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明細書 :光分解性ブロックコポリマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5435536号 (P5435536)
公開番号 特開2010-059322 (P2010-059322A)
登録日 平成25年12月20日(2013.12.20)
発行日 平成26年3月5日(2014.3.5)
公開日 平成22年3月18日(2010.3.18)
発明の名称または考案の名称 光分解性ブロックコポリマー
国際特許分類 C08G  65/333       (2006.01)
C08G  73/00        (2006.01)
FI C08G 65/333
C08G 73/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 15
出願番号 特願2008-227149 (P2008-227149)
出願日 平成20年9月4日(2008.9.4)
審査請求日 平成23年8月29日(2011.8.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
発明者または考案者 【氏名】山口 和夫
【氏名】伊藤 倫子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000545、【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
審査官 【審査官】大木 みのり
参考文献・文献 国際公開第2006/138572(WO,A1)
特表2003-510375(JP,A)
特表2005-509054(JP,A)
特開2000-345191(JP,A)
特表2008-544046(JP,A)
調査した分野 C08G 65/00 - 67/04
C08G 73/00 - 73/26
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする光分解性ブロックコポリマー。
JP0005435536B2_000021t.gif
・・・(1)
ここで、nはエチレンオキシドの繰り返し単位数、m-1はプロピレンオキシドの繰り返し単位数である
【請求項2】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする光分解性ブロックコポリマー。
JP0005435536B2_000022t.gif
・・・(2)
ここで、nはエチレンオキシドの繰り返し単位数、m-1はプロピレンオキシドの繰り返し単位数である。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、親水性のブロックと疎水性のブロックから構成される両親媒性ブロックコポリマーにおいて、ブロック間を光照射により容易に分解することが可能な新規な光分解性ブロックコポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
親水性のブロックと疎水性のブロックから構成される両親媒性ブロックコポリマーは、構成成分であるポリマーの種類や鎖長に応じて様々な性質を有する。例えば、水溶液中では、外殻に親水性ブロックが配向し、疎水性ブロックが内部に存在するように分子が集合したミセル構造や二重膜となったポリマーソーム構造を形成することが知られている。さらに、その特徴を利用して様々な応用に用いられている。
【0003】
下記の親水性のポリエチレンオキシド鎖(PEO)(A)で疎水性のポリプロピレンオキシド鎖(PPO)(B)を挿み込んだABA型や、疎水性のポリプロピレンオキシド鎖(PPO)(B)で親水性のポリエチレンオキシド鎖(PEO)(A)を挿み込んだBAB型の両親媒性トリブロックコポリマーがBASF社より市販されている(非特許文献1)。
【0004】
【化1】
JP0005435536B2_000002t.gif



両親媒性トリブロックコポリマー:
PEO-PPO-PEO , PPO-PEO-PPO
【0005】
このトリブロックコポリマーは、ポリプロピレンオキシドの分子量に対するポリエチレンオキシドの含有量において様々な種類が存在し、その形状(液体、粘体、固体)や性質も異なる。また、その種類に応じて集合体においても様々な形状をとることが報告されている(非特許文献2)。
【0006】
特に、上述した両親媒性トリブロックコポリマーは、水溶液中で自己集合してポリマーミセルを形成することから、例えば、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究に用いられている(非特許文献3)。ミセルの内側が疎水的で外側が親水的な環境となっているため、ミセル内部に疎水的な薬剤を保持させることができ、薬剤などのミセルキャリアーとして有用である。
【0007】
また、ポリエチレンオキシドの細胞非接着性を利用した細胞接着阻害コート剤としての研究も行われている(非特許文献4)。細胞培養容器として、一般にポリスチレン製の容器が使われている。ポリプロピレンオキシドは疎水性相互作用によりポリスチレン等と物理吸着して、ポリエチレンオキシドが最表面に存在するので、細胞の接着を阻害できる。
【0008】
この両親媒性トリブックコポリマーは非イオン界面活性剤であり、生体毒性が極めて低いため、その用途は多岐にわたり、工業、医薬、香料、化粧品工業など様々な分野で、防腐剤、洗浄剤、添加剤などに用いられる有用な材料である。
【0009】

【非特許文献1】”PLUEONIC and PRUEONIC R Block Copolmer Surfactants" [online],1998-2007,BASF,[平成20年8月15日検索],インターネット(http://www.basf.com/performancechemical/bcperfabout.html)
【非特許文献2】Xuemei Liang, Guangzhao Mao, K.Y. Simon Ng, Journal of Colloid and Interface Science, 2005, 285, 360-372
【非特許文献3】Keun Sang Oh, Ree Sun Kim, Jinho Lee, Dongmin Kim, Sun Hang Cho, Soon Hong Yuk, Journal of Applied Polymer Science, 2008, 108, 3239-3244
【非特許文献4】Valerie A. Liu, William E. Jastromb, Sangeeta N. Bhatia, Journal of Biomedical Materials Research, 2002, 60, 126-134
【非特許文献5】Muhammad N. Yousaf, Benjamin T. Houseman, Milan Mrksich, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 2001, 98, 5992-5996
【非特許文献6】Kevin K. Parker, Amy L. Brock, Cliff Brangwynne, Robert J. Mannix, Ning Wang, Emanuele Ostuni, Nicholas A. Geisse, Josephine C. Adams, George M. Whitesides, Donald E. Ingber, The FASEB Journal, 2002, 16, 1195-1204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ミセルキャリアーとしてドラッグデリバリーシステムに用いるには、薬剤の運搬だけではなく、目的地に到達した後には薬剤を放出することが重要となる。光で崩壊するポリマーミセルを形成すれば、任意の時に任意の場所で、容易に内包物を放出することが可能となる。さらに、照射する光量を調節することで、内容物を徐放することも可能である。
【0011】
また、光分解性ブロックコポリマーを細胞接着阻害コート剤として使用した場合、細胞の非接着あるいは接着領域を制御することが可能となる。すなわち、光分解性ブロックコポリマーをコートした基板は細胞非接着性であるが、光照射により光分解性基の部位でポリエチレンオキシド鎖を切断すると細胞接着性に変換できる。特定領域へ選択的に光照射を行うことで、細胞接着性を制御したパターン基板を形成することができる。細胞の接着領域を制御した基板作製の技術は、1細胞レベルでの細胞-細胞相互作用の研究や細胞チップ作製のために必要とされている(非特許文献5、非特許文献6)。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、親水性のポリエチレンオキシド鎖(PEO)と疎水性のポリプロピレンオキシド鎖(PPO)とからなる両親媒性ブロックコポリマー(トリブロックコポリマーとしては、PEO-PPO-PEO、又は、PPO-PEO-PPO)のPEOとPPOとの間に光分解性基を導入し、光照射によりブロック間を容易に分解させることが可能な新規な光分解性ブロックコポリマーを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するために、本発明に係る光分解性ブロックコポリマーは、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとを交互に配設した両親媒性ブロックコポリマーであって、隣り合う前記ポリエチレンオキシドと前記ポリプロピレンオキシドとの間に光分解性基を含むことを特徴としている。
【0014】
ここで、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとを交互に配設した両親媒性ブロックコポリマーは、ポリエチレンオキシドでポリプロピレンオキシドを挿み込んだ両親媒性トリブロックコポリマー、又は、ポリプロピレンオキシドでポリエチレンオキシド挿み込んだ両親媒性トリブロックコポリマーであることが実用的である。また、光分解性基としては、2-ニトロベンジル誘導体を用いることが好ましい。
【0015】
例えば、ポリエチレンオキシドでポリプロピレンオキシドを挿み込んだ両親媒性トリブロックコポリマーとしては、下記一般式(1)で表される両親媒性トリブロックコポリマーや、下記一般式(2)で表される両親媒性トリブロックコポリマーが考えられる。
【化2】
JP0005435536B2_000003t.gif

・・・(1)
JP0005435536B2_000004t.gif
・・・(2)
ここで、nはエチレンオキシドの繰り返し単位数、m-1はプロピレンオキシドの繰り返し単位数である。
【0016】
このような両親媒性トリブロックコポリマーの合成法としては、光分解性基を有する末端アルキン化PEOと両末端アジド化PPOとのクリックケミストリーによる合成、光分解性基を有する末端イミダゾール化PEOと両末端アミノ化PPOとのカップリング反応による合成、光分解性基を有する末端活性カーボネート化PEOと両末端アミノ化PPOとのカップリング反応による合成等が考えられるが、末端アルキン化PEOと両末端アジド化PPOとのクリックケミストリーによる合成が効果的である。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明に係る光分解性ブロックコポリマーによれば、ミセルキャリアーとしてドラッグデリバリーシステムに用いた場合には、薬剤の運搬だけではなく、目的地に到達した後に光照射により薬剤を放出することが可能となる。すなわち、任意の時に任意の場所で、容易に内包物を放出することが可能となる。さらに、照射する光量を調節することで、内容物を徐放することも可能となる。
【0018】
また、光分解性ブロックコポリマーを細胞接着阻害コート剤として使用した場合には、細胞の非接着あるいは接着領域を制御することが可能となる。すなわち、光分解性ブロックコポリマーをコートした基板は細胞非接着性であるが、光照射により光分解性基の部位でポリエチレンオキシド鎖を切断すると細胞接着性に変換できる。また、特定領域へ選択的に光照射を行うことで、細胞接着性を制御したパターン基板を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施形態を説明する。
【0020】
本発明の光分解性ブロックコポリマーは、親水性のポリエチレンオキシド(PEO):Aと疎水性のポリプロピレンオキシド(PPO):Bとが交互に光分解性基(PDL)で連結されたブロックコポリマーであって、トリブロックコポリマーを考えた場合には、ABA型(PEO-PDL-PPO-PDL-PEO)、又は、BAB型(PPO-PDL-PEO-PDL-PPO)の両親媒性トリブロックコポリマーであり、光照射によりブロック間に介在された光分解性基(PDL)を容易に分解することができるようにしたものである。
【0021】
このような光分解性トリブロックコポリマーのABA型の例としては、下記一般式(1)で表される光分解性ブロックコポリマーや、下記一般式(2)で表される光分解性ブロックコポリマーが考えられる。
【化3】
JP0005435536B2_000005t.gif

・・・(1)
JP0005435536B2_000006t.gif
・・・(2)
ここで、nはエチレンオキシドの繰り返し単位数、m-1はプロピレンオキシドの繰り返し単位数である。
【0022】
光分解性基は、光照射により離脱する任意の基をいい、例えば、2-ニトロベンジル誘導体骨格を有する基、ジメトキシベンゾイン基、2-ニトロピペロニルオキシカルボニル(NPOC)基、2-ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)基、α-メチル-2-ニトロピペロニルオキシカルボニル(MeNPOC)基、α-メチル-2-ニトロベラトリルオキシカルボニル(MeNVOC)基、2,6-ジニトロベンジルオキシカルボニル(DNBOC)基、α-メチル-2,6-ジニトロベンジルオキシカルボニル(MeDNBOC)基、1-(2-ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル(NPEOC)基、1-メチル-1-(2-ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル(MeNPEOC)基、9-アントラセニルメチルオキシカルボニル(ANMOC)基、1-ピレニルメチルオキシカルボニル(PYMOC)基、3′-メトキシベンゾイニルオキシカルボニル(MBOC)基、3′,5′-ジメトキシベンゾイルオキシカルボニル(DMBOC)基、7-ニトロインドリニルオキシカルボニル(NIOC)基、5,7-ジニトロインドリニルオキシカルボニル(DNIOC)基、2-アントラキノニルメチルオキシカルボニル(AQMOC)基、α,α-ジメチル-3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、5-ブロモ-7-ニトロインドリニルオシキカルボニル(BNIOC)基等を挙げることができるが、2-ニトロベンジル誘導体骨格を有する基が特に好ましい。
【0023】
上述したABA型トリブロックコポリマーの合成法としては、以下のアジドとアルキンのクリックケミストリー、又は、アミンと活性エステルのカップリングが考えられるが、光分解性基を有する末端アルキン化PEOと両末端アジド化PPOとのクリックケミストリーによる合成が特に有用である。
【0024】
1.光分解性基を有する末端アルキン化PEOと両末端アジド化PPOとのクリックケミストリーによる合成
【化4】
JP0005435536B2_000007t.gif

【0025】
2.光分解性基を有する末端イミダゾール化PEOと両末端アミノ化PPOとのカップリング反応による合成
【化5】
JP0005435536B2_000008t.gif

【0026】
3.光分解性基を有する末端活性カーボネート化PEOと両末端アミノ化PPOとのカップリング反応による合成
【化6】
JP0005435536B2_000009t.gif

【実施例】
【0027】

以下において、一例として、光分解性基を有する末端アルキン化PEOと両末端アジド化PPOとのクリックケミストリーによる光分解性ABA型トリブロックコポリマー(PEO5000-PDL-PPO3000-PDL-PEO5000)の合成例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、純水とはイオン交換蒸留水を指す。
本実施例では、図1に示される工程により合成した。
【0028】
先ず、光分解性リンカー(PDL)をステップ1~4にて合成した。
(ステップ1)4-ベンジルオキシ-3-メトキシアセトフェノンの合成
500 mLナスフラスコに4-ヒドロキシ-3-メトキシアセトフェノン 16.6 g (0.100 mol)、アセトン 100 mL、臭化ベンジル 14.0 g (0.100 mol)、炭酸カリウム 14.0 g (0.101 mol)を入れ、4時間還流した。これを濃縮して、純水 200 mLを入れ、クロロホルム(100 mL×4)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。アセトンに溶解し、氷浴上において再沈殿(ヘキサン)し、白色固体(4-ベンジルオキシ-3-メトキシアセトフェノン) 22.1 g (86.2 mmol)を得た(化7)。
【化7】
JP0005435536B2_000010t.gif

上記合成で得られた4-ベンジルオキシ-3-メトキシアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield: 22.1 g (86.2 mmol, 86%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 2.55 (3H, s) O=C-CH3
3.95 (3H, s) CH3O-
5.24 (2H, s) Ph-CH2-O-
6.89 (1H, d, J = 8.4 Hz) Ar-H
7.29-7.47 (5H, m) Ph-CH2-O-
7.50 (1H, dd, J = 8.4, 2.0 Hz) Ar-H
7.55 (1H, d, J = 2.0 Hz) Ar-H
IR (KBr): 1670 cm-1 (C=O)
【0029】
(ステップ2)4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノンの合成
次に、氷浴上で500 mLナスフラスコに4-ベンジルオキシ-3-メトキシアセトフェノン 20.0 g (77.1 mmol)、酢酸 200 mL、発煙硝酸 20 mLを加え、氷浴上で終夜撹拌した。純水 200 mL加えて15分撹拌した後、吸引ろ過、抽出(クロロホルム 300mL)、再結晶(アセトン:ヘキサン=2:1~3:1)、真空乾燥を行い、黄色固体(4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン) 15.1 g (50.2 mmol)を得た(化8)。
【化8】
JP0005435536B2_000011t.gif

上記合成で得られた4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield: 15.1 g (50.2 mmol, 65%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 2.49 (3H, s) O=C-CH3
3.98 (3H, s) CH3O-
5.22 (2H, s) Ph-CH2-O-
6.77 (1H, s) Ar-H
7.33-7.50 (5H, m) Ph-CH2-O-
7.67 (1H, s) Ar-H
IR (KBr): 1700 cm-1 (C=O), 1518 cm-1(NO2), 1337 cm-1 (NO2)
【0030】
(ステップ3)4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノンの合成
次に、300 mLナスフラスコに4-ベンジルオキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン 12.0 g (46.8 mmol)、トリフルオロ酢酸 120 mLを入れ、室温で終夜撹拌した。これを濃縮し、飽和炭酸水素ナトリウム水 250 mL、2N 塩酸 20 mLを加え、酢酸エチル(200 mL×4)で抽出、濃縮し、再結晶(酢酸エチル)、真空乾燥により黄色結晶(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン) 6.11 g (29.0 mmol)を得た(化9)。
【化9】
JP0005435536B2_000012t.gif

上記合成で得られた4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield: 6.11 g (29.0 mmol, 73%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 2.49 (3H, s) O=C-CH3
4.02 (3H, s) CH3O-
5.98 (1H, s) Ar-OH
6.80 (1H, s) Ar-H
7.67 (1H, s) Ar-H
IR (KBr): 3152 cm-1 (OH), 1656 cm-1(C=O), 1531 cm-1 (NO2), 1334 cm-1 (NO2)
【0031】
(ステップ4)1-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノールの合成
次に、氷浴上で300 mLナスフラスコに4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロアセトフェノン3.02 g (14.2 mmol)、テトラヒドロフラン 70 mL、水素化ホウ素ナトリウム 2.29 g (60.3 mmol)を入れて30分間撹拌し、さらに室温で3時間撹拌した。これを濃縮、純水 100 mLを加え、酢酸エチル(200 mL×3)で抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、真空乾燥を行い、黄色固体(1-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール) 3.04 g (14.2 mmol)を得た(化10)。
【化10】
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上記合成で得られた1-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノールの同定結果を以下に示す。
Yield: 3.04 g (14.2 mmol, 100%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 1.55 (3H, d, J = 6.3 Hz) -CH-CH3
4.03 (3H, s) CH3O-
5.52 (1H, q, J = 6.3 Hz) -CH-CH3
5.71 (1H, s) Ar-OH
7.29 (1H, s) Ar-H
7.61 (1H, s) Ar-H
IR (KBr): 3477 cm-1 (OH of phenol), 3237 cm-1 (OH of ethanol), 1522 cm-1 (NO2), 1343 cm-1 (NO2)
【0032】
次に、末端アルキン化PEO(PEO5000)をステップ5~7にて合成した。
(ステップ5)mPEG5000-OTs (Mn 5000)の合成
30 mLナスフラスコにmPEG5000(Mn 5000) 1.00 g (0.200 mmol)、塩化p-トルエンスルホニル 1.17 g (6.00 mmol)、トリメチルアミン塩酸塩 0.2 g (2.0 mmol)を加え、真空下で10分間乾燥させた。窒素気流下、テトラヒドロフラン 18 mLを加え、0 ℃に冷却し、トリエチルアミン 0.85 g (8.4 mmol)加えた。0 ℃で2時間、室温で20時間撹拌した。濃縮後、塩化メチレンに溶かして再沈殿(エーテル)し、得られた固体に純水 100 mLを加えて塩化メチレン (100 mL×3)で抽出、飽和食塩水 (100 mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、塩化メチレンに溶かして再沈殿(エーテル)し、吸引ろ過、真空乾燥し、白色固体(mPEG5000-OTs (Mn 5000)) 0.88 g (0.16 mmol)を得た(化11)。
【化11】
JP0005435536B2_000014t.gif

上記合成で得られたmPEG5000-OTs (Mn 5000)の同定結果を以下に示す。
Yield: 0.88 g (0.16 mmol, 81%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 2.45 (3H, s) Ar-CH3
3.38 (3H, s) CH3OCH2CH2-
3.54-3.71 (446H, m) -(OCH2CH2)111-OCH2CH2-OTs
4.16 (2H, t, J= 5.1 Hz) -OCH2CH2-OTs
7.35 (2H, d, J = 8.0 Hz) Ar-H
7.80 (2H, d, J = 8.0 Hz) Ar-H
【0033】
(ステップ6)mPEG5000-PDL (Mn 5000)の合成
次に、窒素気流下で30 mL二口ナスフラスコに1-(4-ヒドロキシ-5-メトキシ-2-ニトロフェニル)エタノール 0.050 g (0.24 mmol)、ジメチルホルムアミド 3.0 mL、炭酸カリウム 0.07 g (0.48 mmol)を加えて室温で撹拌し、次いでmPEG5000-OTs (Mn 5000) 0.60 g (0.12 mmol)、ジメチルホルムアミド 10 mLを加えて80 ℃で終夜撹拌した。反応溶液を再沈殿(エーテル)後、得られた固体に純水 100 mLを加え、クロロホルム(100 mL×3)で抽出、飽和食塩水(200 mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮した。テトラヒドロフランに溶かして再沈殿(エーテル)し、吸引ろ過、真空乾燥し、淡黄色固体(mPEG5000-PDL (Mn 5000)) 0.38 g (0.076 mmol)を得た(化12)。
【化12】
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上記合成で得られたmPEG5000-PDL (Mn 5000)の同定結果を以下に示す。
Yield: 0.38 g (0.076 mmol, 60%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 1.54 (3H, d, J = 6.3 Hz) CH3-CH-OH
3.38 (3H, s) CH3-OCH2CH2-
3.52-3.76 (444H, m) -(OCH2CH2)111-
3.91 (2H, t, J = 4.8 Hz) -OCH2CH2O-Ar
3.97 (3H, s) CH3O-Ar
4.24 (2H, t, J = 4.8 Hz) -OCH2CH2O-Ar
5.56 (1H, q, J = 6.3 Hz) CH3-CH-OH
7.32 (1H, s) Ar-H
7.65 (1H, s) Ar-H
【0034】
(ステップ7)mPEG5000-PDL-alkyne (Mn 5000)の合成
次に、室温において100 mL二口ナスフラスコに1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl) 0.08 g (0.4 mmol)、mPEG5000-PDL (Mn 5000) 0.30 g (0.060 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP) 0.04 g (0.3 mmol)を加え30分間真空乾燥し、氷浴上、窒素気流下においてテトラヒドロフラン 15 mL、5-ヘキシン酸 0.02 g (0.2 mmol)を加え、窒素雰囲気下とし、室温で終夜撹拌した。これを濃縮し、クロロホルムに溶かし再沈殿(エーテル)、純水 100 mL、抽出(クロロホルム 100 mL×3)、洗浄(5% 炭酸水素ナトリウム150 mL×3)、無水硫酸マグネシウムで乾燥、濃縮、クロロホルムに溶かし再沈殿(エーテル)、吸引ろ過し、真空乾燥を行い、淡黄色固体(mPEG5000-PDL-alkyne (Mn 5000)) 0.22 g (0.044 mmol)を得た(化13)。
【化13】
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上記合成で得られたmPEG5000-PDL-alkyne (Mn 5000)の同定結果を以下に示す。
Yield: 0.22 g (0.044 mmol, 70%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 1.62 (3H, d, J = 6.4 Hz) CH3-CH-O-
1.84 (2H, m) CO-CH2-CH2-CH2-C≡CH
1.98 (1H, t, J = 2.6 H) CO-CH2-CH2-CH2-C≡CH
2.24 (2H, m) CO-CH2-CH2-CH2-C≡CH
2.50 (2H, m) CO-CH2-CH2-CH2-C≡CH
3.38 (3H, s) CH3-OCH2CH2-
3.53-3.75 (444H, m) -(OCH2CH2)111-
3.91 (2H, t, J = 4.8 Hz) -OCH2CH2O-Ar
3.96 (3H, s) CH3O-Ar
4.24 (2H, t, J = 4.8 Hz) -OCH2CH2O-Ar
6.48 (1H, q, J = 6.4 Hz) CH3-CH-O-
7.00 (1H, s) Ar-H
7.65 (1H, s) Ar-H
【0035】
次に、両末端アジド化PPO(PPO3000)をステップ8~9にて合成した。
(ステップ8)TsO-PPO3000-OTs (Mn 3000)の合成
先ず、窒素気流下で100 mL二口ナスフラスコにポリプロピレングリコール・ジオール型(PPO3000 (Mn 3000)) 0.84 g (0.28 mmol)、テトラヒドロフラン 50 mL、塩化p-トルエンスルホニル 3.29 g (17.2 mmol)、トリメチルアミン塩酸塩 0.55 g (5.7 mmol)を加えて撹拌した。反応溶液を0℃に冷却した後、トリエチルアミン 10.4 g (103 mmol)を加え2時間撹拌し、さらに室温で20時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、純水 100 mLを加え、クロロホルム (100 mL×3)で抽出後、有機層を飽和食塩水 (100 mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=98:2→95:5)にて精製、濃縮、真空乾燥し、茶色粘体(TsO-PPO3000-OTs (Mn 3000)) 0.67 g (0.22 mmol)を得た(化14)。
【化14】
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上記合成で得られたTsO-PPO3000-OTs (Mn 3000)の同定結果を以下に示す。
Yield: 0.67 g (0.22 mmol, 80%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 0.95-1.35 (153H, m) CH3-CH
2.44 (6H, s) Ar-CH3
3.19-3.80 (153H, m) -CH-CH2-
7.32 (4H, d, J = 8.0 Hz) Ar-H
7.81 (4H, d, J = 8.0 Hz) Ar-H
【0036】
(ステップ9)N3-PPO3000-N3 (Mn 3000)の合成
次に、窒素気流下で50 mL二口ナスフラスコにTsO-PPO3000-OTs (Mn 3000) 0.56g (0.17 mmol)、アジ化ナトリウム 0.26 g (4.1 mmol)、ジメチルホルムアミド 14 mLを加え、室温で4日間撹拌した。反応溶液を減圧留去し、純水 100 mLを加え、酢酸エチル(100 mL×3)で抽出、次いで有機層を飽和食塩水(100 mL×3)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、茶色体粘体(N3-PPO3000-N3 (Mn 3000)) 0.43 g (0.14 mmol)を得た(化15)。
【化15】
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上記合成で得られたN3-PPO3000-N3 (Mn 3000)の同定結果を以下に示す。
Yield: 0.43 g (0.14 mmol, 83%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 0.95-1.34 (153H, m) CH3-CH
3.18-3.78 (153H, m) -CH-CH2-
IR (NaCl): 2104 cm-1 (N3)
【0037】
次に、光分解性基を有する末端アルキン化PEOと両末端アジド化PPOとのクリックケミストリーによる光分解性ABA型トリブロックコポリマー(PEO5000-PDL-PPO3000-PDL-PEO5000)をステップ10にて合成した。
【0038】
(ステップ10)mPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000(Mn 13000)の合成
50 mL二口ナスフラスコにmPEG5000-PDL-alkyne (Mn 5000) 0.16 g (0.032 mmol)、臭化銅(I)0.024 g (0.17 mmol)を加えて30分間真空乾燥し、氷浴上、窒素気流下でN3-PPO3000-N3 (Mn 3000) 0.050 g (0.017 mmol)、ジメチルホルムアミド 10 mLを加えて10分間撹拌し、続いて1,1,4,7,7-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA) 0.040 mL (0.12 mmol)を加えて室温で終夜撹拌した。反応溶液を再沈澱(エーテル)、吸引ろ過し、得られた固体を塩化メチレン 30 mLに溶解して0.065M エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA-Na)水溶液 (30 mL×5)で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過、濃縮、再沈殿(エーテル)、吸引ろ過して真空乾燥し、茶色固体(mPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000(Mn 13000))0.080 gを得た(化16)。
【化16】
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上記合成で得られた mPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000(Mn 13000)の同定結果を以下に示す。
Crude: 0.080 g
1H-NMR (400 MHz, CDCl3/ TMS)
δ = 1.06-1.22 (153H, m) CH3-CHCH2O-
2.01 (4H, m) CO-CH2-CH2-CH2-C-N
2.43 (4H, m) CO-CH2-CH2-CH2-C-N
2.74 (2H, t, J = 7.6 Hz) CO-CH2-CH2-CH2-C-N
3.38 (3H, s) CH3-OCH2CH2-
3.31-3.84 (1041H, m) -OCH2CH2-, -CHCH2-
3.90 (4H, t, J = 4.9 Hz) -OCH2CH2O-Ar
3.94 (6H, s) CH3O-Ar
4.23 (4H, t, J = 4.9 Hz) -OCH2CH2O-Ar
6.47 (2H, q, J = 6.4 Hz) CH3-CH-O-
7.02 (2H, s) Ar-H
7.64 (2H, s) Ar-H
【0039】
以上の工程で得られたmPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000(Mn 13000)の光分解性を調べるために、mPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000(Mn 13000) 1.74 mgをテトラヒドロフラン 3.4 mLに溶解して石英セルに入れ、超高圧水銀灯で、320 nm以下の波長の光を遮断する硫酸銅フィルターを通して一定時間ごとに光照射し(波長 > 320 nm、光量 100 mW/ cm2)、UV測定を行った。
光分解は次式のようになされ、図2に示すUVスペクトルより、時間と共に光分解が進行していることが確認された。約3分半で光分解が終了した。
【化17】
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【0040】
上述のクリックケミストリーによる工程で得られたmPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000をミセルキャリアーとしてドラッグデリバリーシステムに用いる場合には、水溶液中で疎水性ブロックが内部に集合したポリマーミセルを形成してその内部に疎水的な薬剤を保持させて所望の場所まで運搬し、その後、図3に示されるように、光照射により光分解性基を分解することで、容易に内包物を放出することが可能となる。しかも、照射する光量を調節することで、内容物を徐放することも可能となる。
【0041】
また、光分解性ブロックコポリマーを細胞接着阻害コート剤として使用する場合には、細胞の非接着あるいは接着領域を制御することが可能となる。すなわち、光分解性ブロックコポリマーをコートした基板は細胞非接着性であるが、図4に示されるように、光照射により光分解性基の部位でポリエチレンオキシド鎖を切断すると細胞接着性に変換できる。即ち、特定領域へ選択的に光照射を行うことで、細胞接着性を制御したパターン基板を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、(PEO5000-PDL-PPO3000-PDL-PEO5000)を合成する過程を示す図である。
【図2】図2は、図1の合成で得られたmPEG5000-PDL-PPO3000-PDL-mPEG5000(Mn 13000)に光照射し、UV測定を行った結果を示す図である。
【図3】図3は、光で崩壊するポリマーミセルを形成して、光照射により任意の時に任意の場所で内包物を放出する例を示す模式図である。
【図4】図4は、光分解性ブロックコポリマーをコートした基板に、光照射により光分解性基の部位でポリエチレンオキシド鎖を切断すると細胞接着性に変換できる例を示す模式図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3