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明細書 :肩甲骨鎖骨機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5194213号 (P5194213)
公開番号 特開2009-268839 (P2009-268839A)
登録日 平成25年2月15日(2013.2.15)
発行日 平成25年5月8日(2013.5.8)
公開日 平成21年11月19日(2009.11.19)
発明の名称または考案の名称 肩甲骨鎖骨機構
国際特許分類 A61F   2/68        (2006.01)
A61F   2/54        (2006.01)
A61F   2/40        (2006.01)
FI A61F 2/68
A61F 2/54
A61F 2/40
請求項の数または発明の数 5
全頁数 26
出願番号 特願2008-124199 (P2008-124199)
出願日 平成20年5月12日(2008.5.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 発行所 社団法人日本機械学会 刊行物名 第8回機素潤滑設計部門講演会講演論文集 発行日 平成20年4月20日
審査請求日 平成23年5月12日(2011.5.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】田中 英一郎
【氏名】石井 孝憲
個別代理人の代理人 【識別番号】100109553、【弁理士】、【氏名又は名称】工藤 一郎
審査官 【審査官】石田 宏之
参考文献・文献 特許第4542036(JP,B2)
特開2009-219647(JP,A)
特開2008-110198(JP,A)
特開2007-97638(JP,A)
特表2001-520915(JP,A)
特公平5-80222(JP,B2)
特開平3-194208(JP,A)
特表2010-537740(JP,A)
調査した分野 A61F 2/68
A61F 2/40
A61F 2/54
特許請求の範囲 【請求項1】
胸部に対して相対的に固定される背面スパンと、
腕を背面スパンに対して回転運動させるための肩甲上腕関節部と、
肩甲上腕関節部を背面スパンに対して上下運動又は/及び回転運動させるための背面スパンに連結された肩甲胸郭関節部と、
を有する上肢装着型運動補助装置。
【請求項2】
肩甲胸郭関節部と肩甲上腕関節部とを連結する肩甲骨スパンを有し、
肩甲胸郭関節部は、肩甲骨スパンを背面スパンに対して上下動させるともに、肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させるための軸となる肩甲胸郭リンク軸を有する請求項1に記載の上肢装着型運動補助装置。
【請求項3】
肩甲胸郭関節部と肩甲上腕関節部とを連結する肩甲骨スパンを有し、
肩甲胸郭関節部は、肩甲骨スパンを背面スパンに対して上下動させる第一リンクと、
肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させるための第一軸と、を有する請求項1に記載の上肢装着型運動補助装置。
【請求項4】
背面スパンは、装着時に装着者の背中側に配置される請求項1から3のいずれか一に記載の上肢装着型運動補助装置。
【請求項5】
肩甲上腕関節部は、装着時に装着者の肩の上側に配置される請求項1から4のいずれか一に記載の上肢装着型補助装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本件発明は、人体に装着し、人体の動作を補助する装置であって、人体の肩甲-上腕機構および肩甲胸郭機構の動きをサポートする上肢装着型運動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、介護や福祉分野などにおける介助者や被介護者双方の補助、労働作業や日常作業を補助することを目的とした装置の開発が積極的に進められている。このような、人体の動作を補助することを目的とした装置は、特許文献1や特許文献2のように、人体を囲むように複数の関節によって連結された骨格をアクチュエータにより動かすことで、動作の補助をしている。
【0003】
人体の動きを補助するには、手や腕の動きをスムーズにすることが重要である。そのためには、前腕や上腕の動きを司る、肩の動きをスムーズにすることが必要となる。人体の肩の構造は、図14に示したように、肩甲骨(1401)、鎖骨(1402)、胸骨(1403)、上腕骨(1404)の4つの骨から構成され、肩甲-上腕機構(1405)と肩甲-胸郭機構(1406)を組み合わせて構成される関節の複合体である。この二つの関節の回転運動によって、人体の上腕の動きが実現されている。図14に示したように、人体の肩甲-上腕機構と肩甲-胸郭機構の動きをスムーズに補助することが、人体の動きを補助する装置には重要な点である。

【特許文献1】特開2007-130234
【特許文献2】特開2007-097636
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に示した装置では、図14に示した肩甲-胸郭機構に該当する関節が無く、肩甲-上腕機構の内旋、外旋方向の回転と、屈曲、伸展方向の回転のみが可能となっており、人体の肩の動きをスムーズに補助することが難しい。
【0005】
また、特許文献2では、図14に示した肩甲-上腕機構の回転が可能な機構が設けられているが、肩甲-胸郭機構に該当する機構を有していない。このため、特許文献2の装置でも、人体の肩の動きをスムーズに補助することが困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本件発明では次に示す上肢装着型運動補助装置を提供する。すなわち第一の発明としては、胸部に対して相対的に固定される背面スパンと、腕を背面スパンに対して回転運動させるための肩甲上腕関節部と、肩甲上腕関節部を背面スパンに対して上下運動又は/及び回転運動させるための背面スパンに連結された肩甲胸郭関節部と、を有する上肢装着型運動補助装置を提供する。
【0007】
第二の発明としては、肩甲胸郭関節部と肩甲上腕関節部とを連結する肩甲骨スパンを有し、肩甲胸郭関節部は、肩甲骨スパンを背面スパンに対して上下動させるともに、肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させるための軸となる肩甲胸郭リンク軸を有する第一の発明に記載の上肢装着型運動補助装置を提供する。
【0008】
第三の発明としては、肩甲胸郭関節部と肩甲上腕関節部とを連結する肩甲骨スパンを有し、肩甲胸郭関節部は、肩甲骨スパンを背面スパンに対して上下動させる第一リンクと、肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させるための第一軸と、を有する第一の発明に記載の上肢装着型運動補助装置を提供する。
【0009】
第四の発明としては、背面スパンは、装着時に装着者の背中側に配置される第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載の上肢装着型運動補助装置を提供する。
【0010】
第五の発明としては、肩甲上腕関節部は、装着時に装着者の肩の上側に配置される第一の発明から第四の発明のいずれか一に記載の上肢装着型補助装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本件発明により、人体の肩甲-上腕機構および肩甲-胸郭機構の動きをスムーズに補助可能な上肢装着型補助装置が提供可能となる。これにより、介助者や被介護者双方の補助、労働作業や日常作業を補助することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0013】
実施形態1は、主に請求項1などに関する。
【0014】
実施形態2は、主に請求項2などに関する。
【0015】
実施形態3は、主に請求項3などに関する。
【0016】
実施形態4は、主に請求項4などに関する。
【0017】
実施形態5は、主に請求項5などに関する。
【0018】
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0019】
本実施形態は、腕を上肢装着型運動補助装置の背面スパンに対して回転運動させるための肩甲上腕関節部と、肩甲上腕関節部を背面スパンに対して上下運動または/及び回転運動させるための肩甲胸郭関節部を有することを特徴とする上肢装着型運動補助装置である。
【0020】
本実施形態の上肢装着型運動補助装置のように、肩甲上腕関節部と肩甲胸郭関節部の2つの関節部を有することで、より人体の動きをスムーズに補助することが可能となる。
【0021】
<実施形態1 構成>
【0022】
図1に本実施形態の上肢装着型運動補助装置の全体像を説明するための概念図を示した。本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、胸部に対して相対的に固定される背面スパン(0101)と、腕(0102)を背面スパンに対して回転運動させるための肩甲上腕関節部(0103)と、肩甲上腕関節部を背面スパンに対して上下運動又は/及び回転運動させるための背面スパンに連結された肩甲胸郭関節部(0104)と、を有する。
【0023】
「背面スパン」は、上肢装着型運動補助装置を装着者の身体に装着した際に、装着者の背中側に装着者の胸部に対して相対的に固定されている。背面スパンの下部は、人体の腰部に固定しても良いし、図示していないが人体の歩行を支援する装置に固定しても良い。背面スパンは、人体の腕の動きに伴って、上肢装着型運動補助装置の肩甲骨上腕関節部と肩甲骨胸郭関節部が上下運動又は/及び回転運動する場合も、人体の胸部に対して相対的に固定された状態を保つ。
【0024】
<肩甲上腕関節部>
【0025】
「肩甲上腕関節部」は、人体の腕を背面スパンに対して、回転運動させるための関節部である。ここで、本実施形態の肩甲上腕関節部の回転運動とは、図2の(a)(b)(c)に示すような、内旋および外旋と、内転および外転と、屈曲および伸展などの人体の腕の動作を補助する回転運動である。人体において、これら3方向の回転の軸のすべてが一点に集まっている。このため、本実施形態の肩甲上腕関節部も、図3に示すようにそれぞれの回転がすべて一点(0301)に集まるように配置されている。図3の0302を軸とした回転は、図2における(a)で示した内旋および外旋の回転運動に該当し、図3の0303を軸とした回転は、図2における(b)で示した内転および外転の回転運動に該当し、図3の0304を軸とした回転は、図2における(c)で示した屈曲および伸展の回転運動に該当する。
【0026】
図4にはそれぞれの回転軸の軸線方向からみたときの概念図を示した。まず図4の(a)は、図2の内旋および外旋に該当する回転運動の軸線方向視、つまり装着者の上方からみたときの概念図である。このとき、肩甲上腕関節部は、外旋および内旋の回転軸では、(a)のように基本肢位から内旋方向に略75°回転するように構成されている。次に、(b)は、図2の内転及び外転に該当する回転方向の軸線方向視、つまり装着者の背中方向からみたときの概念図である。このとき、肩甲上腕関節部は、基本肢位から内転方向に略45°、外転方向に略10°回転するように構成されている。また、(c)は、図2の屈曲および伸展に該当する回転方向の軸線方向視、つまり装着者の右肩方向からみたときの概念図である。このとき、肩甲上腕関節部は、基本肢位から屈曲方向に略92°、伸展方向に略48°回転可能に構成されている。ここで、本実施形態の上肢装着型運動補助装置の肩甲上腕関節部の内、屈曲および伸展の回転方向に関しては、モータなどの駆動力により、回転の動きを補助することが可能となっている。また、図示はしていないが、本実施形態の上肢装着型運動補助装置において、肩甲上腕関節部および肩甲胸郭関節部の各関節の回転方向にモータなどの駆動力によって、回転の動きを補助しても良い。
【0027】
ここで、本実施形態1に示した上肢装着型運動補助装置は、肩甲上腕関節部の屈曲および伸展の回転は、モータなどを用いて、装着者の人体の動きを補助しているが、それ以外の肩甲上腕関節部および肩甲胸郭関節部の各運動に関しては、モータなどによる補助を行わなくとも良い。このとき、モータなどによって動きを補助していない肩甲上腕関節部および肩甲胸郭関節部の上下運動又は/及び回転運動の運動方向に上肢装着型運動補助装置の自重が加わった場合、装着者自身の力によってその荷重を支える必要が生じる。これを防ぐために、本実施形態の上肢装着型運動補助装置では、モータなどによって動きを補助していない肩甲上腕関節部および肩甲胸郭関節部の回転軸周りに圧縮バネやねじりバネを配置している。このとき、配置される圧縮バネやねじりバネは、装着者の基本肢位の状態で装着者への負担が無くなるように配置する必要がある。
【0028】
そこで、本実施形態の上肢装着型運動補助装置では、図5に示したように、各回転運動の回転軸周囲に圧縮バネ(0501)やねじりバネ(0502、0503、0504)を配置している。それぞれのバネは装着者が基本肢位の状態で、負担がかからないように配置されている。(a)および(b)に示したねじりバネ(0503)は、肩甲上腕関節部の内旋の回転方向に対して付勢されるバネである。また、(a)および(b)に示したねじりバネ(0504)は、肩甲上腕関節部の内転方向の回転に対して付勢されるバネである。(a)および(b)に示したねじりバネ(0502)は、肩甲胸郭関節部の屈曲方向の回転に対して付勢されるバネである。また、(b)に示した圧縮バネ(0501)は、肩甲胸郭関節部の引下方向に対して付勢されるバネである。また、(b)に示したねじりバネ(0505)は、肩甲胸郭関節部の下方回線方向の回転に対して付勢されるバネである。尚、図5の(c)に示した屈曲および伸展方向への回転は、肩甲上腕関節部に設けられたモータ(0506)の駆動力によって回転の動きが補助されるため、バネは設けられていない。
【0029】
<肩甲胸郭関節部>
【0030】
「肩甲胸郭関節部」は、背面スパンに連結され、肩甲上腕関節部を背面スパンに対して上下運動又は/及び回転運動させる。肩甲上腕関節部の上下運動又は/及び回転運動は、図6の(a)(b)(c)に示した、人体の肩甲-胸郭機構の拳上及び引下と、屈曲及び伸展、上方旋回及び下方旋回の上下動又は/及び回転動に該当する動きである。図7に本実施形態の肩甲胸郭関節部を説明するための概念図を示した。まず、図6の(a)に示した人体の拳上と引下の上下運動は、図7の0701の軸が、上下動(0702)可能に構成されることで実現される。次に図6の(b)に示した、人体の屈曲および伸展の回転動は、図7の0701の軸を中心に回転動(0703)することで実現される。図6の(c)に示した、人体の上方旋回及び下方旋回の回転動は、図7の0704の軸を中心に回転動(0705)することで実現される。
【0031】
図8にはそれぞれの回転軸の軸線方向からみたときの概念図を示した。まず図8の(a)は、図6の拳上および引下に該当する回転運動の軸線方向視、つまり装着者の着者の背中からみたときの概念図である。このとき、肩甲胸郭関節部は、基本肢位から拳上方向(上方)へ略6mm、引下方向(下方)へ略10mm上下動するように構成されている。次に、(b)は、図6の屈曲および伸展に該当する回転方向の軸線方向視、つまり装着者の上方方向からみたときの概念図である。このとき、肩甲胸郭関節部は、装着者の基本肢位から、屈曲方向へ略20°回転するように構成されている。(c)は、図6の上方旋回及び下方旋回に該当する回転方向の軸線方向視、つまり装着者の背中方向からみたときの概念図である。このとき、肩甲胸郭関節部は、装着者の基本肢位から、上方旋回方向へ略45°、下方旋回方向へ略20°回転するように構成されている。
【0032】
前述の肩甲上腕関節部と同様に、肩甲胸郭関節部も同様に、上肢装着型運動補助装置の自重が装着者の動きの負担にならないように、圧縮バネやねじりバネが配置されている。肩甲胸郭関節部に設けられた圧縮バネやねじりバネについては、肩甲上腕関節部にて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0033】
ここで、肩甲上腕関節部および肩甲上腕関節部に設けられる圧縮バネやねじりバネについて、バネの設置方向は、前述した位置には限られず、逆の位置に配置して不勢してもよい。例えば、図5の(b)に示した肩甲上腕関節部の内転方向の回転に対して付勢されるバネを、逆に外転方向の回転に対して不勢されるようにねじりバネを配置しても良いし、ねじりバネを複数配置し、内転および外転の両方向に不勢するようにしてもよい。これらのバネの設置する位置や不勢する方向に関しては、明細書の記載に限定されず、バネを複数配置したり、不勢する方向を適時変化させることを可能にしたり、不勢方向を逆にしたりしても良い。以下の実施形態に関しても同様であり、本明細書全体を通じて同様である。
【0034】
また、肩甲上腕関節部および肩甲上腕関節部の回転動および上下動する可動範囲は、装着者の人体の大きさなどによって変化する値であるため、適時調整可能とすることが望ましい。このため本明細書中に記載された肩甲上腕関節部および肩甲上腕関節部の回転動および上下動の可動範囲は、一例であってこの値に限定されるものではない。これについては以下の実施形態も同様であり、明細書全体を通じて同様である。
【0035】
<実施形態1 効果>
【0036】
本実施形態の上肢装着型運動補助装置により、肩甲上腕関節部と肩甲胸郭関節部の2つの関節を有することで、より人体の動きをスムーズに補助することが可能となる。
【0037】
<実施形態 2>
<実施形態2 概要>
【0038】
本実施形態は、肩甲骨スパンにより肩甲胸郭関節部と肩甲上腕関節部が連結され、背面スパンに対して肩甲骨スパンを上下動させたり回転動させたりする肩甲胸郭リンク軸を有することを特徴とした上肢装着型運動補助装置である。
【0039】
<実施形態2 構成>
【0040】
図9に本実施形態の上肢装着型運動補助装置の肩甲上腕関節部と肩甲胸郭関節部の部分を拡大した概念図を示した。本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、実施形態1の上肢装着型運動補助装置にさらに、肩甲胸郭関節部(0901)と肩甲上腕関節部(0902)とを連結する肩甲骨スパン(0903)を有し、肩甲胸郭関節部は、肩甲骨スパンを背面スパンに対して上下動(0904)させるともに、肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動(0905)させるための軸となる肩甲胸郭リンク軸(0906)を有する。
【0041】
肩甲骨スパンは、肩甲胸郭関節部と肩甲上腕関節部を連結している。また肩甲骨スパンの一端には、肩甲胸郭リンク軸が配置され、もう一端には、肩甲上腕関節部の外旋および内旋の回転のための軸が配置されている。肩甲骨スパンには、肩甲上腕関節部が連結されているため、肩甲上腕関節部と肩甲骨スパンの自重は、肩甲胸郭リンク軸が支えることとなる。このため、肩甲上腕関節部と肩甲骨スパンの自重が装着者の負担にならないように、肩甲胸郭リンク軸には、回転軸周りに圧縮バネやねじりバネが配置されている。
【0042】
図10に本実施形態の肩甲胸郭関節部の肩甲胸郭リンク軸付近の断面概念図を示した。肩甲胸郭リンク軸(1001)は、軸下方を背面スパン(1002)にリニアボールブッシュ(1003)を介して、背面スパンに対して回転可能に配置されている。また、肩甲胸郭リンク軸の上方は、肩甲骨スパン(1004)に回転可能に配置されている。肩甲骨スパンと背面スパンの間の肩甲胸郭リンク軸の周囲には、圧縮バネ(1005)が設けられ、肩甲骨スパンが背面スパンに対して上下運動可能になるように構成されている。また、圧縮バネは、装着者が自然体の状態、つまり基本肢位にて装着者の負担にならないような位置となるように調整されている。また、肩甲骨スパンの上下運動の可動範囲は、基本肢位から拳上方向(上方)へ略6mm、引下方向(下方)へ略10mmとなるように調整されている。肩甲骨スパンの背面スパンに対する回転運動、つまり人体の屈曲および伸展方向の回転範囲は、ねじりバネ(1006)により付勢され、装着者の基本肢位から、屈曲方向へ略20°回転するように構成されている。また肩甲胸郭リンク軸の下部に取り付けられたナット(1007)の位置を変化させることで、拳上および引下方向の上下動の幅を調整することが可能となっている。この肩甲胸郭リンク軸の下部に取り付けられたナットは、拳上および引下による上下動によりナットがゆるまないよう、ハードロックナット(登録商標)や雌ねじ部分にナイロン製のワッシャーを組み込んだナイロンナットなどの、ゆるみにくいナットを用いることが望ましい。
【0043】
本実施形態の肩甲胸郭関節部は、図6の(c)に示した上方旋回および下方旋回の動きをすることはできない構成となっている。人体の肩甲-胸郭機構のうち(c)に示した上方旋回および下方旋回は、本実施形態の上肢装着型運動補助装置において、上方旋回および下方旋回の角度変化が小さい場合には、(a)の拳上及び引下動作や、図4の(b)の内転および外転の回転に動作が一致するため、本実施形態では上方旋回および下方旋回の動きはできない構成としている。これにより装置の構造が単純化され軽量化が図られた。
【0044】
<実施形態2 効果>
【0045】
本実施形態の肩甲胸郭関節部は、人体の肩甲—胸郭機構において、拳上および引下、屈曲および伸展の上下運動又は/及び回転運動をすることが可能となっている。これにより装置の構造が単純化され軽量化が図られ、装着者への負担や製造コストを下げることが可能となる。
【0046】
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0047】
本実施形態は、肩甲胸郭関節部が、肩甲骨スパンを上下動させるための第一リンクと、肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させるための第一軸とを有していることを特徴とした上肢装着型運動補助装置である。実施形態2の上肢装着型運動補助装置では、肩甲骨スパンを肩甲胸郭リンク軸にて、上下動および回転動させていたが、本実施形態では、上下動および回転動を、第一リンクおよび第一軸のそれぞれで行う。これにより、肩甲骨スパンの上下動をよりスムーズに行うことが可能となる。
<実施形態3 構成>
【0048】
図11に本実施形態の上肢装着型運動補助装置を説明するための概念図を示した。本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、肩甲胸郭関節部(1101)と肩甲上腕関節部(1102)とを連結する肩甲骨スパン(1103)を有し、肩甲胸郭関節部は、肩甲骨スパンを背面スパン(1104)に対して上下動させる第一リンク(1105)と、肩甲骨スパンを胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させるための第一軸(1106)と、を有する。本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、肩甲胸郭関節部の拳上および引下の動きと、屈曲および伸展方向の回転をそれぞれ第一リンクと第一軸にて行うことでよりスムーズに肩甲骨スパンの上下動を行うことが可能となる。
【0049】
「第一リンク」は、肩甲骨スパンと背面スパンを連結し、肩甲骨スパンが背面スパンに対して上下するように構成されている。第一リンクにより、肩甲骨スパンが背面スパンに対して上下することで、人体の拳上及び引下の動きを実現している。第一リンクは、図11の(a)や(b)のように、リンクによって、肩甲骨スパンが背面スパンに対して上下するように構成されている。第一リンクには、肩甲骨スパンが連結されているため、肩甲上腕関節部と肩甲骨スパンおよび第一軸の自重を第一リンクが支えることとなる。このため、第一リンクには、肩甲上腕関節部と肩甲骨スパンおよび第一軸の自重を支える強度が必要である。第一リンクによる肩甲骨スパンの上下動範囲は、人体の基本肢位から、拳上方向(上方)へ略6mm程度、引下方向(下方)へ、略10mm程度となるように調節されている。
【0050】
「第一軸」は、肩甲骨スパンの一端に配置され、胸部正面側に対して開閉する方向に回転動させる。第一軸は、肩甲骨スパンの一端に配置され、人体の屈曲および伸展方向に回転するように構成されている。第一軸の回転運動の回転範囲は、装着者の基本肢位から屈曲方向へ略20°程度回転するように構成されている。
【0051】
また、図11の(b)において、肩甲骨スパンを背面スパンに対して上下動させる際に、背面スパンに、肩甲骨スパンの上下動を安定させるための、レールなどのガイド(1107)を設けても良い。レールなどのガイドを設けることで、肩甲骨スパンの上下動を安定させ、なおかつスムーズに上下動させることが可能となる。
<実施形態3 効果>
【0052】
本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、肩甲胸郭関節部の拳上および引下の動きと、屈曲および伸展方向の回転をそれぞれ第一リンクと第一軸にて行うことでよりスムーズに肩甲骨スパンの上下動を行うことが可能となる。
【0053】
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0054】
本実施形態は、背面スパンが装着者の背面側に配置されることを特徴とした上肢装着型運動補助装置である。背面スパンが装着者の背面側に配置されることで、背面スパンに配置された肩甲胸郭リンク軸が、必ず装着者の背面側に配置されこととなる。図14に示したように、人体の肩関節の構造は、肩甲-上腕機構と肩甲-胸郭機構によって構成されている。このうち、肩甲-胸郭機構は、人体の背中側に配置されている。このため、本実施形態の上肢装着型運動補助装置では、背面スパンを装着者の背面側に配置することで、人体の肩関節の動きに近い動きを実現することが可能となる。
【0055】
<実施形態4 構成>
【0056】
本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、背面スパンが、装着時に装着者の背中側に配置される上肢装着型運動補助装置である。図12に本実施形態の上肢装着型運動補助装置の概念図を示した。図11は上肢装着型運動補助装置を装着した際の装着者(1201)上方からみたときの概念図である。背面スパン(1202)は、肩甲上腕関節部(1203)や肩甲胸郭関節部(1204)が上下動や回転動した場合でも、装着者の胸部に対して相対的に固定されており、装着者の背面に配置されている。これに伴って、背面スパンに配置されている肩甲胸郭関節部の肩甲胸郭リンク軸も、肩甲上腕関節部および肩甲胸郭関節部の動きに関係なく、常に装着者の背中側、つまり背面に配置されることとなる。
【0057】
<実施形態4 効果>
【0058】
このように、背面スパンを装着時に装着者の背中側に配置することで、背面スパンに配置された肩甲胸部リンク軸が、必ず装着者の背面側に配置されこととなり、これにより、人体の肩関節の動きに近い動きを実現することが可能となる。
【0059】
<実施形態5>
<実施形態5 概要>
【0060】
本実施形態は、肩甲上腕関節部が装着時に装着者の肩の上側に配置されることを特徴とした上肢装着型運動補助装置である。肩甲上腕関節部を装着者の肩の上側に配置することで、図14に示した人体の肩関節の動きのうち、肩甲-上腕機構の3方向からの回転動を、一点に集まった軸にて行うことが可能となり、より人体の肩関節の動きに近い動きを実現することが可能となる。
【0061】
<実施形態5 構成>
【0062】
本実施形態の上肢装着型運動補助装置は、肩甲上腕関節部が、装着時に装着者の肩の上側に配置されることを特徴としている。図13に本実施形態の上肢装着型運動補助装置の概念図を示した。図13は上肢装着型運動補助装置を装着した際の装着者(1301)の背面側からみたときの概念図である。肩甲上腕関節部(1302)は、肩甲上腕関節部や肩甲胸郭関節部(1303)が上下動や回転動した場合でも、装着者の肩の上側に配置されている。仮に肩甲上腕関節部が装着者の肩の上側に配置されていない場合、肩甲-上腕機構の3方向からの回転動の中心が、装着者の肩の位置からずれてしまい、人体の肩関節の動きに近い動きをすることが不可能となる。逆に、肩甲上腕関節部が装着者の肩の上側に配置されているため、肩甲-上腕機構の3方向からの回転動の中心が装着者の肩の位置に一致させることが可能となる。
【0063】
また、肩甲上腕関節部は、装着者の上側に配置されていれば、装着者の肩の上面からの距離は特に問題ではなく、想定される装着者の身体の大きさなどによって変化させればよい。仮に肩甲上腕関節部を装着者の肩に接する程度の位置に配置した場合、装着者の動きを妨げる可能性があるので注意が必要である。また逆に、装着者の肩から、極度に高い位置に肩甲上腕関節部を配置した場合には、装着者の頭の動きなどを阻害しまうなどの危険があるため、避けるべきである。
【0064】
<実施形態5 効果>
【0065】
本実施形態の上肢装着型運動補助装置のように、肩甲上腕関節部が装着者の肩の上側にくるように配置することで、人体の肩関節の動きのうち、肩甲-上腕機構の3方向からの回転動を、同心の軸にて行うことが可能となり、より人体の肩関節の動きに近い動きを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態1の上肢装着型運動補助装置を説明する概念図
【図2】人体の肩の動きを説明する概念図
【図3】実施形態1の上肢装着型運動補助装置の肩甲上腕関節部を説明する概念図
【図4a】実施形態1の上肢装着型運動補助装置の肩甲上腕関節部を説明する概念図
【図4b】実施形態1の上肢装着型運動補助装置の肩甲上腕関節部を説明する概念図
【図4c】実施形態1の上肢装着型運動補助装置の肩甲上腕関節部を説明する概念図
【図5a】人体の肩の動きを説明する概念図
【図5b】人体の肩の動きを説明する概念図
【図5c】人体の肩の動きを説明する概念図
【図6】実施形態1の上肢装着型運動補助装置の肩甲胸郭関節部を説明する概念図
【図7】実施形態1の上肢装着型運動補助装置の肩甲胸郭関節部を説明する概念図
【図8】実施形態1の上肢装着型運動補助装置を説明する概念図
【図9】実施形態2の肩甲胸郭リンク軸を説明する概念図
【図10】実施形態2の上肢装着型運動補助装置を説明する概念図
【図11】実施形態3の上肢装着型運動補助装置を説明する概念図
【図12】実施形態4の上肢装着型運動補助装置を説明する概念図
【図13】実施形態5の上肢装着型運動補助装置を説明する概念図
【図14】人体の肩の構造を説明するための概念図
【符号の説明】
【0067】
0101 背面スパン
0102 腕
0103 肩甲上腕関節部
0104 肩甲胸郭関節部
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4a】
3
【図4b】
4
【図4c】
5
【図5a】
6
【図5b】
7
【図5c】
8
【図6】
9
【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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