TOP > 国内特許検索 > 抗デングウイルス剤 > 明細書

明細書 :抗デングウイルス剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5777200号 (P5777200)
公開番号 特開2012-097054 (P2012-097054A)
登録日 平成27年7月17日(2015.7.17)
発行日 平成27年9月9日(2015.9.9)
公開日 平成24年5月24日(2012.5.24)
発明の名称または考案の名称 抗デングウイルス剤
国際特許分類 A61K  31/7028      (2006.01)
A61P  31/14        (2006.01)
C07H  15/04        (2006.01)
FI A61K 31/7028
A61P 31/14
C07H 15/04 A
請求項の数または発明の数 1
全頁数 12
出願番号 特願2010-248271 (P2010-248271)
出願日 平成22年11月5日(2010.11.5)
審査請求日 平成25年10月24日(2013.10.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
発明者または考案者 【氏名】鈴木 隆
【氏名】左 一八
【氏名】池田 潔
個別代理人の代理人 【識別番号】230104019、【弁護士】、【氏名又は名称】大野 聖二
【識別番号】100106840、【弁理士】、【氏名又は名称】森田 耕司
【識別番号】100105991、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 玲子
【識別番号】100119183、【弁理士】、【氏名又は名称】松任谷 優子
【識別番号】100114465、【弁理士】、【氏名又は名称】北野 健
【識別番号】100156915、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 奈月
審査官 【審査官】春日 淳一
参考文献・文献 特表2007-515434(JP,A)
特開2005-015451(JP,A)
Okuda S et al,Carbohydrate Research,1990年,Vol.198,p.133-140
Wessel HP et al,Carbohydrate Research,1995年,Vol.274,p.1-9
調査した分野 C07H,A61K,A61P
CAplus,REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式:
【化1】
JP0005777200B2_000007t.gif
で表される化合物またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗デングウイルス剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は,デングウイルスの感染を阻害する活性を有する化合物,およびこの化合物を利用した抗デングウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
デング熱はデングウイルスによる急性感染症で,その臨床的特徴から,予後良好な古典的デング熱(classical dengue fever, CDF),出血傾向を示すデング出血熱(dengue hemorrhagic fever, DHF)最も重篤でショックを主徴とするデングショック症候群(dengue shock syndrome, DSS)に分類される。CDFは,3~8日の潜伏期間のあと,40℃前後の発熱,頭痛,腰背部痛,顔面紅潮,結膜充血などで突然発症し,全身の激しい関節痛と筋肉痛を呈する。ややおくれて,消化器症状やしばしば上気道炎症状も出現する。本症は自己限定的であり,自然経過で治癒・回復する。DHF/DSSもCDFとほぼ同様に発症するが,2~6日で出血傾向もしくはショック様症状が著明となり,虚脱感や全身衰弱が強く,状態は急速に悪化する。
【0003】
デング熱は世界各地の熱帯地方に広く分布しており,感染力は極めて強く,流行時には人口の80%が感染する。地球上の患者は2000万人/年(WHO)におよび,流行地域も患者数も年毎に拡大の一途をたどっている。またかつてはみられなかったDHF/DSSが近年各地で多発していることから,本症は再興感染症として位置付けられその対策は公衆衛生上極めて大きな問題となっている。本出血熱は,致死率40%以上と高いにもかかわらず,感染における標的組織,感染初期過程の宿主・ウイルス相互作用に関する分子,遺伝子情報は極めて少ない。
【0004】
従来,デングウイルスワクチンは弱毒生ワクチンを始め,不活性化ワクチン,サブユニットワクチン,組換えワクチン,DNAワクチンなどの開発が進められているが,有効性や,副反応の問題によりまだ実用化には達していないのが現実である。また,本疾患はウイルス抗体により感染が助長される例が多く,抗原・抗体複合体,Fcレセプターの関与なども考えられているが,詳細な機構は不明である。
【0005】
ヘパラン硫酸やコンドロイチン硫酸などのグリコサミノグリカン,およびある種のオリゴ糖類がデングウイルスの感染を阻害する活性を有することが報告されている(Marks et al., J. Med. Chem. 2001, 44, 2178-2187,WO2004/037272,WO2007/111321)。また,化合物ライブラリのスクリーニングにより,デングウイルスの感染を阻害しうる小分子化合物を見いだしたことが報告されている(Wang et al., Antimucrob. Agents Chemother. 2009, p. 1823-1831)。しかしながら,標的細胞上の受容体は同定されておらず,これらの分子がデングウイルスの感染を阻害する機構は依然として不明である。
【0006】
このように,現在,デング熱に対して十分な治療,予防方法は確立していない。したがって,当該技術分野においては,有効で安全性の高い治療薬としての抗デングウイルス剤ならびに感染を予防する製品が強く要望されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】WO2004/037272
【特許文献2】WO2007/111321
【0008】

【非特許文献1】Marks et al., J. Med. Chem. 2001, 44, 2178-2187
【非特許文献2】Wang et al., Antimucrob. Agents Chemother. 2009, p. 1823-1831
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは,各種糖鎖誘導体化合物を化学合成し,デングウイルスの感染阻害効果について評価を行ったところ,いくつかの硫酸修飾単糖類がデングウイルスの宿主細胞への結合を阻害し,感染防御活性を有することを見いだした。
【0010】
本発明は,次式:
【化1】
JP0005777200B2_000002t.gif
で表される化合物またはその薬学的に許容しうる塩(ただしアンモニウム塩は除く)を提供する。本発明はまた,この化合物またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗デングウイルス剤を提供する。
【0011】
別の観点においては、本発明は,次式(I)~(III):
【化2】
JP0005777200B2_000003t.gif
[式中、RはC1-8のアルキルであり、Rは互いに独立してHまたはSOであるが、ただし各式中の全てのRが同時にHであることはない]
のいずれかで表される化合物またはその薬学的に許容しうる塩,ならびにこれらの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を有効成分として含む抗デングウイルス剤を提供する。Rは、好ましくはメチルまたはオクチルであり、特に好ましくはメチルである。これらの中でも、メチルα-GlcA(3-O-S)、メチルβ-Gal(3-O-S)、およびメチルβ-Gal(3,6-O-S)が好ましく、メチルα-GlcA(3-O-S)が更に好ましい(略号については下記の表を参照)。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は,種々の糖誘導体によるデングウイルスDENV2の感染の阻害を示す。
【図2】図2は,メチルα-グルクロン酸誘導体によるデングウイルスDENV2の感染の阻害の用量依存性を示す。
【図3】図3は,種々の糖誘導体によるDENV2結合の阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の化合物は,市販のメチルα-グルクロン酸を出発物質として,Okudaら(Okuda, S.; Kondo, T.; Murata, S. Carbohydr. Res., 1990, 198, 133-140)およびGuiseleyら(Guiseley, B. G.; Ruoff, M. P. J. Org. Chem., 1962, 27, 1479-1482)に開示される方法により合成することができる。簡単には,メチルα-グルクロン酸の2,4および6位の水酸基を保護基で保護した後に、ピリジン中で硫酸ピリジン複合体等の三酸化イオウ複合体と反応させ、定法により保護基を除去して、つぎに文献の合成法を改良したピニック酸化により効率よく6位の水酸基をカルボキシル基に変換してから、3位の水酸基が硫酸化されたメチルα-グルクロン酸を得ることができる。あるいは,コンドロイチン硫酸などの硫酸化多糖類をコンドロイチナーゼなどの酵素を用いて分解した後,高速液体クロマトグラフィーなどを用いて分離精製することにより得ることができる。

【0014】
本発明の化合物のデングウイルス感染阻害活性は,フォーカス形成アッセイにより評価することができる。具体的には,デングウイルスが感染することが知られている適当な培養細胞に,種々の濃度の試験化合物の存在または非存在下でウイルスを感染させた後,細胞を重層培地で一定時間培養してフォーカスを形成させる。次に,細胞を固定化した後,抗ウイルス抗体またはデングウイルス感染患者からの抗血清を用いて細胞を免疫染色し,染色されたフォーカス数を測定することにより,感染価を求めることができる。

【0015】
本発明の化合物のデングウイルス結合活性は,細胞表面ウイルス結合アッセイにより評価することができる。具体的には,デングウイルスが感染することが知られている適当な培養細胞に,種々の濃度の試験化合物の存在または非存在下でウイルスを感染させ,細胞を固定化した後,抗ウイルス抗体またはデングウイルス感染患者からの抗血清を用いて細胞を免疫染色することにより,細胞表面に結合したウイルス量を求めることができる。

【0016】
本発明において,抗デングウイルス剤とは,本発明にしたがう化合物またはその薬学的に許容しうる塩を,薬学的に許容しうる担体もしくは賦形剤とともに含む医薬組成物を表す。本発明の抗デングウイルス剤は,デングウイルスの感染に関連する疾患の予防および/または治療に用いることができ,例えば,デングウイルスの感染に伴う疾患の症状を軽減または排除すること,感染患者中のデングウイルスの増殖を阻害すること,ウイルスの活性を低下させること,および/またはウイルスを消滅もしくは減少させることができる。

【0017】
薬学的に許容しうる塩としては,薬理学的に許容されるものであれば特に限定されず,例えば,ナトリウム,カリウム,カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属等の塩,アンモニアや各種有機塩基等の塩類を挙げることができる。

【0018】
本発明の抗デングウイルス剤は,当業者に公知の方法で製剤化することができる。例えば,薬学的に許容しうる担体もしくは賦形剤,具体的には,滅菌水や生理食塩水,植物油,乳化剤,懸濁剤,界面活性剤,安定剤,香味剤,ベヒクル,防腐剤,結合剤などと適宜組み合わせて,一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することができる。

【0019】
本発明の抗デングウイルス剤の適当な投与経路には,限定されないが,経口,経粘膜,または筋肉内,皮下,骨髄内,鞘内,静脈内,腹腔内,または鼻腔内注射が含まれる。投与経路および投与方法は,患者の年齢,症状により適宜選択することができる。経口または経鼻投与が好ましい。経口投与用には,例えば,化合物をカプセル剤,錠剤および液体製剤(シロップ剤,エリキシル剤および濃縮ドロップ剤など)のような慣用の経口投与形に製剤することができる。吸入用には,本発明の化合物を乾燥粉体または適当な溶液,懸濁液,またはエアロゾルとして製剤することができる。粉体および溶液は,当該技術分野において知られる適当な添加物とともに製剤することができる。非経口投与用には,本発明の化合物またはその塩を当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうるベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。

【0020】
本発明の抗デングウイルス剤は,デングウイルス宿主由来のウイルス受容体を構成する糖鎖分子の構造を模倣した糖誘導体であり,ウイルス感染を直接阻害する活性を有している。本発明の化合物は分子量が500以下の糖分子であること,水溶性に優れていること,室温での安定性が高いこと,さらに,化学合成が容易かつ低コストであることなどの技術的な優位性を有する。また,本薬剤は天然糖鎖構造を有していることから,ヒトに対する免疫原性等の副作用を誘起する可能性が極めて低いと考えられる。したがって,この化合物を含む適切な剤形の薬剤を用いることで抗ウイルス剤としての有効性を期待できる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例により本発明をより詳細に説明するが,本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
1. 実験試薬およびウイルス
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM:Dulbecco's Modified Eagle medium) (05919, ニッスイ)
デングウイルス2型(D2/ThNH7:1997年にタイ国のdengue shock syndrome (DSS) 患者より単離されたウイルス)
1次抗体:3H5-1 (ATCC, HB-46)
1次抗体:DHF (デング出血熱患者)血清
2次抗体:ヤギ抗マウスIgG (115-035-068, Jackson )
2次抗体:ヤギ抗ヒトIgG (109-036-127, Jackson )
Igepal-CA630 (13021-100ML, SIGMA)
ウシ血清アルブミン(BSA) (10 735 094 001, Roche)
パラホルムアルデヒド(162-16065, 和光純薬工業株式会社)
トラガカントゴム(206-0224, 和光純薬工業株式会社)
KONIKA イムノステインHRP-1000 (130990, 生化学工業)
【実施例】
【0023】
2. 低分子糖誘導体
実験に用いた低分子糖誘導体の名称と構造,ならびに図面で用いられている略称を下記の表に示す。
【実施例】
【0024】
【化3】
JP0005777200B2_000004t.gif
【実施例】
【0025】
【化4】
JP0005777200B2_000005t.gif
【実施例】
【0026】
メチル α-グルクロン酸 (3-O-SO3H)の合成
メチル α-グルクロン酸 (3-O-SO3H)は,下記のスキームにより合成した。
【化5】
JP0005777200B2_000006t.gif
【実施例】
【0027】
メチル4,6-O-ベンジリデン-α-D-グルコピラノシド(5)
アルゴン雰囲気下,化合物 4(10.0 g, 51.0 mmol)をベンズアルデヒド(25 ml)に溶かし,ZnCl2(7.0 g, 51.3 mmol)を加え,室温で12時間撹拌した。反応液に氷水を加え,析出した結晶を吸引ろ取し乾燥した。この結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して無色結晶体 5 (9.93 g, 69%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:3.46 (3H, s, -OCH3), 3.50 (1H, t, J = 9.5 Hz, H-4), 3.63 (1H, dd, J = 9.5 Hz, 4.0 Hz, H-2), 3.74 (1H, t, J = 9.5 Hz, H-6a), 3.81 (1H, m, H-5), 3.92 (1H, t, J = 9.5 Hz, H-3), 4.29 (1H, m, H-6b), 4.80 (1H, d, J = 4.0 Hz, H-1), 5.53 (1H, s, -CHPh), 7.25-7.48 (5H, m, -C6H5)
【実施例】
【0028】
メチル2-O-アセチル-4,6-O-ベンジリデン-α-D-グルコピラノシド(8)
アルゴン雰囲気下,化合物 5(609 mg, 2.16 mmol)をピリジン(8 ml)に溶かし,無水酢酸(384 mg, 3.52 mmol)を加え,0 ℃で3時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製して無色結晶体 8(140 mg, 20%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:3.40 (3H, s, -OCH3), 3.56 (1H, t, J = 10 Hz, H-4), 3.76 (1H, t, J = 10 Hz, H-6a), 3.84 (1H, m, H-6a), 4.17 (1H, t, J = 10 Hz, H-3), 4.29 (1H, m, H-6b), 4.80 (1H, dd, J = 10, 3.5 Hz, H-2), 4.95 (1H, d, J = 3.5 Hz, H-1), 5.55 (1H, s, -CHPh), 7.35-7.50 (5H, m, -C6H5)
【実施例】
【0029】
メチル 2-O-アセチル-4,6-O-ベンジリデン-3-O-スルホ-α-D-グルコピラノシド(9)
窒素雰囲気下,化合物 8(270 mg, 0.83 mmol)をピリジン(6 ml)に溶かし,硫酸ピリジン複合体(198 mg, 1.25 mmol)を加え,50 ℃で11時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール:水=65:35:5)で精製して無色油状物9(75.5 mg, 22%)を得た。
1H-NMR(D2O)δ:3.32 (3H, s, -OCH3), 3.73-3.82 (3H, m, H-4, H-6a, H-5), 4.18 (1H, m, H-6b), 4.33 (1H, dd, J = 10 Hz, 4.0 Hz, H-2), 4.98 (1H, d, J = 4.0 Hz, H-1), 5.22 (1H, t, J = 10 Hz, H-3), 5.45 (1H, s, -CHPh), 7.30-7.40 (5H, m, -C6H5). FAB-MS:m/z 403 (M-H)-
【実施例】
【0030】
メチル 3-O-スルホ-α-D-グルコピラノシド(10)
化合物 9(66 mg, 0.16 mmol)を水(3 ml)に溶かし,アンバーライトIR120(H+)を少量加えpH 2-3に調整して,60 ℃で1時間撹拌した。反応液を吸引ろ過し,ろ液を減圧下濃縮し,残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:クロロホルム:メタノール:水=65:35:5)で精製して無色結晶体 10(39.2 mg, 89%)を得た。FAB-MS:m/z 273 (M-H)-
【実施例】
【0031】
メチル 3-O-スルホ-α-D-グルクロノシド(2)
化合物 10(39.2 mg, 0.14 mmol)をアセトニトリル緩衝液(pH 6.9)(1:1)(2 ml)に溶かし,NaClO2(63 mg, 0.70 mmol)と12% w/w NaClO水溶液(50 μl)を順次加え,TEMPO(10.9 mg, 0.07 mmol)を加え,室温で5時間撹拌した。粗生成物をゲル濾過クロマトグラフィーに賦して精製後,凍結乾燥して無色結晶体 2(35 mg, 83%)を得た。FAB-MS:m/z 287 (M-H)-
【実施例】
【0032】
表2に示される他の化合物も,市販のメチルα-グルクロン酸,メチルα-グルコース,メチルβ-グルクロン酸,またはメチルβ-ガラクトースから,同様にして合成した。
【実施例】
【0033】
3. ウイルス感染実験
3-1. 細胞培養
デングウイルス感染実験には,ハムスター腎由来細胞であるBHK-21細胞を用いた。BHK-21細胞を5% FBS及び1%PSG含有DMEM (ニッスイ, 05919) 培地中で37℃,5 %CO2存在下で培養した。
【実施例】
【0034】
3-2. フォーカス形成アッセイ (FFA:Focus forming assay)による化合物の感染阻害性評価
BHK21細胞を感染実験前日に96 ウエルプレート(167008, nunc)に2.5 x 104 細胞/0.1ml/ウエルとなるように播きこんだ。5% ウシ胎児血清(FBS)-DMEM培地で,37℃,5% CO2存在下,細胞がコンフルエントになるまで培養し,以後の感染実験に用いた。
【実施例】
【0035】
試験化合物はすべて滅菌PBS(-)に溶解し,これらを原液とした。化合物を氷上,丸底プレート(3799 Corning)を用いて,容量がそれぞれ30 μl/ウエルになるよう無血清DMEMにより希釈した。次に無血清DMEMにより希釈したウイルス溶液を,予め希釈された化合物溶液とプレート上で等量混合した(この時,各ウエルの全量は60 μl/ウエル)。この混液を速やかに以後の操作に使用した。
【実施例】
【0036】
96 ウエルプレートに培養したBHK21細胞をSF-DMEM (200 μl/ml)で3回洗った後,予め調製したウイルス-化合物混合溶液を50 μl/ウエルとなるよう加えた。37℃,5% CO2存在下で2時間インキュベートした。混合溶液を除き,細胞をSF-DMEM (200 μl/ml)で3回洗った後,重層培地(overlay medium:2% FBS-DMEMと1%トラガカントゴムを等量混合した培地)を100 μl/ウエルとなるように加え,37℃,5% CO2存在下,39時間培養した。
【実施例】
【0037】
感染した細胞のウイルス抗原を,抗ウイルス抗体を用いて免疫学的に検出することで,ウイルス感染価を評価した。細胞の培養液に直接,5% パラホルムアルデヒド含有PBS (pH7.2) を (100 μl/ウエル) となるように加え,室温で20分間,細胞を固定化した。PBS (200 μl/ウエル)で3回洗った後,界面活性剤である1% Igepal-CA630含有PBS (100 μl/ウエル)で固定化細胞を20分間処理した。PBS (200 μl/ウエル)でウエルを3回洗浄した後,1次抗体として3H5-1溶液を 50 μl/ウエルとなるように加え,28℃で1時間インキュベートした。PBS (200 μl/ウエル)で3回洗った後,2次抗体として1%BSA-PBSで希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgGを50 μl/ウエルとなるように加え28℃,1時間インキュベートした。PBS (200 μl/ウエル)で3回洗った後,発色基質溶液としてKONICA イムノステインHRP-1000を100 μl/ウエルとなるように加えて,感染細胞を染色した。青く染色された感染細胞1集団を1 フォーカスとして,ウエル内のフォーカス数を計数,これをそれぞれの感染価とした。
【実施例】
【0038】
試験化合物の感染阻害効果は,化合物を入れないウエルでのウイルス感染によるフォーカス数を100%とした時の相対的な感染価として評価した。なお,IC50値は,50%の相対的感染価を示した時の試験化合物の濃度を表す。
【実施例】
【0039】
結果を図1に示す。0.5mMの濃度で試験したとき,試験した糖誘導体のうち,メチルαグルクロン酸(3-O-SO3)が非常に強い感染阻害活性を示した。また,メチルβガラクトース(3-O-SO3)も感染阻害活性を示した。
【実施例】
【0040】
さらに,図2に示されるように,メチルαグルクロン酸(3-O-SO3)用量依存的にウイルス感染を阻害し,そのIC50値は0.12mMであった。
【実施例】
【0041】
3-3. 細胞表面ウイルス結合アッセイ
細胞表面ウイルス結合アッセイにはBHK-21細胞を用いた。BHK-21細胞の培養法については前述の通りである。ウイルスと培養細胞との直接的な結合を細胞表面ウイルス結合アッセイにより評価した。
【実施例】
【0042】
96穴細胞培養用プレート (Costar, 3596) に,5.0 x 105 細胞/mlに調製したBHK-21細胞を100 μl/ウエルとなるように播き込んだ。BHK-21細胞を10% FBS含有DMEM培地で37℃,5% CO2存在下で培養した。一晩培養後,200 μl/ウエルの150 mM NaCl, 5 mM MgCl2 (和光純薬工業株式会社, 135-00165) , CaCl2 (和光純薬工業株式会社, 031-00435) 含有25 mM HEPES (pH 7.2) (和光純薬工業株式会社, 342-01375) 緩衝液で細胞を1回洗浄した。その後,ブロッキング溶液として2% BSA含有DMEM培地を100 μl/ウエルで加え,37℃,5% CO2存在下で1時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去後,冷やした150 mM NaCl含有10 mM HEPES (pH 7.4) 緩衝液 (HBS)で3回洗浄した。予め無血清DMEM培地にて調製したウイルス希釈液 (1×107FFU/ml)を化合物溶液と同量加え,マルチチャンネルピペッターを用いて十分に懸濁した。この時,ウイルスの最終濃度は5×106FFU/mlとなる。この混合液を50 μl/ウエルとなるように加え,4oCで2時間インキュベートした。
【実施例】
【0043】
冷やしたHBS 200 μl/ウエルで5回洗浄し,5% パラホルムアルデヒド含有PBS (pH7.2) を (100 μl/ウエル) となるように加え,室温で20分間,細胞を固定化した。PBS (200 μl/ウエル)で3回洗った後,1次抗体として1 %BSA-PBSで希釈したDHF血清を 50 μl/ウエルとなるように加え,28℃で1時間インキュベートした。PBS (200 μl/ウエル)で5回洗った後,2次抗体として1%BSA-PBSで希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgGを50 μl/ウエルとなるように加え28℃,1時間インキュベートした。PBS (200 μl/ウエル)で5回洗浄した。発色基質溶液としてオルトフェニレンジアミンを100 μl/ウエルとなるように加え,暗所で反応させた。発色が得られたら,1N塩酸で酵素反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(MTP-300, Corona Electric)により,λ1=492 nm, λ2=630 nmで吸光度を測定した。
【実施例】
【0044】
結果を図3に示す。試験した糖誘導体のうち,メチルαグルクロン酸(3-O-SO3)が非常に強い結合阻害活性を示し,メチルαグルクロン酸(2-O-SO3)およびメチルβガラクトース(3,6-O-SO3)も有意な結合阻害活性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の化合物および抗デングウイルス剤は,デングウイルス感染の予防および治療に有用である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2