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明細書 :自律移動方法及び自律移動体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4910219号 (P4910219)
公開番号 特開2011-107924 (P2011-107924A)
登録日 平成24年1月27日(2012.1.27)
発行日 平成24年4月4日(2012.4.4)
公開日 平成23年6月2日(2011.6.2)
発明の名称または考案の名称 自律移動方法及び自律移動体
国際特許分類 G05D   1/02        (2006.01)
FI G05D 1/02 J
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2009-261503 (P2009-261503)
出願日 平成21年11月17日(2009.11.17)
審査請求日 平成23年6月17日(2011.6.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】尾崎 功一
【氏名】サム アン ラホック
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100100077、【弁理士】、【氏名又は名称】大場 充
【識別番号】100136010、【弁理士】、【氏名又は名称】堀川 美夕紀
審査官 【審査官】佐藤 彰洋
参考文献・文献 特開2001-296923(JP,A)
特開2008-052324(JP,A)
特開2002-108447(JP,A)
調査した分野 G05D 1/02
B25J 5/00
B25J 13/08
B65G 1/00
B61B 13/00-13/12
特許請求の範囲 【請求項1】
移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め測定して得られた環境磁気データと、前記移動体が前記移動経路に倣って移動する際に、前記移動経路に沿って生じている磁気を実測して検知する実測磁気と、を比較しながら前記移動体を自律移動させる方法であって、
前記移動体上の異なる位置で第1実測磁気と第2実測磁気とを検知するステップ(a)と、
前記環境磁気データとの整合性により特定される前記第1実測磁気又は前記第2実測磁気と環境磁気データとに基づいて、前記移動体を自律移動させるステップ(b)と、
を備え
前記ステップ(b)は、
前記第1実測磁気と前記環境磁気データの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させている最中に、前記第1実測磁気として前記環境磁気データに含まれない予期せぬ磁気が検出されると、
前記第2実測磁気と前記環境磁気データとの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させる、
ことを特徴とする自律移動方法。
【請求項2】
前記ステップ(b)は、
前記第2実測磁気と前記環境磁気データの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させている最中に、前記第2実測磁気として前記予期せぬ磁気が検出されると、
前記第1実測磁気と前記環境磁気データとの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させる、
請求項に記載の自律移動方法。
【請求項3】
前記第1実測磁気と前記第2実測磁気は、前記移動体の進行方向及び前記進行方向に直交する方向のいずれか一方又は双方に間隔をあけて検知される請求項1又は2に記載の自律移動方法。
【請求項4】
移動経路に沿って生じている磁気を予め測定して得られた環境磁気データと、
前記移動体が前記移動経路に倣って移動する際に、前記移動経路に沿って生じている磁気を実測して検知する実測磁気と、を比較しながら自律移動する移動体であって、
前記移動体上に設けられ、第1実測磁気を検知する第1磁気センサと、
前記第1磁気センサと異なる前記移動体上の位置に設けられ、第2実測磁気を検知する第2磁気センサと、
前記環境磁気データを記憶する記憶部と、
前記環境磁気データと整合する前記第1実測磁気又は前記第2実測磁気と環境磁気データとに基づいて、前記移動体を自律移動させる制御部と、
備え
前記制御部は、
前記第1実測磁気と前記環境磁気データの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させている最中に、前記第1実測磁気として前記環境磁気データに含まれない予期せぬ磁気が検出されると、
前記第2実測磁気と前記環境磁気データとの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させる、
ことを特徴とする自律移動体。
【請求項5】
前記第2実測磁気と前記環境磁気データの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させている最中に、前記第2実測磁気として前記予期せぬ磁気が検出されると、
前記第1実測磁気と前記環境磁気データとの比較結果に基づいて前記移動体を自律移動させる、
請求項に記載の自律移動体。
【請求項6】
前記第1磁気センサと前記第2磁気センサは、前記移動体の進行方向及び前記進行方向に直交する方向のいずれか一方又は双方に間隔をあけて設けられる請求項4又は5に記載の自律移動体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を目印にしてロボット等を自律移動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場面において、多種多様なロボットが活動している。中でも移動中に自己位置を認識しながら、自律移動するロボットは、工場内やオフィス内、病院内などでの人間の手助けになるものとして期待され、その研究が盛んに行われている。
自律移動させるための誘導方式の一つとして磁気を目印とするものが知られている。これは、典型的には、移動経路上に例えば磁気テープからなる磁気マーカを設置し、ロボットに磁気マーカから発せられる磁気を検出する磁気センサを設け、磁気センサにより磁気マーカを検知することにより、自己位置を認識するものである(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
しかし、磁気マーカを設置する方法は、事前に環境の磁場分布を求め、磁気的なノイズの少ないところに磁気マーカを設置しなければならない。したがって、磁気マーカを設置する作業にかかる負担が大きい。この負担は、移動経路を変更する際にも生ずる。また、磁気マーカは、一般に床に設置されるが、床面上に磁気マーカを設置することが美観上好ましくない場合がある。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2002-73171号公報
【特許文献2】特開2007-219960号公報
【0004】

【非特許文献1】新納敏文 “環境磁場計測方法の事例調査(その3)”,日本建築学会大会学術講演梗概集,1996年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建屋を構成する鉄骨や鉄節、建屋内に設置される装置、家具、電器製品等の構成要素である鉄部材などの強磁性体は製造及び施工の過程で不可避的に着磁され残留磁気を帯びている。この残留磁気は、時間の経過に対して強さがほとんど変動しない(非特許文献1)。そこで本発明者等は、磁気を自己位置認識の目印として利用することを前提とするが、磁気マーカを新たに設置して生ずる磁気を利用するのではなく、以上のように屋内外の環境に依存して生じている磁気(以下、「環境磁気」と称する)を記憶しておき、この環境磁気データと実測された磁気とを比較することで自己位置を認識して自律移動する手法を先に提案している(特願2008-142792)。
【0006】
ところが、環境磁気を利用する自律移動を屋外で行うと、しばしばロボットが自己位置を誤って認識してしまい、設定された移動経路からずれることを本発明者等は経験した。
そこで本発明は、環境磁気を利用する自律移動を屋外で行う場合でも、ロボットが自己位置を誤って認識するのを防ぐことのできる自律移動方法及び自律移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、環境磁気を利用する自律移動を屋外で行う場合に生じる自己位置の誤認識の原因について検討したところ、以下のことを知見した。
(1)環境磁気データは、移動経路上を連続的にもれなく採取することが好ましい。しかし、それではデータ数が多くなり、演算処理に時間がかかりすぎるため、移動体の速度が遅くなり、現実的ではない。したがって、移動経路上の所定間隔ごとに環境磁気データを採取するので、データ採取地点間で実際には生じている磁気を反映していない磁気マップが作成されることがある。例えば、屋外に設置されるマンホール、側溝の蓋、街頭の鉄柱等の鉄製の部材は帯磁しているが、磁気マップを作成する際にはこれら部材に生じている磁気を測定しないため、当該領域における環境磁気データと実測される環境磁気(実測磁気)は当該領域において整合しない。したがって、当該領域に達すると、自己位置を認識できなくなることがある。
【0008】
(2)環境磁気は建屋等の固定物が発する静的なもののみを想定していたが、屋外では磁気を持った物体が走行する。例えば、自動車、オートバイなどである。これらは動的な環境磁気といえるが、動的な磁気が近くを通ると、静的な磁気に動的な磁気を加えたものが実測された環境磁気として検知される。したがって、静的な環境磁気だけを対象として作成された環境磁気データと実測磁気とは整合しない。したがって、動的な磁気が生じると、自己位置を認識できなくなることがある。
【0009】
以上のように、実測磁気が環境磁気データにはない予期せぬ磁気を含む場合には、そのままでは移動体は移動経路からずれて走行することになる。しかし、例えば、図7(a)に示すように、帯磁しているマンホール101について考えると、移動体100の進行方向(白抜き矢印)前方に設けられる磁気センサ102がマンホール101からの磁気G(実線矢印)の影響を受けて当該磁気を検出していても、移動体100の後方はマンホール101からの磁気の影響を受けない。なお、マンホール101からの磁気は、図7に示すように、上向きに生じている。
【0010】
そこで、図7(b)に示すように、移動体100の後方にも磁気センサ103を設ける。そして、磁気センサ102がマンホール101からの磁気Gの影響を受けている間は、磁気センサ103で実測される磁気と環境磁気データとを比較して、その結果に基づいて移動体100を自律移動させる。
さらに、図7(c)に示すように、磁気センサ102が磁気Gの影響を受けず、かつ磁気センサ103が磁気Gの影響を受ける位置まで移動体100が進めば、今度は、磁気センサ102で実測される磁気と環境磁気データとを比較して、その結果に基づいて移動体100を自律移動させる。
【0011】
以上のように、2つの磁気センサ102,103を移動体100の異なる位置に設け、磁気センサを選択的に使用することで、移動体100はマンホール101からの磁気Gの影響によって、自己位置を誤認識するのを防ぐことができる。このことは、移動体上の異なる位置で検出される少なくとも2つの環境磁気(実測磁気)の中で、環境磁気データと整合する実測磁気と環境磁気データとを比較することで、環境磁気データには反映されていない予期せぬ磁気が検出されたとしても、自己位置の誤認識を防げることを示唆している。
本発明は、以上の検討結果に基づくものであり、移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め測定して得られた環境磁気データと、移動体が移動経路に倣って移動する際に、移動経路に沿って生じている磁気を実測して検知される実測磁気と、を比較しながら移動体を自律移動させることを前提とする。
そして、以下の2つのステップ(a)、(b)を備えることを本発明の自律移動方法は特徴とする。すなわち、1つ目のステップ(a)は、移動体上の異なる位置で第1実測磁気と第2実測磁気とを検知する。また、2つ目のステップ(b)は、環境磁気データと整合する第1実測磁気又は第2実測磁気と環境磁気データとに基づいて、移動体を自律移動させる。
【0012】
ステップ(b)は、具体的には、第1実測磁気と環境磁気データの比較結果に基づいて移動体を自律移動させている最中に、第1実測磁気として環境磁気データに含まれない予期せぬ磁気が検出されると、第2実測磁気と環境磁気データとの比較結果に基づいて移動体を自律移動させることができる。そしてさらに、第2実測磁気と環境磁気データの比較結果に基づいて移動体を自律移動させている最中に、第2実測磁気として予期せぬ磁気が検出されると、第1実測磁気と環境磁気データとの比較結果に基づいて移動体を自律移動させることができる。
【0013】
本発明は、以上の自律移動方法を実行できる以下の移動体をも提供する。
この移動体は、移動経路に沿って生じている磁気を予め測定して得られた環境磁気データと、移動体が移動経路に倣って移動する際に、移動経路に沿って生じている磁気を実測して検知する実測磁気と、を比較しながら自律移動される。
この移動体上には、第1磁気センサと第2磁気センサが設けられる。第2磁気センサは第1磁気センサと異なる移動体上の位置に設けられる。したがって、第1磁気センサと第2磁気センサは、移動体上の異なる位置で磁気を検出する。また、移動体は、環境磁気データを記憶する記憶部を備える。
そして、本発明の移動体は、環境磁気データと整合する第1実測磁気又は第2実測磁気と環境磁気データとに基づいて、移動体を自律移動させる制御部を備える。
【0014】
制御部の具体的な制御手順としては、第1実測磁気と環境磁気データの比較結果に基づいて移動体を自律移動させている最中に、第1実測磁気として環境磁気データに含まれない予期せぬ磁気が検出されると、第2実測磁気と環境磁気データとの比較結果に基づいて移動体を自律移動させる。そしてさらに、第2実測磁気と環境磁気データの比較結果に基づいて移動体を自律移動させている最中に、第2実測磁気として予期せぬ磁気が検出されると、第1実測磁気と環境磁気データとの比較結果に基づいて移動体を自律移動させる。
【0015】
本発明の移動体において、第1磁気センサと第2磁気センサは、移動体の進行方向及び進行方向に直交する方向のいずれか一方又は双方に間隔をあけて設ければよい。そうすることで、第1磁気センサ及び第2磁気センサの一方が予期せぬ磁気の影響を受けても他方が予期せぬ磁気の影響を受けないようにすることができる。なお、第1磁気センサと第2磁気センサの間隔は、移動体が移動する環境に応じて適宜定められるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、実測磁気が予期せぬ磁気を含んでいても、移動体上の異なる位置で検出される少なくとも2つの実測磁気の中で、予期せぬ磁気の影響を受けない実測磁気と環境磁気データとを比較することで、自己位置を誤認することなく、自律移動ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態に係るロボット(移動体)の構成を示すブロック図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
【図2】本実施の形態に係るロボットの制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態に係るロボットの主磁気センサにより検知される主実測磁気と副磁気センサにより検出される副実測磁気を対応して示すグラフである。
【図4】本実施の形態に係るロボットの主磁気センサにより検知される主実測磁気と副磁気センサにより検出される副実測磁気を対応して示すグラフであり、予期せぬ磁気を含む場合を示す。
【図5】本実施の形態に係るロボットの移動経路を示す図である。
【図6】本実施の形態に係るロボットの移動の向きを決める方法を説明する図である。
【図7】本発明の概念を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態にかかる車輪型のロボット(移動体)1は、図1に示すように、箱状の本体2の前後方向中央下部に左右一対の駆動輪3,4を備えると共に、本体2のほぼ四隅下部に夫々補助輪5を備えている。
本体2の前方には主磁気センサ(第1磁気センサ)21、方位センサ40が、後方には副磁気センサ(第2磁気センサ)22が設けられている。主磁気センサ21と副磁気センサ22は間隔Lを隔てて設けられている。主磁気センサ21、方位センサ40、副磁気センサ22は、本体2の内部に設置された制御部50と電気的に接続されている。
なお、ここでは主磁気センサ21、副磁気センサ22を本体2の内部に設けた例を示しているが、本体2とともに移動できるのであれば、本体2の外部に主磁気センサ21、副磁気センサ22を設けることもできる。

【0019】
主磁気センサ21、副磁気センサ22は、互いに直交する3軸に沿った直流磁気(以下、単に磁気)を測定できる。ここで、3軸は、ロボット1の進行方向に沿ったx軸、床面に平行でx軸に直行するy軸、鉛直方向に平行でx軸に直行するz軸とからなる。測定される磁気は、後述する環境磁気データの作成、及び自律移動時に環境磁気データと比較される実測磁気としてに用いられる。
方位センサ40は、角速度を測定する。角速度はロボット1が経由地で向きを変えるのに用いられる。本実施の形態では、主磁気センサ21、副磁気センサ22と方位センサ40とが別体の例を示しているが、各々を一体とした磁気・方位センサを用いることもできる。

【0020】
<制御部50>
次に、図2を参照して、制御部50について説明する。
制御部50は、走行制御部60と、記憶部70と、演算処理部80を備え、CPU、ROM、RAM等及び入出力回路等を備えたコンピュータから構成される。
<走行制御部60>
制御部50において、各駆動輪3,4は、夫々駆動モータ6,7により図示しない減速機を介して回転駆動されるようになっている。また、駆動モータ6,7には、駆動輪3,4の回転速度(回転数)を検出するためのロータリエンコーダ8,9が夫々付設されている。さらに、これら駆動モータ6,7は、走行制御部60により夫々独立して駆動制御されるようになっている。走行制御部60は、駆動モータ6,7を異なる回転数で回転させることにより、ロボット1の向きを変えることができる。

【0021】
<記憶部70>
記憶部70は、第1記憶部71と、第2記憶部72と、第3記憶部73とを備えている。
第1記憶部71には、環境磁気データが記憶される。環境磁気データは、ロボット1を移動させる経路に沿って、予め主磁気センサ21、副磁気センサ22により検知された磁気と当該磁気が検知された位置とが関係付けられたデータである。このデータとしては、主磁気センサ21についてのもの(主環境磁気データ)と、副磁気センサ22についてのもの(副環境磁気データ)の2セットが記憶されている。ロボット1が自律走行する際に検知される実測磁気とこの環境磁気データを対比させることにより、ロボット1の移動する向きを制御する。
例えば、図6に示すように、環境磁気データは、x軸が移動経路上の位置、y軸が磁気の強さのグラフとして視覚化できる。この磁気の強さは、例えば鉛直方向の磁気の強さで表すことができるが、水平方向の磁気の強さで表すこともでき、本発明において制限はない。
また、環境磁気データは、ロボット1の移動経路上を連続的に記憶されていることが好ましい。しかし、この方法は現在の技術レベルでは現実的ではない。ロボットの移動経路が長くなると、実測磁気との比較処理に相当の時間がかかってしまい、移動速度が著しく遅くなるからである。そこで、所定間隔毎に環境磁気データを記憶することが現実的である。

【0022】
第2記憶部72には、走行制御部60、演算処理部80が行う種々の制御に関するプログラムが記憶されている。
第3記憶部73には、いくつかのブロックに分けられた移動経路のルート毎に、進むべき向きと距離とが対応付けて経路情報が記憶されている。例えば、図5を例にすると、経由地Aから経由地Bまでのルートを移動する場合に、経由地Aにおいてロボット1がφ1°だけ半時計回りに向きを変えるとともに、距離DA-Bだけ経由地Bに向けて前進するとすれば、経由地Aと対応付けて(-φ1°,DA-B)が第3記憶部73に記憶されている。なお、始点(Start)から経由地Aまで、経由地Aから経由地Bまで、経由地Bから経由地Cまで、経由地Cから終点(Goal)までの各々の間を「ルート」と言い、スタートからゴールまでの各ルートを結んだものを移動経路と言う。

【0023】
<演算処理部80>
次に、演算処理部80は、磁気比較部81とセンサ選択部82を備えている。
磁気比較部81は、第1記憶部71に記憶されている主環境磁気データと、主磁気センサ21で検知される実測磁気(主実測磁気)とを比較する。また、磁気比較部81は、第1記憶部71に記憶されている副環境磁気データと、副磁気センサ22で検知される実測磁気(副実測磁気)とを比較する。この比較により、主環境磁気データと主実測磁気が整合されているか、また、副環境磁気データと副実測磁気が整合されているかの判断がなされる。主実測磁気又は副実測磁気に予期せぬ磁気が含まれていると、主環境磁気データと副実測磁気が整合されていないか、または、副環境磁気データと副実測磁気が整合されていないと判断され、この結果はセンサ選択部82に出力される。

【0024】
センサ選択部82は、各ルートを自律移動する際にロボット1の向きの修正のために使用するセンサとして、主磁気センサ21及び副磁気センサ22のいずれか一方を選択する。この選択は、磁気比較部81から知らされる上記判断結果に基づいている。つまり、主環境磁気データと主実測磁気が整合されていないとの判断結果であれば副磁気センサ22を選択し、副環境磁気データと副実測磁気が整合されていないとの判断結果であれば主磁気センサ21を選択する。選択されていることを、以下、「アクティブ」ということがある。ただし、デフォルト状態では、主磁気センサ21が選択されており、主環境磁気データと副実測磁気が整合されていないとの判断結果がなされない限り、主磁気センサ21で検知される主実測磁気と主環境磁気データを比較しながら、主実測磁気が主環境磁気データに一致するように向きを制御されながら、ロボット1は自律移動する。

【0025】
ロボット1が各ルートを移動する際には、以下のようにしてロボット1の向きが制御される。
前述したように、デフォルト状態では、主磁気センサ21で検知される実測磁気と主環境磁気データとの比較に基づいて、ロボット1の向きを制御する。より具体的には、図6において、実測磁気と主環境磁気データとの間に偏差△Gがあるのは、正規のルートに対するロボット1の向きに偏差△θがあるからである。したがって、磁気の偏差△Gをなくすようにロボット1の向きを制御することで、ロボット1を正しい向きでルートを自律移動させることができる。そのために、磁気比較部81は、実測磁気と主環境磁気データとの偏差△Gから方位を求め、車両移動値演算部85に出力する。

【0026】
演算処理部80は、方位比較部83と、移動距離演算部84を備えている。
方位比較部83は、方位センサ40により検出される角速度を積算(デフォルト値は最初のルートに対して0度)して、ルートに対する向き(角度θ)を算出する。算出された向きは、車両移動値演算部85に出力される。
また、移動距離演算部84は、ロータリエンコーダ8,9からそれぞれ入力されるパルスを別々にカウントし、カウントした値に1パルス当りの移動量を乗算してそれまでの移動距離を求める。ここでは2つの移動距離が求められるが、その平均値を移動距離として車両移動値演算部85へ出力される。

【0027】
車両移動値演算部85は、ロボット1の位置情報を求める。この位置情報は、x及びyで示される平面座標に加えて、走行経路に対する向き(角度θ)により特定される((x,y,θ))。
車両移動値演算部85は、第3記憶部73から経路情報を読み出す。この経路情報は、前述したように、向き情報と移動距離情報とが対応付けられている(例えば、(-φ1°,DA-B))。車両移動値演算部85は、移動距離演算部84から取得した移動距離Sと移動距離情報とからルートの終点に到達するまでの残移動距離を求める。この残移動距離は、走行制御部60へ出力される。

【0028】
車両移動値演算部85は、磁気比較部81から取得する実測磁気と主環境磁気データとの偏差△Gが0(ゼロ)になるように、ロボット1が向きを変える角度(回転角)を求める。この回転角は、走行制御部60へ出力される。この向きの調整は、フィードバック制御により行うことができる。

【0029】
車両移動値演算部85は、また、ロボット1がルートの終点に到達すると、方位比較部83から取得したルートに対する向き(角度θ)情報と経路情報の中の向き情報とから、経由地においてロボット1が向きを変える角度(回転角)を求める。この回転角は、走行制御部60へ出力される。

【0030】
<走行制御部60>
走行制御部60は、車両移動値演算部85で求められた残移動距離に基づいて、ロボット1をルートに沿って次の経由地まで移動するように、駆動モータ6,7に駆動指令を出力する。また、走行制御部60は、車両移動値演算部85で求められた回転角に基づいて、経由地に到達すると、ロボット1の向きを次のルートに合うようにかえるために、駆動モータ6,7に駆動指令を出力する。

【0031】
<主磁気センサ21、副磁気センサ22のアクティブ変更>
次に、本実施の形態の特徴部分について図3~図5を参照して説明する。
主磁気センサ21に対して副磁気センサ22は距離Lだけ後方(進行方向を基準にして)に配置されている。したがって、図3に示すように、主磁気センサ21で検知される主実測磁気に対して、副磁気センサ22で検知される副実測磁気は、距離Lに相当する分だけ遅れて検知される。図3に示される主実測磁気、副実測磁気には予期せぬ磁気が含まれていないので、主磁気センサ21がアクティブになっている。なお、図3において、○、●及び△は、位置が同じであることを示している。

【0032】
次に、予期せぬ磁気を検知する場合について、図4を参照して説明する。なお、図4において、実線で実測磁気が示されている間に該当する磁気センサがアクティブになっていることを示す。
ロボット1が移動を開始してからt3時間を経過したところで、アクティブである主磁気センサ21が予期せぬ磁気UGを主実測磁気として検知する。そうすると、磁気比較部81は主実測磁気と主環境磁気データとを比較することにより主磁気センサ21が予期せぬ磁気UGを検知したことを判断し、センサ選択部82に出力する。センサ選択部82は、これに基づき副磁気センサ22をアクティブとする一方、主磁気センサ21を非アクティブとする。このことは、図4に、主磁気センサ21による主実測磁気が点線で、副磁気センサ22による副実測磁気が実線で示されている。

【0033】
副磁気センサ22がアクティブとなって、向きを調整しながらロボット1は自律移動を続けるが、ロボット1が距離Lだけ進むと、副磁気センサ22が予期せぬ磁気UGを検知することがある。そうすると、磁気比較部81は副実測磁気と副環境磁気データとを比較することにより副磁気センサ22が予期せぬ磁気UGを検知したことを判断し、センサ選択部82に出力する。センサ選択部82は、これに基づき主磁気センサ21をアクティブとする一方、副磁気センサ22を非アクティブとする。このことは、図4に、主磁気センサ21による主実測磁気が実線で、副磁気センサ22による副実測磁気が点線で示されている。
なお、予期せぬ磁気UGとしてマンホール等の固定物による磁気、動的な磁気があるが、これらは環境磁気データに比べて急激な変化を示すのが通常であり、環境磁気データと整合するか否かを容易に判断できる。

【0034】
<自律移動の例>
以上のロボット1が、図5に示すように、始点(Start)から終点(Goal)に自律移動する場合には、始点から移動を開始して経由地Aに到達するまで、ロボット1は、主磁気センサ21がアクティブとなって前進する。
ロボット1は、経由地Aに到達すると、半時計周りにφ1だけ向きを変えた後に、経由地Bに向けて移動する。この間も主磁気センサ21がアクティブとなっている。
ロボット1は、経由地Bに到達すると、時計周りにφ1+φ2だけ向きを変えた後に、経由地Cに向けて移動する。経由地Bと経由地Cの間には、予期せぬ磁気UGが生じている。そうすると、ロボット1が進んで主磁気センサ21が予期せぬ磁気UGを検知すると、主磁気センサ21は非アクティブとされる一方、副磁気センサ22がアクティブとされる。その後、副磁気センサ22が予期せぬ磁気UGを検知すれば、主磁気センサ21はアクティブとされる一方、副磁気センサ22が非アクティブとされ、経由地Cまでロボット1は自律移動する。
ロボット1は、経由地Cに到達すると、時計周りにφ3-φ2だけ向きを変えた後に、終点に向けて自律移動する。

【0035】
以上説明したように、ロボット1は主磁気センサ21と副磁気センサ22を備え、いずれか一方がアクティブとなってロボット1の向きを制御しながら自律移動する過程で、環境磁気データとの整合しない予期せぬ磁気を検知すると、他方をアクティブにしてロボット1の向きを制御できる。したがって、ロボット1は、予期せぬ磁気に遭遇しても、自己位置を誤認識することなく自律移動を続けることができる。

【0036】
以上の実施の形態では、副磁気センサ22がアクティブとなった後に副磁気センサ22が予期せぬ磁気UGを検知する例について説明したが、そうなるとは限らない。つまり、主磁気センサ21と副磁気センサ22は、ロボット1の幅方向(進行方向に直交する方向)に間隔があけられているので、主磁気センサ21で検知した予期せぬ磁気が副磁気センサ22に検知されるとは限らない。そうすると、副磁気センサ22がアクティブなままで、ロボット1が移動経路の終点に到着することがある。その後、副磁気センサ22が予期せぬ磁気UGを検知しなければ、主磁気センサ21が非アクティブ、副磁気センサ22がアクティブのままで経由地Cを通って終点までロボット1は自律移動する。
また、以上の実施の形態では、主磁気センサ21と副磁気センサ22がロボット1の進行方向に間隔をあけていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロボット1の幅方向のみに間隔をあけて主磁気センサ21と副磁気センサ22を設けることができるし、ロボット1の高さ方向のみに間隔をあけて主磁気センサ21と副磁気センサ22を設けることもできる。

【0037】
さらに、以上の実施形態では磁気センサを主磁気センサ21と副磁気センサ22の2つとしていたが、磁気センサの数は2つに限らず、3つ又はそれ以上としても本発明を実現できることは言うまでもない。
さらにまた、本発明は移動体上の異なる位置で検出される少なくとも2つの環境磁気の中で、予期せぬ磁気の影響を受けない実測磁気と環境磁気データとを比較することを要旨とするものであり、この部分を除く移動体の自立移動の制御方法は上記実施の形態に限定されない。
また、ここでは磁気センサと方位センサでロボット1の自律移動を行う例を示したが、他のセンシング手段、例えば距離センサ等をさらに組み合わせて自律移動を行うことを本発明は許容する。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1…ロボット
21…主磁気センサ(第1磁気センサ)、22…副磁気センサ(第2磁気センサ)
50…制御部、60…走行制御部、70…記憶部
80…演算処理部
81…磁気比較部、82…センサ選択部、83…方位比較部、84…移動距離演算部
85…車両移動値演算部、86…自律移動演算部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4
【図6】
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【図7】
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