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明細書 :バイオディーゼル燃料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5230562号 (P5230562)
公開番号 特開2011-037997 (P2011-037997A)
登録日 平成25年3月29日(2013.3.29)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
発明の名称または考案の名称 バイオディーゼル燃料の製造方法
国際特許分類 C10L   1/02        (2006.01)
B01J  33/00        (2006.01)
B01J  13/14        (2006.01)
C10L   1/08        (2006.01)
C11C   3/10        (2006.01)
FI C10L 1/02
B01J 33/00 B
B01J 13/02 H
C10L 1/08
C11C 3/10
請求項の数または発明の数 3
全頁数 19
出願番号 特願2009-187118 (P2009-187118)
出願日 平成21年8月12日(2009.8.12)
審査請求日 平成24年8月10日(2012.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】倉山 文男
【氏名】鈴木 昇
【氏名】佐藤 正秀
【氏名】古澤 毅
【氏名】吉川 朋美
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】森 健一
参考文献・文献 国際公開第2007/088702(WO,A1)
国際公開第2008/090987(WO,A1)
特開2008-274030(JP,A)
特開昭55-086533(JP,A)
特表2007-522918(JP,A)
特開2004-035873(JP,A)
特開2008-143983(JP,A)
調査した分野 C10L 1/02
B01J 33/00
C11C 3/10
特許請求の範囲 【請求項1】
原料油脂及び低級アルコールをエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料を製造するに際し、原料油脂に分散させたアルカリ固体触媒を芯物質とし、二価カチオンで硬化させたアルギン酸類を壁材とするカプセルを用いることを特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ固体触媒がCaO又はCa(OH)である、請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法を用いて製造されることを特徴とするバイオディーゼル燃料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディーゼル燃料の製造方法、バイオディーゼル燃料、カプセル化触媒、及びこのカプセル化触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオディーゼル燃料(Biodiesel Fuel)は、植物油脂や動物油脂又はその廃油であるバイオマス資源を原料とするため、カーボンニュートラルな燃料として近年注目されている。
【0003】
バイオディーゼル燃料は、様々な製造方法によって製造することができる。こうした製造方法の一つに、植物油脂とメタノールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル燃料の主成分となる脂肪酸メチルエステル(FAME)を合成する方法がある。この製造方法では触媒を利用することから、脂肪酸メチルエステルを効率よく生産するための触媒開発が行われている。
【0004】
こうした触媒として、酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ固体触媒の利用が検討されている。酸化カルシウムは、安価で入手が容易である。しかしながら、例えば、酸化カルシウムは活性が低いという性質があり、その改良が検討されている。
【0005】
特許文献1には、固体塩基触媒として、15以上の塩基強度(H_)を有し、かつ、0.1mmol/g以上の塩基量を有した酸化カルシウムからなることを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体塩基触媒が記載されている。そして、このバイオディーゼル油製造用固体塩基触媒が、生石灰、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム及び消石灰からなるグループより選ばれた原料を、水と炭酸ガスを実質的に含まない気体の雰囲気下にて300℃以上の温度で焼成することにより得られたものであることを特徴としている。そして、この固体塩基触媒を用いた場合には、極めて高い反応効率を達成することができる旨記載されている。
【0006】
非特許文献1では、植物油脂とメタノールのエステル交換反応によるバイオディーゼル油の製造に用いる効果的な不均一触媒を開発するためにCaOの触媒活性を高める研究が紹介されている。具体的には、同文献では、CaOをメタノールで前処理してエステル交換反応に用いる旨が記載されている。
【0007】
特許文献2には、原料油脂とアルコールとのエステル交換反応によってバイオディーゼル油を製造する際に使用される固体触媒であって、この触媒が、塩基強度(H_)9.3以上の酸化カルシウム、又はこの酸化カルシウムを水和して得られた水酸化カルシウムのいずれか一方を原料とし、この原料をグリセリンのメタノール溶液と加熱還流下で反応させることによって得られたカルシウムジグリセロキシドであることを特徴とするバイオディーゼル油製造用固体触媒、が記載されている。同文献によれば、高活性な酸化カルシウムを使用した時と遜色ない反応実績をあげながら、無機分の残存量がより少ない高品質なバイオディーゼル油が得られる、とのことである。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】国際公開第2006/134845号(請求項1、第0007段落、第0011段落、第0017段落、第0018段落)
【0009】

【特許文献2】特開2008-212772号公報(請求項1、第0014段落)
【0010】

【非特許文献1】A.Kawashima,K.Matsubara and K.Honda,“Acceleration of catalytic activity of calcium oxide for biodiesel production”Bioresource Technology 100,696-700(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1においては、原料を水と炭酸ガスを実質的に含まない気体の雰囲気下で焼成する必要があるが、こうした焼成処理を行う必要がある分だけ工程数が増え、また焼成雰囲気を置換することが可能な焼成装置が必要な分だけ製造コストが上昇する。加えて、焼成した酸化カルシウムは、炭酸ガスや水分と吸着して不活性化するため、焼成後は空気に極力接触させないことが重要となる。この点、同文献においても、バイオディーゼル油製造用反応器として気密性のある容器を使用している。こうした特殊容器の使用も製造コストの上昇の原因となる。このように、特許文献1においては、工程数の増加や製造コストの上昇が招来され、実用化(工業生産)しにくいという課題がある。
【0012】
また、非特許文献1では、CaOをメタノールで前処理する。特許文献2では、CaOとグリセリンのメタノール溶液を加熱還流下で反応させることによってカルシウムジグリセロキシドを得る。しかしながら、こうした前処理方法では、分離回収を容易にするためにCaO粉末を成型体として利用した場合において固体状のCaOの表面のみが活性化するだけで、内部のCaOを利用することができない。このため、触媒の活性を十分に高められないという課題がある。
【0013】
また、これら文献においては、活性化されたCaOをシリカ担体などに固定化した複合材料を得ようとすると、複合材料の調整に手間がかかり、実用化(工業生産)しにくいという課題がある。すなわち、特許文献2では、分離回収を容易にするために担体物質への酸化カルシウムの被覆を行っている。同文献の第0019段落によれば、「酸化カルシウムがシリカ、アルミナのような一般的な担体物質と反応しやすく、複合材料の前処理行程における焼成操作時に不活性な珪酸カルシウムや珪酸アルミニウムを生成してしまう」ため、「固定化操作を複数回繰り返す」ことで「担体表面に触媒前駆体となるカルシウム化合物を多量に担持し、表面近傍のカルシウム化合物を犠牲にして、活性成分粒子を残存させる」ことを行っている。しかしながら、こうした固定化操作の繰り返し操作やその後の焼成操作等は煩雑であり、複合材料の調整に手間がかかり煩雑な方法となる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第2の目的は、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法によって製造されたバイオディーゼル燃料を提供することにある。
【0016】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第3の目的は、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒を提供することにある。
【0017】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その第4の目的は、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者等は、触媒の分離回収を容易にする等して工業生産を行いやすくしつつも、触媒の活性を高めて反応効率を高めることができるバイオディーゼル燃料の製造方法につき鋭意検討した。その結果、本発明者等は、バイオディーゼル燃料の合成の際に、触媒がカプセル内に封入されたカプセル化触媒を用いることにより、カプセル内部の微少空間を利用して合成を行うことで触媒活性(反応効率)を高めることができるとともに、カプセル化触媒の分離回収も容易となるために、工業生産に適したバイオディーゼル燃料の製造方法が得られることを見出した。さらに、本発明者等は、このバイオディーゼル燃料の製造方法によって製造されるバイオディーゼル燃料、カプセル化触媒、及びこのカプセル化触媒の製造方法もあわせて見出した。
【0019】
上記課題を解決するための本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法は、原料油脂及び低級アルコールをエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料を製造するに際し、カプセル内に存在させた触媒を用いることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、バイオディーゼル燃料を製造する際に、原料油脂及び低級アルコールをエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料を製造するに際し、カプセル内に存在させた触媒を用いるので、エステル交換反応を利用した汎用的な合成方法を利用しつつも、カプセル内の微少空間での触媒と原料との接触を効果的に実現することができ、その結果、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法を提供することができる。
【0021】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法の好ましい態様においては、前記カプセル内に原料油脂がさらに存在する。
【0022】
この発明によれば、カプセル内に原料油脂がさらに存在するので、合成当初からカプセル内に原料が存在することになって、合成をより促進させやすくなる。
【0023】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法の好ましい態様においては、前記カプセルを構成する材料が、アルギン酸類、ペクチン類、カラギーナン類、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、及び寒天類からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0024】
この発明によれば、カプセルを構成する材料が、アルギン酸類、ペクチン類、カラギーナン類、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、及び寒天類からなる群から選ばれる少なくとも1つであるので、架橋溶液で容易に素早くゲル化が可能となり、その結果、後述する二重管ノズル法を適用しやすくなる。
【0025】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法の好ましい態様においては、前記触媒が、アルカリ固体触媒、アニオン交換樹脂、ハイドロタルサイト類化合物、及びアルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つである。
【0026】
この発明によれば、触媒が、アルカリ固体触媒、アニオン交換樹脂、ハイドロタルサイト類化合物、及びアルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つであるので、一般的に活性の低い固体触媒を用いることとなり、カプセル化して使用する本発明の意義が大きくなる。
【0027】
上記課題を解決するための本発明のバイオディーゼル燃料は、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法を用いて製造されることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、バイオディーゼル燃料が本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法を用いて製造されるので、カプセル内の微少空間での触媒と原料との効果的な接触を利用することができ、その結果、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法によって製造されたバイオディーゼル燃料を提供することができる。
【0029】
上記課題を解決するための本発明のカプセル化触媒は、アルギン酸類、ペクチン類、カラギーナン類、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、及び寒天類からなる群から選ばれる少なくとも1つをカプセル壁とし、アルカリ固体触媒、アニオン交換樹脂、ハイドロタルサイト類化合物、及びアルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの触媒をカプセル内に含有することを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、アルギン酸類、ペクチン類、カラギーナン類、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、及び寒天類からなる群から選ばれる少なくとも1つをカプセル壁とし、アルカリ固体触媒、アニオン交換樹脂、ハイドロタルサイト類化合物、及びアルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの触媒をカプセル内に含有するカプセル化触媒とするので、カプセル内の微少空間での触媒と原料との接触を効果的に実現することができ、その結果、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒を提供することができる。
【0031】
上記課題を解決するための本発明のカプセル化触媒の製造方法は、二重管ノズル法によって製造されることを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、本発明のカプセル化触媒が二重管ノズル法によって製造されるので、カプセルの皮膜の厚さを制御しやすく粒径も単分散なカプセルを得やすくなるので、その結果、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法を提供することができる。
【0034】
本発明によれば、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法によって製造されたバイオディーゼル燃料を提供することができる。
【0035】
本発明によれば、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒を提供することができる。
【0036】
本発明によれば、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】カプセル化触媒の製造装置の一例を示す模式的概念図である。
【図2】測定開始後の菜種油の流出量(拡散量)の変化を示したグラフである。
【図3】反応開始後からのFAME収率の経時的な変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。

【0039】
(バイオディーゼル燃料の製造方法)
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法は、原料油脂及び低級アルコールをエステル交換反応によりバイオディーゼル燃料を製造するに際し、カプセル内に存在させた触媒を用いる。これにより、エステル交換反応を利用した汎用的な合成方法を利用しつつも、カプセル内の微少空間での触媒と原料との接触を効果的に実現することができ、その結果、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法を提供することができる。

【0040】
バイオディーゼル燃料の製造方法は、触媒を用いる製造方法であればよく、特に制限されるものではないが、本発明では原料油脂及び低級アルコールを用いてバイオディーゼル燃料を合成することによって行っている。これにより、上述のとおり、エステル交換反応を利用した汎用的な合成方法とすることができ、より工業生産しやすくなる。エステル交換反応を利用する合成方法としてより具体的には、アルカリ触媒を用いるアルカリ触媒法、酸触媒を用いる酸触媒法等を挙げることができる。また、アルカリ触媒法は、均一アルカリ触媒を用いる方法と、不均一アルカリ触媒を用いる方法と、に大別することができる。これら製造方法のうち、一般的に触媒活性が低い不均一アルカリ触媒を用いる不均一アルカリ触媒法が、触媒活性を高める必要があるので、本発明を適用する意義が大きくなる。

【0041】
原料油脂及び低級アルコールを用いてバイオディーゼル燃料を合成する場合、原料油脂としては、バイオディーゼル燃料を製造できるものであればよく、特に制限はない。こうした原料油脂としては、例えば、植物油脂、動物油脂を挙げることができる。植物油脂としては、例えば、菜種油、ごま油、大豆油、カノーラ油、ひまわり油、トウモロコシ油、綿実油、及びパーム油等を挙げることができる。また、動物油脂としては、例えば、豚脂、牛脂、及びイワシ油等を挙げることができる。原料油脂は、本発明の要旨の範囲内において、複数種類の油脂を任意の混合比で混合したものであってもよい。また原料油脂は、食品の調理に使用された廃油であってもよい。廃油を用いる場合には、バイオディーゼル燃料の反応を工業的にスムースに行うために、廃油中のごみ等をろ過等により取り除く処理をすることが好ましい。さらに、原料油脂が常温で固体である場合には加熱処理等を行って液体化してから用いることが好ましい。こうした原料油脂のうち、飽和脂肪酸含有量の差違に基づく低温物性の改善を考慮すると、植物油脂を用いることが好ましい。

【0042】
原料油脂及び低級アルコールを用いてバイオディーゼル燃料を合成する場合、低級アルコールとしては、バイオディーゼル燃料を製造できるものであればよく、特に制限はない。低級アルコールとは、通常、炭素数の少ないアルコール(例えば、炭素数が5以下のアルコール)をいう。こうした低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等を挙げることができる。これら低級アルコールのうち、反応性を考慮すると、アルキル鎖の短いメタノールを用いることが好ましい。すなわち、通常、低級アルコールが有するアルキル鎖が長くなるほど反応しづらくなる傾向にあるため、反応温度を低く抑え、反応時の圧力を低く抑えるという見地からアルキル鎖の短い低級アルコールを用いることが好ましい。

【0043】
上述のとおり、本発明においては、原料油脂のうち植物油脂を用い、低級アルコールとしてメタノールを用いた不均一アルカリ触媒法を用いることが好ましい。この場合におけるバイオディーゼル燃料の反応式は、下記反応式(1)のように表すことができる。

【0044】
【化1】
JP0005230562B2_000002t.gif

【0045】
上記反応式(1)において、FAMEは脂肪酸メチルエステルであり、バイオディーゼル燃料の主成分となる。また、上記反応式(1)において、R、R、Rは、長鎖アルキル基であり、用いる植物油脂の化学構造によって炭素数等の構造が決定される。

【0046】
本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法においては、カプセル内に存在させた触媒を用いる。より具体的には、触媒がカプセル内に存在するカプセル化触媒を用いる。これにより、カプセル内の微少空間での触媒と原料との接触を効果的に実現することができ、その結果、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等によりバイオディーゼル燃料の工業生産を行いやすくするカプセル化触媒を提供することができる。カプセル化触媒を用いることにより触媒活性が高まる理由は、完全には解明されていないが、以下のように考えられる。すなわち、原料として原料油脂及びメタノールを用いる場合には、メタノールと触媒とがカプセル内の微小な空間で接触することで、触媒の活性がより効果的に高められると推測される。さらに、生成されるバイオディーゼル燃料(FAME)の副生物たるグリセリン等のアルコールがカプセル内の微小空間で触媒と接触することで、触媒の活性がさらに高められると推測される。加えて、原料油脂とメタノールとは互いに溶解しないところ、生成されるFAMEが原料油脂にもメタノールにも溶解する両溶媒となるので、FAMEの生成により、原料油脂とメタノールとの接触が促進されてさらに反応効率が高まると推測される。以上のようなメカニズムがそれぞれ競合することにより、カプセル化触媒を用いた場合の触媒活性の向上、反応効率の向上が達成されると推測される。

【0047】
カプセル化触媒は、通常、カプセルと、それに内包される触媒とから構成される。カプセルの皮膜(本明細書では、「カプセル壁」ともいう場合がある。)を構成する材料は、原料油脂や低級アルコール等の原料を透過することが可能な材料であればよく、特に制限はない。こうした材料としては、アルギン酸類、ペクチン類、カラギーナン類、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、及び寒天類からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。これにより、架橋溶液(硬化溶液)で容易に素早くゲル化が可能となり、その結果、後述する二重管ノズル法を適用しやすくなる。カプセル壁は、通常、上記材料が高分子化して形成されることになる。

【0048】
カプセルの材料として用いるアルギン酸類としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、アルギン酸、アルギン酸塩類、エステル化アルギン酸を挙げることができる。アルギン酸塩類としては、例えば、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。また、エステル化アルギン酸としては、例えばエステル化アルギン酸ナトリウムや、親油性のプロピレングリコールを付与したアルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)等を挙げることができる。PGAはカルボキシル基がプロピレングリコールに置換されているためにゲル化はしない傾向となるものの、アルギン酸ナトリウム等と任意に混ぜてゲル化させることで、PGAの親油性を生かしたゲルの形成が期待できる。

【0049】
カプセルの材料として用いるペクチン類としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、D-ガラクツロン酸の直鎖状重合体からなる多糖類、そのカルボキシル基が一部メチルエステルとなっている多糖類、また金属イオンと塩を作っている多糖類等を挙げることができる。

【0050】
カプセルの材料として用いるカラギーナン類としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、κ(カッパ)-カラギーナン、ι(イオタ)-カラギーナンを挙げることができる。カラギーナンはβ-D-ガラクトースの硫酸エステルと3,6-アンヒドロ-α-D-ガラクトースを基本構造としており、主なタイプにκ(カッパ)、λ(ラムダ)、ι(イオタ)の三種類があり、これらは硫酸エステルの結合部位や含量、3,6-アンヒドロ-α-D-ガラクトースの含量が異なるものである。また、一般に市販されているカラギーナンは、上記三種類の混合物である。

【0051】
カプセルの材料として用いるポリアクリル酸類とは、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、アクリル酸の重合体及びその誘導体をいい、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸塩等を挙げることができる。

【0052】
カプセルの材料として用いる寒天類としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、テングサ(天草)等の紅藻類を材料とするものを挙げることができる。寒天は、こうした紅藻類を溶かして固めることによってゲル化する性質を有するので、高温度で溶解して液体状としたものを冷却することによってカプセル化をすることができる。例えば、後述する二重管ノズル法を用いる場合には、二重管ノズルを加熱することにより寒天を液体状としてノズル内を流すようにすればよい。

【0053】
これら材料のうち、疎水性を付与して原料油脂を透過しやすくなる見地から、アルギン酸類を用いることが好ましく、アルギン酸ナトリウム、エステル化アルギン酸ナトリウムを用いることがより好ましい。ここで、アルギン酸ナトリウムをエステル化してエステル化アルギン酸を得るために用いるアルコールとして、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール等を挙げることができる。これらのうち、カルシウムイオンのような2価のカチオン存在下でゲルを形成する際にゲル化速度を確保してカプセル化触媒を安定的に製造する見地、及び疎水性を確保する見地から、ブタノールを用いることが好ましい。もっとも、詳細は後述するが、親水性を有する材料であってもカプセル化の後に乾燥を施すことによって原料油脂を透過しやすくなるので、材料自体が疎水性でなくとも十分使用することは可能である。

【0054】
カプセルの皮膜の厚さは、原料油脂やアルコールを良好に透過できる厚さとすればよく、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上とし、通常2mm以下、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、最も好ましくは50μm以下とする。

【0055】
カプセルの外径は、微小空間を内部に形成できる大きさとすればよく、カプセルの皮膜の厚さとの関係もあるが、通常50μm以上、3mm以下とする。また、内径は、外径とカプセルの被膜の厚さを制御することによって決定される。

【0056】
カプセルは、上述のとおり、原料油脂、低級アルコール、及び生成物たるバイオディーゼル燃料(FAME)等を透過しやすくする見地から、カプセル壁たるカプセル壁膜を疎水化することが好ましい。カプセル壁膜を疎水化するための方法は、特に制限はないが、例えば、カプセルを構成する材料に疎水性のものを用いる、カプセル形成後に乾燥処理を行って表面等の水分を蒸発させる等を行えばよい。

【0057】
カプセル内部には、触媒を存在させる。こうした触媒としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、アルカリ固体触媒、アニオン交換樹脂、ハイドロタルサイト類化合物、及びアルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これにより、一般的に活性の低い固体触媒を用いることとなり、カプセル化して使用する本発明の意義が大きくなる。

【0058】
アルカリ固体触媒としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、CaO、Ca(OH)、BaO、Ba(OH)、MgO、CaCO、SrO、SnO、PbO、ZnO、PbO、Ti、Pbやこれらの複合酸化物等を挙げることができる。アルカリ固体触媒は、他の酸化物と併用して触媒として用いることもでき、例えば、CaO-La、CaO-TiO等を挙げることができる。アニオン交換樹脂としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、CaO/Zeolite HY等を挙げることができる。ハイドロタルサイト類化合物としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、MgAlハイドロタルサイト等を挙げることができる。アルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒としては、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、例えば、強い塩基性を示すK、Na、Sr、Liのようなアルカリ金属をアルミナやシリカ、陽イオン交換ゼオライト、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化カルシウム等に担持したものを挙げることができる。

【0059】
こうした材料のうち、触媒が、CaO、SrO、CaO-La、CaO-TiO、Ca(OH)、MgO、PbO、及びBaOからなる群から選ばれる少なくとも1つであることがより好ましい。これにより、一般的に活性の低いアルカリ固体触媒を用いることとなり、カプセル化して使用する本発明の意義がより大きくなる。これら触媒のうち、CaO、Ca(OH)を用いることがさらに好ましく、CaOを用いることが特に好ましい。これら触媒は、活性が特に低いので本発明を採用する意義がより大きくなる。

【0060】
本発明においては、カプセル内で粉末状の触媒を用いることとなるので、触媒を成型体として用いる場合と比較して、カプセル内部に存在する触媒粉末を有効に反応に寄与させることができるという利点がある。また、上記反応式(1)で示される反応を利用し、触媒としてCaOを用いる場合には、あらかじめメタノールやグリセリンで活性化させたCaO粉末をカプセル内に内包させれば、高活性なCaO複合体の有効性を確保しつつ、カプセル化触媒の分離回収が容易になると期待される。加えて、カプセル外部の環境を考慮すると、副生成物(例えばグリセリン)はカプセルから拡散しづらいので、上記のようにあらかじめグリセリンで活性化させなくとも、CaOの活性化がカプセル内部で効果的に起きることが期待される。もちろん、CaOとグリセリンの複合体を予めカプセルに内包させておいてもよい。カプセル化触媒を用いることにより、分離回収を容易にしつつ、触媒の活性を高めるための上述した様々なバリエーションを適用することができるようになる。

【0061】
カプセル内部に存在させる触媒の平均粒径は、カプセルから漏出しない程度の大きさとすればよく特に制限はない。触媒の平均粒径は、例えば、走査型顕微鏡(SEM)やX線回折法(XRD)又は光学顕微鏡によって測定することができる。また、触媒の比表面積は、活性を高める見地から、通常0.01m/g、100m/g以下とする。触媒の比表面積は、BET法を用いて測定することができる。

【0062】
原料油脂を製造に用いる場合には、カプセルの内部に原料油脂がさらに存在することが好ましい。これにより、合成当初からカプセル内に原料が存在することになって、合成をより促進させやすくなる。原料油脂としては、上記説明したもののいずれを用いてもよく、混合物や廃油を用いることができる点も上記説明したとおりである。またカプセル内に内包させる原料油脂は、バイオディーゼル燃料の製造に用いる原料油脂と同一であっても異なっていてもよいが、反応に用いる材料を統一するという見地からは、同一の原料油脂を用いることが好ましい。

【0063】
カプセル内部には、本発明の要旨の範囲内において、触媒と必要に応じて内包させる原料油脂の他、添加剤等の材料をさらに含有させてもよい。

【0064】
カプセル内部の原料油脂に対する触媒の含有量は、通常0.1重量%以上、50重量%以下とするが、カプセル化触媒を後述する二重管ノズル法によって製造する場合には、ノズルの目詰まりを考慮して、40重量%以下とすることが好ましく、30重量%以下とすることがより好ましく、10重量%以下とすることがさらに好ましい。もっとも、ノズルの目詰まりに関しては、触媒粉末の凝集体による目詰まりがある。こうした目詰まりを回避するためには、カプセル内部の原料油脂に対する触媒の含有量の制御の他、ノズルの流量を上げて素早く滴下する等の対応をすればよい。

【0065】
カプセル化触媒の製造は、本発明の要旨の範囲内において特に制限はないが、通常、化学的製法、物理化学的製法、機械的・物理的製法で行われる。これらのうち、化学的製法としては、例えば、界面重合法、in situ重合法、及びオリフィス法(二重管ノズル法)を挙げることができる。物理化学的製法としては、例えば、コアセルベーション法を挙げることができる。機械的・物理的製法としては、例えば、噴霧乾燥法、気中懸濁被覆法等を挙げることができる。これら各種の方法のうち、カプセル化触媒の製造方法として、オリフィス法(二重管ノズル法)を用いることが好ましい。これにより、カプセルの皮膜の厚さを制御しやすく粒径も単分散なカプセルを得やすくなるので、その結果、触媒の活性を高めつつ、バイオディーゼル燃料の工業生産を行いやすくするカプセル化触媒の製造方法を提供することができる。より具体的には、二重管ノズル法は、外管と内管との流量を変えるという簡便な方法によってカプセルの皮膜の厚さを制御することができ、かつ粒径も単分散化しやすいという利点がある。

【0066】
カプセル化触媒の製造を二重管ノズル法で行う場合、通常、ノズルの外管と内管とからそれぞれ壁材物質と芯物質とを同時に流し、得られた二相構造を持つ液滴を架橋溶液(硬化溶液)で受け止めることでカプセル化触媒を製造する。ここで、通常、壁材物質としては、上述したカプセルを形成する材料を溶媒に溶かして溶液状としたものを用い、芯物質としては、上述した触媒を必要に応じて原料油脂等に分散させた液体状のものを用いる。そして、壁材物質に用いる溶媒としては、例えば水を挙げることができ、この場合壁材物質は水溶液となる。

【0067】
図1は、カプセル化触媒の製造装置の一例を示す模式的概念図である。カプセル化触媒の製造装置1は、二重管ノズル2、二重管ノズルの内管5にチューブ4Aを介して接続されたシリンジポンプ3A、二重管ノズルの外管6にチューブ4Bを介して接続されたシリンジポンプ3B、及びリザーバー7で構成されている。リザーバー7は、硬化溶液が満たされた容器9、容器9の底部に配置された攪拌子(マグネティックスターラー)10、及び攪拌装置8で構成され、攪拌装置8によって攪拌子10が回転して硬化溶液を攪拌できるようになっている。

【0068】
カプセル化触媒の製造装置1においては、シリンジポンプ3Aから二重管ノズルの内管5を通じて芯物質が一定流量で押し出され、同時にシリンジポンプ3Bから二重管ノズルの外管6を通じて壁材物質が一定流量で押し出されることによって、芯物質の周囲を壁材物質で囲まれた液滴が形成される。そして、この液滴が容器9中の硬化溶液に落下することで、壁材物質が硬化(ゲル化)してカプセルが形成されるようになっている。ここで、硬化溶液としては、壁剤物質が硬化できるようなものを用いればよく、例えば、壁材物質としてアルギン酸ナトリウムやエステル化アルギン酸ナトリウムを用いる場合には、カルシウムイオンのような2価のカチオンが存在する溶液を用いればよい。こうした溶液としては、例えば、塩化カルシウム(CaCl)溶液等を挙げることができる。

【0069】
カプセル化触媒の製造装置1においては、シリンジポンプ3A,3Bから芯物質及び壁材物質を押し出す速度をそれぞれ調節することにより、外管と内管との流量を制御してカプセルの皮膜の厚さ、カプセルの外径、及びカプセルの形成率(歩留まり)等を制御することができる。こうした見地から、二重管ノズルの内管5に流す芯物質の流量に対する二重管ノズルの外管6に流す壁材物質の流量は、前述したカプセルの皮膜の厚さ及び外径に制御しつつ、形成率を良好に保つ見地から、通常2倍以上とすればよい。二重管ノズルの内管5に流す芯物質の流量に対する二重管ノズルの外管6に流す壁材物質の流量の上限は、特に制限はないが、コアを単核にする必要がある場合には、6倍以下とすることが好ましい。また、二重管ノズルの内管5に流す芯物質の線速度に対する二重管ノズルの外管6に流す壁材物質の線速度は、上記と同様の見地から、通常1倍以上とすればよい。二重管ノズルの内管5に流す芯物質の線速度に対する二重管ノズルの外管6に流す壁材物質の線速度の上限は、特に制限はないが、コアを単核にする必要がある場合には、4倍以下とすることが好ましい。

【0070】
カプセル化触媒の製造装置1におけるカプセル化触媒の製造は、室温で行ってもよいが、壁材物質の種類や硬化溶液の種類によっては、硬化溶液の温度を制御してもよい。この場合、硬化溶液中でのカプセルの硬化を良好に行う見地から、通常0℃以上、80℃以下に硬化溶液の温度を制御すればよい。例えば、カラギーナン類や寒天類は温度を低くしてもゲル化する性質があるので、硬化溶液は低い温度とすることが好ましい。一方で、例えば、ポリマー重合を利用する場合には硬化溶液を高温とすることが好ましい。具体的には、ポリマー重合でカプセルの皮膜を形成・補強したり機能を付与したりするときに温度制御は有効となる。例えば、温度応答性ポリマーをアルギン酸ゲル内に導入する場合には、モノマーを液滴内に入れ、重合開始剤や架橋剤の入った60℃程度の硬化溶液中で重合させるという手法を用いればよい。

【0071】
カプセル化触媒の製造装置1においては、硬化溶液にてカプセル化触媒を形成したのち、カプセル化触媒を硬化溶液から取り出して、カプセル化触媒の乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥処理によりカプセルの強度を上げやすくなり、また前述のとおり、カプセル表面等の水分を除去して疎水化しやすくなる。乾燥温度は、カプセルの材料や、内包している触媒等によって適宜制御すればよいが、通常30℃以上、70℃以下とする。また、乾燥時間は、カプセルの乾燥が良好に行われる時間であればよく、特に制限はない。例えば、減圧乾燥を用いれば乾燥時間を短くすることも可能となる。

【0072】
以上のようにして得たカプセル化触媒を用い、原料油脂及び低級アルコールを用いてバイオディーゼル燃料を合成することによって製造を行う。こうした製造方法としては、特に制限はないが、例えば、原料油脂を反応缶等の反応容器に導入した後に必要に応じて窒素置換を行い、その後カプセル化触媒を原料油脂中に投入し、次いで低級アルコールを加えることで反応を開始させればよい。また、例えば、原料油脂及びカプセル化触媒を同時に反応缶に投入した後に低級アルコールを加えて反応を開始させるようにしてもよい。

【0073】
合成の際の温度は、カプセル化触媒の耐熱性を考慮し、バイオディーゼル燃料の生成反応が良好に進行するものであればよく特に制限はないが、通常30℃以上、100℃以下とし、好ましくは40℃以上、80℃以下とする。また、合成の際には、反応を効率的に進行させる見地から、反応液を攪拌することが好ましい。

【0074】
合成を行う時間(反応時間)は、バイオディーゼル燃料が所望の収率となるまで行えばよい。工業生産においては、バイオディーゼル燃料の生産量(原料の仕込量)や反応缶等の反応容器のスケール等に依存して反応時間が変動するので、反応時間を具体的に特定するのは困難であるが、本発明においてはカプセル化触媒を用いて触媒活性を高めることができるために、カプセル化をせず触媒をそのまま使用する従来の方法と比較して、3~8割程度反応時間を短くしやすくなる。

【0075】
反応終了後は、カプセル化触媒を網等で回収した後、残存する低級アルコールを減圧除去等により除去してバイオディーゼル燃料の精製処理を行えばよい。このように、カプセル化触媒の採用により、分離回収が容易となる。

【0076】
本発明においては、カプセル化触媒を再利用することができる。こうした再利用の方法としては、種々のものを提案することができる。

【0077】
第1の方法としては、カプセル化触媒を網等で回収した後で、反応器内のバイオディーゼル燃料とグリセリン等の副生成物を回収する。その後、反応器に原料油脂とカプセルを再度投入し、反応器を加熱して所定の温度(例えば60℃)になった段階で低級アルコール(例えばメタノール)を投入してバイオディーゼル燃料の合成反応を再度開始させればよい。そして、こうした手順を繰り返せば、カプセル化触媒の複数回の再利用が可能となる。

【0078】
第1の方法において、バイオディーゼル燃料の原料とカプセル化触媒の投入順序や加熱の仕方等につき特に制限はない。例えば、カプセル化触媒と低級アルコールと原料油脂を全て反応器に投入してから加熱を行ってもよい。また、例えば、カプセル化触媒と低級アルコールを所定の温度に加熱してから原料油脂を投入してもよい。この場合において、低級アルコールとしてメタノールを用い、触媒に酸化カルシウム(CaO)を用いる場合には、メタノールとCaOとの反応によって活性なカルシウムメトキシドが多く存在した状態でバイオディーゼル燃料の合成反応が開始されることになる。

【0079】
第2の方法としては、カラム内にカプセル化触媒を充填して連続式反応器として使用する方法を挙げることができる。より具体的には、リボンヒーターを巻いたカラム内にカプセルを充填して所定の温度(例えば60℃程度)に加熱する。そして別に、原料油脂と低級アルコール(例えば、メタノール)の混合溶液を用意して撹拌しておく。ここで、この混合溶液を所定の温度(例えば60℃)となるように加熱しておいてもよい。そして、上記混合溶液を、ポンプ等を用いてカラム内に送液し、カラム出口から流出した反応液を元の混合溶液に戻して循環させて、反応が終結するまで循環を続ければよい。

【0080】
(バイオディーゼル燃料)
本発明のバイオディーゼル燃料は、本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法を用いて製造される。これにより、カプセル内の微少空間での触媒と原料との効果的な接触を利用することができ、その結果、触媒の活性を高めつつ、分離回収を容易にする等により実用化(工業生産)をしやすいバイオディーゼル燃料の製造方法によって製造されたバイオディーゼル燃料を提供することができる。

【0081】
より具体的には、本発明のバイオディーゼル燃料は、簡便な方法で残存触媒がほとんど存在しないバイオディーゼル燃料を容易に得ることができるという利点がある。すなわち、本発明ではカプセル化触媒を利用してバイオディーゼル燃料を製造するので、反応終了後の反応液は、上層にバイオディーゼル燃料の層ができ、下層に副生成物(例えばグリセリン)の層ができる。そして、カプセル化触媒は反応器の底に沈んでいるために副生成物の層内に存在することになる。そして、しばらく放置すると、バイオディーゼル燃料の層と副生成物の層とは完全に2相に分離する。したがって、遠心分離等の処理を行わなくても、バイオディーゼル燃料の層には残留触媒が存在することはなく、純度が非常に高いバイオディーゼル燃料を得ることができる。

【0082】
これに対して、触媒をカプセル化せずに粉末として用いた場合には、反応終了後の反応液は、粉末状の触媒が上層のバイオディーゼル燃料の層と、下層の副生成物の層とのどちらにも懸濁されている状態となる。ここで、長時間放置すれば、粉末状の触媒も沈降していくことは予想されるものの、バイオディーゼル燃料の層と副生成物の層との界面でとどまった状態で残存する触媒粉末の発生も予想され、バイオディーゼル燃料の層から触媒を除去することは困難である。もっとも、遠心分離等の処理を行えば、バイオディーゼル燃料の層から触媒を除去することはできるものの、工業的には工程数が増えることとなり実用上は不利となる。

【0083】
(カプセル化触媒及びその製造方法)
本発明のカプセル化触媒は、アルギン酸類、ペクチン類、カラギーナン類、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、及び寒天類からなる群から選ばれる少なくとも1つをカプセル壁とし、アルカリ固体触媒、アニオン交換樹脂、ハイドロタルサイト類化合物、及びアルカリ金属を金属酸化物に担持した固体塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1つの触媒をカプセル内に含有する。これにより、カプセル内の微少空間での触媒と原料との接触を効果的に実現することができ、その結果、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒を提供することができる。

【0084】
本発明のカプセル化触媒は、上記説明した本発明のバイオディーゼル燃料の製造方法に好ましく用いることができる。ただし、本発明のカプセル化触媒の用途は、バイオディーゼル燃料の製造に限定されるものではない。すなわち、他の用途に対しても本発明のカプセル化触媒を適用することができる。

【0085】
本発明のカプセル化触媒の詳細(材料、製法、他の成分等)については、上記「バイオディーゼル燃料の製造方法」で説明したものをそのまま用いることができる。このため、説明の重複を避けるため、ここでの説明は省略する。

【0086】
本発明のカプセル化触媒の製造方法は、二重管ノズル法によって製造されることが好ましい。これにより、カプセルの皮膜の厚さを制御しやすく粒径も単分散なカプセルを得やすくなるので、その結果、触媒の活性を高めることが可能なカプセル化触媒の製造方法を提供することができる。

【0087】
本発明のカプセル化触媒の製造方法で用いる二重管ノズル法(装置、製法等)については、上記「バイオディーゼル燃料の製造方法」で説明したものをそのまま用いることができる。このため、説明の重複を避けるため、ここでの説明は省略する。
【実施例】
【0088】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例】
【0089】
(実施例1:カプセル化触媒の製造)
アルギン酸ナトリウム、エステル化アルギン酸ナトリウムを用いてカプセル化触媒の製造を試みた。アルギン酸ナトリウムとしては、関東化学株式会社製のものを用いた。
【実施例】
【0090】
エステル化アルギン酸ナトリウムは、以下のようにして製造した。すなわち、1-ブタノール(1-BuOH)溶液5ml中にアルギン酸ナトリウムを1.5g加え、触媒として濃硫酸を2,3摘加えて室温で一晩反応させた。反応後、1-BuOHで数回洗浄し、フィルターろ過によって溶媒を除去した後、空気中で自然乾燥させることによって、エステル化アルギン酸ナトリウムを得た。
【実施例】
【0091】
アルギン酸ナトリウム及び上記のようにして得たエステル化アルギン酸ナトリウムにつき、それぞれ2重量%溶解した水溶液を調製し、これを壁材物質とした。一方、芯物質として、市販のCaO粉末(和光純薬株式会社製)を10重量%分散させた菜種油を用いた。なお、CaOの比表面積は、BET法で測定した結果、4.14m/gであった。そして、芯物質は、CaOをあらかじめ乳鉢で細かくした後に菜種油中に投入することによって製造した。CaOをあらかじめ乳鉢で細かくした後に使用した理由は、市販のCaOは凝集して塊状になっているために、これを懸濁して用いると二重管ノズルの流路が詰まる場合があるからである。なお、BET法で測定した結果、CaOを細かくする前後で、比表面積の測定値につき変動はなかった。これは、乳鉢を用いた解砕となるために、粒子が破砕されて新しい表面ができることがほとんどないためと考えられる。
【実施例】
【0092】
次に、図1に示すカプセル化触媒の製造装置1を用い、芯物質をシリンジポンプ3Aに充填し、壁材物質をシリンジポンプ3Bに充填した。そして、二重管ノズル2を使用して、芯物質の周囲が壁材物質で覆われた液滴を0.4MCaCl溶液(硬化溶液)中に滴下した。この時、攪拌子10を用いて、硬化溶液を300rpmとなるように攪拌した。また、滴下の際の二重管ノズルの流量条件は、外管が20ml/h(線速度:0.78cm/s)、内管が5ml/h(線速度:0.58cm/s)となるようにした。滴下終了後、ゲル化したカプセルをCaCl溶液から取り出して水で洗浄してカプセル化触媒を得た。このカプセル化触媒を乾燥前サンプルという。一方、水で洗浄したカプセル化触媒の一部を、50℃に設定されたオーブン内で乾燥させた。このカプセル化触媒を乾燥後サンプルという。得られた乾燥前サンプル及び乾燥後サンプルにつき、カプセルの皮膜の性状を観察した。その結果を表-1に示す。
【実施例】
【0093】
以上のようにして得たカプセル化触媒を用いて、内包した菜種油がカプセルを透過して外部に流出(拡散)するか否かを調べた。具体的には、バイアルに1-ブタノール(1-BuOH)を20ml投入した後、上記カプセル化触媒をそれぞれ0.1g投入した。次いで、200~300rpmで攪拌を行った後、一定時間経過後に1-ブタノールの溶液を採取し、菜種油の吸収波長である284nmの吸光度を測定して菜種油がカプセル外へと流出(拡散)しているか否かを測定した。結果を表-1に示す。
【実施例】
【0094】
また、乾燥後サンプルについては、攪拌開始から定期的に1-ブタノールの溶液を採取して吸光度を測定し、あらかじめ測定しておいた検量線を使用して菜種油の拡散量(流出量:μl)を算出した。結果を図2及び表-2に示す。図2は、測定開始後の菜種油の流出量(拡散量)の変化を示したグラフである。同グラフ中で、「乾燥したエステル化Alg」として四角で示したデータが、エステル化アルギン酸ナトリウムをカプセルの材料に用い、乾燥後サンプルをカプセル化触媒として用いた場合であり、「乾燥したAlg」として黒丸で示したデータが、アルギン酸ナトリウムをカプセルの材料に用い、乾燥後サンプルをカプセル化触媒として用いた場合である。なお、吸光度の測定には、日本分光株式会社製のUV-vis Spectrophotometer V-560を用いた。また、表-2は、図2のグラフにプロットされたデータを示したものである。
【実施例】
【0095】
【表1】
JP0005230562B2_000003t.gif
【実施例】
【0096】
【表2】
JP0005230562B2_000004t.gif
【実施例】
【0097】
表-1から、アルギン酸ナトリウムをカプセルの材料としたカプセル化触媒は、乾燥前は菜種油がカプセル外部へと流出(拡散)していかないが、乾燥することにより菜種油のカプセル外部への流出(拡散)が可能となることがわかる。これは、乾燥によりカプセルの皮膜の水分が取り除かれたためと推測される。一方、エステル化アルギン酸ナトリウムをカプセルの材料としたカプセル化触媒は、乾燥の前後に関係なく、菜種油のカプセル外部への流出(拡散)が可能となる。これは、エステル化によりアルギン酸ナトリウムが疎水化されているため、菜種油がカプセルを透過することが可能になったものと推測される。また、カプセルの材料に関係なく、乾燥を行うことでカプセルが硬くなり、カプセル化触媒の強度が向上することがわかる。
【実施例】
【0098】
次に、図2、表-2から、アルギン酸ナトリウムとした場合と比較して、カプセルの材料をエステル化アルギン酸ナトリウムとすることで、菜種油の透過速度が大きくなることがわかる。この結果から、エステル化アルギン酸ナトリウムをカプセルの材料としたカプセル化触媒の方が工業生産により適しているといえる。
【実施例】
【0099】
(実施例2:バイオディーゼル燃料の製造)
原料油脂として菜種油100mlと、カプセル化触媒4.78gとをセパラブルフラスコに投入し、ジムロート冷却器、熱電対、攪拌羽、窒素管をつけたカバーで蓋をした。固定具で固定した後、攪拌速度を150rpmに設定し、温度調節器を用いて反応溶液が60℃になるように設定した。カプセル化触媒は、実施例1で製造した各種カプセル化触媒のうち、エステル化アルギン酸ナトリウムをカプセルの材料とし、乾燥処理を行ったもの(乾燥後サンプル)を用いた。
【実施例】
【0100】
次いで、低級アルコールとしてのメタノールを50ml加えて、バイオディーゼル燃料の合成を開始した。そして、合成開始後から定期的に反応液のサンプリングを行った。サンプリングした反応液は、遠心分離して相分離させることで、合成される脂肪酸メチルエステル(FAME)と菜種油との層を回収した。ここで、メタノールはFAMEに溶け、原料油脂にも若干溶けるので、回収したFAME/菜種油の層にメタノールが溶解していることになる。そこで、残存したメタノールを減圧留去した。こうして得られたFAMEを水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(GC-FID)にて分析した。GC-FID分析は、GLサイエンス社製GC-4000を用いて行った。
【実施例】
【0101】
GCに用いたカラムは、GLサイエンス社のCapillary column InertCapPure-WAX(0.53mmI>D.x30m df=1μm)を用いた。また、分析条件は以下のとおりとした。
Column Temp.:50℃(5min)→5℃/min→230℃(30min)
Carrier Gas:窒素
Detection :FID 250℃
【実施例】
【0102】
得られた結果を図3及び表-3に示す(「CaO内包カプセル」で示したデータ)。図3は、反応開始後からのFAME収率の経時的な変化を示すグラフである。また、表-3は、図3のグラフにプロットされたデータを示したものであるが、グラフに示したデータに加え12時間後のデータも示してある。
【実施例】
【0103】
【表3】
JP0005230562B2_000005t.gif
【実施例】
【0104】
反応終了後、触媒の分離回収を試みたところ、カプセル化触媒は、網で反応液から容易に分離することができた。
【実施例】
【0105】
(比較例1)
カプセル化触媒を用いずに市販のCaO粉末を触媒として用いたこと以外は、実施例2と同様にしてバイオディーゼル燃料の製造を行った。もっとも、反応終了後のCaO粉末の回収を網で行うことはできなかった。このため、CaO粉末を反応液から回収するためには、フィルター(0.5μm)を用いた減圧ろ過を行う必要があった。また、実施例2においては、反応液のサンプリングの際に遠心分離を行ったのは相分離した溶液を得るためであったが、比較例1では、反応液のサンプリングの際の遠心分離は、相分離した溶液を得るためだけではなく、CaO触媒を除去するためにも必要となった。
【実施例】
【0106】
反応開始後からFAME収率の経時的な変化を図3、表-3に示す(「CaO粉末」で示したデータ)。ここで、表-3は、図3のグラフにプロットされたデータを示したものであるが、グラフに示したデータに加え12時間後、24時間後のデータも示してある。
【実施例】
【0107】
図3からわかるように、反応の誘導期が、カプセル化触媒を用いた場合(CaO内包カプセル)は1時間25分程度、触媒そのものを用いた場合(CaO粉末)は4時間45分程度となっている。ここで、反応の誘導期とは、図3のグラフに引いた実線からわかるように、収率の時間に対する変化量(反応速度)が最大となる箇所で接線を引き、この接線が時間軸(X軸)と交わる点における時間によって定義される値である。このように、カプセル化触媒を用いることにより反応の誘導期が短くなっており、触媒の活性が高まっていることがわかる。また、FAME収率が75%以上に達する時間も、カプセル化触媒を用いた場合は5時間程度、触媒そのものを用いた場合は8時間程度となっており、カプセル化触媒を用いることにより反応時間を4割程度短くすることができることがわかる。
【符号の説明】
【0108】
1 カプセル化触媒の製造装置
2 二重管ノズル
3A,3B シリンジポンプ
4A,4B チューブ
5 二重管ノズルの内管
6 二重管ノズルの外管
7 リザーバー
8 攪拌装置
9 容器
10 攪拌子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2