TOP > 国内特許検索 > 機能性コンポストの製造方法、機能性コンポスト及び糸状菌増殖用コンポスト > 明細書

明細書 :機能性コンポストの製造方法、機能性コンポスト及び糸状菌増殖用コンポスト

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5334263号 (P5334263)
登録日 平成25年8月9日(2013.8.9)
発行日 平成25年11月6日(2013.11.6)
発明の名称または考案の名称 機能性コンポストの製造方法、機能性コンポスト及び糸状菌増殖用コンポスト
国際特許分類 C05F  11/08        (2006.01)
C09K  17/32        (2006.01)
A01N  63/00        (2006.01)
A01P   3/00        (2006.01)
C12N   1/00        (2006.01)
C12N   1/14        (2006.01)
C09K 101/00        (2006.01)
FI C05F 11/08
C09K 17/32 H
A01N 63/00 F
A01P 3/00
C12N 1/00 S
C12N 1/14
C09K 101:00
請求項の数または発明の数 26
全頁数 23
出願番号 特願2009-517862 (P2009-517862)
出願日 平成20年6月2日(2008.6.2)
国際出願番号 PCT/JP2008/060169
国際公開番号 WO2008/149846
国際公開日 平成20年12月11日(2008.12.11)
優先権出願番号 2007145697
優先日 平成19年5月31日(2007.5.31)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成23年5月25日(2011.5.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】中崎 清彦
【氏名】鈴木 伸章
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】天野 宏樹
参考文献・文献 国際公開第2006/085567(WO,A1)
特開2003-009575(JP,A)
特開平09-020891(JP,A)
特開2002-204685(JP,A)
特開2004-352602(JP,A)
Sun-Young AN, Mika ASAHARA, Keiichi GOTO, Hiroaki KASAI, Akira YOKOTA,Virgibacillus halophilus sp. nov., spore-forming bacteria isolated from soil in Japan,International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology,英国,Society for General Microbiology,2007年 7月,vol.57,p.1607-1611
調査した分野 C05F11/08
A01G7/00
C09K17/32
C12N1/00
C12N1/14
C09K101/00
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の(1)~(3)からなる群より選択された少なくとも1つとして示される細菌類の活動制限状態にあるコンポストに、機能を有する糸状菌を接種すること、
(1)pH5~7である制限pH状態
(2)20%~40%である制限水分状態
(3)CO発生速度が最大となった後にCO発生速度1×10-5mol/h/g乾燥コンポスト~3×10-5mol/h/g乾燥コンポストである栄養制限状態
前記糸状菌を、前記コンポスト内で培養して選択的に増殖させること、
を含む機能性コンポストの製造方法。
【請求項2】
糸状菌の生育条件で活動可能な糸状菌共存生育可能細菌類を含むコンポストであって、以下の(1)~(3)からなる群より選択された少なくとも1つとして示される前記糸状菌共存生育可能細菌類以外の細菌類の活動制限状態のコンポストに、機能を有する糸状菌を接種すること、
(1)pH5~7である制限pH状態
(2)20%~40%である制限水分状態
(3)CO発生速度が最大となった後にCO発生速度1×10-5mol/h/g乾燥コンポスト~3×10-5mol/h/g乾燥コンポストである栄養制限状態
前記糸状菌を、前記コンポスト内で培養して前記糸状菌共存生育可能細菌類と共に選択的に増殖させること、
を含む、機能性コンポストの製造方法。
【請求項3】
前記細菌類の活動制限状態が、少なくとも前記(3)栄養制限状態を含む請求項1又は2記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項5】
前記細菌類の活動制限状態のコンポストを作製する工程を更に含む請求項1又は2記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項6】
前記細菌類の活動制限状態のコンポストを作製する工程が、有機廃棄物を栄養制限状態となるまで腐熟させる工程である請求項5記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項7】
前記コンポスト内で糸状菌を培養する際の培養温度が、10℃~35℃である請求項1又は2記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項8】
前記糸状菌共存生育可能細菌が、バージバチラス・ハロフィラスである請求項2記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項9】
前記糸状菌共存生育可能細菌が、I30-1株(FERM ABP-10975)である請求項2記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項10】
前記機能を有する糸状菌が、植物病害防除機能及び土壌改質機能の少なくとも一方を有する糸状菌である請求項1又は2記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項11】
前記植物病害防除機能を有する糸状菌がヒトヨタケである請求項10記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項12】
前記ヒトヨタケは、ヒメツブヒトヨタケ(Coprinus curtus)、ウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、イヌセンボンダケ(Coprinus disseminatus)、ササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)、ヒトヨタケ(Coprinus atramentarius)、コキララタケ(Coprinus radiatns)、センボンクヌギタケ(Psathyrella multissima)、イタチタケ(Psathyrella candolliana)およびムジナタケ(Psathyrella velutina)からなる群より選択された少なくとも1つである請求項11記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項13】
ヒトヨタケは、ヒメツブヒトヨタケGM-21株(NITE BP-37)である請求項11記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項14】
糸状菌を植物病原菌とする植物病害防除機能を有する請求項11記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項15】
前記植物病原性糸状菌がリゾクトニア属及びフザリウム属の少なくとも一方に属する糸状菌である請求項14記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項16】
前記植物病原性糸状菌がリゾクトニア属及びフザリウム属の少なくとも一方に属する糸状菌であり、前記植物病害防除機能を有する糸状菌がヒトヨタケである請求項14記載の機能性コンポストの製造方法。
【請求項17】
機能を有する糸状菌を含む請求項1記載の製造方法により得られた機能性コンポスト。
【請求項18】
機能を有する糸状菌と糸状菌共存生育可能細菌とを含む請求項2記載の製造方法により得られた機能性コンポスト。
【請求項19】
前記機能を有する糸状菌が、植物病害防除機能及び土壌改質機能の少なくとも一方を有する糸状菌である請求項17又は18記載の機能性コンポスト。
【請求項20】
前記糸状菌共存生育可能細菌が、バージバチラス・ハロフィラスである請求項18記載の機能性コンポスト。
【請求項21】
前記糸状菌共存生育可能細菌が、I30-1株(FERM ABP-10975)である請求項18記載の機能性コンポスト。
【請求項22】
以下の(1)~(3)からなる群より選択された少なくとも1つとして示される細菌類の活動制限状態にある糸状菌増殖用コンポスト:
(1)pH5~7である制限pH状態
(2)20%~40%である制限水分状態
(3)CO発生速度が最大となった後にCO発生速度1×10-5mol/h/g乾燥コンポスト~3×10-5mol/h/g乾燥コンポストである栄養制限状態。
【請求項23】
糸状菌の生育条件で活動可能な糸状菌共存生育可能細菌類を含み、以下の(1)~(3)からなる群より選択された少なくとも1つとして示される前記糸状菌共存生育可能細菌類以外の細菌類の活動制限状態にある糸状菌増殖用コンポスト:
(1)pH5~7である制限pH状態
(2)20%~40%である制限水分状態
(3)CO発生速度が最大となった後にCO発生速度1×10-5mol/h/g乾燥コンポスト~3×10-5mol/h/g乾燥コンポストである栄養制限状態。
【請求項24】
前記細菌類の活動制限状態が、少なくとも前記(3)栄養制限状態を含む請求項22又は23記載の糸状菌増殖用コンポスト。
【請求項26】
前記糸状菌が、植物病害防除機能及び土壌改質機能の少なくとも一方を有する糸状菌である請求項22又は23記載の糸状菌増殖用コンポスト。
【請求項27】
前記糸状菌共存生育可能細菌が、バージバチラス・ハロフィラスである請求項23記載の糸状菌増殖用コンポスト。
【請求項28】
前記糸状菌共存生育可能細菌が、I30-1株(FERM ABP-10975)である請求項23記載の糸状菌増殖用コンポスト。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性コンポストの製造方法、機能性コンポスト及び糸状菌増殖用コンポストに関する。
【背景技術】
【0002】
糸状菌すなわちカビには種々の機能があることが知られており、これらの機能を種々の分野で有効利用することが行われている。
例えば糸状菌の中には病原性糸状菌によって引き起こされる植物病害を防除する機能を有するものがある。病原性糸状菌は、キャベツ、キュウリ、トマト、ナス、小松菜などの多くの野菜、稲などの農産物の他、花、樹木、芝生等に、立枯病、根腐病、葉腐病、萎凋病などの病害を発病させる原因となる。これらの糸状菌としては、リゾクトニア属、フザリウム属、ピシウム属、トリコデルマ属、スクレロチウム属などがよく知られている。また、これらの糸状菌による植物病害を防除するためには、一般に薬剤、いわゆる化学農薬が散布されるが、より環境への安全性が高いと想定される微生物を利用した生物防除(いわゆる微生物農薬)方法が提案され、その一部は実用化されている。
【0003】
その例としては、シュードモナス属細菌を利用して糸状菌による植物病害の防除を行う技術(例えば特開平11-187866号公報参照)、非病原性トリコデルマ属やムコール属の糸状菌を利用する技術(例えば特開平10-150978号公報参照)や非病原性フザリウム属糸状菌を利用する技術(例えば国際公開第97/31521号パンフレット参照)が知られている。
その一方で、このような病原性糸状菌に対して防除機能を有する特定の糸状菌が見出されており、残留性がなく安定して防除効果を有する植物病害防除剤として利用する技術が開発されている(例えば国際公開第2006/085567号パンフレット参照)。このような植物病害防除剤をコンポストに担持させれば、植物病害防除効果を安定して得ることができると共に、土壌改良効果まで期待できる。
【0004】
また、その他の機能を有する糸状菌として担子菌である白色腐朽菌を、C/N比30~35の菌床で増殖させることによって得られるダイオキシンなどの有機塩素化合物分解材が知られている(例えば、特開2003-334061号公報参照)。またトリコデルマ属に属する糸状菌には、石油類、特に原油やその難分解成分である芳香族炭化水素画分に対して顕著な分解活性を有することが知られている(例えば、特開平06-319529号公報参照)。
【0005】
しかしながら、上記のように機能を有する糸状菌を、土壌改良効果を有するコンポストに担持させたとしても、目的とする糸状菌が安定してコンポストに担持されるには時間がかかる。また、コンポスト化には細菌も関与するため、コンポスト化処理中に特定の糸状菌を単に添加しただけでは効率よく増殖しない場合や、目的とする機能が発揮されない場合もある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記状況を鑑みなされたものであり、機能性コンポストの製造方法、機能性コンポスト及び糸状菌増殖用コンポストを提供する。
本発明の第一の態様は、細菌類の活動制限状態にあるコンポストに、機能を有する糸状菌を接種すること、前記糸状菌を、前記コンポスト内で培養して選択的に増殖させること、を含む機能性コンポストの製造方法を提供する。
本発明の第二の態様は、糸状菌の生育条件で活動可能な糸状菌共存生育可能細菌類を含むコンポストであって前記糸状菌共存生育可能細菌類以外の細菌類の活動制限状態のコンポストに、機能を有する糸状菌を接種すること、前記糸状菌を、前記コンポスト内で培養して前記糸状菌共存生育可能細菌類と共に選択的に増殖させること、を含む機能性コンポストの製造方法を提供する。
【0007】
本発明の第三の態様は、機能を有する糸状菌を含む上記製造方法により得られた機能性コンポストを提供する。
本発明の第四の態様は、細菌類の活動制限状態にある糸状菌増殖用コンポストを提供する。
本発明の第五の態様は、糸状菌の生育条件で活動可能な糸状菌共存生育可能細菌類を含み、前記糸状菌共存生育可能細菌類以外の細菌類の活動制限状態にある糸状菌増殖用コンポストを提供する。
【0008】
本発明において、上記細菌類の活動制限状態としては以下の(1)~(3)からなる群より選択された少なくとも一つをあげることができる:
(1)pH4以上7以下である制限pH状態
(2)20%以上40%以下である制限水分状態
(3)CO発生速度が最大となった後にCO発生速度1×10-5mol/h/g乾燥コンポスト以上3×10-5mol/h/g乾燥コンポスト以下。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1にかかるGM-21株の至適温度条件を示すグラフである。
【図2】本発明の実施例2にかかるコンポスト製造工程における炭素変化率の変化を経時的に示したグラフである。
【図3】本発明の実施例3にかかる機能性コンポストによるチンゲンサイ尻腐病の防除効果を確認したグラフである。
【図4】本発明の実施例5にかかるコンポスト製造工程におけるpH変化を示したグラフである。
【図5】本発明の実施例5にかかるコンポスト製造工程における炭素ガス発生速度の変化を経時的に示したグラフである。
【図6】本発明の実施例5にかかるコンポスト製造工程における炭素変化率の変化を経時的に示したグラフである。
【図7】本発明の実施例6にかかる機能性コンポスト製造工程におけるコンポスト内の細菌類濃度の変化を経時的に示したグラフである。
【図8】本発明の実施例6にかかる機能性コンポスト製造工程におけるコンポスト内のGM-21株濃度の変化を経時的に示したグラフである。
【図9】本発明の実施例7にかかる機能性コンポストによるチンゲンサイ尻腐病防除効果を確認したグラフである。
【図10】本発明の実施例8にかかるレタスすそ枯病に対する防除効果を確認した発病状態を示す図である。
【図11】本発明の実施例9にかかるシバ葉腐病に対する防除効果を確認した発病状態を示す図である。

【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第一の態様である機能性コンポストの製造方法は、細菌類の活動制限状態にあるコンポストに、機能を有する糸状菌を接種すること(接種工程)、前記糸状菌を、前記コンポスト内で培養して選択的に増殖させること(増殖工程)、を含むものである。
【0011】
また本発明の第二の態様である機能性コンポストの製造方法は、糸状菌の生育条件で活動可能な糸状菌共存生育可能細菌類を含むコンポストであって前記糸状菌共存生育可能細菌類以外の細菌類の活動制限状態のコンポストに、機能を有する糸状菌を接種すること(接種工程)、前記糸状菌を、前記コンポスト内で培養して前記糸状菌共存生育可能細菌類と共に選択的に増殖させること(増殖工程)、を含むものである。
【0012】
本発明では、糸状菌と細菌類との活動環境の違いから、機能を有する糸状菌を、細菌類の活動制限状態にあるコンポストに接種して培養することにより、コンポスト内で細菌類よりも糸状菌を選択的に且つ効率よく増殖させることができる。この結果、増殖した糸状菌をコンポストに安定して定着させることができ、機能性コンポストを効率よく製造することができる。これにより、目的とする機能を安定して有する機能性コンポストを効率よく得ることができ、またそのために有効なコンポストを提供することができる。
【0013】
特に本発明の第二の形態では、糸状菌共存生育可能細菌類を含むコンポストに、機能を有する糸状菌を接種して培養するので、糸状菌共存生育可能細菌類以外の細菌類に対しては活動を制限すると共に、糸状菌共存生育可能細菌類と機能を有する糸状菌とを選択的に且つ効率よく増殖させることができる。このように、機能を有する糸状菌が糸状菌共存生育可能細菌類と共に増殖することによって、機能性コンポスト内では、機能を有する糸状菌と糸状菌共存生育可能細菌類とが協働して環境を形成し、これを維持するため、機能を有する糸状菌にとって有利な環境が機能性コンポスト内に安定して形成される。この結果、より効率よく機能性コンポストを製造することができると共に、目的とする機能がより安定化した機能性コンポストを提供することができる。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書中数値範囲における「~」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を表す。また、本明細書において「工程」は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0015】
本発明に用いられる機能を有する糸状菌には、特定の機能が期待できる糸状菌であれば特に制限されず、例えば、植物病害防除機能を有する糸状菌や、トリクロロエチレン、有機溶剤、ダイオキシン、PCB、石油、炭化水素、火薬、農薬、生分解性プラスチックなどを浄化・分解可能な土壌改質機能を有する糸状菌を挙げることができる。これらのうち、特にコンポストの肥料効果をより有効利用できる植物病害防除機能を有する糸状菌であることが好ましい。
【0016】
植物病害防除機能を有する糸状菌は、病害防除機能を有するものであれば特に制限されず、例えば、ヒトヨタケ(ヒトヨタケ属、ナヨタケ属)、トリコデルマ属、ムコール属、フザリウム属、ヘテロコニウム属、アカウロスポラ属等が該当する。これらの植物病害防除機能を有する糸状菌については、防除効果が期待される植物病害の種類に応じて適宜選択可能であるが、植物病害防除効果の安定性及び効果が期待される植物病害防除の広さの観点からヒトヨタケ(ヒトヨタケ属及びナヨタケ属)であることが好ましい。
【0017】
ヒトヨタケは、ヒトヨタケ科に属するものであって、安全性の観点から、いわゆる毒キノコとされるヒカゲタケ属を除いたヒトヨタケ属(Coprinus)並びにナヨタケ属(Psathyrella)に属するものであることが好ましい。その中でも、ヒメツブヒトヨタケ(Coprinus curtus)、ウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus)、イヌセンボンダケ(Coprinus disseminatus)、ササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)、ヒトヨタケ(Coprinus atramentarius)、コキララタケ(Coprinus radiatns)、センボンクヌギタケ(Psathyrella multissima)、イタチタケ(Psathyrella candolliana)、ムジナタケ(Psathyrella velutina)が好ましく、これらを単独で又は組み合わせて用いることができる。中でも、ヒメツブヒトヨタケ(Coprinus curtus)の分離菌GM-21(NITE BP-37)が植物病害防除に効果的であり、特に好ましい。
【0018】
土壌改質機能を有する糸状菌としては、例えばリグニン分解能を有する白色腐朽菌を挙げることができる。このような白色腐朽菌には、例えばカワラタケ属(Coriolus)、ファネロキーテ属(Phanerochaete)、ヒラタケ属(Pleurotus)が該当する。また、褐色腐朽菌は芳香族化合物に対する分解能を有しており、タイロマイセス属(Tyromyces)、グロエオフィルラム属(Gloeophyllum)が挙げられる。またその他の腐朽菌としてはトリコデルマ属(Tricoderma)が挙げられる。これら腐朽菌以外にもフザリウム属(Fusarium)糸状菌等を挙げることができる。
【0019】
コンポストに接種される糸状菌は、糸状菌の菌糸体、胞子体又は子実体であってもよく、これらの粉砕物であってもよい。粉砕にあたっては、そのままでも、乾燥してからでもよいが、好ましくはそのままの状態で、刃物状のもので撹拌するなどして適宜な大きさとすればよい。菌子体をホモジナイザーで粉砕する場合には、一般に、大きいものでも直径3mm程度であり、多くはそれ以下となる。胞子の場合には胞子一つひとつの大きさであり、子実体であれば、例えば1mm角の大きさなどとすることができる。勿論、それらの寸法より大きくても細かくてもよいが、細かければ細かい程、均一に接種するのに好都合である。
【0020】
糸状菌又はその粉砕物をコンポストに接種する際には、糸状菌の生育状態によって異なるが、例えば約8×10-6g乾燥菌体/g乾燥コンポスト以上、生育安定性の観点から好ましくは約8×10-4g乾燥菌体/g乾燥コンポスト以上となるように糸状菌又はその粉砕物を接種すればよい。
【0021】
本発明においてコンポストとは、有機廃棄物を腐熟させることによって得られる堆肥であり、コンポスト化とは、有機廃棄物中の有機物を微生物の作用により分解処理し、農耕地への施用に適した状態に変化させる工程を意味する。コンポスト化処理とは、一般に、適当な通気及び撹拌条件下に有機物を、所定期間、貯留して、微生物によって発酵させることをいう。
本発明において「コンポスト」との語は、腐熟の進行に伴って有機物が完全に分解した完熟状態のものだけでなく、未熟状態のものを指す場合にも用いる。
【0022】
コンポスト化に用いられる有機廃棄物としては、生ごみ、下水汚泥、及び/又は家畜排泄物等を挙げることができ、魚粉、鶏糞、牛糞、油粕、おがくず、木片、野菜くず、落ち葉、汚泥等が一般に用いられる。
またコンポスト化に用いられる種菌としては、細菌、放線菌など雑多な微生物を挙げることができ、これらを含む製剤やコンポスト製品そのものを種菌として用いることができる。これらのコンポスト化に用いられる種菌は、市販されているものをそのまま利用することができる。
【0023】
接種工程では、機能を有する糸状菌を、細菌類の活動制限状態にあるコンポストに接種する。コンポスト内に混在する大多数の細菌や放線菌類(本明細書では、これらを単に「細菌類」と称することがある)と、植物病害防除機能を有する糸状菌とでは、生育及び活動のための環境に対する要求性が異なるので、細菌類が活動制限状態であっても糸状菌が増殖・活動可能な状態の環境とすることで、目的とする糸状菌を選択的に増殖させることができる。
【0024】
このとき、糸状菌と同一環境下でも活動が可能であり糸状菌と共存することができる細菌類(本明細書では、「糸状菌共存生育可能細菌類」と称する。)が存在していることがさらに好ましい。この糸状菌共存生育可能細菌類は、コンポスト化を行う他の細菌類が活動制限される環境下であっても活動が制限されないので、糸状菌と共にコンポスト内で安定的な菌叢を形成することができる。このような糸状菌共存生育可能細菌類としては、バージバチラス・ハロフィラス(Virgibacillus halophilus)を挙げることができる。バージバチラス・ハロフィラスとしては、バージバチラス・ハロフィラスI30-1株を挙げることができる。この菌株は2008年5月29日に、茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号FERM ABP-10975として受領されている。
【0025】
本発明における細菌類の活動制限状態とは、コンポスト中の細菌類の活動が制限されて生育、活性が抑制される条件であればよく、例えば、栄養制限状態、pH制限状態及び水分制限状態からなる群より選択された条件を挙げることができる。これらの各制限条件は、用いられる糸状菌又は細菌類(種菌)の種類や、コンポストの製造を行う環境等に応じて、単独又は2つ以上を組み合わせて適宜選択することができる。
【0026】
栄養制限状態とは、コンポストの腐熟度が進行して有機廃棄物中の有機物がわずかに残存している所謂「完熟」寸前の状態をいう。このような完熟寸前の状態は、例えばコンポストのC/N比やCO発生速度の低下(高レベルの炭素変化率)、微生物叢の遷移等によって判定することができる。このような完熟寸前のコンポストでは、栄養状態が非常に乏しいため細菌類の活動が制限されるが、糸状菌は、細菌類の増殖が制限される栄養状態のコンポストであっても増殖することができる。
【0027】
CO発生速度は、コンポスト単位乾燥重量あたり、単位時間あたりのCO発生量として定義され、重量が既知のコンポスト堆積層への通気速度と排出されるCO濃度の測定値から容易に求めることができる。なお、COの濃度はフローセル型の赤外吸収式COメータであれば連続測定ができる。また排気ガスを一旦、テドラーバッグのようなプラスチック製バッグに捕集して、ガスクロやガス検知管で測定してもよい。捕集する排気ガス量には特に制限はないが、例えば5L容のテドラーバッグを用いて捕集可能な量あればよい。
【0028】
使用可能な完熟寸前のコンポストの一例としては、CO発生速度が最大となった後のCO発生速度が1×10-5mol/h/g乾燥コンポスト~3×10-5mol/h/g乾燥コンポストのものを挙げることできる。本発明におけるCO発生速度は、光明理化学工業株式会社製126SA又は126SH、北川式検知管を用いた測定で得られた値を基準とする。
【0029】
pH制限状態とは、細菌類の至適pH条件よりも低いpH状態をいう。このような制限pH状態としては、例えばpH4~7、好ましくはpH5~6を挙げることができる。
【0030】
水分制限状態とは、細菌類の至適水分率よりも低い水分率の状態をいう。このような水分制限状態としては、例えば水分率20%~40%(質量比)の状態を挙げることができる。水分率は、コンポストを105℃、48時間の条件下で乾燥させた後に、乾燥コンポストの質量を測定することにより得ることができる。
【0031】
これらの活動制限状態それぞれについては、対象となる糸状菌の生育状態に応じて単独又は組み合わせを適宜選択することができる。これらの活動制限状態は、いずれか1つを律速とすることにより他の条件を緩和することができるが、目的とする糸状菌をより確実に且つ選択的に増殖させることができる観点から、上記の栄養制限状態、pH制限状態及び水分制限状態からなる群から少なくとも1つを選択することがより好ましく、栄養制限状態とすることが、コンポスト化処理の過程で糸状菌の接種時期を調整することにより簡単に得ることができるため、更に好ましい。
【0032】
本発明のコンポストの製造方法では、上記のような細菌類の活動制限状態のコンポスト(即ち、後述する糸状菌増殖用コンポスト)を入手することによって行ってもよいが、このようなコンポストを作製する工程を更に含んでいるものであってもよい。
コンポストの作製工程は、有機廃棄物にコンポスト化微生物を接種して培養することにより、有機廃棄物中の有機物を分解させる工程をいう。
【0033】
原料としての有機廃棄物に微生物を接種すれば、所定期間の培養によって有機物の分解が進行してコンポストが作製されるが、より効率よくコンポスト化を行うには、水分率、pH等を、コンポスト中の細菌類にとって最適な増殖条件に設定することが好ましい。これにより、細菌類によるコンポスト化を迅速に行うことができる。早期にコンポスト化を行うために水分率及びpH等を細菌類の最適増殖条件に設定してコンポスト化することを、本発明では適宜「高速コンポスト化」という。
【0034】
このような高速コンポスト化の条件としては、例えば、コンポストの内部の温度、水分率、pHなどを調整することが好ましい。最適活動条件としては、細菌類及び有機廃棄物の種類によって異なるが、一般には通常の好熱性細菌や放線菌の増殖に適した条件であればよく、温度は60℃付近(例えば、50~65℃)とすることができ、水分率40%~60%、pH8.0~pH8.5の条件を挙げることができる。このような最適条件下の有機廃棄物に種菌を接種して培養することによって、早期に、例えば7日間程度で、上記糸状菌を接種可能なコンポストを得ることができる。
【0035】
例えば、栄養制限状態のコンポストを得るには、栄養制限状態となるまで有機廃棄物を腐熟させればよい。細菌類の種類及び活動状態並びに細菌数によって異なるが、一般に、細菌類に対する上記最適条件下での培養を5日間~7日間行うことによって完熟寸前まで腐熟が進行し、栄養制限状態のコンポスト(完熟寸前のコンポスト)を容易に得ることができる。糸状菌の接種は、上述したようにC/N比、CO発生速度等を指標に栄養制限状態であることを確認しながら行えばよい。
【0036】
またpH制限状態のコンポストを得るには、有機廃棄物の腐熟中に適切なpH調整剤を用いてコンポストのpHを調整すればよい。このために使用可能なpH調整剤としては、硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0037】
細菌類の活動制限状態にあるコンポスト内に糸状菌を接種した後、培養して、この糸状菌を選択的に増殖させる(増殖工程)。細菌類の活動制限状態のコンポストでは、細菌類に対する選択圧によって、コンポストに細菌類が存在しているとしても、接種した糸状菌が選択的に増殖する。
【0038】
このとき、糸状菌共存生育可能細菌類がコンポスト内に存在している場合には、糸状菌が選択的に増殖する際に糸状菌共存生育可能細菌類も同様に選択的に増殖する。この糸状菌共存生育可能細菌類は、糸状菌と共に増殖し且つ糸状菌の機能発揮を阻害しない。また糸状菌共存生育可能細菌類は、増殖によって糸状菌と共に安定した菌叢を形成するので、コンポストが土壌に施用されたときには、土壌中に元々存在する微生物のコンポスト内への侵入を効果的に抑制することができる。これにより、本発明の機能性コンポストを土中に使用しても機能性糸状菌を安定に存在させることができる。
【0039】
培養温度は、細菌類の活動制限状態が継続可能となるように行うことが好ましく、例えば10℃~35℃とすることができ、20℃~35℃がより好ましく、27℃~30℃が特に好ましい。35℃以下であれば、細菌類の増殖を効果的に抑制でき、一方、10℃以上であれば糸状菌の適度な増殖速度を維持することができる。また培養は通気条件下であればよく、pHは4~7、好ましくはpH5~6とすることができる。
【0040】
培養期間は、目的とする糸状菌がコンポスト内で充分増殖するのに必要な期間であればよく、例えば5日間~7日間とすることができる。この間に、糸状菌による有機物の分解も進行し、栄養制限状態のコンポストを用いた場合には培養期間終了と同時に完熟したコンポストも得ることができる。
培養期間終了後のコンポストでは、糸状菌が充分に存在している。一例として、乾燥コンポスト1gあたりのDNA量として約5μg/g乾燥コンポスト程度以上、好ましくは30μg/g乾燥コンポスト以上とすることができる。
【0041】
このように本発明の製造方法では、コンポストの製造と同時に糸状菌のコンポスト内での増殖も行うため、機能を安定して発揮できる機能性コンポストを効率よく製造することができる。
即ち、本発明の製造方法によって得られた本発明のコンポストは、機能を有する糸状菌を含むものである。本コンポストには、このような糸状菌が機能的に且つ充分量存在していることから、安定して機能を発揮できる機能性コンポストである。また、糸状菌共存生育可能細菌類も含むコンポストの場合には、糸状菌の機能に基づく機能がより安定した機能性コンポストとすることができる。
本機能性コンポストに含まれる糸状菌共存生育可能細菌としては、前述したようにバージバチラス・ハロフィラスであることが好ましく、例えばバージバチラス・ハロフィラスI30-1株とすることができる。
【0042】
本発明の機能性コンポストは、例えば植物病害防除機能を有する糸状菌を用いた場合には、植物病害防除機能を有する糸状菌の種類に応じて種々の植物病害に対する防除効果を有するものとすることができるが、病原菌が植物病原性糸状菌である植物病害用のコンポストであることが、より効果的に防除効果を発揮できるため好ましい。特に、コンポストに接種する糸状菌としてヒトヨタケを選択した場合には、植物病原性糸状菌がリゾクトニア属及びフザリウム属の少なくとも一方に属する糸状菌である場合に、特に顕著な植物病害防除効果を発揮できる。本発明の植物病害防除剤を使用可能な植物病害としては、チンゲンサイ尻腐病、シバ葉腐病、メロンつる割病、トマト根腐萎凋病等を挙げることができる。
【0043】
この機能性コンポストを使用する場合には、機能性コンポスト中の糸状菌の種類及び目的によって異なるが、一般に、対象となる土壌、培地、培養土に適当量混合すればよい。例えば、植物病害防除対象となる植物の場合には、植物の根元付近の土壌、培地や培養土に混合する。このときの混合比については病原菌の濃度などの相対的条件によって変化するが、一般に、植物病害防除機能を有する糸状菌をDNA量として5μg/g乾燥コンポストの菌体量で適当量、例えば1~20質量%程度土壌中に混合することが望ましい。
【0044】
また本発明に用いられる細菌類の活動制限状態にあるコンポストは、上述したように、コンポスト化のために細菌類を含むコンポストにおいて糸状菌を効果的に増殖させるには、最適なコンポストである。即ち、本発明の糸状菌増殖用コンポストは、細菌類の活動制限状態にあるコンポストである。本発明の糸状菌増殖用コンポストは、糸状菌を効率よく増殖させることができるので、上記の本発明の機能性コンポストを効率よく提供することができる。また糸状菌共存生育可能細菌類を含む糸状菌増殖用コンポストは、糸状菌を一層効率よく増殖させることができ且つより安定した菌叢を形成することができる。本糸状菌増殖用コンポストに含まれる糸状菌共存生育可能細菌としては、前述したようにバージバチラス・ハロフィラスであることが好ましく、例えばバージバチラス・ハロフィラスI30-1株とすることができる。
【0045】
この糸状菌増殖用コンポストにおける細菌類の活動制限状態とは、前述した事項がそのまま該当し、栄養制限状態、pH制限状態及び水分制限状態からなる群より選択された少なくとも1つを挙げることができる。また、このような活動制限状態であれば、細菌類の活動を制限すると共に、糸状菌を選択的に増殖させることができる。
このような糸状菌増殖用コンポストは、上述したように、接種可能な糸状菌の種類に限定はなく、広範囲の用途に使用可能な機能を有する糸状菌を接種して効率よく増殖させることができる。
【0046】
また本発明は、機能性コンポストを作製するために用いられる植物病害防除機能を有する糸状菌を、機能性コンポスト中で認定し、同定するために適切なプライマー対を提供することができる。このプライマー対を用いることによって、糸状菌に特有な配列をPCR法にて簡便に増幅することができる。ここで用いられるPCR法には、プライマー対を用いて増幅することができる方法であれば、特に制限はない。
【0047】
本プライマー対は、糸状菌のrDNAのうち当該糸状菌に特有な配列部分を増幅できるものであり、具体的にはヒメツブヒトヨタケGM-21株を検出するには、ITS1領域のポリヌクレオチド配列に対するプライマー対、例えば後述するGM-21_F及びGM-21_R(配列番号1及び2)を用いることができる。特に配列番号1及び2で示されるGM-21_F及びGM-21_Rは、GM-21株に対する選択性が高いので、GM-21株を効率よく且つ正確に検出するために好適に使用することができ、定量的PCRによりGM-21株を検出する際に特に好ましく用いることができる。
【0048】
このプライマー対は、例えば、GM-21株を検出するためのキットの一構成要素として用いることができる。すなわち、ヒメツブヒトヨタケGM-21株を検出するためのキットは、配列番号1及び配列番号2としてそれぞれ示されるGM-21_F及びGM-21_Rである検出用プライマーセットを含むことができる。このキットは、プライマーセットに加えて、検出に必要な取扱説明書、検出に用いられる緩衝液、反応液等の試薬類などからなる群より選択された追加要素を適宜含んでいてもよい。このキットを使用することにより、GM-21株の存在有無、その濃度の測定などを簡便に行うことができる。
【0049】
さらに本発明は、糸状菌共存生育可能細菌を検出し、同定するためのプライマー対を提供することができる。このような糸状菌共存生育可能細菌検出用のプライマー対としては、16S rDNAのうち当該細菌に特有な配列部分を増幅できるものであり、例えば、バージバチラス・ハロフィラスを検出するためには、例えばI30-1_348F(配列番号3)及びI30-1_475R(配列番号4)や、16S_F(配列番号5)や16S_R(配列番号6)で示されるプライマー対を挙げることができる。特に、I30-1_348F(配列番号3)及びI30-1_475R(配列番号4)で示されるプライマー対は、バージバチラス・ハロフィラスI30-1株に対する選択性が高いので、I30-1株を効率よく且つ正確に検出するために好適に使用することができ、定量的PCRによりI30-1株を検出する際に特に好ましく用いられる。
【0050】
このプライマー対は、例えば、糸状菌共存生育可能細菌を検出するためのキットの一構成要素として用いることができる。すなわち、糸状菌共存生育可能細菌を検出するためのキットは、配列番号3及び配列番号4としてそれぞれ示されるI30-1_348F及びI30-1_475Rである検出用プライマーセットを含むことができる。このキットは、プライマーセットに加えて、検出に必要な取扱説明書、検出に用いられる緩衝液、反応液等の試薬類などからなる群より選択された追加要素を適宜含んでいてもよい。このキットを使用することにより、糸状菌共存生育可能細菌の種類の特定、その濃度の測定などを簡便に行うことができる。
【0051】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
[実施例1]
<GM-21株の至適温度条件の検討>
PDA培地上で十分に生育したヒメツブヒトヨタケGM-21株(Coprinus curtus Kalchbr. ex Thum. GM-21:NITE BP-37)を、培地ごと3mm四方を切り取り、PD液体培地100mLに接種して、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃の各培養温度下、振盪幅7cm、110spmの往復振盪培養装置(TA-12R、高崎科学器械株式会社)を用いて3日間培養した。培養後、それぞれの培養条件下のサンプルを回収して、増殖したGM-21株の乾燥重量を測定した。結果を図1に示す。
【0053】
図1に示されるように、増殖量は35℃が最大となっており、この温度付近に良好に増殖することがわかった。
ただし、コンポスト化に使用する細菌類は、40℃では増殖が旺盛であるため、細菌類との共存下において機能性コンポストを効率よく得るのに好ましい温度条件は、35℃以下であることがわかった。以下の実施例2では、35℃で、110spmの条件で3日間振盪培養したGM-21株を使用した。
【0054】
[実施例2]
<機能性コンポストの製造方法I>
市販の油粕コンポスト(油かす:富士見園芸株式会社製)を原料として、初期pHを8.44、水分率を59.4%にし、種菌(オーレスG:松本微生物研究所製)を乾燥重量比で5%となるように接種した。接種後0~12時間かけて30℃から60℃まで昇温し、その後60℃として培養し、高速コンポスト化を行った。
この間のCO発生速度を、測定器(光明理化学工業株式会社製、126SA、あるいは126SH、北川式検知管)で測定し、CO発生速度が2×10-5mol/h/g乾燥コンポスト以下となった時点(接種後7日目)で、オートクレーブ滅菌(121℃、90min)を行った。この時点でのpHは、高速コンポスト化を担う細菌類の増殖に適した約pH8、また水分率は62.3%であった。炭素変化率は47.4%と高い値であり、この段階のコンポストは、所謂完熟寸前のコンポストであった(図2、表1参照)。
【0055】
完熟寸前のコンポストを滅菌後、硫酸水溶液を用いてpHを5.75に調節し、GM-21株(0.0076g乾燥菌体/mL)を0.5mL接種した。このときの水分率は58.8%であった。引き続いて、30℃で5日間コンポスト化した。培養終了後のコンポストは、pH5.8、水分率63.5%、炭素変化率は50%であった(図2、表1)。
【0056】
【表1】
JP0005334263B2_000002t.gif

【0057】
培養後、菌体を回収してGM-21株の菌体量をDNA量として測定した。簡単に説明すれば、土壌抽出キット ISOIL for Beads Beating (NIPPON GENE CO.,LTD. 319-06201)をマニュアルとおりに使用して、コンポスト中のDNAを抽出した。次いで、抽出したDNA量を、Quant-iT(商品名) PicoGreen dsDNA Reagent and Kits (インビトロジェン社)をマニュアルとおりに使用して、蛍光分光光度計を用いて蛍光を測定し、コンポスト中のDNA量を求めた。完熟寸前のコンポストには滅菌を行っているため、コンポスト中で増加したDNAは、接種したGM-21株のものと考えられる。コンポスト化後のGM-21株の菌体量を表2に示す。
【0058】
表2に示されるように、コンポスト化終了後のコンポストでは、大量のGM-21株が存在しており、細菌類でコンポスト化した完熟寸前のコンポスト内においてGM-21株が約100倍増殖していた。コンポスト中の細菌類はGM-21株接種直前の滅菌処理によって除去されているため、得られた機能性コンポストには存在していない。
【0059】
【表2】
JP0005334263B2_000003t.gif

【0060】
[比較例]
市販の油粕コンポスト(油かす:富士見園芸株式会社製)を原料として、初期pHを6、水分率を約60%にし、GM-21株(0.0052g乾燥菌体/mL)を1.0mL接種した。接種後35℃で5日間培養した。5日後にコンポストを回収し、希釈平板法を用いPDA培地上でGM-21株の増殖を確認したところ、培養後のコンポストでは糸状菌が充分に増殖してないことは明らかであった。
【0061】
このことは、市販コンポストでは、細菌類の活動が制限されてないので、植物病害防除機能を有する糸状菌を増殖に好適な条件、例えば至適温度で接種し、培養しても、糸状菌のみを選択的に充分に増殖させることができないことを示している。この結果、得られたコンポストには充分な且つ安定な機能性が期待できないことがわかる。
【0062】
[実施例3]
実施例2で得られた機能性コンポストによる植物病害防除効果を確認した。
チンゲンサイの尻腐病の病原菌たるRhizoctonia solaniチンゲン2株をPD液体培地に接種し、25℃、110spm(往復振盪)の条件で7日間振盪培養したものを、ホモジナイズして病原菌懸濁液を作製した。引き続いて育苗用土47gを植物試験用ポット(旭テクノグラス社製)に入れてオートクレーブ滅菌し、実施例2で得られた機能性コンポストを3g混合して、チンゲン2株の接種濃度が0.000528g乾燥菌体/g乾燥土壌となるように、上記の病原菌懸濁液と滅菌水を合わせて12mLとして加えて、よく混合した後、無菌処理したチンゲンサイの種子を15粒播種した。このポットを植物環境試験装置(島津理化器社製)に入れ、昼30℃、夜20℃、湿度55%の条件で栽培し、播種後6日目にチンゲンサイの苗が10苗となるように間引きし、20日間にわたり発病状態を観察した。
【0063】
発病状態を発病度として測定した。発病度は下記のようにして数値化した。
発病度(%)=(1a+2b+3c+4d+5e)×100/(5×播種数)
a:発病が少し認められる固体数
b:発病が認められる固体数
c:発病が大きく認められる固体数
d:枯れている固体数
e:未発芽または枯死した固体数
【0064】
実施例2の機能性コンポストと病原菌を使用したものを試験区A、病原菌のみのものを試験区B、病原菌を接種していないものを試験区Cとした。結果を図3に示す。図3中、試験区Aは白丸、試験区Bは四角、試験区Cは菱形で表す。
図3で明らかなように、実施例2で得られた機能性コンポスト(白丸)による病害発生の防除効果は顕著であった。
【0065】
[実施例4]
<機能性コンポストの製造方法II>
原料は市販の油粕コンポスト(油かす:富士見園芸株式会社製)を用いた。初期pHを7.86、含水率を60%に調整して種菌(オーレスG:松本微生物研究所製)を乾燥重量比で19:1となるように油粕コンポストに接種し、得られたコンポスト混合原料を、1ミニリアクタ当り15g投入してコンポスト化を行った。
条件は0~12時間かけて30℃から60℃まで昇温し、192時間まで60℃で高速コンポスト化した。8日(192時間)経過後、コンポストの一部を121℃、90minの条件でオートクレーブを用いて滅菌処理した。
【0066】
滅菌していないコンポストと滅菌したコンポストを適宜混合し、細菌類濃度が10CFU/g乾燥コンポスト、10CFU/g乾燥コンポストとなるように調整したそれぞれの試料のpHを、10容量%の硫酸を用いて人為的にpH6付近に調節した。次いで、事前にPD液体培地を用いて35℃、110rpmの条件で3日間振盪培養したGM-21株(0.0068g乾燥菌体/mL)を各試料に1mL接種して、最終濃度0.00113g乾燥菌体/g乾燥コンポストとした。
このように細菌類濃度を10CFU/g乾燥コンポスト、および10CFU/g乾燥コンポストに変化させGM-21株を接種したそれぞれの試料を、30℃で5日間培養してコンポスト化を行い、機能性コンポスト試料1及び2を得た。なお、機能性コンポスト試料1及び2のいずれも、GM-21株接種前のコンポストのときからGM-21株と共存生育可能な細菌類が含まれている。
【0067】
[実施例5]
<コンポストの評価>
コンポスト化終了後、機能性コンポスト試料1及び2それぞれの細菌類濃度を希釈平板法(TS培地、30℃)によって測定した。また、細菌類が高濃度に存在するコンポスト中のGM-21株濃度を定量的PCR法によって測定した。また実施例2と同様にして北川式検知管を用いてCO濃度を測定し、コンポストの病害防除効果は植物試験をおこなって評価した。なお、5日間切り返しは行わなかった。
【0068】
GM-21株の接種時期については、コンポスト化におけるCO発生速度に基づいて判断した。即ち、本実施例では、CO発生速度が2×10-5mol/h/g乾燥コンポスト付近となったところで行った。
結果を図4~図7に示す。
【0069】
図4に示されるように機能性コンポスト試料1及び2の高速コンポスト化の過程ではpHが8から8.5に上昇し、コンポスト化は順調に進行していた。一方、各コンポスト試料についてもGM-21株接種時にはpHを6付近まで下げたが、高速コンポスト化によって有機物が十分に分解されていたため、pHが再び上昇することはなく、GM-21株の増殖にとっては有効な条件となった。
【0070】
図5は、コンポスト化におけるCO発生速度の経時変化を示している。図5に示されるように、GM-21株接種後のCO発生速度が小さいことから、GM-21株接種時の有機物の残存量が少なくGM-21株が貧栄養条件でも増殖可能であることがわかる。
【0071】
図6は、コンポスト化における炭素変化率の経時変化を示す。炭素変化率は最終的に40%程度の大きな値となり、原料中の有機物は十分に分解されていることがわかった。
図7は、コンポスト化における細菌類濃度の経時的変化を示している。GM-21株接種時の細菌類濃度は、機能性コンポスト試料1の場合では10CFU/g乾燥コンポスト、機能性コンポスト試料2の場合では10CFU/g乾燥コンポスト程度であったが、機能性コンポスト試料1及び2はいずれも、コンポスト化終了時には10CFU/g乾燥コンポスト以上と高濃度になっていた。なお、コンポスト化前後で細菌類の種類が異なる、すなわち、増殖した細菌類はGM-21株接種時に優勢であったものとは異なることを確かめている。
【0072】
<コンポスト中のGM-21株濃度の確認>
上記機能性コンポスト試料1及び2の製造工程におけるGM-21株濃度を、定量的PCR法を用いて測定した。リアルタイムPCR装置としてはSmart Cycler II(タカラバイオ株式会社)、DNAを増幅させるためのTaqとしてはSYBR Premix Ex Taq(タカラバイオ株式会社)、プライマーとしては、フォワード(GM-21_F):GTGTTGCATGTAGCTGCCTCCTC(配列番号1)及びリバース(GM-21_R):TGACGCGAGAGTTATCCAGACCTAC(配列番号2)を用いて、定量的PCRを実施した。PCR反応条件は、まず95℃、10秒で熱変性を行った後に、95℃、5秒(熱変性)、60℃、20秒(アニーリング・伸張)をそれぞれ40サイクル行った(表3参照)。結果を図8に示す。
【0073】
【表3】
JP0005334263B2_000004t.gif

【0074】
図8には、コンポスト化におけるGM-21株濃度の経時変化が示されている。図8に示されるように、機能性コンポスト試料2の場合、GM-21株接種時に比べて培養終了時には100倍以上にGM-21株が増殖していた。このように、本実施例の機能性コンポスト試料の場合、高速コンポスト化の工程から糸状菌共存生育可能細菌類が共存し、この糸状菌共存生育可能細菌類の生存下で試料へのGM-21株の接種を行っても、GM-21株が増殖可能であることが明らかであった。また、GM-21株は、糸状菌共存生育可能細菌類の量に変わりなく増殖可能であることも明らかであった。
さらに、本実施例ではGM-21株を接種する際に試料を一部滅菌して用いたが、滅菌をまったく行わない高速コンポスト化後の試料にGM-21株を接種しても、同様にGM-21株の増殖が認められた。
従って、GM-21株接種時に糸状菌共存生育可能細菌類が存在する場合、この糸状菌共存生育可能細菌類とGM-21株が共に増殖していくことがわかった。
【0075】
[実施例6]
<糸状菌共存生育可能細菌類の同定>
実施例4で得られた機能性コンポスト試料1について、コンポスト化終了時(細菌類濃度10CFU/g乾燥コンポスト)のサンプル中の細菌類を、Trypticase soy(以下、TS)培地を用いた希釈平板法(TS培地、30℃)により、培養した。3日後プレートから優勢な菌を単離した。単離した細菌をI30-1株とした。
【0076】
I30-1株は、TS寒天培地を用いて30℃の条件で2日間培養することにより、2mm直径の淡黄色で円形、半レンズ状の隆起状態、全周縁で、表面はスムーズ、バター様の粘稠度のコロニーを形成する。I30-1株は、グラム染色性は陽性で運動性のある芽胞形成桿菌であり、カタラーゼとオキシダーゼが陽性である。
【0077】
細菌は、TS液体培地を用いて、30℃、110spm(往復振盪)の条件で72時間培養し、15000rpm、10minの条件で遠心分離して菌体を回収した。回収した菌体から、ISOIL for Beads Beating kit (Nippon Gene Co.) を用いて、DNAを抽出した。また、抽出したDNAはMicrospin S-300 HR Columns(GE Healthcare UK Ltd.)を用いてマニュアルに従い精製した。
【0078】
抽出・精製した雑菌の16S rDNA領域を16S_F(AGAGTTTGATCCTGGCTCAGGA:配列番号5)と16S_R(GGTTACCTTGTTACG:配列番号6)のプライマー、TaKaRa Ex Taq Hot Start Version (TaKaRa Bio INC.)を用い、PTC-100 thermal cycler (TaKaRa Shuzo CO.)によりPCR法で増幅した。PCRは、最初に95℃、5分の変性をおこなった後、95℃、1分(変性)、49℃、45秒(アニーリング)、72℃、1分30秒(伸長)を30サイクル、最後に72℃、5分の伸長を行った。
【0079】
PCR産物の塩基配列は、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems)を用いて解析した。その後決定した塩基配列については、DNA Data Bank of Japan(以下、DDBJ)に登録されている配列に対して相同性検索(nucleotide Blast)を行って、最も相同性の高いものを選定した。その結果、I30-1株はバージバチラス・ハロフィラス(Virgibacillus halophilus)と同定できた(表4)。なお、I30-1株についてのBLAST検索の結果を表5に示す。
【0080】
I30-1株は、I30-1_348F(GTAGGGAATC TTCCGCAATG:配列番号3)及びI30-1_475R(GTCAAGGTGC CGCCTTATT:配列番号4)を検出用プライマーとして使用し、前述のGM-21株の検出と同様の条件で定量的PCRを行った。簡単に説明すると、リアルタイムPCR装置としてSmart Cycler II(タカラバイオ株式会社)を用いて、最初に95℃、10秒の熱変性をおこなった後、95℃、5秒(熱変性)、60℃、20秒(アニーリング・伸長)をそれぞれ40サイクル行った。これにより、I30-1株を高い精度で定量的に検出できた。
【0081】
【表4】
JP0005334263B2_000005t.gif

【0082】
【表5】
JP0005334263B2_000006t.gif

【0083】
[実施例7]
<植物病害防除試験>
次に、実施例4で得られた機能性コンポスト試料1及び機能性コンポスト試料2の植物病害防除効果を確認した。
チンゲン2株の接種濃度が0.029g乾燥菌体/ポットとなるようにした以外は上記実施例3と同様にして、コンポストを6質量%で混合した滅菌土壌に15粒の無菌処理したチンゲンサイ種子を播種し、播種後6日目に10苗となるように間引きして、発病状態を発病度として測定し、評価した。結果を図9に示す。なお、図9中、実施例4で得られた機能性コンポスト試料1と病原菌を使用した試験区Dは黒菱形、実施例4で得られた機能性コンポスト試料2と病原菌を用いた試験区Eは黒三角、病原菌のみの試験区Fは黒四角、病原菌を接種していない試験区Gを黒丸で示す。
【0084】
図9に示されるように、細菌類の生存下でGM-21株を接種することにより実施例4で作製された本発明にかかる機能性コンポスト試料1及び2には、チンゲンサイ尻腐病を防除する効果があることがわかった。この結果から、細菌類が存在し、コンポスト中で糸状菌共存生育可能細菌類が高濃度に増殖していてもGM-21株の増殖も同時に可能であり、GM-21株を高濃度に含む本製品は、確実な病害防除効果のあることが確かめられた。
【0085】
[実施例8]
次に、機能性コンポストが利用可能な他の植物病害防除作用の確認を行った。
(a) レタスすそ枯病病原菌に対する植物病害防除効果
GM-21株の菌糸2gに対して、50mlの滅菌水を加えてホモジナイズし、懸濁液を作成した。
レタスすそ枯病の病原菌たる Rhizoctonia solani レタス2株をPD寒天培地上に一面に生育させたものに滅菌水50mlを加え、ホモジナイズして得た懸濁液を滅菌水で1000倍希釈し、病原菌懸濁液とし、レタスすそ枯病に対するヒメツブヒトヨタケGM-21株の糸状菌懸濁液の防除効果を検討した。育苗土入り滅菌ポットに、上記の病原菌懸濁液2ml、糸状菌懸濁液4ml、滅菌水の6mlをよく混合した後、無菌処理したレタス種子を20粒播き、上記と同様にして苗を10苗に間引いて1か月間にわたり発病状態を観察した。結果を図10に示す。図10において、病原菌のみを用いた試験区は黒丸、GM-21株と病原菌を用いた試験区は黒四角でそれぞれ示す。
【0086】
図10で明らかなように、GM-21株は、レタスすそ枯病病原菌 Rhizoctonia solani レタス2株に対して病害発生を強く抑制することができた。従って、上記実施例2及び実施例4と同様にして作製されるGM-21株を含む機能性コンポストは、レタスすそ枯病に対しても植物病害防除効果を有しうる。
【0087】
(b)種々のヒトヨタケ属糸状菌による植物病害防除効果
上記ヒメツブヒトヨタケ(GM-21株)と同様に、ウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus NBRC30114)、イヌセンボンダケ(Coprinus disseminatus NBRC30972)を用いて、Rhizoctonia solani K1株によるシバ葉腐病に対する防除効果を確認した。その結果を図11に示す。図11において、病原菌のみを用いた試験区は黒丸、GM-21株と病原菌を用いた試験区は黒菱形、ウシグソヒトヨタケと病原菌を用いた試験区は白三角、イヌセンボンダケと病原菌を用いた試験区はXでそれぞれ示す。
【0088】
図11で明らかなように、ヒメツブヒトヨタケ(GM-21株)、ウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus NBRC30114)、イヌセンボンダケ(Coprinus disseminatus NBRC30972)は、Rhizoctonia solani K1株によるシバ葉腐病に対する病害発生を抑制することができた。従って、ヒメツブヒトヨタケGM-21株を用いた上記実施例2及び実施例4と同様にして作製されうるウシグソヒトヨタケ(Coprinus cinereus NBRC30114)、イヌセンボンダケ(Coprinus disseminatus NBRC30972)を含む機能性コンポストは、シバ葉腐病に対しても植物病害防除効果を有しうる。
【0089】
(c)種々の糸状菌による植物病害に対する防除効果
PD寒天培地上に生育したRhizoctonia solaniチンゲン2株と、PD寒天培地上に生育したGM-21株からそれぞれ小片を取り、別に用意したPD寒天培地プレート上に約5cm離して置き、27℃で5日間培養した。
また同様にメロンつる割病病原菌 Fusarium oxysporum f. sp. melonis F0-Me-2株、トマト根腐萎凋病病原菌 Fusarium oxysporum f. sp. redicus-lycopersici F0-T-3株についても、それぞれ、上記と同様にしてGM-21株と同じPD寒天培地プレート上に置き、27℃で5日間培養した。
【0090】
その結果、いずれの病原菌を用いた場合でも、病原菌菌糸とGM-21株菌糸が対峙している接点では、明確な境界線が生じた。また病原菌菌糸は形態も変化し、変色した。これらのことは、いずれも、GM-21株と接することによって病原菌が強いダメージを受けていることを示している。
従って、上記実施例2及び実施例4と同様にして作製されるGM-21株を含む機能性コンポストは、レタスすそ枯病以外にも、メロンつる割病及びトマト根腐萎凋病に対しても植物病害防除効果を有しうる。
【0091】
上記のように本発明による植物病害防除は、ヒメツブヒトヨタケGM-21株を含む機能性コンポストによるチンゲンサイ尻腐病の病原菌(Rhizoctonia solani)に対する植物病害防除効果に限定されない。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、コンポスト化の工程において植物病害防除糸状菌を選択的に増殖させながら製造するので、優れた植物病害防除効果を有する機能性コンポストを、効率よく製造することができる。
また本発明の一実施形態により得られた機能性コンポストは、機能を有する糸状菌が充分量存在しており、目的とする機能が充分に発揮されるコンポストとして利用可能である。
さらにまた、細菌類が生存していても活動制限状態にある本発明の一実施形態のコンポストは、糸状菌の増殖に適しており、糸状菌増殖用コンポストとして利用可能である。
【0093】
日本出願番号第2007-145697号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10