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明細書 :スパッタリング装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5142111号 (P5142111)
公開番号 特開2010-156014 (P2010-156014A)
登録日 平成24年11月30日(2012.11.30)
発行日 平成25年2月13日(2013.2.13)
公開日 平成22年7月15日(2010.7.15)
発明の名称または考案の名称 スパッタリング装置
国際特許分類 C23C  14/34        (2006.01)
FI C23C 14/34 T
C23C 14/34 B
請求項の数または発明の数 15
全頁数 18
出願番号 特願2008-334310 (P2008-334310)
出願日 平成20年12月26日(2008.12.26)
審査請求日 平成22年12月17日(2010.12.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】草野 英二
個別代理人の代理人 【識別番号】100105924、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 賢樹
審査官 【審査官】田中 則充
参考文献・文献 特開平5-263225(JP,A)
調査した分野 C23C14/00-14/58
CiNii
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
外部より低圧な雰囲気に維持可能なチャンバと、
前記チャンバ内で基材を保持する保持部と、
前記保持部で保持された基材に周面が対向するように設けられた回転可能な回転陰極であって、表面のターゲット材料をスパッタリングするための電力が供給される筒状の回転陰極と、
前記回転陰極の表面に金属材料を供給可能な材料供給手段と、
前記保持部が設けられた成膜室と前記材料供給手段が設けられた材料供給室との間のガスの移動を規制するとともに、前記回転陰極が回転可能な隙間を有して該回転陰極が配置される開口部が形成されたガス遮蔽部材と、
前記成膜室に接続され、スパッタリングされた前記ターゲット材料と反応して化合物を形成する反応性ガスを供給する反応性ガス供給路と、を備え、
前記材料供給手段は、スパッタリングされた前記回転陰極の表面に前記ターゲット材料と同種の前記金属材料を新たに供給する、
ことを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記回転陰極は、スパッタリングを実質的に行う際に印加される電圧が負であるパルス状の電力が供給されることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記材料供給手段は、スパッタリング陰極を有することを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記スパッタリング陰極は、異なる種類のターゲット材料が配置可能な複数の陰極を有することを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記スパッタリング陰極は、その周面が前記回転陰極と対向しながら回転する円筒形状であることを特徴とする請求項3または4に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
前記スパッタリング陰極は、ターゲット材料が設けられる面と反対側にマグネットが設けられていることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
前記スパッタリング陰極は、スパッタリングを実質的に行う際に印加される電圧が負であるパルス状の電力が供給されることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
前記回転陰極に印加される電力の位相と、前記スパッタリング陰極に印加される電力の位相とが異なることを特徴とする請求項7に記載のスパッタリング装置。
【請求項9】
前記材料供給室は、不活性ガス、または、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスが供給される不活性ガス供給路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項10】
前記ガス遮蔽部材は、前記回転陰極と対向する前記開口部の側面に、チャンバ内のガスを外部に排気する排気部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項11】
前記反応性ガス供給路は、酸素、窒素、フッ素、エチレン、アセチレン、ベンゼン、4ふっ化炭素、4ふっ化エチレンおよびメタンの少なくとも一つを含む反応性ガス供給源と接続されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項12】
前記反応性ガスのイオン化またはラジカル化を促進する促進手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項13】
前記回転陰極は、その内周側にマグネットが設けられていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のスパッタリング装置。
【請求項14】
前記材料供給手段は、薄膜材料を蒸発させるための蒸着源を有することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項15】
前記材料供給手段は、気相成長により前記回転陰極の表面に薄膜材料として成膜される、金属フッ化物、金属塩化物、金属水素化物および有機金属化合物の少なくとも一つを含む原料が供給される原料供給路を有することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関し、特に回転陰極を有するスパッタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置は、真空中においてターゲット材料を高いエネルギーを持つ粒子により気相中に蒸発させ、これを基材あるいは基板上に堆積する薄膜形成装置である。またスパッタリング装置の一種に、磁場によりプラズマを閉じこめることでスパッタリングの効率を上げることが可能なマグネトロンスパッタリング装置が知られている。このようなマグネトロンスパッタリング装置においてターゲットが固定されている場合、ターゲットの消耗が一様でないため、いわゆるレーストラックが生じる。このようなレーストラックを解消するスパッタリング装置として、シリンダ状の陰極の表面にターゲットを担持し軸方向を回転中心としたマグネトロンスパッタリング装置が知られている(特許文献1乃至5参照)。
【0003】
また、スパッタリング装置を用いて金属酸化物あるいは金属窒化物などの金属化合物薄膜を形成する場合、ターゲット材料として成膜したい金属化合物と同じ材料を用いるときと、ターゲット材料として成膜したい金属化合物の主成分である金属を用いるときがある。ターゲット材料として金属が用いられる場合、その金属をスパッタした後に、酸素あるいは窒素などの反応性ガスと反応させて金属化合物の薄膜が形成される。
【0004】
しかしながら、前述のスパッタリング装置において、金属化合物をターゲット材料とする場合、ターゲット材料からの金属原子のスパッタリング率が金属材料をターゲット材料とする場合と比較して著しく低下する。そのため、工業的に十分に高い薄膜堆積速度が得られないという問題があった。また、ターゲット材料の金属化合物が導電性を持たない場合、スパッタリング装置の電源として高周波電源を用いる必要がある。そのため、特に大型のカソードを用いる場合、安定した放電が得られない、他の機器に高周波漏れによる影響を与える、などの問題があった。
【0005】
一方、金属材料からなるターゲットを用いて、導入された酸素あるいは窒素などの反応性ガスと反応させて化合物薄膜を形成する場合、反応性ガスの圧力(分圧)を基材(基板)上での化合物薄膜の形成が可能なまでに高くする必要がある。しかしながら、このような条件においては、当然ターゲットの表面においても化合物層が形成され、金属化合物からなるターゲットを用いる場合と同様に、スパッタリング率の著しい低下が起こり、高い薄膜堆積速度が得られなかった。
【0006】
また、このようにターゲット表面に化合物が形成された場合、ターゲット表面の特に導電性がない部分に電荷が蓄積し、これが何らかの原因により瞬時に放出され、異常放電、いわゆるアーキング(マイクロアーキング)を引き起こし、形成された薄膜に異物形成を誘発していた。

【特許文献1】特開平6-158312号公報
【特許文献2】米国特許第4417968号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0119631号明細書
【特許文献4】国際公開第91/07519号パンフレット
【特許文献5】国際公開第91/07521号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、金属ターゲットを用いたときに発生するスパッタリング率の低下、ひいては薄膜堆積速度の低下は、特に酸素ガスを反応性ガスとする場合に顕著であり、モード転移として知られている。モード転移を引き起こすターゲット表面における化合物層の形成にはある程度の時間が必要であり、これはスパッタリング時の放電電力や、スパッタリング装置の排気ポンプの大きさ、換言すれば反応性ガスに対する排気速度等により影響されることが知られている。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、化合物薄膜の生産性を向上するスパッタリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のスパッタリング装置は、外部より低圧な雰囲気に維持可能なチャンバと、チャンバ内で基材を保持する保持部と、保持部で保持された基材に周面が対向するように設けられた回転可能な回転陰極であって、表面のターゲット材料をスパッタリングするための電力が供給される筒状の回転陰極と、回転陰極の表面に金属材料を供給可能な材料供給手段と、保持部が設けられた成膜室と材料供給手段が設けられた材料供給室との間のガスの移動を規制するとともに、回転陰極が回転可能な隙間を有して該回転陰極が配置される開口部が形成されたガス遮蔽部材と、成膜室に接続され、スパッタリングされたターゲット材料と反応して化合物を形成する反応性ガスを供給する反応性ガス供給路と、を備える。材料供給手段は、スパッタリングされた回転陰極の表面にターゲット材料と同種の金属材料を新たに供給する。
【0010】
回転陰極の表面にあるターゲットのうち成膜室でスパッタリングされた部分は成膜室内において反応性ガスに曝される。スパッタリングされたターゲット表面で反応性ガスが反応して化合物が生成するためにはある程度の反応性ガスに曝される時間が必要である。しかしながら、この態様によると、ターゲットのうちスパッタリングされた部分は回転陰極の回転により材料供給室側に移動する。成膜室と材料供給室との間に設けられたガス遮蔽部材は、成膜室に供給された反応性ガスが材料供給室へ移動することを規制するため、スパッタリングされたターゲットの部分が材料供給室で反応性ガスに曝されることが抑制される。加えて、材料供給室において、ターゲットのスパッタリングされた部分を含めターゲットの表面に新たに金属材料を供給することで化合物がターゲットの表面に形成されることが抑制される。ここで、金属材料とは、金属あるいは酸素や窒素等とわずかに化合した金属ということができる。
【0011】
回転陰極は、スパッタリングを実質的に行う際に印加される電圧が負であるパルス状の電力が供給されてもよい。これにより、ターゲット表面に電荷が蓄積することを緩和し、異常放電を抑制することができる。
【0012】
材料供給手段は、スパッタリング陰極を有してもよい。これにより、回転陰極上に比較的密着性の高い膜を高速に成膜することができる。
【0013】
スパッタリング陰極は、異なる種類のターゲット材料が配置可能な複数の陰極を有してもよい。これにより、回転陰極上に合金のターゲット材料を成膜することができる。また、スパッタリング陰極の各陰極のターゲット材料に対するスパッタリングの条件をそれぞれ制御することで、回転陰極上の合金ターゲットの成分比を任意に変化させることも可能となる。その結果、成膜室で基材上に成膜される化合物に含まれる複数の成分の組成比をスパッタリング陰極のターゲット材料を交換せずに変化させることができる。
【0014】
スパッタリング陰極は、その周面が回転陰極と対向しながら回転する円筒形状であってもよい。これにより、ターゲット材料が効率よく利用される共にターゲットの長寿命化が図られる。
【0015】
スパッタリング陰極は、ターゲット材料が設けられる面と反対側にマグネットが設けられていてもよい。これにより、高周波でも使用できるとともに、プラズマが回転陰極付近で発生しないように制御することが可能となる。その結果、回転陰極上のターゲットにダメージを与えずに、金属材料を供給することができる。
【0016】
スパッタリング陰極は、スパッタリングを実質的に行う際に印加される電圧が負であるパルス状の電力が供給されてもよい。これにより、ターゲット表面に電荷が蓄積することを緩和し、異常放電を抑制することができる。
【0017】
回転陰極に印加される電力の位相と、スパッタリング陰極に印加される電力の位相とが異なってもよい。これにより、スパッタリング陰極から回転陰極に向かってスパッタされたターゲット材料が逆スパッタされることが抑制され、スパッタリング効率が向上する。
【0018】
材料供給室は、不活性ガス、または、不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスが供給される不活性ガス供給路が設けられていてもよい。これにより、仮に反応性ガスがわずかに材料供給室に漏出しても、材料供給室側に露出しているターゲットが反応性ガスと反応することが抑制される。特に反応性ガスが酸素の場合、還元性ガスにより還元することで材料供給室における反応性ガスの分圧を下げることができる。ここで、還元性ガスとしては、水素、アセチレン、メタン等が例示される。
【0019】
ガス遮蔽部材は、回転陰極と対向する開口部の側面に、チャンバ内のガスを外部に排気する排気部が設けられていてもよい。これにより、成膜室の反応性ガスがガス遮蔽部材の開口部の隙間から材料供給室へ向かってわずかに漏れるのを防止することができる。
【0020】
反応性ガス供給路は、酸素、窒素、フッ素、エチレン、アセチレン、ベンゼン、4ふっ化炭素、4ふっ化エチレンおよびメタンの少なくとも一つを含む反応性ガス供給源と接続されてもよい。
【0021】
反応性ガスのイオン化またはラジカル化を促進する促進手段を更に備えてもよい。これにより、化合物形成のために必要な反応性ガスの導入量を抑えることができ、より少ない反応性ガス流量で、基材上に堆積される薄膜を量論比に近い十分に酸化や窒化等がなされた化合物とすることができる。それとともに、ターゲット材料となる回転陰極上の金属等の表面での化合物形成を抑制することが可能となる。
【0022】
回転陰極は、その内周側にマグネットが設けられていてもよい。これにより、高周波でも使用できるとともに、プラズマが回転陰極付近で発生しないように制御することが可能となる。その結果、保持部における基材上の化合物膜にダメージを与えずに、スパッタリングが可能となる。
【0023】
材料供給手段は、薄膜材料を蒸発させるための蒸着源を有してもよい。また、材料供給手段は、気相成長により前記回転陰極の表面に薄膜材料として成膜される、金属フッ化物、金属塩化物、金属水素化物および有機金属化合物の少なくとも一つを含む原料が供給される原料供給路を有してもよい。
【0024】
なお、上述した各要素を適宜組み合わせたものも、本件特許出願によって特許による保護を求める発明の範囲に含まれうる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、化合物薄膜の生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。本実施の形態に係るスパッタリング装置10は、外部より低圧な雰囲気に維持可能なチャンバ12と、チャンバ12内でガラス基板やシリコンウェーハなどの基材14を保持するとともに陽極を兼ねる保持部16と、保持部16で保持された基材14に周面が対向するように設けられた回転可能な回転陰極18と、回転陰極18の表面に金属等の薄膜材料を供給可能な金属材料供給手段としての補助陰極20と、保持部16が設けられた成膜室22と補助陰極20が設けられた金属材料供給室24との間のガスの移動を規制するとともに、回転陰極18が回転可能な隙間26を有して回転陰極が配置される方形の開口部28が形成されたガス遮蔽部材30と、成膜室22に接続され、スパッタリングされたターゲット材料と反応して金属化合物を形成する反応性ガスを供給する反応性ガス供給路32と、を備える。反応性ガス供給路32は、酸素、窒素、フッ素、エチレン、アセチレン、ベンゼン、4ふっ化炭素、4ふっ化エチレンおよびメタンの少なくとも一つを含む反応性ガス供給源(不図示)と接続されている。
【0028】
回転陰極18は、表面のターゲット材料をスパッタリングするための電力が供給される円筒形状のスリーブ34と、スリーブ34を回転駆動する不図示の駆動部と、スリーブ34の内周側に設けられ磁場を発生する磁石36と、を有している。このような磁石36によりプラズマが生じる領域を規制することで、プラズマがターゲット付近に封じ込められ、スパッタ速度の向上が図られる。また、高周波でも使用できるとともに、プラズマが基材付近で発生しないように制御することが可能となり、保持部16における基材14上の金属化合物膜にダメージを与えずに、スパッタリングが可能となる。
【0029】
なお、スリーブ34の表面に予めターゲット材料が形成された回転陰極18を用いてもよいが、アルミニウムやSUSからなるスリーブ34の露出した面に補助陰極20によりターゲット材料を形成して回転陰極18として用いてもよい。ターゲット材料としては、チタン、インジウム、スズ、亜鉛、セリウム、ビスマス、ジルコニウム、ニオブ、タンタル等の高屈折率材料の成分となりうるものが例示される。また、必要に応じてシリコンなどをターゲット材料として用いてもよい。反応性ガスとしては、例えば、酸化物の膜を形成する場合は酸素、窒化物の膜を形成する場合には窒素、というように適宜選択すればよい。以下では、ターゲット材料がチタン、反応性ガスが酸素、得られる化合物薄膜が酸化チタンの場合について説明する。
【0030】
回転陰極18の表面にあるターゲット38のうち成膜室22でスパッタリングされた部分は成膜室22内において酸素ガスに曝される。そのため、チタンからなるターゲットが酸化されるとスパッタリングによる成膜速度が極端に低下することになる。しかしながら、スパッタリングされたチタンのターゲット38の表面で酸素が反応して酸化チタンが生成するためにはある程度酸素ガスに曝される時間が必要である。換言すれば、この時間を短くすることでチタンのターゲット38が酸化されることを抑制できる。
【0031】
そこで、本実施の形態に係るスパッタリング装置10は、ターゲット38のうちスパッタリングされた部分は回転陰極18の回転により金属材料供給室24側に移動する。成膜室22と金属材料供給室24との間に設けられたガス遮蔽部材30は、成膜室22に供給された酸素ガスが金属材料供給室24へ移動することを規制する。そのため、スパッタリングされたターゲット38の部分38aを回転により金属材料供給室24側へ移動させることで、ターゲット38の部分38aが金属材料供給室24で酸素ガスに曝されることが抑制される。加えて、金属材料供給室24において、ターゲット38のスパッタリングされた部分38aを含めターゲット38の表面に新たに金属材料であるチタンを供給することで酸化チタンがターゲット38の表面に形成されることが抑制される。ガス遮蔽部材30の材質は、ステンレス、銅、あるいはアルミニウム合金が好ましく、必要に応じて水冷を行ってもよい。なお、成膜室22の圧力より金属材料供給室24の圧力をわずかに高くすることで成膜室22から反応性ガスが金属材料供給室24へ流れることが抑制される。
【0032】
回転陰極18は、スパッタリングを実質的に行う際に印加される電圧が負であるパルス状の電力が供給されている。これにより、ターゲット38の表面に電荷が蓄積することが緩和され、異常放電が抑制される。なお、回転陰極に電力を供給する電源は、直流方式でも交流方式でもよい。
【0033】
補助陰極20は、スパッタリングされた回転陰極18の表面にターゲット材料と同種の金属材料を新たに供給する。具体的には、補助陰極20は、ターゲット40が載置されスパッタリング陰極として機能する導電性の筐体42と、筐体42の内部に設けられ磁界を発生する磁石44と、を有する。これにより、回転陰極18上に比較的密着性の高い膜を高速に成膜することができる。なお、補助陰極20は、図1に示すような固定のスパッタリング陰極の代わりに、その周面が回転陰極18と対向しながら回転する円筒形状の回転陰極であってもよい。これにより、ターゲット材料が効率よく利用される共にターゲットの長寿命化が図られる。
【0034】
補助陰極20は、ターゲット40が設けられる面と反対側に磁石44が設けられているため、高周波でも使用できるとともに、プラズマが回転陰極18付近で発生しないように制御することが可能となる。その結果、回転陰極18上のターゲット38にダメージを与えずに、金属材料を供給することができる。
【0035】
補助陰極20は、スパッタリングを実質的に行う際に印加される電圧が負であるパルス状の電力が供給されている。これにより、ターゲット40の表面に電荷が蓄積することが緩和され、異常放電が抑制される。
【0036】
なお、回転陰極18に印加される電力の位相と、補助陰極20に印加される電力の位相とが異なるように不図示の電源から電力を供給してもよい。これにより、補助陰極20から回転陰極18に向かってスパッタされたターゲット材料が逆スパッタされることが抑制され、スパッタリング効率が向上する。
【0037】
詳述すると、金属材料供給源としてスパッタリング陰極を用いる場合、補助陰極20から回転陰極18に供給された金属が金属材料供給室24側においてスパッタリングされるということが起こりうる。回転陰極18上の放電は、磁石36の前面となる基材14に面した成膜室22側において発生するが、同時に金属材料供給室24側の面においても放電が発生するためである。回転陰極18の金属材料供給室24側では磁気回路を形成する磁石が設けられておらず放電は低密度であり、この放電によるスパッタリングは通常は無視されうる。しかしながら、これが無視できない場合、補助陰極20に電力を供給する期間においては、回転陰極18側には電力を供給しないという方法により、金属材料供給室24における放電の抑制が可能である。
【0038】
また、補助陰極20から回転陰極18へのスパッタリングは、回転陰極18上のターゲット38の厚み等に応じて連続的にあるいは断続的に行われるようにすればよい。そのため、スパッタリング装置10は、回転陰極18上のターゲット38の厚みを測定する測定装置を備えてもよい。
【0039】
金属材料供給室24には、アルゴンなどの不活性ガス、または、不活性ガスと水素ガスとの混合ガスが供給される不活性ガス供給路46が設けられている。これにより、仮に反応性ガスである酸素ガスがわずかに金属材料供給室24に漏出しても、金属材料供給室24側に露出しているターゲット38が酸素ガスと反応することが抑制される。特に反応性ガスが酸素の場合、水素により還元することで金属材料供給室24における酸素ガスの分圧を下げることができる。
【0040】
本実施の形態に係るガス遮蔽部材30は、回転陰極18と対向する開口部28の側面に、チャンバ12内のガスを外部に排気する排気部48が設けられている。これにより、成膜室22の反応性ガスがガス遮蔽部材30の開口部28の隙間26から金属材料供給室24へ向かってわずかに漏れるのを防止することができる。具体的には、図1に示すように、排気部48は、二重になったガス遮蔽部材30の中間室47に流れ込んだガスを外部に排気する。中間室47の圧力は成膜室22あるいは金属材料供給室24よりも低く保たれている。これにより、成膜室22に導入された反応性ガスが金属材料供給室24に流入することが抑制される。
【0041】
なお、成膜室22および金属材料供給室24には、内部に導入された不活性ガスや反応性ガスを外部に排出する排出口50,52が設けられている。排出口50,52にはそれぞれ別個の真空排気装置が接続されている。これにより、成膜室22と金属材料供給室24との圧力をそれぞれ制御することが可能となり、例えば、金属材料供給室24の圧力を成膜室22より僅かに高くすることで成膜室22内の反応性ガスが金属材料供給室24に流入することが抑制される。
【0042】
上述のようにスパッタリング装置10は、ターゲット38の表面における化合物薄膜の形成を抑制するために、ターゲット38の表面に常に金属を供給することを可能とすべく、回転陰極18に加えて金属材料供給源として補助陰極20を備えている。また、ガス遮蔽部材30により、金属材料供給室24の放電空間における反応性ガス分圧をほとんどゼロとすることが可能となり、金属材料供給源から回転陰極18への金属の供給が可能となる。そして、回転陰極18を常にあるいは間欠的に回転することにより、回転陰極18のターゲット38上に常に金属薄膜が形成されるため、ターゲット38上での化合物薄膜の形成による化合物薄膜堆積速度の低下およびアーキング等の異常放電によるスパッタリング過程の不安定化が抑制される。
【0043】
また、補助陰極20から供給された金属は、成膜室22において反応性ガスに曝され、その表面においては化合物が形成される。しかし、前述のように化合物の形成には数秒程度を有し、また、その時間は排出口50に接続される真空ポンプの排気速度が大きくなるとともに長くなる。
【0044】
したがって、放電電力、反応性ガス分圧および排気速度を適正に設定することで回転陰極18上での化合物形成の抑制することが可能となり、これによる化合物薄膜の堆積速度(成膜速度)の低下を抑えることができる。成膜室22における反応性ガスの分圧を低くした場合、十分な反応が基板上で起こらず、堆積された薄膜が所望の比率以下の組成比を持つことが起こりうる。
【0045】
なお、反応性ガスの活性を増すために反応性ガス供給路32に、反応性ガスのイオン化またはラジカル化を促進する促進手段を設けてもよい。これにより、化合物形成のために必要な反応性ガスの導入量を抑えることができ、より少ない反応性ガス流量で、基材上に堆積される薄膜を量論比に近い十分に酸化や窒化等がなされた化合物とすることができる。それとともに、ターゲット材料となる回転陰極上の金属表面での化合物形成を抑制することが可能となる。例えば、補助放電が可能なように電圧印加手段を反応性ガス供給路32の途中や出口近傍に設けてもよい。上述のように本実施の形態に係るスパッタリング装置10により、金属化合物薄膜の高速かつ安定な形成が達成される。
【0046】
(酸化チタンの成膜方法)
次に、スパッタリング装置10を用いた酸化チタンの薄膜を基材上に形成する方法について詳述する。はじめに、金属材料供給室24に設けられた補助陰極20にチタンのターゲット40を設置する。不活性ガスであるアルゴンガスに還元性ガスである水素ガスを5mol%混合した混合ガスを、不活性ガス供給路46より金属材料供給室24へ導入する。その際の混合ガスの圧力は0.5Paとする。基材14としてガラス板を基板搬送機構(不図示)に設置された保持部16としての基板ホルダに設置する。
【0047】
一方、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを、反応性ガス供給路32より回転陰極18が設けられている成膜室22へ導入する。その際の混合ガスの圧力を0.4Paとし、アルゴンガスと酸素ガスの比率は1対1とする。回転陰極18を3~30rpmにて回転させるとともに補助陰極20に直流電力を供給し、金属のスパッタリングを起こす。
【0048】
次に、回転陰極18に50kHzのパルス直流電力を供給し、放電を起こす。放電が安定になった後において、基板搬送機構によりガラスが回転陰極18の前面を通過することにより、薄膜が形成される。ガラスの搬送速度を60mm/minとした時に95nmの膜厚の酸化チタン薄膜を堆積することができた。また、その屈折率は波長が633nmの光に対して2.46であった。このように、本実施の形態に係るスパッタリング装置10を用いることにより、従来では高速な成膜が困難な酸化チタン薄膜を、高速に成膜することが可能となる。
【0049】
(酸化シリコン)
次に、スパッタリング装置10を用いた酸化シリコンの薄膜を基材上に形成する方法について詳述する。はじめに、金属材料供給室24に設けられた補助陰極20に金属供給源としてホウ素を添加したシリコンターゲットを設置する。不活性ガスであるアルゴンガスに還元性ガスである水素ガスを5mol%混合した混合ガスを不活性ガス供給路46より金属材料供給室24に導入する。その際の混合ガスの圧力は0.5Paとする。基材14としてガラス板を基板搬送機構(不図示)に設置された保持部16としての基板ホルダに設置する。
【0050】
一方、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを、反応性ガス供給路32より回転陰極18が設けられている成膜室22へ導入する。その際の混合ガスの圧力を0.4Paとし、アルゴンガスと酸素ガスの比率は1対1とする。回転陰極18を3~30rpmにて回転させるとともに補助陰極20に直流電力を供給し、金属のスパッタリングを起こす。
【0051】
次に、回転陰極18に50kHzのパルス直流電力を供給し、放電を起こす。放電が安定になった後において、基板搬送機構によりガラスが回転陰極18の前面を通過することにより、薄膜が形成される。ガラスの搬送速度を60mm/minとした時に72nmの膜厚の酸化シリコン薄膜を堆積することができた。また、その屈折率は波長が633nmの光に対して1.43であった。このように、本実施の形態に係るスパッタリング装置10を用いることにより、酸化シリコン薄膜を、高速に成膜することが可能となる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図2は、第2の実施の形態に係るスパッタリング装置110の全体構成の概略断面図である。本実施の形態に係るスパッタリング装置110は、金属材料供給源として蒸着源を用いた点が第1の実施の形態と異なる大きな点である。以下では、第1の実施の形態と異なる点について詳述し、同じ点については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0053】
本実施の形態に係るスパッタリング装置110は、金属材料供給室24に設けられた金属材料供給源としての蒸着源120と、成膜室22と蒸着源120が設けられた金属材料供給室24との間のガスの移動を規制するとともに、回転陰極18が回転可能な隙間26を有して回転陰極18が配置される方形の開口部28が形成されたガス遮蔽部材130と、を備える。また、金属材料供給室24は、金属材料が蒸着を起こすために十分低い圧力である10-3Pa程度の雰囲気に保つため、排出口52を介して真空ポンプに接続されている。
【0054】
蒸着源120は、容器122に蒸発させるチタンなどの金属材料124を載せたものであり、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。加熱された金属材料124は、気化もしくは昇華し回転陰極18の表面に蒸着される。蒸着源120から回転陰極18への蒸着は、回転陰極18上のターゲット38の厚み等に応じて連続的にあるいは断続的に行われるようにすればよい。また、スリーブ34の表面に予めターゲット材料が形成された回転陰極18を用いてもよいが、アルミニウムやSUSからなるスリーブ34の露出した面に蒸着源120によりターゲット材料を形成して回転陰極18として用いてもよい。
【0055】
上述のように、本実施の形態に係るスパッタリング装置110は、ターゲット38のうちスパッタリングされた部分38aは回転陰極18の回転により金属材料供給室24側に移動する。成膜室22と金属材料供給室24との間に設けられたガス遮蔽部材130は、成膜室22に供給された酸素ガスが金属材料供給室24へ移動することを規制する。そのため、スパッタリングされたターゲット38の部分38aが金属材料供給室24で酸素ガスに曝されることが抑制される。加えて、金属材料供給室24において、ターゲット38のスパッタリングされた部分38aを含めターゲット38の表面に新たに金属材料であるチタンを供給することで酸化チタンがターゲット38の表面に形成されることが抑制される。
【0056】
次に、スパッタリング装置110を用いた酸化チタンの薄膜を基材上に形成する方法について詳述する。はじめに、金属材料供給室24に設けられた蒸着源120の容器122にチタンを充填する。その際、金属材料供給室24は、圧力が10-2Pa以下の雰囲気になるように保つ。また、基材14としてガラス板を基板搬送機構(不図示)に設置された保持部16としての基板ホルダに設置する。
【0057】
一方、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを、反応性ガス供給路32より回転陰極18が設けられている成膜室22へ導入する。その際の混合ガスの圧力を0.4Paとし、アルゴンガスと酸素ガスの比率は1対1とする。回転陰極18を3~30rpmにて回転させるとともに蒸着源120を加熱し、金属材料124としてのチタンを蒸発させる。この際、蒸発速度は水晶振動式モニタを用いて所定の値に保たれるように制御される。
【0058】
次に、回転陰極18に50kHzのパルス直流電力を供給し、放電を起こす。放電が安定になった後において、基板搬送機構によりガラスが回転陰極18の前面を通過することにより、薄膜が形成される。ガラスの搬送速度を60mm/minとした時に95nmの膜厚の酸化チタン薄膜を堆積することができた。また、その屈折率は波長が633nmの光に対して2.37であった。このように、本実施の形態に係るスパッタリング装置110を用いることにより、従来では高速な成膜が困難な酸化チタン薄膜を、高速に成膜することが可能となる。
【0059】
(第3の実施の形態)
図3は、第3の実施の形態に係るスパッタリング装置210の全体構成の概略断面図である。本実施の形態に係るスパッタリング装置210は、金属材料供給源として金属材料をガス状態で供給する原料供給路が設けられている点が第1の実施の形態と異なる大きな点である。以下では、第1の実施の形態と異なる点について詳述し、同じ点については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0060】
本実施の形態に係るスパッタリング装置210は、金属材料供給室24に設けられた金属材料供給源としての原料供給路220と、原料供給路220から供給された原料ガスを加熱するヒーター222と、原料供給路220が設けられた金属材料供給室24と成膜室22との間のガスの移動を規制するとともに、回転陰極18が回転可能な隙間26を有して回転陰極18が配置される方形の開口部28が形成されたガス遮蔽部材130と、を備える。
【0061】
原料供給路220は、原料ガスが回転陰極18に向かうようにノズルが配置されている。原料ガスとしては、金属弗化物、金属塩化物、金属水素化物、有機金属化合物等が用いられる。具体的には塩化チタンが例示される。原料供給路220から供給された液体または気体の原料は、ヒーター222により加熱され、回転陰極18の表面における化学反応によって還元、分解され、回転陰極18上に金属として堆積する。原料供給路220から回転陰極18への原料の供給は、回転陰極18上のターゲット38の厚み等に応じて連続的にあるいは断続的に行われるようにすればよい。また、スリーブ34の表面に予めターゲット材料が形成された回転陰極18を用いてもよいが、アルミニウムやSUSからなるスリーブ34の露出した面に原料供給路220から供給される原料によりターゲット材料を形成して回転陰極18として用いてもよい。
【0062】
上述のように、本実施の形態に係るスパッタリング装置210において、ターゲット38のうちスパッタリングされた部分38aは回転陰極18の回転により金属材料供給室24側に移動する。成膜室22と金属材料供給室24との間に設けられたガス遮蔽部材130は、成膜室22に供給された酸素ガスが金属材料供給室24へ移動することを規制する。そのため、スパッタリングされたターゲット38の部分38aが金属材料供給室24で酸素ガスに曝されることが抑制される。加えて、金属材料供給室24において、ターゲット38のスパッタリングされた部分38aを含めターゲット38の表面に新たに金属材料であるチタンを供給することで酸化チタンがターゲット38の表面に形成されることが抑制される。また、本実施の形態に係るスパッタリング装置210は、原料供給路220により外部から連続的な原料の供給が可能なため、ガス遮蔽部材130により隔てられている成膜室22で基材14を交換するだけで複数の基材に対する連続的な成膜が行える。
【0063】
次に、スパッタリング装置210を用いた酸化チタンの薄膜を基材上に形成する方法について詳述する。はじめに、原料供給路220からアルゴンガスをキャリアとして塩化チタンが金属材料供給室24に導入される。また、基材14としてガラス板を基板搬送機構(不図示)に設置された保持部16としての基板ホルダに設置する。
【0064】
一方、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを、反応性ガス供給路32より回転陰極18が設けられている成膜室22へ導入する。その際の混合ガスの圧力を0.4Paとし、アルゴンガスと酸素ガスの比率は1対1とする。回転陰極18を3~30rpmにて回転させるとともにヒーター222により回転陰極18の表面を400℃に加熱する。これにより、回転陰極18の表面に金属のチタンが堆積する。
【0065】
次に、回転陰極18に50kHzのパルス直流電力を供給し、放電を起こす。放電が安定になった後において、基板搬送機構によりガラスが回転陰極18の前面を通過することにより、薄膜が形成される。ガラスの搬送速度を60mm/minとした時に95nmの膜厚の酸化チタン薄膜を堆積することができた。また、その屈折率は波長が633nmの光に対して2.35であった。このように、本実施の形態に係るスパッタリング装置110を用いることにより、従来では高速な成膜が困難な酸化チタン薄膜を、高速にかつ金属材料供給手段を交換することなく、成膜することが可能となる。
【0066】
(第4の実施の形態)
図4は、第4の実施の形態に係るスパッタリング装置310の全体構成の概略断面図である。本実施の形態に係るスパッタリング装置310は、複数の金属材料供給源を備えている点が第1の実施の形態と異なる大きな点である。以下では、第1の実施の形態と異なる点について詳述し、同じ点については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0067】
本実施の形態に係るスパッタリング装置310は、基材14を保持するとともに陽極を兼ねる保持部16と、回転陰極18と、回転陰極18の表面に金属材料を供給可能な金属材料供給手段としての複数の補助陰極320,330と、成膜室22と金属材料供給室24との間のガスの移動を規制するとともに、回転陰極18が回転可能な隙間26を有して回転陰極が配置される方形の開口部28が形成されたガス遮蔽部材130と、反応性ガス供給路32と、を備える。
【0068】
補助陰極320は、ターゲット322が載置されスパッタリング陰極として機能する導電性の筐体324と、筐体324の内部に設けられ磁界を発生する磁石326と、を有する。また、補助陰極330は、ターゲット332が載置されスパッタリング陰極として機能する導電性の筐体334と、筐体334の内部に設けられ磁界を発生する磁石336と、を有する。ここで、補助陰極320に配置されているターゲット322の材料と補助陰極330に配置されているターゲット332の材料は異なっている。
【0069】
これにより、回転陰極18上に合金のターゲット材料を成膜することができる。また、補助陰極320,330のターゲット材料に対するスパッタリングの条件をそれぞれ制御することで、回転陰極18上の合金ターゲットの成分比を任意に変化させることも可能となる。その結果、成膜室22で基材14上に成膜される金属化合物に含まれる複数の金属成分の組成比を補助陰極320,330のターゲット材料を交換せずに変化させることができる。
【0070】
また、スパッタリング装置310において、ガス遮蔽部材130は、回転陰極18の回転軸Xより上方に配置されている。これにより、2つの補助陰極320,330を回転陰極18の側方に配置することが可能となる。その結果、金属材料供給室24の高さを抑えることが可能となり、チャンバ12を含む装置全体を小型化することができる。
【0071】
(第5の実施の形態)
図5は、第5の実施の形態に係るスパッタリング装置410の全体構成の概略断面図である。本実施の形態に係るスパッタリング装置410は、第1の実施の形態に係るスパッタリング装置110の主要部を複数並べ、各装置の間で基板を移動可能に構成した点である。以下では、第1の実施の形態と異なる点について詳述し、同じ点については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0072】
スパッタリング装置410は、回転陰極412,414と補助陰極416,418を備える。回転陰極および補助陰極の機能は上述の実施の形態と同様である。本実施の形態では、回転陰極と補助陰極を2対用いて、酸化チタン/酸化シリコン光学多層薄膜を形成する方法について説明する。
【0073】
金属材料供給室420に設置された2つの補助陰極のうち、一方の補助陰極416にチタンのターゲット422を設置する。他方の補助陰極418にはホウ素を添加したシリコンのターゲット424を設置する。金属材料供給室420に不活性ガスであるアルゴンガスに還元性ガスである水素ガスを5mol%混合した混合ガスを導入し、その圧力を0.5Paとする。基材14としてガラス板を基板搬送機構(不図示)に設置された基板ホルダに設置する。なお、基板搬送機構は、図の左右方向に基材14を移動可能な構成である。
【0074】
一方、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを、反応性ガス供給路(不図示)より回転陰極412,414が設けられている成膜室426へ導入する。回転陰極412,414の前面の薄膜堆積室にアルゴンガスと酸素ガスの混合ガスを導入し、その圧力を0.4Paとし、アルゴンガスと酸素ガスの比率は1対1とする。回転陰極412を3~30rpmに回転させるとともに補助陰極416に50kHzのパルス直流電力を供給し、チタン金属のスパッタリングを起こし、回転陰極412の表面にチタン金属を堆積する。
【0075】
次に、回転陰極412に50kHzのパルス直流電力を供給し、放電を起こす。放電が安定になった後において、基板搬送機構によりガラスが回転陰極412の前面を通過することにより、薄膜が形成される。ガラスの搬送速度を所定の速度として、設計された膜厚の酸化チタン薄膜を形成する。酸化チタン薄膜の形成が終了した後、補助陰極416および回転陰極412に印加していたパルス直流電力を停止し、放電を停止する。
【0076】
次いで、ホウ素を添加したシリコンのターゲット424が載置された補助陰極418に50kHzのパルス直流電力を供給し、シリコン金属のスパッタリングを起こし、回転陰極414の表面にシリコン金属を堆積する。
【0077】
次に、回転陰極414に50kHzのパルス直流電力を供給し、放電を起こす。放電が安定になった後において、基板搬送機構によりガラスが回転陰極414の前面を通過することにより、薄膜が形成される。ガラスの搬送速度を所定の速度として、設計された膜厚の酸化シリコン薄膜を形成する。酸化シリコン薄膜の形成が終了した後、補助陰極418および回転陰極414に印加していたパルス直流電力を停止し、放電を停止する。
【0078】
以上の操作を所定回繰り返し実施し、それぞれの金属酸化物の所定の膜厚を有する多層構造薄膜を形成する。なお、いずれかの金属酸化物層の膜厚が設計された膜厚(光学膜厚)と異なる場合には、再度の薄膜形成を行うか、あるいは上層となる金属酸化物層の膜厚を調整することにより多層薄膜の光学物性を調整する。光学膜厚の測定は、チャンバ内に設置された光学モニタを用いて行う。
【0079】
図6は、第5の実施の形態に係るスパッタリング装置で作成した多層光学膜の特性を示す図である。図では、酸化チタン(TiO)および酸化シリコン(SiO)を積層した光学多層膜を有する透明体の、紫外および赤外光に対する透過率を示した。本実施の形態の透明体においては,薄膜の層数は8層である。この透明体は、80%以上の可視光透過率を有し、かつ赤外域におけるエネルギー透過率は50%以下であった。なお、層数を増やすことにより、より高い可視高透過率およびより低い紫外および赤外光透過率を有する透明体の作成が可能である。例えば、屈折率が2.35以上である高屈折率薄膜および屈折率が1.4~1.65である低屈折率薄膜を少なくとも3層以上組み合わせた多層薄膜を備え、可視光領域における平均透過率が概ね80%以上であり、波長が330nmから400nmの紫外域の透過率が50%以下であり、波長が800nmから1100nmの赤外域における透過率が30%以下である透明体を製造することができる。なお多層光学膜の多層膜としては、上述のSiOやTiO以外にもTa、Nbが適宜採用されうる。
【0080】
(第6の実施の形態)
図7は、第6の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。ここでは、特に各室のガスの供給・排気構成と基板搬送機構について説明し、第1の実施の形態に係るスパッタリング装置10と同様の構成については同じ符号を付し適宜説明を省略する。
【0081】
本実施の形態に係るチャンバ512は、不図示のロードロック室に通じる成膜室522の側面に、成膜室522とロードロック室との遮断を行うゲートバルブ513が設けられている。そして、複数のローラからなる基板搬送機構516により基板514が成膜室522へまたは成膜室522から搬送される。基板514と回転陰極18との間の領域には、反応性ガス供給路32よりアルゴンガスをキャリアとして酸素ガスが供給される。また、成膜室522の下面には、成膜室522に導入された反応性ガスを外部に排気するための排気ポンプとつながる排出口50が設けられている。一方、金属材料供給室524には、不活性ガス供給路46よりアルゴンガスと水素ガスとの混合ガスが導入される。また、金属材料供給室524には、導入された混合ガスを外部へ排気するための排気ポンプとつながる排出口52が設けられている。このようなスパッタリング装置510によっても、第1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。
【0082】
以上、本発明を上述の実施の形態や各実施例を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態や各実施例に限定されるものではなく、実施の形態や各実施例の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態や各実施の形態における組合せや工程の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態や各実施例も本発明の範囲に含まれうる。
【0083】
例えば、本発明を透明導電膜であるITOの成膜に適用した場合について説明する。金属ターゲットを用いた反応性スパッタリングは、反応性プロセスにおいてターゲット表面の不安定性を引き起こすために工業的に用いられることが困難であり、酸化物ターゲットを用いたスパッタリング法により工業的な生産がなされていた。この方法においてはITOターゲットの焼結・成形等に多大なコストを要しているのが現状である。これに対して、上述の実施の形態に係るスパッタリング装置を用いることで、回転陰極上において酸化されていない金属層をスパッタリングするための反応性スパッタリングにおける不安定さが抑制され、In-Sn合金ターゲットを用いたITO薄膜の形成が可能となる。すなわち、反応性スパッタリングにおける不安定さを抑制可能な上述の実施の形態において、焼結・成形コストが低減された安価なIn-Sn合金ターゲットを補助陰極として用いることで、コストを抑えたITO薄膜の形成が可能となる。ひいては、ITO薄膜を使用する様々な部品や製品におけるコストの低減にも大きく貢献する。
【0084】
また、本発明を太陽電池の製造に適用した場合について説明する。従来、無定形あるいは多結晶太陽電池は、CVD法により形成されていた。これは、スパッタリング法においてターゲットとするシリコンターゲット材料の供給が困難であり、かつスパッタリング中におけるターゲット表面からの微細なシリコン粒の飛散が避けられないためであった。これに対して上述の実施の形態に係るスパッタリング装置を用いることで、回転陰極上に形成されるシリコン層は薄層であるため、その表面からの応力によるシリコン微細粒の飛散が抑制される。したがって、シリコン層のスパッタリング法による形成が可能となり、また、低温における高密度・高特性の薄膜の形成が可能であるというスパッタリング法の特長を同時に生かすことが可能となる。このように本実施の形態に係るスパッタリング装置によると、スパッタリング法によるシリコン薄膜形成の欠点であったターゲットを初めから用意する必要はなく、スパッタリング法の特長を生かした高品質なシリコン薄膜の形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】第1の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。
【図4】第4の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。
【図5】第5の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。
【図6】第5の実施の形態に係るスパッタリング装置で作成した多層光学膜の特性を示す図である。
【図7】第6の実施の形態に係るスパッタリング装置の全体構成の概略断面図である。
【符号の説明】
【0086】
10 スパッタリング装置、 12 チャンバ、 14 基材、 16 保持部、 18 回転陰極、 20 補助陰極、 22 成膜室、 24 金属材料供給室、 26 隙間、 28 開口部、 30 ガス遮蔽部材、 32 反応性ガス供給路、 34 スリーブ、 36 磁石、 38,40 ターゲット、 42 筐体、 44 磁石、 46 不活性ガス供給路、 48 排気部、 50,52 排出口、 110 スパッタリング装置、 120 蒸着源、 122 容器、 124 金属材料、 130 ガス遮蔽部材、 210 スパッタリング装置、 220 原料供給路、 222 ヒーター、 310 スパッタリング装置、 320 補助陰極、 322 ターゲット、 324 筐体、 326 磁石、 330 補助陰極、 332 ターゲット、 334 筐体、 336 磁石、 410 スパッタリング装置、 412,414 回転陰極、 416,418 補助陰極、 420 金属材料供給室、 422,424 ターゲット、 426 成膜室。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6