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明細書 :硝酸廃液の処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4239006号 (P4239006)
公開番号 特開2005-329304 (P2005-329304A)
登録日 平成21年1月9日(2009.1.9)
発行日 平成21年3月18日(2009.3.18)
公開日 平成17年12月2日(2005.12.2)
発明の名称または考案の名称 硝酸廃液の処理方法
国際特許分類 C02F   1/70        (2006.01)
G21C  19/46        (2006.01)
G21F   9/06        (2006.01)
FI C02F 1/70 Z
G21C 19/46 H
G21F 9/06 581F
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2004-148772 (P2004-148772)
出願日 平成16年5月19日(2004.5.19)
審査請求日 平成16年5月19日(2004.5.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】高信 修
【氏名】梅津 浩
【氏名】天本 一平
【氏名】森 良平
【氏名】有馬 雄介
個別代理人の代理人 【識別番号】100088719、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 博史
審査官 【審査官】赤樫 祐樹
参考文献・文献 特開平09-328304(JP,A)
特表2001-522298(JP,A)
特開2000-167570(JP,A)
特開平10-113678(JP,A)
特表2002-521197(JP,A)
調査した分野 C02F 1/70
G21C 19/46
G21F 9/06
特許請求の範囲 【請求項1】
硝酸廃液に有機還元剤を添加して硝酸分を分解する方法において、処理前または処理中に、硫酸または塩酸を添加して、硝酸を除くこの無機酸(硫酸または塩酸)による分解処理終了時の酸濃度が0.3N~1.0Nの範囲になるようにし、有機還元剤を徐々に添加して反応を進めることを特徴とする硝酸廃液の処理方法。
【請求項2】
上記有機還元剤の添加量が、上記硝酸廃液の硝酸態窒素の1.0倍当量以上~1.5倍当量以下である請求項1の処理方法。
【請求項3】
常圧下で沸騰しない温度に加熱し、有機還元剤を数回に分けて添加して硝酸分を分解させる請求項1または2の処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的高濃度の硝酸廃液であっても、廃液中の硝酸分を還元分解することによって、硝酸根を含む残渣を増加せずに、廃液中の硝酸態窒素を放流可能な濃度程度まで低下させることができ、かつ必要に応じて硝酸分を回収して再使用することができ、しかも反応条件が穏和な処理方法に関する。本発明の処理方法は、硝酸態窒素を多く含む廃液を排出処理する必要のある分野、例えば金属表面を酸洗処理する金属加工工場、あるいは核燃料を溶解処理する核燃料処理工場などの各種産業分野において広く適用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、排水中の窒素分濃度の規制強化に伴い、排水中の硝酸態窒素を除去する技術に対する関心が高まっている。廃液中の硝酸分を分離除去する技術として、従来は蒸発法、イオン交換法、電気透析法などが知られている。これらの方法は硝酸分を濃縮分離して小容量の濃縮廃液とし、残りの液を排出可能な濃度に低下するものであるので、濃縮廃液中の硝酸分を無害化するためには、さらに濃縮廃液を処理する必要がある。
【0003】
ところが、一般に濃縮廃液は硝酸分と共に種々の不純物も高濃度に含むので硝酸分のみを含む場合よりも無害化処理が難しく、中和処理して硝酸塩を含む残渣を析出させて乾燥硝酸塩の形態で分離し、さらにはこの硝酸塩残渣を高温で熱分解して酸化物に安定化させるなど、全体としては複雑で高コストの処理を行わざるを得なかった。
【0004】
他方、硝酸分を化学反応によって分解し、最終的には窒素ガスにまで還元して無害化する方法も試みられてきた。例えば、硝酸を大量に使用する核燃料再処理工場では、核燃料物質を抽出した後の硝酸廃液を濃縮しながら有機還元剤で分解し、分解反応で発生した窒素酸化物(NOx)を水に吸収させて硝酸として再利用することが行われている。しかし、有機還元剤のみによる分解反応では、硝酸濃度が1N程度を下回ると反応速度が低下するため、分解処理を終了して中和濃縮せざるを得ず、やはり相当量の硝酸塩残渣が発生するという問題がある。
【0005】
この他に、液相で特定の触媒と接触させて硝酸分を分解する湿式酸化分解法も提案されている(特許文献1、2)。この方法では、硝酸分は直接に窒素ガスに還元されて無害化されるが、反応活性を維持するための高温度域(100~370℃)と液相を保つための高圧条件(1~12MPa)を必要とし、このため反応容器の耐食性や反応熱を制御し得る硝酸根濃度との関係から処理可能な硝酸濃度に限界があり、低濃度の硝酸廃液処理に限定されると云う問題がある。さらに、高濃度硝酸廃液を加熱気化させ、触媒によって窒素酸化物(NOx)に分解し、これをさらにアンモニアと反応させて窒素ガスに還元する方法(特許文献3)も提案されている。しかし、この方法でも硝酸蒸気の分解反応には200~550℃の温度が必要であり、反応装置には過酷な条件である。
【0006】
一方、常温付近の処理方法として、常温大気圧下で硝酸分を水素で還元して窒素ガスまで分解させる触媒が提案されている(特許文献4)。しかし、この触媒はpH4以上でしか用いることができず、希薄硝酸を含む廃水の処理に限定される。またヒドラジンを水素供与体とし、2価の銅イオンを添加し、特定の触媒を用いてほぼ常温で硝酸を窒素ガスにまで還元する方法が提案されている(特許文献5)。この方法は、高濃度硝酸の処理も可能であるが、残渣源となる添加物を必要とし、また処理廃液のpHを11.7以上の高アルカリにすることが望ましいので、多量の中和剤を必要とし、しかも条件によってはアンモニア態窒素が液中に残存するなどの問題がある。

【特許文献1】特開平07-185569号公報
【特許文献2】特開2000-167570号公報
【特許文献3】特開平08-309335号号公報
【特許文献4】特開2001-000866号号公報
【特許文献5】特開2001-129565号号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、従来の処理技術では硝酸態窒素を廃液中から除去するには、高温高圧の厳しい反応条件を必要とし、あるいは処理液のpHを高く保つために多量の中和剤を加える必要があり、処理残渣が増加するなどの問題があった。本発明はこのような従来方法の問題を解決したものであり、廃液中の硝酸性窒素分を温和な条件下で簡便に分解除去し、残渣を増やさず、しかも必要に応じて硝酸を回収して再利用できる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、〔1〕硝酸廃液に有機還元剤を添加して硝酸分を分解する方法において、処理前または処理中に、硫酸または塩酸を添加して、硝酸を除くこの無機酸(硫酸または塩酸)による分解処理終了時の酸濃度が0.3N~1.0Nの範囲になるようにし、有機還元剤を徐々に添加して反応を進めることを特徴とする硝酸廃液の処理方法に関する。硝酸の還元分解においては、硝酸分解が進行すると廃液の酸濃度が低下するが、酸濃度が低くなり過ぎると分解反応が進行しない。本発明の処理方法は分解処理終了時の酸濃度が0.3N~1.0N、好ましくは0.3N~0.5Nの範囲になるように無機酸を添加して反応を行わせることによって硝酸の還元分解を進めて無害化し、液中の残留窒素濃度を排液可能な基準程度に低下させる。


【0009】
本発明の上記処理方法は、〔2〕上記有機還元剤の添加量が、上記硝酸廃液の硝酸態窒素の1.0倍当量以上~1.5倍当量以下である処理方法、〔3〕常圧下で沸騰しない温度に加熱し、有機還元剤を数回に分けて添加して硝酸分を分解させる処理方法を含む。

【0010】
本発明の処理方法は硝酸の分解効率が良いので有機還元剤の添加量は分解する硝酸分の1倍当量以上~1.5倍当量以下で足りる。また、酸濃度を調整するために添加する無機酸としては中和処理のみで排出可能な硫酸または塩酸を用いることができる。さらに、本発明の処理方法は、処理前または処理中に硫酸または塩酸(以下、単に無機酸と云う)を添加し、常圧下で沸騰しない温度に加熱し、窒素酸化物ガスの発生状況に応じて有機還元剤を徐々に添加すると云う穏和な条件で反応を進めることによって、無害化放流できる程度まで廃液の硝酸を分解することができる。


【0011】
〔具体的な説明〕
以下、本発明の分解処理方法を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の硝酸態窒素の分解処理方法は、処理すべき硝酸廃液に塩酸などの無機酸を加えて酸濃度の調整を行う。無機酸の添加は処理前でも良く、処理の途中でも良い。無機酸の添加量は処理終了時の酸濃度が0.3N~1.0N、好ましくは0.3N~0.5Nとなる量である。なお、硝酸の分解が進行すると硝酸による酸濃度は低下し、硝酸の全量が分解したときの酸濃度は添加した無機酸の量によって定まる。従って、硝酸の分解率が99%程度以上であるとき、添加する無機酸の量は硝酸を除くこの無機酸による酸濃度が概ね0.3N~1.0N、好ましくは0.3N~0.5Nとなる量であればよい。溶液の酸濃度がこれより低いと硝酸の分解が十分に進まない。一方、酸濃度がこれより高いと残留する無機酸の中和に多量の塩基薬剤を必要とするようになるので好ましくない。
【0012】
硝酸排液中の残留窒素分を低下させるには、無機酸の添加によって生成した窒素ガスを速やかに外部に排出するのが好ましく、空気あるいは窒素ガスなどを系内に流し、発生した窒素ガスを追い出すのが良い。なお、使用するガスは安全性の観点からは窒素ガスが好ましいが、実用上はコストの点から空気を用いても良い。
【0013】
この酸性廃液を常圧下で沸騰しない程度、好ましくは90℃程度に加熱し、この温度を維持しながら攪拌しつつ、窒素酸化物(NOx)の発生状況に応じて有機還元剤を徐々に添加する。有機還元剤は硝酸を還元分解する活性を有し、自らは二酸化炭素と水に分解して無害化するものが用いられる。具体的にはホルムアルデヒドやギ酸などを用いることができる。有機還元剤の添加量は処理前の硝酸態窒素の1.0~1.5倍当量が好ましい。この量が1倍当量より少ないと廃液中に硝酸態窒素が残留する。またこの量が1.5倍当量より多いと未反応の有機還元剤の残量が多くなるので好ましくない。
【0014】
この操作によって廃液中の硝酸態窒素が還元分解し、窒素酸化物(NOx)としてガス化する。好ましくは、廃液中の硝酸態窒素のほぼ99%を窒素酸化物として除去することができる。有機還元剤としてホルムアルデヒドを用いた場合の分解反応を以下に示す。
2HNO3+HCHO → NO+NO2+2H20+CO2
【0015】
分解反応で発生した窒素酸化物(NOx)は、例えば触媒存在下でアンモニアを作用させて還元分解するなどの方法によって窒素にまで分解し、無害化して大気に放出することができる。あるいは、必要に応じ、水に吸収させ、硝酸として回収して再利用することもできる。また、反応処理後の廃水にはNaCl等を添加して残留する有機還元剤の蟻酸やホルマリンなどを分解して無害化し、さらにNaOH等を添加して酸濃度を低下させ、規制値以下の水準にpH調整して放流する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の処理方法は塩酸や硫酸、ホルムアルムヒドなどの一般的な廉価な薬品のみを用い、高価な触媒や高温高圧などの厳しい処理条件を必要とせず、比較的温和な条件下で高い硝酸態窒素分解率を達成することができる。この処理した廃液には硝酸分が殆ど含まれていないので、簡単に中和処理して放流することができる。さらに、発生した窒素酸化物の排ガスも公知の触媒とアンモニアを使用した還元分解などの方法で分解し、無害化して大気放出することができる。あるいは、硝酸として回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施例を示す。
〔実施例〕
図1に示すように、密閉反応容器10、ヒータ11、コンデンサー12、温度計13、有機還元剤供給管路14、掃気供給管路15を備えた分解装置を用い、表1に示す量の塩酸を加えた硝酸水溶液を反応容器10に入れ、これをヒータ11で90℃まで加熱し、容器内にホルマリン(HCHO)を数回に分けて滴下した。この滴下は1時間ごとに徐々に行った。酸濃度および反応時間と残留窒素濃度の関係を図2に示した。また、反応終了後の溶液中の残留窒素濃度を測定し、この結果を表1に示した。
【0018】
【表1】
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【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の処理方法を実施する装置構成の概念図。
【図2】実施例における硝酸分解の結果を示すグラフ。
【符号の説明】
【0020】
10-密閉反応容器、11-ヒータ、12-コンデンサー、13-温度計、14-有機還元剤供給管路、15-掃気供給管路。
図面
【図1】
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【図2】
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