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明細書 :ナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5002833号 (P5002833)
公開番号 特開2010-145068 (P2010-145068A)
登録日 平成24年6月1日(2012.6.1)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
公開日 平成22年7月1日(2010.7.1)
発明の名称または考案の名称 ナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法
国際特許分類 F22B   1/06        (2006.01)
FI F22B 1/06 J
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2008-325642 (P2008-325642)
出願日 平成20年12月22日(2008.12.22)
審査請求日 平成21年12月25日(2009.12.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】近澤 佳隆
【氏名】荒 邦章
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】山本 崇昭
参考文献・文献 特開平9-264807(JP,A)
特開平7-110393(JP,A)
特開平9-196800(JP,A)
特表2009-524963(JP,A)
調査した分野 F22B 1/06
G01M 3/24
特許請求の範囲 【請求項1】
ナトリウム加熱蒸気発生器の容器胴部の外壁に、5個以上の加速度計を一列に配置して音響データ受信アレイを形成し、各加速度計で検出した音響信号を多チャンネルアナログ/デジタル変換器を通してコンピュータに取り込み、該コンピュータで遅延和法ビームフォーミング処理を施すことにより音響データ受信アレイ出力が最大となる値を求めて最大音響検出値とし、予め同様の手法で正常運転時における蒸気発生器運転ノイズについて求めた音響データ受信アレイ出力をバックグラウンドノイズとして、前記最大音響検出値とバックグラウンドノイズとを比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定することを特徴とするナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法。
【請求項2】
5個以上の加速度計を、円筒状の容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向に配置することで音響データ受信アレイが形成されている請求項1記載のナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法。
【請求項3】
ナトリウム加熱蒸気発生器の容器胴部の外壁に、5個以上の加速度計を一列に配置して形成した音響データ受信アレイを、複数設置し、各加速度計で検出した音響信号を多チャンネルアナログ/デジタル変換器を通してコンピュータに取り込み、該コンピュータで遅延和法ビームフォーミング処理を施すことにより音響データ受信アレイ出力が最大となる値と方向を求めて最大音響検出値及び推定音源方向とし、予め同様の手法で正常運転時における蒸気発生器運転ノイズについて求めた音響データ受信アレイ出力をバックグラウンドノイズとして、前記最大音響検出値とバックグラウンドノイズとを比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定すると共に、各音響データ受信アレイから得られた複数の推定音源方向の交点位置を水リーク位置と判定することを特徴とするナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法。
【請求項4】
5個以上の加速度計を、円筒状の容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向に配置することで音響データ受信アレイが形成され、該音響データ受信アレイが2組同一平面に非対称に配置されている請求項3記載のナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法。
【請求項5】
音響データ受信アレイは、一列に5個以上配置された加速度計が5列以上配列された2次元音響データ受信アレイであり、円筒状の容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向及び軸に平行な方向に配設され、該2次元音響データ受信アレイを複数組み合わせることにより3次元空間における水リーク位置の特定を行う請求項3記載のナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法。
【請求項6】
(最大音響検出値/バックグラウンドノイズ)の値が設定値を超えたときに水リーク発生と判定する請求項1乃至5のいずれかに記載のナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム加熱蒸気発生器の水リークを音響的に検出する方法に関し、更に詳しく述べると、5個以上の加速度計からなる音響データ受信アレイを用い遅延和法ビームフォーミング処理を施して最大音響検出値を求め、予め同様の手法で求めたバックグラウンドノイズと比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定するナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナトリウム冷却高速増殖炉の蒸気発生器は、容器胴部内に多数本の伝熱管を組み込み、該伝熱管の内部を流れる水を伝熱管外側のナトリウムにより加熱する構造となっている。万一、運転中に伝熱管が破損すると、伝熱管内の高圧水がナトリウム中にリークし、リークした水とナトリウムとの間で激しい化学反応が生じる。このナトリウム/水反応によって、高温・腐食性の環境が発生し、それにより伝熱管破損が伝播する可能性があり、重大な事故に至る恐れがある。従って、水リーク発生を迅速に且つ的確に検出できるようにすることが肝要となる。
【0003】
水とナトリウムが反応すると水素気泡が発生し、その際に音響が生じる。そこで、従来技術として、その音響(水リーク音)を蒸気発生器の容器胴部に取り付けた音響検出器で検出し、検出値が設定値以上になったときに水リーク発生と判定するという検出手法がある。しかし、蒸気発生器内部には運転中ナトリウム流動音及び水蒸発音など大きなバックグラウンドノイズが存在し、検出目的の水リーク音との分離が課題となっており、そのため蒸気発生器運転中における十分な検出性能が提供できておらず、未だ実用化には至っていない。また、蒸気発生器のバックグラウンドノイズおよび水リーク音のスペクトルはともに白色ノイズに近く、スペクトル解析により音源を分離することも困難とされている。
【0004】
そこで、例えばセンサ光ファイバを組み込んだ計装管を蒸気発生器の胴部内に挿入し、水リーク発生時の音波を光の位相のずれとして検出するなど、蒸気発生器の胴部内に挿入される計装管の内部に,水リーク時に発生する事象を検出する検出手段を装備し、前記検出手段の検出結果に基づいて水リークの有無を判定する信号処理装置を備えた水リーク検出装置が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、前記音響検出法の問題を解決できるとされているが、この技術では、センサを組み込んだ計装管を蒸気発生器の内部に挿入しなければならないという問題がある。
【0005】
ところで、全く異分野の技術であるが、近年、マイクロフォンアレイを用いて指向性を形成することにより,発話音声を高品質で受音する研究が盛んに行われている(非特許文献1など参照)。ここで、マイクロフォンアレイを用いた指向性形成の一つとして、遅延和法ビームフォーミングがある。この技術は、対話型テレビなどにおいて、ユーザにマイクロフォンを意識させないハンズフリー音声認識への応用が期待されている。
【0006】

【特許文献1】特開2003-28979号公報
【非特許文献1】藤本 雅清、有木 康雄「マイクロフォンアレイとカルマンフィルタによる実環境下でのハンズフリー音声認識-対話型テレビのフロントエンドシステムの構築-」第4回DSPS教育者会議、pp.55-58,Aug. 2002.(www.me.cs.scitec.kobe-u.ac.jp/publications/papers/2002/2002-08-dsps-fujimoto.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、蒸気発生器の容器外部から容器内部で発生する音響を検出しているにもかかわらず、検出目的の水リーク音をバックグラウンドノイズから明確に分離できるようにし、それによってナトリウム加熱蒸気発生器における水リーク発生を迅速に且つ的確に検出できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ナトリウム加熱蒸気発生器の容器胴部の外壁に、5個以上の加速度計を一列に配置して音響データ受信アレイを形成し、各加速度計で検出した音響信号を多チャンネルアナログ/デジタル変換器を通してコンピュータに取り込み、該コンピュータで遅延和法ビームフォーミング処理を施すことにより音響データ受信アレイ出力が最大となる値を求めて最大音響検出値とし、予め同様の手法で正常運転時における蒸気発生器運転ノイズについて求めた音響データ受信アレイ出力をバックグラウンドノイズとして、前記最大音響検出値とバックグラウンドノイズとを比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定することを特徴とするナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法である。例えば、5個以上の加速度計を、円筒状の容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向に配置することで音響データ受信アレイを形成する。
【0009】
本発明は、バックグラウンドノイズが蒸気発生器の内部に一様に分布しているのに対して、水リーク音は水リーク位置近傍に局所的に発生することに着目し、指向性を形成可能な遅延和法ビームフォーミングを用いて水リーク音源方向の解析を実施することで、水リーク音の検出感度を向上させ、それによって実用化を図ったものであり、その点に特徴がある。
【0010】
また本発明は、ナトリウム加熱蒸気発生器の容器胴部の外壁に、5個以上の加速度計を一列に配置して形成した音響データ受信アレイを、複数設置し、各加速度計で検出した音響信号を多チャンネルアナログ/デジタル変換器を通してコンピュータに取り込み、該コンピュータで遅延和法ビームフォーミング処理を施すことにより音響データ受信アレイ出力が最大となる値と方向を求めて最大音響検出値及び推定音源方向とし、予め同様の手法で正常運転時における蒸気発生器運転ノイズについて求めた音響データ受信アレイ出力をバックグラウンドノイズとして、前記最大音響検出値とバックグラウンドノイズとを比較し、両者間に有意な違いが生じたときに水リークが発生しているものと判定すると共に、各音響データ受信アレイから得られた複数の推定音源方向の交点位置を水リーク位置と判定することを特徴とするナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法である。この方法によれば、水リーク発生を検出できるばかりでなく、水リーク位置も検出することができる。
【0011】
ここで、例えば5個以上の加速度計を、円筒状の容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向に配置することで音響データ受信アレイが形成され、該音響データ受信アレイが2組同一平面に非対称に配置されている構成が好ましい。あるいは、音響データ受信アレイは、一列に5個以上配置された加速度計が5列以上配列された2次元音響データ受信アレイであり、円筒状の容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向及び軸に平行な方向に配設され、該2次元音響データ受信アレイを複数組み合わせることにより3次元空間における水リーク位置の特定を行う方法もある。なお、水リーク発生の判定としては、例えば、(最大音響検出値/バックグラウンドノイズ)の値が設定値を超えたときとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るナトリウム加熱蒸気発生器の水リーク音響検出方法は、5個以上の加速度計からなる音響データ受信アレイを用いて遅延和法ビームフォーミング処理を施しているため、ナトリウム加熱蒸気発生器のバックグラウンドノイズと目的音源である水リーク音との明瞭な分離が可能になる。そのため、バックグラウンドノイズの大きい環境であるナトリウム加熱蒸気発生器において水リーク音の検出が可能となり、水リーク発生を迅速に且つ的確に判定することができる。また、その応用として、音響データ受信アレイを用いて推定音源方向を求め、複数の音響データ受信アレイにより得られる複数の推定音源方向の交点位置から水リーク位置の特定までもが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ナトリウム加熱蒸気発生器の一例を図1に示す。ここではシェルアンドチューブ型熱交換器を想定している。(a)は立面で見た内部構造を、(b)はA-A水平断面を、それぞれ表している。蒸気発生器は、円筒状の容器胴部10の内部を流れる液体金属ナトリウムが、容器胴部内に設置された多数本の伝熱管12内部を流れる加圧水を加熱する構造である。伝熱管12は、下部の給水管板14と上部の主蒸気管板16で挟まれており、両管板と伝熱管によりナトリウムと水は分離されている。水は、下部の給水ノズルから供給され蒸気発生部内部で加熱・蒸発した後に主蒸気ノズルから排出される。ナトリウムは、蒸気発生部の容器胴部10の側面上部のNa入口ノズルから供給され、伝熱管12の外部を流れ、側面下部のNa出口ノズルから排出される。
【0014】
図1の(b)では、伝熱管破損発生時におけるナトリウム/水反応の様子,及び水リーク音を検出するための音響データ受信アレイ20も併せて模式的に示している。伝熱管に破損が発生した場合、破損伝熱管の破損口から加圧水が噴出する。ナトリウムと水とは化学反応を生じるために、水が噴出する範囲においてナトリウム/水反応が発生する(ナトリウム/水反応領域を符号22で示す)。ナトリウム/水反応領域22では、高温の加圧水の噴出、水素発生による気泡の生成があるため、かなりの音量の音源となる。この音源が、水リーク音響検出の目的音源となる。図1の(b)では、音響(振動)を検出する加速度計24を5個、容器胴部の外壁に沿って等間隔で周方向に配置し、それによって音響データ受信アレイ20を形成している。
【0015】
音響検出システムの概略構成を図2に示す。蒸気発生器の容器胴部10は、高温の液体金属ナトリウム(運転温度550~300℃程度)を保持しているため、上記のように、比較的高温でも使用可能な加速度計24を用いて音響データ受信アレイ20を構成する。蒸気発生器の容器胴部10の温度が加速度計24の使用温度を超えている場合には、容器胴部10の外壁に導波棒26を設け、その先端に加速度計24を取り付けるようにして、加速度計24が、その使用温度以下に維持されるように周囲温度を制限する。各加速度計24で検出された音響信号は、多チャンネルアナログ/デジタル変換器30でデジタル信号に変換され、コンピュータ32に取り込まれ、該コンピュータ32で遅延和法ビームフォーミング処理が施される。
【0016】
音響データ受信アレイを用いた遅延和法ビームフォーミングの式を以下に示す。
【数1】
JP0005002833B2_000002t.gif

【0017】
5個の加速度計24を間隔dで配設した場合の音響データ受信アレイを図3に示す。簡略化のため音源は振幅aの点音源とし、原点からの角度θに存在するとする。ここでは重みであるwi は全て1であるとし、遅延Δi は以下の通りであるとする。
【数2】
JP0005002833B2_000003t.gif

【0018】
このときの音響データ受信アレイの出力は以下の式で表される。
【数3】
JP0005002833B2_000004t.gif

【0019】
音源方向を検知するためにξを-π/2~π/2まで走査させていくと、ξ=θのときに全ての加速度計での検出信号の位相が一致し、出力は最大(加速度計1個の最大出力×加速度計数)となり下記のようになる。
【数4】
JP0005002833B2_000005t.gif

【0020】
本発明における水リーク音検出のためのアルゴリズムの一例を図4に示す。各時刻において角度ξを変数としてξを-π/2~π/2まで離散的に変化させる。ある角度ξj は仮想的な音源方向を表している。音源方向ξj の場合の加速度計iにおける音波の到達の遅延は、位相差Δi,j で表すことができる。この位相差Δi,j を用い、遅延を考慮した音響データ受信アレイの出力の和としてzj が計算される。この手続きをすべてのjにおいて行うことにより-π/2~π/2の180°すべての仮想的な方向において音響データ受信アレイの出力が収集される。水リーク音源(音源方向θ)が実際に存在する場合は仮想的な音源方向と実際の音源方向が一致し(ξ=θ)、音響データ受信アレイ出力が最大となる。このことを考慮して各ステップにおいてzj が最大となるξj を探し、zj の最大の値を最大音響検出値zmax とする。本発明において、音響データ受信アレイを構成する加速度計を5個以上としているのは、遅延和法ビームフォーミング処理の結果を有効にするためには、その程度の個数が必要だからである。
【0021】
ところで、正常(通常)運転時は、蒸気発生器の運転ノイズが伝熱管管束部に一様に分布しているためzはξに対してほぼ一様と考えられる。それに対して水リーク発生時は、水リーク発生方向の特定のξに対してzが局所的に大きくなる。従って、得られた最大音響検出値zmax と正常運転時に予め測定しておいたバックグラウンドノイズzmax,0 を比較し、例えばzmax /zmax,0 が一定値(予め実験的にあるいは経験的に求めた設定値)を超えたときに水リークが発生したものと判定することができる。
【0022】
なお、水リーク有無の判定手法は、上記に限られるものではない。例えば、zのξに対する分散等を指標に用いることも可能であり、そのような改良によって感度を更に向上させることも可能である。
【実施例】
【0023】
音響データ受信アレイを用い遅延和法ビームフォーミング処理による水リーク音響検出方法の性能確認のための数値解析事例について説明する。解析体系として、蒸気発生器の管束部断面を模擬した水平断面内(容器胴部内)の1箇所で、水リークが発生したものと想定した。解析の前提条件として、蒸気発生器の容器胴部(半径2.5m)の断面中心を原点とするx-y座標を設定し、水リーク発生源の位置座標を(-1.25m,1.25m)とし、音響データ受信アレイは(-2.5m,0m)の位置を中心に5個の加速度計を0.12mの間隔(注目周波数10kHz、ナトリウム音速2400m/s)でy軸に平行に配列している。バックグラウンドノイズについては、管束部で均等に発生していることを模擬するため、蒸気発生器の胴部内に2000個の音源をランダムに配置した。
【0024】
水リーク音としては、過去に実施したナトリウム/水反応試験で測定された音響データを用いた。音源に使用した音響データを図5に示す。本試験では、ナトリウム中で複数本の伝熱管に注水が行われ、それらのうち一本の伝熱管が破損したことを想定して水リークを発生させ、ナトリウム/水反応の挙動データを取得している。音響データは48000Hzの間隔で測定されており、注水開始から水リーク開始までのデータをバックグラウンドのノイズ用データ、水リーク開始後から2次破損発生までの測定データを水リーク音データとして使用している。
【0025】
単一の加速度計(音響データ受信アレイの中心の加速度計)による音響測定値のRMS(Root Mean Square)の測定結果を図6に示す。水リークは、0.052秒に発生している。水リーク発生後も若干RMSが増加していることが観測されるが、この結果をみるかぎり計測器として十分なS/Nを得ることは困難である。
【0026】
図7に、遅延和法ビームフォーミングにより処理した場合のRMSの角度依存性を示す(0.104秒、48000Hzサンプリング、50データ平均)。水リーク音源と音響データ受信アレイの中心の位置関係から、水リーク音源は45°の位置にあると考えられる。図7では45°の位置に最も大きなピークが観察されており、遅延和法ビームフォーミングによって水リーク音の音源方向を捉えることができることが示されている。なお、-40°の位置にも別のピークが観察されているが、これは、10kHzの倍である20kHzの成分により-45°のところに生じたピークが他の高周波数成分により移動したものと考えられる。
【0027】
図8は、単一の加速度計による測定の場合と、音響データ受信アレイを用いて遅延和法ビームフォーミング処理を行った場合について、それぞれのRMSの評価結果を示している。ここでは、48000Hzでサンプリングされたデータを50データ毎に平均化したものを示している。単一の加速度計で測定した場合は水リーク開始前後のデータの差異が小さいのに対して、音響データ受信アレイを用い遅延和法ビームフォーミング処理を行った場合は水リーク開始後に明らかに大きな信号が得られている。従って、バックグラウンドノイズが大きい環境においても、音響データ受信アレイを用いて遅延和法ビームフォーミング処理を施し、水リーク音の到来方向に注目した信号処理を行うことにより、有意な検出が行えることが実証された。
【0028】
音響データ受信アレイを用い、遅延和法ビームフォーミングによる音響検出の応用による水リーク位置を特定する方法の原理を、図9に示す。なお、説明を簡略化するために、図1と対応する部分には同一符号を付す。5個の加速度計24を1組とした音響データ受信アレイ20を2組、同一平面上で且つ蒸気発生器の容器胴部10の中心に対して非対称な位置(例えば90度異なる位置)に設置し、それぞれ水リーク音の推定音源方向を遅延和法ビームフォーミングによる分析を行う。2組の音響データ受信アレイ20により求めた2本の推定音源方向(20a及び20b)の交点が水リーク位置であると判定することができる。
【0029】
更に、図9に示すように、蒸気発生器の容器胴部10に、一定の高さ間隔で2組ずつの音響データ受信アレイを高さ方向の全体にわたって設置すると、各音響データ受信アレイによる最大音響検出値の比較と各水平断面における推定音源方向の分析から、水リーク位置の検出が原理的に可能となる。
【0030】
あるいは、加速度計を縦横2次元的に配置すれば、音源方向の推定を3次元的に行うことができる。例えば、加速度計を5×5配列とすることにより水平断面および垂直断面の音源方向の推定を行うことが可能になる。原理的には、5×5配列の2次元音響データ受信アレイ2基の組み合わせにより、3次元空間において音源源位置の特定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ナトリウム加熱蒸気発生器と伝熱管破損による水リーク発生時の概念図。
【図2】本発明による音響検出方法を実施するためのシステム構成図。
【図3】遅延和法ビームフォーミングの説明図。
【図4】本発明における水リーク検出のためのアルゴリズムの一例を示す説明図。
【図5】数値解析のために音源として使用した音響データの説明図。
【図6】単一の加速度計による測定結果を示す説明図。
【図7】遅延和法ビームフォーミングによる指向性解析結果の説明図。
【図8】遅延和法ビームフォーミングによるRMS評価結果の説明図。
【図9】本発明による水リーク位置検出の原理を示す説明図。
【符号の説明】
【0032】
10 容器胴部
12 伝熱管
20 音響データ受信アレイ
22 ナトリウム/水反応領域
24 加速度計
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8