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明細書 :核分裂生成物の分離方法及びそれに用いる装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4756186号 (P4756186)
公開番号 特開2010-266229 (P2010-266229A)
登録日 平成23年6月10日(2011.6.10)
発行日 平成23年8月24日(2011.8.24)
公開日 平成22年11月25日(2010.11.25)
発明の名称または考案の名称 核分裂生成物の分離方法及びそれに用いる装置
国際特許分類 G21F   9/30        (2006.01)
G21F   9/16        (2006.01)
FI G21F 9/30 519A
G21F 9/30 519C
G21F 9/16 541B
G21F 9/16 541C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 7
出願番号 特願2009-115608 (P2009-115608)
出願日 平成21年5月12日(2009.5.12)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年3月6日 社団法人日本原子力学会発行の「2009年春の年会予稿集」に発表
審査請求日 平成23年3月31日(2011.3.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】天本 一平
【氏名】小藤 博英
【氏名】福嶋 峰夫
【氏名】明珍 宗孝
個別代理人の代理人 【識別番号】100078961、【弁理士】、【氏名又は名称】茂見 穰
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 特開2003-294890(JP,A)
特開2007-303934(JP,A)
豊原尚実 外8名,「乾式再処理から発生する廃溶融塩の固化技術の開発」,日本原子力学会和文論文誌,日本,社団法人日本原子力学会,2002年12月25日,第1巻第4号,第419-431頁
調査した分野 G21F 9/30
G21F 9/16
G21C 19/44
特許請求の範囲 【請求項1】
乾式再処理プロセスで発生する使用済み電解質をリン酸塩転換処理することで得られる処理対象物質を、鉄リン酸系ガラスからなる分離材に、該鉄リン酸系ガラスの軟化点以下の温度で通液し、前記分離材により、処理対象物質中に含まれている不溶性の核分裂生成物をろ過除去すると共に溶解している核分裂生成物を収着分離し、核分裂生成物を保持している鉄リン酸系ガラスをガラス固化体材料とすることを特徴とする核分裂生成物の分離方法。
【請求項2】
加圧系から供給する不活性ガスによって処理対象物質の雰囲気調整を行うと共に、液状の処理対象物質を加圧して分離材の通過を促進可能とした請求項1記載の核分裂生成物の分離方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の分離方法の実施に用いる装置であって、分離材が充填されている筒状の分離容器からなる分離装置本体、該分離容器の上部で開口している処理対象物質の供給口、分離容器の下部から連通する精製液受槽、分離容器に供給された処理対象物質に加圧力を付与可能な加圧系、精製液受槽に連結された吸引系、装置内の温度制御を行う発熱体を具備し、前記分離材が鉄リン酸系ガラスからなることを特徴とする核分裂生成物の分離装置。
【請求項4】
鉄リン酸系ガラスの組成はFe/P比で0.15~0.75であり、それを粉体状あるいはファイバ状とするか、もしくは粉体やファイバを軟化点まで加熱してカートリッジ形態となるように成型加工して分離材とする請求項3記載の核分裂生成物の分離装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式再処理プロセスで発生する使用済み電解質中の核分裂生成物を取り除く方法、及びそれに用いる装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属電解法による乾式再処理プロセスから発生する使用済み電解質(廃塩)は、様々な核分裂生成物を含有しており、高レベル放射性廃棄物に区分される。乾式再処理プロセスで用いられる電解質としてLiCl-KClがあるが、その使用済み電解質中には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素を主たる元素とする核分裂生成物(FP)が塩化物の形態で溶け込んでいる。そこで、環境負荷低減、経済性等の観点から、高レベル放射性廃棄物容量を抑制するため、あるいは使用済み電解質を再生使用するため、使用済み電解質中の核分裂生成物を分離する必要がある。
【0003】
その分離・再生技術については、使用済み電解質中に蓄積されているFP塩化物をリン酸塩と反応させてFPリン酸塩に変換することにより沈殿させ電解質を再生する廃塩再生工程と、廃塩再生により生じた余剰塩をリン酸と反応させてリン酸塩にするリン酸塩転換工程と、生成したリン酸塩を鉄リン酸ガラスに充填することにより安定化させるリン酸塩安定化工程とからなる使用済み電解質の処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
塩化物の形態で溶け込んでいる核分裂生成物を沈殿分離するリン酸塩転換材としては、リン酸リチウム(Li3 PO4 )またはリン酸カリウム(K3 PO4 )が電解質の組成に与える影響が少なく適切であるとされ、それらを用いるとランタノイド(Ln)系塩化物は容易にリン酸塩に転換され沈殿する。しかし、アルカリ金属(Liを除く)やアルカリ土類金属の塩化物は、転換材を添加しても沈殿物を形成しない。
【0005】
沈殿物の分離方法としては、ろ過が一般的である。従来から様々なろ過装置が存在しているが、それらは、通常、常温で使用するものであり、高温融体中の目的物質を分離できる装置は少ない。しかも、分離対象物質は、沈殿物を生成するFP元素のみならず、沈殿物を生成しないFP元素があり、通常のろ過材ではこれら全てを十分に取り除くことはできない。
【0006】
そこで、従来技術では、使用済み電解質に溶け込んでいる核分裂生成物を分離除去するのに2種類の分離回収方法を必要とし、沈殿物を主体とする液と上澄液の選択的な送液を行い、沈殿物を含有する液についてはろ過フィルタにて、また上澄液についてはイオン交換能/分子ふるい能のある分離フィルタを用いて分離することが検討されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法では、運転操作が煩雑となり専用の作業員を配置しなければならないし、また装置構成が複雑になるなど、実用上改善すべき問題があった。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2007-303934号公報
【0008】

【非特許文献1】日本原子力学会「2008年春の年会」要旨集D35
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、乾式再処理プロセスで発生する使用済み電解質中の核分裂生成物を、沈殿物を生成するもののみならず、沈殿物を生成しないものも含めて、簡単な操作で取り除き、容易にガラス固化できるようにすることである。本発明が解決しようとする他の課題は、乾式再処理プロセスで発生する使用済み電解質中の核分裂生成物を、沈殿物を生成するもののみならず、沈殿物を生成しないものも含めて、取り除くことができる簡単な構成の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、乾式再処理プロセスで発生する使用済み電解質をリン酸塩転換処理することで得られる処理対象物質を、鉄リン酸系ガラスからなる分離材に、該鉄リン酸系ガラスの軟化点以下の温度で通液し、前記分離材により、処理対象物質中に含まれている不溶性の核分裂生成物をろ過除去すると共に溶解している核分裂生成物を収着分離し、核分裂生成物を保持している鉄リン酸系ガラスをガラス固化体材料とすることを特徴とする核分裂生成物の分離方法である。このように、不溶性物質のろ過と溶解している物質の収着を同時に行い核分裂生成物を分離除去し、核分裂生成物を保持している分離材を利用してガラス固化体にする点に本発明の特徴がある。ここで、加圧系から供給する不活性ガスによって処理対象物質の雰囲気調整を行うと共に、液状の処理対象物質を加圧して分離材の通過を促進可能とすることもできる。
【0011】
また本発明は、上記のような分離方法を実施するための装置であって、分離材が充填されている筒状の分離容器からなる分離装置本体、該分離容器の上部で開口している処理対象物質の供給口、分離容器の下部から連通する精製液受槽、分離容器に供給された処理対象物質に加圧力を付与可能な加圧系、精製液受槽に連結された吸引系、装置内の温度制御を行う発熱体を具備し、前記分離材が鉄リン酸系ガラスからなることを特徴とする核分裂生成物の分離装置である。鉄リン酸系ガラスの組成はFe/P比で0.15~0.75とし、それを粉体状あるいはファイバ状とするか、もしくは粉体やファイバを軟化点まで加熱してカートリッジ形態となるように成型加工して分離材とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る核分裂生成物の分離方法は、鉄リン酸系ガラスを分離材として用い、乾式再処理プロセスから発生する使用済み電解質をリン酸塩転換処理することで得られる処理対象物質を前記分離材に通液することにより、不溶性の核分裂生成物をろ過除去すると共に溶解している核分裂生成物を収着分離するように構成されているので、沈殿物を生成する核分裂生成物のみならず、沈殿物を生成しない核分裂生成物も、簡単な通液操作のみで容易に取り除くことが可能となり、大量の使用済み電解質を非常に能率良く処理することができる。更に、処理対象物質を移動させる操作に並行して核分裂生成物の分離ができるので、分離操作のための特別な作業員を配置する必要もなくなる。
【0013】
また、核分裂生成物を保持する分離材の鉄リン酸系ガラスは、そのまま固化体材料として使用できるため、高レベル放射性廃棄物発生量を抑制することができる。また、核分裂生成物を分離した後の精製された電解質は、再生電解質として使用できるため、これによる廃棄物容量の減少も見込める。
【0014】
本発明に係る核分裂生成物の分離装置は、鉄リン酸系ガラスからなる分離材を筒状の分離容器に充填し、該分離材に処理対象物質を通液する構成であるので、非常に単純な装置構成でありながら、沈殿物を生成する核分裂生成物のみならず、沈殿物を生成しない核分裂生成物も、ろ過機能と収着機能により同時に取り除くことができる。この分離装置は、非常に簡単な装置構成であるので、容易にプロセスに組み込むことができる。しかも、この装置は、閉じられた系として構成されており、装置の設置場所や操作方法に関係なく作業者が直接、高温融体に接触することがないため、火傷の危険にさらされることはなく、また放射性物質等が飛散することもない。
【0015】
ここで分離材をカートリッジ形態となるようにすると、分離処理後の交換が簡単に行える。また、送液ラインに本装置を付加すればよいので、処理量に応じて容易に大型化できる。更に、必要に応じて分離装置本体を多段構成とすると、特に沈殿物を生成しない核分裂生成物についても十分な分離能力を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る核分裂生成物の分離装置の一実施例を示す説明図。
【図2】本発明方法を適用した乾式再処理プロセスの一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、鉄リン酸系ガラスからなる分離材に、乾式再処理プロセスから発生する使用済み電解質をリン酸塩転換処理することで得られる処理対象物質を、鉄リン酸系ガラスの軟化点以下の設定温度(通常、500~600℃程度)で通液する。

【0018】
前述のように、使用済み電解質(LiCl-KCl)には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素を主たる元素とする核分裂生成物が塩化物の形態で溶け込んでいる。それらをリン酸塩転換材によりリン酸塩に転換処理する。転換材として例えばリン酸リチウム(Li3 PO4 )を用い、転換条件は、例えば温度が520~600℃、転換材添加量が化学量論比の2~4.5倍程度とする。このとき、リチウムおよび希土類元素は不溶性物質を形成するが、他のアルカリ金属やアルカリ土類金属は顕著な不溶性物質とはならず多くは溶解している。しかし、処理対象物質を前記分離材に通液すると、含まれている不溶性の核分裂生成物がろ過除去されるばかりでなく、溶解している核分裂生成物も収着分離される。

【0019】
高温状態での処理には、水分と酸素の影響を抑制するために可能な限り、酸素分圧と水分量を下げておく必要がある。そうすることにより、LiCl-KCl塩は乾式再処理プロセスの電解質として再使用可能となる。また、分離材の劣化も防ぐことができる。そこで、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを供給することによって処理対象物質の雰囲気調整を行う。また不活性ガスにより処理対象物質を加圧することにより、分離材を円滑に通過させることもできる。

【0020】
リン酸塩転換処理を行っても、リチウムを除くアルカリ金属やアルカリ土類金属は沈殿物を生成せず、一部は微細な不溶性の複塩を生成するが、残りは溶解状態のままである。しかし、それらも鉄リン酸系ガラスからなる分離材で収着分離される。既知の状態図によれば、鉄リン酸ガラス(Fe2 3 ・P2 5 )は、昇温により、3価の鉄(Fe3+)が2価(Fe2+)に変化する。これに伴い、鉄リン酸系ガラスを構成している酸素イオン(O2-)との関係で、系内のイオンの価数が不安定となり、他の元素を収着する効果が表れる。本発明は、この効果を利用している。このように温度を高めることにより収着効果を発揮できる鉄リン酸系ガラスは、耐熱性もあるため、高温で用いる分離材として優れており、不溶性の核分裂生成物をろ過機能により、また溶解している核分裂生成物を収着機能により、同時に分離することができる。

【0021】
分離処理により核分裂生成物を保持している鉄リン酸系ガラスは、そのまま固化体材料として使用する。成分調整を行い、鉄リン酸ガラス固化体として安定化させる。それによって、高レベル放射性廃棄物発生量を抑制することができる。核分裂生成物を分離した後の精製された電解質は、再生電解質として使用できるため、これによる廃棄物容量の減少も見込める。
【実施例】
【0022】
本発明に係る分離装置の一実施例を図1に示す。本装置は、分離材10が充填されている筒状の分離容器12からなる分離装置本体14、分離容器12の下部から精製液送液管16を経て連結される精製液受槽18、分離容器12に供給された処理対象物質に加圧力を付与できる加圧系20、精製液受槽18に連結された吸引系22、及び装置の温度制御を行う抵抗発熱体24などからなる。分離容器12及び精製液受槽18などは、断熱材・耐火レンガなどで構築する。ここで、分離材10としては鉄リン酸系ガラスを用いる。
【実施例】
【0023】
液体状態にある処理対象物質は、分離容器12の上部で開口している供給口26から分離容器12内に送液される。送液方法は、重力落下方式でもよいし、ポンプ等による汲み上げ方式でもよい。分離装置内部は、抵抗発熱体24により、通常600℃以下の所定の温度で加熱がなされており、供給された処理対象物質を液体状態に保っている。分離装置本体内は、加圧系20から供給されるガスによって、不活性ガス雰囲気(アルゴンガス雰囲気や窒素ガス雰囲気)に保つことができる。また、供給するガスを変えることにより、条件に応じた雰囲気をつくることができる。
【実施例】
【0024】
分離装置本体14に供給された処理対象物質は分離材10を通過し、精製液送液管16を経て精製物受槽18に入る。このとき、処理対象物質が重力のみでは円滑に分離材10を通過しないようであれば、加圧系20により分離装置本体14内に加圧力をかけることができる。また、吸引系22を作動させて、精製物受槽18内を減圧することにより、処理対象物質を精製物受槽18に吸引することができる。なお、加圧と吸引は同時に行ってもよいが、加圧は、供給口26からの処理対象物質の流れに応じて適宜行えばよい。精製物受槽18の底部に設けた排出口28から、精製液が排出する。
【実施例】
【0025】
分離材としては、前記のように鉄リン酸系ガラスを使用する。鉄リン酸系ガラスの組成は、Fe/P比で、0.15~0.75とする。粉体状あるいはファイバ状でもよいが、粉体やファイバを一度軟化点まで加熱してカートリッジ形態となるように成型加工したものが好ましい。粉体状の場合には、鉄リン酸系ガラスを粉砕し,標準ふるいを用いて所定範囲の粒径に調整すればよい。それら粉体状あるいはファイバ状の場合には、分離容器の底部に焼結ガラスなどからなるサポートスクリーンを置き、その上に鉄リン酸系ガラスを充填する。分離材の目開きは、10μmから2mmの間で適切なものを選定することができる。
【実施例】
【0026】
実験室規模の設備を用いて分離実験を行った。乾式再処理プロセスで媒質として用いられるLiCl-KCl電解質には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素を主たる元素とする核分裂生成物が塩化物の形態で溶け込んでいる。これらをリン酸塩に転換処理したところ、リチウムおよび希土類元素は不溶性物質を形成するため、本装置のろ過機能を用いて、生成した粒子をほぼ100%分離することができた。希土類元素塩化物のろ過については、目開き1.18~2mmの鉄リン酸系ガラス粉体で十分機能した。また、リチウム以外のアルカリ金属やアルカリ土類金属も、本装置の収着機能によって、1回の通液で約50%の分離ができた。そのときの分離材の厚さ(高さ)は4mm、温度は550℃である。なお、リン酸塩転換材としては、リン酸リチウムが媒質の組成に与える影響が少なく適切であった。
【実施例】
【0027】
このような分離装置30は、図2に示すように、乾式再処理プロセスでリン酸塩転換工程の後段に組み込むことができる。これにより、使用済み電解質の再生と核分裂生成物の除去が容易に行える。乾式再処理プロセス自体は特許文献1に記載されているように公知の技術であるから、それについての詳細な説明は省略する。精製した電解質は、成分調整後、LiCl-KCl電解質として再使用される。また、核分裂生成物をろ過・収着することで保持している分離材は、鉄リン酸ガラス固化体となる。
【符号の説明】
【0028】
10 分離材
12 分離容器
14 分離装置本体
18 精製液受槽
20 加圧系
22 吸引系
24 抵抗発熱体
図面
【図1】
0
【図2】
1