を含有する層を均一な厚さで設けて、分極処理を行なうことができる。また、セラミックスの微粒子を適当な容器に入れ、それを図1(A)及び図1(B)のディスク状サンプル30に代えて設置して、容器中のセラミックス微粒子の分極処理を行なうことができる。
【0035】
図2は、本発明のセラミックスの分極処理方法の他の例を示す概略模式図(断面図)であり、図中、100と110が電極、120がサンプル(セラミックスを含む部材)、120Aがネジ部、120Bが基部、400が直流電源である。
【0036】
分極処理に用いられるサンプル120は、ディスク状の基部120Bと基部120Bの上面に設けられたネジ部120Aとから構成され、基部120B及びネジ部120Aは金属からなる。また、ネジ部120Aの表面にのみセラミックス膜(図には示していない)がコーティングされている。なお、サンプルが人工歯根の場合、例えば、基部120B及びネジ部120Aを構成する金属としてはチタンを用い、セラミックス膜としてはヒドロキシアパタイトを用いることができる。
【0037】
上記のように、分極処理されたセラミックスが生体細胞を増殖するための材料等として利用できることが知られているが、本発明の分極処理方法によれば、セラミックス微粒子を分極処理することができる。また、分極処理されたセラミックスが微粒子の状態であることから、セラミックスが塊状態である場合に比べて、他の成分との組み合わせ等によって多様な材料を容易に調製することができる。
【0038】
したがって、本発明は、一態様として、本発明の方法によって分極処理されたセラミックスの微粒子、生体適合性高分子化合物及び液体媒体を含有する生体材料を提供する。また、一態様として、本発明の方法によって分極処理されたセラミックスの微粒子を均等に分散させた生体適合性高分子化合物及び液体媒体からなる生体材料を提供する。
【0039】
本発明の生体材料に用いることができるセラミックスとしては、分極処理可能であり、且つ生体に適用することが可能なセラミックスであれば特に限定はない。特に、生体材料として優れた親和性を発揮する点で、リン酸カルシウム系化合物を用いることができる。リン酸カルシウム系化合物としては、例えば、α型リン酸三カルシウム(α-TCP)、β型リン酸三カルシウム(β-TCP)、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、ヒドロキシアパタイト、炭酸アパタイト及びフッ化アパタイト等が挙げられる。これらのリン酸カルシウム系化合物は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0040】
本発明の生体材料に用いられるセラミックスの微粒子は、分極処理がなされていれば、その程度に特に制限はない。
本発明の生体材料は、分極処理したセラミックスの微粒子、生体適合性高分子化合物及び液体媒体を含有し、そして、必要に応じて、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム等の無機塩類、分極処理していないセラミックス(例えばリン酸カルシウム系化合物)の微粒子、等の他の成分を含むことができる。本発明の生体材料は、分極処理したセラミックスの微粒子、並びに必要に応じて用いられる前記の他の成分が生体適合性高分子化合物や前記液体媒体中に、溶解または分散されているものである。
【0041】
本発明の生体材料における分極処理したセラミックスの微粒子と生体適合性高分子化合物の割合としては、例えば、生体適合性高分子化合物100質量部に対して、分極処理したセラミックスの微粒子を1~500質量部、または5~100質量部、または10~50質量部とすることができる。そして、液体媒体は、分極処理したセラミックスの微粒子と生体適合性高分子化合物の合計質量100質量部に対して1~5000質量部、または10~1000質量部、または100~500質量部で用いることができる。必要に応じて用いられる前記の他の成分は、用いられる場合、分極処理したセラミックスの微粒子と生体適合性高分子化合物の合計質量100質量部に対して1~100質量部で用いることができる。なお、前記の他の成分が二種以上用いられる場合は、その合計質量がセラミックスの微粒子と生体適合性高分子化合物の合計質量100質量部に対して1~100質量部となるように、適宜、組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明において生体適合性高分子化合物とは、生体に適用した場合に、生体表面、あるいは生体内で強い炎症反応など生体に対して悪影響を及ぼさない高分子化合物のことをいう。
【0043】
本発明の生体材料において用いることができる高分子化合物としては、例えば、フィブロイン、アガロース、コラーゲン、キトサン、グリコサミノグリカン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸、デンプン、ペクチン及びペクチン酸等の天然の高分子化合物を挙げることができる。また、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸エステル系ポリマー、シリコーン樹脂、ポリ乳酸、ポリグリコール酸及びポリ-ε-カプロラクトン等の生体吸収性を示す合成高分子化合物を挙げることができる。このような高分子化合物は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。また、このような高分子化合物の分子量としては、重量平均分子量として、例えば5000~1000000、または10000~500000、また20000~100000である。
【0044】
本発明の生体材料において用いることができる液体媒体としては、例えば水、エタノール、人工体液、生理食塩水及びそれらの混合物等を挙げることができる。
分極処理したセラミックスの微粒子を含有する本発明の生体材料は、例えば、分極処理されたセラミックス微粒子を生体適合性高分子化合物、並びに必要に応じて用いられる他の成分と液体媒体を最適な混合比で混合することによって調製することができる。使用される液体媒体の量、生体適合性高分子化合物の種類及び量、等にも依存するが、本発明の生体材料は、懸濁液、ゲル及びペースト等の形態として調製することができる。
【0045】
分極処理したセラミックスの微粒子を分散させた生体適合性高分子化合物よりなる本発明の生体材料は、優れた生体適合性を示し、また、分極処理したセラミックスの微粒子を含んでいることから高い細胞の活性化作用を有する。そのため、本発明の生体材料は、治療等を目的として、生体表面及び生体内の損傷あるいは組織欠損部位に適用することができる。
【0046】
例えば、生体表面の創傷部分に本発明の生体材料を塗布したり、組織欠損部位に注入するなどの適切な方法によって適用することができる。そして、適用された部位及びその周囲の細胞を活性化することによって細胞を分化・増殖させ、組織の再生を促進することができる。
【0047】
また、セラミックスがリン酸カルシウム系化合物である本発明の生体材料は、骨の欠損部に適用して骨の補填、再生のための材料として用いることができる。例えば、分極処理したリン酸カルシウム系化合物の微粒子を均等に分散または溶解させた生体適合性高分子化合物及び液体媒体からなるゲル状の材料を調製し、その材料を骨の欠損部に注入することができる。
【0048】
分極処理された炭酸アパタイトまたはβ-TCPを含有する本発明の生体材料は、炭酸アパタイト及びβ-TCPが生体吸収性であることから、異所性石灰化を生ずる危険が少ない。そのため、分極処理された炭酸アパタイトまたはβ-TCPを含有する生体材料は、硬組織の再生だけでなく、軟部組織の再生にも、好適に用いることができる。
【0049】
また、本発明の生体材料は細胞を刺激して活性化することができることから、皮膚に塗布することによって、皮膚角化細胞や皮下線維芽細胞を活性化して小じわをとるなど、皮膚の老化を防ぐ効果が期待できる(アンチエージング効果)。また、メラノサイトを活性化すれば、紫外線を浴びることなく安全に日焼けサロンと同じような効果が期待できる(美容効果)。
【0050】
本発明の生体材料の生体に対する作用は、例えば、以下の(i)~(v)のいずれかの方法によって評価することができる:
(i)ラットの背側皮膚欠損部に、本発明の生体材料を塗布したり、移植する(皮膚潰瘍、火傷の治療)、または本発明の生体材料を皮下に注入する(軟組織形成)。これにより、吸収速度、生体適合性、新生血管の進入や軟部組織との置換状態を組織学的に定量する;
(ii)ラット坐骨神経絞扼モデルを用い、神経絞扼部周囲に本発明の生体材料を注入し、神経再生の組織学的観察と機能評価を経時的に行う(損傷神経再生促進)。同様に坐骨神経欠損モデルを作製し、人工神経に本発明の生体材料を固定化して架橋移植し、神経欠損部を越えた神経再生誘導能を評価する(神経欠損部の架橋)。あるいは、糖尿病自然発症ラットの坐骨神経周囲に本発明の生体材料を注入し、同様の評価を行う(多発性ニューロパチィーの治療);
(iii)ラットの大腿骨骨髄をくり抜いてbone marrow abrasion model(骨髄摩耗モデル)を作製し、本発明の生体材料を注入して、骨再生過程の観察と骨量計測をμCTと組織学的に行う(骨欠損部の充填);
(iv)動脈硬化症自然発症ラットの頚動脈周囲に本発明の生体材料を注入し、脳血流量をfunctional MRI、あるいはMRI angioを用いて計測する(血管内皮、損傷血管再生促進);及び
(v)各種の細胞を本発明の生体材料を塗布したシャーレ上で培養し、細胞の分化・増殖、各種サイトカインの遺伝子発現量を計測する(遺伝子レベルで細胞に及ぼす効果)。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明の実施例を挙げて、より詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
<サンプルの作製>
-バルクサンプルの作製-
炭酸カルシウムを1100℃で2時間仮焼して酸化カルシウムとし、次いで精製水を加え加水消化することにより水酸化カルシウムを得た。その水酸化カルシウムの懸濁液に、撹拌しながら、リン酸(85%)を精製水で2倍希釈したリン酸水溶液を、Ca:Pのモル比が5:3となるまで滴下して加えて、ヒドロキシアパタイト(以下、「HA」という)前駆体を合成した。作製したHA前駆体を室温で熟成させて上澄み液と沈殿物に分離し、沈殿物をろ過した。ろ過物を60℃で乾燥させ、乳鉢で粗粉砕したものを850℃で2時間仮焼してHA粉体を得た。仮焼後、HA粉体を乳鉢で粉砕し、ふるいを用いて74~149μmの粒径に分級した。
【0052】
得られたHA粉末に3.2質量%のポリビニルアルコールを加え80℃で乾燥した。得られた粉末を一軸加圧成形した後、1250℃で水蒸気雰囲気下にて2時間焼結して緻密なディスク状のバルクサンプル(相対密度≧99%、直径11mm、厚さ1mm)を作製した。
-セラミックス膜コーティングサンプルの作製-
チタン製のディスク(Ti≧99%、直径16mm、厚み3mm)の片面に、下記に示す条件にてスパッタリングを行い、膜厚0.1mmの無機膜を形成した。
【0053】
スパッタリング条件
・ターゲット材:60CaO-40Pガラス
・出力密度:8.5W/cm
・スパッタガス:Ar80体積%+CO20体積%
・スパッタガス圧力:0.67Pa
・ターゲット距離:50mm
・スパッタリング装置:真空冶金(株)製、多機能PVD装置
次に、この無機膜が形成されたディスクを水蒸気気流中にて700℃で焼成することによりセラミックス膜コーティングサンプルを得た。
【0054】
なお、焼成後の無機膜についてX線回折測定を行なったところアパタイトであることが確認された。また、焼成後の無機膜について多重反射赤外スペクトルを測定したところ、1455cm-1、1415cm-1に、リン酸基を炭酸基に置換したことに起因する吸収が確認されると共に、水酸基が炭酸基に置換されている場合に生ずる1545cm-1、1465cm-1の吸収は確認されなかった。これらのことから、焼成後の無機膜は、リン酸基置換タイプの炭酸基含有水酸アパタイトであることがわかった。
<非接触方式分極処理及び接触方式分極処理の評価>
[実施例A1]
バルクサンプルをアルミナチューブ(高さ2mm、内径20mm、外径25mm)内に配置し、その上下を白金電極(縦20mm、横20mm、厚み0.2mm)で挟持して分極処理を実施した。図3は、本分極処理の態様の断面を示す概略模式図である。図中、10’及び20’が白金電極、30’がサンプル、40’が直流電源、50’がアルミナ板、そして、60’がアルミナチューブである。バルクサンプル(30’)が一方の白金電極(10’)のみと接触しており、他方の白金電極(20’)は、バルクサンプルを取り囲むように配置されているアルミナチューブ(60’)により、当該サンプルと非接触の状態にある(サンプル30’と電極20’との距離Xは1mmであり、白金電極間の距離Yは2mmである)。
【0055】
昇温速度2.5℃/分で400℃まで加熱し、当該温度で5kV/cmの直流電界(電場勾配)を1時間印加して分極処理を実施した。その後、印加したまま室温に冷却し、分極処理済のバルクサンプルを得た。
[比較例A1]
実施例A1において、サンプル30’と電極20’との距離Xを0mm(すなわち、接触方式)で分極処理した以外は、実施例A1と同様にして分極処理を行なった。
[評価]
分極処理済のバルクサンプルについて、熱刺激脱分極電流(TSDC:thermally stimulated depolarization current)測定を行なうことにより、分極状態の有無や程度について評価した。TSDC測定は分極状態の試料を等速昇温させ、凍結された準平衡状態にある電荷が熱平衡状態へ移行する際の緩和現象を、脱分極電流として測定する方法である。
【0056】
TSDC測定は、分極処理済のバルクサンプルの両面に電極を密着させた状態で、バルクサンプルを5℃/分の昇温速度で室温から700℃まで加熱処理した際に、バルクサンプルの分極状態が緩和される過程で生じる電流を測定することにより実施した。TSDC測定の結果を図4(実施例A1)及び図5(比較例A1)に示す。なお、図4及び5中の横軸は温度(℃)、縦軸は、単位面積当たりの電流量(nA/cm)を表す。また、図5には分極処理していないサンプルの測定結果も示している。
【0057】
図4及び5から明らかなように、比較例A1と比べると実施例A1の方が、検出される電流量は小さいものの、加熱処理に伴う電流が観察された。このことから、セラミックスと電極とを非接触に配置してもセラミックスの分極処理が可能であることがわかった。
【0058】
また、図4及び5の縦軸に示す電流値(熱刺激緩和電流)を式1:
【0059】
【数1】
JP0005414021B2_000002t.gif

【0060】
(式中、βは昇温速度であり、I(T)は脱分極電流密度である)
に従って時間積分することにより求めた蓄積電荷量Q(μC/cm)は、以下の通りである。
【0061】
・実施例A1:Q=11
・比較例A1:Q=26
<セラミックス膜コーティングサンプルに対する分極処理>
[実施例B1]
コーティングサンプルをアルミナチューブ(高さ5.1mm、内径20mm、外径25mm)内に配置し、その上下を、セラミックス膜がコーティングされた面が上側(電極20’が配置された側)となるように白金電極(縦20mm、横20mm、厚み0.2mm)で挟持して、図3と同様な態様で分極処理を実施した(距離X:2mm、距離Y:5.1mm)。昇温速度2.5℃/分で300℃まで加熱し、当該温度で2.5kV/cmの直流電界(電場勾配)を1時間印加して分極処理を実施した。その後、印加したまま室温に冷却し、分極処理済のコーティングサンプルを得た。
[実施例B2]
高さ7.1mmのアルミナチューブを用いて、距離Xを4mmとした以外は、実施例B1と同様にして分極処理した。
[比較例B1]
実施例B1において距離Xを0mm(すなわち、接触方式)で分極処理した以外は、実施例B1と同様にして分極処理を行なった。
[評価]
分極処理済のセラミックス膜コーティングサンプルについて、TSDC測定を行なうことにより、分極状態の有無や程度について評価した。
【0062】
TSDC測定は、分極処理済のセラミックス膜コーティングサンプルの両面に電極を密着させた状態で、セラミックス膜コーティングサンプルを5℃/分の昇温速度で室温から700℃まで加熱処理した際に、セラミックス膜コーティングサンプルの分極状態が緩和される過程で生じる電流を測定することにより実施した。TSDC測定の結果を図6(実施例B1及びB2)及び図7(比較例B1)に示す。なお、図6及び7中の横軸は温度(℃)、縦軸は、単位面積当たりの電流量(nA/cm)を表す。
【0063】
図6及び7から明らかなように、非接触方式で分極処理した場合、いずれの実施例においても、セラミックス膜が分極処理されていることが確認された。
なお、図6及び7の縦軸に示す電流値(熱刺激緩和電流)を式1に従って時間積分することにより求めた蓄積電荷量Q(μC/cm)は、以下の通りである。
【0064】
・実施例B1:Q=1.7
・実施例B2:Q=2.1
・比較例B1:Q=1.8
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明のセラミックスの分極処理方法の一例を示す概略模式図である。
【図2】図2は、本発明のセラミックスの分極処理方法の他の例を示す概略模式図である。
【図3】図3は、実施例A1の分極処理方法を示す概略模式図である。
【図4】図4は、実施例A1のTSDC測定結果を示すグラフである。
【図5】図5は、比較例A1のTSDC測定結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例B1及びB2のTSDC測定結果を示すグラフである。
【図7】図7は、比較例B1のTSDC測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0066】
10:平板状電極、20:平板状電極、30:ディスク状サンプル、40:直流電源、50:非導電性部材、100:電極、110:電極、120:サンプル、120A:ネジ部、120B:基部、400:直流電源、10’:白金電極、20’:白金電極、30’:サンプル、40’:直流電源、50’:アルミナ板、60’:アルミナチューブ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6