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明細書 :起立補助装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5382508号 (P5382508)
登録日 平成25年10月11日(2013.10.11)
発行日 平成26年1月8日(2014.1.8)
発明の名称または考案の名称 起立補助装置
国際特許分類 A61G   5/00        (2006.01)
A61G   7/10        (2006.01)
FI A61G 5/00 502
A61G 7/10
請求項の数または発明の数 2
全頁数 34
出願番号 特願2009-96664 (P2009-96664)
出願日 平成21年4月13日(2009.4.13)
審査請求日 平成24年3月30日(2012.3.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】田中 英一郎
【氏名】橋本 健一
【氏名】紺谷 真紀人
個別代理人の代理人 【識別番号】100109553、【弁理士】、【氏名又は名称】工藤 一郎
特許請求の範囲 【請求項1】
L字状ベースリンクと、
L字状ベースリンクの一辺に所定間隔Aを隔てて配される第一軸支点と、第二軸支点と、
第一軸支点を中心として回転する所定長Bの第一回転リンクと、
第一回転リンクに配置され、前記第一軸支点を中心として回転する第三軸支点と、
第三軸支点を支点として配される第一メインリンクと、
第二軸支点を支点として配される第二メインリンクと、
第一メインリンクの第三軸支点からみて反対側よりに配される第四軸支点と、
同じく第一メインリンクの第三軸支点からみて第四軸支点よりさらに遠くに配される第五軸支点と、
第四軸支点を支点として配される第一サブリンクと、
第五軸支点を支点として配されるT字状接続コントロールリンクと、
このT字状接続コントロールリンクの前記第五軸支点からみて反対側に配され、第二メインリンクの第二軸支点からみて反対側に配される第六軸支点と、
このT字状接続コントロールリンクのT字縦方向の部分リンクに配される第七軸支点と、
第七軸支点を一端とし、第一サブリンクの第四軸支点と反対側に配される第八軸支点を他端として配される第二サブリンクと、
L字状ベースリンクの他の一辺に配される第九軸支点を支点とし、第一メインリンクの中間点に配される軸支点を他端として配されるサポートリンクと
からなるリンク構造体を有し、前記第一サブリンクを直接的に、又はいずれかのリンクに与えられる駆動力に基づいて間接的に駆動して、第一サブリンクからの押圧力により着座している人の背中側を押すことで起立補助をする起立補助装置。
【請求項2】
人の足裏または/及び太ももを歩行の動きで補助する補助部と、
補助部を人に沿わせるために補助部と人の体とを一体とするため人の腰部ないしは背中部に装着される固定部と、からなる歩行補助装置と、
請求項1に記載の起立補助装置と、からなる移動補助システムであって、
起立補助装置の前記第一サブリンクと歩行補助装置の固定部とを着脱自在に連結する連結機構を起立補助装置と歩行補助装置に備えた移動補助システム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者などの要介護者が車いすなどに座った状態から起立するまでを補助し、あるいは、起立した状態から座るまでを補助する起立補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年日本は高齢化社会となり、要介護者数が増加するだけではなく、要介護者を介護する介護者の数が減少している。介護者は、要介護者の起立や歩行などを介助するため、肉体的な負担が大きく、介護者の減少による影響は大きい。またさらに近年、老老介護といわれる、高齢者が高齢者を介護する例もあり、高齢者を介護する高齢者の負担が大きな問題となっている。このような状況は、介護者のみならず、介護を受ける要介護者にも少なからず影響が及んでいる。
【0003】
また、介護を受ける要介護者は、介護されているという負い目を感じたり、車いすを使用する際には、会話時に目線の高さが異なったり、高い場所にある物を取る際には人の手を必要とするなど、精神的な負担も大きい。
【0004】
このような、問題を解決するために、特許文献1や特許文献2では、起立を補助するための装置や椅子が示されている。特許文献1や2に示した起立を補助する椅子は、要介護者が着座した座面を、上方に持ち上げ、さらに傾斜させることで、要介護者を起立させている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開平8-117285号公報
【特許文献2】特開平7-88135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や2に示した起立補助装置は、単に座面の上昇と傾斜によって要介護者の起立を補助している。しかし、人体が起立する動作は、図24に示すように主に2種類の起立方法によって起立している。人の起立には起立時に体幹を前傾させ重心位置を移動し転倒を防止する体幹前傾起立と、体幹を直立したまま起立する体幹直立起立の2種類がある。体幹直立起立は、荷物を持って立ち上がる場合などで行われ、若年層に多く見られる起立方法である。また、腰を痛めて曲げることのできない場合にも行われる起立法である。理学療法士の多くは、体幹を前傾して起立する体幹前傾起立を推奨している。
【0007】
特許文献1や2に示した起立補助装置では、座面の上昇と傾斜によって要介護者の起立を補助しているため、体幹前傾起立を行うか、体幹直立起立を行うかは、要介護者の判断のみとなる。仮に、要介護者が起立補助装置の操作を誤り、起立補助装置の座面が上昇し傾斜してしまった場合、要介護者は、着座時の姿勢によっては不安定な体幹直立起立を行うこととなってしまい、最悪の場合転倒の恐れもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本件発明では上記課題に鑑み体幹前傾起立および体幹直立起立の両方の起立方法を一つの駆動源によって実現可能な起立補助装置を提供する。
【0009】
すなわち第一の発明としては、L字状ベースリンクと、L字状ベースリンクの一辺に配される第一軸支点と、第二軸支点と、第一軸支点を中心として回転する第一回転リンクと、第一回転リンクに配置され、前記第一軸支点を中心として回転する第三軸支点と、第三軸支点を支点として配される第一メインリンクと、第二軸支点を支点として配される第二メインリンクと、第一メインリンクの第三軸支点からみて反対側よりに配される第四軸支点と、同じく第一メインリンクの第三軸支点からみて第四軸支点よりさらに遠くに配される第五軸支点と、第四軸支点を支点として配される第一サブリンクと、第五軸支点を支点として配されるT字状接続コントロールリンクと、このT字状接続コントロールリンクの前記第五軸支点からみて反対側に配され、第二メインリンクの第二軸支点からみて反対側に配される第六軸支点と、このT字状接続コントロールリンクのT字縦方向の部分リンクに配される第七軸支点と、第七軸支点を一端とし、第一サブリンクの第四軸支点と反対側に配される第八軸支点と他端として配される第二サブリンクと、L字状ベースリンクの他の一辺に配される第九軸支点を支点とし、第一メインリンクの中間点に配される軸支点を他端として配されるサポートリンクとからなるリンク構造体を有し、前記第一サブリンクを直接的に、又はいずれかのリンクに与えられる駆動力に基づいて間接的に駆動して、第一サブリンクからの押圧力により着座している人の背中側を押すことで起立補助をする起立補助装置を提供する。
【0010】
第二の発明としては、人の足裏または/及び太ももを歩行の動きで補助する補助部と、補助部を人に沿わせるために補助部と人の体とを一体とするため人の腰部ないしは背中部に装着される固定部と、からなる歩行補助装置と、第一の発明に記載の起立補助装置と、からなる移動補助システムであって、起立補助装置の前記第一サブリンクと歩行補助装置の固定部とを着脱自在に連結する連結機構を起立補助装置と歩行補助装置に備えた移動補助システムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本件発明の起立補助装置により、要介護者が起立する際に、体幹前傾起立および体幹直立起立の両起立方法にも対応することが可能な起立補助装置を提供することが可能となる。また、本件発明の起立補助装置では、腰部補助用と体幹補助用の機構をリンクで連結し、することで一つの駆動源で両起立方法に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】健常者が起立する際の腰の軌道を示す図
【図2】起立する際の腰の軌道の測定データを示す図
【図3】体幹前傾起立の際の体幹前傾角度の変化を示す図
【図4】起立動作の解析のためのモデルを示す図
【図5】実施形態1の起立補助装置の一例図
【図6】図5に示した起立補助装置の体幹前傾起立による推移を示す概念図
【図7】図5に示した起立補助装置の体幹直立起立による推移を示す概念図
【図8】図5に示した起立補助装置の寸法例を示す図
【図9】図8に示した起立補助装置の体幹前傾角度の変化を示す図
【図10】実施形態1の起立補助装置の一例図
【図11】図10に示した起立補助装置の体幹前傾角度の変化を示す図
【図12】実施形態1の起立補助装置の一例図
【図13】図12に示した起立補助装置の寸法例を示す図
【図14】図12に示した起立補助装置の体幹前傾角度の変化を示す図
【図15】図12に示した起立補助装置の体幹前傾起立による推移を示す概念図
【図16】図12に示した起立補助装置の体幹直立起立による推移を示す概念図
【図17】図12に示した起立補助装置の推移を示す別の概念図
【図18】干渉を回避する起立補助装置の体幹前傾起立による推移を示す概念図
【図19】干渉を回避する起立補助装置の体幹直立起立による推移を示す概念図
【図20】体幹前傾起立の際の初期位置を示す図
【図21】体幹直立起立の際の初期位置を示す図
【図22】起立補助装置を車椅子に装着した一例図
【図23】実施形態2の移動補助システムの一例図
【図24】健常者の起立方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。

【0014】
実施形態1は、主に請求項1に関する。

【0015】
実施形態2は、主に請求項2に関する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>

【0016】
本実施形態の起立補助装置は、図23に示した体幹前傾起立および体幹直立起立の2つの起立方法を補助することが可能な起立補助装置である。体幹前傾起立は、比較的ゆっくりと重心移動が行われ、腰への負担が小さく、膝の関節モーメントが大きい起立方法であって、リハビリの現場で推奨されている方法である。一方、体幹直立起立は、素早く起立することが可能であるが、腰へ負担が大きく、体幹が直立した状態を維持するために腹筋や背筋を使用する必要がある。本実施形態の起立補助装置では、これらの2つの起立方法を補助可能な起立補助装置を提供する。
<実施形態1 構成>

【0017】
本実施形態の起立補助装置は、L字状ベースリンクと、L字状ベースリンクの一辺配される第一軸支点と、第二軸支点と、第一軸支点を中心として回転する第一回転リンクと、第一回転リンクに配置され、前記第一軸支点を中心として回転する第三軸支点と、第三軸支点を支点として配される第一メインリンクと、第二軸支点を支点として配される第二メインリンクと、第一メインリンクの第三軸支点からみて反対側よりに配される第四軸支点と、同じく第一メインリンクの第三軸支点からみて第四軸支点よりさらに遠くに配される第五軸支点と、第四軸支点を支点として配される第一サブリンクと、第五軸支点を支点として配されるT字状接続コントロールリンクと、このT字状接続コントロールリンクの前記第五軸支点からみて反対側に配され、第二メインリンクの第二軸支点からみて反対側に配される第六軸支点と、このT字状接続コントロールリンクのT字縦方向の部分リンクに配される第七軸支点と、第七軸支点を一端とし、第一サブリンクの第四軸支点と反対側に配される第八軸支点と他端として配される第二サブリンクと、L字状ベースリンクの他の一辺に配される第九軸支点を支点とし、第一メインリンクの中間点に配される軸支点を他端として配されるサポートリンクとからなるリンク構造体を有し、前記第一サブリンクを直接的に、又はいずれかのリンクに与えられる駆動力に基づいて間接的に駆動して、第一サブリンクからの押圧力により着座している人の背中側を押すことで起立補助をする。
<起立時の腰の軌道>

【0018】
図1に、健常者を側面方向から見たときの、起立軌道を示した。前述のように、起立時に体幹を前傾させ重心位置を移動し転倒を防止する体幹前傾起立と、体幹を直立したまま起立する体幹直立起立の2種類がある。図1に示した起立軌道は、理学療法士の多くが推奨する体幹前傾起立を行う際の腰の起立軌道を示した。図1に示したように、腰の起立軌道は、ほぼ直線状となっていることが分かる。このことは、図2に示すように、男女あるいは身長の高低にかかわらない。なお、図1に示したデータは、図2において身長が169.3cmの男性のものである。また、図3に体幹前傾起立を行う際に、人が体幹を前傾させる角度を示すグラフを示した。図3に示したそれぞれのグラフは健常者が体幹前傾起立を行う際の値である。本実施形態の起立補助装置では、図3に示した角度やタイミングに近い角度やタイミングを実現する必要がある。そのために、図4に示すモデルを用いて起立動作の解析を行い、起立補助装置の設計を行った。なお、図3に示した角度は、図4におけるθである。
<起立補助装置の設計>

【0019】
本実施形態の起立補助装置は、上記条件を満たすように設計されている。本実施形態の起立補助装置では、前述した体幹前傾起立と体幹直立起立の2種類を可能にするため、腰を持ち上げる機構と体幹を前傾させる機構が設けられている。そこで図5のように腰部補助用(0501)と体幹補助用(0502)の機構をリンク(0503)で連結し、駆動源1つで使用できる1自由度の機構が考えられる。この起立補助装置は直線である腰の軌道を出力するチェビシェフリンク機構と、体幹角度を再現する早もどり機構で構成されている。1自由度であるため、動きが限定されるが、リンク(0504)の回転方向を切り換えることで、体幹前傾起立と体幹直立起立の2通りの動きに対応させることが可能である。また、リンク(0505)のリンク長の調整によって身長等の個人差にも対応できる。体幹前傾起立と体幹直立起立は、リンク(0504)の回転方向を切り換えることで、変更することが可能であるが、図中の回転方向が軸(0505)を中心に(1)のとき体幹前傾起立、回転方向が軸(0505)を中心に(2)のとき、体幹直立起立に対応することが可能である。これにより、健常者の体幹動作の補助が必要な人と、腰の動作が困難な人の両方に対応する。図6は、図5に示した起立補助装置のリンク構造体における、体幹前傾起立による着座時から起立時への推移を示した概念図である。また、図7は、図5に示した起立補助装置のリンク構造体における、体幹直立起立による着座時から起立時への推移を示した概念図である。

【0020】
この図5に示した起立補助装置を元に装置の寸法を決定する。装置の寸法の決定には、健常者の腰部の動きを元に決定した。健常者の腰部の直線軌道が、図1に示したように略550mmであり、これを元に装置の寸法を決定すると、図5に示した起立補助装置の寸法は、図8に示すようになる。

【0021】
図9に図8に示した寸法の起立補助装置の体幹傾斜角度の着座から起立までの変化データを示した。図9に示したように、図5及び図8に示す起立補助装置では、体幹が傾斜する角度が最大となるタイミングが、健常者のタイミングに比べて遅く、また角度を極めて大きいことが分かった。

【0022】
これらの結果をもとに、健常者の傾斜角度と傾斜タイミングに適合するように、起立補助装置のリンク長を変更した。図10は、リンク長を変更した起立補助装置である。図10のように変更後の起立補助装置は、変更前の起立補助装置と比べて大幅に大型化した。この図10に示した起立補助装置の体幹傾斜角度変化を図11に示す。人間の体幹角度と比べ、前傾していく20~40%のとき穏やかながらも実測よりも早く角度が増加する。起立時に腰が曲がっていない人へ警告を行い、起立完了時に人の動きを再現する機能になった。
<起立補助装置の最適化>

【0023】
図10の起立補助装置では、図8に示した起立補助装置のリンク長のみを変更した。しかし、リンク長のみを変更する方法では装置が大型化してしまう。そこで複節リンクの軸配置もパラメータの一つとして追加し、再度最適化を行った。その結果、図12に示した起立補助装置が得られた。図12に示した起立補助装置は、L字状ベースリンク(1201)と、L字状ベースリンクの一辺に配される第一軸支点(1202)と、第二軸支点(1203)と、第一軸支点を中心として回転する第一回転リンク(1204)と、第一回転リンクに配置され、前記第一軸支点を中心として回転する第三軸支点(1205)と、第三軸支点を支点として配される第一メインリンク(1206)と、第二軸支点を支点として配される第二メインリンク(1207)と、第一メインリンクの第三軸支点からみて反対側よりに配される第四軸支点(1208)と、同じく第一メインリンクの第三軸支点からみて第四軸支点よりさらに遠くに配される第五軸支点(1209)と、第四軸支点を支点として配される第一サブリンク(1210)と、第五軸支点を支点として配されるT字状接続コントロールリンク(1211)と、このT字状接続コントロールリンクの前記第五軸支点からみて反対側に配され、第二メインリンクの第二軸支点からみて反対側に配される第六軸支点(1212)と、このT字状接続コントロールリンクのT字縦方向の部分リンクに配される第七軸支点(1213)と、第七軸支点を一端とし、第一サブリンクの第四軸支点と反対側に配される第八軸支点(1214)と他端として配される第二サブリンク(1215)と、L字状ベースリンクの他の一辺に配される第九軸支点(1216)を支点とし、第一メインリンクの中間点に配される軸支点を他端として配されるサポートリンク(1217)とからなるリンク構造体を有し、前記第一サブリンクを直接的に、又はいずれかのリンクに与えられる駆動力に基づいて間接的に駆動して、第一サブリンクからの押圧力により着座している人の背中側を押すことで起立補助をする。軸配置を変更したことで構造が複雑になるが、長さを調整できるリンクが増え、調整が容易になる。なお、このリンク構造体は、すでに述べたように直線である腰の軌道を出力するチェビシェフリンク機構と、体幹角度を再現する早もどり機構とを構成するものである。

【0024】
「L字状ベースリンク」とは、略直交する少なくとも2辺を有するリンクという意味である。したがって、リンクの折曲する部位が、文字通り「L字」状になるほか、「T字」状や「十字」状である場合も含まれる。同様に「T字状接続コントロールリンク」についても、3つの軸支点(第五軸支点、第六軸支点、第七軸支点)の位置関係を「T字」に例えて表現したものであり、リンク構造体の動作を妨げない限りにおいて、「Y字」や「V字」でもよい。リンク構造体を構成する各リンクについてであるが、材質としては、アルミニウムなどの金属や、カーボンファイバーなどの炭素繊維材料や、強化プラスティックなどを用いることができる。人体による荷重に耐えうるものであればよい。また、リンクの形状は、一般的には角柱や円柱などの柱状を採用することが考えられるが、板状であってもよい。

【0025】
図13は、図12に示した起立補助装置の具体的な寸法の一例である。各軸支点間の距離は、以下のようになる。第一軸支点・第二軸支点間は略150mm、第一軸支点・第三軸支点間は略130mm、第一軸支点・第四軸支点間は略520mm、第四軸支点・第五軸支点間は略211mm、第七軸支点・第八軸支点間は略320mm、第四軸支点・第八軸支点間は略400mmとなる。第九軸支点とサポートリンクの一端に設けられる軸支点との間は略325mmとなる。第五軸支点と第六軸支点と第七軸支点との位置関係は、第五軸支点・第六軸支点間が略180mmであり、第七軸支点は、第五軸支点と第六軸支点とを結ぶ直線上における第五軸支点から略80mm隔てた点から垂直方向に略85mm隔てて位置する。図示したように、リンク長のみを変更した図10の場合のように大型化することはなく、図8に示した起立補助装置とほぼ同じ大きさとなる。最適化を行った結果、角度の変化は、図14のように、理想に近い起立軌道を示すことが可能となった。

【0026】
着座している人の背中側を押すための駆動力の発生源としては、モータやアクチュエータを用いることができる。モータを用いる場合には、第一回転リンクをモータにより回転駆動させることで第一サブリンクからの押圧力により着座している人の背中側を押すことができる。また、アクチュエータを用いる場合には、第一サブリンクを直接的に駆動してもよい。さらに、本リンク構造は1自由度であり、一定の動作に限られるので、いずれかのリンクに駆動力を与えることにより間接的に第一サブリンクを駆動することもできる。

【0027】
図15は、図13に示した起立補助装置における、体幹前傾起立による着座時から起立時への推移を示した概念図である。また、図16は、図13に示した起立補助装置における、体幹直立起立による着座時から起立時への推移を示した概念図である。この図は、起立補助をする際のリンク構造体の動きを示すものであり、具体的な起立補助装置においては、例えば、一対のリンク構造体に梁や桟などを掛けて背中側を押したり、あるいは布や板などの面で背中側を押したりする。すなわち、リンク構造体の動きを直接的又は間接的に着座者に伝えることで起立補助を行う。起立補助装置は、一対のリンク構造体を有するものに限られず、1つリンク構造体であってもよいし複数のリンク構造体を有するものであってもよい。体幹前傾起立の場合、第一サブリンクは、使用者の背中を前傾させるように押し倒し、使用者の背中を前傾状態から直立状態に戻しつつ、使用者の腰を押し上げて、起立させている。一方、体幹直立起立の場合、第一サブリンクは、着座時も起立時も角度変化はほぼない。なお、リンク構造体の動きを着座者に伝える態様としては、着座者の背中側から伝えることの他にも、着座者の上体を、リンク構造体若しくはこれと連動する部材に対して、前のめりにもたれかけることにより起立補助をすることもできる。この場合、リンク構造体の動きに着座者が追従するように、例えば、ハンドルなどの手や腕をかける部材を設けることにより、前傾姿勢をとることが促されるとともに、リンク構造体の動きが着座者を引き上げるために作用する。図17は、この場合のリンク構造体の着座時から起立時への推移を示した概念図である。腰や背中が前に曲がっている高齢者などにとっては、上体を前方に預けることができるため、使用時に安心感を与え得る。

【0028】
起立補助装置の各リンクの寸法は、使用者の体格に応じて定めることが望ましい。その際にリンクと軸とが干渉してしまい、起立補助に支障をきたす場合が生じ得る。具体的には、第二サブリンク(1215)と第六軸支点(1212)とが、起立状態に至る際に干渉する場合が生じ得る。その場合には、第二サブリンクの形状を起立方法に応じて折曲させることにより回避することができる。図18は、体幹前傾起立方法において折曲させた第二サブリンクを用いた場合の着座時から起立時への推移を示したものである。また、図19は、体幹直立起立方法において折曲させた第二サブリンクを用いた場合の着座時から起立時への推移を示したものである。図示するように、起立状態に至っても第二サブリンクと第六軸支点とは干渉することはない。

【0029】
本リンク構造は、T字状接続コントロールリンク(1211)の回転方向に応じて体幹前傾起立方法と体幹直立起立方法の2種類の起立補助が可能となる。しかし、第二軸支点(1203)と第五軸支点(1209)と第六軸支点(1212)とが、一直線上に存在する位置関係となった場合に、いずれの方向にも回転しなくなりリンク構造体が動作しなくなるおそれがある。その場合には、図20及び図21に示すように、起立方法に応じてリンク構造体の初期位置を定めておく。すなわち、体幹前傾起立方法による起立補助の場合には、初期位置として、図20に示すように、第五軸支点(2001)の位置が、第二軸支点(2002)と第六軸支点(2003)とを結ぶ直線に対して、第八軸支点(2004)の位置と反対側に位置するようにする。一方、体幹直立起立方法による起立補助の場合には、初期位置として、図21に示すように、第五軸支点(2101)の位置が、第二軸支点(2102)と第六軸支点(2103)とを結ぶ直線に対して、第八軸支点(2104)の位置と同じ側に位置するようにする。なお、図に示した角度は初期位置を定める際の設定角度の一例である。

【0030】
図22に起立補助装置を車椅子に装着した場合の概念図を示す。リンク構造体のL字状ベースリンク(2201)に前輪(2202)及び後輪(2203)を設けたものである。概念として、L字状ベースリンクに直接車輪を設けた図を示しているが、間接的に車輪を設けてもよいことは言うまでもなく、起立補助装置が椅子の機能を果たしつつ、車輪を設けることにより移動可能であればよい。背もたれ(2204)は、第一サブリンク(2205)の動作と連動するように設けるが、第一サブリンクに対して平行に設ける必要はなく、腰や背中の曲がり具合に応じて設計することもできる。例えば、第一サブリンクに角度調節板(2206)を設け、背もたれの角度調節をするための軸(2207)の位置を変動可能にしておいてもよい。また、使用者の上体を引き上げるとともに、転倒防止など安全のためのベルトやバー(2209、2210、2211)などを備えてもよい。さらに座面(2212)の後方部と背もたれを連動させることにより、着座から起立への姿勢変化を自然に行うことができる。なお、電動式の車椅子のようにモータなどの動力源を有する場合には、その動力源により着座している人の背中側を押すための駆動力を得てもよい。

【0031】
また、起立補助装置を、いわゆるシルバーカーに活用してもよい。シルバーカーとは、高齢者や足腰が弱っている人が、外出して歩行する時に体を支えたり、休息したり、荷物を運ぶために使用する押し車である。車椅子の利用に抵抗がある高齢者にとって、起立補助装置の備わったシルバーカーは、外出の際に役立つものと考えられる。
<実施形態1 効果>

【0032】
本実施形態の起立補助装置により、要介護者が起立する際に、体幹前傾起立および体幹直立起立の両起立方法にも対応することが可能な起立補助装置を提供することが可能となる。また本実施形態の起立補助装置では、腰部補助用と体幹補助用の機構をリンクで連結することにより、一の駆動力で両起立方法に対応することが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>

【0033】
本実施形態は、実施形態1の起立補助装置と歩行補助装置とからなる移動補助システムである。
<実施形態2 構成>

【0034】
本実施形態における移動補助システムは、実施形態1の起立補助装置と、歩行補助装置とからなる。歩行補助装置は、人の足裏または/及び太ももを歩行の動きで補助する補助部と、補助部を人に沿わせるために補助部と人の体とを一体とするため人の腰部ないしは背中部に装着される固定部とからなる。さらに、移動補助システムは、起立補助装置の前記第一サブリンクと歩行補助装置の固定部とを着脱自在に連結する連結機構を起立補助装置と歩行補助装置に備えたものである。本実施形態における起立補助装置は、基本的に実施形態1の起立補助装置と同様であるので説明を省略する。

【0035】
図23は、移動補助システムの一例である。「補助部」は、人の足裏または/及び太ももを歩行の動きで補助する機能を有する。具体的には、例えば、モータなどの動力を、ギア(2301)やベルト(2302)などを介して、足裏支持板(2303)を有するリンク構造体(2304)に伝達させることにより歩行補助を行うものである。リンクには、着座した時に太ももを支持するための着座板(2305)を設ける。この着座板は、着座時の座面としての機能を果たす。

【0036】
「固定部」は、補助部を人に沿わせるために補助部と人の体とを一体とするため人の腰部ないしは背中部に装着される。固定部により補助部は、人と一体化し歩行補助機能を十分に発揮する。固定部は、補助部と結合するとともに、例えば、バー(2306)やベルト(2307、2308)により人の腰部や背中部に装着される。

【0037】
歩行補助装置の固定部と、起立補助装置の第一サブリンク(2309)とは、連結機構により着脱自在に連結される。着脱自在とすることにより、利用者に応じた使い方が可能となる。例えば、起立姿勢を維持することが困難な高齢者や要介護者などが使用する場合には、起立補助装置と歩行補助装置を連結しておくことにより、起立及び着座の際の補助のみならず、起立姿勢維持や転倒防止を図ることが可能となる。また、前述したように起立補助装置をシルバーカーとして活用する場合には、歩行補助装置とシルバーカーとにより安心して歩くことができるとともに、休息の際の着座及び起立も容易になり、外出の際に役立つ。
<実施形態2 効果>

【0038】
本実施形態の起立補助装置により、起立補助に加えて歩行を補助することにより、高齢者や要介護者などが、安心して外出などをすることが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1201 L字状ベースリンク
1202 第一軸支点
1203 第二軸支点
1204 第一回転リンク
1205 第三軸支点
1206 第一メインリンク
1207 第二メインリンク
1208 第四軸支点
1209 第五軸支点
1210 第一サブリンク
1211 T字状接続コントロールリンク
1212 第六軸支点
1213 第七軸支点
1214 第八軸支点
1215 第二サブリンク
1216 第九軸支点
1217 サポートリンク
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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