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明細書 :長寿命核分裂生成物を短寿命核種へ変換する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5522427号 (P5522427)
公開番号 特開2010-190833 (P2010-190833A)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 長寿命核分裂生成物を短寿命核種へ変換する方法
国際特許分類 G21G   1/02        (2006.01)
G21C   5/00        (2006.01)
G21F   9/00        (2006.01)
G21C   1/12        (2006.01)
FI G21G 1/02
G21C 5/00 GDRD
G21F 9/00 N
G21C 1/12
請求項の数または発明の数 6
全頁数 8
出願番号 特願2009-037766 (P2009-037766)
出願日 平成21年2月20日(2009.2.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 社団法人 日本原子力学会 平成20年8月21日発行、日本原子力学会「2008年秋の大会」講演予稿集
審査請求日 平成23年12月15日(2011.12.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】島川 聡司
【氏名】菅生 幸博
【氏名】国富 一彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】林 靖
参考文献・文献 特開2004-191190(JP,A)
特開2001-083297(JP,A)
特表2005-503568(JP,A)
特開2001-264487(JP,A)
特開平07-140286(JP,A)
特開2003-057392(JP,A)
調査した分野 G21G 1/00-5/00
G21C 1/12
G21C 5/00
G21F 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
Tc-99、I-129、Se-79及びCs-135から選択される1種以上の長寿命核分裂生成物を黒鉛と一緒にペレット化した照射ターゲットを、炉心中央の黒鉛製内側反射体領域、当該黒鉛性内側反射体領域の周囲の燃料領域及び当該燃料領域の周囲の黒鉛製外側反射体領域を具備する黒鉛減速型原子炉の内側反射体領域に装填して、熱中性子照射を行うことを特徴とする、前記長寿命核分裂生成物を短寿命核種へ変換する方法。
【請求項2】
前記照射ターゲットを前記黒鉛減速型原子炉の黒鉛製外側反射体領域にもさらに装填する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記照射ターゲットは、前記長寿命核分裂生成物の微小球をSiC又は低密度炭素で被覆してなる粒子を黒鉛中に分散させてなる被覆粒子タイプペレット及び/又は前記長寿命核分裂生成物を黒鉛中に分散させてなる分散混合タイプペレットを複数個、黒鉛減速型原子炉用燃料棒と同型の黒鉛製容器に装填してなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記照射ターゲットは、前記ペレットを複数個装填した高温ガス炉用燃料棒と同型の黒鉛製容器を複数本集めてなる集合体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆粒子タイプペレットの前記長寿命核分裂生成物を含む被覆粒子の含有割合は10~30容積%であり、前記分散混合タイプペレットの前記長寿命核分裂生成物の含有割合は3~24容積%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記黒鉛減速型原子炉の黒鉛製内側反射体領域における前記照射ターゲットの装填後の総容積に対する黒鉛体積占有減少率は5%以下である、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電所や原子力研究施設で発生する長寿命核分裂生成物を効率良く短寿命核種へ変換させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設から発生する廃棄物のうち、放射性ヨウ素-129(以下、I-129と記す)や放射性テクネチウム-99 (以下Tc-99と記す)に代表される長半減期の放射性核分裂生成物を処分するため、ガラス固化による固定化をして地層処分する方法がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、I-129やTc-99の半減期はそれぞれ1570万年、21万年であるために、ガラス固化による固定化をしても長期間の拡散により固化体が外部へ放出されてしまい、地層処分しても長期間にわたる管理・確認が必要となる。このため、処分後の安全性を高めるためには、処分深度を深くする必要があり、施設の経済的負担は大きくなる。
【0004】
このように長半減期の放射性核分裂生成物は、最終処分することが困難な状況にあることから、原子力発電所や核燃料再処理工場等の原子力施設から発生するI-129を含む廃棄物を化学処理等して安定なヨウ素に変換した後、消滅ターゲットを作製し、原子炉炉心に対向して設けられた照射セクションに位置づけ、中性子を照射する、核種そのものを中性子捕獲反応によって核変換し、その放射能を低減する方法が考えられている(特許文献1)。また、I-129を含むヨウ素を化学的及び物理的方法により分離し、ヨウ素単体として回収した後、石英ガラス又はジルコニウム合金等の容器に密封して熱中性子照射する、I-129放射能の低減法も提案されている(特許文献2)。
【0005】
しかし、特許文献1及び2には、不安定なヨウ素を安定化するための前処理方法が記載されているのみであって、多量の長寿命放射性核分裂生成物をいかにして処理するかの問題は何ら解決されていない。
【0006】
核分裂生成物と水素原子を含む化合物を収納する被覆管で構成された高速炉に装荷される燃料集合体も提案されている(特許文献3)。特許文献3には、燃料集合体の最外周の被覆管にTc-99棒を装荷し、中央部の被覆管にTc-99棒あるいはジルコニウムハイドライドを装荷することが記載されている。
【0007】
しかし、従来提案されている高速炉や軽水炉を用いる方法では、長寿命放射性核分裂生成物が核変換により消滅する量が、核分裂により新たに生成する長寿命放射性核分裂生成物の量よりも僅かに多くなるだけで実効的な核変換量、すなわち長寿命放射性核分裂生成物の消滅量を飛躍的に増やすことは困難である。一方、核融合装置を用いる核変換は核分裂により新たに生成する長寿命放射性核分裂生成物はないものの、装置の構造上、多量の長寿命放射性核分裂生成物を装荷することができない。また、加速器では核変換効率は高くすることができるものの、核変換の絶対量を多くすることが困難である。さらに、試験研究炉利用ではエネルギーを生産しないため処理コストが高価になる。以上のように、これまで提案されている方法では、実用に耐え得る大量の長寿命放射性核分裂生成物を核変換による消滅させることができなかった。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開平10-48390号公報
【特許文献2】特開平5-40198号公報
【特許文献3】特開平8-194082号公報
【0009】

【非特許文献1】原子力工業,第39巻,第6号(1993),6~20頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、核変換による消滅量を核分裂による新たな生成量に比べて大きく超過させ、できるかぎり大量の長寿命核分裂生成物を効率的に短寿命核種に変換する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、Tc-99、I-129、Se-79及びCs-135から選択される1種以上の長寿命核分裂生成物を黒鉛と一緒にペレット化した照射ターゲットを、内側反射体領域、燃料領域及び外側反射体領域を具備する黒鉛減速型原子炉の内側反射体領域に装填して、熱中性子照射を行うことを特徴とする、長寿命核分裂生成物を短寿命核種へ変換する方法が提供される。
【0012】
本発明で処理できる長寿命核分裂生成物(Long-Lived Fission Product: LLFP)は、Tc-99、I-129、Se-79及びCs-135であり、特にTc-99とI-129は20barn程度の比較的大きな熱中性子との核反応断面積を有するので好ましい。
【0013】
照射ターゲットを前記黒鉛減速型原子炉の外側反射体領域にもさらに装填してもよい。
【0014】
前記照射ターゲットは、長寿命核分裂生成物の微小球をSiC又は低密度炭素で被覆してなる粒子を黒鉛中に分散させてなる被覆粒子タイプペレット及び/又は長寿命核分裂生成物を黒鉛中に分散させてなる分散混合タイプペレットを複数個、黒鉛減速型原子炉用燃料棒と同型の黒鉛製容器に装填してなるものであることが好ましい。さらに、前記照射ターゲットは、前記ペレットを複数個装填した高温ガス炉用燃料棒と同型の黒鉛製容器を複数本集めた集合体であることがより好ましい。このように複数個の照射ターゲットを黒鉛減速型原子炉用燃料棒と同型の黒鉛製容器に装填し、さらにこの棒状黒鉛製容器を複数本集めた集合体とすることによって、黒鉛減速型原子炉の内側反射体領域及び外側反射体領域に装填することが容易になり、一度の熱中性子照射による核変換の効率を著しく向上させることができる。
【0015】
前記被覆粒子タイプペレットの長寿命核分裂生成物を含む被覆粒子の含有割合は10~30容積%であり、前記分散混合タイプペレットの長寿命核分裂生成物の含有割合は3~24容積%であることが好ましい。上記範囲の含有割合とすることにより、焼き固める際に長寿命核分裂生成物が偏らず均一に分散できる。このように黒鉛に対して微量の長寿命核分裂生成物を含有させることで、原子炉の反応度低下や自己遮断効果による照射ターゲット近傍での中性子束の低下を防止することができ、黒鉛の減速効果を損なうことがない。なお、炉心装荷量に換算すると、直径約3m高さ×約8mの内側反射体領域を有する直径約7.5m×高さ約10mのGTHTR300(熱出力600MX、電気出力300MWの高温ガス炉)の炉心に装荷した場合に、被覆粒子タイプペレットの場合には696~2087kg、分散混合タイプペレットの場合には1292~10399kgとなり、炉の反応度低下は図4から最大2.6%Δk/kとなる。
【0016】
前記黒鉛減速型原子炉の内側反射体領域における前記照射ターゲット装填後の総容積に対する黒鉛体積占有減少率は5%以下であることが好ましい。黒鉛減速型原子炉の黒鉛体積の減少率を5%以下とすることによって、反応度変化及び熱容量などの原子炉の運転特性に与える影響を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、原子炉の反応度低下が最小となるように、照射ターゲット集合体の炉心への装荷位置、形態、量を設定し、炉心特性の変化が軽微で無視できるように調整して、長寿命核分裂生成物を短寿命核種へと効率的に変換することができる。
【0018】
黒鉛減速型原子炉の内側反射体領域は熱中性子成分が多く、照射ターゲット集合体の高速中性子による照射損傷が少ないことから経年劣化が小さく、照射ターゲット集合体の利用寿命が延びる。さらに高速炉利用のように炉心から漏れてくる高速中性子を減速させる必要もなく、照射ターゲット集合体を炉心中央領域全体に装填でき、核変換に利用できる合計体積が大きい。また、黒鉛をマトリックスとしてする被覆粒子タイプペレットや分散タイプペレットとして長寿命核分裂生成物の濃度を下げることで、原子炉の反応度低下や自己遮蔽効果による集合体近傍の中性子束の低下を防止することができる。他方、照射ターゲットを複数個装填した棒状容器を複数個まとめて集合体として原子炉に装荷することによって、大量に長寿命核分裂生成物を装荷でき、核変換による低減できる合計量を増やすことができる。したがって、本発明によれば、核変換による消滅量を核分裂による新たな生成量に比べて大きく超過させ、できるかぎり大量の長寿命核分裂生成物を効率的に短寿命核種に変換することが可能となり、廃棄物処理・処分の効率化が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、長寿命核分裂生成物を含む照射ターゲットを装填する前の状態を示す黒鉛減速型原子炉の炉心の水平断面図及び垂直断面図である。
【図2】図2は、長寿命核分裂生成物を含む照射ターゲットを装填した状態を示す黒鉛減速型原子炉の炉心の水平断面図及び垂直断面図である。
【図3】図3は、長寿命核分裂生成物を含む照射ターゲット及び当該照射ターゲットからなる集合体並びに当該集合体を装填する炉心の概念図である。
【図4】図4は、黒鉛減速型原子炉に装填した長寿命核分裂生成物の装填量と、黒鉛減速型原子炉の反応度変化との関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の方法により、黒鉛減速型原子炉に装填した長寿命核分裂生成物(Tc-99とI-129)が原子炉運転ともに核変換した量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照しながら本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

【0021】
図3に示すように、環状燃料配置をもつ黒鉛減速型原子炉、特に高温ガス炉の場合、熱特性向上を目的とした直径約3m、高さ約8mの大きな黒鉛領域を炉心中央に有する。

【0022】
図1(a)に高温ガス炉の炉心の水平断面及び図1(b)に同垂直断面を示す。この領域の黒鉛の数パーセント程度、すなわち熱特性性能の低下を生じさせない程度に黒鉛以外の材料を充填することは可能である。図2(a)に、長寿命核分裂生成物(以下「LLFP」と略す)と黒鉛とを含む照射ターゲットを装填した場合の炉心の水平断面及び図2(b)に同垂直断面を示す。

【0023】
照射ターゲットは、図3に示すLLFP集合体として構成されていることが好ましい。LLFP集合体は、ピン-イン-ブロック型と呼ばれる構造を持ち、六角柱の黒鉛ブロックに約50本の核変換用LLFP棒が装填されている。LLFP集合体は、燃料棒と同型の黒鉛製棒状容器を複数本装填してなる。黒鉛製棒状容器には、ペレット状の黒鉛とLLFPとを含む照射ターゲットが複数個装填されている。以後、ペレット状の照射ターゲットが装填された黒鉛製棒状容器をLLFP棒と称す。照射ターゲットペレットとしては、被覆粒子タイプペレットと分散タイプペレットを用いることができる。被覆粒子タイプペレットは、LLFP微小粒子をSiC又は低密度炭素で3重被覆した粒子を黒鉛に分散させて焼き固めて製作した。分散タイプペレットはLLFP微粒子を黒鉛中に分散させ焼き固めて製作した。

【0024】
図3に集合体ブロック及び被覆粒子型タイプ(CPタイプ)もしくはLLFP分散型タイプ(MPタイプ)のペレットで構成したLLFP棒の構造を示す。例として、直径約3m高さ×約8mの内側反射体領域を有する直径約7.5m×高さ約10mのGTHTR300(熱出力600MX、電気出力300MWの高温ガス炉)の炉心に装填されるLLFP集合体が344体、1体のLLFP集合体の1ブロックあたりのLLFP棒の装荷本数を57本、CFタイプペレットのLLFP棒への充填率を30容積%、CPタイプペレットのLLFP含有率を16.15容積%、LLFPをTc-99(密度9.2g/cc)が60容積%及びI-129(YI3密度4.4g/cc、I密度比80%、I-129同位対比73%)が40容積%の混合と設定すれば、Tc-99とI-129の炉心装荷全重量はそれぞれ約2,000kg及び400kgとなる。この場合の黒鉛に対するLLFP濃度は0.7%であり、集合体装荷前後での炉心中央部の黒鉛体積減少はわずか0.7%となり、熱的特性に与える影響は無視できる程度である。一方、MPタイプペレットは、集合体344体、ブロック装荷57本、黒鉛に体するLLFPの体積混合率を24%と設定すれば、Tc-99とI-129の炉心装荷全重量はそれぞれ約10,000kg及び2,000kgとなる。この場合の黒鉛体積減少は3.5%である。この上例の設定による原子炉の反応度低下は、図4から、それぞれ1.9%Δk/k、2.6%Δk/kとなることがわかる。一般に、高温ガス炉の場合、炉心の反応度変化が-3%Δk/kまでであれば影響はほとんどなく、原子炉の運転特性に与える影響は小さい。なお、図4に示す原子炉の反応度低下は、黒鉛減速型原子炉の3次元体系モデルのモンテカルロコードの計算から求めた。

【0025】
図5に、原子炉運転に伴うLLFP量の減少特性を示す。Tc-99は初期装荷量が半分まで減少するのにかかる高温ガス炉の運転年数は14.5年であり、自然崩壊の半減期21万年を大幅に短縮できる。I-129が半減する年数は7.5年であり、半減期1570年を同様に短縮できる。前述のCPタイプペレット設定では、年間に100万キロワット級軽水炉で発生するTc-99は3.3基分、I-129は4.7基分の量を30万キロワット級の高温ガス炉1年間の運転で処理できる。さらに装荷量を増やしたMPタイプペレットを採用すれば、年間10基分以上のLLFPを消滅できる。

【0026】
本発明の実施の形態は上の例示に制限されるものではなく、原子炉特性を大きく損なわない限り、多様な装荷方法が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の方法により、原子力発電所等から発生する多量の長寿命核分裂生成物を短寿命核種に変換することが可能となり、処理すべき核分裂生成物の保管や地層処分にかかる設備のコンパクト化が図られ、設備運用や建設コストを削減できる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4