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明細書 :プラズマX線管

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3734019号 (P3734019)
公開番号 特開2002-313267 (P2002-313267A)
登録日 平成17年10月28日(2005.10.28)
発行日 平成18年1月11日(2006.1.11)
公開日 平成14年10月25日(2002.10.25)
発明の名称または考案の名称 プラズマX線管
国際特許分類 H01J  35/08        (2006.01)
G21K   1/00        (2006.01)
G21K   5/08        (2006.01)
H05H   1/24        (2006.01)
H05G   2/00        (2006.01)
FI H01J 35/08 Z
H01J 35/08 C
G21K 1/00 X
G21K 5/08 X
H05H 1/24
H05G 1/00 K
請求項の数または発明の数 4
全頁数 11
出願番号 特願2001-110783 (P2001-110783)
出願日 平成13年4月10日(2001.4.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年3月8日~10日 衝撃波研究会 宇宙科学研究会 東北大学流体科学研究会主催の「平成12年度衝撃波シンポジウム」において文書をもって発表
審査請求日 平成15年8月1日(2003.8.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】佐藤 英一
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】河原 英雄
参考文献・文献 特表2002-519815(JP,A)
特開平03-147236(JP,A)
特開昭56-147349(JP,A)
特開昭62-024544(JP,A)
調査した分野 H01J 35/00 - 35/32
G21K 1/00
G21K 5/08
H05G 2/00
H05H 1/24
特許請求の範囲 【請求項1】
高電圧放電により、対陰極物質を蒸発させて対陰極物質からなるプラズマを生成し、このプラズマに衝突して生ずる制動放射X線をプラズマ中の対陰極物質に吸収させて特性X線を発生させるプラズマX線発生装置に使用するプラズマX線管において、
棒状の対陰極と、棒状の対陰極の外径より大きな内径を有する環状陰極とを有し、
上記環状陰極が、外径、内径及び材料の異なる複数の環状陰極部材を、対陰極に面する側から対陰極に面しない側に向かって順次内径が大きくなるように互いに嵌合してなり、かつ該環状陰極部材の外径が対陰極に面する側から対陰極に面しない側に向かって連続的に大きくなる形状を有しており、
上記棒状の対陰極と上記環状陰極の軸を一致させて、かつ所定の距離離して配設し、上記環状陰極の開口部からX線を取り出すことを特徴とする、プラズマX線管。
【請求項2】
前記対陰極に面する環状陰極部材がカーボン・グラファイトからなり、該カーボン・グラファイトからなる環状陰極部材以外の環状陰極部材が金属からなることを特徴とする、請求項に記載プラズマX線管。
【請求項3】
放電トリガー電極を、前記環状極の内壁に沿って、かつ、前記環状極の内部に配設することを特徴とする、請求項1または2に記載のプラズマX線管。
【請求項4】
放電トリガー電極を、前記対陰極に面する環状陰極部材の側壁を貫通して設けた細孔内に配設することを特徴とする、請求項1または2に記載のプラズマX線管。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高電圧放電で対陰極材料を蒸発させてできるプラズマからX線を発生させるプラズマX線発生装置のプラズマX線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、物体の内部で高速に動く物体の観測にフラッシュX線写真撮影法が使用されている。例えば、心臓の動的機能は、X線造影剤を血液中に混入し、特定の瞬間における心臓の形態をX線写真撮影することによって診断することができる。このような用途のX線源には、高エネルギー、高強度の単色X線源が必要である。
このように、高強度の単色X線は、医療上の様々な応用分野で期待されているが、X線レーザーやシンクロトロン放射などの線源しかなく、手軽にどこでも使用できるX線源はない。
【0003】
レーザーは誘導放出光による光の増幅を意味する。レーザーの原理によりX線を得るには、高エネルギーパルスレーザーの線状照射による方法が一般的であるが、フォトンエネルギーが10keVあるいはそれ以上のレーザーを出力することは原理的に難しい。
また、レーザーとは異なるが、高強度の単色X線はシンクロトロンによって得られている。しかし、フォトンエネルギーが100keV程度の単色X線を得ることは難しく、また十分なマシンタイムを得ることはできない。このことからシンクロトロンは医学や工学分野における基礎研究においては大変有用な線源であるが、医療上の汎用線源として手軽に利用することは困難である。
【0004】
このような状況において、本発明者らは既に、高エネルギー、高強度、かつ、単色のX線を容易に発生させることができるプラズマX線発生源によるX線発生方法を提案している(SPIE Conf(44th) ’99.7.19)。この方法は、高電圧放電などにより、対陰極(ターゲット)物質を蒸発させて対陰極物質からなるプラズマを生成し、このプラズマに衝突して生ずる制動放射X線をプラズマ中の対陰極物質に吸収させて特性X線を発生させるものである。
【0005】
この方法によれば、冷陰極から放出される電子がプラズマに衝突することによって生じる制動放射X線を特性X線の生成に使用するので、高電圧放電の放電電圧を高くすることによって、制動放射X線を特性X線の生成に必要なエネルギーに高めることができる。従って、容易に準単色X線である特性X線を生成することができる。また、高密度電流による高磁場によってプラズマ密度が高いので、高効率で特性X線を発生できる。また、プラズマの長軸方向に取り出すX線は、プラズマ中の伝搬距離が長いことから誘導放出効果が大きくなり特性X線の強度が高まると共に、吸収効果が大きくなり制動放射X線が減少し、従って、単色フィルター無しに高強度の特性X線を取り出すことができる。
このような構成のプラズマX線発生装置は、装置の構成が簡単であり、手軽に使用できる、高エネルギー、高強度の準単色X線源として、実用化が期待されている。
【0006】
以下に、図5を用いて上記構成のプラズマX線発生装置を説明する。
図5はプラズマX線発生装置の原理を示す図である。
このX線発生装置50は、高圧電源51と、約200nFの容量の高圧コンデンサ52と、真空ポンプ53と、放電を開始させるトリガーパルス電源54と、プラズマX線管55とから構成される。
このX線発生装置50の電流路は、電流密度を大きくするために、低インピーダンスの同軸伝送路に設計されている。高圧コンデンサ52は約100kVまで充電が可能である。高圧コンデンサ52に蓄積された電荷は陰極で放電を惹起すると、プラズマX線管55に放電され、プラズマX線管55でX線62が発生する。
プラズマX線管55は、トリガー電極を備えた棒状の陰極56と、棒状または板状の特定の物質からなる対陰極(ターゲット)57とを有し、対陰極57は絶縁部材58を介してステンレス製の真空容器59に固定されている。真空容器59は、ポリエチレン・テレフタレートからなるX線窓60と、側壁に真空引き用の配管61を備え、動作時には真空ポンプと接続して約1mPaの真空度に保たれる。
【0007】
このX線発生装置50を動作させるには、高圧電源51により高圧コンデンサ52を所定の高圧Vに充電し、トリガーパルス電源54によりトリガー電極にトリガーパルスを印加して放電を惹起する。放電が開始すると、陰極56から電子が引き出されて加速され、eVの運動エネルギーで対陰極57に衝突する。この際、電子の電流密度及びエネルギーが極めて高いので、対陰極物質が瞬時に蒸発し、また高磁場が電流を取り巻いて発生するので、対陰極物質のイオンと電子からなる極めて高密度のプラズマ62が形成される。引き続き到達する電子は高密度プラズマ62に衝突し、制動X線を放射する。高圧Vを十分高くして電子に十分なエネルギーを与え、対陰極物質のK吸収端以上のエネルギーを有する制動X線を発生させる。制動X線は対陰極物質のK殻電子を励起して吸収される。K殻に生じた空席に他の殻から電子が遷移してKα、Kβ等の特性X線を発生する。
【0008】
プラズマ62中を伝搬する特性X線は、誘導放出によってしだいにその強度を強める。また、プラズマ62中を伝搬するK吸収端以下のエネルギーを有する制動X線は、プラズマ中のイオン化したターゲット物質の電子準位間遷移によって吸収されるので、しだいにその強度を弱める。
【0009】
図6は、このプラズマX線発生装置において板状の対陰極を用いた場合に生成するプラズマの形状の軸方向(長手方向)と、横断方向(短手方向)のそれぞれのX線スペクトルの実測値を模式的に示したものである。
図6において、(a)は軸方向に、(b)は横断方向に取り出したX線スペクトルである。(a)及び(b)の横軸は、X線光子のエネルギーを示し、縦軸はX線強度を示し、2本の線スペクトルは、特性X線Kα、Kβである。
図6に示すように、軸方向71のX線スペクトルは、横断方向72に較べ、特性X線の強度が大きく、また、連続的なスペクトル分布を有する制動X線成分が少ない。このことから、軸方向71に出射するX線を利用すれば、単色フィルターを使用しなくとも単色X線源として使用できることがわかる。
【0010】
図7は、棒状の対陰極の材料にニッケルを用いたプラズマX線発生装置のX線を使用したレントゲン写真の例である。
棒状の対陰極材料にニッケルを用い、50kVの電圧で高圧コンデンサ52を充電し、プラズマX線管55から1.2mの距離で、ポリメチル・メタクリレートからなる被写体を撮影した。ポリメチル・メタクリレートからなる被写体は、直径が一定長さずつ大きくなる同一の厚み(5mm)の複数の円盤5枚を同心円状に積み重ねたものである。ポリメチル・メタクリレートは、ニッケルのKα、Kβ特性X線を吸収し、他の波長のX線は透過する。
図7(a)は単色フィルターを使用しないで撮影した写真であり、図7(b)はニッケル単色フィルターを通して撮影したレントゲン写真である。
図7(a)及び(b)から明らかなように、ポリメチル・メタクリレートの厚みに依存したコントラスト像が得られており、単色フィルターを使用しなくとも単色X線によるレントゲン写真が得られることがわかる。
すなわち、このプラズマX線発生装置が発生するX線は、十分単色であることがわかる。
【0011】
図8は、板状の対陰極材料にニッケルを用い、図7と同様の被写体を撮影したレントゲン写真である。
図8(a)及び(b)から明らかなように、板状の対陰極を用いた場合にも、このプラズマX線発生装置が発生するX線は、十分単色であることがわかる。
【0012】
図9は、従来の固体ターゲットX線管によるレントゲン写真の例である。
従来の固体ターゲットX線管とは、陰極にフィラメントを有し、フィラメントを加熱して熱電子を放出し、熱電子を冷却された固体ターゲットに衝突させてX線を発生させるものである。ニッケルターゲットに連続して50kVの電圧を印加し、長時間照射して撮影した。
図9(a)及び(b)から明らかなように、単色フィルター無しでは、ポリメチル・メタクリレートの厚みに依存したコントラスト像が得られず、従来の固体ターゲットX線管によるX線は、特性X線以外に、連続的なスペクトル分布を有する制動X線を大量に放射することがわかる。
このように、プラズマX線発生装置は、極めて高強度の準特性X線を容易に発生することができるから、高強度の準特性X線の汎用X線源として期待されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、医療分野の汎用線源として使用するためには、改善すべき課題がある。
第1には、図7及び図8のレントゲン写真上の位置によって濃淡が異なる。すなわち、このプラズマX線発生装置の発生するX線は空間的に線量むらがある。医療に応用するためには線量むらをなくすことが必要がある。
第2には、応用分野をさらに広げるために、さらに高強度のプラズマX線発生装置が望ましい。
第3には、放電を惹起し易くし、装置の安全性及びコストを下げることが望ましい。
第4には、金属等からなる陰極では、繰り返し使用すると変形が起こり、寿命が短い。
【0014】
本発明は上記課題に鑑み、プラズマX線発生装置に使用する、線量むらのない、高強度の、放電が惹起しやすく、かつ、繰り返し使用できるプラズマX線管を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のプラズマX線管は、高電圧放電により、対陰極物質を蒸発させて対陰極物質からなるプラズマを生成し、このプラズマに衝突して生ずる制動放射X線をプラズマ中の対陰極物質に吸収させて特性X線を発生させるプラズマX線発生装置に使用するプラズマX線管において、
棒状の対陰極と、棒状の対陰極の外径より大きな内径を有する環状陰極とを有し、
上記環状陰極が、外径、内径及び材料の異なる複数の環状陰極部材を、対陰極に面する側から対陰極に面しない側に向かって順次内径が大きくなるように互いに嵌合してなり、かつ該環状陰極部材の外径が対陰極に面する側から対陰極に面しない側に向かって連続的に大きくなる形状を有しており、
上記棒状の対陰極と上記環状陰極の軸を一致させてかつ所定の距離離して配設し、上記環状陰極の開口部からX線を取り出すことを特徴とする。
この構成によれば、X線取り出し方向にプラズマを消滅させる陰極が無いから、棒状の陰極を使用して放電した場合に比し、プラズマの陰極方向の長さがより長くなる。従って、取り出すX線のプラズマ中の伝搬距離が長くなり、誘導放出効果が大きくなるから準単色X線の強度が増加し、かつ、制動放射X線の吸収効果が大きくなるから取り出すX線の単色性が増加する。
さらにまた、対陰極の外径より大きな内径を有するから、プラズマの安定性が増大し、取り出すX線の空間的線量のばらつきが少なくなる。また、プラズマX線管のコストを下げることができる。
【0016】
また、前記対陰極に面する環状陰極部材がカーボン・グラファイトからなり、該カーボン・グラファイトからなる環状陰極部材以外の環状陰極部材が金属からなることを特徴とする。この構成によれば、プラズマX線管のコストを下げることができる。
【0017】
また、放電トリガー電極を、前記環状陰極の内壁に沿って、かつ、前記環状陰極の内部に配設することを特徴とする。
また、放電トリガー電極前記対陰極に面する環状陰極部材の側壁を貫通して設けた細孔内に配設することを特徴とする。
この構成によれば、放電トリガー電極が、取り出すX線を遮ることがなく、X線の空間的線量のばらつきが生じなく、高強度の特性X線が得られる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明のプラズマX線管の構成を模式的に示す図である。
図において、プラズマX線管1は、棒状の対陰極2と、棒状の対陰極2の外径より大きな内径を有する環状陰極3とを有しており、棒状の対陰極2と環状陰極3は、棒状の対陰極2と環状陰極3の軸4,4’を一致させて、かつ所定の距離dだけ離して配設されており、X線5は環状陰極3の開口部6から、軸4方向に取り出されるようになっている。
環状極3は、内径a及び外径bが対陰極2に面する側から対陰極2に面しない側に向かって連続的に大きくなる形状を有している。
放電トリガー電極7は、環状極3の内壁8に近接して、かつ内壁8に沿って、環状極3の内部に配設されており、もう一方の放電トリガー電極9は環状極3の一端に接続されている。
また、環状極3の材料は、カーボン・グラファイトである。環状陰極3の材料にカーボン・グラファイトを使用すれば、カーボン・グラファイトが高融点、高導電性結晶であるから、放電時の高密度の電流によっても環状陰極3が変形することが無く、繰り返し使用することができる。
なお、真空容器、X線窓、真空引き配管、等のプラズマX線管を構成する他の部材は、図5と同様であるので図示を省略する。
【0019】
上記構成のプラズマX線管は、以下のように動作する。
トリガー電極7,9間にトリガー電圧を印加すると、放電トリガー電極7と環状極3の内壁8の間に高電界が発生し、内壁8近傍の気体が電離する。この電離がきっかけとなってプラズマX線管内の気体全部が電離し、環状極3から電子が、高電圧コンデンサに印加された電圧Vで加速され、対陰極2に衝突する。電子のエネルギー及び電流密度が十分高いので、対陰極2を構成する原子を瞬時に蒸発させ、対陰極2を構成する原子のイオンと電離された電子とからなるプラズマ10を形成する。
図1に示したように、本発明の陰極は環状極3であるので、X線取り出し方向4にプラズマ10を消滅させる低温熱源が無いから、棒状の陰極を使用した従来のプラズマに比し、プラズマ10は軸4方向により長くなる。さらに、環状陰極3の内径aは棒状の対陰極2の外径より大きいから、環状陰極3の近傍の電流成分には軸4に垂直な成分も存在し、この電流成分による磁場によって、軸4方向のローレンツ力が発生し、プラズマ10は軸4方向により長くなる。
【0020】
このようにしてプラズマ10は軸4方向に伸びるので、取り出すX線5のプラズマ10中の伝搬距離が長くなり、誘導放出効果が大きくなるから準単色X線の強度が増加し、かつ、制動放射X線の吸収効果が大きくなるから取り出すX線の単色性が増加する。
さらにまた、環状陰極3の内径aは棒状の対陰極2の外径より大きいから、そして、環状極3の外径bが対陰極2に面する側から対陰極2に面しない側に向かって連続的に大きくなる形状を有しているから、プラズマ10の安定性が増大し、取り出すX線の空間的線量ばらつきが少なくなる。
また、放電トリガー電極7は、環状極3の内壁8に近接して、かつ内壁8に沿って環状極3の内部に配設されているから、電界強度がより増大し、より低い印加電圧で放電を惹起できる。また放電トリガー電極7が、取り出すX線5を遮ることが無いので空間的線量ばらつきが少なくなる。
【0021】
次に、第1の実施例を説明する。
図2は、本発明のプラズマX線管のX線強度、線量むら、トリガー容易性を従来のプラズマX線管と比較した図である。
図2において、(a)は板状対陰極及び棒状金属陰極からなる従来例のプラズマX線管であり、(b)は棒状対陰極及び棒状金属陰極からなる従来例のプラズマX線管であり、(c)は本発明のプラズマX線管である。
測定は、同一のプラズマX線装置を用い、同一の充電電圧50kVで行った。対陰極材料は全てニッケルを使用した。
なお、従来例のプラズマX線管のトリガー電極は、導体を絶縁管に挿通し、絶縁管を棒状陰極の中心に穿った細孔に挿通して構成されており、放電を惹起する導体露出部は、棒状陰極の対陰極に面する面内に配設されている。
図に示すように、本発明のプラズマX線管(c)のX線強度は、板状対陰極及び棒状陰極からなる従来例のプラズマX線管(a)に較べて6倍、棒状対陰極及び棒状陰極からなる従来例のプラズマX線管(b)に較べて2倍のX線強度を有する。
また、放電を惹起するトリガー電圧は、(a)及び(b)の金属陰極を用いた従来例に較べ、半分以下に低下している。
【0022】
図3は、本発明のプラズマX線管の空間的線量の均一性を示すレントゲン写真である。
レントゲン写真撮影は、図7における説明と同様に、本発明のプラズマX線管の棒状の対陰極2の材料にニッケルを用い、50kVの電圧で高圧コンデンサを充電し、プラズマX線管から1.2mの距離で、ポリメチル・メタクリレートからなる被写体を撮影した。ポリメチル・メタクリレートからなる被写体は、直径が一定長さずつ大きくなる同一の厚み(5mm)の複数の円盤5枚を同心円状に積み重ねたものである。ポリメチル・メタクリレートは、ニッケルのKα、Kβ特性X線を吸収し、他の波長のX線は透過する。
図3から明らかなように、本発明のプラズマX線管の線量ばらつきはほとんど認められず、図7及び図8に示した従来例に較べ、著しく線量の空間的均一性が高いことがわかる。
【0023】
次に、第2の実施例を説明する。
図4は第2の実施例の構成を示す断面図である。
図4において、環状極3は、カーボン・グラファイトからなる第1の環状陰極部材11を、黄銅からなる第2の環状陰極部材12に嵌合し、嵌合した第1,第2の環状陰極部材をステンレスからなる第3の環状陰極部材13に嵌合して形成されている。
また、第1の環状陰極部材11と黄銅からなる第2の環状陰極部材12の外径は、対陰極2に面する側から対陰極に面しない側に向かって順次径が大きくなるように形成されている。
また、放電トリガー電極7は、対陰極に面する環状陰極部材11の側壁を貫通して設けた細孔にセラミック管14を介して配設されている。
カーボングラファイトは、切削加工により加工は容易であるが、他の物質との融着ができない。このため、カーボングラファイトからなる環状電極単体では、ステンレスからなる真空容器に固定することが難しく、コストが高くなる。
この構成によれば、カーボングラファイトからなる環状陰極部材11を黄銅からなる第2の環状陰極部材12に嵌合して固定することができ、第2の環状陰極部材12をステンレスからなる第3の環状陰極部材13に嵌合して固定することができ、ステンレスからなる第3の環状陰極部材13はステンレスからなる真空容器に容易に融着して固定できる。従って、コストを低くできる。
【0024】
なお、上記説明では、ニッケルからなる対陰極を例にとって説明したが、他の物質を対陰極材料とすることはもちろん可能であり、特に、原子番号の大きな材料を対陰極材料とし、適宜の高圧で放電すれば、より高エネルギーの特性X線源となることは明らかである。
【0025】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明によれば、線量むらのない、高強度の、放電が惹起しやすい、かつ、繰り返し使用できるプラズマX線管を提供することができる。
従って、手軽に使用できる、高エネルギー、高強度の準単色X線を発生するプラズマX線発生装置のプラズマX線管として使用することができる。かくして、本発明によれば高強度の単色X線を必要とする医療分野で使用すれば極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラズマX線管の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明のプラズマX線管のX線強度、線量むら、トリガー容易性を従来のプラズマX線管と比較した図である。
【図3】本発明のプラズマX線管の空間的線量均一性を示すレントゲン写真である。
【図4】第2の実施例の構成を示す断面図である。
【図5】プラズマX線発生装置の原理を示す図である。
【図6】プラズマX線発生装置において、板状の対陰極を用いた場合に生成するプラズマの形状の軸方向(長手方向)と、横断方向(短手方向)のそれぞれのX線スペクトルの実測値を模式的に示したものである。
【図7】棒状の対陰極の材料にニッケルを用いたプラズマX線発生装置のX線を使用したレントゲン写真の例である。
【図8】板状の対陰極材料にニッケルを用いたプラズマX線発生装置のX線を使用したレントゲン写真の例である。
【図9】従来の固体ターゲットX線管によるレントゲン写真の例である。
【符号の説明】
1 プラズマX線管
2 棒状対陰極
3 環状陰極
4 棒状対陰極の軸
4’ 環状陰極の軸
5 取り出しX線
6 環状陰極の開口部
7 トリガー電極
8 環状陰極の内壁
9 トリガー電極
10 プラズマ
11 第1の環状陰極部材
12 第2の環状陰極部材
13 第3の環状陰極部材
14 セラミック管
50 プラズマX線発生装置
51 高圧電源
52 高圧コンデンサ
53 真空ポンプ
54 トリガーパルス電源
55 プラズマX線管
56 棒状陰極
57 棒状対陰極
58 絶縁部材
59 真空容器
60 X線窓
61 真空引き配管
62 プラズマ
63 取り出しX線
71 軸方向取り出しX線
72 横断方向取り出しX線
73 板状対陰極
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8