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明細書 :リン酸二水素ナトリウムを含む放射性廃液の固化処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4787997号 (P4787997)
公開番号 特開2010-223662 (P2010-223662A)
登録日 平成23年7月29日(2011.7.29)
発行日 平成23年10月5日(2011.10.5)
公開日 平成22年10月7日(2010.10.7)
発明の名称または考案の名称 リン酸二水素ナトリウムを含む放射性廃液の固化処理方法
国際特許分類 G21F   9/16        (2006.01)
FI G21F 9/16 511A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2009-069551 (P2009-069551)
出願日 平成21年3月23日(2009.3.23)
審査請求日 平成21年12月1日(2009.12.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】堀口 賢一
【氏名】菅谷 篤志
【氏名】田中 憲治
個別代理人の代理人 【識別番号】100139114、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 貞嗣
【識別番号】100092495、【弁理士】、【氏名又は名称】蛭川 昌信
【識別番号】100139103、【弁理士】、【氏名又は名称】小山 卓志
【識別番号】100095980、【弁理士】、【氏名又は名称】菅井 英雄
【識別番号】100094787、【弁理士】、【氏名又は名称】青木 健二
【識別番号】100097777、【弁理士】、【氏名又は名称】韮澤 弘
【識別番号】100091971、【弁理士】、【氏名又は名称】米澤 明
【識別番号】100119220、【弁理士】、【氏名又は名称】片寄 武彦
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 特開昭62-201399(JP,A)
特開2005-207885(JP,A)
特開平02-207940(JP,A)
特開昭63-115099(JP,A)
特開昭62-233799(JP,A)
特表2002-521308(JP,A)
岩田将幸 他6名,「低放射性リン酸廃液安定化処理に関する基礎研究 リン酸塩の不溶化に関する試験」,日本原子力学会2008年秋の大会予稿集,日本,社団法人日本原子力学会,2008年 8月21日,L21
調査した分野 G21F 9/00 - 9/36
JSTPlus(JDreamII)
JST7580(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
リン酸二水素ナトリウムを含む放射性廃液に酸化マグネシウムを添加しつつ混練する工程を有することを特徴とする放射性廃液の固化処理方法。
【請求項2】
添加する酸化マグネシウムは酸化マグネシウム軽質であることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法。
【請求項3】
添加する酸化マグネシウムは酸化マグネシウム重質であることを特徴とする請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法。
【請求項4】
添加する酸化マグネシウムと放射性廃液中のリン酸二水素ナトリウムの比が、モル比換算(MgO/NaH2PO4)で0.5~1.0であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の放射性廃液の固化処理方法。
【請求項5】
酸化マグネシウムを添加するときの放射性廃液の温度を20℃~80℃とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の放射性廃液の固化処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み燃料の再処理において発生するリン酸二水素ナトリウム(NaH2
PO4)を含む放射性廃液の固化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核燃料の再処理においては、使用済み燃料を硝酸で溶解した後、ウラン、プルトニウム等を回収している。このための処理方法として、ピューレックス(PUREX)法が実用化されている。ピューレックス法では、溶媒としてリン酸トリブチル(TBP)を使用する。このTBPをドデカン(希釈剤)に溶かした有機溶媒を、使用済み燃料を溶かした硝酸溶液に混ぜると、ウランとプルトニウムは溶媒側に移り、核分裂生成物の大部分は硝酸溶液に残る。これを利用してウラン及びプルトニウムと核分裂生成物とを分離することができる。
【0003】
上記のようにウラン及びプルトニウムの回収のために用いられたTBPを含む有機溶媒には、85%のリン酸(H3PO4)溶液が加えられる。これによって、TBPとリン酸とで付加体が形成され、この付加体をドデカンと分離することが可能となる。なお、分離されたドデカンは希釈剤として上記の処理で再利用される。
【0004】
一方、TBPとリン酸とで形成された付加体にはさらに純水が加えられ、TBPとリン酸とに分離される。前者はプラスチックとともに溶融混合してプラスチック固化処理され、後者は中性化するためにNaOHが加えられリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)溶液とされ、さらに減容のために水分を蒸発させ、およそ30wt%程度のリン酸二水素ナトリウム溶液(以下、この溶液を「放射性廃液」という)とされる。
【0005】
このような放射性廃液の処分法としては、例えばセメントを加えて固化する方法を挙げることできる。しかしながら、セメントによる固化では、放射性廃液の投入量が多いと、リン酸イオンの存在によりセメントの水和反応が阻害されるため、固化体が十分に硬化しないなどの問題がある。そこで、このような問題を解決のため、特許文献1(特開平10-132997号公報)には、放射性廃液にアルカリ土類金属化合物を添加して主成分を不溶化し、次いで脱水処理した後、得られた粉末またはスラリーにセメント系の水硬性無機固化材を混合して固化する方法が提案されている。
【0006】
また、セメントによらない固化方法としては、特許文献2(特開2005-207885号公報)に、酸化マグネシウム(MgO)、リン酸塩(P25)及び放射性廃液を混合した後、加熱溶融し、次いで冷却固化するリン酸マグネシウム系ガラスを用いた固化処理方法が提案されている。

【特許文献1】特開平10-132997号公報
【特許文献2】特開2005-207885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、不溶化された成分を含む放射性廃液を脱水するための特殊な加熱装置が必要であり、処理コスト上昇の要因となるなどの問題があった。また、固形化のために別途セメント系の水硬性無機固化材を添加する必要があるため充填できる放射性廃液の重量が減少し、その結果、処理効率の高い固化体を作製することができず、処分費用が増大する、という問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の方法では、原料と放射性廃液の混合物を1300℃程度の高温で加熱溶融する必要があるなど、手間のかかる工程を要するなどの問題があった。また、混合物を加熱溶融する工程では、例えばヨウ素などの放射性核種が揮発する恐れがあり、これを管理するための処置なども必要となるので、処理コストが上昇し問題であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような問題点を解決するために、請求項1に係る発明は、リン酸二水素ナトリウムを含む放射性廃液に酸化マグネシウムを添加しつつ混練する工程を有することを特徴とする放射性廃液の固化処理方法である。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法において、添加する酸化マグネシウムは酸化マグネシウム軽質であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の放射性廃液の固化処理方法において、添加する酸化マグネシウムは酸化マグネシウム重質であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の放射性廃液の固化処理方法において、添加する酸化マグネシウムと放射性廃液中のリン酸二水素ナトリウムの比が、モル比換算(MgO/NaH2PO4)で0.5~1.0であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の放射性廃液の固化処理方法において、酸化マグネシウムを添加するときの放射性廃液の温度を20℃~80℃とすることを特徴とする。

【発明の効果】
【0015】
本発明の放射性廃液の固化処理方法によれば、特殊な加熱装置や高温の加熱工程などが不要であり、混練工程などの簡単なプロセスを経るだけであるので、処理コストを抑制することが可能となる。また、高温加熱工程などが不要であるために、放射性核種の揮発などの問題も発生することがない。
【0016】
また、セメント系材料を用いる方法では固化体中のリン酸二水素ナトリウムの重量比を6%程度とするのが上限であったが、本発明の放射性廃液の固化処理方法では、固化体中のリン酸二水素ナトリウムの重量比を50%程度にまで上昇させることができ、処理効率の高い固化体を作製することが可能となり、処理コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る放射性廃液の固化処理方法における水分調整工程の概略を模式的に示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る放射性廃液の固化処理方法における混練工程の概略を模式的に示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る放射性廃液の固化処理方法の各工程の概略をフローにまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の放射性廃液の固化処理方法について適宜図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る放射性廃液の固化処理方法における水分調整工程の概略を模式的に示す図であり、図2は本発明の実施形態に係る放射性廃液の固化処理方法における混練工程の概略を模式的に示す図である。また、図3は本発明の実施形態に係る放射性廃液の固化処理方法の各工程の概略をフローにまとめた図である。図1及び図2において、1は固化容器、2は水分調整用加熱装置、3は水分調整用水供給装置、4は混練装置、5は酸化マグネシウム供給配管、6は酸化マグネシウム貯槽、7は酸化マグネシウム計量装置、8は酸化マグネシウム供給装置、9は飛散防止用フード、10はモーターをそれぞれ示している。

【0019】
本発明の放射性廃液の固化処理方法においては、まず、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を含む放射性廃液が固化容器1に投入される(ステップS101)。ここで、放射性廃液を固化容器1に投入する前の段階で、リン酸二水素ナトリウムの濃度は予め適当な化学分析手法によって定量的に調べておく。

【0020】
次のステップS102は、放射性廃液におけるリン酸二水素ナトリウムの濃度に応じて、必要であれば実施する水分調整工程である。この水分調整工程においては、放射性廃液におけるリン酸二水素ナトリウム濃度がおよそ30wt%程度となるように調整する工程である。先の定量分析によって、元の放射性廃液中のリン酸二水素ナトリウムの濃度がこれより高いことが分かっている場合には、水分調整用水供給装置3によって加水し、また、元の放射性廃液中のリン酸二水素ナトリウムの濃度がこれより低いことが分かっている場合には、水分調整用加熱装置2によって水を蒸発させて、固化容器1中の放射性廃液のリン酸二水素ナトリウム濃度を略30wt%程度とする。

【0021】
なお、この30wt%という濃度は、リン酸二水素ナトリウムの塩が析出しない上限の濃度である。塩が析出することによって溶液の取り扱いを難しくさせることを回避しつつ、最大の濃度のリン酸二水素ナトリウムを処理するために、このような30wt%という濃度が選択されている。

【0022】
また、水分調整用加熱装置2の加熱により固化容器1中の放射性廃液が80℃以上になった場合には、自然冷却または強制冷却により液温を下げるようにすることが好ましい。

【0023】
上記のような水分調整工程によって、リン酸二水素ナトリウム濃度が略30wt%とされた放射性廃液で満たされた固化容器1は、水分調整用加熱装置2、水分調整用水供給装置3からなる図1に示すようなシステムから図2に示すようなシステムに移設され、混練工程を経ることとなる。

【0024】
図2に示すように、固化容器1には、飛散防止用フード9が取り付けられて蓋がされる。このような飛散防止用フード9は、混練中で放射性廃液が固化容器1からあふれ出ないようにするためである。また、この飛散防止用フード9には、混練装置4の回転軸及び酸化マグネシウム供給配管5が挿通される。混練装置4はその回転翼によって固化容器1中の内容物を混練するものであり、酸化マグネシウム供給配管5からは酸化マグネシウム(MgO)が固化容器1中に添加されるようになっている。

【0025】
酸化マグネシウムは、酸化マグネシウム計量装置7が設けられているホッパーなどの酸化マグネシウム貯槽6から供給される。酸化マグネシウム貯槽6から供給される酸化マグネシウムは、フィーダーなどの酸化マグネシウム供給装置8によって規定量ずつが固化容器1中に添加されるようになっている。

【0026】
次に、以上のように構成される図2のシステムによる混練工程について説明する。まず
、固化容器1中の放射性廃液は温度が20℃~80℃程度、より好ましく温度が20℃~40℃程度であることが確認される。放射性廃液の温度が高すぎる場合には、混練工程で十分な混練を行うことができないまま急激に固化してしまうこととなるので、このように放射性廃液の温度を室温程度とすることが望ましい。

【0027】
次に、ステップS103の混練工程では、固化容器1内に挿通した混練装置4の回転翼によって、放射性廃液の攪拌を開始する。そして、ステップS104に示すように、酸化マグネシウム計量装置7で定量分取した酸化マグネシウムの粉末を、酸化マグネシウム供給配管5から固化容器1内に供給する。なお、酸化マグネシウムの粉末としては、酸化マグネシウム重質、酸化マグネシウム軽質のいずれものものも用いることができる。なお、本実施形態では、酸化マグネシウム供給配管5から粉末の酸化マグネシウムを添加するようにしているが、予め酸化マグネシウムに微量の水を添加しおき、スラリー状とした酸化マグネシウムを添加するようにしても良い。

【0028】
ここで、放射性廃液に添加する酸化マグネシウムの量について説明する。本発明に係る放射性廃液の固化処理方法においては、添加する酸化マグネシウムと放射性廃液中のリン酸二水素ナトリウムの比が、モル比換算(MgO/NaH2PO4)で0.5~1.0であること、より好ましくは略0.5であることを一つの特徴としている。

【0029】
上記のように設定する理由は、添加する酸化マグネシウムと放射性廃液中のリン酸二水素ナトリウムの比が、モル比換算(MgO/NaH2PO4)で0.5未満であると、固化体上部に浮き水が残ってしまうこととなり、また、当該比がモル比換算で1.0を超えると、ステップS103の混練工程における混練物の粘性が急激に上昇し均質な固化体の作製が難しくなるからである。

【0030】
ステップS104に示すように、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)を含む放射性廃液が満たされた固化容器1中に、酸化マグネシウム(MgO)が添加されると、次式に示すような反応が起こり、リン酸ナトリウムマグネシウムと水の結晶が生成される。

【0031】
NaH2PO4 + MgO + 5H2O → MgNaPO4・6H2
ステップS103の混練工程では、このような結晶が生成されるに伴い、固化容器1内の放射性廃液が徐々に粘度を増し固化体となる。混練工程では、放射性廃液に規定量の酸化マグネシウム添加後、さらに10分間程度の混練を行うことが好ましい。

【0032】
放射性廃液は、混練工程後、1時間以内に凝結が開始するが十分な強度が発現するまで養生する(ステップS105)。セメント系材料を用いた固化法と比較し、本発明に係る放射性廃液の固化処理方法は凝結時間が著しく短く、酸化マグネシウム添加後、10分~60分の内に硬化反応が始まり混練後4時間程度で放射性廃液が完全に固化するという有為な特徴を有する。

【0033】
以上のように、本発明の放射性廃液の固化処理方法によれば、特殊な加熱装置や高温の加熱工程などが不要であり、混練工程などの簡単なプロセスを経るだけであるので、処理コストを抑制することが可能となる。また、高温加熱工程などが不要であるために、放射性核種の揮発などの問題も発生することがない。

【0034】
なお、混練工程において、混練物の粘性が短時間で増加する急結現象を抑制するには、ほう酸塩(例えば四ほう酸ナトリウム)を添加するとよい。

【0035】
本発明に係る放射性廃液の固化処理方法において、作製する固化体内のNaH2PO4の占める割合としては、重量比で20~50%の範囲であること、より好ましくは45~5
0%であることが理想的である。固化体内のNaH2PO4の割合が、重量比で50%を超える場合には、混練工程において混練物の粘性が増加する原因となるからである。

【0036】
セメント系材料を用いる方法では固化体中のリン酸二水素ナトリウムの重量比を6%程度とするのが上限であったが、本発明の放射性廃液の固化処理方法では、固化体中のリン酸二水素ナトリウムの重量比を50%程度にまで上昇させることができ、処理効率の高い固化体を作製することが可能となり、処理コストを抑制することができる。

【0037】
なお、上記の実施形態においては、固化容器1内に固化体を作製するようにしたが、リン酸ナトリウムマグネシウムをペレット状に整形し、それを容器に充填しそこにセメントモルタルを流し込む充填廃棄体として廃棄体化することなども可能である。
【符号の説明】
【0038】
1・・・固化容器
2・・・水分調整用加熱装置
3・・・水分調整用水供給装置
4・・・混練装置
5・・・酸化マグネシウム供給配管
6・・・酸化マグネシウム貯槽
7・・・酸化マグネシウム計量装置
8・・・酸化マグネシウム供給装置
9・・・飛散防止用フード
10・・・モーター
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2