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明細書 :2次元フォトニック結晶製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4621920号 (P4621920)
公開番号 特開2007-192998 (P2007-192998A)
登録日 平成22年11月12日(2010.11.12)
発行日 平成23年2月2日(2011.2.2)
公開日 平成19年8月2日(2007.8.2)
発明の名称または考案の名称 2次元フォトニック結晶製造方法
国際特許分類 G02B   6/13        (2006.01)
G02B   6/12        (2006.01)
FI G02B 6/12 M
G02B 6/12 Z
G02B 6/12 F
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2006-009994 (P2006-009994)
出願日 平成18年1月18日(2006.1.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 『第66回応用物理学会学術講演会講演予稿集』、第3巻、平成17年9月7日、社団法人応用物理学会発行
審査請求日 平成20年12月24日(2008.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
発明者または考案者 【氏名】永島 拓志
【氏名】宋 奉植
【氏名】浅野 卓
【氏名】野田 進
個別代理人の代理人 【識別番号】110001069、【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
【識別番号】100095670、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 良平
審査官 【審査官】井上 徹
参考文献・文献 特開2001-272555(JP,A)
特開平09-251987(JP,A)
特開2002-365401(JP,A)
Hennessy, K.; Badolato, A.; Tamboli, A.; Petroff, P. M.; Hu, E.; Atature, M.; Dreiser, J.; Imamoglu, A.; ,Tuning photonic crystal nanocavity modes by wet chemical digital etching ,Applied Physics Letters ,2005年,Vol.87,No.2 ,PP.021108-1-021108-3
調査した分野 C23F 1/00-4/04、
G02B 1/00-1/08、3/00-3/14
G02B 6/12-6/14、
G02F 1/00-1/125、
H01L 21/302、21/3065、21/461、
H01S 5/00-5/50
CiNii
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)


特許請求の範囲 【請求項1】
Siから成るスラブに周期的に配置された空孔と、該周期の欠陥を点状に設けて成る点状欠陥共振器と、を有する2次元フォトニック結晶を製造する方法において、
水に前記スラブの表面を晒す操作と、それにより該表面に形成された酸化膜をフッ化水素水溶液により除去する操作を、所定の回数だけ繰り返す減厚工程を有することを特徴とする2次元フォトニック結晶製造方法。
【請求項2】
前記スラブの一方の面のみを水に晒す操作と、それにより形成された酸化膜をフッ化水素水溶液により除去する操作を行うことを特徴とする請求項1に記載の2次元フォトニック結晶製造方法。
【請求項3】
前記スラブに複数の点状欠陥共振器を設け、
前記減厚工程において、点状欠陥共振器毎に定めた所定の回数だけ、該点状欠陥共振器の近傍のみを水に晒す操作と、それにより形成された酸化膜をフッ化水素水溶液により除去する操作を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の2次元フォトニック結晶製造方法。
【請求項4】
前記点状欠陥共振器の近傍のみを水に晒す操作と、それにより形成された酸化膜をフッ化水素水溶液により除去する操作の前に、化学処理によりスラブ表面を疎水性にすることを特徴とする請求項に記載の2次元フォトニック結晶製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスに用いられる2次元フォトニック結晶の製造方法に関し、特に、合分波デバイス等に用いられる点状欠陥共振器を有する2次元フォトニック結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing : WDM)伝送システムの技術が進歩している。WDMは、一本の伝送路に複数の波長の光(本願において用いる「光」には、可視光以外の電磁波を含むものとする。)を伝播させ、それぞれに別個の信号を乗せて情報を伝送するものである。伝送路の入口側で各波長の光を混合し、混合された光を出口側で各波長ごとに取り出すために、光の合波器及び分波器が必要となる。従来、分波器には例えばアレイ導波路回折格子が用いられているが、この分波器では、光の損失を小さくするために、現状では数cm角程度の比較的大きな素子が用いられている。
【0003】
それに対して、伝送システムの大容量化及び装置の小型化のために、フォトニック結晶を用いた分波器、合波器の開発が行われている。フォトニック結晶は周期屈折率分布をもった機能材料であり、光のエネルギーに対してバンド構造を形成する。特に、光の伝播が不可能となるエネルギー領域(フォトニックバンドギャップ)が形成されることが特徴である。フォトニック結晶中の屈折率分布に適切な欠陥を導入することにより、フォトニックバンドギャップ中にこの欠陥によるエネルギー準位(欠陥準位)が形成される。これにより、フォトニックバンドギャップに対応する波長範囲のうち、欠陥準位のエネルギーに対応する波長の光のみが存在可能になる。
【0004】
特許文献1には、スラブ状の本体に空孔を周期的に配列することにより周期屈折率分布を設けた2次元フォトニック結晶が開示されている。この周期屈折率分布に線状の欠陥(線状欠陥)を形成することによりその欠陥は導波路となり、点状の欠陥(点状欠陥)を形成することによりその欠陥は共振器となる。この点状欠陥の(配置形状または)孔径を変化させることにより該共振器より共振する光の波長を調整することができる。
特許文献2には、特許文献1と同様のスラブ状の2次元フォトニック結晶において、隣接する複数の空孔に欠陥を設けることにより1個の点状欠陥(クラスタ欠陥)を形成することが記載されている。それと共に、空孔の周期が異なる複数の領域(禁制帯領域)を設け、各禁制帯領域毎に同様の形状の点状欠陥を設けることにより、各点状欠陥共振器毎に異なる波長の光を共振させることが記載されている。
【0005】
導波路の近傍に、それぞれ共振波長の異なる点状欠陥共振器を複数設けることにより、この2次元フォトニック結晶は、各点状欠陥共振器からそれぞれ異なる波長の光を導波路に導入する合波器として機能すると共に、様々な波長の光が伝播する導波路から各点状欠陥共振器にそれぞれ異なる波長の光を取り出す分波器としても機能する。
【0006】
このような2次元フォトニック結晶を用いた合分波器において、複数の点状欠陥共振器の間の波長の間隔が小さい程、同じ波長帯に重畳することができるチャネルの数を増加させることができる。しかし、この波長の間隔を小さくするためには、各点状欠陥共振器における設計値からの波長のずれを十分に小さくしなければならない。そのため、点状欠陥共振器の共振波長を微調整する方法が検討されている。
【0007】
非特許文献1には、ガリウムヒ素(GaAs)から成るスラブ状の本体に空孔を周期的に配列し、導波路及び点状欠陥共振器を設けた2次元フォトニック結晶において、スラブの表面をエッチングしてスラブの厚さを調整することが記載されている。スラブの厚さが薄くなる程、点状欠陥共振器の共振波長は小さくなるため、この厚さを調整することにより共振波長を制御することができる。
【0008】
非特許文献1では、厚さの調整は以下のように行われている。まず、スラブの表面を大気中で自然に酸化させる。この時に形成される酸化膜の厚さδdは約1.5nmである、とされている。次に、スラブをフッ酸水溶液に晒すことにより酸化膜を除去する。なお、この文献では、フッ酸水溶液に含まれる水はスラブのGaAsを酸化させることはほとんど無い、とされている。スラブの厚さは、ここまでの操作を1回行うことによりδdだけ減少し、この操作を繰り返し行うことによりδdの整数倍減少する。厚さの変化が離散的な値をとるため、この文献ではこの操作は「デジタルエッチング」と呼ばれている。
厚さ調整前の共振波長が約950nm±30nmである幾つかの点状欠陥共振器に対して成された実験結果によれば、前記操作1回につき、共振波長を2.1nm又は3.4nm(点状欠陥共振器の形状により異なる)だけ小さくすることができる、とされている。
【0009】

【特許文献1】特開2001-272555号公報
【特許文献2】特開2003-279764号公報
【非特許文献1】ヘネシー、他7名、「湿式化学デジタルエッチングによるフォトニック結晶ナノ共振器モードの制御」、アプライドフィジックスレターズ、米国、米国物理学協会、2005年7月8日、第87巻、021108-1~021108-3頁(Hennessy et al., "Tuning photonic crystal nanocavity modes by wet chemical digital etching", Applied Physics Letters, American Institute of Physics, Vol. 87, pp. 021108-1~021108-3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、GaAsから成るスラブは、Siを用いたものと比較すると、化合物であるため加工性が悪く、それによりスラブを通過する光が散乱される。そのため、GaAsスラブを用いた2次元フォトニック結晶合分波器はSiスラブを用いたものよりも光の伝播損失が大きい、という欠点を有する。
【0011】
また、複数の波長の光を合波・分波するための2次元フォトニック結晶合分波器において、今後更にチャネルの数を増加させるために、点状欠陥共振器同士の共振波長の間隔は1nm以下にすることが求められている。そのためには、1nmよりも高い精度で共振波長を制御する必要がある。しかし、非特許文献1の方法では、酸化及びエッチングの操作を1回行うだけで共振波長が少なくとも2.1nm変化してしまうため、所望の要件を満たすことができない。
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、GaAsを材料とするものよりも光の伝播損失が小さい、共振器を備えた2次元フォトニック結晶を製造することができ、共振器の共振波長を容易に制御することができる方法を提供することである。特に1nmよりも小さい変化量で共振波長を制御することができる、2次元フォトニック結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために成された本発明に係る2次元フォトニック結晶製造方法の第1の態様のものは、Siから成るスラブに周期的に配置された空孔と、該周期の欠陥を点状に設けて成る点状欠陥共振器と、を有する2次元フォトニック結晶を製造する方法において、
水に前記スラブの表面を晒す操作と、それにより該表面に形成された酸化膜をフッ化水素水溶液により除去する操作を、所定の回数だけ繰り返す減厚工程を有することを特徴とする。
【0014】
本発明に係る2次元フォトニック結晶製造方法の第2の態様のものは、第1の態様と同様の、Siから成るスラブ、空孔及び点状欠陥共振器を有する2次元フォトニック結晶を製造する方法において、
過酸化水素に前記スラブの表面を晒す操作と、それにより該表面に形成された酸化膜をフッ化水素水溶液により除去する操作を、所定の回数だけ繰り返す減厚工程を有することを特徴とする。
【発明の実施の形態及び効果】
【0015】
(1)第1の態様の2次元フォトニック結晶製造方法
本発明の2次元フォトニック結晶の製造方法について、図1及び図2を用いて説明する。まず、図1に斜視図で示すように、Siから成るスラブ(以下、Siスラブ11と呼ぶ)に周期的に空孔12を形成すると共に、この周期の欠陥を点状に設ける(点状欠陥13)。波長合分波器を作製する場合には、点状欠陥13の近傍に、周期の欠陥を線状に設けることにより導波路14を形成する。なお、図1の点状欠陥13には3個の空孔12を設けないことにより形成したドナー型クラスタ欠陥を示したが、もちろん、これ以外の形状の点状欠陥を形成してもよい(点状欠陥の例は特許文献1及び2に多数示されている)。
【符号の説明】
【0016】
これら空孔12、点状欠陥13及び導波路14の形成工程には、特許文献1及び2に記載の、従来の2次元フォトニック結晶の製造方法をそのまま用いることができる。例えば、Siスラブ11上にレジスト15を塗布し(図2(a-1))、空孔12、点状欠陥13及び導波路14の配置に対応したパターンを露光及び現像し(a-2)、選択イオンエッチング(RIE)法を用いてレジスト15のパターンに応じた形状にSiスラブ11をエッチングして、Siスラブ11に空孔12及び点状欠陥13及び導波路14を形成する(a-3)。その後レジスト15を除去する(a-4)。
【0017】
ここまでの工程により既に2次元フォトニック結晶は形成されているが、点状欠陥共振器の共振波長は、Siスラブ11の厚さの誤差、点状欠陥共振器の格子点からのずれや形状(大きさを含む)の誤差等により、共振波長は設計値からわずかにずれている。そこで、減厚工程によりSiスラブ11の厚さを薄くすることにより共振波長を微調整する。以下、減厚工程について詳しく説明する。
まず、空孔及び点状欠陥が形成されたSiスラブ11を水に晒す(図2(b))。これにより、Siスラブ11の表面(空孔12の内壁を含む)付近のみが酸化して、SiO2から成る酸化膜16が形成される(c)。酸化膜16はわずかな時間で形成され、その後は酸化膜16自身がSiの酸化の妨げとなるため、それ以上厚さが増加することはない。後述の実験から、この時スラブの両面に形成される酸化膜16の厚さは、両面分を合わせて0.11nm、片面あたりではその半分と見積もられる。
次に、酸化膜16が形成されたSiスラブ11をフッ化水素(HF)水溶液(フッ酸)に晒す(d)。フッ酸はSiO2を溶解させる一方でSiは溶解させないため、この操作によりSiスラブ11から酸化膜16が除去される(e)。
【0018】
従って、(b)~(e)の操作(以下、「単位減厚操作」と呼ぶ)を1回行うことにより、Siスラブ11の厚さは0.11nm(スラブの両面からそれぞれ、その半分ずつ)だけ減少する。それと共に空孔12の内径も増加する。これにより、例えば1.55μm帯の波長の光を合波・分波する2次元フォトニック結晶合分波器では、単位減厚操作を1回行う前と比較して、共振波長を0.39nmだけ短波長側にシフトさせることができる。
【0019】
更に、単位減厚操作を繰り返し行うことにより、この操作を1回行った時のシフト量(上記の例では0.39nm)を単位として、その整数倍だけ共振波長をシフトさせることができる。
【0020】
スラブ表面を水に晒す際は、スラブを液体の水に浸漬してもよいし、スラブ表面に液体の水を散布してもよい。あるいは、スラブ表面を水蒸気に晒してもよい。
【0021】
スラブの両面のうちの一方のみを水に晒すことにより、スラブの両面を水に晒した場合の半分の厚さだけスラブをエッチングすることができるため、更に細かい波長制御をすることができる。
【0022】
(第1の態様の2次元フォトニック結晶製造方法の効果)
第1の態様の2次元フォトニック結晶製造方法では、GaAsを材料とする2次元フォトニック結晶よりも光の伝播損失の小さいSiスラブを材料とする2次元フォトニック結晶に対して上記単位減厚操作を繰り返し行うことで、Siスラブの厚さを微調整できるようになり、得られる共振波長の制御ができるようになった。
波長分割多重通信の主力となる1.55μm帯の波長の光に対する2次元フォトニック結晶合分波器において、0.39nmを単位として共振波長を制御することができ、共振波長の設計において非常に有効な結果を得ることが出来る。
【0023】
Siスラブを構成するSi単結晶の(100)面の1層の厚さは0.135nmである。それに対して本発明における1回の酸化膜形成及び除去操作によりスラブの片面から除去される酸化膜の厚さは0.055nmであり、Si単結晶の約0.4層分に過ぎない。これは、Si単結晶の1層の中にあるSi原子の一部(約40%)だけが除去されていることを意味する。
仮に、Si単結晶を1層単位で除去するならば、1.55μm帯の2次元フォトニック結晶合分波器ではほぼ1nm(0.975nm)という粗い単位でしか共振波長を制御することはできない。それに対して本願発明では、1層に満たない厚さだけスラブを除去することにより共振波長の精密制御が可能になった。
【0024】
(2)第2の態様の2次元フォトニック結晶製造方法
第1の態様では水を酸化剤としていたのに対して、第2の態様の2次元フォトニック結晶製造方法は、第1の態様における水の代わりに、酸化剤として過酸化水素を用いる。それ以外の点は第1の態様の2次元フォトニック結晶製造方法と同様である。
過酸化水素は水よりも強い酸化作用を有するため、1回の酸化及び除去処理により減厚されるSiスラブの厚さは約0.86nm(スラブの片面からは0.43nm除去)であり、第1の態様の場合よりも多い。この1回の除去により、共振波長は、例えば1.55μm帯では約3nm短波長側へ変化する。従って、第2の態様では第1の態様よりも共振波長の調整精度は粗くなる。しかし、第2の態様による減厚工程を用いることにより、第1の態様と同様に、光の伝搬効率の高い、Siをスラブに用いた2次元フォトニック結晶を製造できる。また、スラブを減厚するべき量が多い場合、予備工程として第2の態様による減厚工程を行った後に第1の態様による減厚工程で厚さの微調整を行うことにより、減厚工程の作業時間を短縮することができる。
【0025】
(3)複数の点状欠陥共振器に対する共振波長の個別制御
次に、複数の点状欠陥共振器を設けた2次元フォトニック結晶を製造する方法において、各点状欠陥共振器の共振波長を個別に制御することについて説明する。
まず、上述と同様の方法により2次元フォトニック結晶を作製する。その際、2次元フォトニック結晶には複数の点状欠陥共振器131、132、...を設けておく(図3(a))。この段階では、点状欠陥共振器131、132、...の共振波長は全て同じ値である。
【0026】
次に、各点状欠陥共振器の共振波長をそれぞれ異なる所定の値に変化させるために、以下の操作を行う。まず、操作対象の点状欠陥共振器及びその近傍のスラブ表面のみを酸化剤(水又は過酸化水素)に晒す。例えば、酸化剤の液滴を、キャピラリの先端に付着させた状態でわずかにスラブ表面に接触させると、液滴自体は表面張力によりキャピラリ先端に付着したままで、液滴が接触したスラブ表面の一部分のみを酸化させることができる。なお、液滴がスラブ表面に移動して表面張力で拡がることを防ぐために、予め化学処理によりスラブ表面を疎水性にしておくとよい。このキャピラリを用いた方法では、例えば点状欠陥共振器同士の間隔が50μm程度である場合には、内径15μm程度のキャピラリを用いることにより、隣接する点状欠陥共振器が酸化剤に晒されることなく、その点状欠陥共振器の周囲のみ酸化膜を形成することができる。次に、フッ酸を用いて酸化膜を除去する。フッ酸はSiとは反応せず酸化膜のみを溶解させるため、操作対象の点状欠陥共振器以外の点状欠陥共振器がフッ酸に晒されても差し支えはない。
【0027】
この酸化膜の形成及び除去の操作を1回行うことにより、操作対象の点状欠陥共振器の共振波長は所定の値だけ短波長側に変化する。更に、この形成及び除去の操作を繰り返し行う。その操作回数の違いにより、各点状欠陥共振器の共振波長をそれぞれ異なる所定値に調整することができる。
【0028】
ここまでは、同じ共振波長を有する点状欠陥共振器131、132、...に対して、各点状欠陥共振器付近のみを減厚する、という工程を説明した。このような工程は、異なる共振波長を有する点状欠陥共振器に対しても行うことができる。例えば、図3(b)に示すように、スラブ11内の複数の禁制帯領域111、112...にそれぞれ異なる周期a1、a2...で空孔12を配列し、各禁制帯領域に点状欠陥共振器131、132...と同じ形状の点状欠陥共振器131’、132’...を形成した場合、各点状欠陥共振器131’、132’...の共振波長はそれぞれ異なる値になる。これらの点状欠陥共振器131’、132’...に対してその付近のみを減厚する工程を所定の回数だけ行うことにより共振波長を所定値に調整することができる。
この例の場合には、所定値とは異なる共振波長の点状欠陥共振器を作製したうえで減厚工程により共振波長を変化させることができる。また、まず所定値に近い共振波長の点状欠陥共振器を作製したうえで、共振波長を微調整するために減厚工程を行ってもよい。
【実施例1】
【0029】
本発明に係る2次元フォトニック結晶製造方法の第1の態様の一実施例(第1実施例)を、図4及び前出の図1~図2を用いて説明する。まず、以下のように、母体となる2次元フォトニック結晶合分波器を作製した。Siから成るスラブ11に、径が0.26μmである空孔12を三角格子状に多数形成した。但し、直線状に隣接する3つの格子点には空孔12を設けないことにより、点状欠陥共振器13を形成した。また、点状欠陥共振器13から4列分だけ離れた格子点に空孔12を設けない導波路14を形成した。本実施例では、三角格子の周期が0.41μmであるもの(サンプル1)と、0.42μmであるもの(サンプル2)を作製して用いた。
【0030】
この母体の2次元フォトニック結晶合分波器に対して、水を用いた酸化処理を含む前述(図2(b)~(e)に図示)の単位減厚操作を繰り返し行った。その際、単位減厚操作を1サイクル行う毎に、導波路14内に波長1.55μm帯内で連続的な波長スペクトルを有する赤外線を伝播させ、点状欠陥共振器13において共振する光の波長を測定した。
【0031】
その共振波長の測定結果を図4に示す。図中の三角印はサンプル1の測定結果を、丸印はサンプル2の測定結果を、それぞれ示し、共にエッチング操作前の共振波長からのシフト量を示す。サンプル1とサンプル2はシフト量がよく一致している。これらの測定値はグラフ上で負の傾きを持った直線で近似することができ、その傾きから、単位減厚する毎に、共振波長が短波長側に約0.39nmシフトしていることがわかる。すなわち単位減厚操作の回数により共振波長のシフト量を制御することができる。この共振波長のシフト量から、単位減厚操作1回あたりのSiスラブのエッチング量は、スラブの両面それぞれからのエッチング量を合わせて0.11nmと見積もられる。
【実施例2】
【0032】
本発明に係る2次元フォトニック結晶製造方法の第2の態様の一実施例(第2実施例)を、図5~図6及び前出の図2を用いて説明する。第1実施例と同様に母体の2次元フォトニック結晶合分波器を作製し、過酸化水素水溶液を用いた酸化処理を含む単位減厚操作を繰り返し行った。なお、母体の2次元フォトニック結晶合分波器は、三角格子の格子定数が0.41μmであって径が0.26μmであるもの(サンプル1)と、格子定数が0.42μmであって径が0.26μmであるもの(サンプル2)を作製して用いた。また、共振波長の測定は、単位減厚操作の終了時(図2(e))と共に、単位減厚操作の途中段階である酸化膜の形成後、除去前の時(図2(c))にも行った。
【0033】
単位減厚操作の回数と共振波長の関係を図5に示す。図中の四角印は単位減厚操作終了時の測定結果を、三角印は酸化膜形成後の測定結果を、それぞれ示す。ここで、酸化膜形成後の測定値は単位減厚操作の回数を半整数として示した。単位減厚操作終了時及び酸化膜形成後の測定結果は共に、グラフ上で負の傾きを持った同じ直線で近似することができる。その傾きから、単位減厚操作する毎に、サンプル1では3.07nm、サンプル2では3.44nm、共振波長が短波長側に変化している。この共振波長のシフト量から、単位減厚操作1回あたりのSiスラブのエッチング量は、サンプル1、2共に、スラブの両面それぞれからのエッチング量を合わせて0.86nm((100)面の6層分)であることがわかる。
【0034】
スラブの表面に酸化膜が形成された時は、酸化膜(SiO2)がSiよりも小さい屈折率を有するため、スラブの厚さの実効値は酸化膜の形成前よりは小さく、酸化膜の除去後よりは大きくなると考えられる。そのため、酸化膜形成時の共振波長は、酸化膜形成前の共振波長と酸化膜除去後の共振波長の間の値になると考えられる。
【0035】
図6に、第2実施例において点状欠陥共振器から出力された光の強度のグラフを示す。ここでは、図5のデータ1点毎にそれぞれ1個ずつ得られた強度ピークを、全データ点について重畳して示した。ピーク毎に示した四角印及び三角印はそれぞれ、単位減厚操作終了時及び酸化膜形成後における測定結果であることを示す。ピークの半値幅を用いて点状欠陥共振器のQ値を見積った結果、いずれのピークにおいても約4400であった。このことから、単位減厚工程を繰り返しても共振器の劣化は生じないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る2次元フォトニック結晶製造方法の一実施形態において、減厚工程の前に作製される2次元フォトニック結晶の一例を示す斜視図。
【図2】本発明に係る2次元フォトニック結晶製造方法の一実施形態を示す縦断面図。
【図3】複数の点状欠陥共振器を設けた場合の共振波長の制御方法を説明するための、2次元フォトニック結晶の平面図。
【図4】第1実施例における単位減厚操作の回数と共振波長のシフト量の関係を測定した結果を示すグラフ。
【図5】第2実施例における単位減厚操作の回数と共振波長のシフト量の関係を測定した結果を示すグラフ。
【図6】第2実施例において点状欠陥共振器から出力された光の強度のグラフ。
【0037】
11…Siスラブ
111、112、113、...…禁制帯領域
12…空孔
13、131、132、133...、131’、132’、133’...…点状欠陥共振器
14…導波路
15…レジスト
16…酸化膜
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5