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明細書 :気体分離膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4474519号 (P4474519)
公開番号 特開2008-055256 (P2008-055256A)
登録日 平成22年3月19日(2010.3.19)
発行日 平成22年6月9日(2010.6.9)
公開日 平成20年3月13日(2008.3.13)
発明の名称または考案の名称 気体分離膜
国際特許分類 B01D  71/70        (2006.01)
B01D  69/10        (2006.01)
C08J   5/18        (2006.01)
C08J   3/24        (2006.01)
C08G  77/48        (2006.01)
FI B01D 71/70 500
B01D 69/10
C08J 5/18
C08J 3/24 Z
C08G 77/48
請求項の数または発明の数 11
全頁数 23
出願番号 特願2006-232110 (P2006-232110)
出願日 平成18年8月29日(2006.8.29)
審査請求日 平成21年6月24日(2009.6.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】801000027
【氏名又は名称】学校法人明治大学
発明者または考案者 【氏名】永井 一清
【氏名】森里 敦
【氏名】野崎 貴司
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100101719、【弁理士】、【氏名又は名称】野口 恭弘
審査官 【審査官】馳平 裕美
参考文献・文献 特開2007-269938(JP,A)
ZHANG Z-Y,Facilitated Oxygen Transport in a Novel Silicone Polymer Membrane Containing Carboxylic Cobalt Groups ,J Appl Polym Sci,米国,2003年10月24日,Vol.90 No.4,Page.1038-1044
調査した分野 B01D 53/22,61/00~71/82,
C02F 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び、ヒドロシリル化触媒を含む有機溶媒溶液を用いてヒドロシリル化反応を一部進行させ、前記有機溶媒溶液を増粘させる工程、
増粘させた前記有機溶媒溶液をオルガノポリシロキサン濃度が6重量%以下の希薄溶液に調整する工程、
前記希薄溶液を多孔質支持体膜上に膜状に塗布する工程、
さらにヒドロシリル化反応を行う工程、並びに、
有機溶媒を除去しオルガノポリシロキサン架橋膜を得る工程をこの順で含み、
前記オルガノポリシロキサン架橋膜の厚さが1μm以下であり、
前記オルガノポリシロキサン架橋膜の常温における酸素/窒素分離係数が1.6以上であり、
前記オルガノポリシロキサン架橋膜が、式(I’)で示される繰り返し単位を含有しないことを特徴とする
オルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【化1】
JP0004474519B2_000018t.gif
(式中、Rはシクロアルキル基を表し、m及びnは各々独立に1以上の整数を表す。)
【請求項2】
ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1,500~8,000である請求項1に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項3】
ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が15,000~250,000である請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項4】
ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノシロキサンが下記式(I)で表される請求項1~3いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【化1】
JP0004474519B2_000019t.gif
(式(I)中、nは1以上の整数を表し、Rh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8のうち少なくとも2つは水素原子であり、水素原子である以外のRh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、n個存在するRh4及びRh5は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項5】
ビニル基を2個以上有するオルガノシロキサンが下記式(II)で表される請求項1~4いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【化2】
JP0004474519B2_000020t.gif
(式(II)中、mは1以上の整数を表し、Rv1~Rv3、m個存在するRv4及びRv5、並びに、Rv6~Rv8のうち少なくとも2つはビニル基を含む基であり、ビニル基を含む基以外のRv1~Rv3、m個存在するRv4及びRv5、並びに、Rv6~Rv8はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、m個存在するRv4及びRv5は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンがヒドロシリル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンであり、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンがビニル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンである請求項1~5いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項7】
記多孔質支持体膜の平均孔径が10~250nmである、請求項1~6いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項8】
希薄溶液のオルガノポリシロキサン濃度が2~5重量%である請求項1~7いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項9】
オルガノポリシロキサン架橋膜の厚さが0.01μm以上0.7μm以下である請求項1~8いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項10】
有機溶媒溶液を増粘させる工程が、ヒドロシリル化反応前の有機溶媒溶液の相対粘度に対して、150~300%の値となるように増粘させる工程である、請求項1~9いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
【請求項11】
前記有機溶媒溶液及び前記希薄溶液における有機溶媒が、アルカン及び/又は芳香族炭化水素である、請求項1~10いずれか1つに記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、気体分離膜として好適に使用することができるオルガノポリシロキサン架橋膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に気体分離膜は、多孔質支持体膜上に気体分離機能層を形成させて調製する。この際に、分離機能層を薄くして気体の透過速度(単位時間あたりの気体処理量)を多くする必要がある。しかし現在、気体分離膜として使用されているオルガノポリシロキサンは、1マイクロメーター未満の薄膜化が困難である(特許文献1及び2等)。
【0003】

【特許文献1】特公平6-77673号公報
【特許文献2】特開平6-269649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、厚さが薄く、かつ、酸素窒素分離能に優れたオルガノポリシロキサン架橋膜を提供することである。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、厚さが薄く、かつ、酸素窒素分離能に優れたオルガノポリシロキサン架橋膜を容易に製造することができるオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が解決しようとする上記課題は、以下に示す<1>及び<2>により解決された。好ましい実施態様である<3>~<13>とともに以下に示す。
<1> ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化触媒により反応させて形成した膜であり、前記膜の厚さが1μm以下であり、前記膜の常温における酸素/窒素分離係数が1.6以上であることを特徴とするオルガノポリシロキサン架橋膜、
<2> ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び、ヒドロシリル化触媒を含む有機溶媒溶液を用いてヒドロシリル化反応を一部進行させ、前記有機溶媒溶液を増粘させる工程、増粘させた前記有機溶媒溶液をオルガノポリシロキサン濃度が6重量%以下の希薄溶液に調整する工程、前記希薄溶液を膜状に塗布する工程、さらにヒドロシリル化反応を行う工程、並びに、有機溶媒を除去しオルガノポリシロキサン架橋膜を得る工程をこの順で含み、前記オルガノポリシロキサン架橋膜の厚さが1μm以下であり、前記オルガノポリシロキサン架橋膜の常温における酸素/窒素分離係数が1.6以上であることを特徴とするオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<3> ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1,500~8,000である上記<2>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<4> ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が15,000~250,000である上記<2>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<5> ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンがヒドロシリル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンであり、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンがビニル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンである上記<2>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<6> オルガノポリシロキサン架橋膜を多孔質支持体膜上に形成し、かつ、前記多孔質支持体膜の平均孔径が10~250nmである上記<2>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<7> 希薄溶液の濃度が2~5重量%である上記<2>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<8> オルガノポリシロキサン架橋膜の厚さが0.7μm以下である上記<2>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法、
<9> ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が1,500~8,000である上記<1>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜、
<10> ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量が15,000~250,000である上記<1>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜、
<11> ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンがヒドロシリル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンであり、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンがビニル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンである上記<1>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜、
<12> オルガノポリシロキサン架橋膜を多孔質支持体膜上に形成し、かつ、前記多孔質支持体膜の平均孔径が10~250nmである上記<1>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜、
<13> オルガノポリシロキサン架橋膜の厚さが0.7μm以下である上記<1>に記載のオルガノポリシロキサン架橋膜。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、厚さが薄く、かつ、酸素窒素分離能に優れたオルガノポリシロキサン架橋膜を提供することができる。
また、本発明によれば、厚さが薄く、かつ、酸素窒素分離能に優れたオルガノポリシロキサン架橋膜を容易に製造することができるオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化反応触媒により反応させて形成した膜であり、前記膜の厚さが1μm以下であり、前記膜の常温における酸素/窒素分離係数が1.6以上であることを特徴とする。
以下、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜、及び、その製造方法を詳細に説明する。
【0008】
<オルガノポリシロキサン架橋膜>
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとをヒドロシリル化反応触媒により反応させて形成した膜である。
【0009】
(ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン)
本発明に用いることができるヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、Si-H基を2個以上有するオルガノポリシロキサンであって、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応を行い、架橋構造をとることができるものであれば、特に制限はなく、直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンであってもよい。また、前記ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンが有するオルガノ基としては、入手容易性やヒドロシリル化反応時における安定性の点から、アルキル基、アリール基及びアラルキル基よりなる群から選ばれた基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基及び炭素数7~21のアラルキル基よりなる群から選ばれた基であることがより好ましく、炭素数1~20のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
前記オルガノ基におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基及びフッ素原子が挙げられる。前記置換基は、可能であればさらに置換基を有していてもよい。前記オルガノ基におけるアルキル基及びアラルキル基のアルキル部分は、環構造を有していてもよい。また、可能であれば、2つのオルガノ基が結合して環構造を形成していてもよい。
【0010】
本発明に用いることができるヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとして具体的には、下記式(I)に示すオルガノポリシロキサンが好ましく例示できる。
【0011】
【化1】
JP0004474519B2_000002t.gif
(式(I)中、nは1以上の整数を表し、Rh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8のうち少なくとも2つは水素原子であり、水素原子である以外のRh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、n個存在するRh4及びRh5は同じであっても異なっていてもよい。)
【0012】
式(I)におけるnは、1以上の整数を表し、揮発性や粘度等の反応時における取り扱いやすさの点から、本発明に用いるヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンにおけるnの平均値としては、10~200であることが好ましい。
式(I)において、Rh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8のうち少なくとも2つは水素原子であり、n個存在するRh4及びRh5のうち少なくとも2つは水素原子であることがより好ましい。オルガノポリシロキサンの内部のケイ素上にヒドロシリル基を有すると、ヒドロシリル化反応における反応性を低下させずに架橋構造を形成することができるため好ましい。
また、前記ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、ヒドロシリル基を3個以上有することが好ましい。
式(I)において、水素原子である以外のRh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8は、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、入手容易性やヒドロシリル化反応時における安定性の点から、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基又は炭素数7~21のアラルキル基であることが好ましく、炭素数1~20のアルキル基であることがより好ましく、メチル基又はフェニル基であることがさらに好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
前記Rh1~Rh8におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、アルキル基、アリール基及びフッ素原子が挙げられる。前記置換基は、可能であればさらに置換基を有していてもよい。前記Rh1~Rh8におけるアルキル基及びアラルキル基のアルキル部分は、環構造を有していてもよい。また、可能であれば、Rh1~Rh3、n個存在するRh4及びRh5、並びに、Rh6~Rh8のうちの2つが結合して環構造を形成していてもよい。
【0013】
本発明に用いることができるヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、1,500~8,000であることが好ましく、2,000~5,000であることがより好ましく、2,500~3,500であることが更に好ましい。上記範囲であると、揮発性や粘度等の反応時における取り扱いやすさの点で工業生産性が良好であるため好ましい。
【0014】
(ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン)
本発明に用いることができるビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンであって、ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとヒドロシリル化反応を行い、架橋構造をとることができるものであれば、特に制限はなく、直鎖状又は分岐状のオルガノポリシロキサンであってもよい。また、前記ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンが有するオルガノ基は、前述したヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンが有するオルガノ基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0015】
本発明に用いることができるビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとして具体的には、下記式(II)に示すオルガノポリシロキサンが好ましく例示できる。
【0016】
【化2】
JP0004474519B2_000003t.gif
(式(I)中、mは1以上の整数を表し、Rv1~Rv3、m個存在するRv4及びRv5、並びに、Rv6~Rv8のうち少なくとも2つはビニル基を含む基であり、水素原子である以外のRv1~Rv3、m個存在するRv4及びRv5、並びに、Rv6~Rv8はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、m個存在するRv4及びRv5は同じであっても異なっていてもよい。)
【0017】
式(II)におけるmは、1以上の整数を表し、揮発性や粘度等の反応時における取り扱いやすさの点から、本発明に用いるビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンにおけるmの平均値としては、100~5,000であることが好ましい。
式(II)のRv1~Rv8におけるビニル基を含む基は、ビニル基、又は、アルキレン基、アリーレン基、若しくは、アルキル基及び/若しくはアリール基を2つ以上結合した基を介してビニル基がケイ素原子に結合している基が挙げられ、ビニル基であることが好ましい。
前記ビニル基を含む基におけるビニル基は、無置換のビニル基であっても、アルキル基、アリール基及び/又はアラルキル基により1~3置換されたビニル基であってもよいが、反応性の点から、無置換のビニル基であることが好ましい。
式(II)において、Rv1~Rv3、m個存在するRv4及びRv5、並びに、Rv6~Rv8のうち少なくとも2つはビニル基を含む基であり、Rv1~Rv3及びRv6~Rv8のうち少なくとも2つはビニル基を含む基であることがより好ましい。オルガノポリシロキサンの末端にビニル基を有すると、内部にビニル基を有する場合と比較し、ヒドロシリル化反応における反応性が優れるため好ましい。
式(II)において、ビニル基を含む基である以外のRv1~Rv3、m個存在するRv4及びRv5、並びに、Rv6~Rv8は、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。
前記Rv1~Rv8におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基は、前記Rh1~Rh8におけるアルキル基、アリール基及びアラルキル基と同義であり、また、好ましい範囲も同様である。
【0018】
本発明に用いることができるビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、15,000~250,000であることが好ましく、20,000~200,000であることがより好ましく、30,000~150,000であることが更に好ましい。上記範囲であると、揮発性や粘度等の反応時における取り扱いやすさの点で工業生産性が良好であるため好ましい。
【0019】
(ヒドロシリル化触媒)
本発明に用いることができるヒドロシリル化触媒は、ヒドロシリル化反応において触媒作用を有するものであればよく、公知のヒドロシリル化触媒を用いることができる。また、前記ヒドロシリル化触媒は、均一系触媒であっても、不均一系触媒であってもよい。
前記ヒドロシリル化触媒としては、反応性や反応速度の点から、4族、8族、9族、又は、10族金属系触媒であることが好ましく、Pt、Pd、Rh、Ir、又は、Ru系触媒であることがより好ましく、Pt系触媒であることが更に好ましい。
Pt系触媒としては、アルコール、キシレン、ビニルシロキサンなどの白金錯体が好ましく、ジビニルシロキサン又は環状ビニルシロキサンの白金錯体であることがより好ましく、ジビニルジシロキサンの白金錯体であることが更に好ましい。
また、必要に応じて公知の反応抑制剤を併用して反応時間(増粘時間)を制御することもできる(伊藤邦雄編,「シリコーンハンドブック」,日刊工業新聞社,1990,p.386~387参照)。
【0020】
また、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の厚さは、1μm以下であり、0.7μm以下であることが好ましく、0.01~0.7μmであることがより好ましく、0.02~0.7μmであることが更に好ましい。
前記架橋膜の厚さが1μm以下であると、気体の透過速度を増加させることができ、効率的な気体分離システムを構築することができる。
【0021】
また、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の常温における酸素/窒素分離係数は1.6以上である。前記架橋膜の常温における酸素/窒素分離係数が1.6以上であると、分離効率が十分であり、効率的な気体分離システムを構築することができる。
酸素/窒素分離係数の測定方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができるが、例えば、体積法により、供給側に50psig(psi gauge、1psi=6,894.757Pa)の圧力をかけ、透過側に繋いだ石けん膜流量計により気体透過量を測定する方法を用いることが好ましい。
より詳細には、酸素及び窒素の気体透過性は定圧-可変体積気体測定法により、供給側気体圧力50psig/透過側圧力0psigで、常温(22℃)にて行うことができる。本発明に好適に用いることができる気体透過測定装置の概略図を図1に示す。図1に示す気体透過測定装置は、測定する膜試料12が供給側部材14及び透過側部材16に挟まれてなる透過セル10、石けん膜流量計18、圧力ゲージ20、レギュレーター22、各種ガスボンベ24a~24b、パージバルブ26、ストップバルブ28a,28b、バルブ30、及び、それらを連結する配管32より構成される。
透過セル10にセットされた膜12を透過した気体は、石けん膜流量計18へ導かれ、単位時間あたりの体積流量(dV/dt(cm3/sec))を測定後、次式により透過流束J(cm3(STP)/(cm2・sec・cmHg))を計算することができる。
【0022】
【数1】
JP0004474519B2_000004t.gif

【0023】
上記式において、pは供給側圧力(cmHg)、Tは測定温度(K)、Aは有効透過面積(cm2)である。
また、それぞれに求められた酸素と窒素の透過流束の比(JO2/JN2)を求めることにより、酸素/窒素分離係数αを決定することができる。
【0024】
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、前述した成分に加えて、ヒドロシリル基を1個有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を1個有するオルガノポリシロキサン、及び/又は、他のシロキサン化合物等を含む原料を用いて作製してもよい。付加型シリコーンゴムに使用される補強剤や耐熱剤等の公知の添加剤も、必要に応じて、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の作製時に添加することができる。
また、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、ガンマ線のような放射線又はプラズマ粒子による架橋や、パーオキシド加硫、付加反応加硫、縮合反応加硫等の加硫をさらに行った膜であってもよい。
前記補強剤や耐熱剤等の添加剤や加硫については、伊藤邦雄編,「シリコーンハンドブック」,日刊工業新聞社,1990を参照することができる。
【0025】
<オルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法>
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう。)は、ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び、ヒドロシリル化触媒を含む有機溶媒溶液を用いてヒドロシリル化反応を一部進行させ、前記有機溶媒溶液を増粘させる工程(以下、「増粘工程」ともいう。)、増粘させた前記有機溶媒溶液をオルガノポリシロキサン濃度が6重量%以下の希薄溶液に調整する工程(以下、「希釈工程」ともいう。)、前記希薄溶液を膜状に塗布する工程(以下、「塗布工程」ともいう。)、さらにヒドロシリル化反応を行う工程(以下、「反応工程」ともいう。)、並びに、有機溶媒を除去しオルガノポリシロキサン架橋膜を得る工程(以下、「除去工程」ともいう。)をこの順で含み、前記オルガノポリシロキサン架橋膜の厚さが1μm以下であり、前記オルガノポリシロキサン架橋膜の常温における酸素/窒素分離係数が1.6以上であることを特徴とする。
また、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法により好適に製造することができる。
【0026】
(増粘工程)
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法は、ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び、ヒドロシリル化触媒を含む有機溶媒溶液を用いてヒドロシリル化反応を一部進行させ、前記有機溶媒溶液を増粘させる工程(増粘工程)を含む。
【0027】
本発明の製造方法に用いることができるヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び、ヒドロシリル化触媒としては、前述したものを同様である。
【0028】
本発明の製造方法に用いることができる有機溶媒は、ヒドロシリル化反応に影響のでない有機溶媒であれば、特に制限はなく、ヒドロシリル化反応に使用される公知の溶媒を用いることができる。前記有機溶媒としては、無極性溶媒であることが好ましく、アルカンや芳香族炭化水素であることがより好ましく、イソオクタンであることが特に好ましい。また、前記有機溶媒は、常温で液体であり、常圧での沸点が60~250℃であることが好ましく、常圧での沸点が80~150℃であることがより好ましい。
また、前記有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。
【0029】
前記増粘工程におけるヒドロシリル化触媒の使用量は、ヒドロシリル化反応が進行すれば、特に制限はないが、十分な反応速度を得ることができ、かつ得られる架橋膜中の触媒残留量を低減するため、前記有機溶媒溶液の全重量に対し、1~10,000ppmであることが好ましく、10~5,000ppmであることがより好ましい。
【0030】
ヒドロシリル化反応を一部進行させ、有機溶媒溶液を増粘させる手段としては、ヒドロシリル化反応が一部進行すればよく、全くヒドロシリル化反応が進行していない、又は、ヒドロシリル化反応が進行し過ぎ、ゲル化した状態にならなければ、特に制限はない。
前記増粘工程は、常温で行っても、加熱(予備加熱)して行ってもよいが、反応の進行を容易に制御できる点から、加熱(予備加熱)によりヒドロシリル化反応を一部進行させ前記有機溶媒溶液を増粘させる方法を用いることが好ましい。
前記増粘工程における加熱手段は、特に制限はなく、公知の手段により前記有機溶媒溶液を加熱すればよい。
前記増粘工程における加熱温度は、ヒドロシリル化反応が進行する温度であればよく、使用する触媒や基質、溶媒により適宜調整することができる。好ましい加熱温度は、60~120℃であり、70~100℃であることがより好ましく、75~90℃であることが更に好ましい。
前記増粘工程における加熱時間は、使用する触媒や基質、加熱温度等に依存するが、例えば、プラチナ触媒濃度が200ppm、加熱温度が80℃のとき、30秒以上1,000秒未満であることが好ましく、100~800秒であることがより好ましく、200~700秒であることが特に好ましい。
また、前記増粘工程において、ヒドロシリル化反応を一部進行させることにより、前記有機溶媒溶液の相対粘度が、ヒドロシリル化反応前の値に対し、150~300%の値になるまで増粘させることが好ましい。
相対粘度の測定方法は、特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、Ostwald-Fenske粘度計を用いた溶液極限粘度法が好ましく例示できる。
また、極限粘度の測定方法も、特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、Ostwald-Fenske粘度計により測定することが好ましい。
前記加熱温度、加熱時間及び/又は相対粘度の変化が上記範囲であると、架橋膜とした場合にピンホールやボイド等の欠陥を防ぐことができ、また、前記希釈工程における希釈を容易に行うことができる。
【0031】
(希釈工程)
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法は、前記増粘工程により得られた有機溶媒溶液を、オルガノポリシロキサン濃度が6重量%以下の希薄溶液に調整する工程(希釈工程)を含む。
なお、「オルガノポリシロキサン濃度」とは、ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、ビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサン、及び、これらからヒドロシリル化反応により生成したものを合計した濃度をいう。
前記希薄溶液のオルガノポリシロキサン濃度は、6重量%以下であり、0.1~6重量%であることが好ましく、0.5~5.5重量%であることがより好ましく、2~5重量%であることがさらに好ましい。上記範囲であると、酸素窒素分離性に優れ、ピンホールやボイド等の欠陥のない架橋膜を十分薄い厚さで簡便、かつ、工業生産的に連続製造することができる。
また、前記増粘工程により得られた有機溶媒溶液のオルガノポリシロキサン濃度は6重量%以下である場合は、有機溶媒をさらに追加して希釈してもよく、また、希釈しなくてもよい。
有機溶媒溶液の希釈に使用する有機溶媒としては、前述の有機溶媒と同様のものを用いることができる。また、希釈に使用する有機溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で混合して用いてもよく、また、前記予備加熱工程により得られた有機溶媒溶液に用いられている有機溶媒と同じであっても、異なっていてもよい。
【0032】
(塗布工程)
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法は、前記希薄溶液を膜状に塗布する工程(塗布工程)を含む。
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、公知の方法を用いて膜状に塗布することができる。例えば、前記希薄溶液を用い溶媒キャスト法により膜状に塗布することができる。すなわち、前記希薄溶液を、ガラス板、テフロン(登録商標)板、クロムメッキ等により鏡面加工したステンレス板又はエンドレス状ベルトからなる支持体等の上に流延することにより、厚さが均一な膜状に塗布することができる。
また、本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜は、多孔質支持体膜上に希薄溶液を直接キャストして製膜し、複合膜として製造することもできる。
本発明に用いることができる多孔質支持体膜としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンやポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド等が例示できる。
前記多孔質支持体膜の厚みは、10~100μm、平均孔径は、10~250nmであることが好ましい。
また、前記希薄溶液を膜状に塗布した塗布膜の厚さとしては、乾燥膜厚が1μm以下となるように塗布することが好ましく、0.7μm以下がより好ましく、0.01~0.7μmが更に好ましく、0.02~0.7μmが特に好ましい。
【0033】
(反応工程)
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法は、前記希薄溶液を膜状に塗布した後、さらにヒドロシリル化反応を行う工程(反応工程)を含む。
前記反応工程におけるヒドロシリル化触媒の使用量は、ヒドロシリル化反応が進行すれば、特に制限はない。また、必要に応じ、前記増粘工程後、好ましくは塗布工程前に、さらにヒドロシリル化触媒を追加してもよい。
【0034】
前記反応工程における加熱手段は、特に制限はなく、公知の手段により膜状に塗布した希薄溶液を加熱すればよい。
前記反応工程における加熱温度は、ヒドロシリル化反応が進行する温度であればよく、使用する触媒や基質、溶媒により適宜調整することができる。好ましい加熱温度は、60~120℃であり、70~100℃であることがより好ましく、75~85℃であることが更に好ましい。
前記反応工程における加熱時間は、使用する触媒や基質、加熱温度、膜厚、溶液の濃度等に依存するが、ヒドロシリル化反応が進行すれば特に制限はなく、ヒドロシリル化反応がほぼ完了する長さの時間とすることが好ましい。好ましい加熱時間は、1~60分であり、10~30分であることがより好ましい。
【0035】
(除去工程)
本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の製造方法は、有機溶媒を除去しオルガノポリシロキサン架橋膜を得る工程(除去工程)を含む。
前記除去工程は、前記反応工程と同時に行ってもよく、前記反応工程後に行ってもよいが、工程の簡便化の点から、前記反応工程と同時に行うことが好ましい。
前記除去工程における溶媒除去手段は、塗布膜中の有機溶媒を除去することができれば特に制限はなく、公知の手段を用いることができ、例えば、前述した加熱手段による加熱や減圧下での溶媒留去、風乾等の手段が挙げられる。また、複数の手段を組み合わせて有機溶媒の除去を行ってもよい。
また、例えば、前述したような支持体上に塗布膜を形成した場合、完全に乾燥する前に支持体から引きはがし、二軸延伸して所望の乾燥厚さになるように乾燥し、架橋膜を得てもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
また、以下の実施例で用いる器具及び装置等は、特に断りのない限り、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、市販又は公知の器具及び装置を適宜用いることができる。
【0037】
(参考例1)
2液付加型RTVシリコーンゴムであるKE-103(信越化学工業(株)製)を用いて、コーティング溶液を15重量%イソオクタン溶液とし、硬化剤(CAT-103:信越化学工業(株)製)を5重量%の配合により調製し、この溶液に対してコーティング前に80℃で予備加熱を与えた。予備加熱の時間は30秒から720秒に変化させ、加熱後すぐにイソオクタンを必要量添加し全体の濃度を10重量%とした。調製したコーティング溶液に対して、80℃でそれぞれ所定時間予備加熱を与えてから、ポリスルホン(PSF)製の多孔膜支持体(モレキュラー・カットオフ=10,000、Ultra Filter:Advantec社製)に、キャスティングナイフを用いて塗布し、80℃にて15分間加熱乾燥を行った。加熱乾燥終了後、膜サンプルの酸素及び窒素透過性を測定した。また同様にして調製したKE-103コーティング溶液は、キャスト・シャーレ内にキャストし、厚み約1mm(1,000μm)のバルクフィルムの試料を製膜し、気体透過実験を行い、前記支持体上に本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜を設けた複合膜の架橋膜の膜厚計算に用いた。気体透過測定は体積法により、温度(T)22℃で供給側に50psigの圧力(P)をかけ、透過側に繋いだ石けん膜流量計により気体透過量を測定する方法を用いた。測定結果を表1及び図2に示す。
【0038】
【表1】
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【0039】
予備加熱時間が30秒の場合、ヒドロキシル化反応が進行しておらず、また、予備加熱時間が800秒以上になると、溶液にゲル化が始まるため、イソオクタンの希釈ができなかった。
【0040】
次に、予備加熱による部分架橋反応の影響を、塗布溶液の粘度を測定することにより検討した。極限粘度測定は、Ostwald-Fenske粘度計により、溶液極限粘度法によって測定した。その結果を表2及び図3に示す。
なお、表2及び図3中における極限粘度が0.4(dl/g),酸素/窒素分離係数が1.0である測定結果は、予備加熱を全く行わなかったサンプルの結果であり、この場合、欠陥なしのコーティングを行うことは不可能であった。
【0041】
【表2】
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【0042】
(オルガノポリシロキサンの分析)
実施例に使用した末端ビニル基を2個有するオルガノポリシロキサン及びヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンについて、それぞれ29SiNMR及びゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、分子量等を分析した。分析結果を以下の表3及び表4に示す。
【0043】
【表3】
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【0044】
【表4】
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【0045】
(実施例1)
ヒドロシリル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとビニル基を2個以上有するオルガノポリシロキサンとの混合比は、前記表及び表に記載の分析結果に基づき、ビニル基1molに対してヒドロシリル基が1molになるように調合し、さらにプラチナ錯体触媒(ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体)をポリシロキサンの全使用量に対し200ppmの濃度で加えた後、イソオクタンを加えて10重量%溶液とした。この溶液に対してコーティング前に80℃で300秒間予備加熱を与えた。加熱後すぐにイソオクタンを必要量添加し全体の濃度を5重量%あるいは2重量%とした。調製したコーティング溶液は、ポリスルホン(PSF)製の多孔膜支持体(モレキュラー・カットオフ=10,000、Ultra Filter:Advantec社製)に、キャスティングナイフを用いて又は用いずに塗布し、80℃にて15分間加熱乾燥を行った。加熱乾燥終了後、膜サンプルの酸素及び窒素透過性を測定した。
【0046】
また同様にして調製した各コーティング溶液は、キャスト・シャーレ内にキャストされ、厚み0.5~1mmのバルクフィルムの試料を製膜し、気体透過実験を行い、多孔膜支持体上に作製した架橋膜の見かけの膜厚の算出に用いた。
気体透過測定は、前述と同様に、体積法により、温度(T)22℃で供給側に50psigの圧力(P)をかけ、透過側に繋いだ石けん膜流量計により気体透過量を測定する方法を用いた。
また、分離機能層に何らかの欠陥(ピンホール等)が生じることにより、非多孔膜としての酸素窒素分離性を保てなくなる限界点を、非多孔膜における酸素窒素分離性値の、90%を保てなくなる点を限界点として評価した。この90%という値は、既存の気体膜分離システムにおいて、システムとしての初期性能と装置コスト(ランニングコスト)とのバランスを考慮した場合に、膜モジュールのプロセス評価に用いられる目安値でもある。
【0047】
ジメチルシロキシ鎖長の異なるDMS-V35、DMS-V42及びDMS-V52について、ヒドロシリル基含有量の最も多いHMS-301(9.59mol%)との組み合わせにおいて、膜の厚さを十分厚くした場合の22℃における酸素・窒素透過分離性の測定結果を下記表5に示す。いずれの架橋膜も酸素/窒素分離性の優れた膜として得られた。
【0048】
【表5】
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【0049】
最終濃度5重量%溶液によりコーティングを行ったサンプルについて、酸素窒素分離性の測定結果を、表6~8に示し、また、見かけの架橋膜の厚みに対してプロットした結果を、図4~6に示す。図4~6中、▲印はキャスティングナイフを使わずにコーティング調整したサンプルでの測定値を表し、●印は、キャスティングナイフにて膜厚調整し塗工したサンプルでの測定値を表す。いずれの塗工方法でも酸素窒素透過測定には差異影響がなかった。
【0050】
【表6】
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【0051】
【表7】
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【0052】
【表8】
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【0053】
DMS-V35とDMS-V42のサンプルにおいては、平均厚みが0.8~0.9μm付近より、酸素窒素分離性の落ち込みが始まっていることがわかる。これは塗工された架橋膜に、ピンホールなどの細孔ができ始め、結果として非多孔膜での分離性能を維持できなくなる、いわゆる膜欠陥の起こり始める限界であることが示唆される。一方、DMS-V52を用いた試料膜では、この膜欠陥の起こり始める限界厚みが、約0.6μm付近へとより薄い厚みへシフトしていることがわかる。
しかしながら、DMS-V52のサンプルにおいて塗工前の5重量%調整溶液の粘度が、他の二つのサンプル(DMS-V35及びDMS-V42)よりもかなり高い状態であった。このため、高粘度による塗工限界厚みへの影響の可能性を取り除くために、より薄い調整濃度2重量%で同様の実験を行った。その結果を表9~11及び図7~9に示す。
【0054】
【表9】
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【0055】
【表10】
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【0056】
【表11】
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【0057】
2重量%での塗工結果はDMS-V35とDMS-V42(表9(図7)及び表10(図8))とでは、5重量%の結果と同様に、推定平均厚みが0.8~0.9μm付近より、酸素窒素分離性の落ち込みが現れた。そしてDMS-V52(表11(図9))では5重量%の結果よりも薄い方向へシフトし、約0.4μm付近より酸素窒素分離性の落ち込みが現れた。
前記各サンプルにおける限界厚みを下記表12にまとめて示す。
【0058】
【表12】
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【0059】
(実施例2)
分子内の架橋点密度の酸素窒素分離性に対する影響を見るため、ヒドロシリル基の含有量が異なるジメチルポリシロキサンを用いて、架橋密度を変化させたジメチルポリシロキサン架橋膜を作製し、検討を行った。ビニル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンは分子量(Mw)34,200のDMS-V35を使用し、ヒドロシリル基を2個以上有するジメチルポリシロキサンは前記表2に示すHMS-031、HMS-071、HMS-151、HMS-301をそれぞれ使用し、予備加熱後の希薄溶液を5重量%のイソオクタン溶液とした以外は、実施例1と同様にオルガノポリシロキサン架橋膜を作製した。
オルガノポリシロキサン架橋膜での酸素窒素透過性及び酸素窒素分離性を測定した結果を表13に示す。また、その測定結果を、前記ジメチルポリシロキサン中のヒドロシリル基の濃度に対してプロットした結果を図10に示す。
【0060】
【表13】
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【0061】
酸素及び窒素透過流束は、ヒドロシリル基の濃度が1.54mol%より5.38mol%までは減少し、その後9.59mol%では増加する傾向が見られた。また、酸素窒素分離性は5.38mol%まで増加し、その後9.59mol%で減少した。
酸素窒素の透過性と分離性の関係において、ヒドロシリル基の濃度が増加する初期においては、高分子内の架橋点(架橋密度)が増加するに伴い透過性は減少し、また、透過性の減少は選択性の増加となって現れることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に用いることができる気体透過測定装置の一例の概略図である。
【図2】2液付加型RTVシリコーンゴムを用いた場合の予備加熱時間の変化による膜の酸素/窒素分離係数の変動を示す図である。
【図3】2液付加型RTVシリコーンゴムを用いた場合の予備加熱後の極限粘度の変化による膜の酸素/窒素分離係数の変動を示す図である。
【図4】DMS-V35とHMS-301とを使用し、5重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【図5】DMS-V42とHMS-301とを使用し、5重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【図6】DMS-V52とHMS-301とを使用し、5重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【図7】DMS-V35とHMS-301とを使用し、2重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【図8】DMS-V42とHMS-301とを使用し、2重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【図9】DMS-V52とHMS-301とを使用し、2重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【図10】DMS-V35と各種ヒドロシリル基含有オルガノポリシロキサンとを使用し、5重量%の希薄溶液として塗布して作製した本発明のオルガノポリシロキサン架橋膜の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
10:透過セル
12:試料膜
14:セルの供給側
16:セルの透過側
18:石けん膜流量計
20:圧力ゲージ
22:レギュレーター
24a,24b,24c,24d:ガスボンベ
26:パージバルブ
28a,28b:ストップバルブ
30:バルブ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9