TOP > 国内特許検索 > チロシナーゼ活性阻害剤の製造方法 > 明細書

明細書 :チロシナーゼ活性阻害剤の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5463075号 (P5463075)
公開番号 特開2010-273598 (P2010-273598A)
登録日 平成26年1月24日(2014.1.24)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成22年12月9日(2010.12.9)
発明の名称または考案の名称 チロシナーゼ活性阻害剤の製造方法
国際特許分類 C12P  19/14        (2006.01)
C12N   9/99        (2006.01)
A61K   8/97        (2006.01)
A61K   8/99        (2006.01)
A61Q  19/02        (2006.01)
A23L   1/272       (2006.01)
FI C12P 19/14 A
C12N 9/99
A61K 8/97
A61K 8/99
A61Q 19/02
A23L 1/272
請求項の数または発明の数 7
全頁数 14
出願番号 特願2009-128842 (P2009-128842)
出願日 平成21年5月28日(2009.5.28)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 1.平成21年2月23日 学校法人金沢工業大学発行の「平成20年度 工学設計III公開発表審査会 予稿集」第30~31ページに発表
特許法第30条第1項適用 2.平成21年2月27日 学校法人金沢工業大学主催の「平成20年度 工学設計III公開発表審査会」において発表
審査請求日 平成24年3月28日(2012.3.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】593165487
【氏名又は名称】学校法人金沢工業大学
発明者または考案者 【氏名】尾関 健二
個別代理人の代理人 【識別番号】100081422、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 光雄
【識別番号】100084146、【弁理士】、【氏名又は名称】山崎 宏
【識別番号】100122301、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 憲史
【識別番号】100156100、【弁理士】、【氏名又は名称】西野 満
【識別番号】100156155、【弁理士】、【氏名又は名称】水原 正弘
審査官 【審査官】荒木 英則
参考文献・文献 特開2002-255784(JP,A)
特開2000-264834(JP,A)
特開2008-024618(JP,A)
特開平08-231343(JP,A)
調査した分野 C12P 19/00-19/14
C12N 9/00- 9/99
A23L 1/00- 1/272
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-19/02
特許請求の範囲 【請求項1】
ヘミセルロース含有材料をヘミセルラーゼ、ペクチナーゼおよびキシラナーゼから選択
される酵素または麹菌を用いて処理することを特徴とする、チロシナーゼ活性阻害剤の製
造方法。
【請求項2】
ヘミセルロース含有材料が小麦フスマまたは米ヌカである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヘミセルロース含有材料が小麦フスマであり、酵素がキシラナーゼである、請求項2記
載の方法。
【請求項4】
ヘミセルロース含有材料が米ヌカであり、酵素がヘミセルラーゼおよびペクチナーゼか
ら選択される酵素である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
麹菌がβ-グルコシダーゼまたはキシラナーゼ高生産麹菌である、請求項1または2記
載の方法。
【請求項6】
ヘミセルロース含有材料を酵素または麹菌を用いて処理する前に加熱処理するものであ
る、請求項1~5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
加熱処理がマイクロ波を用いて行われる、請求項6記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミセルロース含有材料を酵素または麹菌を用いて処理することを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤の製造方法、該方法により得ることができるチロシナーゼ活性阻害剤、それを含むメラニン色素生成抑制剤、美白用化粧料および食品の褐変防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
チロシナーゼは、アミノ酸であるチロシンの酸化酵素である。チロシンは、チロシナーゼにより、チロシン→ドーパ(L-DOPA)→ドーパキノンへと酸化される。ここで生成したドーパキノンは、化学的に反応性が高く、何段階かの自動酸化過程で、赤色色素であるドーパクロムを経て、黒褐色のポリマーであるメラニン色素となる。メラニンはシミ、ソバカスおよびアザの原因物質である沈着色素である。このため、チロシナーゼ反応を特異的に阻害することができれば、シミやソバカスの原因である、異常なメラニン産生を阻止することが可能と考えられる(非特許文献1)。また、チロシナーゼは果実や野菜などの食品の褐変現象の原因の1つでもある。したがって、チロシナーゼ反応を抑制することにより食品の褐変を抑制することが可能と考えられる。
【0003】
一方、穀物などの食品を加工・製造した際、副産物として排出される、米ヌカ、小麦フスマは食物繊維質などの豊富な栄養成分を多く含んでいる。しかし、家畜等への飼料や土壌の改良剤などへの使用のみに留まっており、現状として十分な有効活用がなされていない(非特許文献2)。米ヌカ、小麦フスマの食物繊維は、主に植物細胞壁の構成成分であるセルロース、ヘミセルロース、リグニンの3つの成分から構成されている。なかでも、ヘミセルロースは、米ヌカ、小麦フスマ中の食物繊維の主要成分であり、セルロース以外の糖を総称する。これらの糖は多様な構成をしており、結合様式も複雑になっている。細胞壁の主要成分であるセルロースと水素結合、リグニンと共有結合などを形成しており、細胞壁を補強する働きをしている。骨格となる主鎖の糖に側鎖の糖などが結合した構造をしており、それを分解する酵素のヘミセルラーゼは種類が非常に多い。これまでに、ヘミセルラーゼにより分解されて生じたアラビノースとキシロースが血糖値を抑制する効果や抗酸化能を有することは知られていたが、チロシナーゼ活性の阻害に関与することは知られていない。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】青森県工業総合研究センター研究成果発表会要旨集:おから有用利用への取り組み,3,(2005)
【非特許文献2】尾関健二,抜刷:発酵・醸造食品の最新技術と機能性,シーエムシー出版刊,4,248,(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の解決課題は、食品廃棄物とされ、使用が限られていた米ヌカ、小麦フスマなどのヘミセルロース含有材料を利用して、チロシナーゼ活性を阻害する方法ならびにメラニン生成を抑制する薬剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。そして、驚くべきことに、ヘミセルロースを多く含む米ヌカ、小麦フスマなどの原料を、ヘミセルロース分解活性を有する酵素や麹菌を用いて処理した処理物がチロシナーゼ活性を阻害することを見出し、チロシナーゼ活性の阻害方法およびチロシナーゼ活性阻害剤を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)ヘミセルロース含有材料を酵素または麹菌を用いて処理することを特徴とする、チロシナーゼ活性阻害剤の製造方法、
(2)ヘミセルロース含有材料が小麦フスマまたは米ヌカである、(1)記載の方法、
(3)ヘミセルロース含有材料が小麦フスマであり、酵素がスミチームARS、マセロチームAおよびOPTIMASE CX 72Lからなる群より選択されるものである、(2)記載の方法、
(4)ヘミセルロース含有材料が米ヌカであり、酵素がペクチナーゼG「アマノ」、ヘミセルラーゼ「アマノ」90およびマセロチームAからなる群より選択されるものである、(2)記載の方法、
(5)麹菌がβ-グルコシダーゼまたはキシラナーゼ高生産麹菌である、(1)または(2)記載の方法、
(6)ヘミセルロース含有材料を酵素または麹菌を用いて処理する前に加熱処理するものである、(1)~(5)のいずれか1つ記載の方法、
(7)加熱処理がマイクロ波を用いて行われる、(6)記載の方法、
(8)(1)~(7)のいずれか1つ記載の方法により得ることができるチロシナーゼ活性阻害剤、
(9)(8)記載のチロシナーゼ活性阻害剤を含有するメラニン色素生成抑制剤、
(10)(8)記載のチロシナーゼ活性阻害剤を含有する美白用化粧料、
(11)(8)記載のチロシナーゼ活性阻害剤を含有する食品の褐変防止剤、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効果的なチロシナーゼ活性抑制剤の製造方法ならびにそれにより得ることができるチロシナーゼ活性阻害剤が提供される。本発明の阻害剤を用いてメラニンの生成を抑制できるので、例えば、肌のシミ、ソバカスおよびアザ、歯茎・歯肉のメラニン色素沈着、食品の褐変などを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、米ヌカ(マイクロ波未処理)を酵素剤または麹菌抽出液で処理した処理物におけるチロシナーゼ活性阻害測定を示す。縦軸は、チロシナーゼ活性の阻害率(%)を表す。横軸は、米ヌカを処理した酵素剤および麹菌抽出液の種類を表す。表中、「β-glu」はβ-グルコシダーゼ高生産麹菌抽出液、「キシラ」はキシラナーゼ高生産麹菌抽出液、「ペクチG」はペクチナーゼG「アマノ」、「ヘミセル」はヘミセルラーゼ「アマノ」90、「スミチPX」はスミチームPX、「スミチARS」はスミチームARS、「スミチACH-L」はスミチームACH-L、「72L」はOPTIMASE(登録商標)CX 72L、「マセロA」はマセロチームA、「ペクチSS」はペクチナーゼSSを表す(以下、略記は同じものを意味する)。
【図2】図2は、米ヌカ(マイクロ波処理済)を酵素剤または麹菌抽出液で処理した処理物におけるチロシナーゼ活性阻害測定を示す。縦軸は、チロシナーゼ活性の阻害率(%)を表す。横軸は、米ヌカを処理した酵素剤および麹菌抽出液の種類を表す。
【図3】図3は、小麦フスマ(マイクロ波未処理)を酵素剤または麹菌抽出液で処理した処理物におけるチロシナーゼ活性阻害測定を示す。縦軸は、チロシナーゼ活性の阻害率(%)を表す。横軸は、小麦フスマを処理した酵素剤および麹菌抽出液の種類を表す。
【図4】図4は、小麦フスマ(マイクロ波処理済)を酵素剤または麹菌抽出液で処理した処理物におけるチロシナーゼ活性阻害測定を示す。縦軸は、チロシナーゼ活性の阻害率(%)を表す。横軸は、小麦フスマを処理した酵素剤および麹菌抽出液の種類を表す。
【図5】図5は、米ヌカ(マイクロ波未処理)を酵素剤で処理した処理物における抗酸化能測定を示す。縦軸は消去率(%)を表し、横軸は米ヌカを処理した酵素剤の種類を表す。左端の「米ヌカ」は、酵素剤で処理していないコントロールを表す。
【図6】図6は、小麦フスマ(マイクロ波未処理)を酵素剤で処理した処理物における抗酸化能測定を示す。縦軸は消去率(%)を表し、横軸は小麦フスマを処理した酵素剤の種類を表す。左端の「小麦フスマ」は、酵素剤で処理していないコントロールを表す。
【図7】図7は、米ヌカ(マイクロ波処理済)を酵素剤の組み合わせで処理した処理物におけるSOD活性測定を示す。縦軸は阻害率を表し、横軸は酵素剤の組み合わせを表す。また、縦軸中、(未処理)は米ヌカをマイクロ波で前処理していないことを示し、(処理済)は米ヌカをマイクロ波で前処理したことを示す。
【図8】図8は、小麦フスマ(マイクロ波処理済)を酵素剤の組み合わせで処理した処理物におけるSOD活性測定を示す。縦軸は阻害率を表し、横軸は酵素剤の組み合わせを表す。また、縦軸中、(未処理)は小麦フスマをマイクロ波で前処理していないことを示し、(処理済)は小麦フスマをマイクロ波で前処理したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、1の態様において、ヘミセルロース含有材料を酵素または麹菌を用いて処理することを特徴とする、チロシナーゼ活性阻害剤の製造方法を提供するものである。本発明の方法で用いられるヘミセルロース含有材料は、ヘミセルロースを含むものであれば、いかなる植物またはその部分であってもよい。本発明に使用するヘミセルロース含有材料はヘミセルロース含有量が多いほど好ましいことはいうまでもない。好ましいヘミセルロース含有材料としては、例えば、食品廃棄物としては、小麦フスマ、米ヌカ、大豆オカラ、バガス、エンバクフスマ、コーンフスマ、ビートファイバーなどであり、食品としては、穀物の外皮、グリーンピース、いんげんなどの豆類、きくらげ、ひじきなどの海藻類およびその加工品などが挙がられ、なかでも、小麦フスマおよび米ヌカが特に好ましい。ここで、小麦フスマとは、一般に小麦粒の皮と胚芽のことをいい、ヘミセルロース、セルロース、リグニンなどを多く含む。本発明の方法において、ヘミセルロース含有材料は固形であってもよく、可溶性のものであってもよい。一般的には、本発明の方法において、酵素や生物あるいはその抽出物を含む溶液中でヘミセルロース含有材料を処理することができるが、後述するように、固形の材料に直接生物を作用させてもよい。本発明の方法は、特に、これまで廃棄されてきた食品廃棄物を新規な用途として有効に利用することができるという利点を有する。

【0011】
本発明の方法は、酵素または麹菌を用いて処理する工程を含む。本発明の処理に用いられる酵素は、ヘミセルロース分解活性を有するものであればいかなる種類のものであってもよく、典型的にはヘミセルラーゼである。本明細書において、ヘミセルラーゼとは、ヘミセルロースの構成糖間の主鎖や側鎖を切断する酵素をいう。例えば、市販されているヘミセルラーゼとして、ペクチナーゼG「アマノ」(アマノエンザイム(株))、ヘミセルラーゼ「アマノ」90(アマノエンザイム(株))、スミチームPX(新日本化学工業(株))、スミチームARS(新日本化学工業(株))、スミチームACH-L(新日本化学工業(株))、OPTIMASE(登録商標)CX 72L(GENENCOR(株))、マセロチームA(ヤクルト薬品工業(株))およびペクチナーゼSS(ヤクルト薬品工業(株))などが挙げられる。ヘミセルラーゼを生物から抽出してもよく、ヘミセルラーゼ源としての生物は公知である。これらの生物の中からヘミセルラーゼ活性の高いものをスクリーニングして用いることができる。かかるスクリーニング方法は当業者に公知である。ヘミセルラーゼ活性の高い生物としては、木材腐朽菌や麹菌などが挙げられ、特に麹菌が好ましい。さらに、本発明の方法において、ヘミセルラーゼを1種のみならず2種以上併用してもよく、ヘミセルラーゼ以外の酵素と併用してもよい。また、本発明の方法において、1種のみならず2種以上の生物を併用してもよく、これらの生物をヘミセルラーゼと併用してもよい。上記酵素剤の好ましい組み合わせは、ヘミセルラーゼ「アマノ」90とマセロチームA、OPTIMASE CX 72LとスミチームPXであるが、これらだけに限定されない。これらの酵素の組み合わせにより、ヘミセルロースの主鎖だけではなく側鎖も切断することができる等、より効果的にチロシナーゼ活性阻害剤を得ることが可能となる。

【0012】
本発明の方法において酵素を用いる場合、ヘミセルラーゼ含有材料と酵素の配合割合は当業者が容易に決定することができる。本発明の方法において生物をヘミセルラーゼ源として用いる場合、かかる生物の抽出液をヘミセルラーゼ含有材料に作用させてもよく、あるいはかかる生物をヘミセルラーゼ含有材料にて直接増殖させてもよい。例えば、加熱処理した小麦フスマに麹菌を増殖させ、その抽出液をチロシナーゼ活性阻害剤として用いてもよい。かかる生物の抽出液を本発明の方法に用いる場合も、ヘミセルラーゼ含有材料と抽出液の配合比率は当業者が容易に決定することができる。これらの酵素あるいは生物または抽出液とヘミセルラーゼ含有材料の割合は、用いられる原料の種類や形態、酵素や麹菌の種類、処理条件などの因子により変動しうる。また、本発明の方法における処理条件、例えば、至適pH、至適温度、処理時間、CO濃度などは、一般に、pH3.0~9.5や40℃~70℃の温度などを例示することができるが、当業者が適宜状況に応じて決定することができる。

【0013】
さらに、本発明の方法は、ヘミセルロース含有材料が前処理される工程を含んでいてもよい。ヘミセルロースは、植物中の細胞壁を補強するための構造をしており、多様な構成糖が主鎖や側鎖などで強固でかつ複雑な結合を形成している。したがって、前処理として、かかるヘミセルロースの結合を弛緩や切断することができれば、処理の効率を高めることができる。本発明に用いることができる前処理として、例えば、電子レンジなどのマイクロ波やオートクレーブを用いた加熱処理、酸性、アルカリ性溶液などによる酸アルカリ処理、物理的な破砕処理や粉砕処理、乾燥処理、圧力処理などが有効であるが、これらだけに限定されない。電子レンジを用いるマイクロ波による前処理は、本発明においてより利便的に行うことができる。本発明の方法におけるかかる前処理は、任意選択的なものであるが、チロシナーゼ活性の阻害効率を高めるための重要な因子である。

【0014】
本発明は、さらなる態様において、上記製造方法により得ることができるチロシナーゼ活性阻害剤(以下、「阻害剤」と略称することがある)を提供する。本発明の製造方法
で得られる阻害剤には、主に、ヘミセルロースから分解された分子が包含される。例えば
、グルクロノキシラン、キシラン、キシログルカン、アラビナン、グルコマンナン、マン
ナン、ガラクタンなどの多糖類分子を列挙することができる。さらに本発明の工程で得ら
れる阻害剤には、上記分子が分解されて生じるキシロース、アラビノース、グルコース、
フルクトース、イノシトールなどの単糖類やそれらが結合したオリゴ糖などが含有される
。本発明の方法で得られる阻害剤は、キシロースまたはアラビノースを多く含んでいるこ
とが好ましい。本発明の方法で得られる阻害剤は、ヘミセルロースが分解されて生じる成
分以外の成分、例えば、各種ペプチド、グルテリン、グロブリン、アルブミンなどのタン
パク質、セルロースなどの糖類、リグニンなどを含んでもよく、任意にその他の成分を添
加してもよい。本発明の方法は、上記酵素や麹菌またはこれらの組み合わせにより効果的
にヘミセルロース含有材料を分解し、得られた阻害剤におけるチロシナーゼ活性の阻害効
果を利用することを最大の技術的特徴とする。


【0015】
本発明の方法は、必要に応じて、上記阻害剤を精製する工程を含むことができる。精製工程は、当業者間で一般的な手法で行われてよく、例えば、順相または逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過などの方法を用いて行うことができる。

【0016】
本発明の阻害剤は、それ自体、あるいは担体や賦形剤と組み合わせて用いることができる。さらに、本発明の阻害剤を、他の薬剤、例えば、酸化防止剤、他の酵素阻害剤、例えば、公知のチロシナーゼ活性阻害剤などと併用することもできる。

【0017】
チロシナーゼは、チロシンを酸化し、ドーパを生成し、さらにドーパを酸化してドーパキノンを誘導することによりメラニン合成を促進することが知られている。本発明の方法で得られる阻害剤は、チロシナーゼの活性を阻害することによりかかるチロシンおよびドーパの酸化を阻害し、これによりメラニンの生成を抑制することができる。したがって、本発明は、さらなる態様において、上記阻害剤を含有するメラニン色素生成抑制剤を提供する。本発明のメラニン色素生成抑制剤を用いて、例えば、メラニンの過剰な合成を原因とする、皮膚のシミ、ソバカスおよびアザ、歯茎・歯肉のメラニン色素沈着などを予防、抑制、改善あるいは治療することができる。本発明のメラニン色素生成抑制剤は、例えば、ローション、乳化剤、クリーム、軟膏、栄養補助食品、ドリンク、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒などの形態として、直接患部に適用でき、あるいは経口的に摂取することができる。本発明のメラニン色素生成抑制剤は、医薬組成物であってもよく、投与経路は医師が容易に選択することができる。医薬組成物として用いる場合には、適当な賦形剤または担体を用いることができ、これらは当業者に公知のものである。医薬組成物としての典型的な投与経路は経皮投与あるいは経口投与などであるが、これらの投与経路に限定されず、疾患の種類、対象の状態、標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。

【0018】
本発明は、別の態様において、上記阻害剤を含有する美白用化粧料を提供する。本発明の美白用化粧料は、皮膚に直接適用できる形態、例えば、ローション、クリーム、液剤、乳液、パスタなどの形態であってもよく、経口的に摂取できる形態、例えば、ドリンク、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒などの形態であってもよい。本発明の美白用化粧料は、一般的な方法にて調合することができ、賦形剤、香料、油脂類、界面活性剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子、増粘剤、顔料、紫外線防御剤、保湿剤、pH調整剤、洗浄剤、乾燥剤、または乳化剤などの添加剤と一緒に、化粧水、洗顔料、美白剤、UVケア用品、クリーム、乳液、ローション、パック剤、皮膚洗浄料、またはゲル剤などの形態とされてもよいが、これらだけに限定されない。

【0019】
本発明は、さらなる別の態様において、上記阻害剤を含有する食品の褐変防止剤を提供する。本発明の褐変防止剤を食品または食品素材に、噴霧、浸漬、塗布などの公知の手法にて適用することができる。

【0020】
本発明の上記メラニン色素生成抑制剤、美白用化粧料あるいは食品の褐変防止剤中の本発明の阻害剤の配合量は、目的、用途、対象などによって適宜変更することができる。

【0021】
さらに、本発明の阻害剤、あるいはこれを含有するメラニン色素生成抑制剤、美白用化粧料または食品の褐変防止剤を、他の薬剤、例えば、酸化防止剤、他の酵素阻害剤、例えば、他のチロシナーゼ活性阻害剤などと併用してもよい。

【0022】
以下に実施例を示して本発明を具体的かつ詳細に説明するが、実施例は本発明を限定するものと解してはならない。
【実施例1】
【0023】
A.マイクロ波による小麦フスマおよび米ヌカの前処理
本発明では、米ヌカおよび小麦フスマをマイクロ波により前処理を施したサンプルと前処理なしのサンプルを用いた。マイクロ波による処理は、簡単に説明すると、米ヌカ(大関(株))または小麦フスマ(日清製粉(株))10gを三角フラスコに入れ、電子レンジを500Wに設定し、米ヌカでは50秒、小麦フスマでは50~60秒間加熱することにより行った。次いで、得られた各粉末を60℃で乾燥させた。
【実施例1】
【0024】
B.有用酵素高生産麹菌抽出液の調製
本発明では、有用酵素高生産麹菌としてβ-グルコシダーゼ高生産菌(尾関ら、第7回糸状菌分子生物学コンファレンス要旨集、p.78)およびキシラナーゼ高生産菌(高木ら、第7回糸状菌分子生物学コンファレンス要旨集、p.76)の2株を用いた。上記有用酵素高生産麹菌をフスマ培地(200mLの三角フラスコにフスマ10gに対して6mLの蒸留水を加えオートクレーブ滅菌)に植菌し、30℃で3日間培養した。培養液にフスマ培地抽出液緩衝液(10mM酢酸緩衝液、pH5.0、0.5%NaCl)50mLを添加し、3時間放置した。その後、ナイロンメッシュフィルターを用いてろ過し、50mLファルコンチューブ中に保存した。
【実施例1】
【0025】
C.米ヌカおよび小麦フスマにおける酵素剤または有用酵素高生産麹菌抽出液を用いた処理
本発明では、小麦フスマおよび米ヌカを処理する酵素剤(ヘミセルラーゼ)および麹菌抽出液として以下の酵素剤8種類および有用酵素高生産麹菌抽出液2種を使用した。
・ペクチナーゼG「アマノ」(アマノエンザイム(株))
・ヘミセルラーゼ「アマノ」90(アマノエンザイム(株))
・スミチームPX(新日本化学工業(株))
・スミチームARS(新日本化学工業(株))
・スミチームACH-L(新日本化学工業(株))
・OPTIMASE(登録商標)CX 72L(GENENCOR(株))
・マセロチームA(ヤクルト薬品工業(株))
・ペクチナーゼSS(ヤクルト薬品工業(株))
・β-グルコシダーゼ高生産麹菌抽出液
・キシラナーゼ高生産麹菌抽出液
【実施例1】
【0026】
まず、50mM酢酸緩衝液・トリス塩酸緩衝液を下記の表1に記載の各酵素剤の至適pHに調整した。これらの緩衝液10mLに小麦フスマまたは米ヌカ(未処理とマイクロ波による熱処理後のもの)を1g添加し、さらに上記酵素剤(固形の場合には10mg、液体の場合には10μL)または有用酵素高生産麹菌抽出液300μLを添加した。次いで、各酵素剤の至適温度にて1日ゆっくり振とうさせながらインキュベートした。その後、ろ紙により抽出し、メンブレンフィルターを用いてろ過した。
(表1.各酵素剤の至適条件)
【表1】
JP0005463075B2_000002t.gif
【実施例1】
【0027】
D.調製された処理物の酵素活性
(a)チロシナーゼ活性阻害の測定
小麦フスマおよび米ヌカを分解するのに効率の高い酵素剤または麹菌抽出液を選択するため、米ヌカおよび小麦フスマ(マイクロ波による処理なしと処理済)を表1に示す8種類の酵素剤および有用酵素高産生麹菌抽出液で処理した処理物においてチロシナーゼ活性阻害を測定した。測定方法は、実験生体分子化学(共立出版)p.151に記載の方法に準じて行った。なお、マイクロ波処理は、米ヌカの場合、電子レンジを500Wにセットし、50~60秒、小麦フスマの場合、電子レンジを500Wにセットし、50秒間行った。その結果、マイクロ波で前処理していない米ヌカと小麦フスマ、およびマイクロ波で処理した米ヌカと小麦フスマともに、酵素剤または酵素高産生麹菌抽出液で処理した処理物は、高いチロシナーゼ活性阻害率を示したが、マイクロ波で前処理した処理物の方が前処理していない処理物より高い阻害率を示した(図1~4)。特に、米ヌカを用いた場合、キシラナーゼ高生産麹菌抽出液、ペクチナーゼG「アマノ」、スミチームPXまたはマセロチームAで処理すると高く、小麦フスマを用いた場合、キシラナーゼ高生産麹菌抽出液、ヘミセルラーゼ「アマノ」90、スミチームPXまたはOPTIMASE(登録商標)CX 72Lで処理すると高いことがわかった。また、同一の酵素剤または麹菌抽出についてマイクロ波による処理の有無による相違をみると、マイクロ波で処理した処理物は、処理していないものと比べて高いチロシナーゼ活性阻害率を示した(図1~4)。以上より、米ヌカおよび小麦フスマなどのヘミセルロースを多く含む素材をヘミセルラーゼなどの酵素剤またはキシラナーゼなどの麹菌抽出液で処理した処理物がチロシナーゼ活性の阻害効果を有することが示された。
【実施例1】
【0028】
(b)D-キシロース測定
チロシナーゼ活性阻害の上昇とD-キシロースの遊離との関係を調べるため、上記(a)の結果よりチロシナーゼ阻害活性が高かった3種類、キシラナーゼ高生産菌抽出液、OPTIMASE(登録商標)CX 72L(GENENCOR(株))、およびマセロチームA(ヤクルト薬品工業(株))を選択し、D-キシロース測定キット(日本バイオコン(株))によりD-キシロース量の測定を行った。前記キットに添付された説明書の記載に従って行い、340nmにおける吸光度を測定した。その結果を下記の表2に示す。表中の「前処理」の列において、○はマイクロ波による処理済みを表し、×はマイクロ波で処理していないことを示す。表2中の「キシロース含有量」の列より、米ヌカをキシラナーゼ高生産菌抽出液で処理した処理物(表中、キシラナーゼフスマ抽出液と記載されている)および小麦フスマをOPTIMASE(登録商標)CX 72Lで処理した処理物(表中、OPTIMASE CX 72Lと記載されている)がキシロースを多く含むことがわかった。また、試験を行った3種類ともにマイクロ波による前処理を行った処理物は、前処理を行っていないものよりキシロース含有量が高くなることが示された。
(表2.キシロース含有量の測定結果)
【表2】
JP0005463075B2_000003t.gif
【実施例1】
【0029】
さらに、酵素剤の組み合わせがそれら単独で処理した処理物と比較してD-キシロースの遊離を上昇させるか調べるため、D‐キシロース量を測定した。その結果を表3~6に示す。表5および6中、ヘミセルはヘミセルラーゼ「アマノ」90、ペクチGはペクチナーゼG「アマノ」、マセロAはマセロチームA、スミチPXはスミチームPX、スミチARSはスミチームARS、72LはOPTIMASE(登録商標)CX 72Lを意味する。表3~6より、単独の酵素剤により処理した処理物よりキシロース含有量が特に上昇した酵素剤の組み合わせは、米ヌカ(未処理)を用いた場合、ヘミセル×マセロA、米ヌカ(処理済)を用いた場合、ペクチG×スミチPX、ペクチG×マセロA、小麦フスマ(未処理)を用いた場合、スミチARS×マセロA、スミチARS×72L、マセロA×72L、小麦フスマ(処理済)を用いた場合、72L×ヘミセル、72L×スミチPX、ヘミセル×スミチPXであった。
(表3.米ヌカを酵素剤で処理した処理物におけるキシロース含有量)
【表3】
JP0005463075B2_000004t.gif

(表4.小麦フスマを酵素剤で処理した処理物におけるキシロース含有量)
【表4】
JP0005463075B2_000005t.gif
(表5.米ヌカを酵素剤の組み合わせで処理した処理物におけるキシロース含有量)
【表5】
JP0005463075B2_000006t.gif
(表6.小麦フスマを酵素剤の組み合わせで処理した処理物におけるキシロース含有量)
【表6】
JP0005463075B2_000007t.gif
【実施例1】
【0030】
(c)抗酸化能(ラジカルキャッチ)の測定
次に、米ヌカおよび小麦フスマを上記の各酵素剤で処理した処理物において、抗酸化能測定キット(アロカ(株))を用いて抗酸化能を測定した。測定は、キットに添付された説明書に従って行った。本発明では、サンプリング時間を5秒、サンプリングポイントを24ポイント、および測定時間を120秒とした。活性阻害率を次式から求め、消去率を算出した。
活性阻害率(%)=100-(A)/(B)×100
[式中、Aはブランクのグルコース生成量であり、Bは抽出物のグルコース生成量である。]
次に、IC50値をコントロール発光量の1/2を付与するサンプル濃度または消去率(抑制率)50%のサンプル濃度として求めた。その結果、米ヌカ(マイクロ波未処理)を酵素剤で処理した処理物において最も高い消去率を示したのはヘミセルラーゼ「アマノ」90であり、60%近い消去率が見られた(図5)。また、スミチームPXに関しても50%以上の高い消去率が観察された。その他、ペクチナーゼSSに関しても50%前後と高い消去率が見られた。一方、小麦フスマ(マイクロ波未処理)を酵素剤で処理した処理物において最も高い消去率を示したのはヘミセルラーゼ「アマノ」90であり、90%以上の高い消去率が観察された(図6)。また、ペクチナーゼSSに関しても90%近い消去率が見られた。その他、ペクチナーゼG「アマノ」は85%を超える消去率が観察され、スミチームPXは70%近い消去率が示された。加えて、小麦フスマの方が全体的に米ヌカより消去率が高いことが観察された。このことから、小麦フスマおよび米ヌカなどの素材を酵素剤などで処理すると抗酸化能が上昇することがわかった。
【実施例1】
【0031】
(d)SOD活性測定(NBT還元法)
米ヌカおよび小麦フスマを各種酵素剤および有用酵素高生産麹菌抽出液の組み合わせで処理した処理物が、活性酸素を抑制する作用を示すかどうかを調べるため、SOD活性検出キット(和光純薬工業(株))を用いてSOD活性を測定した。測定はキットに添付された説明書に従って行った。次に、この方法により得られた吸光度の値を用いて、SOD活性の阻害率を以下の式で算出した。
SOD活性値(阻害率%)=[(E1)-(E2)]/(E1)×100
[式中、E1=EEL-EBL-BLであり、E2=E-ES-BLである。]
【実施例1】
【0032】
その結果、前処理した米ヌカの処理物において、最も高い阻害率を示したのは、ペクチナーゼG「アマノ」とマセロチームAの組み合わせで処理したものであり、80%近い阻害率が示された(図7)。また、マイクロ波未処理の米ヌカの処理物では、ヘミセルラーゼ「アマノ」90とペクチナーゼG「アマノ」、ならびにヘミセルラーゼ「アマノ」90とマセロチームとの組み合わせで処理したものに関して50%以上の高い阻害率が観察された(図8)。マイクロ波による前処理の影響に注目してみると、ペクチナーゼG「アマノ」とマセロチームAの組み合わせでは、前処理したものの阻害率が極めて高くなることがわかった。一方、小麦フスマにおいて、最も高い阻害率を示したのは、マイクロ波で前処理した小麦フスマをOPTIMASE(登録商標)CX 72L×スミチームPXの組み合わせで処理したものであり、60%近い阻害率が示された。また、マイクロ波未処理の小麦フスマをマセロチームA×OPTIMASE(登録商標)CX 72Lの組み合わせで処理しものに関しても、50%以上の高い阻害率が観察された。これらのことから、各素材を酵素剤により処理すると抗酸化能が上昇することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、チロシナーゼ活性の阻害方法および阻害剤が提供されるので、チロシナーゼ活性を原因とするメラニン色素の沈着を防止できるので、肌の美白、歯茎や歯肉の黒ずみ、食品の褐色防止に関連する化粧品、医療、食品などの分野において利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7