TOP > 国内特許検索 > 化学センサ及びバイオセンサ > 明細書

明細書 :化学センサ及びバイオセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5011530号 (P5011530)
公開番号 特開2008-139231 (P2008-139231A)
登録日 平成24年6月15日(2012.6.15)
発行日 平成24年8月29日(2012.8.29)
公開日 平成20年6月19日(2008.6.19)
発明の名称または考案の名称 化学センサ及びバイオセンサ
国際特許分類 G01N  27/404       (2006.01)
G01N  27/327       (2006.01)
FI G01N 27/30 341U
G01N 27/30 341G
G01N 27/30 341A
G01N 27/30 353J
G01N 27/30 353P
請求項の数または発明の数 9
全頁数 15
出願番号 特願2006-327846 (P2006-327846)
出願日 平成18年12月5日(2006.12.5)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 WebにおいてA flexible and wearable glucose sensor based on functional polymers with Soft-MEMS techniques発表
特許法第30条第1項適用 Biosensors and Biioelectronics 22(2006)558-562 A flexible and wearable glucose sensor based on functional polymers with Soft-MEMS techniquesにて発表
審査請求日 平成21年10月29日(2009.10.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
発明者または考案者 【氏名】三林 浩二
【氏名】岩崎 泰彦
【氏名】工藤 寛之
個別代理人の代理人 【識別番号】100104684、【弁理士】、【氏名又は名称】関根 武
【識別番号】100100413、【弁理士】、【氏名又は名称】渡部 温
審査官 【審査官】柏木 一浩
参考文献・文献 特表2003-503090(JP,A)
特開平07-248306(JP,A)
特開昭62-133938(JP,A)
特開平04-283653(JP,A)
特表2004-518965(JP,A)
特開平9-29601(JP,A)
特開2003-82053(JP,A)
調査した分野 G01N 27/404
G01N 27/327
特許請求の範囲 【請求項1】
基板と、該基板上に設けられた少なくとも作用電極と対極・参照電極とを含む電極系と、前記電極系上に形成された、高分子化合物を含有する高分子化合物含有層とを含み、前記電極系から得られる電流値に基づいて特定成分を分析する化学センサであって、
前記基板及び前記高分子化合物含有層が、柔軟性を有し、前記高分子化合物含有層の高分子化合物が、ホスホリルコリン基を含むことを特徴とする、化学センサ。
【請求項2】
前記基板がガス不透過性であり、前記高分子化合物含有層がガス透過性である、請求項1に記載の化学センサ。
【請求項3】
前記基板及び前記高分子化合物含有層が、生体適合性である、請求項1又は2に記載の化学センサ。
【請求項4】
前記ホスホリルコリン基を含む高分子化合物が、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化学センサ。
【化1】
JP0005011530B2_000004t.gif
(式中、aは0.1~0.9であり、bは0.1~0.9であり、nは2~18の整数であり、Aは水素、又は炭素数1~4個のアルキル基である。)
【請求項5】
前記基板が、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の化学センサ。
【請求項6】
前記基板が、ポリジメチルシロキサン 、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、及びポリスチレンからなる群から選択されるポリマーからなる層と、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる層とを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の化学センサ。
【請求項7】
前記ホスホリルコリン基を含む高分子化合物が、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物である、請求項又はに記載の化学センサ。
【化2】
JP0005011530B2_000005t.gif
(式中、aは0.1~0.9であり、bは0.1~0.9であり、nは2~18の整数であり、Aは水素、又は炭素数1~4個のアルキル基である。)
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の化学センサの前記高分子化合物含有層上に酵素固定化膜を有するか、又は前記高分子化合物含有層中に酵素が含まれていることを特徴とするバイオセンサ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の化学センサの前記作用電極及び対極・参照電極と、前記高分子化合物含有層との間に、電解液層が設けられてなるバイオセンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は化学センサ及びバイオセンサに関する。本発明の化学センサ及びバイオセンサは柔軟性を有しており、生体に用いるのに適したセンサ(化学センサ及びバイオセンサ)である。
【背景技術】
【0002】
従来より、酵素の有する分子識別能力を利用したバイオセンサが種々開発されており、これらのバイオセンサを用いることにより、生体の生理活性物質の分析の応用研究が行われている。
例えば、糖尿病治療の分野においては、バイオセンサによる血糖値測定が行われてきている。糖尿病は、近年急速に増えた疾患であり、安全かつ簡便に連続的に血糖値を測定することが重要である。従来より用いられているバイオセンサでは、血液をサンプリングして血糖値を測定する方法を実施する。この方法では、血液を必要とするので、患者は測定の度に肉体的苦痛を伴うという問題があった。また、血液を用いるため、血液を媒体とするウイルス感染のおそれもあり、患者や血液を採取する者に精神的な不安感を与えるという問題もあった。
【0003】
このような問題を解決するため、非侵略的な測定法が提案されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2)。しかしながら、決定的な方法はなく、より優れた測定法が望まれている。
一方、血液以外の涙、粘液、汗、唾液等の体液中のグルコース濃度と血中グルコース濃度との関係も報告されており、涙中のグルコース濃度は血中グルコースに比較して、約5分間遅れて変化することが知られており(例えば、特許文献3)、例えば、眼部における生体計測用の電気化学センサが報告されている(特許文献4)。このような用途に用いるには、バイオセンサは柔軟なものであることが要求される。上記特許文献4に記載されたセンサは柔軟性を有するものであるが、更に柔軟性を有することに加え、生体適合性を有することが望ましい。
【0004】

【非特許文献1】March,W.F. et al. Trans. Am. Soc. Artif. Intern. Organs 28, 232-235(1982)
【非特許文献2】Rabinovitch, B. et al. Diabetes Care 5, 254-258(1982)
【非特許文献3】Wilson, G. S. and Gifford, R.,Biosens. Bioelectron. 20, 2388-2403 (2005)
【非特許文献4】Mitsubayashi, K. et al., Biosens. Bioelectron. 19, 67-71 (2003)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、柔軟性を有すると共に、生体に用いることができ、特に非侵襲計測に用いるのに適したセンサ(化学センサ及びバイオセンサ)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため検討を重ねた結果、基板と、該基板上に設けられた少なくとも作用電極と対極・参照電極とを含む電極系と、前記電極系上に形成された、高分子化合物を含有する高分子化合物含有層とを含む化学センサであって、基板及び高分子化合物含有層を柔軟性を有するものとし、高分子化合物含有層の高分子化合物として、ホスホリルコリン基を含むものを用いることにより、上記目的を達成し得るという知見を得、その知見を素に営々検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、基板と、該基板上に設けられた少なくとも作用電極と対極・参照電極とを含む電極系と、前記電極系上に形成された、高分子化合物を含有する高分子化合物含有層とを含み、前記電極系から得られる電流値に基づいて特定成分を分析する化学センサであって、前記基板及び前記高分子化合物含有層が、柔軟性を有し、前記高分子化合物含有層の高分子化合物が、ホスホリルコリン基を含むことを特徴とする、化学センサを提供するものである。
また、本発明は、前記化学センサの高分子化合物含有層上に酵素固定化膜を有するか、又は前記高分子化合物含有層中に酵素が含まれているバイオセンサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、柔軟性を有すると共に、生体に用いることができ、特に非侵襲計測に用いるのに適したセンサ(化学センサ及びバイオセンサ)が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の化学センサは、基板と、該基板上に設けられた少なくとも作用電極と対極・参照電極とを含む電極系と、前記電極系上に形成された、高分子化合物を含有する高分子化合物含有層とを含み、前記電極系から得られる電流値に基づいて特定成分を分析する化学センサであって、前記基板及び前記高分子化合物含有層が、柔軟性を有し、前記高分子化合物含有層の高分子化合物が、ホスホリルコリン基を含む
なお、本明細書において、高分子化合物含有層とは、上述したように前記電極系上に形成される層であり、柔軟性を有するが、さらにガス透過性を有する高分子化合物含有層を、以下、本明細書において、「ガス透過層」という。
【0010】
本発明の化学センサについて、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の一実施の形態にかかる化学センサの分解斜視図である。図1に示す化学センサは、基板1と、基板1上に設けられた作用電極3及び対極・参照電極5を含む。この作用電極3及び対極・参照電極5により、電極系7をなしている。そして、電極系7上にはガス透過層9が形成されている。
【0011】
図1に示す化学センサにおいて、基板1は柔軟性を有している。基板は柔軟性を有する材料から形成されており、このような材料としては、例えば、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物を含む材料が挙げられる。また、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン等が挙げられる。図1に示す化学センサにおいては、基板1は、ポリジメチルシロキサン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリスチレンからなる群から選択されるポリマーからなる層と、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる層とを含むものである。
【0012】
基板1と、後述するガス透過層9とが柔軟性を有していることにより、本発明の化学センサは、身体を傷つけることのない非侵襲計測に用いる場合に任意の測定部位への装着が可能となる。なお、柔軟性とは、身体に密着させて使用する際に、身体の任意の測定部位に装着可能な程度の柔らかさを有していることを意味する。また、本発明の化学センサは、両端を持って引っ張った際に、元の長さの1.2倍以上にまで伸び、かつこのように伸ばした場合にも、その性能が変化しないことが好ましい。
【0013】
本発明の化学センサにおける基板1の大きさは、3mm×50mm程度の大きさであるが、この大きさに限定されるものではない。基板1の厚みは0.01mm~5mm程度であり、上記基板が、ポリジメチルシロキサン等のポリマーからなる層、及びホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる場合は、それぞれの厚みは、0.01mm~5mm、及び2nm~4.99mmであり、ポリマー層からなる層、及びホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる層の厚みの比(ポリマー層からなる層の厚み/ホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる層の厚み)は1/500~1/2500程度である。
図1に示される化学センサの基板1においては、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる層はガス透過性であるが、ポリマーからなる層がガス不透過性であり、このため基板1はガス不透過性となっている。また、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物からなる層を有することにより、基板1は生体適合性となっている。
【0014】
基板1に含まれる、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物について説明する。
ホスホリルコリン基を含む高分子化合物(ポリマー)は、既に生物医療用材料や機器の表面に使用されており、そのようなポリマーは血液、涙や尿などの体液と接触する際に発生する異物反応を抑制することができることが知られている。従って、このようなポリマーは生体適合性を有している。従って、このようなポリマーで基板1を構成することにより、例えば、体液中のタンパク質等の非特異的吸着などを防止し、高感度な分析が可能となる。ホスホリルコリン基を含む高分子化合物としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)と他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0015】
ホスホリルコリン基を含む高分子化合物としては、例えば、MPCと他の重合性モノマーとの共重合体が挙げられ、このような共重合体は、MPCと以下に挙げるモノマーとのラジカル共重合によって得ることができる。用いられるモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、N-ビニルピロリドン、酢酸ビニル、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、メチルトリビニルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
ホスホリルコリン基を含む高分子化合物を含有するとしては、例えば下記一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】
JP0005011530B2_000002t.gif

【0018】
一般式(1)において、aは0.1~0.9であり、好ましくは0.1~0.4である。また、bは0.1~0.9であり、好ましくは0.6~0.9である。また、nは2~18の整数である。Aは、水素、又は炭素数1~4個のアルキル基である。
【0019】
また、nを大きくすることにより、ガラス転移温度Tgが低下し、一方、nを小さくすることにより、含水率を向上させることができる。本発明においては、ホスホリルコリン基を含む高分子化合物としては、どのようなものであっても用いることができるが、その用途によって、a、b及びnを適宜変更させて用いる。a及びbは、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物を製造する際の、MPC、及び上述したモノマーの仕込み量を調整することによって調整可能である。
【0020】
一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物を得るには、公知の方法により反応させて行う。使用する溶媒としては、モノマーを溶解することのできるものであれば制限なく用いることができ、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t-ブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、及びこれらの混合物などが挙げられる。
【0021】
また、重合開始剤としては、通常に用いられるラジカル開始剤を特に制限なく用いることができ、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等の脂肪族アゾ化合物や、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、加硫酸アンモニウム、加硫酸カリウム等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0022】
一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物の分子量は、好ましくは5,000~3,000,000であり、更に好ましくは50,000~1,000,000である。分子量が上記範囲内であれば、化学センサを製造する場合に成膜性が良好になる。
なお、一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、日本油脂(株)製、Lipidureシリーズ等が使用可能である。
【0023】
一般式(1)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物の具体例としては、例えば、下記式(2)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0024】
【化2】
JP0005011530B2_000003t.gif

【0025】
なお、上記式(2)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物としては、公知の方法によって製造することができるが、市販されているものを用いてもよく、例えば、日本油脂(株)製、Lipidureシリーズ等が使用可能である。
【0026】
図1に示す化学センサにおいては、基板1上に設けられた電極系7を含む。電極系7は作用電極3と、対極・参照電極5とからなる。作用電極3、対極・参照電極5の形成素材としては、例えば、白金、銀、金、カーボン等が挙げられる。作用電極3、対極・参照電極5の形成方法としては、例えば、スクリーン印刷法やスパッタリング蒸着法等が挙げられ、その形成方法は限定されない。電極系における、作用電極3の厚みは、10nm~5μm程度であり、対極・参照電極5の厚みは、10nm~5μm程度である。
【0027】
電極系7の上部にはガス透過層9が形成されている。ガス透過層9は、基板1と同様、柔軟性を有している。柔軟性は、ガス透過層9をホスホリルコリン基を含む高分子化合物によって形成することによって形成される。ホスホリルコリン基を含む高分子化合物としては、上記基板1について説明したものと同様である。ガス透過層9の厚みは10nm~100μm程度であり、好ましくは0.1μm~35μm程度である。ガス透過層9の形成方法に特に制限はないが、例えば、スクリーン印刷法やスピンコーティング法等が挙げられる。
【0028】
また、ガス透過層9には電子受容体が含まれていてもよい。このような電子受容体としては、たとえば、フェリシアン化カリウム、p-ベンゾキノン及びその誘導体、フェナジンメトサルフェート、メチレンブルー、フェロセン及びその誘導体等が挙げられる。
上述した化学センサは試料中の過酸化水素を電流値として検出することができる。化学センサの電極系における反応は以下の通りである。
→O + 2e + 2H2+
【0029】
ガス透過層9はガス透過性となっている。このため、上記反応によって生成された酸素がガス透過層9を通過できるようになっている。後述するバイオセンサにおいては、例えばグルコースを検出するためのグルコースセンサとして用いる場合、酵素反応に酸素が必須であり、この反応はガス透過層9中、又はガス透過層9の上に形成された酵素固定化膜中で行われるので、ガス透過層9は酸素を通過できることが必要である。
なお、基板1はガス不透過性となっているが、この理由は 生体に貼り付けて使用する場合、生体と接している面からのみ計測を行うためである。
【0030】
次に、本発明のバイオセンサについて説明する。
本発明のバイオセンサは、上述した本発明の化学センサのガス透過層上に酵素固定化膜を有するか、又はガス透過層中に酵素が含まれてなる。
含まれる酵素としては、特に制限はなく、検出しようとする成分によって選択される。例えば、検出しようとする成分がアルコールである場合には、酵素としてアルコールオキシダーゼを用い、検出しようとする成分がグルコースである場合には、酵素としてβ-D-グルコースオキシダーゼを用い、検出しようとする成分がコレステロールである場合には、酵素としてコレステロールオキシダーゼを用い、検出しようとする成分がホスファチジルコリンである場合には、酵素としてホスホリパーゼ及びコリンオキシダーゼを用い、検出しようとする成分が尿素である場合には、酵素としてウレアーゼを用い、検出しようとする成分が尿酸である場合には、酵素としてウリカーゼを用い、検出しようとする成分が乳酸である場合には、酵素として乳酸デヒドロゲナーゼを用い、検出しようとする成分が蓚酸である場合には、酵素として蓚酸デカルボキシラーゼを用い、検出しようとする成分がピルビン酸である場合には、酵素としてピルビン酸オキシダーゼを用い、検出しようとする成分がアスコルビン酸である場合には、酵素としてアスコルビン酸オキシダーゼを用い、検出しようとする成分がトリメチルアミンである場合には、酵素としてフラビン含有モノオキシダーゼを用いる。
【0031】
ガス透過層中に酵素が含まれる場合は、ガス透過層を形成する際に、原材料中に酵素を含ませることにより、バイオセンサとすることができる。ガス透過層中に酵素が含まれる場合は、その構成は、上述した、図1に示す化学センサと同じである。
また、ガス透過層上に酵素固定化膜を有する場合の実施形態について図2に示す。図2は、本発明の一実施の形態にかかるバイオセンサの分解斜視図である。図2に示すバイオセンサにおいては、ガス透過層9上に酵素固定化膜が形成されている。図2に示すバイオセンサにおいては、酵素固定化膜が形成されている以外の点については、図1に示す化学センサと同様である。
【0032】
本発明のバイオセンサは、種々の成分を検出するために用いられ、例えばグルコースを検出するためのグルコースセンサとして用いることができる。この場合、酵素としてグルコースオキシダーゼが用いられる。グルコースセンサとして用いる場合、グルコースがグルコースオキシダーゼによって以下のようにグルコノラクトンと過酸化水素に変換される反応を利用している。
グルコース + O → グルコノラクトン + H
このようにして生成された過酸化水素は、上記化学センサにおいて説明したようにして検出され、グルコースを検出するこごができる。
【0033】
本発明の化学センサ及びバイオセンサは、作用電極と対極・参照電極とを含む電極系から得られる電流値に基づいて、特定の成分の分析を行うものである。具体的には、電極系をポテンシオスタット及びA-D変換機に接続し、定電位電流計測によるセンサ出力をコンピュータにて連続的に計測を行うものである。
【0034】
本発明の化学センサ及びバイオセンサは柔軟性を有しているので、生体の任意の測定部位に装着可能な柔らかさを有しており、従って、身体のいかなる部位にも接着、装着可能である。例えば、眼部に取り付け、血中酸素濃度(血糖値)を測定することも可能であり、例えば、絆創膏状の形態とし、腕などに貼り付け、経皮的に血中酸素濃度(血糖値)を測定することが可能である。また、本発明の化学センサ及びバイオセンサは、基板及びガス透過層が生体適合性を有しており、このため、身体より排出されるタンパク質等の非特異的吸着を防止し、より高濃度の分析を行うことが可能となる。
【0035】
次に、本発明の化学センサを製造する方法について説明する。
本発明の化学センサの製造方法に特に制限はないが、その一例として、以下に、本発明の化学センサを製造する方法について説明図面を参照しつつする。
図3は、本発明の化学センサを製造する方法を工程順に示す断面図である。
図3(a)に示すように、先ず、ダミー基板としてのシリコンウェハ11にポリジメチルシロキサン樹脂13をスピンコートし、室温で24時間静置し、ポリジメチルシロキサン樹脂13を硬化させる。
【0036】
次いで、図3(b)に示すように、ポジ型フォトレジスト15をスピンコートし、その後、フォトマスク17を重ね、マスクアライナーを用いて、電極部分を紫外線によって露光し、アルカリ現像を行う。次いで、得られた基板をイオンビームシステムのスパッタリングチャンバー中に入れ、白金のスパッタリング17を行なう(図3(c)参照)。次いで、ポジ型フォトレジスト19をスピンコートした後、銀21のスパッタリングを行なう(図3(d)参照)。
【0037】
次いで、リフトオフ工程によって白金電極23及び銀電極を形成した後、アセトン等の溶媒を用いてフォトレジスト19、及びシリコンウェハ11を除去し、次いで、銀電極を電気化学的に塩素化して銀/塩化銀電極25を形成する(図3(e)参照)。次いで、得られた基板の両面に、一般式(1)で表わされる繰り返し構造を有する高分子化合物のエタノール溶液を用いてディップコートを行い、基板の一部である樹脂層27及びガス透過層29を形成し、本発明の化学センサを得る(図3(f)参照)。
【0038】
本発明のバイオセンサは、上述した、本発明の化学センサを製造する方法において、反応そう29を得るための高分子化合物のエタノール溶液中に酵素を混合させておくことによって製造することができ、このような操作により、ガス透過層中に酵素が含有される、本発明のバイオセンサが得られる。
【0039】
本発明の第二の実施の形態に係るバイオセンサは、ガス透過層上に酵素固定化膜が形成されている(図2参照)。
図2に示すバイオセンサにおいては、図1に示すものと構成はほぼ同一であり、ガス透過層9上に酵素固定化膜11が形成されている点のみが図1に示すものと異なっている。酵素固定膜11は、化学センサを作製した後に、酵素を、例えばエタノール等の溶媒に溶解した溶液をガス透過層9上に滴下し、乾燥して形成することができる。
【0040】
本発明の第三の実施の形態に係るバイオセンサは、上述した、本発明の化学センサの作用電極3及び対極・参照電極5と、前記ガス透過層9との間に、電解液層が設けられている。電解液層としては、例えば、テフロン膜等の担体に電解液を含浸させたものをいう。含浸させる電解液としては、例えば、KCl、NaCl、NaHCO等を主成分とする液体が挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
実施例1
図3に示す方法を用いて、図1に示す化学センサ(過酸化水素センサ)を作製した。すなわち、ダミー基板としてのシリコンウェハ(50mm×3mm)に、ポリジメチルシロキサン樹脂をスピンコートし、室温(約25℃)で24時間整地し、ポリジメチルシロキサン樹脂(ダウコーニング東レ(株)製、Silpot 184)を硬化させ、350μmの厚みのポリジメチルシロキサンからなる層を形成した。
【0042】
次いで、硬化したポリジメチルシロキサンからなる層の上に、ポジ型フォトレジスト(ロームアンドハースエレクトロニックマテリアルズ社製、Shipley S1818)をスピンコートし、次いでフォトマスクを重ね(60℃、30分間)、マスクアライナー(ユニオン光機(株)製、PEM-1000)を用いて、電極部分を紫外線によって露光し、次いで、アルカリ現像を行い、基板を得た。次いで、得られた基板をイオンビームスパッタリングシステムのスパッタリングチャンバー(エリオニクス(株)製、EIS-220)中に入れ、1900Vの加速エネルギーを用いて、200nm厚の白金のスパッタリングを行った。次いで、1900Vの加速エネルギーにより、イオンビームスパッタリングシステムを用いて、300nm厚の銀フィルムのスパッタリングを行った。
【0043】
次いで、リフトオフ工程によって白金電極及び銀電極を形成し、アセトンを用いて洗浄を行い、フォトレジストを除去した。白金電極及び銀電極を、塩酸溶液(0.1モル/l)に浸漬し、銀電極に、白金電極に対して-110mVの電位を印加することにより、銀電極を電気化学的に塩素化し、銀/塩化銀電極を形成した。次いで、一般式(2)で表わされる繰り返し構造を有する高分子化合物(以下、PMDという)の10重量%エタノール溶液を用いて、PMDを基板の両面にディップコートし、本発明の化学センサ(過酸化水素センサ)を得た。
得られた化学センサは柔軟性を有しており、いずれの方向に対しても、1.2倍以上伸展できるものであり、このように伸展した後であっても、その性能に変化はなかった。
【0044】
実施例2
実施例1で得られた化学センサをPBS(50ミリモル/L、pH7.0)に浸し、PC制御ポテンシオスタットを用い、対極・参照電極に対して650mVの一定電圧をかけて、出力電流を測定した。結果を図4に示す。図4において、横軸は経過時間であり、縦軸は出力電流(μA)を表わし、グラフ中の矢印は過酸化水素を添加したことを示す。図4から明らかなように、過酸化水素のない条件下では、出力電流はほぼ0μmAであった。
【0045】
過酸化水素を、最終濃度が1ミリモル/LになるようにPBSに加えたところ、出力電流は上昇し、約3μmAになった(出力電流値が最大値の90%になるのに必要な時間は約5.9秒であった)。従って、実施例1で得られら化学センサ(過酸化水素センサ)は、過酸化水素と接触することによって出力電流が大きくなり、これにより、過酸化水素濃度を測定するためのセンサとして有用であることがわかった。
【0046】
実施例3
次に、過酸化水素濃度を代えて、実施例2と同様に出力電流の測定を行った。過酸化水素の濃度は、0.10~2.50ミリモル/Lの間のものを用い測定を行った。結果を図5に示す。図5において、横軸は過酸化水素濃度を示し、縦軸は出力電流(μA)を示し、出力電流は、過酸化水素を所定の濃度になるように加えて20~30秒後の平均値を示す。図5に示すように、過酸化水素濃度が0.20~2.00ミリモル/Lの間でグラフは直線を示し、この範囲の濃度の過酸化水素濃度の検出及び定量が可能であることが示された。
なお、この測定における相関係数は0.998であり、過酸化水素濃度と出力電流との関係は以下の式で表すことができる。
出力電流(μA)=0.837+4.26×(過酸化水素濃度(ミリモル/L)
【0047】
実施例4
ガス透過層を形成するための溶液として、PMDの10重量%エタノール溶液に、β-D-グルコースオキシダーゼを0.5mg(10ユニット)加えた溶液を用いた以外は、実施例1と同様に操作を行い、本発明のバイオセンサ(グルコースセンサ)を作製した。
【0048】
実施例5
過酸化水素に代え、グルコースを最終濃度が1ミリモル/LになるようにPBSに加えた以外は、実施例2と同様にして出力電流を測定した。なお、グルコースの滴下は、測定開始後、1分及び2.8分後の2回行った。結果を図6に示す。図6において、横軸は経過時間であり、縦軸は出力電流(μA)を表わし、グラフ中の矢印はグルコースを滴下したことを示す。図6から明らかなように、グルコースのない条件下では、出力電流は約0.04μAであったが、グルコースを滴下することにより、出力電力は約0.08μAに上昇することがわかる。なお、2度目のグルコース滴下によっても出力電流は上昇した(なお、出力電流値が最大値の90%になるように必要な時間は、約15秒であった)。
従って、実施例4で得られたバイオセンサ(グルコースセンサ)は、グルコースと接触することによって出力電流が大きくなり、これにより、グルコース濃度を測定するためのセンサとして有用であることがわかった。
【0049】
実施例6
次に、グルコース濃度を代えて、実施例5と同様に出力電流の測定を行った。グルコースの濃度は、0.06~2.00ミリモル/Lの間のものを用い測定を行った。結果を図7に示す。図7において、横軸はグルコース濃度を示し、縦軸は出力電流(μA)を示し(縦軸は対数表示)、出力電流は、グルコースを所定の濃度になるようにPBSに加えて40~60秒後の平均値を示す。図7に示すように、過酸化水素濃度が0.06~2.00ミリモル/Lの間でグラフは直線を示し、この範囲の濃度の過酸化水素濃度の検出及び定量が可能であることが示された。なお、生体の正常グルコース濃度は0.14ミリモル/Lであり、この濃度のグルコース濃度を測定可能であることがわかった。
なお、この測定における相関係数は0.997であり、グルコース濃度と出力電流との関係は以下の式で表すことができる。
出力電流(μA)=0.183×(グルコース濃度(ミリモル/L))0.637
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施の形態にかかる化学センサの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかるバイオセンサの斜視図である。
【図3】本発明の化学センサを製造する方法を工程順に示す断面図である。
【図4】過酸化水素を測定した際の出力電流の変化を示すグラフである。
【図5】過酸化水素を測定した際の出力電流の変化を示すグラフである。
【図6】グルコースを測定した際の出力電流の変化を示すグラフである。
【図7】グルコースを測定した際の出力電流の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0051】
1 基板 3 作用電極
5 対極・参照電極 7 電極系
9 ガス透過層 10 酵素固定化膜
11 シリコンウェハ 13 ポリジメチルシロキサン樹脂
15 ポジ型フォトレジスト 17 フォトマスク
19 ポジ型フォトレジスト 21 銀
23 白金電極 25 銀/塩化銀電極
27 樹脂層 29 ガス透過層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6