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明細書 :溶接継手付きラッパ管及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3572285号 (P3572285)
公開番号 特開2003-149366 (P2003-149366A)
登録日 平成16年7月2日(2004.7.2)
発行日 平成16年9月29日(2004.9.29)
公開日 平成15年5月21日(2003.5.21)
発明の名称または考案の名称 溶接継手付きラッパ管及びその製造方法
国際特許分類 G21C  3/324     
B23K  9/23      
B23K 31/00      
C21D  9/08      
C21D  9/50      
C22C 38/00      
C22C 38/48      
G21C  3/30      
G21C 21/02      
B23K103:02      
FI G21C 3/30 GDFH
B23K 9/23 B
B23K 31/00 B
C21D 9/08 F
C21D 9/50 101A
C22C 38/00 302L
C22C 38/48
G21C 21/02 N
G21C 3/30 V
B23K 103:02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2001-352806 (P2001-352806)
出願日 平成13年11月19日(2001.11.19)
審査請求日 平成13年11月19日(2001.11.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000224754
【氏名又は名称】核燃料サイクル開発機構
【識別番号】596129721
【氏名又は名称】神鋼特殊鋼管株式会社
発明者または考案者 【氏名】畠山 耕一
【氏名】鵜飼 重治
【氏名】奥田 隆成
【氏名】藤原 優行
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】今浦 陽恵
参考文献・文献 特開2000-158130(JP,A)
特開平07-260973(JP,A)
特開平05-333177(JP,A)
特開平01-025915(JP,A)
特開2003-90506(JP,A)
成田健、畠山耕一、鵜飼重治、藤原優行,PNC-FMS鋼ラッパ管とSUS316鋼の異材溶接技術開発,日本原子力学会「2002秋の大会」予稿集,日本,日本原子力学会,2002年 8月 5日,vol.2002 第3分冊,P562
畠山耕一、鵜飼重治、藤原優行,PNC-FMS鋼ラッパ管とSUS316鋼の異材溶接技術開発,サイクル機構技報,日本,核燃料サイクル開発機構,2001年12月20日,No.13,P77-81
畠山耕一、鵜飼重治、藤原優行,PNC-FMS鋼ラッパ管/SUS16鋼の異材溶接技術開発(2)-実機サイズラッパ管の溶接試験評価-,核燃料サイクル開発機構公開資料,日本,核燃料サイクル開発機構,2001年12月,JNC-TN-9400-2001-082,全81P
調査した分野 G21C 3/324
B23K 9/23
B23K 31/00
C21D 9/08
C21D 9/50
C22C 38/00
C22C 38/48
G21C 3/30
G21C 21/02
B23K103:02
特許請求の範囲 【請求項1】
両端部にオーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッドとエントランスノズルが接合溶接される高速炉燃料集合体用のフェライト鋼製ラッパ管であって、
フェライト鋼製のラッパ管本体の両端に、オーステナイト系ステンレス鋼製の短尺管状の溶接継手が溶接され、焼ならしにて溶接部のδフェライト相が消失した状態になっていることを特徴とする溶接継手付きラッパ管。
【請求項2】
請求項1記載の溶接継手付きラッパ管を製造する方法であって、
フェライト鋼丸管とオーステナイト系ステンレス鋼丸管とを接合溶接し、六角管状に抽伸した後、焼ならしにて溶接部に生成したδフェライト相を消失させることを特徴とする溶接継手付きラッパ管の製造方法。
【請求項3】
フェライト鋼丸管は、その化学成分が、C=0.09~0.15重量%、Si≦0.10重量%、Mn=0.40~0.80重量%、P≦0.030重量%、S≦0.030重量%、Ni=0.20~0.60重量%、Cr=10.0~12.0重量%、Mo=0.30~0.70重量%、W=1.70~2.30重量%、V=0.15~0.25重量%、Nb=0.020~0.080重量%、N=0.030~0.070重量%である請求項2記載の溶接継手付きラッパ管の製造方法。
【請求項4】
焼ならしを1025℃~1075℃で行う請求項3記載の溶接継手付きラッパ管の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、両端部にオーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッドとエントランスノズルが接合溶接される構造の高速炉燃料集合体用のフェライト鋼製ラッパ管及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高速増殖炉用燃料集合体は、例えば図4に示すように、六角管であるラッパ管10内に、スペーサワイヤが巻装されている多数本の燃料ピンを集束して構成された燃料要素12が収納されており、ラッパ管10の上端口は、ハンドリングヘッド14と称する上側の端管栓が溶接手段によって接合され、ラッパ管10の下端口は、エントランスノズル16と呼ばれる下側の端管栓が溶接手段によって接合されている構造である。なお、符号18はスペーサパッドを表している。
【0003】
従来の高速増殖炉用燃料集合体にあっては、ラッパ管10と上側と下側の端管栓(ハンドリングヘッド14とエントランスノズル16)は、全てオーステナイト系ステンレス鋼で製造されていた。
【0004】
しかし、ラッパ管にオーステナイト系ステンレス鋼を用いると、ラッパ管が炉内での高速中性子の照射を受けることで、スウェリング(体積膨張)により、かなりの変形を起こし易いという問題がある。そこで、耐スウェリング性材料としてフェライト鋼等が開発され、ラッパ管の耐スウェリング性向上のために、オーステナイト系ステンレス鋼からフェライト鋼等への材質の変更が必要となってきている。
【0005】
これに対して高速増殖炉の炉内材料としては、液体ナトリウム環境下での耐食性と中性子照射脆化に対する抵抗性に比較的優れたオーステナイト系ステンレス鋼が用いられており、そのため炉心支持板もオーステナイト系ステンレス鋼で製作されている。従って、もしエントランスノズルをフェライト鋼で製作すると、熱膨張差に起因して炉心支持板とエントランスノズルの嵌合部からの液体ナトリウムの漏洩が懸念されることになる。そこで、エントランスノズルは、炉心支持板と同様、オーステナイト系ステンレス鋼にすることが望ましい。
【0006】
このような理由から、ラッパ管素材にフェライト鋼を適用する場合、ラッパ管素材であるフェライト鋼とエントランスノズル素材であるオーステナイト系ステンレス鋼との異材溶接を行う必要が生じる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
フェライト鋼製のラッパ管とオーステナイト系ステンレス鋼製のエントランスノズル及びハンドリングヘッドとを異材溶接する際、例えばTIG溶接を行った場合、溶接部に脆性を示すδフェライト相が生成するのは避けられない。溶接方法として、TIG溶接に比べて入熱量が小さい電子ビーム溶接を選択した場合においても、TIG溶接に比べればδフェライト生成量をかなりの割合で低減できるものの、皆無にはできない。一般にδフェライト相が生成した材料では、使用期間中に靱性の低下を招くことが知られている。
【0008】
そこで、溶接後に焼戻しを行って、生成したδフェライト相の低減を図ることが試みられている。しかし、燃料集合体組立後の熱処理には大規模な熱処理炉が必要となるだけでなく、そのような状態で熱処理を行ってもδフェライト相の低減効果は殆ど期待できない。
【0009】
また溶接により、フェライト鋼製ラッパ管の熱影響部が硬化することからも、それに対処するための溶接後熱処理が不可欠となるが、上記のように燃料集合体組立後の熱処理には大規模な熱処理炉が必要となる。
【0010】
更に異材溶接時には熱膨張差に起因して曲がりが生じるため、曲がり矯正が必要になるが、燃料集合体組立後の曲がり矯正は極めて困難である。また、曲がり矯正を行えたとしても、完全に矯正することはできず、且つコストアップの要因となる。このようなことから、フェライト鋼製のラッパ管にオーステナイト系ステンレス鋼製のエントランスノズルあるいはハンドリングヘッドを直接異材溶接する方法は不適当であると考えられていた。
【0011】
本発明の目的は、オーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッドあるいはエントランスノズルとの溶接部にδフェライト相の生成がない溶接構造を実現できるフェライト鋼製ラッパ管及びその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、両端部にオーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッドとエントランスノズルが接合溶接される高速炉燃料集合体用のフェライト鋼製ラッパ管であって、フェライト鋼製のラッパ管本体の両端に、オーステナイト系ステンレス鋼製の短尺管状の溶接継手が溶接され、焼ならしにて溶接部のδフェライト相が消失した状態になっている溶接継手付きラッパ管である。
【0013】
このような溶接継手付きラッパ管は、フェライト鋼丸管とオーステナイト系ステンレス鋼丸管とを丸管同士の状態でまず接合溶接し、六角管状に抽伸した後、焼ならしにて溶接部に生成したδフェライト相を消失させるという手順によって製造することができる。
【0014】
ここでフェライト鋼丸管の化学成分は、C=0.09~0.15重量%、Si≦0.10重量%、Mn=0.40~0.80重量%、P≦0.030重量%、S≦0.030重量%、Ni=0.20~0.60重量%、Cr=10.0~12.0重量%、Mo=0.30~0.70重量%、W=1.70~2.30重量%、V=0.15~0.25重量%、Nb=0.020~0.080重量%、N=0.030~0.070重量%とするのが好ましい。焼ならしは、1025~1075℃、より好ましくは1045~1050℃で行う。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明に係るラッパ管と、それを用いて組み立てる高速増殖炉用燃料集合体の一例を示す概略説明図であり、Aは組立前の状態を、Bは組立後の状態を表している。この高速増殖炉用燃料集合体は、フェライト鋼製の(大部分がフェライト鋼からなる)ラッパ管20の上下両端口に、それぞれオーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッド22とエントランスノズル24が接合溶接される構造である。本発明では、ラッパ管20は、フェライト鋼製のラッパ管本体26の両端に、それぞれオーステナイト系ステンレス鋼製の短尺管状の溶接継手28が溶接され、その溶接部で発生したδフェライト相が焼ならし処理によって消失した状態になっており、この点に特徴がある。このような溶接継手を有する構造としたことにより、燃料集合体組立工程では、従来技術と同様に、オーステナイト系ステンレス鋼同士(ハンドリングヘッド22と短尺管状の溶接継手28、及び短尺管状の溶接継手28とエントランスノズル24)での溶接が可能となる。
【0016】
例えば、化学成分がC=0.09~0.15重量%、Si≦0.10重量%、Mn=0.40~0.80重量%、P≦0.030重量%、S≦0.030重量%、Ni=0.20~0.60重量%、Cr=10.0~12.0重量%、Mo=0.30~0.70重量%、W=1.70~2.30重量%、V=0.15~0.25重量%、Nb=0.020~0.080重量%、N=0.030~0.070重量%であるフェライト鋼丸管を用いる。該フェライト鋼丸管とオーステナイト系ステンレス鋼丸管とを接合溶接し、六角管状に抽伸した後、1025℃~1075℃の焼ならし処理を施すことによって、溶接部に生成したδフェライト相を消失させることができる。
【0017】
製造工程の一例を図2に示す。フェライト鋼製の丸管とオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS316鋼)製の丸管とを、丸管同士の状態で接合溶接した後、軟化焼鈍を行う。ここで実施する溶接及び焼鈍については、従来から行われている一般的な方法を採用してかまわない。次に、接合溶接した丸管を六角抽伸し、焼ならし・焼戻し処理を行う。その後、冷間加工率2%以下の六角抽伸加工による寸法調整・油圧プレスによる曲がり矯正を行い、外面研磨、定尺切断を行って溶接継手付きラッパ管を製造する。そして、面取り、脱脂を行い、寸法検査を行う。焼ならし・焼戻し後は一切熱処理を行わないので、ラッパ管の機械的性質は維持されることになる。
【0018】
上記の製造工程で、焼ならし処理はラッパ管本体と短尺管との溶接後に実施しなければならない。所定の機械的性質を確保するために焼ならし処理を施したフェライト鋼製ラッパ管本体と溶体化処理を行ったオーステナイト系ステンレス鋼製短尺管を溶接して、その後焼鈍したのでは、δフェライト相は消失せずにそのまま残ってしまうからである。
【0019】
溶接は六角管同士でも可能であるが、六角管同士の場合は、六角管突き合わせの開先加工及び六角アール(R)部の溶接が難しいのに対して、丸管同士の場合は、比較的溶接が容易であることから、溶接は上記のように丸管同士の状態で行うのが好ましい。更に、丸管同士の溶接の場合には、溶接後に六角抽伸を行うので、真直度、捩れといった寸法精度に優れている利点もある。因みに、六角管同士の溶接では、溶接時の入熱により曲がりが発生し、加工率2%以下の抽伸加工による寸法調整や油圧矯正では曲がりを完全には矯正できないという問題も生じる。
【0020】
焼ならし温度は、δフェライト相が消失する温度範囲、及びフェライト鋼に要求される引っ張り強さ、衝撃特性などの機械的性質が確保できる温度範囲等を勘案して、1025℃~1075℃(両端温度を含む)とする。この温度範囲よりも高い場合、例えば1100℃以上ではδフェライト相が安定して存在するために、1100℃以下でなければならない。1075℃を超える(1100℃以下の)温度範囲では、クリープ破断強度や引っ張り強さは高い値を示すが、結晶粒が成長するため靱性が劣化する。靱性を重視するラッパ管では、このような温度範囲は適当ではない。また、1025℃未満では、要求される機械的性質を満足できない。これらの理由により、焼ならし温度は上記のように1025℃~1075℃とするのがよい。焼戻しは、焼ならしによって消失したδフェライト相が焼戻しによって再び生じることはないので、要求される機械的性質及びA1変態点を考慮して700℃~750℃程度の範囲で行うのがよい。
【0021】
【実施例】
真空溶解炉にてフェライト・マルテンサイト鋼を溶製しインゴットを得た。これを熱間鍛造し機械加工でビレットとした後、熱間押出を行い素管を作製した。この素管を冷間加工することで丸管とした。他方、オーステナイト系ステンレス鋼は、市販のSUS316を用いてビレット加工し熱間押出し後、丸管に冷間加工した。前記フェライト鋼素管とSUS316鋼管の化学成分を表1に示す。なお、各成分量は重量%で表示してある。
【0022】
【表1】
JP0003572285B2_000002t.gif
【0023】
これらの丸管同士をインコネル系の溶加材を用いてTIG溶接し、800℃×30分の溶接後熱処理を施した後、六角管に抽伸加工した。最終熱処理として、焼ならし・焼戻しを、1050℃×40分+720℃×40分行った。その後、ラッパ管の寸法調整・曲がり矯正(冷間加工率2%以下)、外面研磨を行い、定尺に切断し、オーステナイト系ステンレス鋼製の溶接継手を備えたラッパ管を製造した。
【0024】
製造した溶接継手付きラッパ管について外観検査を行い溶接欠陥が無いことを確認した後、直角度及び捩れの測定を行ったが、いずれも問題はなかった。表2に測定結果を示す。なお表2中、A面~F面は六角管の6面を表している。
【0025】
【表2】
JP0003572285B2_000003t.gif
【0026】
次に、溶接部断面の組織観察を行った。その結果、本発明方法では、溶接欠陥や割れは全く発生しておらず、健全な溶接部が形成できていた。また、図3に示すように、溶接方法の如何によらず、組織的にもδフェライト相の生成は認められなかった。それに対して従来技術では、δフェライト量は、TIG溶接の場合には12.7%もあり、EB(電子ビーム)溶接の場合でも0.8%あった。
【0027】
【発明の効果】
本発明は上記のように、フェライト鋼製のラッパ管本体の両端に、オーステナイト系ステンレス鋼製の短尺管状の溶接継手が予め溶接され、焼ならしにて溶接部のδフェライト相が消失した状態になっている溶接継手付きラッパ管であるから、通常の溶接技術を用いてオーステナイト系ステンレス鋼製ハンドリングヘッドとフェライト鋼製ラッパ管とオーステナイト系ステンレス鋼製エントランスノズルからなる高速炉燃料集合体を組み立てることができる。しかも両端部にオーステナイト系ステンレス鋼製のハンドリングヘッド及びエントランスノズルを接合溶接する際に、靱性の低下を防止することができる。
【0028】
また本発明は、フェライト鋼丸管とオーステナイト系ステンレス鋼丸管とを丸管同士の状態でまず接合溶接し、六角管状に抽伸した後、焼ならしにて溶接部に生成したδフェライト相を消失させるようにした溶接継手付きラッパ管の製造方法であるから、曲がりを小さく、寸法精度よく、しかも容易に製造できる。
【0029】
本発明により、高速炉燃料集合体用のラッパ管として、スウェリングの小さいフェライト鋼を用いることが可能となり、その結果、燃料集合体構造を現状から変更することなく実機への適用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る溶接継手付きラッパ管を用いる燃料集合体の概略説明図。
【図2】その製造工程の一例を示すフロー図。
【図3】従来技術と本発明でのδフェライト相の有無を示す観察結果の説明図。
【図4】高速増殖炉用燃料集合体の一例を示す説明図。
【符号の説明】
20 ラッパ管
22 ハンドリングヘッド
24 エントランスノズル
26 ラッパ管本体
28 短尺管状の溶接継手
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3