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明細書 :部分放電パルスの信号処理方法および信号処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5442955号 (P5442955)
公開番号 特開2009-216605 (P2009-216605A)
登録日 平成25年12月27日(2013.12.27)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成21年9月24日(2009.9.24)
発明の名称または考案の名称 部分放電パルスの信号処理方法および信号処理装置
国際特許分類 G01R  31/12        (2006.01)
H02B  13/065       (2006.01)
H02B   3/00        (2006.01)
H01H  33/56        (2006.01)
H01H  33/55        (2006.01)
H01H  33/00        (2006.01)
FI G01R 31/12 A
H02B 13/06 D
H02B 3/00 M
H01H 33/56 H
H01H 33/55 H
H01H 33/00 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 19
出願番号 特願2008-061865 (P2008-061865)
出願日 平成20年3月11日(2008.3.11)
審査請求日 平成23年3月10日(2011.3.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
発明者または考案者 【氏名】松本 聡
【氏名】笠島 和教
個別代理人の代理人 【識別番号】100109553、【弁理士】、【氏名又は名称】工藤 一郎
審査官 【審査官】西島 篤宏
参考文献・文献 特開平10-026648(JP,A)
特開平08-029482(JP,A)
特開昭61-000721(JP,A)
特開2007-047184(JP,A)
特開2002-328147(JP,A)
特開2001-133506(JP,A)
調査した分野 G01R 31/12 - 31/20
H01H 33/00
H02B 3/00
H02B 13/065
特許請求の範囲 【請求項1】
生産設備や電力設備などにおいて利用されている電気機器の部分放電によって生じるランダムな信号成分を含む不規則なパルス列の信号処理方法であって、
測定したパルス信号を受信する受信ステップと、
受信した信号をハール基底による離散ウェーブレット変換する変換ステップと、
変換ステップにて変換された値を所定の閾値と比較する比較ステップと、
比較ステップでの比較結果が所定の閾値以上にあるものを選択する選択ステップと、
選択ステップでの選択結果を時間軸にマッピングするマッピングステップと、
を有する信号処理方法。
【請求項2】
生産設備や電力設備などにおいて利用されている電気機器の部分放電によって生じるランダムな信号成分を含む不規則なパルス列の信号を処理する信号処理装置であって、
測定したパルス信号を受信する受信部と、
受信した信号をハール基底による離散ウェーブレット変換する変換部と、
変換部にて変換された値を所定の閾値と比較する比較部と、
比較部での比較結果が所定の閾値以上にあるものを選択する選択部と、
選択部での選択結果を時間軸にマッピングするマッピング部と、
を有する信号処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器の絶縁診断技術に関する。より詳しくは、部分放電信号検出の信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄鋼、石油などの生産設備や、電力設備などにおいて多数の電気機器が使用されている。これらの電気機器により大量生産などが実現され、豊かな世の中が築かれている。
【0003】
その一方で、これらの電気機器の信頼性向上に対する要求はますます高度なものになっており、事故を未然に防止するなどの目的でさまざまな手段が構築されている。前記手段としては、例えば、電気機器内で発生した部分放電を検出する部分放電測定などが広く利用されている。
【0004】
「部分放電」とは、電気機器内の絶縁体中に空隙などが存在すると、電圧をかけた際にその空隙部分に発生する部分的な放電であり、当該部分放電が繰り返し起こると、絶縁破壊を引き起こすことが知られている。「部分放電測定」は、絶縁破壊が引き起こされる前に、電気機器内で部分放電が発生していることを検出するための有効な手段である。
【0005】
ここで、部分放電を検出する手段としては、例えば、測定対象の電気機器の接地線に高周波CTなどを接続して電流や電圧などのパルス信号(電気信号)を測定する。そして、測定したパルス信号をマッピングした測定波中に含まれる不規則なピークを目視で検出することでなされたりしている。
【0006】
しかしながら、測定したパルス信号の中には部分放電以外の要因による不規則なノイズ信号が多数含まれている。よって、前記手段の場合、測定したパルス信号をマッピングした測定波の中から部分放電に起因するピークを検出するには相当な経験を要し、経験の少ない人間にとっては当該手段で部分放電を検出するのは困難である。
【0007】
そこで、測定対象の電気機器から測定したパルス信号の中から、部分放電に起因するパルス信号を容易に特定可能にする手段が求められている。前記手段としては、特許文献1のようなものが開示されている。特許文献1の発明は、電気機器内で発生する部分放電を監視するための装置であり、部分放電により発生する超音波を測定する超音波マイク、電流パルスを検出する電流検出器などを有する。そして、超音波マイク又は電流検出器のいずれかの出力が予め定められた閾値を超過した場合、超音波マイク又は電流検出器から測定したデジタル信号を保存する。そして、超音波マイクで測定したデジタル信号を周波数解析し、予め保存している発生が予想される外部ノイズ音の周波数成分データと比較することで、前記出力が部分放電に起因するものか、外部ノイズに起因するものかを判断するというものである。
【特許文献1】特開2002-131366号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の発明の場合、超音波マイクなど多数の設備を備える必要がある。また、超音波マイク又は電流検出器のいずれかの出力が予め定められた閾値を超過した際にそれが部分放電によるものか否かを特定する手段として、超音波マイクから測定したデータを利用しているが、かかる手段の場合、周囲の環境に影響され易く、誤った判断をする恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明では、測定対象の電気機器から測定した電流や電圧などの電気信号のパルス信号の中から、容易に部分放電に起因するパルス信号を検出する手段および前記手段を有する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、以下のような発明を提供する。
【0011】
第一発明では、部分放電によって生じるランダムな信号成分を含む不規則なパルス列の信号処理方法であって、測定したパルス信号を受信する受信ステップと、受信した信号をハール基底による離散ウェーブレット変換する変換ステップを有する信号処理方法を提供する。
【0012】
第二発明では、第一発明を基本とし、さらに、変換ステップにて変換された値を所定の閾値と比較する比較ステップと、比較ステップでの比較結果が所定の関係にあるものを選択する選択ステップを有する信号処理方法を提供する。
【0013】
第三発明では、第一発明又は第二発明を基本とし、さらに、選択ステップでの選択結果を時間軸にマッピングするマッピングステップを有する信号処理方法を提供する。
【0014】
第四発明では、部分放電によって生じるランダムな信号成分を含む不規則なパルス列の信号を処理する信号処理装置であって、測定したパルス信号を受信する受信部と、受信した信号をハール基底による離散ウェーブレット変換する変換部を有する信号処理装置を提供する。
【0015】
第五発明では、第四発明を基本とし、さらに、変換部にて変換された値を所定の閾値と比較する比較部と、比較部での比較結果が所定の関係にあるものを選択する選択部をさらに有する信号処理装置を提供する。
【0016】
第六発明では、第五発明を基本とし、さらに、選択部での選択結果を時間軸にマッピングするマッピング部をさらに有する信号処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の信号処理方法および信号処理装置により、測定対象の電気機器から測定した電流や電圧などの電気信号のパルス信号の中から、部分放電に起因するものを容易に見つけることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施しうる。
<本実施形態の概要>
【0019】
本実施形態の信号処理方法および信号処理装置は、測定対象の電気機器から測定した電流や電圧などの電気信号のパルス信号を、所定回数ハール基底による離散ウェーブレット変換し、高周波数成分と低周波数成分に分解する。そして、前記データの中から、閾値以上のピーク値を有するデータのみを取り出し、周波数成分を識別可能にマッピング表示することを特徴とする。
<本実施形態の機能的構成>
【0020】
本実施形態の信号処理装置の機能ブロックの一例を図1に示す。図1に示すように、本実施形態の「信号処理装置」(0100)は、「受信部」(0101)と、「変換部」(0102)を有する。また、「比較部」(0103)と、「選択部」(0104)を有してもよい。さらに、「マッピング部」(0105)を有してもよい。
【0021】
ここで、本装置の機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、コンピュータを利用するものであれば、CPUやRAM、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CD-ROMやDVD-ROMなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部やその外部周辺機器用のI/Oポート、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、情報入力に利用されるユーザインターフェイスなどが挙げられる。
【0022】
またこれらハードウェアやソフトウェアは、RAM上に展開したプログラムをCPUで演算処理したり、メモリやハードディスク上に保持されているデータや、インターフェイスを介して入力されたデータなどを加工、蓄積、出力処理したり、あるいは各ハードウェア構成部の制御を行ったりするために利用される。また、この発明は装置として実現できるのみでなく、方法としても実現可能である。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、および同製品を記憶媒体に固定した記憶媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0023】
以下、本実施形態の「受信部」(0101)と、「変換部」(0102)と、「比較部」(0103)と、「選択部」(0104)と、「マッピング部」(0105)の機能的構成について詳細に説明する。
【0024】
「受信部」(0101)は、測定対象の電気機器から測定したパルス信号を受信するよう構成されている。「測定対象の電気機器」とは、機器内から部分放電が発生していないか検査する対象の電気機器である。本実施形態の受信部は、測定対象の電気機器から測定した電流や電圧などの電気信号のパルス信号を受信する。測定対象の電気機器から電気信号のパルス信号を測定する手段としては部分放電を測定可能なものであれば特段制限されないが、例えば、電気機器の接地線に高周波変流器を接続してアナログ信号を測定してもよい。そして、測定したアナログ信号を信号変換器でパルス信号に変換することでパルス信号を測定してもよい。受信部は、前記パルス信号をリアルタイムで信号変換器から受信してもよいし、または、信号変換器で変換したパルス信号を一時保存したおいたPCなどから一定数のデータをまとめて受信してもよい。図2に、受信部が受信したパルス信号の波形の一例を示す。図中、縦軸はピーク値、横軸はサンプリングしたデータに付した番号を示している。なお、前記データの番号はサンプリングした順に付してある。また、サンプリングする時間は0.00001秒(図のデータの場合)で一定である。すなわち、横軸は時間軸とみなすことも可能である。
【0025】
「変換部」(0102)は、受信した信号をハール基底による離散ウェーブレット変換するよう構成されている。離散ウェーブレット変換の式は、以下のようになる。
【数1】
JP0005442955B2_000002t.gif

【0026】
離散ウェーブレット変換とは、測定したデータを低周波成分と高周波成分に分解する処理である。前記処理は、ハールウェーブレットを利用して行うことができる。ハールウェーブレットのスケーリング関数、および、マザーウェーブレット関数はそれぞれ、以下の「数2」、「数3」のようになる。また、それらのグラフは図3の通りである。
【数2】
JP0005442955B2_000003t.gif

【数3】
JP0005442955B2_000004t.gif

【0027】
ここで、測定したパルス信号のデータが8個(8ビット)の場合、測定した信号のデータを「X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8」とすると、ハール基底による離散ウェーブレット変換の式は、「数4」のようになる。
【数4】
JP0005442955B2_000005t.gif

【0028】
「(Xn+Xn+1)/2」は、平均値情報であり、「低周波数成分」である。一方、(「Xn-Xn+1)/2」は、変化率情報であり、「高周波数成分」である。すなわち、「数4」の式により、「X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8」のデータを、「X1´、X2´、X3´、X4´(低周波数成分L)」と「X5´、X6´、X7´、X8´(高周波数成分H)」に分解している。ここで、サンプリング周波数が、例えば100kHzの場合は、低周波数成分Lの周波数帯は「0~50kHz」、高周波数成分Hの周波数帯は「50~100kHz」である。
【0029】
本実施形態の変換部は、「数4」で示す式を利用して、受信した信号を所定回数ハール基底による離散ウェーブレット変換し、所定の周波数帯ごとの所定数のグループに分解するよう構成されている。具体的には、測定したパルス信号のデータが8個(8ビット)の場合、測定した信号のデータを「X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7、X8」とすると、一回ハール基底による離散ウェーブレット変換した結果である「X1´、X2´、X3´、X4´(低周波数成分L)」、「X5´、X6´、X7´、X8´(高周波数成分H)」をさらに、ハール基底による離散ウェーブレット変換する。その結果、「X1´、X2´、X3´、X4´(低周波数成分L)」を(低周波数成分LL)と(高周波数成分LH)に分解する。また、「X5´、X6´、X7´、X8´(高周波数成分H)」を(低周波数成分HL)と(高周波数成分HH)に分解する。そして、前記データをさらにハール基底による離散ウェーブレット変換し、LLL、LLH、LHL、LHH、HLL、HLH、HHL、HHH、の8個のレベルの周波数帯に分解する。当該変換の流れを図示すると、図4のようになる。
【0030】
ここで、サンプリング周波数が、例えば100kHzの場合は、LLLの周波数帯は「0~12.5kHz」、LLHの周波数帯は「12.5~25kHz」、LHLの周波数帯は「25~37.5kHz」、LHHの周波数帯は「37.5~50kHz」、HLLの周波数帯は「50~62.5kHz」、HLHの周波数帯は「62.5~75kHz」、HHLの周波数帯は「75~87.5kHz」、HHHの周波数帯は「87.5~100kHz」である。図5に、図2の測定波を3回ハール基底による離散ウェーブレット変換した結果を利用して、LLH、LHL、LHH、HLL、HLH、HHL、HHH、の7個のレベルの周波数帯のデータをマッピングしたグラフを示す(なお、LLLの周波数帯のデータについては、他のデータに比べピーク値が大きく他のデータが埋もれてしまうので、ここではマッピング表示していない。)。図中、縦軸はピーク値、横軸はデータに付した番号を示している。なお、前記データの番号は各周波数帯(LLH、LHL、LHH、HLL、HLH、HHL、HHH)のデータそれぞれに対して、サンプリングした順に付してある。すなわち、LLH、LHL、LHH、HLL、HLH、HHL、HHHのすべての周波数帯のデータに対して1から番号を付してある。よって、図5は、LLH、LHL、LHH、HLL、HLH、HHL、HHHのデータが重なった状態となっている。
【0031】
なお、前記は、測定したパルス信号のデータが8個(8ビット)の場合を例にとり、3回ハール基底による離散ウェーブレット変換して8個のレベルの周波数帯に分解する例を示したが、ウェーブレット変換する回数は、測定したパルス信号のデータの数により調整することができる。例えば、測定したパルス信号のデータが16個(16ビット)の場合は、4回ハール基底による離散ウェーブレット変換して16個のレベルの周波数帯に分解してもよい。
【0032】
「比較部」(0103)は、変換部にて変換された値を所定の閾値と比較するよう構成されている。「変換部にて変換された値」とは、所定回数の離散ウェーブレット変換により、所定の周波数帯に分解されたデータのピーク値である。比較部では、前記ピーク値と所定の閾値を比較する。具体的には、ピーク値の絶対値と所定の閾値の大小を比較する。ここで、「所定の閾値」は任意の値であり、所定回数の離散ウェーブレット変換後のデータの数を、ピーク値の大きさにより約1割程度に絞り込むように定められる。閾値を定める手段としては、例えば、所定回数離散ウェーブレット変換した後のすべてのデータのピーク値を基に、演算式により算出してもよい。参考までに、測定波を3回離散ウェーブレット変換した結果を示すデータが図5のグラフのように表せる場合、所定の閾値は、「0.075」などと定めてもよい。なお、比較部では、LLLの周波数帯のデータの値は所定の閾値と比較しないように構成してもよい。LLLのデータは最も低い周波数帯のデータであり、部分放電信号は含まれていないとみなすことができるので、処理対象から取り除くことができる。
【0033】
「選択部」(0104)は、比較部での比較結果が所定の関係にあるものを選択するよう構成されている。具体的には、比較結果が所定の閾値より大きいものを選択するように構成してもよい。又は、比較結果が所定の閾値以上のものを選択するように構成してもよい。当該選択部での処理により、所定回数の離散ウェーブレット変換後のデータの中から、所定の閾値以上のピーク値を有するデータのみを選択することができる。なお、選択部は、LLLの周波数帯のデータは選択しないように構成されている。これは、LLLは最も低い周波数帯のデータであり、部分放電信号は含まれていないとみなすことができるので、処理対象から取り除くことができるからである。
【0034】
「マッピング部」(0105)は、選択部での選択結果を時間軸にマッピングするよう構成されている。図6に、選択部での選択結果を時間軸にマッピングした一例を示す。図6は、図5に示すグラフ(「図2の測定波を3回離散ウェーブレット変換した結果を利用して、LLH、LHL、LHH、HLL、HLH、HHL、HHH、の7個のレベルの周波数帯のデータをマッピングしたグラフ」)の中から、所定の閾値以上のデータのみを選択してマッピングしたものである。図中の、縦軸と横軸は図5と同じである。図は、選択部で選択されたそれぞれのデータがいずれのレベルの周波数帯のものかを識別可能にマッピングしている。なお、それぞれのデータがいずれのレベルの周波数帯のものかを識別可能にするために、色分けしてマッピングしてもよい。このようにマッピングすることで、電気機器内で発生した強いピークを有するパルス信号の周波数帯を容易に認識することができる。また、その信号が発生した時間帯も容易に認識することができる。なお、前記時間帯情報を得るためには、簡易な演算により算出することができる。具体的には、図6のマッピングデータは横軸にデータの番号を示しているが、データのサンプリング時間(例:図のデータの場合、「0.00001秒」)を基に時間帯情報を演算することができる。なお、図6のデータは、サンプリングしたデータを所定の周波数帯に分解し、各周波数帯のデータに対して1から番号を付して、重ねて表示したものである。すなわち、離散ウェーブレット変換等の処理を行う前のデータを表示している図2のグラフに比べて、横軸が圧縮されている。よって、データの番号を利用して時間帯情報を算出する際には、前記圧縮分を元に戻すため、データの番号に所定の数をかけ、その結果を利用して時間帯情報を演算する必要がある。具体的には、図6の場合、サンプリングしたデータを8個のレベルの周波数帯に分解し、それらを重ねて表示している。すなわち図6の横軸は、図2に比べて8分の1に圧縮されている。よって、約8倍することで希望している時間帯情報を算出することができる。
【0035】
その他、マッピング部は、図7に示すような態様で、選択部での選択結果を時間軸にマッピングしてもよい。さらに、図6のマッピング手法と組み合わせて、図中のピークがいずれのレベルの周波数帯のものかを識別可能に表示してもよい。図7は、選択部での選択結果にLLLの周波数帯のデータを(1/m)倍したものを加えて、時間軸にマッピングしたものである。図中、縦軸はピーク値、横軸はデータの番号を示している。ここで、LLLの周波数帯のデータを(1/m)倍するのは、選択部での選択結果のデータがLLLの周波数帯のデータの中に埋もれてしまわないようにするためである。なお、mの値は任意の値であり、マッピングするデータのピーク値などを基に演算処理により算出することができる。なお、LLLの周波数帯のデータをマッピングした波形は、測定したパルス信号の波形(図2)を圧縮した波形と近似している。よって、図7のマッピングデータを利用することにより、所定の閾値以上のピーク値を有する信号が、測定したパルス信号の波形(図2)の中のいずれの位置に表れているかを容易に識別することができる。
<本実施形態のハードウェア構成>
【0036】
図8は、上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を表す図である。
【0037】
以下に、図8のハードウェア図を用いて、本実施形態を実現する手段の一例を説明する。図に示すように、本信号処理装置は、「受信部」、「変換部」、「比較部」、「選択部」、「マッピング部」などを構成する「CPU」(0801)、「主記憶装置」(0802)、「プログラム記憶装置」(0803)、「2次記憶装置」(0804)、「ユーザI/F」(0805)、「外部機器I/F」(0806)、「出力I/F」(0807)、「バス」(0808)などを備えている。
【0038】
主記憶装置(0802)は、プログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置である。主記憶装置(0802)はプログラム記憶装置(0803)に記憶されているプログラムを実行するために必要なスタックやヒープ等のワーク領域を提供する。また主記憶装置(0802)は、パルス信号受信プログラムに従い受信したパルス信号や、離散ウェーブレット変換プログラムに従い演算した結果のウェーブレット変換データや、抽出プログラムに従い比較し、選択した選択データや、マッピングプログラムに従いグラフデータにマッピングされ、出力インターフェース(0807)より出力されるデータであるマッピングデータなどを保持したりする。
【0039】
2次記憶装置(0804)はプログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置であり、信号処理装置の電源が切れても、記憶しているデータが消去されない。2次記憶装置は、選択データをマッピングするためのグラフデータなどを保持する。
【0040】
ユーザI/F(0805)を介して利用者などが入力したパルス信号を受信する指示信号を受け取ると、CPU(0801)は、プログラム記憶装置(0803)に保存しているパルス信号受信プログラムを取り出し、主記憶措置(0802)のワーク領域に展開して、プログラムを実行する。
【0041】
まず、パルス信号受信プログラムの受信命令に従い、外部機器I/F(0806)を制御してパルス信号を受信し、主記憶装置(0802)のデータ領域に格納していく。この時、外部機器I/F(0802)には、測定対象の電気機器から測定したアナログ信号をリアルタイムでパルス信号に変換している変換器に接続されていてもよいし、または、測定対象の電気機器から測定したアナログ信号をパルス信号に変換したデータを保存しているPCなどに接続されていてもよい。
【0042】
その後、ユーザI/F(0805)を介して利用者などが入力したパルス信号を処理する指示信号を受け取ると、CPU(0801)は、プログラム記憶装置(0803)に保存している離散ウェーブレット変換プログラムを取り出し、主記憶措置(0802)のワーク領域に展開して、プログラムを実行する。
【0043】
まず、主記憶装置(0802)のデータ領域に格納している、受信したパルス信号を取り出すと、プログラムに従い所定回数ウェーブレット変換する。そして、その結果をウェーブレット変換データとして主記憶装置(0802)のデータ領域に格納する。その後、CPU(0801)は、プログラム記憶装置(0803)に保存している抽出プログラムを取り出し、主記憶措置(0802)のワーク領域に展開して、プログラムを実行する。
【0044】
まず、抽出プログラムの比較命令に従い閾値データを取り出し、主記憶装置(0802)のデータ領域に格納しているウェーブレット変換データのピーク値と大小比較処理する。そして、選択命令に従い前記大小比較の結果を示す比較結果に従って、所定の関係のウェーブレット変換データを選択し、選択データとして主記憶措置(0802)のワーク領域に格納する。その後、CPU(0801)は、プログラム記憶装置(0803)に保存しているマッピングプログラムを取り出し、主記憶措置(0802)のワーク領域に展開して、プログラムを実行する。
【0045】
まず、マッピングプログラムのマッピング命令に従い、2次記憶装置(0804)よりグラフデータを取り出すと、そこに前記選択データをマッピングする。そして、マッピングしたデータを主記憶措置(0802)のワーク領域に格納する。その後、表示命令に従い、出力I/F(0807)を制御し、前記マッピングデータを出力する。
<本実施形態の処理の流れ>
【0046】
本実施形態の処理の流れの一例を図9のフローチャートに示す。
【0047】
まず、測定対象の電気機器から測定したパルス信号を受信する(S0901:受信ステップ)。そして、受信した信号をハール基底による離散ウェーブレット変換する(S0902:変換ステップ)。
【0048】
その後、変換ステップにて変換された値を所定の閾値と比較する(S0903:比較ステップ)。そして、比較ステップでの比較結果が所定の関係にあるものを選択する(S0904:選択ステップ)。
【0049】
その後、選択ステップでの選択結果を時間軸にマッピングする(S0905:マッピングステップ)。
<発明の効果>
【0050】
本実施形態の信号処理方法および信号処理装置により、測定対象の電気機器から測定した電流や電圧などの電気信号のパルス信号の中から、部分放電に起因するものを容易に見つけることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の信号処理装置の機能ブロック図
【図2】測定したパルス信号の一例
【図3】ハールウェーブレットのスケーリング関数およびマザーウェーブレット関数のグラフ
【図4】所定回数離散ウェーブレット変換する処理の流れ
【図5】所定回数離散ウェーブレット変換したデータをマッピングしたグラフ
【図6】マッピング部でデータをマッピングしたグラフの例1
【図7】マッピング部でデータをマッピングしたグラフの例2
【図8】本発明の信号処理装置のハードウェア構成の一例を示した概念図
【図9】本発明の信号処理方法の処理の流れを示すフローチャート
【符号の説明】
【0052】
0101 受信部
0102 変換部
0103 比較部
0104 選択部
0105 マッピング部
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8