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明細書 :リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用負極、およびリチウム二次電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5697078号 (P5697078)
公開番号 特開2012-089267 (P2012-089267A)
登録日 平成27年2月20日(2015.2.20)
発行日 平成27年4月8日(2015.4.8)
公開日 平成24年5月10日(2012.5.10)
発明の名称または考案の名称 リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用負極、およびリチウム二次電池
国際特許分類 H01M   4/48        (2010.01)
H01M   4/58        (2010.01)
H01M   4/36        (2006.01)
FI H01M 4/48
H01M 4/58
H01M 4/36 A
H01M 4/36 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2010-232941 (P2010-232941)
出願日 平成22年10月15日(2010.10.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成22年9月2日 社団法人電気化学会発行の「2010年電気化学秋季大会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成25年9月2日(2013.9.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】逢坂 哲彌
【氏名】門間 聰之
【氏名】横島 時彦
【氏名】奈良 洋希
個別代理人の代理人 【識別番号】100076233、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 進
審査官 【審査官】山下 裕久
参考文献・文献 特開2005-116264(JP,A)
特開2009-019233(JP,A)
特開2007-184252(JP,A)
特開2007-294422(JP,A)
特開2003-197193(JP,A)
調査した分野 H01M 4/13-62
特許請求の範囲 【請求項1】
シリコンイオンと、酸素と、炭素とを含有する電解液から、電気化学的成膜法により作製されたアモルファス物質に、電気化学的手法によって予め酸化リチウムを生成させたリチウム二次電池用活物質であって、前記アモルファス物質は、シリコンと、酸素と、10at%以上30at%以下の炭素とを含有しシリコンと酸素との組成比がSiOx(0.5≦X≦1.5)であることを特徴とするリチウム二次電池用活物質。
【請求項2】
請求項1に記載の活物質、を有することを特徴とするリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
請求項2に記載のリチウム二次電池用負極を具備することを特徴とするリチウム二次電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンを含有するリチウム二次電池用活物質および前記リチウム二次電池用活物質を有するリチウム二次電池用負極、および前記リチウム二次電池用負極を具備するリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器等の電源としてリチウム二次電池が用いられている。一般的なリチウム二次電池では、負極の活物質として、黒鉛を代表とする炭素材料が用いられている。しかしながら、黒鉛からなる活物質では、リチウムがLiCの組成までしか挿入できず、理論エネルギー容量は372mAh/gである。
【0003】
高容量化のために、シリコンを活物質とすると、理論エネルギー容量が4200mAh/gのリチウム電池が実現可能とされている。
【0004】
しかし、シリコンを活物質とする負極は、充放電するときの大きな体積変化に伴い、活物質の脱落等が発生するため、充放電により容量が低下するという問題があった。このため、活物質の第三金属との合金化、カーボン材料とのコンポジット化、薄膜化、多孔質化および集電体の粗面化等が検討されている。
【0005】
例えば、特開2009—231072号公報には、粗面化された集電体上に、薄膜形成方法により、微結晶Si活物質または非晶質Si活物質を形成したリチウム二次電池が提案されている。
【0006】
また、Electrochimica Acta、2007年53巻111ページから116ページには、電析法によりシリコンを製造する方法が記載されているが、有機溶媒からポーラス状のシリコンの析出となっている。
【0007】
また、Journal of the Solid State Electrochemistry, Online First、2008年12月21号には、リチウム-シリコンを活物質として負極に用いる電池が提案されている。
【0008】
しかし、実用化のためには、エネルギー容量がより高く、より充放電サイクル特性の良いリチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用負極、およびリチウム二次電池が求められていた。
【0009】
なお、特開2006—321688号公報には電析法によりシリコンを製造する方法が開示されている。上記製造方法は800~900℃において行われる溶融塩電析であり、不純物濃度が100ppm以下の高純度シリコンを得ることを目的とする。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特開2009—231072号公報
【特許文献2】特開2006—321688号公報
【0011】

【非特許文献1】Electrochimica Acta、2007年53巻111ページから116ページ
【非特許文献2】Journal of the Solid State Electrochemistry, Online First、2008年12月21日号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
エネルギー密度が高く、良好な充放電サイクル特性を示す、リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用負極、およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一形態のリチウム二次電池用活物質は、シリコンイオンと、酸素と、炭素とを含有する電解液から、電気化学的成膜法により作製されたアモルファス物質に、電気化学的手法によって予め酸化リチウムを生成させたリチウム二次電池用活物質であって、前記アモルファス物質は、シリコンと、酸素と、10at%以上30at%以下の炭素とを含有しシリコンと酸素との組成比がSiOx(0.5≦X≦1.5)である
【0014】
また本発明の別の形態のリチウム二次電池用負極はシリコンイオンと、酸素と、炭素とを含有する電解液から、電気化学的成膜法により作製されたアモルファス物質に、電気化学的手法によって予め酸化リチウムを生成させたリチウム二次電池用活物質であって、前記アモルファス物質は、シリコンと、酸素と、10at%以上30at%以下の炭素とを含有しシリコンと酸素との組成比がSiOx(0.5≦X≦1.5)であるリチウム二次電池用活物質を有する。
【0015】
また本発明の別の形態のリチウム二次電池は、シリコンイオンと、酸素と、炭素とを含有する電解液から、電気化学的成膜法により作製されたアモルファス物質に、電気化学的手法によって予め酸化リチウムを生成させたリチウム二次電池用活物質であって、前記アモルファス物質は、シリコンと、酸素と、10at%以上30at%以下の炭素とを含有しシリコンと酸素との組成比がSiOx(0.5≦X≦1.5)であることを特徴とするリチウム二次電池用活物質を有するリチウム二次電池用負極を具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エネルギー密度が高く、良好な充放電サイクル特性を示す、リチウム二次電池用活物質、リチウム二次電池用負極、およびリチウム二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態のリチウム電池の構成を説明するための断面図である。
【図2】実施形態の負極の作製装置を説明するための模式図である。
【図3】実施形態の活物質の電析用電解溶液の電位/電流曲線である。
【図4】実施形態の活物質の破断面のSEM像である。
【図5】実施形態の活物質のXRDチャートである。
【図6】実施形態の活物質のXPS解析結果である。
【図7】実施形態のリチウム電池のCV評価における電位/電流曲線である。
【図8】実施形態のリチウム電池の充放電サイクル特性評価結果である。
【図9】実施形態のリチウム電池の充放電サイクル特性評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態のリチウム二次電池用活物質(以下、「活物質」ともいう)12、リチウム二次電池用負極(以下、「負極」ともいう)13、およびリチウム二次電池(以下、「リチウム電池」ともいう)10について説明する。

【0019】
<リチウム二次電池の構成例>
図1に示すように、リチウム電池10は、例えば、集電体11上に形成された活物質12を有する負極13と、正極14と、負極13と正極14との間に配置されて貯留領域17を形成するセパレータ15と、貯留領域17中に充填される電解溶液16と、封止構造部18と、を有する。すなわち、リチウム電池10の基本構成要素は、負極13と、正極14と、電解溶液16と、である。

【0020】
<リチウム二次電池用負極(活物質)の作製>
図2に示すように、実施形態の活物質12は、リチウムイオンを有する電解溶液24を用いて、電気化学的成膜法である電気めっき法により作製される。電析装置20は、白金線23を陽極とし、銅箔22を陰極としている。銅箔22は集電体11であり、負極13の一部となる。

【0021】
参照電極21としては、Li/Li(TBAClO)を用いた。すなわち、以下の説明において電位Vは、(vs. Li/Li)にて示す。また、TBAは、Tetra Butyl Ammoniumの略号である。電解溶液24には0.5M TBAClOと、0.5M SiClを溶解したPC(プロピレンカーボネイト)を用いた。

【0022】
図3に、電析装置20の電位/電流曲線を示す。測定は、掃引速度10mV/s、露点-95℃のアルゴン雰囲気下で行った。図3において(A)が上記組成の電解溶液24を用いた場合であり、(B)は電解溶液24からSiClを除いた場合である。図3に示すように、SiClを含む電解溶液24の場合にのみ、0.4~1.4Vの範囲で還元電流が確認され、前記電位範囲でSiの電析反応が進行することが判明した。

【0023】
そこで、電流密度1mA/cmにて2C(クーロン)/cmの通電電気量に制御し、活物質12を集電体11である、80μmの銅箔22上に成膜して負極13を作製した。なお析出電位は成膜開始時には変化したが、その後は、1.220Vにて安定した。

【0024】
<リチウム二次電池用活物質の解析>
図4に負極13の破断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。活物質12の表面は平滑であり、膜厚は約2μmであった。別途、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用い、活物質12を構成する元素の面内分布(マッピング)を測定したところ、SiとOとCとが均一に分散していた。

【0025】
次に、図5のX線回折(XRD)解析パターンに示すように、負極13では、集電体であるCu以外のピークは確認されなかった。すなわち、Cu(200)およびCu(220)に相当するピークは確認されたが、Si(111)、Si(220)、Si(311)、Si(400)に相当するピークは確認されなかった。

【0026】
すなわち、活物質12はアモルファス(非晶質)であることが判明した。なお、逆に言えば、本発明においてアモルファスとは、通常のXRD解析においてピークが確認されない状態を意味する。

【0027】
次に、図6に、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)による活物質12の解析結果を示す。XPSは、構成元素の種類だけでなく、その電子状態を分析することができるという特徴を有し、薄膜の解析に広く使用されている。

【0028】
図6(A)は、Si 2p3/2付近を、図6(B)は、C 1s付近を、図6(C)は、O 1s付近の結合エネルギー範囲の強度分布を示しており、それぞれの図において(1)は180sのアルゴンイオンエッチング後を、(2)は360sのアルゴンイオンエッチング後を、(3)は540sのアルゴンイオンエッチング後を、示している。すなわち、XPSは極表面の状態を解析するため不可避の汚染が存在する表面層をエッチングした後の解析結果を示している。

【0029】
図6(A)~図6(C)に示すように、活物質12のSi、C、Oの電子状態、すなわち結合エネルギーはエッチング時間に対して変化していない。このため、活物質12の内部において、各元素の結合状態は一定であることがわかる。

【0030】
さらに、図6(A)に示すように、活物質12のSi 2p3/2の結合エネルギーは、Siであることを示す99.5eVまたはSiOであることを示す103.5eVではなく、その間の101eV~103eVであった。

【0031】
Si 2p3/2の結合エネルギーが101eV~103eVのSi酸化物は、SiOである。SiOは、SiOのような安定相ではなく、非平衡状態の準安定相である。このため、SiOの構造等は不明であるが、活物質12に含有されているSiは、準安定相であることが判明した。

【0032】
なお、準安定相とは熱平衡状態では存在しない相のことであり、熱力学的には不安定ではあるが、何らかの条件が満たされれば暫定的に存在し得る相である。

【0033】
次に、グロー放電発光分光分析(GDOES)による、活物質12の組成分析結果を以下に示す。なお、以下は、表面汚染および集電体11の影響が少ない、活物質12の表面から深さ1μmの場所の値である。

【0034】
Si : 35.6at%
O : 45.9at%
C : 18.5at%
O/Si=1.29
以上のXPSおよびGDOESによる解析結果が示すように、活物質12のSi/Oは、SiOx(X=1.29)の状態であった。なお、より厳密には、活物質12は大量の炭素を含有していることから、「Si-Ox-C(X=1.29、Y:未測定)の状態である。

【0035】
ここで、活物質12の作製は、露点-95℃のアルゴン雰囲気下で行っており、溶媒中の水分含有量も10ppm以下であるにもかかわらず、電析膜である活物質12に大量の酸素が含有されている。

【0036】
また、活物質12が含有する炭素含有量は不可避に混入する量を明らかに超えている。炭素は電解溶液24(溶媒+溶質)に含まれている元素である。

【0037】
すなわち、活物質12の中の酸素および炭素は、電解溶液24の電解分解反応により生成し、活物質12に共析したものである。

【0038】
電析法は、高速急冷法と同様に、非平衡状態の準安定相が形成しやすいことが報告されている。さらに、活物質12には、析出反応と同時に電解分解した電解溶液24からの炭素が含まれている。電析膜中の炭素は、非平衡状態の準安定相の形成に寄与することが報告されている。すなわち、活物質12は、酸素および炭素を有し電解分解する溶媒または溶質を有する電解溶液24を用い電析法により作製されたため準安定相が発現している。

【0039】
活物質12の中の炭素は、活物質12のアモルファス化および準安定相化に寄与している。

【0040】
すなわち、活物質12は、活物質粉末+導電助剤+バインダ、コアシェル構造、またはμmオーダーレベルのマトリック構造等のバルク的混合物ではなく、原子レベルまたはnmオーダーレベルのマトリック構造を有する準安定相のアモルファスである。

【0041】
<リチウム二次電池特性評価>
次に、リチウム電池10の特性評価について説明する。

【0042】
二次電池の特性評価には、電析装置20と同様の三極式セルを用いた。作用極は負極13を用い、対極はLi箔を用い、参照電極は、Li/Li(TBAClO)を用い、電解溶液は、1M LiClO/EC(エチレンカーボネート):PC(1:1 vol%)を用いた。

【0043】
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定では、開回路電位より下限電位0.01V、上限電位1.2Vとし、掃引速度0.1mVとした。定電流充放電試験(サイクル試験)は、50μA/cm、0.01V~1.2Vの電位範囲で行った。

【0044】
図7のCV測定チャートに示すように、カソード側掃引時には、0.3V以下の0.01Vに、アノード側掃引時には、0.3Vおよび0.5Vに、ピークが確認された。これらのピークは、公知のSi負極を用いたリチウム電池におけるSiとLiとの合金/脱合金反応に起因するピークと一致する。

【0045】
このため、リチウム電池10では、負極13とLiとの合金/脱合金反応が可逆的に進行していることが判明した。

【0046】
図8に示すように充放電サイクル試験では、1回目のサイクル特性だけが、安定している2回目以降のサイクル特性と大きく異なっていた。すなわち1回目のクーロン効率は僅か38%であった。しかし、図9に示すように、クーロン効率は、2サイクル以降は300サイクル後においても安定して90%以上であった。

【0047】
一方、リチウム電池10の容量は初期から1020mAh/gと、黒鉛負極を有する公知のリチウム電池の3倍近い高容量である。そして、300サイクル後においても初期の98%と非常に安定した高特性を示した。

【0048】
上記特性は、活物質12に含まれるSiが非平衡状態の準安定相を形成していることが大きく寄与している。以下、準安定相として、SiOx:X=1を例に説明する。すなわち、安定相であるシリコン酸化物、SiOは導電性がなくあまり電解還元されない。これに対してSiOは、酸化物であるがSiOに比べ導電性を有し、リチウム電池の充電程度の還元条件であってもSiに還元される。すなわち、1回目の充放電サイクルにおいて、SiOのシリコンがリチウムで置換され酸化リチウム(LiO)が生成する。

【0049】
すなわち、1回目のサイクルにおいて以下の反応が進行する。

【0050】
SiO + 2Li +2e → LiO +Si (反応式1)
なお、負極13の活物質12に含有されている炭素が、準安定相であるSiOxの発現に大きな影響を及ぼしているため、以下の反応とみなすこともできる。

【0051】
SiO(-C) + 2Li +2e → LiO(-C) +Si(-C) (反応式2)
すなわち、活物質12のSiO(-C)は、最初のリチウム合金反応において、LiO(-C)を含有する活物質12Aに変化する。そして以降の充放電においては、活物質12AのSi(-C)が、可逆変化を繰り返している。なお、LiO(-C)は、充放電のときに変化しない不可逆成分である。

【0052】
すなわち、負極13Aを具備するリチウム電池10Aは、活物質12Aが、LiO(-C)を有する。LiO(-C)を有する活物質12Aが、優れたサイクル特性を示す理由は明確ではないが、充放電によるSiの体積変化があっても、集電体11から脱離しにくいマトリックス構造を形成している可能性がある。または、LiO(-C)がSiの充放電による体積変化を減少する作用を有している可能性もある。

【0053】
なお、リチウム合金化反応において不可逆成分の生成は、好ましくないとも考えられる。これは電池を作製した後に不可逆成分が生成されると、容量低下が低下するためである。

【0054】
しかし、リチウム電池10では、活物質12は集電体11上に形成されているために、電池を作製する前に、リチウムと反応させて、不可逆成分である、LiO(-C)を生成することができる。言い換えれば、活物質12を活物質12Aに変化させることができる。

【0055】
シリコンと、酸素と、炭素と、リチウムと、を含有し、リチウムが酸化リチウムである活物質12A、すなわち、Si(-C)とLiO(-C)とを有する活物質12Aを用いると、電池を製造した後に、さらに不可逆成分が生成することはない。このため、容量が低下することなく、リチウム電池10Aの作製が可能である。

【0056】
また、リチウム電池10Aの作製前に過剰の脱合金化可能なリチウムを活物質12Aから取り除いておくことも可能である。

【0057】
以上の説明のように、活物質12Aは、準安定相の活物質12のSiOx(0.5≦X≦1.5)のシリコンを、リチウムで置換することにより作製される。また、活物質12Aが含有するリチウムは、酸化リチウムである。

【0058】
言い換えれば、活物質12Aは、シリコンイオンと、酸素および炭素を含有する電解溶液24から、電気化学的成膜法により作製された後に、電気化学的手法によりシリコンをリチウムで置換することにより作製される。

【0059】
<追加試作>
次に、作製条件を変えた場合の活物質の特性等について説明する。記載した条件以外は既に説明した活物質12(12A)、負極13(13A)、およびリチウム電池10(10A)と同じである。

【0060】
1.電流密度が2mA/cmの場合(析出電位:1.210V)
(A) GDOESによる組成
Si : 39.1at%
O : 43.9at%
C : 17.0at%
O/Si=1.12
(B) サイクル試験結果
初期容量:691mAh/g
5サイクル後の容量変化率:94%
2.電流密度が3mA/cmの場合(析出電位:1.145V)
(A) GDOESによる組成
Si : 38.1at%
O : 33.8at%
C : 28.1at%
O/Si=0.89
(B) サイクル試験結果
初期容量:628mAh/g
5サイクル後の容量変化率:80%
さらに、電流密度等の作製条件を変えた試料について、評価を行ったところ、以下の結果を得た。

【0061】
活物質12は、炭素含有量が、10at%以上30at%以下であれば、準安定相のアモルファスとなる。すなわち、活物質12Aは、リチウムを除いて算出した炭素含有量が、10at%以上30at%以下である。

【0062】
活物質12のSi/Oは、SiOxが、Xが0を超え、2未満であれば、導電性を有する準安定相のアモルファスとなり、X=0(Si)またはX=2(SiO)では得られなかった高特性が得られる可能性がある。

【0063】
そして、活物質12のSi/Oは、SiOxが、Xは、0.5以上1.5以下が好ましい。すなわち、Xが0.5以上であれば、充放電時の体積変化に対して活物質の脱落等が発生しにくい。また、Xが1.5以下であれば、十分な導電性を有するとともに、1回目の充放電サイクルにおいて、SiOxがSiに還元されるために、高い容量を得ることができる。

【0064】
さらに、活物質12のSi/Oは、SiOxは、Xが0.7以上1.3以下、が特に好ましい。前記範囲内であれば、リチウム電池10は、1000mAh/g以上の容量と、300サイクル後も初期の80%以上の容量が維持する良好な充放電サイクル特性を得ることができる。

【0065】
以上の説明のように、本実施形態のリチウム二次電池用活物質12、12A、リチウム二次電池用負極13、13A、およびリチウム二次電池10、10Aは、エネルギー密度が高く、良好な充放電サイクル特性を示す。

【0066】
なお、リチウム電池10、10Aの構造は図1に示す構造に限られるものではなく、公知の各種構造とすることができる。

【0067】
また、リチウム電池10、10Aの正極としては、リチウムに替えて、リチウム電池において一般的に用いられているコバルト酸リチウム等のリチウム含有遷移金属複合酸化物を正極活物質とした正極を用いることもできる。すなわち、リチウム電池の正極活物質として用いることができるものであれば、特に制限なく、用いることができる。

【0068】
また、リチウム電池10、10Aに用いる非水電解質は、リチウム電池の非水電解質として用いることができるものであれば、特に制限なく、用いることができる。

【0069】
活物質12を電析成膜するときの、電解溶液24は分子構造に酸素および炭素を有し電解分解する溶媒または溶質であれば、PCまたはTBAClOに限られるものではなく、特に制限なく、用いることができる。

【0070】
集電体11の材料は、銅に限られるものではなく、リチウム電池において一般的に用いられているニッケル、ステンレス、モリブデン、タングステン、およびタンタルから選ばれる少なくとも1種等を用いることができる。

【0071】
また、活物質12、12Aは、所定の導電性基体、例えばステンレス基体上に作製した後に、基体から剥離し集電体と接合してもよい。例えば、回転するドラム状の陰極を用いて、電着処理と剥離処理とを連続的に行うことにより、長尺形状の活物質を得ることもできる。

【0072】
また、基体から剥離した活物質をカーボン材料とコンポジット化してもよい。すなわち、活物質と導電助剤とバインダとを用いてペーストを作製し、集電体11に塗布することで負極を作製してもよい。活物質を粉末化して使用しても良い。

【0073】
すなわち、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0074】
10、10A…リチウム二次電池、11…集電体、12、12A…リチウム二次電池用活物質、13、13A…リチウム二次電池用負極、14…正極、15…セパレータ、16…電解溶液、17…貯留領域、18…封止構造部、20…電析装置、21…参照電極、22…銅箔、23…白金線、24…電解溶液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図4】
8