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明細書 :N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド及びN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドからなる高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出する抽出剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5354586号 (P5354586)
公開番号 特開2010-271243 (P2010-271243A)
登録日 平成25年9月6日(2013.9.6)
発行日 平成25年11月27日(2013.11.27)
公開日 平成22年12月2日(2010.12.2)
発明の名称または考案の名称 N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド及びN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドからなる高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出する抽出剤
国際特許分類 G21F   9/06        (2006.01)
B01D  11/04        (2006.01)
FI G21F 9/06 581H
B01D 11/04 B
請求項の数または発明の数 9
全頁数 11
出願番号 特願2009-124516 (P2009-124516)
出願日 平成21年5月22日(2009.5.22)
審査請求日 平成24年4月18日(2012.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人日本原子力研究開発機構
発明者または考案者 【氏名】佐々木 祐二
【氏名】森田 泰治
【氏名】北▲辻▼ 章浩
【氏名】木村 貴海
個別代理人の代理人 【識別番号】100140109、【弁理士】、【氏名又は名称】小野 新次郎
【識別番号】100089705、【弁理士】、【氏名又は名称】社本 一夫
【識別番号】100075270、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 泰
【識別番号】100080137、【弁理士】、【氏名又は名称】千葉 昭男
【識別番号】100096013、【弁理士】、【氏名又は名称】富田 博行
【識別番号】100112634、【弁理士】、【氏名又は名称】松山 美奈子
審査官 【審査官】村川 雄一
参考文献・文献 木村貴海,「核燃料サイクルのためのアクチノイドの分離研究」,平成17年度「アクチニド元素の化学と工学」,京都大学原子炉実験所,2006年 1月19日,第129-146頁
佐々木祐二 外3名,「新規ジアミド系抽出剤、DOODAによるアクチノイドの抽出」,日本原子力学会2009年秋の大会予稿集,日本原子力学会,2009年 8月28日,K39(第546頁)
調査した分野 G21F 9/06
B01D 11/04
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド。
【請求項2】
前記Rは、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びエチルヘキシル基から選択される、請求項1に記載のN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド。
【請求項3】
3,6-ジオキサオクタン二酢酸を塩素化物を利用し、塩素化反応させて酸塩化物を生成させ、その後、塩素回収剤の存在下で二級アミン化合物を氷点下で冷却しながら添加して緩やかに反応させ、得られた生成物を水、水酸化ナトリウム及び塩酸溶液で洗浄し、シリカゲルカラムに繰り返し通して単離精製することによって製造することができる一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドの製造方法。
【請求項4】
前記二級アミン化合物は、ジ-n-オクチルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン及びエチルヘキシルアミンからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩素化物は塩化チオニルであり、前記塩素回収剤はトリエチルアミンである、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示されるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドからなる、高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出するための抽出剤。
【請求項7】
前記Rは、オクチル基、デシル基、ドデシル基及びエチルヘキシル基から選択される、請求項6に記載の抽出剤。
【請求項8】
高レベル放射性廃液中の三価、四価及び六価のアクチニドを溶媒抽出する、請求項6又は7に記載の抽出剤。
【請求項9】
U、Pu、Am、La、Ndを溶媒抽出する、請求項6又は7に記載の抽出剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物であるN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド及びN,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミドを用いる高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出する抽出剤に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力分野では、使用済み燃料溶解液中のU、Puを分離した後に発生する高レベル放射性廃液中のAm、Cmなどの長半減期核種を分離して核変換する研究が進められている。このような研究は、地層処分時の環境中の長期的危険性の排除、ガラス固化体の減容化にとって重要である。この長半減期核種分離法の開発は、現在UREX(Uranium Extraction:ウラン抽出)やDIAMEX(Diamide Extraction:ジアミド抽出)プロセスなどで世界的に進められている。UREXプロセスでは抽出剤としてCMPO(carbamoylmethyl phosphine oxide)の利用、DIAMEXプロセスでは抽出剤としてマロンアミドの利用が検討されている(非特許文献1及び2)。また、日本で研究開発が進められている先進湿式分離プロセスではテトラオクチルジグリコールアミド(以下「TODGA」と略す)の利用が検討されている(非特許文献3)。TODGAは、高レベル放射性廃液から微量のアクチニド(Am(III)及びCm(III))及びTc(VII)を回収するために有用である。TODGAは容易に合成することができ、高い抽出性を示し、燃焼後に灰化するために、高レベル放射性廃液から放射性金属イオンを分離するために有用である。
【0003】
しかしながら、CMPOは、希釈剤のドデカン中でやや不安定であり、トリブチルフォスフェート(Tributyl Phosphate)(以下「TBP」と称す)を併用しなければならない。マロンアミドは、Am、Cmの分配比が低い。TODGAは、反応性が高いため、Pd(II)及びZr(IV)などの共存金属イオンまでも抽出してしまい、これらの金属キレートは第三相を形成し、目的とする元素の分離が困難である。よって、これらの金属は、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(以下「HEDTA」と称す)及びシュウ酸などのマスキング剤を用いて水相中に安定化させなければならない。
【0004】
さらに、高レベル放射性廃液は硝酸水溶液であり、溶媒抽出に用いる有機溶剤として毒性が低く安定なドデカンが好適であるが、これまで提案されている抽出剤はドデカン中での安定性に劣り、使用することができなかった。
【0005】
したがって、ドデカン中で安定であり、アクチニド元素に対する分配比がやや高く、さらにアクチニド元素と分離する共存元素の分配比が低い抽出剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】G.F. Vandegrift, M.C. Regalbuto, S.B. Aase, H.A. Arafat et. al. Lab-scale demonstration of the UREX+ process, 2004, http://www.cmt.anl.gov/Science_and_Technology/Process_Chemistry/Publications/WasteManagement04.pdf
【非特許文献2】D.S. Purroy, P. Baron, B. Christiansen, J.P. Glatz, C. Madic, R. Malmbeck, G. Modolo, First demonstration of a centrifugal solvent extraction process for minor actinides from a concentrated spent fuel solution, 2005, http://www-ist.cea.fr/publicea/exl-doc/200500005464.pdf
【非特許文献3】小山智造、青瀬晋一、小泉務、再処理システムに関する要素技術開発-先進湿式再処理技術-、2004, http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/gihou/pdf2/n24b-09.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ドデカン中で安定であり、アクチニド元素及びランタニド元素に対する分配比がやや高く、さらにアクチニド元素及びランタニド元素と共存する元素の分配比が低い、高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を抽出する抽出剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討の結果、新規なジオキサオクタンジアミド化合物が、上記課題を解決し得ることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示される新規化合物:N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA化合物」と略す)が、高レベル放射性廃液からのアクチニド(以下「An」と略す)(III)、(IV)、(VI)などの金属イオン及び核分裂生成物(以下「FP」と略す)の溶媒抽出に適することを知見し、本発明を完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明によれば、一般式:(CHOCHCON(R)(Rはアルキル基)で示される長いアルキル鎖を有する新規化合物:N,N,N’,N’-テトラアルキル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド及び当該DOODA化合物からなる高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出する抽出剤が提供される。
【0011】
上記一般式中Rで示されるアルキル基としては、オクチル基、デシル基、ドデシル基とエチルヘシキル基を好ましく挙げることができる。よって、本発明のDOODA化合物としてはN,N,N’,N’-テトラオクチル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-オクチル」と略す)、N,N,N’,N’-テトラデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-デシル」と略す)、N,N,N’,N’-テトラドデシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-ドデシル」と略す)、N,N,N’,N’-テトラエチルヘキシル-3,6-ジオキサオクタン-1,8-ジアミド(以下「DOODA-エチルヘキシル」と略す)を好ましく挙げることができる。本発明のDOODA化合物のうち、代表的なDOODA-オクチルは以下の構造式を有する。
【0012】
【化1】
JP0005354586B2_000002t.gif

【0013】
本発明のDOODA化合物は、長いアルキル鎖を有し、疎水性が高いためドデカンによく溶解し、空気中で安定に存在する。さらにAn(III)、(IV)、(VI)と強く錯形成する4座配位能力を有する中性配位子である。また、本発明のDOODA化合物は、炭素、水素、酸素、窒素からなる化合物であり、二次廃棄物の発生量を低減することができる。
【0014】
本発明のDOODA化合物は、3,6-ジオキサオクタン二酢酸を塩化チオニルを代表とする塩素化物を利用し、塩素化反応させて酸塩化物などの中間生成物を生成させ、その後、トリエチルアミンを代表とする塩素回収剤などの存在下でジ-n-オクチルアミンなどの二級アミン化合物を氷点下で冷却しながら添加して緩やかに反応させ、得られた生成物を水、水酸化ナトリウム及び塩酸溶液で洗浄し、シリカゲルカラムに繰り返し通して単離精製することによって製造することができる。DOODA化合物のアルキル基は、二級アミン化合物により変えることができる。例えば、DOODA-オクチルはジ-n-オクチルアミンを用いるが、DOODA-デシルはジデシルアミンを用い、DOODA-ドデシルはジドデシルアミンを用い、DOODA-エチルヘキシルはジエチルヘキシルアミンを用いて、製造することができる。
【0015】
塩素化反応は、アルゴン雰囲気で、塩化チオニルなどの試薬を攪拌しながら2~3時間かけてゆっくり加え、酢酸エチルなどの溶媒中で行うことができる。なお、余分な塩化チオニル(沸点79℃)は緩やかに加温することで蒸発させることが好ましい。
【0016】
二級アミン化合物の使用量は、塩素化により得られた化合物100質量部に対して、120質量部とすることが好ましい。上記使用量を超えると、反応液内に未反応残分が多く生じるようになり、精製が困難になり、経済性の点からも不都合である。
【0017】
なお、3,6-ジオキサオクタン二酢酸は、トリエチレングリコール(CHOCOH))100質量部に対して、約5倍当量の濃硝酸(市販品の1/2濃度)を用いて温度70~90℃で2時間程度加熱還流を行い、再結晶化させて精製することにより得ることができる。
【0018】
本発明のDOODA化合物は、使用済みウラン燃料再処理後の高レベル放射性廃液など各種廃水から、ウラン、プルトニウム、ネプツニウム(3,4,6価)、アメリシウム等のアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出分離する抽出剤として用いることができ、特に、An(III)、(IV)、(VI)の抽出に好適である。中でも、DOODA-オクチル、DOODA-デシル及びDOODA-ドデシルは、それぞれオクチル基、デシル基及びドデシル基を有するため、高レベル放射性廃液からの放射性元素抽出に用いられる希釈剤であるn-ドデカンに良く溶ける。また、本発明のDOODA化合物は、使用済みウラン燃料の溶解に用いられる硝酸溶液中のU、Pu、Am、Tcなどのアクチニド元素及びランタニド元素をn-ドデカンに抽出する際に比較的高い分配比を持ち、その他の元素、特にPd、Zr、Cs、Srに対して高い分配比を持たないため、目的とする放射性元素の抽出分離に適する。よって、抽出後にこれら不要な元素と目的とする放射性元素とを分離するために追加の薬剤を使用する必要がない。また、追加の薬剤を使用する必要がないので、抽出後にDOODA化合物を容易に再利用することができる。さらに、本発明のDOODA化合物を構成する元素は、炭素、水素、酸素及び窒素だけであるため、毒性がなく、焼却処分が可能である。
【0019】
本発明のDOODA化合物からなる抽出剤を用いる高レベル放射性廃液からのアクチニド元素及びランタニド元素の溶媒抽出方法は、以下の通りである。
【0020】
DOODA化合物をn-ドデカン(溶剤)に溶解し、得られた溶液を高レベル放射性廃液(1~6M硝酸溶液)と混合し、室温ないし25℃で10~20分間振とうさせる(液-液混合法)。DOODA化合物の使用量は、例えばAnを回収する場合にはモル濃度で0.1~0.2Mの範囲が好ましいが、放射性廃液中の高濃度のAnの定量的な回収についてはより高濃度とする。DOODA化合物と処理対象である高レベル放射性廃液との混合比は処理対象である金属の含有量によっても異なるが、1:2の化学反応を起こす事が把握されていることもあり、一般的には容積比で0.01:1~1:0.01(=水相:有機相容積)の範囲内とすることが好ましい。
【0021】
本発明のDOODA化合物からなる抽出剤は、以下の特徴を有する。
(1)安価に入手可能な物質から簡単な合成方法で得ることができる新規化合物からなる。
(2)U、Pu、Am、Tcなどのアクチニド元素及びランタニド元素と強い親和性を有し、酸性溶液中のアクチニドイオン及びランタニドイオンをドデカンに抽出する際に比較的高い分配比を有するが、その他の元素、例えばPd、Zrなど第三相を生成しやすい元素や発熱性のCs、Srに対して高い分配比を有していない。よって、抽出後にこれら不要な元素と目的とする放射性元素とを分離するために追加の薬剤を使用する必要がない。また、追加の薬剤を使用する必要がないので、抽出後にアクチニド元素及びランタニド元素と分離してDOODA化合物を容易に回収し再利用することができる。
(3)高レベル放射性廃液として多用されている硝酸水溶液及び従来の溶媒抽出分離法に用いられている溶媒であるn-ドデカンとの親和性に優れる。
(4)有機リンやアミン系と異なり毒性が低く、また、焼却処分可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の新規DOODA化合物は、n-ドデカン中で安定であり、アクチニド元素及びランタニド元素に対する分配比がやや高く、さらにアクチニド元素及びランタニド元素と共存する元素の分配比が低い、高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を溶媒抽出する際に用いられる抽出剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施例2により得られた硝酸濃度に対するアクチニド元素の分配比D(An)の依存性を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例2により得られたDOODA-オクチル濃度に対するアクチニド元素の分配比D(An)の依存性を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例4により得られた初期水相のNd濃度と抽出後有機相のNd濃度との関係を示すグラフである。

【実施例】
【0024】
[実施例1]
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
3,6-ジオキサオクタン二酢酸(アルドリッチ社製)10gと塩化チオニル(和光純薬社製)20gとを用いて塩素化を行った。溶媒としては酢酸エチルを100g用い、反応条件は、50~60℃、2~3時間とした。
【0025】
その後、この反応溶液中にジオクチルアミン(和光純薬社製)20gを5℃以下に冷却しながら2~3時間かけて添加し、添加終了後、一昼夜反応させた。反応終了後、シリカゲルカラムを用いて単離精製を行い、DOODA-オクチルを得た。得られたDOODA-オクチルは、窒素分析により98%を超える純度を有することが確認できた。また、DOODAのプロトンNMR測定において、0.8~1.7ppmに幾つかのピーク(オクチル基に帰属)、3.1~3.4ppmにトリプレット(オクチル基の窒素最近傍のプロトンに帰属)、3.8~4.2ppmにシングレット(エーテル酸素に結合するメチレン基のプロトンに帰属)が観測された。
【0026】
DOODA-オクチルは無極性溶媒のn-ドデカンに高い溶解性(1.1M以上の濃度の溶液を調製可能)を示した。
【0027】
ジオクチルアミンに代えて、ジドデシルアミンを用いた以外は上記と同様にして、DOODA-ドデシルを合成した。
【0028】
[実施例2]
0.1M DOODA-オクチルのn-ドデカン溶液を有機相に、水相には0.1~6Mの硝酸水溶液を用いて、Am、U、Puの溶媒抽出実験を行った。
【0029】
同濃度の硝酸で予め平衡させた0.1M DOODA-オクチルのn-ドデカン溶液からなる有機相2cmと、放射性同位体元素(U-233、Pu-238及びAm-241)及び非放射性元素を含む硝酸溶液である水相2cmと、を混合した。有機相と水相との混合物を25℃±0.1℃で2時間、機械的に振とうした後、遠心分離によって相分離させた。水相及び有機相の両者から0.50cmのサンプル溶液を取り出して、水相及び有機相のβ線及びα線を液体シンチレーションカウンター(Tri-Carb 1600 TR、Packard Instrument Company製)で測定し、各金属の分配比を測定した。抽出サンプルから調製したサンプル溶液中の非放射性金属イオンをICP-AES(SPS 3100、Seiko Instruments Inc製)又はICP-MS(SPQ 9000、Seiko-EG&G製)により計測した。
【0030】
DOODA-オクチルによるAnの抽出挙動を調べた結果を図1及び図2に示し、実測の分配比を表1に示す。図1は硝酸濃度に対するD(An)の依存性を示し、図2はDOODA-オクチル濃度に対するアクチニド元素の分配比D(An)の依存性を示す。図1及び図2における濃度Mはmol/dmを意味し、分配比Dは水相中金属濃度に対する有機相中金属濃度の比率([metal]org/[metal]aq)を意味する。
【0031】
【表1】
JP0005354586B2_000003t.gif

【0032】
図1より、U、Pu及びAmの分配比は硝酸濃度増加とともに増加することがわかる。硝酸の高濃度範囲における漸増は金属、抽出剤及びNO分子の凝集によるものと考えられる。3M HNOでの0.1M DOODA/n-ドデカンによる分配比Dは、U(VI)に対して5.2、Pu(IV)に対して27、Am(III)に対して7.8であった。これらの分配比は、多段抽出(バッチ試験と異なり、溶媒抽出を繰り返す方法、対象の実験条件で分配比5であったとしても、これを3回繰り返すことにより分配比は5×5×5=125が得られる)によりAn(III)、(IV)及び(VI)を定量的に抽出するために十分高い値である。
【0033】
異なる酸化状態に対する抽出性の順番は、An(IV)>An(III)≧An(VI)>An(V)であり、この傾向はTODGAを抽出剤とする場合と同様である。配位座を赤道面上に持つアクチノイドイオン(An(V)及び(VI))は、骨格中央に配位原子を持ち、3座以上の多座配位性の抽出剤により比較的低い分配比Dを示す。
【0034】
図2の直線の傾きは、抽出反応におけるDOODAの数を示す。分配比DとDOODA濃度との対数関係(log D-log[DOODA])は、DOODAの1分子又は2分子が抽出反応に寄与する一次依存性及び二次依存性を示す。図2におけるこれらのイオンに対する傾き(U(VI)に対して1.5±0.1)は、Pu(IV)及びAm(III)に対する傾き(Pu(IV)に対して1.7±0.1、Am(III)に対して2.0±0.1)よりも幾分低く、DOODA及びHNOに伴う多核錯体の存在を示唆する。濃縮された金属イオン抽出への適用を考慮すれば、分配比D及び負荷容量を高めるために、高濃度抽出剤が望ましい。TODGAは1000を超える高いアメリシウム分配比D(Am)を有するので、微量アクチニド元素抽出に高濃度TODGAを用いれば、有機相からの微量アクチニド元素の回収のための逆抽出及び抽出溶剤の再利用は困難となる。一方、DOODAは比較的低いが高濃度HNOでの定量的抽出には十分なアクチニド分配比D(An)を有し、0.1M HNOでのアクチニド分配比D(An)は約10-2である。したがって、DOODAを用いれば、抽出後に微量アクチニド元素を除去し、効果的にDOODAを回収することができる。
【0035】
[実施例3]
0.1M DOODA-オクチルのn-ドデカン溶液を有機相に、水相には0.1M及び3Mの硝酸水溶液を用いて、高レベル放射性廃液に共存する元素及び核分裂生成物の溶媒抽出実験を行った。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
JP0005354586B2_000004t.gif

【0037】
表2に示すように、3M HNO中のアクチニド元素(U、Pu、Am、Nd)及びランタニド元素及び0.1M HNO中Tc(VII)を抽出することができたが、他の金属は低い分配比Dを示した。特に、Zr(IV)及びPd(II)は、TODGAでは比較的高い分配比D(Zrは上記の条件で1000を超え、Pdはおよそ3)を示すが、DOODAでは低くなった。ミキサーセトラー装置の運転中に第三相の形成が抑制されることを考慮すれば、これらの金属イオンは、TODGAによる抽出では適切なマスキング剤を用いて水相中で安定化しなければならないことが明かである。しかし、DOODAによる抽出では、核分裂生成物の共抽出のために追加のマスキング剤を必要としない。
【0038】
実施例2で説明したように、分配比5以上を示す元素は、多段抽出を行うことによって定量的に抽出可能である。表2より、U(VI)、Pu(IV)、Am(III)、La(III)、Nd(III)が本発明のDOODA化合物によって高レベル放射性廃液から抽出可能であるといえる。一方、その他の元素の分配比は低く、高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を効率よく抽出分離できることがわかる。
[実施例4]
DOODAの抽出容量の測定を行った。使用した抽出剤はDOODA-オクチルとDOODA-ドデシルである。
【0039】
図3に、Ndを含有する硝酸溶液からなる水相とDOODA-オクチル又はDOODA-ドデシルのドデカン溶媒からなる有機相との間で溶媒抽出を行い、初期水相のNd濃度と抽出後有機相のNd濃度との関係を示した。図3の横軸は抽出前の水相のNd濃度を示し、縦軸は抽出後の有機相のNd濃度を示す。縦軸に対し最も高い値をその条件での抽出最大値とみなし、これにより抽出容量を求めることができる。
【0040】
図3より、水相のNd濃度増加とともに有機相中に抽出されるNd濃度も増加することがわかる。DOODA-オクチルでは、急激な減少が見られるがこれは第三相を生成するときに観測されるものである。DOODA-オクチルでの抽出容量は18.4mMと推測される。一方、DOODA-ドデシルはオクチルより長いアルキル鎖を導入しており、ドデカン中でより安定である。このため、第三相生成は認められない。抽出容量は25mM程度である。
【0041】
以上のことから、DOODA-ドデシルは第三相を生成せず、抽出容量は25mMであること、一方DOODA-オクチルは高い金属濃度条件で第三相を生成するため抽出容量はやや低く18.4mMであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のDOODA化合物は、高レベル放射性廃液からアクチニド元素及びランタニド元素を効率的に分離回収できる抽出剤として有用である。
【0043】
本発明のDOODA化合物からなる抽出剤は、従来の抽出剤では分離回収が困難であったAm、Cmなどのアクチニド元素を高レベル放射性廃液から分離抽出できる。本発明のDOODA化合物からなる抽出剤を用いて分離抽出したアクチニド元素及びランタニド元素を核変換技術に供して長期的な毒性を排除し、ガラス固化体の減容を実現できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2