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明細書 :3次元フォトニック結晶

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5087772号 (P5087772)
登録日 平成24年9月21日(2012.9.21)
発行日 平成24年12月5日(2012.12.5)
発明の名称または考案の名称 3次元フォトニック結晶
国際特許分類 H01S   3/08        (2006.01)
H01S   5/12        (2006.01)
G02B   6/12        (2006.01)
FI H01S 3/08
H01S 5/12
G02B 6/12 Z
G02B 6/12 N
請求項の数または発明の数 11
全頁数 21
出願番号 特願2007-507080 (P2007-507080)
出願日 平成18年3月3日(2006.3.3)
国際出願番号 PCT/JP2006/304093
国際公開番号 WO2006/095648
国際公開日 平成18年9月14日(2006.9.14)
優先権出願番号 2005106729
優先日 平成17年3月5日(2005.3.5)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年2月27日(2009.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】野田 進
【氏名】岡野 誠
【氏名】今田 昌宏
【氏名】高橋 重樹
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】杉山 輝和
参考文献・文献 特開2002-189135(JP,A)
特開2004-006567(JP,A)
Ogawa S. et.al.,Control of Light Emission by 3D Photonic Crystals,Science,2004年 7月 9日,Vol.305,pp.227-229
調査した分野 H01S3/00-3/30
H01S5/00-5/50
G02B6/10-6/14
G02B1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
a) 誘電体から成る基材内に、2次元の周期パターンを成す多数の孔が基材表面に対して斜めに、異なる2方向から穿孔されて成る3次元フォトニック結晶から成る第1結晶及び第2結晶と、
b) 第1結晶と第2結晶の間に介挿された所定の厚さを有する誘電体からなるフォトニック結晶層であって、一部において第1結晶及び第2結晶と不整合であり、他の部分において第1結晶及び第2結晶と整合している接続結晶層と、
を備えることを特徴とする3次元フォトニック結晶。
【請求項2】
前記接続結晶層が、前記整合部分において第1結晶及び第2結晶と同一の結晶構造を有することを特徴とする請求項1に記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項3】
前記接続結晶層が2次元的構造を有することを特徴とする請求項1に記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項4】
第1結晶及び第2結晶の接合結晶層との接合面において、基材部分及び孔部分が交互に存在する縞模様を成していることを特徴とする請求項1に記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項5】
前記不整合の部分が接続結晶層に平行な方向に線状に連なっていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項6】
前記接続結晶層が発光材料から成り、該発光材料に電流を注入する電極を両表面に備えることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項7】
前記第1結晶又は第2結晶の、前記接続結晶層の不整合部分の近傍から外部に延びる孔を他の孔とは異なるものとしたことを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項8】
3層以上の、前記第1結晶及び第2結晶と同様の本体結晶の間に、前記接続結晶層をそれぞれ介挿したことを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項9】
2枚の接続結晶層に挟まれた本体結晶内の、両接続結晶層の不整合部分を接続する孔を他の孔とは異なるものとしたことを特徴とする請求項8に記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項10】
前記第1結晶及び第2結晶が、
基材の表面を複数の帯状に分割した領域のうち4n番目(nは整数)の領域から第1の方向に延びる孔が周期a1で多数形成され、
(4n+1)番目の領域から前記第1方向とは異なる第2の方向に延びる孔が周期a2で多数形成され、
(4n+2)番目の領域から前記第1方向に延びる孔が、4n番目の領域の孔とはa1/2だけ帯の長手方向にずれて周期a1で多数形成され、
(4n+3)番目の領域から前記第2方向に延びる孔が、(4n+1)番目の領域の孔とはa2/2だけ帯の長手方向にずれて周期a2で多数形成されている、
ことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の3次元フォトニック結晶。
【請求項11】
前記孔を穿孔された後の基材が積層ロッド形状を有し、前記第1方向と第2方向が略直交することを特徴とする請求項10に記載の3次元フォトニック結晶。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光共振器、光導波路、それらを組み合わせた光IC素子、光共振器を用いたレーザ発振器等に適用することができる3次元フォトニック結晶及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい光デバイスとして、フォトニック結晶が注目されている。フォトニック結晶とは周期屈折率分布をもった光機能材料であり、光や電磁波のエネルギーに対してバンド構造を形成する。特に、光や電磁波の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ)が形成されることが特徴である。
【0003】
フォトニック結晶の屈折率分布の中に屈折率分布の乱れ(欠陥)を導入することにより、フォトニックバンドギャップ中にこの欠陥によるエネルギー準位(欠陥準位)が形成される。これによって、フォトニックバンドギャップ中の欠陥準位のエネルギーに対応する波長の光のみが、この欠陥位置において存在可能になる。これにより、フォトニック結晶内に、点状の欠陥から成る光共振器や線状の欠陥から成る光導波路等の光回路素子を設けることができる。1個のフォトニック結晶内にこれらの光回路素子を多数設けて光集積回路を構成することにより、このフォトニック結晶は光IC素子となる。これまでの光通信等の分野においてはディスクリートな光回路素子を個々に接続して用いているが、光IC素子を用いることにより回路を超小型化することができる。
【0004】
フォトニック結晶には、2次元フォトニック結晶と3次元フォトニック結晶がある。このうち3次元フォトニック結晶は、2次元フォトニック結晶と比較して、欠陥位置に存在する光が外部に漏出し難いという特長を有する。特許文献1には、空気より屈折率の高い物質から構成されるロッドを互いに平行に周期的に配列してなるストライプ層を複数積層したものであって、最隣接のストライプ層のロッド同士が直交し、次隣接のストライプ層のロッド同士が平行且つ半周期ずれた構造を有する3次元フォトニック結晶について記載されている。また、この文献には、この3次元フォトニック結晶を構成するロッドに線状の欠陥を設けることにより光導波路を形成することが記載されている。
【0005】
更に、特許文献1にはこの3次元フォトニック結晶の製造方法が記載されている。その概要は以下の通りである。
まず、基板上にロッドの材料から成る平板の材料層を形成する。この材料層にフォトリソグラフィーとRIE(Reactive Ion Etching)を用いてストライプ構造を形成する。同じストライプ構造を形成した2枚の基板付の材料層を、ロッドが互いに直交するようにロッド面同士を重ねて加熱することにより融着させる。そして、一方の基板を除去することにより、1枚の基板上にストライプ層を2層重ねた構造体が得られる。この構造体を2個作製し、前記同様、最上面のストライプ層のロッド同士が直交し、かつ、間に1層置いた2つのストライプ層のロッド同士が平行且つ半周期ずれて配置されるように重ね、最上面のストライプ層同士を加熱により融着させる。これにより、ストライプ層を4層重ねた構造体が得られる。同様の操作を繰り返すことにより、8層、16層、…のストライプ層から成る3次元フォトニック結晶が得られる。以下、この方法を「融着法」という。
【0006】
特許文献2には、ロッドに点欠陥を設けた3次元フォトニック結晶が記載されている。この点欠陥には、ロッドの一部を欠損させてそこに形状や屈折率等の異なる物体を配置したもの、ロッドを欠損させることなくロッドに部材を取り付けたもの、ロッド自体の形状を変化させた(太くした/細くした)もの、等がある。この点欠陥は、その形状や大きさ、ロッドに対する位置(変位)により定まる所定の周波数の光に共振する共振器となる。この共振器は前記のように光IC素子の構成要素になる。また、欠陥部に発光体を導入することにより、光が点欠陥において共振して発光するレーザ光源として用いることもできる。
【0007】

【特許文献1】特開2001-074955号公報([0007], [0028]~[0035], 図1, 図8)
【特許文献2】特開2004-006567号公報([0013]~[0015], 図3~図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の3次元フォトニック結晶において光共振器、光導波路は、3次元フォトニック結晶中に点欠陥、線状欠陥を導入することで形成される。しかし、従来の融着法では、ストライプ層を多層化することにより3次元フォトニック結晶を作製しているため、欠陥の形状、大きさ等に制約が存在する。欠陥の積層方向の大きさは、ストライプ層(ロッド)の厚さに制約される。つまり、積層方向の欠陥サイズはストライプ層の厚さの整数倍しか選択できないことになる。また、ストライプ層1層分の厚さで、2つのストライプ層に跨るような欠陥構造の作製は困難であり、欠陥形状に対する制約も大きいという問題がある。
【0009】
また、これらの3次元フォトニック結晶を製造する際に用いられる融着法は、ストライプ層同士を融着する工程を繰り返し行う必要があるうえ、1回の融着の際に2個の構造体の位置を正確に合わせる必要があるため、手間を要する。
【0010】
本発明の課題は、ロッドの大きさや形状等に制約されることなく、任意の形状、大きさの点欠陥を内部に形成することができる3次元フォトニック結晶を提供することである。併せて、この3次元フォトニック結晶及び点欠陥のない3次元フォトニック結晶を容易に製造することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために成された本発明に係る3次元フォトニック結晶は、
a) 誘電体から成る基材内に、2次元の周期パターンを成す多数の孔が基材表面に対して斜めに、異なる2方向から穿孔されて成る3次元フォトニック結晶から成る第1結晶及び第2結晶と、
b) 第1結晶と第2結晶の間に介挿された所定の厚さを有する誘電体からなるフォトニック結晶層であって、一部において第1結晶及び第2結晶と不整合であり、他の部分において第1結晶及び第2結晶と整合している接続結晶層と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
この3次元フォトニック結晶では、上記不整合により接続結晶層に欠陥が形成される。そして、第1結晶及び第2結晶の、接続結晶層との界面における屈折率分布の位相により、その界面に接続される接続結晶層の孔及び孔と孔の間の基材の形状を調整することができる。このように基材の形状を調整することにより、欠陥の形態を制御することができる。また、接続結晶層の厚さにより欠陥の形態を制御することもできる。
【0013】
なお、以下では第1結晶と第2結晶に共通の特徴を述べる場合には、両者をまとめて「本体結晶」ということがある。
【0014】
前記接続結晶層には、前記整合部分において本体結晶と同一の結晶構造を有するものを用いることができる。これにより、この層と本体結晶を整合させることができる。
【0015】
接続結晶層が薄い場合には、前記接続結晶層に2次元的構造を有するものを用いることもできる。このような接続結晶層は本体結晶と同一の結晶構造のものよりも容易に作製することができる。
【0016】
前記不整合の部分は接続結晶層に平行な方向に線状に連なっていてもよい。この部分は線状欠陥、即ち導波路となる。
【0017】
本体結晶は、
誘電体から成る基材の表面に斜交する第1の方向を指向する異方性エッチングを該基材に対して行う第1エッチング工程と、
前記第1方向とは異なる第2の方向を指向する異方性エッチングを該基材に対して行う第2エッチング工程と、
を有することを特徴とする方法により、好適に製造することができる。
なお、この方法により製造される3次元フォトニック結晶は、上記本発明に係る本体結晶としてのみならず、それ自体が単独の3次元フォトニック結晶として有用なものである。
【0018】
上記第1結晶、第2結晶及び接続結晶層から成る本発明に係る3次元フォトニック結晶の製造方法は、
上記製造方法により第1結晶及び第2結晶を製造すると共に、所定の厚さを有する誘電体から成るフォトニック結晶層であって一部において第1結晶及び第2結晶と不整合であり、他の部分において第1結晶及び第2結晶と整合する接続結晶層を製造する工程と、
第1結晶と接続結晶層及び第2結晶と接続結晶層を前記整合に基づき位置を合わせて接合する工程と、
を有することを特徴とする。
【0019】
接続結晶層は、前記本体結晶の製造方法において、基材の表面にマスクを設け、そのマスクに設ける孔の一部を他の孔とは異なる形態とすることにより製造することができる。また、収束イオンビームにより基材に形成する孔の一部を他の孔とは異なる形態とすることにより、マスクを用いることなく製造することもできる。
【0020】
接続結晶層が薄い場合は、基材を1方向にエッチングすることにより該層を製造してもよい。これにより製造工程を簡略化することができる。また、この1方向は基材の表面に略垂直な方向でもよい。これにより通常の垂直方向エッチングを用いることができるため、製造が容易になる。
【発明の実施の形態及び効果】
【0021】
本発明に係る3次元フォトニック結晶は、3次元フォトニック結晶から成る第1結晶及び第2結晶の間に接続結晶層を介挿した構造を有し、その接続結晶層内に点欠陥を有するものである。以下、その構造について詳しく説明する。
【符号の説明】
【0022】
本体結晶においては、誘電体から成る基材に、2次元の周期パターンを成す多数の孔が第1の方向から穿孔され、更に、同様の2次元の周期パターンを成す多数の孔が、第1方向とは異なる第2の方向から穿孔されている。ここで、多数の孔が2次元の周期パターンを成すとは、各穿孔方向に対して垂直な面において、多数の孔の配置が周期パターンを成すことを意味する。そして、この2方向(第1方向と第2方向)は共に、基材の表面に斜交しなければならない。2方向は直交していてもよいし、斜交していてもよい。また、2方向は、それらを含む面が基材表面に垂直になるような方向であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0023】
このように、2次元の周期パターンを有する多数の孔が異なる2方向から穿孔されることにより、この基材の内部には3次元の周期パターンが形成される。この3次元周期パターンに対しては、それに対応する格子構造を考えることができるが、こうして形成された3次元フォトニック結晶において基材部分の割合が多い場合、孔(空間)の方を格子点とする格子構造の方が考えやすい。一方、こうして形成された3次元フォトニック結晶において孔部分(空間部分)の割合が多い場合、基材(誘電体)の方を格子点とする格子構造の方が考えやすい。以下、空間による格子点を「空間格子点」と呼び、誘電体による格子点を「誘電体格子点」と呼ぶ。
特許文献1及び特許文献2に記載の3次元フォトニック結晶は、誘電体格子点で構成される3次元フォトニック結晶と考えることができ、本発明の本体結晶として用いることができる。
【0024】
接続結晶層は、一部において本体結晶と不整合であり、他の部分において本体結晶と整合した形状を有する。整合部分では、本体結晶と接続結晶層は孔及び基材が連続しており、第1結晶、接続結晶層及び第2結晶の3つの構成部分を通して欠陥のない3次元周期構造が形成され、これら3つの構成部分が一体となった3次元フォトニック結晶が形成される。それに対して、不整合部分では、本体結晶と接続結晶層の孔及び孔と孔の間の基材において形状が異なり、3次元フォトニック結晶中の欠陥となる。この欠陥は、接続結晶層の厚さを調節することにより、任意の大きさとすることができる。従来のロッド積み上げ形式の3次元フォトニック結晶では、積層方向にはロッドの太さの単位でしか欠陥の大きさを変えることができなかったが、本発明に係る3次元フォトニック結晶では、接続結晶層の厚さにより、欠陥の大きさを連続的に変化させることができる。
【0025】
このような欠陥を点状に設けることにより、この欠陥は点欠陥、即ち共振器になる。また、このような欠陥を接続結晶層に平行な方向に線状に連ねることにより、欠陥は線状欠陥、即ち導波路になる。この導波路は孔の延びる方向に対して斜交する。
【0026】
接続結晶層の材料に本体結晶の材料と同一のものを用いることにより、本体結晶と接続結晶層(不整合部分を除く。)が完全に一体となった3次元フォトニック結晶を得ることができる。
【0027】
上記点欠陥を発光源(レーザー光源)等として用いる場合には、本体結晶と異なる材料(発光体)を用いてもよい。
【0028】
接続結晶層には、前記整合部分において本体結晶と同一の結晶構造を有するものを用いることができる。ここで、同一の結晶構造とは、第1、第2結晶と同じ斜めの2方向に延びる孔を有することを意味する。前記整合部分においては第1、第2結晶とは完全に整合し、前記不整合部分を囲う単一の3次元フォトニック結晶を構成する。このような接続結晶層を用いることにより、整合部分を本体結晶と完全に整合させることができる。
【0029】
接続結晶層には2次元的構造を有するものを用いることもできる。2次元的構造とは、層に平行な断面が切断位置により変化しないことを意味する。すなわち、孔が全て同じ方向に延びていることを意味する。この方向は、例えば第1方向、第2方向、層の面に垂直な方向等とすることができる。この2次元的構造を有する接続結晶層は1方向のエッチングにより作製することができるため、作製が容易である。また、1回のエッチング工程で済むため、上記レーザ光源を作製する際にエッチングによる発光体の劣化を抑えることができる。
【0030】
2次元的構造を有する接続結晶層を用いた場合、本体結晶と接続結晶層の孔のつながりは、厳密にいえば不連続になる。しかし、接続結晶層が薄い場合には、この3次元構造はバンドギャップを有し、実用上3次元フォトニック結晶として機能する。
【0031】
本体結晶と接続結晶層が接する面において、第1及び第2方向の孔の位置を調整することにより、孔の部分と基材の部分を、それらが交互に縞模様を成すように形成することができる。ここで、この縞模様の境界線は、孔の縁の形状を残しているため、ジグザグ状等の形状になる。この場合、整合部分においてそれに対応する接続結晶層の孔及び基材の形状は、本体結晶に合わせて境界線がジグザグ状の縞状に形成してもよいが、接続結晶層の厚さが薄い場合、ほぼ同じ太さの縞状として、縁を直線状としても実用上の問題はない。後者の場合、接続結晶層の作製が容易であるという利点を有する。更に、この縞(孔の部分及び基材の部分)の一部が他の縞とは形態が異なるようにすることにより、その部分は線状欠陥、即ち導波路となる。
【0032】
本発明の3次元フォトニック結晶においては、以下の理由により、接続結晶層内の点欠陥の形態はそれが誘電体格子点・空間格子点のいずれであっても、高い自由度で制御することができる。
本体結晶が表面に対して斜めに、異なる2方向から穿孔されているため、本体結晶をこの表面に平行な面で切断した切断面における本体結晶の形状は、切断面の位置により異なる。孔が周期的に形成されていることから、表面に垂直な方向に切断面を移動すると切断面の形状は周期的に変化する。従って、本体結晶の、接続結晶層との界面における周期的変化の位相を調整することにより、接続結晶層の構造を制御することができる。このように接続結晶層の構造を制御することができるため、点欠陥の導入においてもその形態を高い自由度で制御することができる。
また、接続結晶層の厚さは任意に設定することができるため、この厚さを調整することにより点欠陥の形態を高い自由度で制御することができる。
更に、本発明では接続結晶層内の方向に自由な形状の点欠陥を形成することができる。これにより、従来の3次元フォトニック結晶におけるストライプ層の積層方向にも点欠陥を拡大することができる。この方向は、従来の融着法ではストライプ層を積層するという作製方法に制約されるため、点欠陥を拡大することが難しかった方向である。
【0033】
また、従来の点欠陥の多くは直方体等の対称性の高い形状を有するが、本発明の3次元フォトニック結晶では、例えば、接続結晶層に、その表面に対して斜め方向に延びる孔を設けることにより、2辺はその斜め方向に平行であって2辺は接続結晶層に平行な、長方形から歪んだ断面を持つ点欠陥を容易に導入することができる。この点においても点欠陥のパラメータ、ひいては点欠陥から成る共振器のパラメータをより自由に制御することができる。
【0034】
本発明の3次元フォトニック結晶の接続結晶層の材料として電流の注入により発光する発光材料を用い、この結晶の両表面に電流注入用電極を設けることにより、発光デバイスを構成することができる。この発光デバイスにおいては、電極に電圧を印加することにより、電流が本体材料を通して発光材料に注入され、発光層が発光する。発光した光は点欠陥において共振し、それによりレーザ発振を得ることができる。他の部分においては、フォトニックバンドギャップを適切に設定することにより、発光を抑制することができる。この発光デバイスは、後述の方法により、融着を多用しなくとも作製することができるため、融着が不十分となって電流が流れにくくなるという可能性が低く、信頼性が高い。
【0035】
第1結晶及び第2結晶において、接続結晶層の不整合部分から外部に延びる孔の形態を他の孔とは異なるものにすることにより、これらの結晶内に線状欠陥を形成することができる。すなわち、その孔が導波路となる。従って、本体結晶の表面から共振器に光を導入することや、共振器から本体結晶の表面に光を取り出すことが非常に容易となる。なお、線状欠陥は点欠陥に接して配置してもよいし、そこから接続結晶層に平行な方向にずらして配置してもよい。
【0036】
以上、2層の本体結晶(第1結晶、第2結晶)の間に接続結晶層を1層設けることにより形成された3次元フォトニック結晶について説明した。同様にして、3層以上の本体結晶の間にそれぞれ接続結晶層を介挿して一体としたものであっても、上記と同様に点欠陥を導入することができる。このように多層化することにより、より自由に、光IC等を設計することができる。例えば、2枚の接続結晶層の不整合部分が1本の孔で接続されるように配置し、その孔の形態を他の孔とは異なるものとすることにより、これら2枚の接続結晶層に設けた点欠陥同士の間で光の授受を行う導波路を形成することができる。なお、上記と同様に、点欠陥と導波路の位置は層に平行な方向にずれていてもよい。
【0037】
次に、本発明に係る3次元フォトニック結晶製造方法について説明する。ここではまず、本体結晶を製造する方法について説明し、次に、この方法により作製された本体結晶と、この方法又は他の方法により作製された接続結晶層を用いて本発明に係る3次元フォトニック結晶を製造する方法について説明する。なお、以下に述べるような方法で製造される本体結晶は、本発明に係る3次元フォトニック結晶(接続結晶層を有する3次元フォトニック結晶)の構成要素としての利用ばかりではなく、それ自体のみでも3次元フォトニック結晶として利用することができる。
【0038】
本体結晶の製造方法は次の通りである。誘電体から成る基材の表面から、その面に斜交する第1の方向に向かって異方性エッチングを行うことにより、第1方向に延びる棒状の孔を多数形成する(第1エッチング工程)。このとき、多数の孔はそのエッチング方向(第1方向)に垂直な面内において2次元周期パターンを形成するようにしておく。同様に、基材表面に斜交する第2の方向に異方性エッチングを行うことにより、第2方向に延びる棒状の孔を多数形成する(第2エッチング工程)。こちらの方でも、多数の孔はエッチング方向(第2方向)に垂直な面内において2次元周期パターンを形成するようにしておく。なお、第1方向の2次元周期パターンと第2方向の2次元周期パターンは同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1方向と第2方向は異なる方向であるが、両者は直交していてもよいし、斜交していてもよい。このように、異なる2方向に延びる、それぞれ2次元周期パターンを有する棒状の多数の孔を設けることより、この誘電体には3次元的周期性を有する屈折率分布が形成され、3次元フォトニック結晶(本体結晶)が完成する。
【0039】
この方法によれば、異方性エッチングを2回行うのみで3次元フォトニック結晶を製造することができ、積層の繰り返し及び融着を多数回行っていた従来の方法よりも工程数を大幅に削減することができるうえ、位置合わせの手間も不要となる。
【0040】
第1エッチング工程及び第2エッチング工程において行う異方性エッチングは、例えばプラズマエッチングにより行うことができる。すなわち、プラズマ化したガスを電界により所定の方向に指向させて被処理物に入射させることにより、物理的又は化学的に被処理物をこの方向にのみ強くエッチングしてゆく。第1エッチング工程及び第2エッチング工程における前記多数の孔の2次元周期パターンは、それに対応する、角度補正を行ったパターンを有するマスクを基材の表面に設けることにより形成することができる
【0041】
異方性エッチングは、イオンビームエッチング、或いは更に、反応性ガスを用いた反応性イオンビームエッチングを用いることもできる。この場合、マスクを用いる必要がない。
【0042】
前記第1方向及び第2方向は、共に基材の表面に対して45°の方向とすることが望ましい。これにより、両方向が直交するとともに、基材をその表面に垂直な軸に関して180°回転するだけで第1方向と第2方向を切り替えることができるため、第1エッチング工程と第2エッチング工程におけるエッチングの方向の変更が容易になる。
【0043】
この3次元フォトニック結晶(本体結晶)における線状欠陥は、基材に形成する孔の一部を他の孔とは異なる形態とすることにより容易に形成することができる。ここで、孔の「形態」には、孔の大きさ及び形状を含む。
【0044】
接続結晶層は、上記の線状欠陥を有する本体結晶と同様の方法で作製することができる。すなわち、上記線状欠陥を有する3次元フォトニック結晶の製造方法においてエッチングの深さを浅くすることにより容易に実現される。また、前記の2次元的構造を有する接続結晶層の場合は、板状の基材に1回だけ、点欠陥を含むパターンでエッチングすることにより、容易に作製することができる。この1方向が基材の表面に略垂直な方向であれば、通常の垂直方向エッチングを用いることができるため、製造が更に容易になる。
【0045】
本発明に係る3次元フォトニック結晶は、このようにして製造された第1結晶と接続結晶層、及び第2結晶と接続結晶層を接合することにより作製される。その際、第1結晶と接続結晶層、及び第2結晶と接続結晶層の整合部分の孔の位置に基づき、位置合わせを行う。この接合には従来の3次元フォトニック結晶の製造の場合と同様の熱融着を用いることができる。
【0046】
この製造方法においては、エッチングに加えて2箇所の接合を行うのみで十分であり、積層化のために多数回の融着を行っていた従来の方法よりも工程数を大幅に削減することができる。このような容易な作製方法により3次元フォトニック結晶に自由な欠陥構造を導入できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る3次元フォトニック結晶の一実施例の基本的な構造を示す縦断面透視図。
【図2】本実施例の3次元フォトニック結晶における第2結晶の構造を示す斜視図。
【図3】従来の3次元フォトニック結晶の構造を示す斜視図。
【図4】本実施例の3次元フォトニック結晶における接続結晶層13の例を示す斜視図。
【図5】本実施例の3次元フォトニック結晶における接続結晶層13の例を示す斜視図。
【図6】本実施例の3次元フォトニック結晶の断面を説明する図。
【図7】接続結晶層13に導入される点欠陥の例を示す斜視図。
【図8】接続結晶層13に導入される線状欠陥の例を示す斜視図。
【図9】2次元的な構造を有する接続結晶層13の例を示す斜視図。
【図10】接続結晶層13を複数設けた3次元フォトニック結晶の例を示す縦断面図。
【図11】本発明に係る3次元フォトニック結晶の製造方法の一実施形態を示す断面図。
【図12】第1マスク及び第2マスクの例を示す上面図。
【図13】線状欠陥を有する3次元フォトニック結晶の製造方法の一実施例を示す断面図。
【図14】第1マスク及び第2マスクの他の例を示す上面図。
【図15】点欠陥を有する3次元フォトニック結晶の製造方法の一実施例を示す断面図。
【図16】本実施例の3次元フォトニック結晶の透過率を計算した結果を示すグラフ。
【図17】本実施例の3次元フォトニック結晶内に設けた点欠陥61のQ値を計算した結果を示すグラフ。
【図18】点欠陥61における磁界分布を計算した結果を示す図。
【0048】
10…3次元フォトニック結晶
11、51…第1結晶
12、52…第2結晶
13、131、53…接続結晶層
14、42、62…ロッド
15、15a、151、56、61…点欠陥
18、181、55…線状欠陥
19…部材
20…従来の3次元フォトニック結晶
21、21a、21b、21c、21d、31a、31b…ロッド
22a…ストライプ層(第1層)
22b…ストライプ層(第2層)
22c…ストライプ層(第3層)
22d…ストライプ層(第4層)
23、36a、36b…空隙
25…積層方向
31…基材
32…第1マスク
33…第1マスクの孔
34…第2マスク
34a…第1領域
34b…第2領域
34c…第3領域
34d…第4領域
35…第2マスクの孔
【実施例】
【0049】
本発明に係る3次元フォトニック結晶の実施例を図1~図9を用いて説明する。
図1は本発明に係る3次元フォトニック結晶10の縦方向断面図(透視図)である。この3次元フォトニック結晶10は、第1結晶11と第2結晶12の間に接続結晶層13を挟んだ構成を有する。これらはいずれも、互いに直交する2方向に延びるロッド14を井桁状に組み合わせた構造を有する。接続結晶層13内には点欠陥15が存在する。点欠陥15については後述する。
【0050】
この井桁構造を説明するために、図2に第2結晶12の斜視図を示す。第1結晶11及び接続結晶層13も基本的にはこれと同じ構造を有する。界面16は接続結晶層13との界面である。界面16に対して、ロッド14は斜め方向に延びている。この構造は、界面16の方向が異なることを除いて、図3に示す従来の3次元フォトニック結晶20と同じである。従来の3次元フォトニック結晶では、ロッド21が1つのストライプ層内に互いに略平行に周期a(「面内周期」という)で配置され、このようなストライプ層が、以下に述べる第1層22a~第4層22dを1つの単位として、繰り返し積層される。4n番目(nは整数)のストライプ層(第1層)22aのロッド21aと(4n+1)番目のストライプ層(第3層)22bのロッド21bは略直交している。また、ロッド21aと(4n+2)番目のストライプ層(第3層)22cのロッド21cは略平行であって、周期aの半分a/2だけずれて配置される。ロッド21bと(4n+3)番目のストライプ層(第4層)22dのロッド21dの関係も、ロッド21aとロッド21cの関係と同様である。ロッドとロッドの間は空隙23である。
【0051】
本実施例の3次元フォトニック結晶10の結晶の方位を説明する。その前にまず、図3の3次元フォトニック結晶における結晶方位を、その(100)面及び(001)面により図に示すように定義する。従来の3次元フォトニック結晶20では、ストライプ層22a~22dを積層し、融着して作製するため、結晶20の表面はストライプ層、あるいはロッドに平行な方向の面((001)面)である。それに対して、本実施例の3次元フォトニック結晶10における第1結晶11及び第2結晶12では、接続結晶層13との界面16は、ロッドに対して斜めの面である。即ち、第1結晶11及び第2結晶12は、従来の3次元フォトニック結晶20をその面で切断した構造を有する。本実施例では、(001)面に対して垂直であり、全てのロッドに対して45°で交わる(100)面を界面16とした。従って、図1(本実施例)の3次元フォトニック結晶10を45°回転させると、点欠陥15を除いて図3の3次元フォトニック結晶20と同様の構造となる。
【0052】
接続結晶層13の一例を図4に示す。この図を用いて点欠陥15について説明する。この接続結晶層13は図2の3次元フォトニック結晶10の界面16付近をその面に平行に薄く切り出した形状を有する。ロッド14のうちの1本を接続結晶層13の層内で他のロッド14を拡大するような形状に成形する。このロッドが点欠陥15を構成する。この点欠陥15は、ストライプ層22a~22dに平行な方向24のみならず、積層方向25にも自由に拡大・縮小することができ、それにより点欠陥15の形状を自由に設定することができる。
【0053】
接続結晶層13の形状は、界面16の位置(結晶周期の位相)により制御することができる。図5に接続結晶層13の形状の例を示す。図5の(a)~(e)はそれぞれ、図6に示す断面A~E付近を薄く切り出した形状を有する接続結晶層13を示したものである。断面A~Cでは、隣接する2本のロッドから成る、独立した部材(他の部材とは接しない部材)14aが多数形成されている。また、断面D及びEでは、1本のロッドから成る部材14bが線状に連なり、それによりロッド部材と空隙が縞模様を形成している。
【0054】
界面16の位置により、点欠陥の形状を制御することができる。断面A付近を薄く切り出した接続結晶層13に点欠陥15aを形成したものを図7(a)に、断面E付近を薄く切り出した接続結晶層13に点欠陥15bを形成したものを図7(b)に、それぞれ示す。点欠陥15aは、独立部材14aのうちの1つの形態を他の部材と異なるものとする(拡大する)ことにより形成される。この点欠陥15aは、2本のロッド14の交点に形成される。点欠陥15bは線状に連なる部材14bのうちの1つの形態を他の部材と異なるものとする(拡大する)ことにより形成される。このような点欠陥は、従来の3次元フォトニック結晶20では複数のストライプ層に亘る構造であるため形成することができなかったものである。
【0055】
また、同様に界面16の位置により、線状欠陥の形状も制御することができる。断面A~Cでは、上記のように形成される点欠陥を線状に連続的に形成することにより、線状欠陥を形成することができる。図8(a)及び(b)に、断面Aに導入される線状欠陥の例を示す。上記点欠陥15aを複数、線状に並べることにより線状欠陥18a(図8(a))、18b(図8(b))を形成する。点欠陥15aを並べる方向により線状欠陥の延びる方向を制御することができる。図8(c)に、断面Eに導入される線状欠陥の例を示す。ロッド部材の縞の1本を他の縞と異なる形状とすることにより、接続結晶層13内に線状欠陥18cを形成する。これらの線状欠陥、即ち導波路は、3次元フォトニック結晶10のロッドに対して斜め方向に延びる。このような導波路は従来の3次元フォトニック結晶にはなかったものである。
【0056】
図9に、2次元的構造を有する接続結晶層13の例を示す。(a)には上記断面A、(b)には断面C、(c)には断面Eにそれぞれ対応する、2次元的構造の接続結晶層を示した。(b)及び(c)は1本のロッドの部材をそれぞれ1個の直方体に置き換えたものである。(a)は図5(a)に示した2本のロッドから成るロッド部材を1個の直方体に置き換えたものである。いずれも、層が薄い場合には、図4及び図5の構造とよく近似する。このような2次元的構造の接続結晶層は通常の一方向エッチングにより作製することができる。図9(c)の構成は更に、ロッドの部材が連なる方向(縞が延びる方向)に延びる線状の部材19で近似することができる(図9(d))。
【0057】
図10に、接続結晶層を複数設けた3次元フォトニック結晶の一例を縦断面図で示す。本体結晶111と本体結晶112、本体結晶112と本体結晶113、...の間にそれぞれ接続結晶層131、132...を介挿する。本実施例では更に、接続結晶層131、132...にそれぞれ多数の点欠陥151を形成し、本体結晶内に多数の線状欠陥181を形成する。各線状欠陥は点欠陥の近傍に配置する。このように点欠陥と線状欠陥を配置することにより、両者の間に相互作用が生じ、両者間で光の流出入が生じる。以上のように、本発明の3次元フォトニック結晶は点欠陥及び線状欠陥を3次元的に多数配置することができ、それにより光集積回路を形成することが可能である。
【0058】
本実施例の3次元フォトニック結晶の製造方法の一例を、図11~図15を用いて説明する。
まず、本体結晶の製造方法の一例について説明する。ロッドの材料から成る基材31の表面に第1マスク32を形成し、その表面を、図12(a)に示すように、多数の帯状の領域に分割する。これらの帯状の領域を、4本で1つの繰り返し単位となるように、4n番目の領域(第1領域)34a、(4n+1)番目の領域(第2領域)34b、(4n+2)番目の領域(第3領域)34c、(4n+3)番目の領域(第4領域)34dに分ける。なお、この帯状の領域の絶対的位置は、基材31の表面に対して定義される。第1マスク32上の第1領域34a及び第3領域34cに、周期a1で多数の孔33を形成する。第3領域34cの孔33の位置は第1領域34aのそれからa1/2だけ領域の長手方向にずらす。
【0059】
多数の孔33を有する第1マスク32が被覆された基材31(図11(a))に対して、第1マスク32の上から、所定の第1方向を指向する異方性エッチングを行う(図11(b)、第1エッチング工程)。これにより、上記第1層22a及び第3層22cが形成される。即ち、基材31のうち第1領域34aと第3領域34cの直下に、第1方向に延びる空隙36a及び36cが多数、周期的に形成され、隣接する2個の空隙36a(36c)間に残った誘電体基材がロッド31a(31c)となる。エッチングの終了後、第1マスク32を除去する。
【0060】
次に、基材31の表面に第2マスク34を形成する(図11(c))。第2マスク34の一例を図12(b)に平面図で示す。上記のように基材31の表面に対して定義された帯状の第1領域34a~第4領域34dのうち、第2領域34b及び第4領域34dに、周期a2で多数の孔35を形成する。第4領域34dの孔35の位置は第2領域34bからa2/2だけ領域の長手方向にずらす。
【0061】
第2マスク34が被覆された基材31に対して、第2マスク34の上から、第1方向に略直交する第2方向を指向する異方性エッチングを行う(図11(d)、第2エッチング工程)。これにより、上記第2層22b及び第4層22dが形成される。即ち、基材31のうち第2領域34b及び第4領域34dの直下に、第2方向に延びる空隙36b及び36dが多数、周期的に形成され、隣接する2個の空隙36a(36c)間に残った誘電体基材がロッド31a(31c)となる。第1方向と第2方向を略直交させたため、隣接する領域の直下に作製されたロッド同士(ロッド31aとロッド31b等)は略直交する。エッチングの終了後、第2マスク34を除去する。これにより、基材31の表面に対して斜めに空隙が形成された、図2に示したような本体結晶が完成する(図11(e))。
【0062】
なお、異方性エッチングに収束イオンビーム法を用いる場合には、基材31の表面を上記のようなマスクで覆うことなく、形成する空隙の形態に合わせて収束イオンビームを基材31の表面に照射することにより、上記と同様の3次元フォトニック結晶(本体結晶)を製造することができる。
【0063】
前記第1方向及び第2方向は、共に基材の表面に対して45°の方向とすることが望ましい。これにより、両方向が直交するとともに、基材31をマスクの面に垂直な軸に関して180°回転するだけで第1方向と第2方向を切り替えることができるため、第1エッチング工程と第2エッチング工程におけるエッチングの方向の変更が容易になる。この場合、周期a1と周期a2を等しく(20.5a)することにより所定の面内周期aでロッドを形成することができる。また、マスクの孔の大きさは、帯状領域の長手方向には20.5(a-W)、幅方向にはその幅の大きさとすればよい(Wはロッドの長手方向の幅)。
【0064】
上記本体結晶の製造方法(第1の方法と呼ぶ)において、第1マスク又は第2マスクに設ける孔33又は35のうちの一部を他の孔とは異なる形態にすることにより、この3次元フォトニック結晶に線状欠陥を導入することができる(これを第2の方法と呼ぶ)。例えば上記の例では、製造後のロッドのうちの1本であるロッド42に接するマスクの孔41a及び41bを他の孔よりも小さくすることによりロッド42の幅を大きくしたり(図13(a))、その反対に孔41a及び41bを他の孔よりも大きくすることによりロッド42の幅を小さくする(図13(b))ことができる。また、ロッド42の位置が周期的なロッドの配置からずれるように、孔41a及び41bのうち一方を大きく、他方を小さくしてもよい(図13(c))。更に、孔の形状を、他の孔の形状(長方形)とは異なる円形やくさび形等にすることにより、その孔に接するロッドの形状を他のロッドとは異なるものにしてもよい。
【0065】
また、このように最終的にロッド(ストライプ層)を積み上げた構造(積み上げ構造)を有する3次元フォトニック結晶ばかりではなく、本発明に係る方法ではブロックに2方向から周期的に多数の孔を穿孔した構造(穿孔構造)を有する3次元フォトニック結晶も製造することが可能である。例えば、楕円形の孔33aを周期的に形成した第1マスク(図14)及び第2マスク(図示せず)を用いてエッチングを行うことにより、楕円形の断面を持つ空隙が周期的に形成された3次元フォトニック結晶を製造することができる。ここで、図14中の破線は図12に示したマスクの孔33の位置を示す。また、収束イオンビームを用いてエッチングを行う場合には、図14のようなマスクを用いることなく同様の3次元フォトニック結晶を製造することができる。穿孔構造の3次元フォトニック結晶を製造する場合にも、いずれかの孔の形状を他のものとは異なるものとすることにより、そこに線状欠陥を導入することができる。
【0066】
次に、本体結晶と接続結晶層から成る上記実施例の3次元フォトニック結晶の製造方法の一例について説明する。
まず、前記第1方法により、点欠陥のない3次元フォトニック結晶を2個(第1結晶51、第2結晶52)製造する(図15(a))。または、前記第2方法により、線状欠陥55を導入した3次元フォトニック結晶(接続結晶層53)を製造する(図15(a))。接続結晶層53の厚さを小さくすることにより、線状欠陥55は、最終的に製造される3次元フォトニック結晶において点欠陥56となる。
【0067】
第1結晶51と接続結晶層53の切断面を、点欠陥56以外の部分で両者のロッドが接続されるように位置を合わせて重ねる(図15(b))。ここで、ロッドの位置合わせには、従来の融着法で用いられる位置合わせの方法をそのまま用いることができる。この状態で加熱することにより、第1結晶51と接続結晶層53を融着する。次に、接続結晶層53の反対側の切断面と第2結晶52の切断面を、点欠陥56以外の部分で両者のロッドが接続されるように位置を合わせて重ね、加熱することにより融着する(図15(c))。これにより、接続結晶層53中に点欠陥56を含む3次元フォトニック結晶が得られる(図15(d))。
【0068】
次に、本実施例の3次元フォトニック結晶の透過率特性を3次元FDTD法を用いて計算した結果を述べる。
まず、本体結晶の特性について計算した結果を述べる。全てのロッドに対して45°で交わる(100)面を界面とし、その界面から、それに垂直な方向(これをz方向とする)に進行する平面波が入射する場合について、結晶の厚さdをパラメータとしてその平面波の透過率を計算した結果を図16(a)及び(b)に示す。これらの図において、横軸には周波数にa/c(cは光速)を乗じて無次元とした規格化周波数を用いた。ここでは、結晶の厚さdが1az~5az(az=20.5a、図1, 図16(c)参照)の場合について計算したが、偏光方向がy方向(図16(a))、x方向(図16(b))のいずれの場合も、結晶の厚さdが2az程度ですでに、フォトニックバンドギャップ(PBG)内における透過率は数%という低い値になる。更に厚さが1az増す毎に透過率は約1桁ずつ低下する。すなわち、本体結晶は厚さを2az~3az以上とすることにより3次元フォトニック結晶としての特性を十分に有するようになる。
【0069】
次に、接続結晶層の特性について計算した結果を述べる。図17(a)に、ロッド62に平行な2面間の高さをaとした点欠陥61(図17(b))についてQ値を計算した結果を示す。第1結晶及び第2結晶の厚さを2az以上とすることにより、点欠陥61のQ値を室温でのレーザ発振に必要とされる1000以上にすることができる。本体結晶の厚さが2az以上という条件に関して具体的な数値により検討すると、ロッド62の間隔aを0.6μmとした場合(これにより、波長1.55μm帯の光についてフォトニックバンドギャップが形成される)、2azは1.70μmとなり、ロッドの間にある孔の長さは4a、即ち2.4μmとなる。このような長さの孔は、現在の異方性エッチング技術によって作製することが可能である。
【0070】
また、点欠陥61の周辺における電磁界分布を計算した結果を図18に示す。x,y,zのいずれの方向にも磁界が強く閉じ込められており、点欠陥61が光共振器として利用可能であることを示している。
図面
【図1】
0
【図3】
1
【図6】
2
【図10】
3
【図11】
4
【図12】
5
【図13】
6
【図14】
7
【図15】
8
【図2】
9
【図4】
10
【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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