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明細書 :自律移動方法及び自律移動体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5656214号 (P5656214)
公開番号 特開2012-003298 (P2012-003298A)
登録日 平成26年12月5日(2014.12.5)
発行日 平成27年1月21日(2015.1.21)
公開日 平成24年1月5日(2012.1.5)
発明の名称または考案の名称 自律移動方法及び自律移動体
国際特許分類 G05D   1/02        (2006.01)
FI G05D 1/02 H
請求項の数または発明の数 6
全頁数 20
出願番号 特願2010-134737 (P2010-134737)
出願日 平成22年6月14日(2010.6.14)
審査請求日 平成25年6月14日(2013.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】尾崎 功一
【氏名】サム アン ラホック
【氏名】鹿内 佳人
個別代理人の代理人 【識別番号】100100077、【弁理士】、【氏名又は名称】大場 充
【識別番号】100136010、【弁理士】、【氏名又は名称】堀川 美夕紀
審査官 【審査官】青山 純
参考文献・文献 特開平05-196711(JP,A)
特開2009-289145(JP,A)
特開2000-266784(JP,A)
調査した分野 G05D 1/02
特許請求の範囲 【請求項1】
出発地から目的地まで移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め計測して得られた教示データを記憶するデータ登録ステップ(a)と、
前記移動経路に沿って生じている磁気を計測して得られる実測データと前記教示データとを比較して前記教示データに対する前記実測データの偏差を求めるとともに、前記偏差を解消するように前記移動体の移動を制御しながら前記移動経路に倣って前記移動体を自律移動させる移動ステップ(b)と、を備え、
前記データ登録ステップ(a)は、
互いに相反する向きの第1教示データと第2教示データを計測して記憶し、
前記移動ステップ(b)は、
互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測するとともに、
前記第1実測データと前記第1教示データとを比較することで第1偏差を求めるとともに、前記第1偏差を解消するように前記移動体の移動を制御する第1制御ステップと、
次いで、前記第2実測データと前記第2教示データとを比較することで第2偏差を求めるとともに、前記第2偏差を解消するように前記移動体の移動を制御する第2制御ステップと、を含み、
前記第1制御ステップと前記第2制御ステップとを交互に切り替える、
ことを特徴とする移動体の自律移動方法。
【請求項2】
前記データ登録ステップ(a)において、
所定の間隔L毎に計測される前記第1教示データと前記第2教示データを記憶し、
前記移動ステップ(b)において、
前記移動体が前記間隔Lを移動する間に、前記第1制御ステップと前記第2制御ステップとを少なくとも一度は切り替える、
請求項に記載の自律移動方法。
【請求項3】
出発地から目的地まで移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め計測して得られた教示データを記憶するデータ登録ステップ(a)と、
前記移動経路に沿って生じている磁気を計測して得られる実測データと前記教示データとを比較して前記教示データに対する前記実測データの偏差を求めるとともに、前記偏差を解消するように前記移動体の移動を制御しながら前記移動経路に倣って前記移動体を自律移動させる移動ステップ(b)と、を備え、
前記データ登録ステップ(a)は、
互いに相反する向きの第1教示データと第2教示データを計測して記憶し、
前記移動ステップ(b)は、
互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測するとともに、前記第1実測データと前記第2実測データの平均値である平均実測データを求め、
前記平均実測データと、前記第1教示データと前記第2教示データの平均値である平均教示データとの偏差を解消するように前記移動体の移動を制御する、
ことを特徴とする移動体の自律移動方法。
【請求項4】
出発地から目的地まで移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め計測して得られた教示データを記憶し、前記移動経路に沿って生じている磁気を計測して得られる実測データと前記教示データとを比較して前記教示データに対する前記実測データの偏差を求めるとともに、前記偏差を解消するように前記移動体の移動を制御しながら前記移動経路に倣って自律移動する自律移動体であって、
前記教示データとして、互いに相反する向きの第1教示データと第2教示データを計測するセンサ部と、
前記センサで計測された第1教示データと第2教示データを記憶する記憶部と、
前記センサ部が前記実測データとして、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測すると、
前記第1実測データと前記第1教示データとを比較することで第1偏差を求めるとともに、前記第1偏差を解消するように前記移動体の移動を制御する第1制御ステップと、
次いで、前記第2実測データと前記第2教示データとを比較することで第2偏差を求めるとともに、前記第2偏差を解消するように前記移動体の移動を制御する第2制御ステップと、を交互に切り替えて前記移動体を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする自律移動体。
【請求項5】
前記記憶部は、
所定の間隔L毎に計測される前記第1教示データと前記第2教示データを記憶し、
前記制御部は、
前記移動体が前記間隔Lを移動する間に、前記第1制御ステップと前記第2制御ステップとを少なくとも一度は切り替える、
請求項に記載の自律移動体。
【請求項6】
出発地から目的地まで移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め計測して得られた教示データを記憶し、前記移動経路に沿って生じている磁気を計測して得られる実測データと前記教示データとを比較して前記教示データに対する前記実測データの偏差を求めるとともに、前記偏差を解消するように前記移動体の移動を制御しながら前記移動経路に倣って自律移動する自律移動体であって、
前記教示データとして、互いに相反する向きの第1教示データと第2教示データを計測するセンサ部と、
前記センサで計測された第1教示データと第2教示データを記憶する記憶部と、
前記センサ部が前記実測データとして、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測すると、前記第1実測データと前記第2実測データの平均値である平均実測データを求め、かつ、
前記平均実測データと、前記第1教示データと前記第2教示データの平均値である平均教示データとの偏差を解消するように前記移動体の移動を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする自律移動体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を目印にしてロボット等を自律移動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場面において、多種多様なロボットが活動している。中でも移動中に自己位置を認識しながら、自律移動するロボットは、工場内やオフィス内、病院内などでの人間の手助けになるものとして期待され、その研究が盛んに行われている。
自律移動させるための誘導方式の一つとして磁気を目印とするものが知られている。これは、典型的には、移動経路上に例えば磁気テープからなる磁気マーカを設置し、ロボットに磁気マーカから発せられる磁気を検出する磁気センサを設け、磁気センサにより磁気マーカを検出することにより、自己位置を認識するものである(たとえば、特許文献1、特許文献2)。
しかし、磁気マーカを設置する方法は、事前に環境の磁場分布を求め、磁気的なノイズの少ないところに磁気マーカを設置しなければならない。したがって、磁気マーカを設置する作業にかかる負担が大きい。また、磁気マーカは、一般に床に設置されるが、床面上に磁気マーカを設置することが美観上好ましくない場合がある。
【0003】
建屋を構成する鉄骨や鉄筋、建屋内に設置される装置、家具、電器製品等の構成要素である鉄部材などの強磁性体は製造及び施工の過程で不可避的に着磁され残留磁気を帯びている。この残留磁気は、時間の経過に対して強さがほとんど変動しない(非特許文献1)。そこで本発明者等は、磁気を自己位置認識の目印として利用することを前提とするが、磁気マーカを設置するのではなく、以上のように屋内外の環境に依存して生じている磁気(環境磁場)を予め教示データとして登録しておき、この教示データと移動時に計測される実測データとを比較することで自己位置を認識して自律移動する手法を先に提案している(特許文献3)。この環境磁気は、地磁気をも含んでいる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2002-73171号公報
【特許文献2】特開2007-219960号公報
【特許文献3】特開2009-289145号公報
【0005】

【非特許文献1】新納敏文,「環境磁場計測方法の事例調査(その3)」日本建築学会大会学術講演梗概集,1996.9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、環境磁場を利用する自律移動を屋外で行うと、しばしばロボットが自己位置を誤って認識してしまい、設定された移動経路からずれることを本発明者等は経験した。
そこで本発明は、環境磁場を利用する自律移動を屋外で行う場合でも、ロボットが自己位置を誤って認識するのを防ぐことのできる自律移動方法及び自律移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
環境磁場を利用する自律移動方法において、ロボットが自己位置を誤認識する要因として、予め登録されている教示データと移動時に計測される実測データとの間に大きな偏差があることが掲げられる。教示データを計測・登録した後に、強い時期を帯びた物体(帯磁物)が後発的に当該移動経路の近傍に置かれ、その状態で実測データを計測すると、教示データと実測データの間には大きな差が生じる。取り除くことのできる帯磁物であれば、それを取り除けばよい。ところが、帯磁物を外観上は認識することができないにもかかわらず、ロボットが自己位置を誤認識することを本発明者等は経験した。したがって、このような場合であってもロボットが自己位置を認識できることが、環境磁場を目印とする自律走行にとって重要である。
【0008】
環境磁場には、経時的に安定して生じているもの(以下、安定な磁気要素)と、環境の変化に伴って生じるもの(不安定な磁気要素)とから構成されている。安定な磁気要素は、比較的大きな構造物に由来して生じているものである。これに対して、不安定な磁気要素は、例えば、地中に埋設されている比較的小さな部材(鉄などの磁性体からなる)に基づいて生じるもの、あるいは時間周期的に磁気が変動するものに基づいているものと本発明者は理解している。すなわち、気温が変動する場合を考えると、大きな構造物はそれ自体の温度が変動しにくいため、当該構造物から生じる磁場は変動し難い。つまり、大きな構造物から生ずるのは安定した磁気要素である。これに対して、小さな部材は、気温に応じて温度が変動しやすいため、当該部材から生じる磁場は変動しやすい。この変動に伴い不安定な磁気要素が生じる。不安定な磁気要素は、気温の変動以外にも、例えば自動車が該当する。走行してきた自動車がロボットの移動経路の近傍に駐車した場合には、この自動車は不安定な磁気要素を生じさせる。
【0009】
不安定な磁気要素の影響を自律移動中に取り除くことを趣旨とする本発明の自律移動方法は、出発地から目的地まで移動体が移動する移動経路に沿って生じている磁気を予め計測して得られた教示データを記憶するデータ登録ステップ(a)と、移動経路に沿って生じている磁気を計測して得られる実測データと教示データとを比較して教示データに対する実測データの偏差を求めるとともに、この偏差を解消するように移動体の移動を制御しながら移動経路に倣って移動体を自律移動させる移動ステップ(b)と、を備えることを前提としている。
加えて、移動ステップ(b)において、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測するとともに、第1実測データに含まれる不安定な磁気要素及び第2実測データに含まれる不安定な磁気要素を相殺する処理を行うことを前提とする。
【0010】
不安定な磁気要素を相殺するために本発明の第1の形態による自律移動方法は、はじめに、データ登録ステップ(a)において、互いに相反する向きの第1教示データと第2教示データを計測して記憶しておく。
次に、移動ステップ(b)においては、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測する。そして、このステップは、第1制御ステップと第2制御ステップとを交互に切り替える。第1制御ステップは、第1実測データと第1教示データとを比較することで第1偏差を求め、この第1偏差を解消するように移動体の移動を制御するものである。また、第2制御ステップは、第2実測データと第2教示データとを比較することで第2偏差を求め、この第2偏差を解消するように移動体の移動を制御するものである。
本発明は、第1制御ステップと第2制御ステップとを交互に切り替えることで、第1実測データに含まれる不安定な磁気要素及び第2実測データに含まれる不安定な磁気要素を相殺することができる。
本発明の自律移動方法において、データ登録ステップ(a)において、所定の間隔L毎に計測される教示データを記憶し、移動ステップ(b)において、教示データの間隔Lを移動する間に、第1制御ステップと第2制御ステップとを少なくとも一度は切り替えることが好ましい。詳しくは後述するが、そうすることで、ロボットが蛇行するのを抑制することができる。
【0011】
本発明の第2の形態による自律移動方法は、また、以下の手段を採用することができる。すなわち、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測するとともに、第1実測データと第2実測データの平均値である平均実測データを求める。次に、平均実測データと、第1教示データと第2教示データの平均値である平均教示データとの偏差を解消するように移動体の移動を制御する。このように、平均化する演算によっても不安定な磁気要素を相殺できる。
【0012】
本発明は、第1の形態による移動体の制御方法を実行する移動体を提供する。この自律移動体は、センサ部と、記憶部と、制御部を備える。
センサ部は、教示データとして、互いに相反する向きの第1教示データと第2教示データを計測する。
記憶部は、計測された第1教示データと第2教示データを記憶する。
制御部は、センサ部が実測データとして、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測すると、第1実測データと第1教示データとを比較することで第1偏差を求めるとともに、第1偏差を解消するように移動体の移動を制御する第1制御ステップを実行する。制御部は、次いで、第2実測データと第2教示データとを比較することで第2偏差を求めるとともに、第2偏差を解消するように移動体の移動を制御する第2制御ステップを実行する。制御部は、第1ステップと第2ステップとを交互に切り替えながら移動体を制御する。
この自律移動体においても、教示データの間隔Lを移動する間に、第1制御ステップと第2制御ステップとを少なくとも一度は切り替えることが好ましい。
また、本発明は第2の形態による移動体の制御方法を実行する移動体を提供する。この移動体の制御部は、センサ部が互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測すると、第1実測データと第2実測データの平均値である平均実測データを求める。次に、制御部は、平均実測データと、第1教示データと第2教示データの平均値である平均教示データとの偏差を解消するように移動体の移動を制御する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、互いに相反する向きの第1実測データと第2実測データを計測するとともに、第1実測データに含まれる不安定な磁気要素及び第2実測データに含まれる不安定な磁気要素を相殺するので、移動体が自律移動する際に不安定な磁気が生じていても、自己位置を誤って認識するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態におけるロボット(移動体)の概略構成を示すブロック図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
【図2】本実施の形態におけるロボットの制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施の形態におけるロボットの第1センサ及び第2センサの配置を示す図である。
【図4】本実施の形態において、ロボットの方向を制御する方法を示す図である。
【図5】本実施の形態において、ロボットの方向を制御する構成を示す図である。
【図6】本実施の形態におけるロボットが不安定な磁気要素を相殺する作用を説明する図である。
【図7】本実施の形態におけるロボットが、教示データの登録から軌道修正にかけて行う処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本実施の形態のロボットの移動経路の例を示す図である。
【図9】スイッチングにより実際に自律移動させたロボットにおける教示データの具体例を示している。
【図10】各パターン(α)~(β)において計測された実測磁気データ(x軸のみ)を示している。
【図11】第1センサ201による軌道修正(パターン(α))を行った場合の、教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を示すグラフである。
【図12】第2センサ202による軌道修正(パターン(β))を行った場合の、教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を示すグラフである。
【図13】第1センサ201と第2センサ202による軌道修正(パターン(γ))を行った場合の、教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を示すグラフである。
【図14】平均化の手法により実際に自律移動させたロボットにおける教示データの具体例を示している。
【図15】平均化の手法により実際に自律移動させたロボットにおける実測データの具体例を示している。
【図16】平均化の手法により軌道修正を行った場合の、教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
本実施の形態は、図1、図2に示されるロボット(移動体)1が、任意に設定される移動経路を自律移動するものに関する。
本実施の形態にかかる車輪型のロボット(移動体)1は、図1に示すように、箱状の本体2の前後方向中央下部に左右一対の駆動輪3,4を備えると共に、本体2のほぼ四隅下部に夫々補助輪5を備えている。
本体2の前方には磁気・方位センサ部(磁気センサ)20が設けられている。磁気・方位センサ部20は、本体2の内部に設置された制御部50と電気的に接続されている。なお、これらセンサ類は本体2の内部に設けた例を示しているが、本体2とともに移動できるのであれば、本体2の外部に設けることもできる。

【0016】
[磁気・方位センサ部20]
磁気・方位センサ部20は、第1の磁気・方位センサ201(以下、第1センサ201)と第2の磁気・方位センサ202(以下、第2センサ202)を近接して配置してモジュール化されたユニットを構成している。第1センサ201及び第2センサ202は、各々、互いに直交する3軸(x軸、y軸、z軸)に沿った直流磁気(以下、単に磁気)を計測する。ここで、第1センサ201及び第2センサ202は、ともに、x軸がロボット1の進行方向に沿うように、y軸が移動面に平行でx軸に直交するように、また、z軸が鉛直方向に平行でx軸に直交するように、本体2内に接触して配置される。ただし、第1センサ201及び第2センサ202は、図3に示されるように、x(x,x)軸同士の向き、及び、y(y,y)軸同士の向きが180°相違するように配置されている。つまり、第1センサ201及び第2センサ202は、x軸及びy軸に関して反転して配置されている。したがって、第1センサ201で計測されるx軸、y軸及びz軸方向の磁気sx1、sy1及びsz1と、第2センサ202で計測されるx軸、y軸及びz軸方向の磁気sx2、sy2及びsz2は、以下の関係を有しているものとみなせる。
|sx1|=|sx2|, |sy1|=|sy2|, |sz1|=|sz2
また、磁気センサは、各軸周りの方位を測定することもできる。たとえば、北方向に水平の状態をゼロ度としたときの各軸周りの姿勢角が測定されれば、第1センサ201及び第2センサ202は次の関係を有している。ただし、第1センサ201で計測されるx軸周りの方位、y軸周りの方位及びz軸周りの方位を各々Sα1、Sβ1、Sγ1とし、第2センサ202で計測されるx軸周りの方位、y軸周りの方位及びz軸周りの方位を各々Sα2、Sβ2、Sγ2とする。
Sα1=Sα2+180度、Sβ1=Sβ2+180度、Sγ1=Sγ2+180度
以上のように二つの磁気・方位センサを反転して配置し、x軸、y軸に関して互いに相反する向きの磁気、方位を計測するところに、ロボット(移動体)1の構成上の特徴がある。
なお、第1センサ201及び第2センサ202は、接触させることが望ましいが、同じ領域の磁場、方位を計測することができると認められる程度に接近していればよい。上述の近接とは、接触・非接触の両者を含む概念である。

【0017】
第1センサ201及び第2センサ202は、後述する教示データを作成するために、自律移動を行わせる前に移動経路に沿って環境磁気を計測して登録する。この環境磁気を教示磁気データということにする。第1センサ201で計測された教示磁気データ(第1教示磁気データ)、第2センサ202で計測された教示磁気データ(第2教示磁気データ)は、各々、独立して登録される。
また、第1センサ201は先に記憶されている第1教示磁気データと比較される磁気(第1実測磁気データ)を、また、第2センサ202は先に記憶されている第2教示磁気データと比較される磁気(第2実測磁気データ)を、各々、自律移動時に計測する。

【0018】
第1センサ201及び第2センサ202はまた、各々、後述する教示データ作成のために自律移動を行わせる前に移動経路に沿って方位を計測して登録する。この方位を教示方位データということにする。第1センサ201で計測された教示方位データ(第1教示方位データ)、第2センサ202で計測された教示方位データ(第2教示方位データ)は、各々、独立して登録される。
また、第1センサ201は先に記憶されている第1教示方位データと比較される方位(第1実測方位データ)を、また、第2センサ202は先に記憶されている第2教示方位データと比較される方位(第2実測方位データ)を、各々、自律移動時に計測する。
方位を計測するセンサとしては、電子コンパス(地磁気センサ)、ジャイロコンパス等公知のセンサを用いることができる。なお、第1センサ201及び第2センサ202は、磁気センサと方位センサとを一体で構成した例を示しているが、各々を別体として本体2に設けてもよいことは言うまでもない。また、磁気・方位センサ部20は、第1センサ201と第2センサ202をモジュール化したユニットとしているが、各々を別体として第1センサ201と第2センサ202を設けることもできる。

【0019】
[制御部50]
次に、図2を参照して、制御部50について説明する。
制御部50は、走行制御部60と、記憶部70と、演算処理部80を備え、CPU、ROM、RAM等及び入出力回路等を備えたコンピュータから構成される。
[走行制御部60]
各駆動輪3,4は、夫々駆動モータ6,7により図示しない減速機を介して回転駆動されるようになっている。また、駆動モータ6,7には、駆動輪3,4の回転速度(回転数)を検出するためのロータリエンコーダ8,9が夫々付設されている。さらに、これら駆動モータ6,7は、走行制御部60により夫々独立して駆動制御されるようになっている。走行制御部60は、駆動モータ6,7を異なる回転数で回転させることにより、ロボット1の向きを変えることができる。

【0020】
[記憶部70]
記憶部70は、第1記憶部71と、第2記憶部72と、第3記憶部73とを備えている。これら各記憶部は、ロボット1に対して着脱可能な公知のデータ記憶手段に格納できる。
第1記憶部71には、自律移動に実際に使用される教示データが記憶される。
教示データは、教示磁気データを含む。教示磁気データは、第1教示磁気データと当該磁気が計測された位置とが対応付けられたデータ群と、第2教示磁気データと当該磁気が計測された位置とが対応付けられたデータ群とからなり、本実施の形態は第1センサ201及び第2センサ202で得られた2セットの教示磁気データを備える。ロボット1が自律走行する際に計測される実測磁気データとこの教示磁気データを比較し、両者の偏差が求められる。

【0021】
また、教示データは、教示方位データを含む。教示方位データは、第1教示方位データと当該方位が計測された位置とが対応付けられたデータと、第2教示方位データと当該方位が計測された位置とが対応付けられたデータであり、本実施の形態は第1センサ201及び第2センサ202で得られた2セットの教示方位データを備える。ロボット1が自律走行する際に計測される実測方位データとこの教示方位データを比較して、両者の偏差が求められる。この方位は、例えば、水平の状態で北向きを0(ゼロ)degと定めるが、これに限るものではない。
一般的には、位置はマップとして表現することをねらって座標(x,y)で表現される。しかし、方位と移動距離を基準(θ,lの極座標表現)として位置を特定することで座標変換の際に生じる誤差を少なくできる。

【0022】
教示データは、ロボット1の移動経路上を連続的に記憶されていることが好ましい。しかし、この方法は現在の技術レベルでは現実的ではない。ロボットの移動経路が長くなると、実測磁気データ及び実測方位データとの比較処理に相当の時間がかかってしまい、移動速度が著しく遅くなるからである。したがって、所定間隔毎、例えば0.01m毎に間欠的に教示データを記憶することが現実的である。なお、教示データの実例を図9に示す。

【0023】
教示データは、ロボット1、もしくは磁気・方位センサ部20を搭載する計測用台車によって、ロボット1が通る移動経路をロボット1への操作もしくは手押しによる誘導をしながら計測することができる。より具体的には、ロボット1が一定距離移動(例えば、0.01m)するごとに、3軸方向の磁気の強度及び方位を計測し、かつ記憶する。
ロボット1の移動距離は車輪(駆動輪3,4)の回転から計測する。ただし,車輪の滑りやタイヤの空気圧の違いにより、計測値がずれる場合がある。そのため、画像による床フローの推定で移動量を正確に求めることが望ましい。

【0024】
[第2記憶部]
第2記憶部72には、走行制御部60、演算処理部80が行う種々の制御に関するプログラムが記憶されている。

【0025】
[第3記憶部]
第3記憶部73には、いくつかのブロックに分けられた移動経路のルート毎に、進むべき向きと距離とが対応付けられた経路情報が記憶されている。例えば、図8を例にすると、経由地Aから経由地Bまでのルートを移動する場合に、経由地Aにおいてロボット1がφ1°だけ半時計回りに向きを変えるとともに、距離DA-Bだけ経由地Bに向けて前進するとすれば、経由地Aと対応付けて(-φ1°,DA-B)が第3記憶部73に記憶されている。

【0026】
[演算処理部80]
次に、演算処理部80は、磁気・方位比較部81と、センサ選択部82と、移動距離演算部84と、車両移動値演算部85とを備えている。
磁気・方位比較部81は、第1記憶部71に記憶されている第1教示データ(第1教示磁気データ,第1教示方位データ)と、第1センサ201で計測される第1実測データ(第1実測磁気データ,第1実測方位データ)とを比較する。なお、比較は、磁気データ同士、方位データ同士で行われる。以下も同様である。
また、磁気・方位比較部81は、第1記憶部71に記憶されている第2教示データ(第2教示磁気データ,第2教示方位データ)と、第2センサ202で計測される第2実測データ(第2実測磁気データ,第2実測方位データ)とを比較する。

【0027】
磁気・方位比較部81による第1教示データと第1実測データの比較、および第2教示データと第2実測データの比較は、交互に行われる。この交互の比較は、センサ選択部82により実行される。つまり、センサ選択部82は、各ルートを自律移動する際にロボット1の向きの修正のために使用するセンサとして、第1センサ201及び第2センサ202のいずれか一方を交互に選択する。この選択について、より詳しくは後述する。また、第1センサ201及び第2センサ202のいずれか一方が交互に選択することを、以下、「スイッチング」ということがある。

【0028】
ロボット1が各ルートを移動する際には、以下のようにしてロボット1の向きが制御される。
磁気・方位比較部81は、第1記憶部71に記憶されている教示データ(第1教示データ、第2教示データ)を読み込む。そして、第1センサ201で計測される第1実測データ(第1実測磁気データ、第1実測方位データ)と第1教示データ(第1教示磁気データ、第1教示方位データ)とを比較し、その偏差を求める。磁気に関する偏差(ΔG,ΔG,ΔG)、方位に関する偏差(Δθ)は、図4に示すように、正規のルートに対するロボット1の向きに偏差があるために生ずる。磁気・方位比較部81は、磁気に関する偏差(ΔG,ΔGy,ΔG)、方位に関する偏差(Δθ)を、車両移動値演算部85に送る。

【0029】
移動距離演算部84は、ロータリエンコーダ8,9からそれぞれ入力されるパルスを別々にカウントし、カウントした値に1パルス当りの移動量を乗算してそれまでの移動距離を求める。ここでは2つの移動距離が求められるが、その平均値が移動距離Sとして車両移動値演算部85へ出力される。

【0030】
車両移動値演算部85は、ロボット1の位置情報を求める。この位置情報は、前述したように、θ(方位)とl(距離)の極座標で表現される。
車両移動値演算部85は、第3記憶部73から経路情報を読み出す。この経路情報は、前述したように、向き情報と移動距離情報とが対応付けられている(例えば、(-φ1°,DA-B))。車両移動値演算部85は、移動距離演算部84から取得した移動距離Sと移動距離情報とからルートの終点に到達するまでの残移動距離を求める。この残移動距離は、走行制御部60へ出力される。

【0031】
車両移動値演算部85は、図4に示すように、磁気・方位比較部81から取得する磁気に関する偏差(ΔG,ΔG,ΔG)、方位に関する偏差(Δθ)がともに0(ゼロ)になり、偏差が解消されるように、ロボット1が向きを変える角度(回転角)を求める。この回転角は、走行制御部60へ出力される。この向きの調整は、フィードバック制御により行うことができる。
図5は、この制御を実現する構成例を示すブロック図である。図5に示すように、この例では、教示データと実測データの比較を行い、教示データと実測データとの偏差がゼロになるようにPID制御を適用している。ただし、PID制御に限らず、本発明は他の方法により教示データと実測データとの偏差がゼロになるように制御することができる。

【0032】
車両移動値演算部85は、また、ロボット1がルートの終点に到達すると、磁気・方位比較部82から取得したルートに対する向き(角度θ)情報と経路情報の中の向き情報とから、経由地においてロボット1が向きを変える角度(回転角)を求める。この回転角は、走行制御部60へ出力される。

【0033】
[走行制御部60]
走行制御部60は、車両移動値演算部85で求められた残移動距離に基づいて、ロボット1をルートに沿って次の経由地まで移動するように、駆動モータ6,7に駆動指令を出力する。また、走行制御部60は、車両移動値演算部85で求められた回転角に基づいて、経由地に到達すると、ロボット1の向きを次のルートに合うように変えるために、駆動モータ6,7に駆動指令を出力する。

【0034】
[本実施形態の作用]
次に、本実施の形態の特徴部分について説明する。
ロボット1は、第1センサ201と第2センサ202を備える。
第1センサ201、第2センサ202による教示データは、下記式(1)、(2)で示すことができる。
第1センサ201による第1教示データ:sd1=(fd1(Sd1)+Td1) … (1)
第2センサ202による第2教示データ:sd2=(fd2(Sd2)+Td2) … (2)
d1,Sd2:安定な磁気要素
d1,Td2:不安定な磁気要素
ただし、上記式(1)、(2)において、磁気強度の場合にはf(x)=|S|(絶対値)であり、方位の場合には、fd1(x)=S、fd2(x)=S+180度(d1、d2は逆も可)である。このことは、以下の式(3)、(4)についても同様である。
また、不安定な磁気要素は、前述したように、自律移動を行う移動経路を含む環境の温度変化、あるいは帯磁物が後発的に移動経路近傍に置かれることにより生ずる。

【0035】
また、第1センサ201、第2センサ202による実測データは、下記式(3)、(4)で示すことができる。
第1センサ201による第1実測データ:sm1=(fm1(Sm1)+Tm1) … (3)
第2センサ202による第2実測データ:sm2=(fm2(Sm2)+Tm2) … (4)
m1,Sm2:安定な磁気要素
m1(=Td1+TΔ1),Tm2(=Td2+TΔ2):不安定な磁気要素
d1,Td2:教示データにおける不安定な磁気要素
Δ1,TΔ2:教示データと自律移動時との不安定な磁気要素の差

【0036】
ロボット1は、教示データと実測データとを比較して両データの偏差が0になるように自律移動するものであることは前述の通りである。この比較を、下記に示すように、第1実測データと第1教示データとの比較とそれに基づく軌道修正(第1制御ステップ)と、第2実測データと第2教示データとの比較とそれに基づく軌道修正(第2制御ステップ)とを交互に行うことで、不安定な磁気要素(Tm1とTm2)を相殺することができる(第1の形態)。
第1制御ステップ:第1教示データsd1と第1実測データsm1を比較→軌道修正
第2制御ステップ:第2教示データsd2と第2実測データsm2を比較→軌道修正

【0037】
第1制御ステップと第2制御ステップを交互に行うことで不安定な磁気要素(Tm1とTm2)が相殺されることを、図6を用いて説明する。
図6は、k(x,y,z)軸方向の磁気を対象として示している。
第1制御ステップにおいて計測される実測磁気データ(m1)は、下記式(5)で示すことができる。また、第2制御ステップにおいて計測される実測磁気データ(m2)は、下記式(6)で示すことができる。
m1=|d1|+|Δ|+m1 … (5)
m2=|d2|+|Δ|-m2 … (6)

【0038】
第1制御ステップと第2制御ステップを交互に実行することは、式(5)に式(6)を加えることと等価であるから、式(7)により不安定な磁気要素m1m2を消去、つまり相殺することができる。この点については、本発明に基づいて実際に自律移動を行った移動軌跡を示しながら、さらに後述する。
m1m2=(|d1|+|Δ|+m1)+(|d2|+|Δ|-m2
=(|d1|+|d2|+2Δ) … (7)

【0039】
次に、Δ(磁気の偏差)は式(8)により求められ、Δがゼロになるように、ロボット1の軌道(向き)を修正する。
Δ=1/2{(m1m2)-(|d1|+|d2|)} … (8)

【0040】
以上の処理をロボット1は自律移動中に継続的に行う。この処理手順を、教示データの登録からの手順をも含め、図7に示す。
第1教示データを第1センサ201で計測する(図7 ステップS101)とともに、第2教示データを第2センサ202で計測する(図7 ステップS103)。第1教示データ及び第2教示データは、前述したとおり、教示磁気データと教示方位データを含む。
取得した第1教示データ及び第2教示データは、計測した位置と対応付けて、第1記憶部71に記憶され(図7 ステップS105)、これにより教示データの登録が行われる。
以上の処理(図7 ステップS101,S103,S105)は、ロボット1が自律移動する前に、自律移動する経路に沿ってロボット1を移動させながら行われる。

【0041】
ロボット1を自律移動させる際には、第1センサ201により第1実測データを計測する(図7 ステップS201)とともに、第2センサ202により第2実測データを計測する(図7 ステップS203)。
計測された第1実測データと第1記憶部71に登録されている第1教示データとを比較し、上記式(1)~式(8)に示した要領で、第1教示データと第1実測データの偏差Δ11Δ,第1偏差)を算出する(図7 ステップS205)。この偏差Δ11の算出は、第1センサ201が計測する第1実測データと第1記憶部71に登録されている第1教示データとを取得した磁気・方位比較部81が行う。この時、磁気・方位比較部81は、センサ選択部82により第1教示データと第1実測データの偏差Δ11を算出するように制御される。偏差Δ11は、磁気に関する偏差と方位に関する偏差を含んでいる。
磁気・方位比較部81は、算出した偏差Δ11を車両移動値演算部85に送る。車両移動値演算部85は取得した偏差Δ11が0(ゼロ)になるために必要なロボット1が向きを変える角度(回転角)を求める。求められた回転角は車両移動値演算部85から走行制御部60に向けて出力され、走行制御部60は偏差Δ11が0(ゼロ)になるように駆動モータ6,7に駆動指令を出力してずれた軌道を修正する(図7 ステップS207)。

【0042】
偏差Δ11に基づく軌道修正の後に、第2実測データと第1記憶部71に登録されている第2教示データとを比較し、上記式(1)~式(8)に示した要領で、第2教示データと第2実測データの偏差Δ21Δ,第2偏差)を算出する(図7 ステップS209)。この偏差Δ21の算出は、上記と同様に、磁気・方位比較部81が行う。この時、磁気・方位比較部81は、センサ選択部82により偏差Δ21を算出するように制御される。偏差Δ21は、磁気に関する偏差と方位に関する偏差を含んでいる。
磁気・方位比較部81は、算出した偏差Δ21を車両移動値演算部85に送る。車両移動値演算部85は取得した偏差Δ21が0(ゼロ)になるために必要なロボット1が向きを変える角度(回転角)を求める。求められた回転角は車両移動値演算部85から走行制御部60に向けて出力され、走行制御部60は偏差Δ21が0(ゼロ)になるように駆動モータ6,7に駆動指令を出力してずれた軌道を修正する(図7 ステップS211)。

【0043】
偏差Δ21に基づく軌道修正の後に、さらに計測される後続の第1実測データ(図7 ステップS201)と第1教示データに基づいて、偏差Δ12を算出し(図7 ステップS205)、この偏差Δ12が0(ゼロ)になるように軌道修正する(図7 ステップS207)。以上のステップS201,S205及びS207により、本発明の第1制御ステップが構成される。
偏差Δ12に基づく軌道修正の後に、後続の第2実測データ(図7 ステップS203)と第2教示データに基づいて、偏差Δ22を算出し(図7 ステップS209)、この偏差Δ22が0(ゼロ)になるように軌道修正する(図7 ステップS211)。以上のステップS203,S209及びS211により、本発明の第2制御ステップが構成される。
以下、ロボット1が自律移動を継続する間、第1実測データの計測(図7 ステップS201)、偏差Δ1nの算出(図7 ステップS205)及び偏差Δ1nに基づく軌道修正(図7 ステップS207)と、第2実測データの計測(図7 ステップS203)、偏差Δ2nの算出(図7 ステップS209)及び偏差Δ2nに基づく軌道修正(図7 ステップS211)とが、交互に行われる。

【0044】
[自律移動の例]
以上のロボット1が、図8に示すように、始点(Start)から終点(Goal)に自律移動する場合には、始点から移動を開始して経由地Aに到達するまで、ロボット1は、第1センサ201と第2センサ202とを交互にスイッチングして前進する。なお、ロボット1は、ルートに沿うように向きが制御されながら移動することを基本としながら、磁気を目印としてルートからのずれを修正する。
ロボット1は、経由地Aに到達すると、半時計周りにφ1だけ向きを変えた後に、経由地Bに向けて移動する。この間も第1センサ201と第2センサ202とが交互にスイッチングされる。
ロボット1は、経由地Bに到達すると、時計周りにφ1+φ2だけ向きを変えた後に、経由地Cに向けて移動する。経由地Bと経由地Cの間に、後発的に生じた不安定な磁気要素UGが存在していても、第1センサ201と第2センサ202とを交互にスイッチングすることにより、不安定な磁気要素UGを相殺することができるので、不安定な磁気要素UGの影響をうけることなく、経由地Cまでロボット1は自律移動する。なお、不安定な磁気要素は、温度の変化によっても生ずることは前述の通りである。
ロボット1は、経由地Cに到達すると、時計周りにφ3-φ2だけ向きを変えた後に、終点に向けて自律移動する。

【0045】
[本実施形態固有の効果]
以上説明したように、ロボット1は第1センサ201と第2センサ202を交互にスイッチングしながらロボット1の向きを制御して自律移動するので、教示データには含まれない不安定な磁気要素が後発的に生じたとしても、自己位置を誤認識することなく自律移動を続けることができる。

【0046】
[自律走行の具体例1]
以上の実施形態に基づいて作製したロボット1を実際に自律移動させた第1の形態による例を以下説明する。
教示データの具体例を図9に示す。
図9において、Dist-Mag x、Dist-Mag y等の「Dist」は、位置を示す。例えば、Dist-Mag xの欄の「0.00」は移動経路上の始点(Start)であることを示し、同欄の「5.01」は始点(Start)から5.01mの位置であることを示している。また、Dist-Mag x、Dist-Mag y等の「Mag k」は磁気を示す(ただし、磁気センサの出力としての電圧値)。また、Dist-Yawの「Yaw」は方位を示している。したがって、例えば、移動経路上の始点(Start)において、x軸における磁気が0.4322、y軸における磁気が0.1710、z軸における磁気が0.6534、方位が78.64であることを図9は示しており、このような第1教示データ及び第2教示データが登録されている。

【0047】
自律移動は、第1センサ201で第1実測データを計測するとともに、第2センサ202で第2実測データを計測するが、偏差Δ1n,Δ2nの算出及び偏差Δ1n,Δ2nに基づく軌道修正を、以下の3つのパターンで行った。なお、図9に示す教示データの登録時の温度は9℃、自律移動時の温度は23℃であり、両者の温度差は14℃であった。
(α)偏差の算出はΔ1nだけ行い、偏差Δ1nに基づく軌道修正のみを行う(第1センサ201による軌道修正)。このパターンは、偏差Δ2nの算出及び偏差Δ2nに基づく軌道修正は行わない。
(β)偏差の算出はΔ2nだけ行い、偏差Δ1nに基づく軌道修正のみを行う(第2センサ202による軌道修正)。このパターンは、偏差Δ1nの算出及び偏差Δ1nに基づく軌道修正は行わない。
(γ)偏差Δ1nの算出及び偏差Δ1nに基づく軌道修正と、偏差Δ2nの算出及び偏差Δ2nに基づく軌道修正を交互に行う(第1センサ201と第2センサ202による軌道修正)。

【0048】
パターン(α)による教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を図11に、パターン(β)による教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を図12に、パターン(γ)による教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を図13に示す。
図11~図13に示すように、本実施形態に従うパターン(γ)により軌道修正を行うことで、ロボット1が高い精度で自律移動できることが確認された。

【0049】
ここで、前提として、ロボット1は教示データにより特定される経路上に沿って移動する。このときに、第1センサ201と第2センサ202のいずれかだけで移動を制御した場合、教示データ及び実測データには磁気的に不安定な要素が含まれているので、その分の誤差が生じてしまう。この誤差により、ロボット1は図11又は図12に示す経路を移動する。
これに対して第1センサ201と第2センサ202を交互にスイッチングした場合、例えば、第1センサ201で計測した実測データに+α分の不安定な磁気要素が含まれていたとすれば、+αを含む修正量が与えられる。次に、第2センサ202の実測データに-α分の不安定な磁気要素が含まれていたとすれば、-αを含む修正量が与えられる。つまり、ロボット1は、移動軌跡を+α分だけ余計に修正されるが、つぎの瞬間-α分を余計に修正するので、結果として不安定な磁気要素に相当する修正量(+αと-α)が相殺される。このように、第1センサ201と第2センサ202を交互にスイッチングすることは、各々の実測データを平均化することと等価である。
もし、この修正が直ちに反映されるほどロボット1の動きが速いか、逆に、スイッチングの周期がロボットの動きが反映できてしまうほど遅ければ、修正に不安定な磁気要素(+α,-α)が反映されるので、ロボット1は蛇行しながら移動することになる。この蛇行を回避するために、今回の自律移動では、不安定な磁気要素(+α,-α)を含む修正量分が反映される前にスイッチングしている。ただし、この蛇行回避は本発明にとって望ましい形態であるが、蛇行しながらでも教示データで特定される移動経路を最終的に辿ることをも包含する。

【0050】
各パターンにおいて計測された実測磁気データを図10に示す。この例を用いて教示データと実測データを比較する処理を以下に示す。
例えば、図10のパターン(γ)の欄において、位置「0.04」のx軸方向の磁気が「0.4429」の第1実測磁気データを取得すると、この実測磁気は図9の第1教示データにおける位置「0.04」のx軸方向の磁気が「0.4325」と比較される。図10には、x軸の実測磁気データのみを示しているが、実際にはy軸及びz軸の実測磁気データ、実測磁気方位も計測され、図9の第1教示データと比較され、第1偏差が求められる。この第1偏差を解消するようにロボット1の移動が制御される。
次に、位置「0.04」のx軸方向の磁気が「0.3403」の第2実測磁気データと、図9の第2教示データにおける位置「0.04」のx軸方向の磁気が「0.3502」と比較される。y軸及びz軸の実測磁気データ、実測磁気方位についても、上述したように、図9の第1教示データと比較され、第2偏差が求められる。この第2偏差を解消するようにロボット1の移動が制御される。

【0051】
ここで、登録されているn番目の教示データと第n+1番目の教示データの距離的な間隔(教示データの間隔)をL(cm)、ロボット1の移動速度をV(cm/秒)とする。そうすると、ロボット1が教示データの間隔Lだけ移動するのに要する時間T1はL/Vである。このT1=L/Vにスイッチングを行えば、蛇行を回避することができる。つまり、蛇行回避のためのスイッチングの周期T2は、T2=T1/2=L/2V(秒)で与えられる。
今回の自律移動の例(図10のパターン(γ))では、ロボット1の移動速度V=50cm/s、教示データの間隔L=0.01m=1cm、スイッチングの周期T2=0.1秒とした。
ただし、教示データの間隔Lを移動する間に行われるスイッチングは一度に限定されず、二度以上行うこともできる。つまり本発明において、教示データの間隔Lを移動する間に、第1制御ステップと第2制御ステップとを少なくとも一度は切り替えればよい。

【0052】
以上の実施の形態では、偏差Δ1n,Δ2nの算出及び偏差Δ1n,Δ2nに基づく軌道修正を交互に行う(スイッチッチングする)例を示した。しかし、式(8)で示したことから明らかなように、第1実測データと第2実測データを演算処理により平均化することでも不安定な磁気要素(Tm1とTm2)を相殺し、かつ教示データと実測データの偏差を求めることができる。本発明は、この形態(第2の形態)をも包含する。この場合、比較される教示データも不安定な磁気要素が相殺されている、つまり平均化された教示データ(平均教示データ)が、平均化された実測データ(平均実測データ)と比較の対象になる。この平均教示データは、教示データの計測後であって平均実測データとの比較の前に行われる。典型的には、平均教示データが得られたならば即座に平均教示データが求められるか、自律移動の際に平均教示データが求められることになる。このような処理は、制御部50の演算処理部80が行う。
教示データが不安定な磁気要素を当初より含まないのであれば、教示データについては平均教示データを求める必要はないが、これが適用される環境は相当に限定される。

【0053】
[自律走行の具体例2]
以下、演算処理により平均化することで不安定な磁気要素を相殺する第2の形態により実際にロボット1を自律移動させた例を示す。
この例では、教示データ(第1教示データ、第2教示データ)は、上述した具体例1で登録したものを用いた。したがって、具体例2の教示データが示す移動経路は具体例1と同じである。また、この例では、自律移動の際にすでに登録してある第1教示データと第2教示データを用いてその平均値(平均教示データ)を求めた。より具体的には、実測データ(第1実測データ、第2実測データ)を計測し、その平均値(平均実測データ)を求めるのに併せて、第1教示データと第2教示データを用いて平均教示データを求めた。そして、求められた平均教示データと平均実測データとを比較しながら、自律移動を行った。移動の際の気温は28℃である。

【0054】
教示データを図14に、実測データを図15に示す。図14に平均教示データを、また、図15には平均実測データを併せて記載している。そして、教示データ上の移動軌跡と自律移動の際の移動軌跡を図16に示すが、演算処理により平均化することで不安定な磁気要素が相殺され、高い精度でロボット1が自律移動できることが確認された。

【0055】
以上の実施形態で詳述した第1センサ201と第2センサ202を交互にスイッチングする手法と、上述の演算により平均化する手法を比較すると、以下の通りである。
磁気センサには計測値に多少のバラツキがあるために、このバラツキを修正するために係数を用いることが必要な場合がある。この係数については実際にロボット1を移動させながら調整する。この調整には、教示データそのものを用いることが好ましい。したがって、磁気センサの係数調整の観点からは、第1センサ201と第2センサ202を交互にスイッチングする手法が好ましい。
しかし、第1センサ201と第2センサ202を交互にスイッチングする手法は、第1教示データと第2教示データという2系統のデータを保持する必要があるのに対して、平均化する手法では平均化された1系統のデータだけを保持することができる。したがって、第1記憶部71の記憶容量の観点からは、平均化する手法が好ましい。

【0056】
以上の実施の形態では、第1センサ201と第2センサ202とを一組だけ設ける例を示したが、二組又はそれ以上を設けることができる。この場合、二組のセンサ部はロボット1上の離間する位置、例えばロボット1の進行方向あるいは幅方向(進行方向に直交する方向)に間隔を空けて設けることができる。
また、以上の実施の形態では、第1センサ201と第2センサ202という二つの別体のセンサを組み合わせたが、本発明は、単体と認識されるセンサを用いて互いに相反する向きの磁気、方位を計測することもできる。
さらに、以上の実施の形態では、第1センサ201と第2センサ202をx軸、y軸については、180度だけ反転して近接配置したが、反転の角度は180度から数度程度はずれていても本発明の効果を享受できる。もちろん、反転の角度が理想的には180度であることは言うまでもない。

【0057】
以上の実施の形態では、教示磁気データ及び実測磁気データとして3軸(x軸,y軸,z軸)方向の磁気を計測、保持するが、これは必須ではなく、少なくとも1軸方向の磁気だけでも本発明は実現可能である。ただし、2軸方向、例えばy軸方向の磁気とz軸方向の磁気を用いること、さらには3軸方向の磁気を用いると精度よく位置制御を行うことができる。

【0058】
本発明は不安定な磁気要素(Tm1とTm2)を相殺することを要旨とするものであり、この部分を除く移動体の自律移動の制御方法は上記実施の形態に限定されない。例えば、特許文献3に開示されるパターンマッチングによる自己位置認識を用いることは本発明にとって有効である。
また、ここでは磁気センサと方位センサでロボット1の自律移動を行う例を示したが、他のセンシング手段、例えば距離センサ等をさらに組み合わせて自律移動を行うことを本発明は許容する。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択し、あるいは他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ロボット
3,4 駆動輪
5 補助輪
6,7 駆動モータ
8,9 ロータリエンコーダ
20 磁気・方位センサ部
201 第1磁気・方位センサ(第1センサ)
202 第2磁気・方位センサ(第2センサ)
50 制御部
60 走行制御部
70 記憶部
71 第1記憶部
72 第2記憶部
73 第3記憶部
80 演算処理部
81 磁気・方位比較部
82 センサ選択部
84 移動距離演算部
85 車両移動値演算部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15