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明細書 :マイクロ流体チップ内における磁気駆動マイクロツールの駆動機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5578615号 (P5578615)
公開番号 特開2011-255364 (P2011-255364A)
登録日 平成26年7月18日(2014.7.18)
発行日 平成26年8月27日(2014.8.27)
公開日 平成23年12月22日(2011.12.22)
発明の名称または考案の名称 マイクロ流体チップ内における磁気駆動マイクロツールの駆動機構
国際特許分類 B01J  19/00        (2006.01)
C12M   1/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI B01J 19/00 321
C12M 1/00 A
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2010-247910 (P2010-247910)
出願日 平成22年11月4日(2010.11.4)
優先権出願番号 2010109691
優先日 平成22年5月11日(2010.5.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年10月23日(2013.10.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】新井 史人
【氏名】萩原 将也
【氏名】川原 知洋
【氏名】山西 陽子
個別代理人の代理人 【識別番号】110000578、【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
審査官 【審査官】山本 吾一
参考文献・文献 特開2009-128037(JP,A)
実開昭60-103807(JP,U)
特開2011-055791(JP,A)
特表2002-500333(JP,A)
特開平06-312384(JP,A)
特開2008-008347(JP,A)
山西 陽子 Yoko Yamanishi,磁気マイクロツールによる微粒子のソーティング Sorting of Micro-particles using Magnetically Driven Micro-tools,日本ロボット学会誌 第27巻 第3号 Journal of the Robotics Society of Japan,日本,社団法人日本ロボット学会 The Robotics Society of Japan,第27巻
調査した分野 B01J 19/00
C12M 1/00
G01N 37/00
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
マイクロ流体チップ内に磁性を有する磁気駆動マイクロツールを配置し、駆動磁石を変位させることにより非接触にて駆動する駆動機構において、駆動磁石から発せられた駆動平面と垂直な方向の磁力成分と反対な方向の磁力を外部から印加するか、又は、駆動磁石の磁極を駆動方向と平行に設置して駆動方向と平行な磁束を発生させることにより、磁気駆動マイクロツールにかかる垂直抗力を低減するあるいはマイクロ流体チップに振動を印加することにより、磁気駆動マイクロツールにかかる摩擦力を低減することを特徴とする駆動機構。
【請求項2】
マイクロ流体チップ内に磁性を有する磁気駆動マイクロツールを配置し、駆動磁石を変位させることにより非接触にて駆動する駆動機構において、駆動磁石の磁極を磁気駆動マイクロツールに向けて配置した場合と比較して、反対向きの外力を印加する手段を有する、あるいは駆動磁石の磁極を磁気駆動マイクロツールの駆動方向と一致させる手段を有することで、上記磁気駆動マイクロツールにかかる駆動平面から受ける垂直抗力を低減することにより、磁気駆動マイクロツールを非接触で駆動することを特徴とする駆動機構。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動機構において、磁気駆動マイクロツールを挟んで駆動磁石の反対側にも磁石を配置することにより、磁気駆動マイクロツールが受ける磁力のうち、駆動平面と垂直な方向成分を低減することを特徴とする駆動機構。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動機構において、前記磁石の少なくとも一方は永久磁石または電磁石であることを特徴とする駆動機構。
【請求項5】
請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の駆動機構において、駆動磁石の磁極を磁気駆動マイクロツールの駆動方向と平行に設置することを特徴とする駆動機構。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動機構において、さらに駆動磁石の磁極方向長さが磁気駆動マイクロツールの駆動方向長さと同じであることを特徴とする駆動機構。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の駆動機構において、駆動磁石は永久磁石または電磁石である。
【請求項8】
請求項1に記載の駆動機構において、マイクロ流体チップ全体またはその一部に、100Hz以上の高周波の微小振動を加えることにより磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップとの間の摩擦を低減させることを特徴とする駆動機構。
【請求項9】
請求項8に記載の駆動機構において、直方体に形成されたマイクロ流体チップの6面のうちのいずれかの面に圧電セラミックス等の振動体を取り付け、振動体を100Hz以上の高周波で振動させることにより、マイクロ流体チップに高周波振動を加えることを特徴とする駆動機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ内において磁性体を磁力により駆動する駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
主に医療分野、医薬分野、品種改良といったバイオ系産業分野において、卵子、細胞、菌などの微粒子に対して、分離、分類、加工、選択、処理等の一連の操作が行われている。従来、このような微粒子に対する操作を行う装置として、永久磁石や電磁石により駆動される磁性体を加工した磁気駆動マイクロツールを使用して、微小流路を流れる微粒子に対して各操作を行うものがある(例えば、特許文献1または2または3参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2008-148677号公報
【特許文献2】特開2009-216571号公報
【特許文献3】特願2009-210903
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1または2に記載のような装置では、永久磁石や電磁石を、一方の端面を磁気駆動マイクロツールに向けて配置し、駆動磁石を動かしたり、電磁石に流す電流をON/OFFすることによって、磁気駆動マイクロツールを駆動している。
【0005】
しかし、駆動磁石と磁気駆動マイクロツールが重なりあっている領域では、駆動平面に対して磁力の垂直方向成分が強く発生するため、磁気駆動マイクロツールが駆動平面に強く引き付けられ、摩擦力が大きく発生する。
【0006】
そのため、磁力の駆動方向成分に対して静止摩擦力が上回り、駆動磁石の変位が微小の場合には磁気駆動マイクロツールが動かない問題が発生し、位置精度が悪く、磁気駆動マイクロツールの動きを正確に制御するのが困難であるという課題があった。
【0007】
図1は従来の磁気駆動マイクロツールの駆動原理を示す。駆動磁石5は磁極の一端3が磁気駆動マイクロツール1に向けられた状態で設置されるため、磁石5から発せられた磁束は磁気駆動マイクロツール1に対して駆動平面2と垂直方向の成分が大きく占め、結果駆動平面と磁気駆動マイクロツールとの間で垂直抗力が大きく発生する。
【0008】
そのため、静止摩擦力が大きく発生し、駆動磁石5の変位が微小の場合には磁力の駆動方向成分よりも静止摩擦力が勝り、磁気駆動マイクロツール1が動かない。駆動磁石5と磁気駆動マイクロツール1との距離が大きくなると、磁気駆動マイクロツール1が受ける磁力の駆動方向成分が垂直方向成分と比較して相対的に大きくなり、静止摩擦力を越えて動き出す。
【0009】
図2は従来の駆動機構により直径1mmの円柱形状のネオジム磁石9を駆動磁石として、直径1mmのニッケル材料で構成されたディスク型の磁気駆動マイクロツール8を駆動した時の、磁気駆動マイクロツール8が反応しない領域を示したものである。
【0010】
この条件下では磁石9と磁気駆動マイクロツール8との距離が0.534mmに達するまで磁気駆動マイクロツール8は動かなかった。
これに対し、電磁石により周期的に磁場を変化させて、磁気駆動マイクロツールを振動させることで摩擦を低減し制御性を向上させるものがある(たとえば、特許文献3参照)。
【0011】
しかし特許文献3に記載の機構では、周期的に磁場を変化させるために磁気駆動マイクロツールが振動し、その振動により例えば卵子の切断作業のような細胞操作においては切断面が破壊されるといった課題があった。
【0012】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、磁気駆動マイクロツールの動きを振動させることなく正確に制御することができる磁気駆動マイクロツールの駆動機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構は、マイクロ流体チップ内における磁気駆動マイクロツールが受ける摩擦力を低減することを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構は、磁性を有する磁気駆動マイクロツールを駆動するための磁気駆動マイクロツールの駆動機構であって、反対向きの外力を印加する手段を有する、あるいは駆動磁石の磁極を磁気駆動マイクロツールの駆動方向と一致させる手段を有することで、磁気駆動マイクロツールが駆動平面から受ける垂直抗力を低減することを特徴とする。
【0015】
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構では、磁気駆動マイクロツールに対して、駆動磁石から発せられた駆動平面と垂直な方向の磁力成分と反対な方向の磁力を外部から印加する、あるいは駆動平面と垂直な方向の磁束の発生を抑えることを特徴とする。駆動磁石としては、永久磁石でも電磁石であってもよい。
【0016】
磁気駆動マイクロツールに対して、駆動磁石から発せられた駆動平面と垂直な方向の磁力成分と反対な方向の磁力を外部から印加する方法としては、磁気駆動マイクロツールを挟んで駆動磁石と反対側に補助磁石をマイクロ流体チップ内に埋め込む。
【0017】
このとき、追加磁石の磁力が十分に大きければ、マイクロ流体チップ内に埋め込まず、チップの外からの印加でも構わない。また、駆動磁石および外部からの印加磁石は永久磁石でも電磁石でも磁場の向き、強さが時間変化しなければどちらでも構わない。
【0018】
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構で、駆動平面と垂直な方向の磁束の発生を抑える方法としては、磁石の磁極を駆動方向と平行に設置することが挙げられる。この時、磁石の磁極方向の厚みは磁気駆動マイクロツールの磁力を受ける部分と同じ大きさであることが好ましい。駆動磁石としては、永久磁石、電磁石のどちらでも構わない。
【0019】
本発明にかかる磁気駆動マイクロツールの駆動機構で、磁気駆動マイクロツールが受ける摩擦力を低減する方法としては、直方体に形成されたマイクロ流体チップのいずれかの面に圧電セラミックスのような振動体を取り付け、振動体を100Hz以上の高周波で振動させることにより、マイクロ流体チップ全体もしくはその一部を高周波で振動させる方法がある。
【0020】
これにより磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップの接触面において相対的に微小運動が生じる。磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップとの間では相対的に微小運動をしながらも、磁気駆動マイクロツールはマイクロ流体チップ外から磁石により磁力を受け、磁石の動きに合わせて駆動する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、磁気駆動マイクロツールを振動させることなく動きを正確に制御することができる磁気駆動マイクロツールの駆動機構を提供することができる。
磁気駆動マイクロツールが駆動平面から受ける垂直抗力を低減することにより、磁気駆動マイクロツールに働く摩擦力を低減させることができるため、駆動磁石に対する磁気駆動マイクロツールを追随性が向上し、動きを正確に制御することができる。
【0022】
磁気駆動マイクロツールに対して、駆動磁石から発せられた駆動平面と垂直な方向の磁力成分と反対な方向の磁力を外部から印加することで、磁気駆動マイクロツールの垂直抗力が打ち消され低減される。
【0023】
また、磁性体は両方の向きに引っ張られるため、マイクロ流体チップ内で斜めに傾き、駆動平面との間の接触面積が低減する。そのため磁気駆動マイクロツールが受ける摩擦力が低減し、駆動磁石に対する磁気駆動マイクロツールを追随性が向上し、動きを正確に制御することができる。
【0024】
磁石の磁極を駆動方向と平行に設置することにより、磁石のN極より発せられる磁束は駆動方向に流れ、磁気駆動マイクロツールを介して磁石のS極へとループ状に流れていく。
【0025】
そのため、設置してある磁石の中心上部付近では駆動平面に対して垂直に流れる磁束はほとんどなく、磁気駆動マイクロツールが駆動平面に引き寄せられる磁力が低減され摩擦が低減される。
【0026】
また、磁石の磁極方向の厚みは磁気駆動マイクロツールの磁力を受ける部分と同じ大きさに合わせることにより、磁石から発せられる磁束は磁気駆動マイクロツールに対して駆動方向から流れてくるため、駆動磁石を動かした際に磁気駆動マイクロツールが受ける磁力は駆動方向と一致し、磁力を効率よく駆動力に変換することが可能となる。
【0027】
これにより駆動磁石に対する磁気駆動マイクロツールを追随性が向上し、動きを正確に制御することができる。
マイクロ流体チップ下面に圧電セラミックスを取り付け100Hz以上高周波の振動をかけ、磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップとの接触面を振動させることにより、1秒間に数万から数百万回摩擦の方向が変わるため、磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップとの間の見かけの摩擦力を大幅に低減することができる。
【0028】
この見かけの摩擦力低減により、磁気駆動マイクロツールは駆動磁石に対して精密に追随することができ、位置決め精度をμmオーダーで達成することができる。
さらに駆動磁石に対して磁気駆動マイクロツールの追随性が向上することに伴い、磁気駆動マイクロツールは駆動磁石の動きに合わせて高速で駆動することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来の磁気駆動マイクロツールの駆動機構を表した図である。
【図2】従来の駆動機構において、磁気駆動マイクロツールが動かない領域を表した図である。
【図3】本発明の駆動機構のうち、駆動磁石から発せられた駆動平面と垂直な方向の磁力と反対な方向の磁力を外部から印加する際の構成を表した図である。
【図4】本発明の駆動機構のうち、駆動平面と垂直な方向の磁束の発生を抑える駆動の構成を表した図である。
【図5】本発明の駆動機構のうち、マイクロ流体チップに高周波振動を印加して摩擦を低減する駆動の構成を表した図である。
【図6】本発明による駆動機構と従来の駆動機構における磁気駆動マイクロツールの駆動磁石に対する追随性を示した図である。
【図7】本発明の駆動機構を利用して、2自由度に拡張した磁気駆動マイクロツール及び駆動機構の構成を示した図である。
【図8】本発明の駆動機構を利用して行う微粒子ソーティングチップと磁気駆動マイクロツールの構成を示した図である。
【図9】図7における磁気駆動マイクロツールの駆動機構を利用して、2自由度の駆動評価を行った結果である。
【図10】図7における磁気駆動マイクロツールの駆動機構を利用し、さらにマイクロ流体チップに高周波振動を印加して2自由度の駆動評価を行った結果である。
【図11】駆動速度、印加振動振幅を変化させた際の位置決め精度の変化を示した図である。
【図12】本発明の駆動機構を利用して行う卵子除核用チップと磁気駆動マイクロツールの構成を示した図である。
【図13】本発明の駆動機構を利用して行う微粒子ソーティングチップと磁気駆動マイクロツールの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構において、駆動磁石から発せられた駆動平面と垂直な方向の磁力と反対な方向の磁力を外部から印加する際の構成と原理を図3に示す。図3では磁気駆動マイクロツール1が受ける磁力の駆動平面と垂直方向成分と反対方向の力をマイクロ流体チップ7の中に組込んだ補助磁石6により加えることにより、磁気駆動マイクロツール1が駆動平面2から受ける垂直抗力が減少する。

【0031】
また、磁気駆動マイクロツール1は上下に引っ張られるためマイクロ流体チップ7内で斜めに傾き、駆動平面2との接触面積が低減することで、磁気駆動マイクロツール1が受ける摩擦力が大幅に低減され、駆動磁石5に対する追随性が向上し、動きを正確に制御することができる。

【0032】
図4は本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構において、駆動平面と垂直な方向の磁束の発生を抑える駆動の構成と原理を示す。磁石5は磁極方向の厚みが磁気駆動マイクロツールと同じ大きさであり、水平方向に設置された磁極3から流れる磁束は磁気駆動マイクロツール1を介してループ状に流れ、外に発散する磁束が非常に少なくなる。

【0033】
そのため、磁気駆動マイクロツール1に対して駆動平面2と垂直に流れる磁束は少なくなり、摩擦力が低減される。また磁束は磁気駆動マイクロツール1に対して駆動方向と平行に流れるため、駆動磁石5を動かした際に磁気駆動マイクロツール1が受ける磁力は駆動方向と一致し、磁力を効率よく駆動力に変換することが可能であるため、駆動磁石5に対する追随性が向上し、動きを正確に制御することができる。

【0034】
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの摩擦低減方法において、マイクロ流体チップに高周波振動を印加する際の構成と原理を図5に示す。
駆動平面2に振動体29を設置し、振動体を高周波で振動させることにより、駆動平面2及びマイクロ流体チップ7に高周波振動を加える。マイクロ流体チップ7内に配置した磁気駆動マイクロツール1は駆動平面2との間に相対運動を生じ、見かけの摩擦力が低減される。

【0035】
その状態において、駆動ステージ30上に設置した永久磁石5により、磁気駆動マイクロツール1に磁力を与え、永久磁石5の動きに合わせ駆動する。
磁気駆動マイクロツール1と駆動平面2との間のみかけの摩擦力は高周波振動により大幅に低減されるため、磁気駆動マイクロツール1は永久磁石5の動きに正確に追随し、位置決め精度は大幅に向上する。
[実施例1]
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構における、駆動磁石に対する動きの制御性能を評価する実験を行った。駆動磁石は直径1.0×1.0 mmのネオジム円柱磁石を用い、1軸リニアステージの上に設置した。

【0036】
また磁気駆動マイクロツールは直径1.0×0.05 mmのニッケル円板を用い、駆動磁石と磁気駆動マイクロツールとの相対位置は顕微鏡に取り付けたCCDカメラにより測定した。
図6は駆動磁石を0.5HzのSin波で、±1.5 mmのストロークにて変位させた時の磁気駆動マイクロツールの追随性を示している。

【0037】
駆動磁石の軌道10に対して、従来の駆動機構における磁気駆動マイクロツールの軌道11は駆動磁石10に対して0.3秒ほど遅れて動きだしており、駆動磁石10とのずれは最大1 mmに達している。

【0038】
このような立ち上がり誤差が大きい状態では、磁気駆動マイクロツールはマイクロ流体チップ内における細胞の動きについていくことがでない。またシステムの自動化を非常に困難にする。

【0039】
一方、マイクロ流体チップの中に補助磁石としてネオジム磁石を組み込み、駆動磁石の磁力の駆動平面に垂直な方向成分を低減した駆動機構12は、立ち上がり応答が従来の駆動機構11に対して10倍以上速く、駆動磁石とのずれ量も非常に小さくなっている。

【0040】
また、駆動磁石の磁極を駆動方向と平行に設置した駆動機構13も同様に、立ち上がり応答が従来の駆動機構11に対して10倍以上速く、駆動磁石とのずれ量も非常に小さくなっている。磁気駆動マイクロツールの精密位置決め、及び応答性は操作対象が小さな物体を扱うためのみならず、細胞操作の自動化を進める上でも非常に重要である。
[実施例2]
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構を利用することで、磁気駆動マイクロツールの2自由度での動きの制御についても向上させることができる。

【0041】
図7は2自由度磁気駆動マイクロツールのコンセプト図を示す。駆動源の永久磁石14,15の2つをそれぞれの極が同一軸上で駆動平面と平行なるよう設置する。そしてこの2つの永久磁石14,15の磁極と直交するよう2つの永久磁石16,17を設置し、かつ永久磁石16,17は同一軸上にあるように駆動ユニットを形成する。

【0042】
磁気駆動マイクロツールには4か所の円板18部を持ち、各永久磁石より磁力を受ける。各円板18部は細い支持部19で繋がれており、4つの円板18の相対位置がずれないようにしてある。

【0043】
円板の1か所の先端にはアーム部20を持ち、ここで細胞操作を行うことができる。これにより磁気駆動マイクロツールは2自由度において、駆動磁石ユニットに対する追随性が向上し、動きを正確に制御することができる。
[実施例3]
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構を利用して、マイクロ流体チップ内での微粒子ソーティングの実験を行った。図8はソーティングを行うための磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップの形状を示す。

【0044】
マイクロ流体チップ21の中に設置された2つの2自由度磁気駆動マイクロツール22は磁力を受ける各4か所ある直径1mmの円板部25とその先端に微粒子をソーティングするためのアーム部26を持ち、流れてきた微粒子27を複数に分岐された流路28にソーティングしていく。

【0045】
微粒子は投入ポート23より導入され、各流路に分岐されたのちに、観察部24にて微粒子の観察を行う。駆動磁石は磁極が駆動平面と平行になるようリニアステージ上で円板部25の下に各4か所設置され、その磁極方向の厚みは円板部25の直径と同サイズの1mmである。

【0046】
結果、磁気駆動マイクロツール22は駆動磁石に対して追随性よく駆動され、4つの磁石により磁気駆動マイクロツールのぶれも抑えられるため、微粒子の速い動きに対応してソーティングすることができる。

【0047】
また駆動磁石の微小な動きにも対応して磁気駆動マイクロツール22は動くため、ソーティングを行う分岐流路28の数をマイクロ流体チップ21の大きさを変えることなく増やすことができる。
[実施例4]
図9,10に図7の磁気駆動マイクロツール駆動機構を用いて、マイクロ流体チップに高周波振動を加えた場合と加えない場合とにおける磁気駆動マイクロツールの駆動評価を行った。

【0048】
高周波振動はマイクロ流体チップ下面に圧電セラミックスにより55kHzの振動を印加している。図9に示してある振動をかけない場合は、駆動磁石の軌跡31に対して磁気駆動マイクロツールの軌跡32は誤差平均84μm、標準偏差が28μmとなった。

【0049】
一方で図10に示すマイクロ流体チップに振動を加えた場合は、駆動磁石の軌跡31に対する磁気駆動マイクロツールの軌跡33における誤差が大幅に低減され、直径1■の円
を描いている。この時の軌跡のずれを測定した際の誤差平均は9.4μm、標準偏差が0.1μmと図9と比較しても10倍以上向上した。
[実施例5]
一般的に摩擦は速度に依存して変化することが知られており、またマイクロ流体チップに印加する振動の大きさによっても変化するため、マイクロ流体チップ内の磁気駆動マイクロツールにおける位置決め精度に影響を与える。

【0050】
図11に駆動速度、振動振幅を変化させた時の磁気駆動マイクロツールの位置決め精度を示す。速度が大きくなるにつれて位置決め精度はどの振動振幅においても劣化しており、その劣化する割合は振動振幅が大きいほど小さく抑えられる。

【0051】
しかし駆動速度が非常に小さい領域においては、位置決め精度が振動振幅の大きさに限りなく近づくため、振幅が小さい方が良好な位置決め精度を保っている。その際の最良の位置決め精度は振動をかけない場合と比較して100倍以上向上し、1.1μmを達成した。
[実施例6]
本発明に係る磁気駆動マイクロツールの駆動機構を利用して、卵子の除核作業を行った。卵子の除核作業には細胞を切り取るだけの力と、核の部位のみを選択して切り取るための位置決め精度が要求される。

【0052】
本発明により、永久磁石の力から得られるmNオーダーの強い力を磁気駆動マイクロツールは有することができ、またμmオーダーの位置決め精度のおかげで核の部位のみを選択して切断することが容易に達成可能である。

【0053】
図12に除核用のマイクロ流体チップと磁気駆動マイクロツールを示す。卵子34は投入口37よりマイクロ流体チップ40内に培養液と共に投入され、流体力により磁気駆動マイクロツール36が配置されたエリアまで流れてきたところで、磁気駆動マイクロツール36により、核35の位置を確認しながら回転させて姿勢制御をした上で、核35の部位を磁気駆動マイクロツール36で切り取る。

【0054】
取り除かれた核は核排出口38に続く流路に流れていき、廃棄される。一方、切断された卵子は回収口39へと続く流路へ流れていき、回収されて後工程へと回される。
[実施例7]
本発明に係る高周波振動をマイクロ流体チップに印加して摩擦を低減する磁気駆動マイクロツールの駆動機構を利用して、マイクロ流体チップ内での微粒子ソーティングの実験を行った。図13はソーティングを行うための磁気駆動マイクロツールとマイクロ流体チップの形状を示す。

【0055】
微粒子は投入口41よりマイクロ流体チップ内に投入され、流体力によりソーティング用磁気駆動マイクロツール42が配置されているエリアまで流れてくる。磁気駆動マイクロツール42により、振り分けたい流路以外の流路を全て塞ぐことで流体流れを望みの流路に誘導し、そこに流れる微粒子をソーティングすることができる。

【0056】
高周波振動の印加により磁気駆動マイクロツール42の位置決め精度が本発明により飛躍的に向上し、μmオーダーを達成可能であるため、チップ内に分岐する流路の数を飛躍的に増やすことができる。

【0057】
図13の例では、流路間隔を10μmとし、3mm×3mmのマイクロ流体チップの中に100分岐設けることが可能である。またソーティングの処理速度を高めるために、微粒子の速度を上げると磁気駆動マイクロツールにかかる流圧が上がり抵抗が大きくなるが、本発明により磁気駆動マイクロツールは永久磁石の強い発生力を有するため、高い流圧に抗して駆動を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 磁気駆動マイクロツール
2 駆動平面
3 駆動磁石の一方の磁極
4 駆動磁石のもう一方の磁極
5 駆動磁石
6 補助磁石
7 マイクロ流体チップ
8 直径1mm×0.05mmのニッケルで構成された磁気駆動マイクロツール
9 直径1mm×1mmのネオジムで構成された駆動磁石
10 駆動磁石の軌跡
11 従来の駆動機構における磁気駆動マイクロツールの軌跡
12 補助磁石を用いた時の磁気駆動マイクロツールの軌跡
13 駆動磁石の磁極を駆動方向と平行に設置したときの磁気駆動マイクロツールの軌跡
14 2自由度に拡張するための駆動磁石1
15 2自由度に拡張するための駆動磁石2
16 2自由度に拡張するための駆動磁石3
17 2自由度に拡張するための駆動磁石4
18 磁気駆動マイクロツールが磁力を受ける円板部
19 磁気駆動マイクロツールにおける円板部をつなぐ支持部
20 磁気駆動マイクロツールにおける細胞操作部
21 微粒子ソーティング用マイクロ流体チップ
22 微粒子ソーティング用磁気駆動マイクロツール
23 微粒子投入ポート部
24 微粒子観察ポート部
25 微粒子ソーティング用磁気駆動マイクロツールにおける磁力を受ける円板部
26 微粒子ソーティング用磁気駆動マイクロツールにおけるソーティングアーム部
27 微粒子
28 微粒子をソーティングする流路
29 振動体
30 駆動ステージ
31 駆動磁石の軌跡
32 振動をかけない場合の磁気駆動マイクロツールの軌跡
33 振動をかけた場合の磁気駆動マイクロツールの軌跡
34 卵子
35 核
36 ブレード型磁気駆動マイクロツール
37 卵子投入口
38 核排出口
39 除核卵子回収口
40 卵子除核用マイクロ流体チップ
41 微粒子投入口
42 微粒子ソーティング用磁気駆動マイクロツール
43 微粒子
44 微粒子をソーティングする流路
45 微粒子観察ポート部
図面
【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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