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明細書 :位相シフト法による形状測定方法及び形状測定装置、並びに複素振幅計測方法及び複素振幅計測装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5258052号 (P5258052)
公開番号 特開2010-256192 (P2010-256192A)
登録日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発行日 平成25年8月7日(2013.8.7)
公開日 平成22年11月11日(2010.11.11)
発明の名称または考案の名称 位相シフト法による形状測定方法及び形状測定装置、並びに複素振幅計測方法及び複素振幅計測装置
国際特許分類 G01B   9/021       (2006.01)
G01B  11/24        (2006.01)
FI G01B 9/021
G01B 11/24 D
請求項の数または発明の数 10
全頁数 18
出願番号 特願2009-107207 (P2009-107207)
出願日 平成21年4月25日(2009.4.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年3月30日 社団法人応用物理学会発行の「2009年(平成21年)春季 第56回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集 No.3」に発表
審査請求日 平成24年3月28日(2012.3.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】茨田 大輔
【氏名】谷田貝 豊彦
【氏名】菊地 裕一
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】有家 秀郎
参考文献・文献 特開2006-116028(JP,A)
特表2003-527577(JP,A)
特開2000-2516(JP,A)
特開2005-345246(JP,A)
特表2002-503134(JP,A)
Yuichi Kikuchi, Daisuke Barada, Tomohiro Kiire, Toyohiko Yatagai,"Doppler phase-shifting digital holography and its application to surface shape measurement",OPTICS LETTERS,2010年 5月15日,Vol.35, No.10,pages 1548-1550
調査した分野 G01B 9/00-11/30
IEEE Xplore
Optics Info Base
特許請求の範囲 【請求項1】
同一光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡とに照射し、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせ、得られた干渉縞データから被測定物の形状を測定する方法であって、
前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせ、該相対運動によって変化した前記干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記被測定物の3次元形状を計測することを特徴とする形状測定方法。
【請求項2】
前記被測定物と前記参照鏡との相対運動は、前記被測定物又は参照鏡を前記照射光の光軸と平行に移動させて生じさせる、請求項1に記載の形状測定方法。
【請求項3】
前記被測定物の3次元計測は、前記干渉縞の強度分布に対してドップラー位相シフト法を適用し、得られた一次光の複素振幅を抽出して行う、請求項1又は2に記載の形状測定方法。
【請求項4】
前記干渉縞のサンプリング周波数は、前記物体光と前記参照光の周波数差の2倍超とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の形状測定方法。
【請求項5】
光源と、該光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡とに照射する分岐装置と、前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせる駆動装置と、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせて干渉縞を形成する重畳装置と、前記干渉縞を連続的に撮像して連続撮像データを得る撮像装置と、前記連続撮像データから前記被測定物の3次元形状を計算する計算装置とを有し、
前記計算装置は、前記相対運動によって前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記被測定物の3次元形状を計算することを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、前記被測定物又は参照鏡を前記照射光の光軸と平行に移動させて相対運動を生じさせる、請求項5に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記計算装置は、前記干渉縞の強度分布に対してドップラー位相シフト法を適用し、得られた一次光の複素振幅を抽出して前記被測定物の3次元形状を計算する、請求項5又は6に記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記撮像装置は、前記干渉縞のサンプリング周波数を前記物体光と前記参照光の周波数差の2倍超とする、請求項5~7のいずれか1項に記載の形状測定装置。
【請求項9】
同一光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡とに照射し、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせ、得られた干渉縞データから前記物体光の複素振幅を計測する方法であって、
前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせ、該相対運動によって変化した前記干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記物体光の複素振幅を計測することを特徴とする複素振幅計測方法。
【請求項10】
光源と、該光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡に照射する分岐装置と、前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせる駆動装置と、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせて干渉縞を形成する重畳装置と、前記干渉縞を連続的に撮像して連続撮像データを得る撮像装置と、前記連続撮像データから前記物体光の複素振幅を計算する計算装置とを有し、
前記計算装置は、前記相対運動によって前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記物体光の複素振幅を計算することを特徴とする複素振幅計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法による形状測定方法、形状測定装置、複素振幅計測方法及び複素振幅計測装置に関する。更に詳しくは、外乱等が生じた場合であっても、被測定物の形状を良好に計測できる形状測定方法と装置、及び複素振幅計測を精度よく行うことができる方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
位相シフト干渉法は、被写体(被測定物ともいう。)で反射した物体光と、参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせ、生じた干渉縞をCCDカメラ等の撮像装置で記録し、取得したデータの解析法として位相シフト法を用い、3次元物体の形状を計測する技術である。位相シフト法は、参照光の位相を一定量ずつ変化させて3枚以上の干渉縞画像を取得し、計算により被測定物の複素振幅のみの情報を抽出する技術であり、位相差から物体の形状を算出することができる。また、参照光を位相の異なる3つ以上の領域に分割することによって、1枚の取得画像から被測定物の情報を得ることもできる。
【0003】
一方、デジタルホログラフィは、被測定物で反射した物体光と、参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせ、生じた干渉縞をCCDカメラ等の撮像装置で記録し、コンピュータを用いて回折光をシミュレートして3次元物体形状を取得する技術である。しかしながら、シミュレートされた回折光には、1次光の他に、不要な0次光と-1次光も含まれており、それらの除去が必要である。ここで、0次光は参照光成分であり、1次光は被測定物からの物体光成分、-1次光はその共役波の成分である。
【0004】
近年、物体の変位測定や形状測定等の3次元計測技術として、デジタルホログラフィに位相シフト法を適用した位相シフトデジタルホログラフィが注目されている。従来の位相シフト干渉法及び位相シフトデジタルホログラフィは、可動ステージに搭載された参照鏡を微小移動させ、参照光の位相をπ/2ずつ変化させて、3枚以上の干渉縞画像から1枚の被写体像又はデジタルホログラムを作成する方法がとられている。なお、位相シフト干渉法とデジタルホログラフィの違いは、被写体とカメラを結像関係にするかしないかである。
【0005】
下記非特許文献1には、位相シフト干渉法を利用して物体の形状を測定する技術が提案されている。図7は同文献に記載された実験構成図である。図7中の符号M1は、形状が平面から若干変形している被測定物を表し、符号M2は、平面形状からなる参照鏡を表している。図7に示す測定装置では、参照鏡M2の平面形状を基準として、被測定物M1の形状を測定する。図7において、レーザ(Laser)から出た光は2つのレンズL1,L2で拡大され、ビームスプリッタ(BS)で2つの光に分けられる。一方の光は、ビームスプリッタ(BS)で反射して被測定物M1を照射し、他方の光は、ビームスプリッタ(BS)を透過して参照鏡M2に入射する。
【0006】
被測定物M1で反射した光(この光を「物体光」という。)は元の光路を戻り、その一部はビームスプリッタ(BS)とレンズL3を透過し、フォトディテクター(Photo Detector)に入射する。このとき、レンズL3は、被測定物M1の像をフォトディテクター(Photo Detector)上に結像する。他方、参照鏡M2で反射した光(この光を「参照光」という。)も元の光路を戻り、その一部はビームスプリッタ(BS)で反射し、上記物体光と同様にレンズL3を透過し、フォトディテクター(Photo Detector)に入射する。このとき、物体光と参照光とは重なり合い、図8に例示するような干渉縞を形成する。もし、被測定物M1も参照鏡M2と同じ平面であるならば、形成される干渉縞は、等間隔(例えばピッチP)で直線となる。しかしながら、図8に示す干渉縞は、δ(変形量)で表しているように若干変形しているのが分かる。この変形量から物体の形状誤差を算出できる。
【0007】
肉眼で形状誤差を測定するときは、先ず縞を測定する。平均ピッチPと、縞の密度を表す平均空間周波数f(単位長さあたりの干渉縞の本数)との関係は下記式(a)と書ける。ここで、被測定物M1が平面からεだけ変形しているものとすると、被測定物M1で反射した物体光は、参照光に対して2εに相当する量だけ位相が変位したものとなる。そのときの物体光と参照光の位相差をφとする。干渉縞がちょうど1縞変位すると、物体光と参照光の位相差φは2πとなる。このとき、干渉縞の変形量δを用いて位相差φを表すと、下記式(b)となる。一方、レーザ光の波長をλとすると、変形量εと位相差φとの関係は、下記式(c)と書ける。つまり、干渉縞から被測定物M1の変形量δを測定し、位相差φが求まれば、変形量εが得られ、被測定物M1の形状計測を行うことができるのである。
【0008】
【数1】
JP0005258052B2_000002t.gif

【0009】
従来の形状計測では、画像処理と演算処理とによって自動的に位相差φを求めるようにしている。例えば下記非特許文献1では、干渉縞の強度分布は下記式(1’)で表すことができ、干渉縞の強度分布を下記式(2’)で示すフーリエ変換演算すると、干渉縞の空間周波数fと位相差φとを含む情報が得られるとされている。これに、下記式(5’)(6’)の演算を施すと、位相差φが求められ、これより上記式(c)を用いて変形量εが求められる。
【0010】
【数2】
JP0005258052B2_000003t.gif

【0011】
なお、外部からの振動や被測定物付近の空気のじょう乱の影響を受け難いとされる耐振動型干渉計に関しては、下記特許文献1~3等が提案されている。
【0012】
例えば、下記特許文献1は、光干渉計を用いた測定において、外乱が測定値に与える誤差を定量的に評価するとともに、その結果に基づいて測定誤差が許容値以下となるような装置を提供するものである。具体的には、外乱の測定装置およびその測定値を用いた測定装置は、干渉光学系において、物体光と参照光との間に鋸波状に変化する位相差を与え、その結果干渉光強度が正弦波的に変化することを利用して位相差を測定し、その位相差を一定の周波数でサンプリングすることにより、外乱が測定値に与える誤差量の周波数特性を評価することを可能とするものである。この測定装置は、干渉光を2光束に分け、それぞれの光束で測定物の異なる部分に対応する位置に開口を設け、開口を通過した干渉光同士の位相差を測定することにより、外乱が測定値に与える誤差量の空間的分布を評価することを可能としている。そして、その結果に基づき、測定精度を達成するために必要な鋸波状位相差の周波数を決定している。
【0013】
また、下記特許文献2は、非球面レンズの面形状や面精度の測定精度を向上させる干渉計に関するものである。具体的には、同一光源から出射された可干渉光束を参照波と被検波とに分ける手段と、上記参照波に被検物の被測定面に相当する波面を形成する波面形成手段と、上記参照波と被検波とを重畳させる重畳手段と、該重畳手段を介して形成される干渉縞を観測する撮像手段と、該撮像手段の出力データを取り込んで上記被測定面の面形状や面精度を算出する演算手段と、を備えた干渉計において、上記波面形成手段は、被測定面へ照射される参照波の位相を任意に変調可能な位相制御素子を有するとともに、上記演算手段が、上記位相制御素子による位相変調量に基づいて上記撮像手段の出力データを解析するとした干渉計が提案されている。
【0014】
また、下記特許文献3は、高精度の測定結果が要求される光学部材等の製作現場においてその表面形状の測定に好適な耐振動型干渉計に関するものである。具体的には、可干渉光を基準板上の基準面と被検体上の被検面に照射し、該基準面からの参照光と該被検面からの物体光とによる干渉縞を観察面上に形成する干渉縞形成手段と、前記観察面上の所定位置に配された、干渉縞像の局部的な光量を検出する光検出手段と、前記参照光と前記物体光との光路差を調整するように、前記干渉縞形成手段の光路中のいずれかの部材に所定の振動を付与する振動付与手段と、前記光検出手段により検出された光量の変化が小さくなるように前記振動付与手段の振動を制御する制御手段を備えてなる耐振動型干渉計が提案されている。
【先行技術文献】
【0015】

【非特許文献1】Guanming Lay and Toyohiko Yatagai, “ Use of the fast Fourie transform method for analyzing linear and equispaced Fizeau fringes”, Applied Optics, Vol.33, No.25, 5935-5940(1994)
【0016】

【特許文献1】特開2004-150965号公報
【特許文献2】特開2001-174233号公報
【特許文献3】特開平8-114412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記非特許文献1に記載の従来技術では、外乱振動や空気の揺らぎがあると、レーザからフォトディテクターまでの光路長が物体光と参照光との間で相対的に変化する。そうした変化によって干渉縞が変動すると、その干渉縞の変動が、形状変形に因るものであるのか外乱に因るものであるのか区別できず、測定精度が著しく低下する。そのため、高精度測定には、外乱を遮断するために、高価で大型の装置が必要となり、操作性も悪化するという問題がある。
【0018】
また、干渉縞の本数が多いほど干渉縞のピッチPを精度良く求めることができるので、フーリエ展開で求められる空間周波数fの精度が高まる。しかし、フォトディテクターで取り込まれる画像の画素数は限定されるので、1画素あたりの分解能は限られる。そのため、求められる位相差φの計算上の分解能は低下してしまう。このように、測定精度は、フォトディテクターの画素数で限定されてしまうという難点がある。
【0019】
また、可動ステージを一定量ずつ移動させる従来の位相シフト法では、光学系の微小振動等の外乱により、測定精度の低下や時間遅延が発生するため、動的変化を伴う物体の測定が困難であるという問題も生じる。
【0020】
また、可動ステージを用いず、複数枚の画像を1枚の画像から空間的に分割して得る位相シフト法では、分割された画像の画素数が減少するため、分解能が低下する。
【0021】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、外乱振動や空気の揺らぎがある場合であっても、高い測定精度で被測定物の形状測定を可能にする形状測定方法及び形状測定装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、ドップラー効果を利用した位相シフト法による複素振幅計測方法及び複素振幅計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するための本発明に係る形状測定方法は、同一光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡とに照射し、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせ、得られた干渉縞データから被測定物の形状を測定する方法であって、前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせ、該相対運動によって変化した前記干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記被測定物の3次元形状を計測することを特徴とする。
【0023】
上記本発明に係る形状測定方法において、前記被測定物と前記参照鏡との相対運動は、前記被測定物又は参照鏡を前記照射光の光軸と平行に移動させて生じさせる。
【0024】
上記本発明に係る形状測定方法において、前記被測定物の3次元計測は、前記干渉縞の強度分布に対してドップラー位相シフト法を適用し、得られた一次光の複素振幅を抽出して行う。
【0025】
上記本発明に係る形状測定方法において、前記干渉縞のサンプリング周波数は、前記物体光と前記参照光の周波数差の2倍超とする。
【0026】
また、本発明に係る形状測定装置は、光源と、該光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡とに照射する分岐装置と、前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせる駆動装置と、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせて干渉縞を形成する重畳装置と、前記干渉縞を撮像する撮像装置と、前記連続撮像データから前記被測定物の3次元形状を計算する計算装置とを有し、前記計算装置は、前記相対運動によって前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記被測定物の3次元形状を計算することを特徴とする。
【0027】
上記本発明に係る形状測定装置において、前記駆動装置は、前記被測定物又は参照鏡を前記照射光の光軸と平行に移動させて相対運動を生じさせる。
【0028】
上記本発明に係る形状測定装置において、前記計算装置は、前記干渉縞の強度分布に対してドップラー位相シフト法を適用し、得られた一次光の複素振幅を抽出して前記被測定物の3次元形状を計算する。
【0029】
上記本発明に係る形状測定装置において、前記撮像装置は、前記干渉縞のサンプリング周波数を前記物体光と前記参照光の周波数差の2倍超とする。
【0030】
また、本発明に係る複素振幅計測方法は、同一光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡とに照射し、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせ、得られた干渉縞データから前記物体光の複素振幅を計測する方法であって、前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせ、該相対運動によって変化した前記干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記物体光の複素振幅を計測することを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る複素振幅計測装置は、光源と、該光源から出射した可干渉光束を分岐して被測定物と参照鏡に照射する分岐装置と、前記被測定物と前記参照鏡との間に相対運動を生じさせる駆動装置と、前記被測定物で反射した物体光と前記参照鏡で反射した参照光とを重ね合わせて干渉縞を形成する重畳装置と、前記干渉縞を連続的に撮像して連続撮像データを得る撮像装置と、前記連続撮像データから前記物体光の複素振幅を計算する計算装置とを有し、前記計算装置は、前記相対運動によって前記物体光と前記参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、該位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから前記物体光の複素振幅を計算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、被測定物と参照鏡との間に相対運動を生じさせる駆動装置により、その相対運動によって変化した干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、物体光と参照光の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得る。この位相シフトスペクトルは、ある位相シフト量で位相シフト法を行った場合に対するそれぞれの信号強度を示し、外乱の影響を受けない位相シフト量が存在する。その結果、その位相シフトスペクトルと、得られた連続撮像データとから、被測定物の3次元形状や物体光の複素振幅を計測することができる。こうした計測手段によれば、外乱振動や空気の揺らぎがある場合であっても、高い測定精度での計測が可能になる。
【0033】
特に本発明では、被測定物と参照鏡とを相対運動させることにより、物体光及び/又は参照光の角周波数をドップラー効果により変調させることで位相シフトを発生させ、物体光と該参照光の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルから1次光のみの情報を抽出する位相シフト法を適用している。すなわち、物体光及び/又は参照光の位相を変化させて得た干渉縞の連続撮像データから1次光の複素振幅のみを抽出できるので、シミュレートされた回折光に従来含まれていた0次光や-1次光を除去し、外部振動が再生像に及ぼす影響を極力なくすことができる。具体的には、例えば参照鏡を移動させて位相シフトを発生させた場合には、0次光と-1次光とを除去した再生像を得ることができ、光学系への振動により位相シフトが発生した場合には、-1次光と1次光の両成分が足し合わされた再生像となる。こうした本発明に係る位相シフト法を被測定物の3次元計測に用いれば、外乱振動や空気の揺らぎがある場合であっても、測定精度を著しく向上させることができ、また、高価な大型装置も不要となり、操作性の悪化という問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る光学系を示す概略図である。
【図2】干渉縞の強度分布から位相シフトスペクトルを得るまでの説明図である。
【図3】参照鏡を一定速度で移動させたときの位相シフトスペクトルである。
【図4】光学系を振動させたときの位相シフトスペクトルである。
【図5】図3で得られた再生画像である。
【図6】図4で得られた再生画像である。
【図7】非特許文献1に記載された実験構成図である。
【図8】図7の実験系で得られた干渉縞の例である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る形状測定方法及び装置、並びに複素振幅計測方法及び装置について、図面を参照しつつ詳しく説明する。

【0036】
[形状測定方法及び形状測定装置]
本発明に係る形状測定方法は、図1に示すように、同一光源1から出射した可干渉光束11を分岐して被測定物7と参照鏡8とに照射し、被測定物7で反射した物体光12と参照鏡8で反射した参照光13とを重ね合わせ、得られた干渉縞データから被測定物7の形状を測定する方法であって、被測定物7と参照鏡8との間に相対運動を生じさせ、その相対運動によって変化した前記干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、物体光12と参照光13の周波数がドップラー効果により変調することにより物体光12と参照光13の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、その位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから被測定物7の3次元形状を計測する。

【0037】
また、本発明に係る形状測定装置1は、図1に示すように、光源1と、光源1から出射した可干渉光束11を分岐して被測定物7と参照鏡8とに照射する分岐装置6と、被測定物7と参照鏡8との間に相対運動を生じさせる駆動装置20と、被測定物7で反射した物体光12と参照鏡8で反射した参照光13とを重ね合わせて干渉縞を形成する重畳装置6と、前記干渉縞を連続的に撮像して連続撮像データを得る撮像装置10と、前記連続撮像データから被測定物7の3次元形状を計算する計算装置21とを有する。そして、計算装置21は、相対運動によって物体光12と参照光13の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光12と参照光13の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得て、その位相シフトスペクトルと前記連続撮像データとから被測定物7の3次元形状を計算する。

【0038】
(形状測定)
図1に示す形状測定装置30を用いて、形状測定に係る本発明の方法と装置について詳しく説明する。

【0039】
光源1の種類は特に限定されないが、例えば波長632.8nmのHe-Neレーザ等が用いられる。レーザ光源1を出射した可干渉光束11は、減光(Neutral Density, ND)フィルター2を透過した後、レンズ3、空間フィルター4及びレンズ5で構成されたコリメータを経て、拡大された平行光となる。この平行光は、ビームスプリッタ6(分岐装置6ともいう。)によって2つの光に分光される。

【0040】
分光された一方の光は紙面の上方向に90°反射して被測定物7に向かい、他方の光はそのまま透過して参照鏡8に向かう。被測定物7に向かった光はその表面で反射して物体光12となる。一方、参照鏡8に向かった光もその表面で反射して参照光13となる。物体光12と参照光13は再びビームスプリッタ6に戻って重なり合う。重なり合った物体光12と参照光13は、干渉縞を形成し、紙面の下方向に向かい、連続撮像カメラ10(撮像装置ともいう。)で撮像される。

【0041】
この形状測定装置30において、光源1の種類はHe-Neレーザに限定されず、可干渉性の高いガスレーザや半導体レーザであってもよい。減光フィルター2や空間フィルター4はいずれも必要に応じて任意に設けられる。なお、空間フィルター4は、ゴースト光や反射光等の不要な光をカットするものである。物体光12と参照光13が重なり合うビームスプリッタ6は、分岐装置として機能するが、上記においては重畳装置としても機能する。

【0042】
図1の例では、駆動装置20を参照鏡8に設けているので、参照鏡8を被測定物7に対して相対的に移動させることで、ドップラー効果により参照光13の角周波数を変調している。なお、図1の例では、参照鏡8を移動させているが、被測定物7を移動させてもよい。駆動装置20としては、例えばDCモータを駆動源とする駆動装置、ピエゾ素子を駆動源とする駆動装置、ステッピングモータを駆動源とする駆動装置等を挙げることができる。

【0043】
この場合の相対運動は、被測定物7と参照鏡8のいずれか一方に駆動装置20を設けて移動させてもよいし、両方に駆動装置20を設けて両者を任意に移動させてもよい。また、その移動は、光軸と平行方向に移動させるものであれば、一定速度であっても、一定ではない不規則(不均一、ランダム)な速度であってもよい。被測定物7と参照鏡8を両方移動させる場合には、それぞれの速度を異なるようにすることが好ましい。こうした相対運動は、被測定物7や参照鏡8に取り付けられる駆動装置20で行われるが、前記の一定ではない不規則な速度は、その駆動装置20に由来する不規則性能であってもよい。

【0044】
形状計測の対象物である被測定物7は特に限定されないが、例えば平面鏡、凹面鏡、回折光学素子等を挙げることができる。好ましく適用できる被測定物7の形状や大きさとしては、例えば数ミリメートル角~数センチメートル角程度の大きさで、照明レーザ光の波長程度の凹凸表面を有するものが好ましい。なお、後述の実施例では、試験的に5百円硬貨を計測している。また、異なる波長をもつ複数のレーザ光で照明する多波長法などを組み合わせることにより、凹凸の測定範囲を調整することができる。

【0045】
参照鏡8は、その表面粗さが測定対象である被測定物7の表面凹凸よりも十分に小さな平面鏡を用いることが好ましい。

【0046】
連続撮像カメラ10(撮像装置10)は、コンピュータ21(計算装置21)に接続され、撮像された干渉縞データ(画像データ)を演算処理する。連続撮像カメラ10としては、高速撮像可能なCMOSカメラが好ましく用いられるが、それ以外のカメラであってもよく、特に限定されない。なお、連続撮像カメラ10の撮像速度については後述する。

【0047】
本発明では、被測定物7と参照鏡8との間に相対運動を生じさせる駆動装置20により、その相対運動によって変化した干渉縞の強度分布を連続的に撮像して連続撮像データを得るとともに、物体光12と参照光13の周波数がドップラー効果により変調することにより該物体光12と該参照光13の周波数差のスペクトルから位相シフト量に変換した位相シフトスペクトルを得る。この位相シフトスペクトルは、ある位相シフト量で位相シフト法を行った場合に対するそれぞれの信号強度を示し、外乱の影響を受けない位相シフト量が存在する。その結果、その位相シフトスペクトルと、得られた連続撮像データとから、被測定物7の3次元形状を計測することができる。また、同様にして、物体光12の複素振幅も計測することができる。こうした計測手段によれば、外乱振動や空気の揺らぎがある場合であっても、高い測定精度での計測が可能になる。

【0048】
(ドップラー位相シフト法)
次に、ドップラー位相シフト法について説明する。

【0049】
図1に示すように、被測定物7と参照鏡8に平面波を照射したとき、連続撮像カメラ10の撮像面上での物体光12の複素振幅Uと参照光13の複素振幅Uは、下式(1)(2)のようになる。

【0050】
【数3】
JP0005258052B2_000004t.gif

【0051】
ここで、A、φ、ω、A、φ、ωは、それぞれ、物体光12の振幅、位相、角周波数と、参照光13の振幅、位相、角周波数である。被測定物7が速度v=(vO,x,vO,y,vO,z)で動いている場合、ドップラー効果により周波数変調を受ける。そのとき、周波数は平面波の進む方向により異なると考えられる。物体光12の角周波数は、ドップラー効果により式(3)のように表せる。

【0052】
【数4】
JP0005258052B2_000005t.gif

【0053】
ここで、ω、c、v、kは、それぞれ、入射光の角周波数、光速、vの大きさ、kの大きさである。被測定物7の移動速度が光速に比べて十分小さい場合は式(4)となる。

【0054】
【数5】
JP0005258052B2_000006t.gif

【0055】
同様に、参照光13の角周波数は式(5)になる。

【0056】
【数6】
JP0005258052B2_000007t.gif

【0057】
ここで、v=(vR,x,vR,y,vR,z)は、移動させた参照鏡8の移動速度ベクトルである。この物体光12と参照光13の干渉縞を連続撮像カメラ10で連続記録すると、時間依存のデジタルホログラムは式(6)となる。

【0058】
【数7】
JP0005258052B2_000008t.gif

【0059】
これを時間フーリエ変換すると式(7)となる。式(8)はドップラー効果による位相シフトを含まない物体光12と参照光13の位相差、すなわち物体光12の波面の位相である。

【0060】
【数8】
JP0005258052B2_000009t.gif

【0061】
ここで、aとbはωに対する任意の関数であり、式(9)の関係がある。式(10)はドップラー効果による物体光12と参照光13の角周波数差である。

【0062】
【数9】
JP0005258052B2_000010t.gif

【0063】
ここで、物体光12と参照光13の周波数差Δω/2πが 連続撮像カメラ10のサンプリング周波数の1/2より小さいとき、ナイキストの定理より、上記式(7)の第二項は、第一項と第三項と分離できる。ここで、ω=ωのとき、第二項以外が0となるとすると、式(7)は式(11)となる。

【0064】
【数10】
JP0005258052B2_000011t.gif

【0065】
ここで、Aa(ω)とb(ω)-φは空間的に一定であるため、上記式(11)によって物体光12の複素振幅を抽出できる。

【0066】
このように、本発明で提案するドップラー位相シフト法によれば、参照光13の位相が任意に変化する場合においても適用可能である。外乱による物体光12と参照光13の結果的な位相差は、光のドップラー効果を考慮した位相シフトとしてみなされる。連続撮像カメラ10を用いると、振動の様子をとらえることによって、その中から一定量の位相シフト量成分である物体光12の複素振幅を抽出することができる。それゆえに、本発明で提案するドップラー位相シフト法によれば、振動に強い干渉計測の光学系に応用することができ、本発明に係る形状測定方法、装置及び位相計測方法、装置とすることができる。

【0067】
次に、位相シフトスペクトルを得るまでと、得られた位相シフトスペクトルから再生画像を得るまでのアルゴリズムを説明する。

【0068】
図2は、連続撮像カメラで撮像した干渉縞の強度分布から位相シフトスペクトルを得るまでの説明図である。図2(A)は、図1の装置を構成する連続撮像カメラ10で連続して高速撮影した干渉縞をコンピュータ21で解析し、得られた干渉縞強度の時間変化を表した図である。図2(A)で得られた干渉縞のある位置における強度を時間フーリエ変換すると、図2(B)に示す周波数スペクトルとして表すことができる。図2(B)で得られた周波数スペクトルを、「位相シフト量=-ドップラー効果による角周波数差Δω/サンプリング周波数」により位相シフト量に変換し、図2(C)に示す位相シフトスペクトルが得られる。

【0069】
こうして得られた位相シフトスペクトルに現れるピーク位置を検出し、連続撮影された画像の各ピクセルに対して下式(12)を適用することにより、位相シフトスペクトルのピーク位置が示す位相シフト量における1次光の複素振幅U’を抽出することができる。下式(12)において、Nはサンプリング数、Δtはサンプリング周期、φsはピーク位置が示す位相シフト量である。また、干渉縞強度を空間フーリエ変換することで得られる空間周波数パターンもドップラー効果で時間変化するので、空間周波数パターンにおける位相シフトスペクトルを求めてもよい。

【0070】
【数11】
JP0005258052B2_000012t.gif

【0071】
物体光12と参照光13との重ね合わせで生じる干渉縞は、イメージセンサである連続撮像カメラ10の撮像面上にデジタルホログラムとして記録される。記録されたデジタルホログラムの強度と位相パターンは、デジタルホログラムの複雑な回折パターンを計算することによって再生することができる。しかしながら、そのデジタルホログラムの回折パターンには、被測定物7の像の他に、0次光と共役像(-1次光)が含まれる。

【0072】
従来型の通常の位相シフトアルゴリズムでは、駆動装置20で参照鏡8を移動し、時間ごとに参照光13の位相を一定量ずつシフトさせ、得られる3枚以上の撮像データを用いて不必要な成分を除去している。既述の非特許文献1では、任意の位相シフト量における位相シフトアルゴリズムが提案されている。同文献で提案する方法では、光学系の振動や空気の流れなどの外乱によって位相シフト量が時間ごとに変化すると、誤差の原因になる。

【0073】
これに対し、本発明の方式では、駆動装置20によって被測定物7と参照鏡8とを相対的に移動させ(後述の実施例1では参照鏡8を移動している。)、光のドップラー効果を用いた位相シフトアルゴリズムによって不必要な成分を除去する。そのため、外乱に因る物体光12と参照光13の結果的な位相差は、光のドップラー効果を考慮した位相シフトとしてみなし、撮像装置10として高速連続撮像カメラを用いることにより、振動の様子を多くのデータに基づいてとらえることができる。その結果、位相シフトスペクトルから1次光の複素振幅のみを抽出することができ、0次光や-1次光等の外乱に起因した誤差データを除去したデータを抽出することができる。それゆえに、振動に強い干渉計測の光学系とすることができ、形状測定方法・装置として好適に利用できる。

【0074】
光学系への意図しない振動が加わることにより位相シフトが発生した場合には、-1次光と1次光の両成分が足し合わされた再生像となる。本発明に係る位相シフト法を被測定物の3次元計測に用いれば、外乱振動や空気の揺らぎがある場合であっても、測定精度を著しく向上させることができ、また、高価な大型装置も不要となり、操作性の悪化という問題も生じない。

【0075】
具体的には、例えば参照鏡8を相対運動させると、参照光13の光路長が時間とともに変化する。それに従い、参照光13と物体光12との位相差も変化する。干渉縞の強度を表す式は二次元画像のx,yばかりではなく、時間tの関数になる。このとき、参照鏡8がわずかに移動するたびに連続撮像カメラ10(フォトディテクター10)で干渉縞画像を撮影し、計算装置10(コンピュータ10)に取り込むようにすると、被測定物7上の各点からの物体光12の強度の周期的変化がコンピュータに入力される。

【0076】
被測定物7が平面ではなく、各点が変形している場合、被測定物7の中央部と周辺部それぞれで反射した物体光12がフォトディテクター10に届く時間は異なる。そのため、光の位相が異なる。このとき、各点の干渉強度の周期的変動を上記式(7)で表すような時間フーリエ変換をコンピュータ10で行い、さらにその結果を回折積分演算すると、元の物体光12の強度分布と位相が求められる。つまり、ホログラムによる画像再生と同様の機能を得ることになる。

【0077】
次に、外乱の周波数成分と連続撮像装置のフレームレート(サンプリング周波数)との関係について説明する。

【0078】
外乱がなく、参照鏡8を相対運動させる可動ステージも一定速度を維持できる場合には、フレームレート(単位時間に取得できる画像枚数:サンプリング周波数)は制限がなく、任意のカメラを使用できる。そのため、フレームレートが大きいカメラ10を用いれば、短い時間で測定ができる。しかし、相対運動に不均一性が生じたり、意図しない外部振動が加わると、カメラ10のフレームレートは高いことが好ましい。

【0079】
例えば、ある時間波形はフーリエ変換によって周波数成分で分解することができるが、ドップラー効果により干渉縞の時間変化は、物体光12と参照光13との周波数差に関係して起こる。このとき、周波数差が一定なら、時間波形を周波数成分で分解したときに、一つの周波数成分しか存在しない。そして、その周波数成分の複素振幅に、物体光12の振幅と位相の情報が含まれている。実際には、画像はある時間ステップ毎に取得され、コンピュータで離散フーリエ変換するが、周波数が正確に分解できるかどうかは、ナイキストの定理により、サンプリング周波数が時間波形に含まれる最大周波数成分の周波数の2倍より大きい必要がある。物体光12と参照光13の周波数差が一定の場合に、もし、その周波数差がサンプリング周波数の1/2以上なら、別の周波数として認識されるおそれがある。しかしながら、振幅と位相の情報は、その異なる周波数成分として維持されている。よって、物体光12と参照光13の周波数差が一定の場合には、ナイキスト限界は、誤差の原因にはならないことになる。なお、サンプリング時間は、必要な周波数の逆数(周期)以上でなければなりません。一方、ナイキストの定理を満たしていない場合は、実際の周波数と異なる周波数として認識されるが、その周期に合わせたサンプリング時間が必要となる。また、サンプリング周波数の1/2未満の周波数成分は、1周期あたりのサンプリング点は、「含まれる周波数成分数×2」点より多いことが望ましい。

【0080】
ここで、誤差の原因となるのは、物体光12と参照光13の周波数差の符号が一定でない場合が想定される。周波数差符号は、被測定体7と参照鏡8との相対速度の符号で決まり、並進運動(光軸に平行な一方向に運動する場合)の場合は符号は一定であるが、振動運動(光軸に平行な二方向に運動する場合)の場合は符号が入れ替わる。位相シフトスペクトルの+側と-側は、+(-)1次光成分と-(+)1次光成分の関係になり、+1次光成分と-1次光成分がそれぞれ位相シフトスペクトルのどちら側に現れるかは、周波数差の符号で決まることになる。符号の入れ替わりがあると、+1次光成分と-1次光成分が同じ側に重なって出てくるが、振動と同時に並進相対運動を起こしておけば、その並進相対運動に対応する周波数成分では、符号の入れ替わりを防ぐことができる。これにより、少なくともナイキストの定理を満たしている周波数成分と並進運動による周波数成分とを分離することができる。なお、ナイキストの定理を満たさない周波数成分は、他の周波数成分に分散するので、並進運動の周波数成分と重なってしまうことがある。よって、サンプリング周波数が高いほど、外乱による周波数成分をより正確に取り込むことができ、並進運動に対応する周波数成分との重なりを減らすことができるのである。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明する。
【実施例】
【0082】
[実施例1]
図3は、図1の装置30を用い、参照鏡8を一定速度(1×10-5m/s)で移動させたときの位相シフトスペクトルである。一方、図4は、図1に示す装置30を用い、参照鏡8を一定速度(1×10-5m/s)で移動させるとともに、装置30に対して故意に振動を加えて光学系を振動させたときの位相シフトスペクトルである。図5は、図3で得られた再生画像の例であり、図6は図4で得られた再生画像の例である。
【実施例】
【0083】
この実施例1において、レーザ光源1の波長は632.8nm、連続撮像カメラ10のフレームレートは500fps(サンプリング周波数500Hzと同じ意味である。)、駆動装置20としてDCモータによる可動ステージを用い、その可動ステージの設定速度は1×10-5m/sである。実際には、可動ステージがビームスプリッタ6側に向かって動くとき、参照鏡8から反射してきた参照光13から見ると、2倍の速度で動いているように見えるので、速度は2×10-5m/sとなる。このときの周波数差は「速度/波長」であるので、31.6Hzとなる。これを位相差(位相シフト量)に変換すると、「角周波数差/サンプリング周波数」であるので、0.40radとなる。よって、図3では0.40radあたりにスペクトルピークを持ち、図4も0.40radあたりにスペクトル信号を持つ。
【実施例】
【0084】
図4は装置30に振動を故意に与えた結果であるが、図3にはないスペクトル成分がグラフの端から端まで現れている。そのため、得られた再生画像では、図5に比べ、図6の方がノイズが多い態様になっている。こうしたノイズは、ここで用いたフレームレート500fpsの連続撮像カメラ10よりも高速撮像可能なカメラを用いることにより解決できる。なお、図4に示すように、端までスペクトル成分が出ている場合は、ナイキスト限界以上の周波数成分がスペクトル全体に分散しており、ノイズ成分がやや多い状態になっている。
【実施例】
【0085】
この実施例ではフレームレート500fpsの連続撮像カメラ10を用いているが、仮にフレームレートが小さい(例えば数十fps)の連続撮像カメラを用いると、変換後の位相スペクトルは図4に示すような雑音に埋もれてしまって、実証実験で被測定体7の複素振幅を再生できているかを判断するのが難しくなる。したがって、外乱振動の周波数よりも速い連続撮像データを得ることができるフォトディテクターを用いることが好ましい。
【実施例】
【0086】
このように、外乱振動や空気の揺らぎが加わった場合であっても、時間フーリエ変換により外乱振動によるノイズと本来の周期信号とを分離することができ、外乱の影響を受けにくい精度の高い形状計測を行うことができる。
【符号の説明】
【0087】
1 光源(レーザ)
2 減光フィルター
3 レンズ
4 空間フィルター
5 レンズ
6 ビームスプリッタ(分岐装置、重畳装置)
7 被測定物
8 参照鏡
9 減光フィルター
10 連続撮像カメラ(撮像装置)
11 可干渉光束
12 物体光
13 参照光
20 駆動装置
21 コンピュータ(計算装置)
30 形状測定装置
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7