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明細書 :歯髄腔内血液測定方法、装置及び歯髄腔内血液測定用アダプタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4909904号 (P4909904)
登録日 平成24年1月20日(2012.1.20)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
発明の名称または考案の名称 歯髄腔内血液測定方法、装置及び歯髄腔内血液測定用アダプタ
国際特許分類 A61B   5/1455      (2006.01)
A61B   5/026       (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
G01N  21/35        (2006.01)
A61C  19/04        (2006.01)
FI A61B 5/14 322
A61B 5/02 340D
G01N 21/27 Z
G01N 21/35 Z
A61C 19/04 B
請求項の数または発明の数 15
全頁数 13
出願番号 特願2007-550990 (P2007-550990)
出願日 平成18年6月21日(2006.6.21)
国際出願番号 PCT/JP2006/312423
国際公開番号 WO2007/072592
国際公開日 平成19年6月28日(2007.6.28)
優先権出願番号 2005368811
優先日 平成17年12月21日(2005.12.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年5月8日(2009.5.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】三輪 全三
【氏名】柿野 聡子
【氏名】井川 資英
【氏名】高谷 節雄
【氏名】大内 克洋
【氏名】星 英男
【氏名】高木 裕三
【氏名】桐本 明子
個別代理人の代理人 【識別番号】100080458、【弁理士】、【氏名又は名称】高矢 諭
【識別番号】100076129、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 圭佑
【識別番号】100089015、【弁理士】、【氏名又は名称】牧野 剛博
審査官 【審査官】上田 正樹
参考文献・文献 特開2003-070752(JP,A)
米国特許第04836206(US,A)
米国特許第05040539(US,A)
調査した分野 A61B 5/1455
A61B 5/026
A61C 19/04
G01N 21/27
G01N 21/35
特許請求の範囲 【請求項1】
ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けない等吸収波長の複数の波長λ、λの光を略同時に歯に照射するための光源と、
歯を透過した光を受光するための手段と、
各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を用いて、歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液濃度や血流量を定量測定するための演算手段と、
を備えたことを特徴とする歯髄腔内血液測定装置。
【請求項2】
前記光源が、発光ダイオードとされていることを特徴とする請求項に記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項3】
光源からの光を歯の口蓋側に導くための、略C字形状の投光用導光体と、
歯の唇側に透過した光を取出すための受光用導光体と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置で用いるための歯髄腔内血液測定用アダプタ。
【請求項4】
前記一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1を次式で表わし、
ODλ1=μS1d+μb1Hd
(ここで、μS1は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb1は同じくヘモグロビンの吸光係数、dは歯の厚み、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度、dは歯髄腔内の光路長)
前記他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を次式で表わし、
ODλ2=μS2d+μb2Hd
μS1=AμS2
(ここで、μS2は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb2は同じくヘモグロビンの吸光係数、Aは定数)
ODλ1-AODλ2の演算により、歯髄腔内のヘモグロビン量Hdを求めることを特徴とする請求項に記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項5】
前記光源が、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受ける非等吸収波長λの光も歯に照射するようにされ、
前記演算手段が、各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表わし、等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を用いると共に、請求項に記載の装置で求めた歯髄腔内総ヘモグロビン量Hdを用いて、歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液酸素飽和度を定量測定するようにされていることを特徴とする請求項に記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項6】
前記等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1を次式で表わし、
ODλ1=μS1d+μb1Hd
(ここで、μS1は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb1は同じくヘモグロビンの吸光係数、dは歯の厚み、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度、dは歯髄腔内の光路長)
前記非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を次式で表わし、
ODλ3=μS3d+μb3HbO2HdSO
+μb3HbHd(1-SO
CμS1=μS3
(ここでμS3は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb3HbO2は歯髄腔内のヘモグロビン濃度、SOは歯髄腔内の酸素飽和度、Cは定数)
CODλ1-ODλ3の演算により、歯髄腔内の酸素飽和度を求めることを特徴とする請求項に記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項7】
前記等吸収波長の複数の波長λ、λを、522±10nm又は506±10nmと、810±10nmの組合せとしたことを特徴とする請求項又はに記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項8】
前記等吸収波長λを522±10nm又は506±10nmとし、前記非等吸収波長λを467±10nmとしたことを特徴とする請求項又はに記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項9】
前記複数の波長の光を順次時間差を持たせて略同時に照射し、これと同期して、明所でも各波長の光を受光するようにされている請求項1又は2、4乃至のいずれか1項に記載の歯髄腔内血液測定装置。
【請求項10】
ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けない等吸収波長の複数の波長λ、λの光を略同時に歯に照射し、
歯を透過した光を受光して、
各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を用いて、
歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液濃度や血流量を定量測定することを特徴とする歯髄腔内血液測定方法。
【請求項11】
前記等吸収波長の複数の波長λ、λを、522±10nm又は506±10nmと、810±10nmの組合せとしたことを特徴とする請求項10に記載の歯髄腔内血液測定方法。
【請求項12】
ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けない等吸収波長の光、及び、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受ける非等吸収波長の光を略同時に歯に照射し、
歯を透過した光を受光して、
各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2と、非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を用いると共に、
前記一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1を次式で表わし、
ODλ1=μS1d+μb1Hd
(ここで、μS1は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb1は同じくヘモグロビンの吸光係数、dは歯の厚み、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度、dは歯髄腔内の光路長)
前記他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を次式で表わし、
ODλ2=μS2d+μb2Hd
μS1=AμS2
(ここで、μS2は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb2は同じくヘモグロビンの吸光係数、Aは定数)
ODλ1-AODλ2の演算により求めた歯髄腔内総ヘモグロビン量Hdを用いて、
歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液の酸素飽和度を定量測定することを特徴とする歯髄腔内血液測定方法。
【請求項13】
前記等吸収波長λを522±10nm又は506±10nmとし、前記非等吸収波長λを467±10nmとしたことを特徴とする請求項12に記載の歯髄腔内血液測定方法。
【請求項14】
前記複数の波長の光を順次時間差を持たせて略同時に照射し、これと同期して、明所でも各波長の光を受光するようにされている請求項10乃至13のいずれか1項に記載の歯髄腔内血液測定方法。
【請求項15】
前記光を口蓋側から照射することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の歯髄腔内血液測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、歯髄腔内血液測定方法、装置及び歯髄腔内血液測定用アダプタに係る。特に、被検者に痛みを与えることなく、非侵襲的かつ客観的に歯髄腔内の血液濃度、血流量及び酸素飽和度を定量的に測定することが可能な歯髄腔内血液測定方法、装置及び歯髄腔内血液測定用アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示す如く、歯10の構造は、外からエナメル質12、象牙質14、そして中央に位置するところに歯髄腔16が存在し、歯への血流は、歯髄腔16の中に分布する血管により成り立っている。従って、歯の健康状態を把握する上で、歯髄腔16内の血流量、血液濃度及び酸素飽和度を測定することが重要であり、広く歯科医療において適用される可能性を有している。
【0003】
現在、歯髄の健康状態の確認には、電気刺激を与え、感覚の度合いから診断する電気歯髄診断法が用いられているが、この方法は、被検者に痛みを与える場合が多く、又、被検者によっては返答に客観性を欠くこともあり、更には幼若永久歯や外傷歯などの感覚閾値の高い歯では反応しないなどの欠点が指摘されていて、望ましい診断法ではない。
【0004】
このような侵襲的な方法とは別に、近年、ヒト歯髄血流を非侵襲的に測定し、歯髄の健康状態を客観的に評価する方法として、レーザドップラー血流測定法や、透過光光電脈波法などが報告されている(三輪全三他「歯髄透過光光電脈波法のヒト幼若永久歯の歯髄診断への応用」小児歯科学雑誌 37巻(1999)5号、 991-999頁、Zenzo Miwa et.al「Pulpal blood flow in vital and nonvital young permanent teeth measured by transmitted-light photoplethysmography:a pilot study」Pediatric Dentistry-24:6,2002,594-597、及び、特開2001-17453号公報参照)。
【0005】
このうち後者の透過光光電脈波法については、被検歯口蓋側より一定量の光を照射することにより、唇側で透過光量の変化を検査し、健全な上顎中切歯から指尖脈波と同期した歯髄脈波を観察できることが報告されている。
[0006]
しかしながら従来の方法は、外光を遮断して暗所で測定を行う必要があるだけでなく、定性的な変化は得られても定量性を欠き、正確な診断ができなかった。更に、光電脈波法では、脈を打っていないと測定できないという問題もあった。
発明の開示
[0007]
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、被検者に痛みを与えることなく、明所でも非侵襲的かつ客観的に、歯髄腔内の血液濃度(ヘモグロビン濃度)、血流量及び酸素飽和度を定量的に測定可能とすることを課題とする。
[0008]
[0009]
[0010]
[0011]
[0012]
[0013]
[0014]
本発明は、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けない等吸収波長の複数の波長λ、λの光を略同時に歯に照射するための光源と、歯を透過した光を受光するための手段と、各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を用いて、歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液濃度や血流量を定量測定するための演算手段と、を備えたことを特徴とする歯髄腔内血液測定装置により、前記課題を解決したものである。ここで、入射光強度Iと透過光強度Iの比を自然対数ln(I/I)で表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1から、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を差し引くことができる。
[0016]
前記光源を、発光ダイオードとすることができる。
【0017】
本発明は、又、光源からの光を歯の口蓋側に導くための、略C字形状の投光用導光体と、歯の唇側に透過した光を取出すための受光用導光体と、を備えたことを特徴とする、前記装置で用いるための歯髄腔内血液測定用アダプタを提供するものである。
前記一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1を次式で表わし、
ODλ1=μS1d+μb1Hd
(ここで、μS1は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb1は同じくヘモグロビンの吸光係数、dは歯の厚み、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度、dは歯髄腔内の光路長)
前記他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を次式で表わし、
ODλ2=μS2d+μb2Hd
μS1=AμS2
(ここで、μS2は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb2は同じくヘモグロビンの吸光係数、Aは定数)
ODλ1-AODλ2の演算により、歯髄腔内のヘモグロビン量Hdを求めることができる。
前記光源が、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受ける非等吸収波長λの光も歯に照射するようにし、前記演算手段が、各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表わし、等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を用いると共に、前記の装置で求めた歯髄腔内総ヘモグロビン量Hdを用いて、歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液酸素飽和度を定量測定することができる。ここで、入射光強度Iと透過光強度Iの比を自然対数ln(I/I)で表し、等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1から、非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を差し引くことができる。
前記等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1を次式で表わし、
ODλ1=μS1d+μb1Hd
(ここで、μS1は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb1は同じくヘモグロビンの吸光係数、dは歯の厚み、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度、dは歯髄腔内の光路長)
前記非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を次式で表わし、
ODλ3=μS3d+μb3HbO2HdSO
+μb3HbHd(1-SO
CμS1=μS3
(ここでμS3は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb3HbO2は歯髄腔内のヘモグロビン濃度、SOは歯髄腔内の酸素飽和度、Cは定数)
CODλ1-ODλ3の演算により、歯髄腔内の酸素飽和度を求めることができる。
前記等吸収波長の複数の波長λ、λを、522±10nm又は506±10nmと、810±10nmの組合せとすることができる。
前記等吸収波長λを522±10nm又は506±10nmとし、前記非等吸収波長λを467±10nmとすることができる。
前記複数の波長の光を順次時間差を持たせて略同時に照射し、これと同期して、明所でも各波長の光を受光することができる。
本発明は、又、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けない等吸収波長の複数の波長λ、λの光を略同時に歯に照射し、歯を透過した光を受光して、各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iで表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を用いて、歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液濃度や血流量を定量測定するようにして、前記課題を解決したものである。
前記等吸収波長の複数の波長λ、λを、522±10nm又は506±10nmと、810±10nmの組合せとすることができる。
又、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けない等吸収波長の光、及び、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受ける非等吸収波長の光を略同時に歯に照射し、歯を透過した光を受光して、各波長の透過光減衰度ODを、入射光強度Iと透過光強度Iの比で表し、一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1と、他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2と、非等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ3を用いると共に、前記一つの等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ1を次式で表わし、
ODλ1=μS1d+μb1Hd
(ここで、μS1は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb1は同じくヘモグロビンの吸光係数、dは歯の厚み、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度、dは歯髄腔内の光路長)
前記他の等吸収波長λにおける透過光減衰度ODλ2を次式で表わし、
ODλ2=μS2d+μb2Hd
μS1=AμS2
(ここで、μS2は波長λに対する歯質の光減衰係数、μb2は同じくヘモグロビンの吸光係数、Aは定数)
ODλ1-AODλ2の演算により求めた歯髄腔内総ヘモグロビン量Hdを用いて、歯質による光の散乱・吸収の影響を除いた歯髄腔内血液の酸素飽和度を定量測定するようにして、前記課題を解決したものである。
前記等吸収波長λを522±10nm又は506±10nmとし、前記非等吸収波長λを467±10nmとすることができる。
前記複数の波長の光を順次時間差を持たせて略同時に照射し、これと同期して、明所でも各波長の光を受光することができる。
前記光を口蓋側から照射することができる。
[0018]
本発明によれば、明るい場所においても、被検者に痛みを与えることなく、非侵襲的かつ客観的に、歯髄腔内の血液濃度(ヘモグロビン濃度)、血流量及び酸素飽和度を定量的に測定することが可能となる。更に、脈を打っていなくても測定できる。
【図面の簡単な説明】
[0019]
[図1]歯の構成を示す断面図
[図2]本発明で用いた歯の構造と光学的モデルを示す(A)上からみた断面図及び(B)横から見た断面図
[図3]本発明の測定原理を説明するための、ヘモグロビンの吸光スペクトルを示す図
[図4]同じくLED中心波長による透過光減衰度の変化の測定例を示す図
[図5]本発明の実施形態で用いるのに好適なアダプタの(A)斜視図、(B)断面図及び(C)装着状態を示す斜視図
[図6]同じく入射側の集光棒を示す断面図
[図7]同じくLEDの点滅状態を示すタイムチャート
[図8]同じく測定回路を示すブロック図
[図9]本発明の第2実施形態の原理を説明するための、ヒト上顎中切歯の脈波振幅及び透過光減衰度を示す線図
[図10]同じく酸素飽和度の変化を示す線図
発明を実施するための最良の形態
【0020】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0021】
まず、歯髄腔内の血液量の測定に適用した本発明の第1実施形態について説明する。
【0022】
歯10の光学的モデルを、図2(A)(上から見た断面図)及び(B)(横から見た断面図)に示すような、エナメル質12、象牙質14及び歯髄腔16の3層組織モデルと想定し、その口蓋側から光ファイバ20を介して光源(例えば発光ダイオードLED)からの光を入射し、唇側の光ファイバ22から受光素子(例えばフォトダイオードPD)で受光する場合を考える。
【0023】
そして、エナメル質12と象牙質14を合わせた歯質(歯牙硬組織)の光減衰係数は散乱によるもの、歯髄腔内血液光減衰係数は吸収によるものと仮定すると、入射光強度Iと透過光強度Iの間には、散乱を考慮したBeer Lambert法則(Modified Beer Lambert Law:MBLLと略称する)によって、次式の関係が成立する。
【0024】
=Iexp(-μd-μHd) ……(1)
【0025】
ここで、μは歯質の光減衰(散乱)係数、dは歯質の厚み、μはヘモグロビンの吸光係数、dは歯髄腔内の光路長、Hは歯髄腔内ヘモグロビン濃度である。
【0026】
この(1)式を変形することによって、次式が得られる。
【0027】
/I=exp(-μd-μHd) ……(2)
【0028】
ln(I/I)=-μd-μHd ……(3)
【0029】
従って、全体の透過光減衰度ODは、歯質による光減衰と歯髄腔内血液による光減衰を積算したものとして、次式で表わすことができる。
【0030】
OD=ln(I/I
=μd+μbHdp ……(4)
【0031】
図3に示すようなヘモグロビンHbの吸光スペクトルにおいて、酸素化と脱酸素化ヘモグロビンの吸光係数がほぼ等しいヘモグロビンの等吸収波長λ(例えば522nm)とλ(例えば810nm)では、MBLLから、次式が得られる。
【0032】
ODλ1=ln(I/I
=μs1d+μb1Hdp ……(5)
【0033】
ODλ2=ln(I/I
=μs2d+μb2Hdp ……(6)
【0034】
μs1=Aμs2 ……(7)
【0035】
ここで、μs1は波長λの歯質の光減衰係数、μs2は波長λの歯質の光減衰係数、Aは定数である。
【0036】
(7)式を(5)式に代入すると、次式が得られる。
【0037】
ODλ1=ln(I/I
=Aμs2d+μb1Hdp……(8)
【0038】
式(8)からA(6)を差し引くことにより、歯質による光減衰を除去すると、次式が得られる。
【0039】
ODλ1-AODλ2
=μb1Hd-Aμb2Hdp
=(μb1-Aμb2)Hdp……(9)
【0040】
従って、歯髄腔内の総ヘモグロビン量 [Hb] total=Hdは、次式で求められる。
【0041】
[Hb]total=Hd
=(ODλ1-AODλ2)/(μb1-Aμb2)……(10)
【0042】
血液による光吸収・散乱は、ヘモグロビン濃度や酸素飽和度等に影響を受けるが、このようにして、ヘモグロビンの酸素飽和度の影響を受けることなく、又、歯質(エナメル質や象牙質)による光散乱・吸収もほぼ等しいので、その影響を除去して、歯髄腔内の血液濃度又はヘモグロビン濃度を定量測定できる。
【0043】
4つの中心波長396nm、467nm、506nm、522nmを用いて、LED中心波長による透過光減衰度の変化の3例についての平均を測定した結果を図4に示す。図4から明らかなように、短い波長396nm、467nmよりも、長い波長506nm、522nmのほうが、歯冠歯髄腔が確認できた抜去歯に、血液の代わりに生理食塩水を充填した虚血歯モデルと血液を充填した健全歯モデルの透過光量の差が大きいが、506nm及び522nmの透過光減衰度が近似していることから、散乱・吸収の影響を無視できる。なお本発明は、506nmと522nmを用いたものに限定されず、810nmを用いることもできる。なお、特に波長810nmは、波長506nmや522nmから波長が離れており、且つ、光が通り易く変化が少ないので、基準波長として用いるのに好適である。特に、個人差が少ない波長522nmと、波長810nmの組合せが最適であり、波長506nmと810nmの組合せも優れている。図3から分かるように、420nm、445nm、549nm,569nm及び586nmにも等吸収波長があるので、利用できる可能性がある。又、波長数も2に限定されない。
【0044】
実際の測定に際しては、図5(A)(斜視図)、(B)(側面図)及び(C)(装着状態を示す斜視図)に示すような、例えばアクリル製で外側を遮光塗料で塗装して光が漏れないようにした、光源(LED)からの光を歯の口蓋側に導くための、略C字形状の投光用導光体32と、歯の唇側に透過した光を取り出して受光素子(PD)に導くための受光用導光体34とからなるアダプタ30を用いることで、被検者の歯に容易に装着可能とすることができる。
【0045】
又、2つのLEDから光を入射する際には、図6に示す如く、集光棒36を用いることによって、一本の光ファイバ20への入射を円滑に行うことができる。
【0046】
更に、入射に際しては、図7に示す如く2つのLEDを順次時間差で点滅し、受光側でも、図8に示す如く、これとON-OFF時の差を検出することにより、外光の影響を除外し、明るい所で検出することが可能となる。
【0047】
図8において、40はパルス発生回路、42は、該パルス発生回路40で発生されたパルスにそのON-OFF時に、2つのLEDを順次時間差で点灯するための発光切換回路、44は、PDの出力を増幅するアンプ、46は、該アンプ44の出力を前記パルス発生回路40の出力と同期して切換えるための受光切換回路、48は、該受光切換回路46の出力により前出(5)式の演算を行って歯髄腔内の血液濃度(ヘモグロビン濃度)を計算する演算回路、50は、血流量を計算する演算回路である。
【0048】
本実施形態においては、発光素子として、発光波長467nm、506nm、522nm、及び810nmのLEDを用いているので、その中から2波長選び、単純な構成で高精度の測定を行うことができる。なお、発光素子の種類や発光波長は、これに限定されない。
【0049】
又、本実施形態においては、受光素子としてPDを用いているので、構成が簡略である。なお、受光素子の種類も、これに限定されない。
【0050】
本実施形態においては、更に、光ファイバ20、22の光をアダプタ30を介して歯に照射し、受光するようにしているので、被検者への適用が容易である。なお、アダプタ30の形状や種類は、これに限定されず、省略することも可能である。光ファイバの種類もプラスチック製に限定されず、省略することも可能である。
【0051】
又、本実施形態においては、光を口蓋側から照射するようにしているので、光が歯髄腔に当りやすく、測定が容易である。なお、光の入射方向はこれに限定されず、逆に唇側から入射することも可能である。
【0052】
前記実施形態においては、本発明が、歯髄内の血液量の測定に適用されていたが、本発明の適用対象は、これに限定されず、例えば骨髄の中の血液濃度や組織内小血管内の血液濃度及び/又は血流量を測定することもできる可能性がある。
【0053】
次に第1実施形態の等吸収波長による測定に、酸素化と脱酸素化ヘモグロビンの吸光係数が等しくない非等吸収波長による測定を加えて、酸素飽和度の測定を可能とした、本発明の第2実施形態について説明する。
【0054】
発明者が、ヒト上顎中切歯の脈波振幅(歯髄腔内の循環血流を反映)及び透過光減衰度(歯と歯髄腔内血流の両方による歯全体の光減衰)ODを調べた所、図9に示すような結果が得られた。図中のODは13歯のデータの平均、OD以外の各線は、測定した13歯の脈波振幅の各データである。図3に示したヘモグロビン吸光スペクトルより、図9の歯髄脈波振幅の大きさの大小関係は、ヘモグロビン吸光スペクトルと一致している。即ち、波長467nm、506nm、522nm及び810nmを抽出して模式的に示す図10から明らかなように、等吸収波長である506nm、522nmでは全ての被験者において脈波振幅は522nmの方が大きいが、非等吸収波長である467nmでは506nmに対して増加する場合と減少する場合がある。これは、歯髄腔内血液の酸素飽和度が影響しているためであると考えられる。第2実施形態は、この点に着目してなされたものである。
【0055】
歯髄腔内血液酸素飽和度SOは、次のようにして算出できる。
【0056】
等吸収波長λ(例えば522nm)と非等吸収波長λ(例えば467nm)より、
ODλ1=μS1d+μb1[Hb]total ……(11)
ODλ3=μS3d+μb3HbO2[Hb]totalSO
+μb3Hb[Hb]total(1-SO)……(12)
CμS1=μS3 ……(13)
【0057】
ここで、μS1は波長λの歯質の光減衰係数、μS3は波長λの歯質の光減衰係数、Cは定数である。
【0058】
(13)式を(12)式に代入すると、次式が得られる。
【0059】
ODλ3
=CμS1d+μb3HbO2[Hb]totalSO
+μb3Hb[Hb]total(1-SO)……(14)
【0060】
C(11)から式(14)を差し引くことにより、歯質による光減衰を除去すると、次式が得られる。
【0061】
CODλ1-ODλ3
=[Hb]total〔Cμb1-{μb3HbO2SO+μb3Hb(1-SO)}〕
=[Hb]total{Cμb1-μb3Hb-(μb3HbO2-μb3Hb)SO
……(15)
【0062】
従って、歯髄腔内酸素飽和度SOは次式で求められる。
【0063】
SO={(CODλ1-ODλ3)/[Hb]total
+(μb3Hb-Cμb1)}/(μb3Hb-μb3HbO2)……(16)
【0064】
ここで、[Hb]totalは、第一実施形態と同様に、2つの等吸収波長(λ、λ)からMBLLにより求められる。
【0065】
従って、第1実施形態により、例えば2つの等吸収波長λとλ(例えば波長522nm又は506nmと810nm)の組合せで、前出(10)式により[Hb]totalを求めれば、(16)式によりSOを求めることができる。
【0066】
第2実施形態によれば歯髄腔内酸素飽和度がわかるので、歯髄の病態がわかり、歯髄の治療法を的確に判断できる。
【0067】
第2実施形態を実施するための装置は、図8に示した第1実施形態の装置に、非等吸収波長λ用のLEDを追加すれば良いので、説明は省略する。
【0068】
本実施形態においては、ヘモグロビン濃度用に波長λ、λ、酸素飽和度用に波長λ、λが用いられており、一つの波長λが共通とされているので、構成が簡略である。なお、非等吸収波長と等吸収波長の組合せは、467nmと522nm又は506nmに限定されず、467nmと810nm、420nm、445nm、549nm、569nm又は586nmのいずれかの組合せでも良い。又、ヘモグロビン濃度用と酸素飽和度用で全て異なる波長を用いて、4波長で測定することも可能である。
【産業上の利用の可能性】
【0069】
被検者に痛みを与えることなく、非侵襲的かつ客観的に歯髄腔内の血液濃度、血流量や酸素飽和度を定量的に測定することが可能になり、広く歯科医療において適用される可能性を有している。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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