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明細書 :金(I)錯塩とその製造方法および溶媒の識別方法ならびに発光性液体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5522352号 (P5522352)
公開番号 特開2010-265204 (P2010-265204A)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成22年11月25日(2010.11.25)
発明の名称または考案の名称 金(I)錯塩とその製造方法および溶媒の識別方法ならびに発光性液体
国際特許分類 C07F   1/12        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
C07D 233/58        (2006.01)
G01N  21/64        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
FI C07F 1/12 CSP
C09K 11/06 660
C07D 233/58
G01N 21/64 Z
H05B 33/14 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 17
出願番号 特願2009-116985 (P2009-116985)
出願日 平成21年5月13日(2009.5.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年11月21日 日本化学会関東支部主催の「第19回 日本化学会関東支部 茨城地区研究交流会」において文書をもって発表
審査請求日 平成23年12月28日(2011.12.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】青柳 登
【氏名】下条 晃司郎
【氏名】長縄 弘親
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】前田 憲彦
参考文献・文献 特表2008-504342(JP,A)
特開2006-219474(JP,A)
特開2006-104201(JP,A)
特開昭61-229881(JP,A)
特開昭59-031792(JP,A)
Journal of Physical Chemistry C,2007年,111(28),p.10689-10699
Journal of the American Chemical Society,2004年,126(1),p.12-13
調査した分野 C07F 1/00
C07D 233/00
C09K 11/00
G01N 21/00
H01L 51/00
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
1-アルキル基の炭素数が1~10の1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムカチオンとジチオシアナト金(I)アニオンとからなる、室温(25℃)で液状の金(I)錯塩。
【請求項2】
請求項1に記載の金(I)錯塩の製造方法であって、ジチオシアナト金(I)の金属塩を溶媒に溶解した溶液と、1-アルキル基の炭素数が1~10の1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムハロゲン化物を溶媒に溶解した溶液とを混合し、生成した金属ハロゲン化物を除去し、溶媒を除去することにより、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムカチオンとジチオシアナト金(I)アニオンとからなる金(I)錯塩を得ることを特徴とする金(I)錯塩の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の金(I)錯塩を識別対象の溶媒に溶解させ、凍結させた後、溶媒に光源からの紫外光を照射し、その発光色により溶媒を識別することを特徴とする溶媒の識別方法。
【請求項4】
1-アルキル基の炭素数が1~10の1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、下記一般式(3):
【化1】
JP0005522352B2_000016t.gif
(式中、R12~R15は炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表わされる置換アンモニウムカチオン、および下記一般式(4):
【化2】
JP0005522352B2_000017t.gif
(式中、R16~R19は炭素数1~12のアルキル基を示す。)で表わされる置換ホスホニウムカチオンから選ばれるいずれかのカチオン種とアニオン種[SCN]-との塩であるイオン液体にハロゲン化金(I)を溶解してなる、室温(25℃)で液状の発光性液体。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金(I)錯塩とその製造方法および溶媒の識別方法ならびに発光性液体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光デバイスや揮発性有機分子の検出への応用が期待されている金(I)錯体において特に注目されているのがAuI-AuI間における金原子間相互作用(aurophilic interaction)を利用した錯体合成である(非特許文献1~5参照)。その相互作用と発光現象は密接に関連しており、AuI-AuI間距離が3.6Å以内に近づくと発光すると報告されている。この金原子間相互作用は水素結合に匹敵する強さを持ち、容易に自己組織化する。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】Y.-A Lee, et.al., J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 10662-10663.
【非特許文献2】J.C.Vickery, et.al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 1997, 36, 1179-1181.
【非特許文献3】R.K.Arvapally, et,al., J. Phys. Chem. C, 2007, 111, 10689-10699.
【非特許文献4】E.J.Fernandez, et.al., J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 2022-2023.
【非特許文献5】M.A.Rawashdeh-Omary, et.al., J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 11237-11247.
【非特許文献6】A.Paul, et.al., J. Phys. Chem. B, 2005, 109, 9148-9153.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金(I)錯体は低温で高効率にりん光を発するものの、室温では発光しないために材料としての用途に限界があった(非特許文献3参照)。
【0005】
また、室温で発光する錯体もあるが、それらは粉体であるために形状の加工が容易でなく、均質な薄膜状等に広げることが困難であった(非特許文献5参照)。
【0006】
そして、単結晶で発光する化合物も知られているが、構造の物理的破砕によって発光特性が変化する等、安定に一定の波長の光が得られるものは知られていない(非特許文献4参照)。
【0007】
さらにまた、一部のイオン液体は発光することが報告されているが(非特許文献6参照)、発光の由来は不明で、これを発光材料に応用した検討例は少ない。
【0008】
また、既知の金(I)錯体の多くは室温で固体であり、有機溶媒に難溶である。そのため、液相における発光特性は未開拓な領域であり、固液相転移に伴う発光特性変化は未だ報告されていない。
【0009】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、発光効率が高く、室温で液状であり、保存安定性も有する金(I)錯塩とその製造方法および溶媒の識別方法ならびに発光性液体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1:置換イミダゾリウムカチオンとジチオシアナト金(I)アニオンとからなる金(I)錯塩。
【0012】
第2:置換イミダゾリウムカチオンは、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムカチオンである上記第1の金(I)錯塩。
【0013】
第3:ジチオシアナト金(I)の金属塩を溶媒に溶解した溶液と、置換イミダゾリウムハロゲン化物を溶媒に溶解した溶液とを混合し、生成した金属ハロゲン化物を除去し、溶媒を除去することにより、置換イミダゾリウムカチオンとジチオシアナト金(I)アニオンとからなる金(I)錯塩を得ることを特徴とする金(I)錯塩の製造方法。
【0014】
第4:置換イミダゾリウムカチオンは、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする上記第3の金(I)錯塩の製造方法。
【0015】
第5:上記第1または第2の金(I)錯塩を識別対象の溶媒に溶解させ、凍結させた後、溶媒に光源からの紫外光を照射し、その発光色により溶媒を識別することを特徴とする溶媒の識別方法。
【0016】
第6:ハロゲン化金(I)をイオン液体に溶解してなる発光性液体。
【0017】
第7:イオン液体は、アニオン種として[SCN]-を有する上記第6の発光性液体。
【発明の効果】
【0018】
本発明の金(I)錯塩は、室温で液状であり、紫外線照射下において低温では強く発光し、室温でも発光する。そして金(I)錯体由来の発光とイオン液体由来の蛍光との組み合わせにより幅広い温度領域と波長領域で選択的に発光色が変化する特性を持つ。また、長期間の保存安定性も有している。
【0019】
本発明の製造方法によれば、上記したように発光効率が高く、室温で液状であり、そして保存安定性も有する金(I)錯塩を得ることができる。
【0020】
本発明の溶媒の識別方法によれば、金(I)錯塩が溶媒の種類に応じて異なる色で発光し、視認性のある発光センシングが可能である。ごく少量の金(I)錯塩を有害有機物等の溶媒に溶解させることで、溶媒の種類に応じて異なる色で発光するため、それらを効率良く識別できる。
【0021】
本発明の発光性液体によれば、金(I)イオンに対する錯形成能の高いアニオンを有するイオン液体を用いることで、ハロゲン化金(I)を高濃度で溶解することができる。この発光性液体は、室温で液状であり、紫外光照射により強く発光する。また、長期間の保存安定性も有している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の金(I)錯塩の室温(上段)および液体窒素温度:77K(下段)の励起-発光スペクトル(縦軸:励起波長、横軸:発光波長)である。
【図2】図2は、本発明の金(I)錯塩を用いた加溶媒感光(ソルボルミネッセンス)の様子を示す。
【図3】図3は、塩化金(I)無水物をイオン液体(左:[C4mim]SCN、右:[P6,6,6,14]SCN)に溶解させた試料の室温および液体窒素温度:77Kにおける励起-発光スペクトルである。
【図4】図4は、透明基板の上に実施例1で合成した金(I)錯塩の薄膜を形成し、これに紫外光ランプからの光(365nm)または白色蛍光灯を照射したときの発光を観測した結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。

【0024】
本発明の金(I)錯塩は、置換イミダゾリウムカチオンと、ジチオシアナト金(I)アニオンとからなる。

【0025】
置換イミダゾリウムカチオンとしては、下記一般式(1)で表されるものを用いることができる。

【0026】
【化1】
JP0005522352B2_000002t.gif

【0027】
式中、R1、R2は炭化水素基を示し、R3~R5は水素原子または炭化水素基を示す。炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基の炭素数は好ましくは1~20、より好ましくは1~12である。

【0028】
中でも、1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムカチオンが好ましく、そのアルキル基は好ましくは炭素数1~10、より好ましくは2~6である。

【0029】
本発明の金(I)錯塩は、例えば、次のようにして合成することができる。まず、ジチオシアナト金(I)の金属塩を用意する。例えば、公知の方法に従ってバルクの金からHAuCl4・MeOH溶液を調製した後、SMe2を加えて[Au(SMe2)][Cl]を得た後、これとチオシアナト金属塩とをアセトニトリル等の溶媒中で混合、攪拌し、吸引濾過により沈殿物である金属塩化物を除去する。チオシアナト金属塩としては、例えば、K、Na等のアルカリ金属塩を用いることができる。

【0030】
そして、回収した濾液に置換イミダゾリウムカチオンハロゲン化物を加えて攪拌し、吸引濾過により沈殿物である金属ハロゲン化物を除去し、回収した濾液中の溶媒を蒸発除去することにより本発明の金(I)錯塩を得ることができる。

【0031】
本発明の金(I)錯塩は、室温(25℃)で液体であり、融点は置換イミダゾリウムカチオンの種類にもよるが、例えば-70~-10℃である。

【0032】
そして本発明の金(I)錯塩は、発光特性として、イオン液体に由来する蛍光と二量体[Au(SCN)2-]2の存在に由来する発光を有している。

【0033】
すなわち金(I)錯体は、結晶中では金原子間相互作用によって二量体[Au(SCN)2-]2の存在がX線回折によって明らかになっており(非特許文献3参照)、二量体に紫外光を照射するとオレンジ色に発光する。一方、イミダゾリウム誘導体をカチオンとするイオン液体は室温で発光することが知られており(非特許文献6参照)、その発光波長は広帯域(白色に近い)であり、励起波長が長くなるにつれて赤方偏移する。

【0034】
本発明の金(I)錯塩では、上記の金(I)錯体の発光とイオン液体の蛍光とが組み合わされて、幅広い温度領域と波長領域で選択的に発光色が変化する。

【0035】
ここで、蛍光バンドに関して、近傍に存在する異なる2つの二量体間の交換反応を速くすると、発光ピークが偏移すると考えられる。すなわち二量体の発光減衰速度と隣接する金(I)中心イオンの交換速度との大小関係において発光減衰が交換速度よりも速ければ2種類の発光ピークあるいは発光寿命をもち、逆の関係であれば見かけ上平均化されて1種類の発光ピークあるいは発光寿命が観測できると考えられる。そして本発明では、相が液体であるため交換反応が大幅に速くなる。このように液体中で新たな錯体の交換速度と発光寿命の関係が生じることで、本発明の金(I)錯塩は、近接する2つの二量体間における金原子間相互作用により、二量体内部における金(I)中心イオンの相互作用とは異なる結合状態が生じ、結果として室温の液体状態では低温とは異なる発光スペクトルが得られる。

【0036】
このように本発明の金(I)錯塩は、幅広い温度領域と波長領域で選択的に発光色が変化し、さらに溶媒に溶解させた場合にはその種類に依存して発光色が異なることから、視認性のある発光センシングを行うことができる。すなわち、本発明の金(I)錯塩を識別対象の溶媒に溶解させ、液体窒素等により凍結させた後、紫外光ランプ等の光源からの紫外光を照射することで、その発光色により溶媒の識別をすることができる。

【0037】
例えば、ごく少量の金(I)錯塩を有害有機物等の識別対象の溶媒に溶解させると、溶媒によって異なる発光色を持つため、それらを効率良く識別できる。

【0038】
また本発明の発光性液体は、塩化金(I)等のハロゲン化金(I)をイオン液体に溶解してなるものである。溶媒としてイオン液体を用いることで、これと金(I)イオンとが錯体を形成することにより高濃度にハロゲン化金(I)を溶解することができる。そのため、このハロゲン化金(I)を溶解した液体は紫外線照射下にて高輝度に発光する。典型的には、低温(77K)で強く発光し、室温でも発光する。そしてハロゲン化金(I)の不均化反応も抑制されるので、蒸気圧がなく耐熱性等も有するイオン液体を用いることで、保存安定性にも優れている。

【0039】
ハロゲン化金(I)を溶解させるイオン液体としては、各種のものを用いることができるが、アニオン種としては、ハロゲン化金(I)の溶解性と発光強度の点からチオシアナトSCN-が特に好ましい。他のアニオン種としては、例えば、Cl-、Br-、I-、テトラフルオロボレート(BF4-)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)、トリフルオロメタンスルホナート(CF3SO3-)、ナイトレート(NO3-)、テトラクロロアルミネート(A1C14-)、メチルスルフェート(CH3SO4-)、トシレート(CH3C6H4SO3-)、ビス(トリフルオロメタンスルホン酸)イミドアニオン((CF3SO2)2N-)等が挙げられる。

【0040】
一方、イオン液体のカチオン種としては、例えば、置換イミダゾリウムカチオン、置換ピリジニウムカチオン、置換アンモニウムカチオン、置換ホスホニウムカチオン、置換スルホニウムカチオン等が挙げられる。

【0041】
置換イミダゾリウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(1)で表されるものが挙げられる。

【0042】
【化2】
JP0005522352B2_000003t.gif

【0043】
(式中、R1、R2は炭化水素基、R3~R5は水素原子または炭化水素基を示す。)
置換ピリジニウムカチオンとしては、例えば、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。

【0044】
【化3】
JP0005522352B2_000004t.gif

【0045】
式中、R6は炭化水素基、R7~R11は水素原子または炭化水素基を示す。

【0046】
置換アンモニウムカチオンは、下記一般式(3)で表される。

【0047】
【化4】
JP0005522352B2_000005t.gif

【0048】
(式中、R12~R15は炭化水素基を示す。)
置換ホスホニウムカチオンは、下記一般式(4)で表される。

【0049】
【化5】
JP0005522352B2_000006t.gif

【0050】
(式中、R16~R19は炭化水素基を示す。)
置換スルホニウムカチオンは、下記一般式(5)で表される。

【0051】
【化6】
JP0005522352B2_000007t.gif

【0052】
(式中、R20~R22は炭化水素基を示す。)
上記において、R1~R22の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基等の脂肪族炭化水素基、アリール基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。炭化水素基の炭素数は好ましくは1~20、より好ましくは1~12である。

【0053】
本発明の金(I)錯塩および発光性液体は、例えば、有機溶媒センサ、有害分子検出、水分センサ、白色発光材料、照明素子、有機・無機ハイブリッド発光材料、有機EL素子、液晶ディスプレイのバックライト、DNA切断、色素増感太陽電池、感光フィルム等への利用が期待できる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<合成例1> [C2mim][Br]の合成
1-メチルイミダゾール(41.5 g, 0.51 mol)とアセトニトリル約100 gの混合溶液に、ブロモエタン(60.16 g, 0.56 mol)を氷浴条件下でゆっくり滴下し、室温で一晩撹拌した。冷凍庫で数時間程冷やした後、再結晶を行った。最後に凍結乾燥を行い、白色固体1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド:[C2mim][Br] (52 g, 0.27 mol)を収率53 %で得た。
【実施例】
【0055】
【表1】
JP0005522352B2_000008t.gif
【実施例】
【0056】
<合成例2> [C2mim][SCN]の合成
室温で、アセトニトリルに溶解させたKSCN (11.484 g, 118.17 mmol)を、同じくアセトニトリルに溶解させた[C2mim][Br] (11.289 g, 59.08 mmol)に滴下し、3日間の遮光条件下で撹拌した。吸引濾過により白色沈殿物であるKBrを除去し、濾液を減圧蒸留で溶媒を除去した。さらに、ジクロロメタンで精製し、吸引濾過で濾液を回収後、減圧蒸留で溶媒を除去し凍結乾燥を行った。無色粘性液体1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナト:[C2mim][SCN] (9 g, 53.17 mmol) を収率90 %で得た。
【実施例】
【0057】
【表2】
JP0005522352B2_000009t.gif
【実施例】
【0058】
<合成例3> [C4mim][Br]の合成
1-メチルイミダゾールにブロモブタンを氷浴条件下でゆっくり滴下し、室温で一晩撹拌した。さらに40 ℃で2時間攪拌し、酢酸エチルで分液・精製した。最後に減圧蒸留で溶媒を除去し凍結乾燥を行った。白色固体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド:[C4mim][Br] を収率89 %で得た。
【実施例】
【0059】
【表3】
JP0005522352B2_000010t.gif
【実施例】
【0060】
<合成例4> [C4mim][SCN]の合成
室温で、アセトンに溶解させたKSCN (9.851 g, 101.36 mmol)を、同じくアセトンに溶解させた[C4mim][Br] (11.105 g, 50.68 mmol)に滴下し、3日間の遮光条件下で撹拌した。吸引濾過により白色沈殿物であるKBrを除去し、濾液を減圧蒸留で溶媒を除去した。さらに、ジクロロメタンで精製し、吸引濾過で濾液を回収後、減圧蒸留で溶媒を除去し凍結乾燥を行った。淡黄色粘性液体1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナト[C4mim][SCN] (9.6 g, 48.65 mmol) を収率96 %で得た。
【実施例】
【0061】
【表4】
JP0005522352B2_000011t.gif
【実施例】
【0062】
<合成例5> HAuCl4・MeOH溶液の調製
王水(HCl 30 ml, HNO3 10 ml)にバルクの金 (3.009 g, 15.27 mmol) を入れ、ホットプレートスターラーで加熱攪拌し溶解させた。赤褐色の気体が出なくなるまで加熱した後、蒸発皿に移し、HClを二回程に分けて計約30 mlを加え、粘性のある塩になるまで再度蒸発させた。
【実施例】
【0063】
室温まで冷まし、20 ml HAuCl4・MeOH溶液 (Auモル濃度:約763.71 mmol / l) を調製した。
<合成例6> [Au(SMe2)][Cl]の合成
遮光条件下で、調整したHAuCl4・MeOH溶液 (3.928 ml, Au:3 mmol) にメタノール90 mlを加え、過剰のSMe2 (1.5 ml, 1.226 g, 19.73 mmol) を滴下し、20分間室温で攪拌した。吸引濾過により白色沈澱物を回収し、エーテル、ペンタンの順に洗浄・吸引濾過を行い、白色沈殿物[Au(SMe2)][Cl] (695 mg, 2.360 mmol) を収率79 %で得た。
<実施例1> [C2mim][Au(SCN)2]の合成
室温で、アセトニトリル10 mlに溶解させたKSCN (458.60 mg, 4.719 mmol) を、同じくアセトニトリル65 mlに溶解させた[Au(Me2S)][Cl] (695 mg, 2.360 mmol) 溶液に滴下し加え、30分間撹拌した。吸引濾過により白色沈殿物であるKClを取り除き、回収した濾液に、少量のアセトニトリルに溶解させた [C2mim][Br] (450.93 mg, 2.360 mmol) を滴下し、20分間攪拌した。吸引濾過により白色沈殿物であるKBrを取り除き、回収した濾液からエバポレータで溶媒を取り除き、凍結乾燥後、淡橙色液体[C2mim][Au(SCN)2] (868 mg, 2.045 mmol) を収率86 %で得た。
【実施例】
【0064】
【表5】
JP0005522352B2_000012t.gif
【実施例】
【0065】
<実施例2> [C4mim][Au(SCN)2]の合成
室温で、アセトニトリル10 mlに溶解させたKSCN (458.60 mg, 4.719 mmol) を、同じくアセトニトリル65 mlに溶解させた[Au(Me2S)][Cl] (695 mg, 2.360 mmol) 溶液に滴下し加え、30分間撹拌した。吸引濾過により白色沈殿物であるKClを取り除き、回収した濾液に、少量のアセトニトリルに溶解させた [C4mim][Br] (517.02 mg, 2.360 mmol) を滴下し、20 分間攪拌した。吸引濾過により白色沈殿物であるKBrを取り除き、回収した濾液からエバポレータで溶媒を取り除き、凍結乾燥後、淡桃色液体[C4mim][Au(SCN)2] (771 mg, 1.704 mmol) を収率72 %で得た。
【実施例】
【0066】
【表6】
JP0005522352B2_000013t.gif
【実施例】
【0067】
<実施例3> [C6mim][Au(SCN)2]の合成
室温で、アセトニトリル 30 ml に溶解させた KSCN (1015 mg, 10.448 mmol) を、同じくアセトニトリル 140 ml に溶解させた[Au(SMe2)][Cl] (synthesized, 1539 mg, 5.224 mmol) 溶液に滴下し加え、60 分間撹拌した。吸引濾過により白色沈殿物である KCl を取り除き、回収した濾液に、少量のアセトニトリルに溶解させた [C6mim][Br] (1291 mg, 5.224 mmol) を滴下し、90 分間攪拌した。吸引濾過により白色沈殿物である KBr を取り除き、回収した濾液からエバポレータで溶媒を留去し、凍結乾燥後、橙色液体[C6mim][Au(SCN)2] (2107 mg, 4.198 mmol) を収率 80 % で得た。
【実施例】
【0068】
【表7】
JP0005522352B2_000014t.gif
【実施例】
【0069】
[励起-発光スペクトル]
図1は、室温(上段:R.T.)および液体窒素温度(下段:77K)における励起-発光スペクトルである。縦軸は励起波長(nm)、横軸は発光波長(nm)を示す。左は[C2mim](Au(SCN)2)、中央は[C4mim](Au(SCN)2)、右は[C6mim](Au(SCN)2)である。
【実施例】
【0070】
発光プロファイルは全体を通じて低温では発光ピークが3箇所、室温では発光ピークが2箇所観察された。それぞれのピークに対応する励起波長の紫外光を照射することで、低温ではオレンジ色(341-345 nmで励起)から白色(370-430 nmで励起)へと励起波長によって発光波長と発光色が変化した。
【実施例】
【0071】
室温においても励起波長の変化に応じて発光波長は青白(380-395 nmで励起)から淡い青白(410-440 nmで励起)へと変化した。
【実施例】
【0072】
アルキル鎖長を長くすると発光強度の若干の減衰が見られるものの、大きなピーク波長のシフトや消滅・生成は観測されず、僅かな変化は発光波長の領域が狭くなる程度でアルキル鎖の長いものほど色の変化が狭い波長範囲で起こるようになった。
【実施例】
【0073】
発光ピークの帰属としては、室温における2つのピーク([C2mim](Au(SCN)2):[em:447nm, ex:387nm], [em:522nm, ex:429nm]、[C4mim](Au(SCN)2):[em:448nm, ex:384nm], [em:521nm, ex:435nm]、[C6mim](Au(SCN)2):[em:357nm, ex:302nm], [em:449nm, ex:373nm])はイオン液体の1-アルキル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナトによるものと考えられる。また、低温で現れる3つ目の長波長側のピーク([C2mim](Au(SCN)2):[em:581nm, ex:341nm]、[C4mim](Au(SCN)2):[em:576nm, ex:346nm])は金の多量体[Au(SCN)2]n-の形成によるものであると考えられる。
<実施例4>
実施例2において合成した試料を有機溶媒に垂らし、約50mMとなるように調整した溶液を低温(77K)で紫外光(365nm)により感光させた。
【実施例】
【0074】
図2は、その加溶媒感光(ソルボルミネッセンス)の様子を示す。用いた有機溶媒は左から、[C4mim]TFSI(青:1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド)、[C4mim]SCN(青:1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアナト)、THF(無発光:テトラヒドロフラン)、CHCl3(緑:クロロホルム)、CH2Cl2(緑:ジクロロメタン)、MeCN(オレンジ:アセトニトリル)、MeOH(茶:メタノール)、Me2CO(桃:アセトン)である。有機溶媒によって異なる色で発光し、視認性のある発光センシングが可能であることが明らかとなった。
<実施例5>
[C4mim]Br、[P6,6,6,14]Cl、および[Nm,8,8,8]BrとKSCNとをアセトン中で複分解させ、イオン液体を得た。
【実施例】
【0075】
得られたイオン液体に塩化金(I)無水物を溶解させ、有機溶媒に対する溶解性と比較した。塩化金(I)は、有機溶媒および飽和濃度のKSCN水溶液に対する溶解度は低く、室温でも77Kでも発光は見られなかったが、[C4mim]SCNには高濃度で溶解し、室温では弱い発光が、そして77Kで強い発光が見られた。[P6,6,6,14]SCNおよび[Nm,8,8,8]SCNでも同様であった。
【実施例】
【0076】
得られた試料について、分光光度計により室温と77Kで励起(Ex)・発光(Em)スペクトルを測定した。その結果を図3に示す。図中左はイオン液体として[C4mim]SCNを用いた場合、図中右はイオン液体として[P6,6,6,14]SCNを用いた場合を示す。
【実施例】
【0077】
イオン液体として[C4mim]SCNを用いた場合では、室温では341nm(Ex)、442nm(Em)に、77Kでは340nm(Ex)、446nm(Em)に強いピークが得られ、(Em)のピークが赤方偏移した。イオン液体として[P6,6,6,14]SCNを用いた場合では、室温では372nm(Ex)、475nm(Em)に、77Kでは369nm(Ex)、494nm(Em)に強いピークが得られ、(Em)のピークが赤方偏移した。これは温度変化に付随した固液相転移が起こり、金属原子間相互作用によってAuI-AuI距離が3.6Å以内となったため発光したことに起因すると考えられる。
<実施例6>
[C4mim]SCN、[P6,6,6,14]SCN、[P6,6,6,14]Cl、[C4mim]TFSI、MeCN、EtOH、Me2CO、CH3Clを溶媒として、塩化金(I)無水物を溶解させ、溶解性を比較した。その結果を表1に示す。
【実施例】
【0078】
【表8】
JP0005522352B2_000015t.gif
【実施例】
【0079】
溶媒としてイオン液体[C4mim]SCN、[P6,6,6,14]SCNを用いた場合には、塩化金(I)は不均化せず多量に安定に溶解した。溶媒としてイオン液体[P6,6,6,14]Cl、[C4mim]TFSIを用いた場合では、溶解したがその程度はやや低下した。
【実施例】
【0080】
一方、溶媒としてMeCN、EtOH、Me2CO、CH3Clを用いた場合では、不均化反応:3AuCl2-→2Au(s)+AuCl4-+2Cl-が目立ち、溶解性は大きく低下した。
<実施例7>
透明基板の上に実施例1で合成した金(I)錯塩[C4mim][Au(SCN)2] を1滴(10μl未満)垂らし、77Kで凍結した。この基板に白色蛍光灯または紫外光ランプからの光(365nm)を照射し、発光の有無を観測した。その結果を図4に示す。図4(a)は白色蛍光灯照射、図4(b)は紫外光ランプ照射の場合を示し、図4(c)はブランク、図4(d)は金(I)錯塩を適下後、基板上で展開して凍結し紫外光ランプを照射した場合を示す。
【実施例】
【0081】
基板上の金(I)錯塩の薄膜は、紫外光ランプ照射により白色に強く発光することが確認された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3