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明細書 :BaTi2O5系強誘電性セラミックス製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5327677号 (P5327677)
公開番号 特開2011-006266 (P2011-006266A)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成23年1月13日(2011.1.13)
発明の名称または考案の名称 BaTi2O5系強誘電性セラミックス製造方法
国際特許分類 C04B  35/462       (2006.01)
C01G  23/00        (2006.01)
H01B   3/12        (2006.01)
H01G   4/12        (2006.01)
FI C04B 35/46 C
C01G 23/00 C
H01B 3/12 303
H01G 4/12 358
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2009-148621 (P2009-148621)
出願日 平成21年6月23日(2009.6.23)
審査請求日 平成24年6月14日(2012.6.14)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】秋重 幸邦
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】櫻木 伸一郎
参考文献・文献 特開平7-297009(JP,A)
特開平11-43370(JP,A)
特開2007-326768(JP,A)
調査した分野 C04B 35/42-35/51
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
BaTi粉末を、Mnを助剤として添加し1200℃以上で焼成してBaTi系の強誘電性セラミックスを得ることを特徴とするBaTi系強誘電性セラミックス製造方法。
【請求項2】
1250℃以上で焼成し、測定周波数が1MHzであるときに誘電率実数部ε’≧350であるBaTi系の強誘電性セラミックスを得ることを特徴とする請求項1に記載のBaTi系強誘電性セラミックス製造方法。
【請求項3】
焼成物を粉砕し再度成形して焼成する工程を繰り返し焼結度が80%以上となるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のBaTi系強誘電性セラミックス製造方法。
【請求項4】
BaTi粉末にMnを助剤として添加して焼成することにより得られるセラミックスであって、測定周波数が1MHzであるときに誘電率実数部ε’≧350である強誘電性セラミックス。
【請求項5】
請求項1、2または3に記載の方法により得られた強誘電性セラミックスまたは請求項4に記載の強誘電性セラミックスを用いたことを特徴とするコンデンサ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、BaTi系強誘電性セラミックス製造方法、強誘電性セラミックス、コンデンサおよびFRAMに関し、特に、汎用の焼成技術を用いて成形性に優れるBaTi系の強誘電性セラミックスおよびその応用製品を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
BaTi単結晶は、本願発明者による特許第4051437号に開示するように、極めて高い誘電率を示す。具体的には、強誘電相転移温度Tが470℃と高く、Tにおけるb軸方向の誘電率が30000近くもあり、誘電損失は500℃でも0.1以下と小さい。加えて、組成に鉛を含んでいないので、いわゆる鉛フリーな強誘電材料としてPZTに代替するものとして注目を集めている。
【0003】
ここで、実験室系で得られるBaTi単結晶は数mmの大きさしかなく、実用性を高めるためにはセラミックス化が望まれている。チタン酸バリウムは、様々な組成を有する物質として知られるが、総じて、セラミックス化するためには1300℃以上の温度で焼成する必要がある。
【0004】
しかしながら、BaTiは1150℃以上ではBaTiOとBaTi1740に分解してしまうため、従来ではセラミックス化するために、高温・高圧化した反応やスパーク・プラズマ焼成といった特殊技術を用いる必要があり、簡便かつ工業的に緻密セラミックスを合成することはできないという問題点があった。また、このような特殊焼成は、平板形状といった簡単な形状のものしか得ることができず、成形性に劣るという問題点があった。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第4051437号公報
【特許文献2】特開2001-163664号公報<nplcit num="1"><text>Sea-Fue WANG et al, 'Properties of Hexagonal Ba(Ti1-xMnx)O3Ceramics:Effects of Sintering Temperature and Mn Content' Japanese Journal ofApplied Physics Vol.46, No.5A, 2007, pp.2978-2983</text></nplcit>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、解決しようとする問題点は、たとえば、常圧下で温度を加えるだけといった、一般的な焼成手法を用いて、成形性のよいBaTi系強誘電性セラミックスを得る点である。また、BaTi系強誘電性セラミックスを利用した製品を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載のBaTi系強誘電性セラミックス製造方法は、BaTi粉末を、Mnを助剤として添加し1200℃以上で焼成してBaTi系の強誘電性セラミックスを得ることを最も主要な特徴とする。
【0008】
なお、BaTi系の系とは、分解が生じていない組成物であることを意味する(BaTiは、通常は、1150℃以上では、BaTiOとBaTi1740に分解し、1322℃で溶解し始める)。換言すれば、単一相の結晶型であることを意味する。この意味において、BaTi系とは、Mnが一部TiやBaと置換した組成物も含まれる。粉末とは、ナノ結晶ないし微細粉末を意味する。このような粉末は、たとえば、アルコキシドを用いたゾルゲル法により得ることができる。
【0009】
Mnは、金属そのものだけでなく、1200℃程度の温度で、チタン酸バリウムを変質させない(焼成に影響を与えない)ものであれば特に限定されず、化合物であってもよい。たとえば、MnOを挙げることができる。なお、MnOの融点は535℃である。Mnの添加量は、たとえば、原料の0.4wt%添加する例を挙げることができる。
【0010】
なお、焼成温度は後述するように1250℃以上が好ましい。
【0011】
請求項2に記載の方法は、請求項1に記載のBaTi系強誘電性セラミックス製造方法において、1250℃以上で焼成し、測定周波数が1MHzであるときに誘電率実数部ε’≧350であるBaTi系の強誘電性セラミックスを得ることを主要な特徴とする。
【0012】
なお、ε’は、粉末をそのまま焼成しているため無配向の状態の値をいう。
【0013】
請求項3に記載の方法は、請求項1または2に記載のBaTi系強誘電性セラミックス製造方法において、焼成物を粉砕し再度成形して焼成する工程を繰り返し、焼結度が80%以上となるようにしたことを主要な特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の強誘電性セラミックスは、BaTi粉末にMnを助剤として添加して焼成することにより得られるセラミックスであって、測定周波数が1MHzであるときに誘電率実数部ε’≧350であることを最も主要な特徴とする。
【0015】
請求項5に記載のコンデンサは、請求項1、2または3に記載の方法により得られた強誘電性セラミックスまたは請求項4に記載の強誘電性セラミックスを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一般的な焼成手法を用いて、成形性のよいBaTi系強誘電性セラミックスを得ることができる。また、BaTi系強誘電性セラミックスを利用した製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】2回の焼成後の焼成物表面の様子と焼成温度との関係を示した図である。
【図2】焼成物表面の斑点の大きさと焼成温度および焼成回数の関係を示した図である。
【図3】焼成物の焼結度と焼成温度および焼成回数の関係を示した図である。
【図4】1回焼成後の焼成物のXRDパタンを測定した図である。
【図5】1100℃で2回焼成した焼成物の誘電率と温度および測定周波数との関係を調べた図である。
【図6】1150℃で2回焼成した焼成物の誘電率と温度および測定周波数との関係を調べた図である。
【図7】1200℃で2回焼成した焼成物の誘電率と温度および測定周波数との関係を調べた図である。
【図8】1250℃で2回焼成した焼成物の誘電率と温度および測定周波数との関係を調べた図である。
【図9】測定周波数が1MHzの場合の各焼成温度における焼成物の誘電率と温度との関係を重ねて示した図である。
【図10】Mnの添加量をかえ、1250℃で2回焼成した焼成物の誘電率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、様々な組成形態を有するチタン酸バリウムのセラミックス化温度が総じて1300℃以上であるところ、本願発明者が鋭意検討した結果、Mnを添加すると50℃~100℃も低い焼成温度であってもセラミックス化が可能であり、当該温度では通常分解して他の組成へ変化してしまう組成であっても当初組成を維持し、強誘電性も有することを発見したことに基づいてなされたものである。以下では、ゾルゲル法によるナノ粒子の作製、焼成、物性評価の順に説明していく。

【0019】
<ゾルゲル法によるBaTiナノ粒子の作製>
まず、ゾルゲル法により原料を作製した。
Ba(OC(高純度化学研究所製:純度99.0%以上):Ti[OCH(CH]4(キシダ化学製:純度99.0%以上)=1:2(モル比)として、窒素ガス中においてメタノール(関東化学社製:純度99%)と2-メトキシエタノール(キシダ化学製:純度99%以上)の混合溶媒に溶解し、濃度1.0mol/Lの前駆体溶液を作った。

【0020】
これを0℃まで冷却し、攪拌しながら蒸留水を噴霧して加水分解をおこなった。
次に、50℃で24時間エージングし前駆体ゲルを作製した。
これを乾燥し、乳鉢で砕き粉末化した。

【0021】
得られた粉末をアルミナるつぼにいれ、電気炉内で650℃で12時間仮焼きをしてBaTiを得た。このとき、昇温速度を200℃/hとした。なお、得られた結晶は後述するようにXRDパタン解析により確かにBaTiであることを確認した。

【0022】
<助剤の添加および成形>
次に、この粉末に0.4wt%のMnOを添加し湿式ボールミルにより細粒化した。具体的には、BaTi原料粉3.00gと、予め粉砕しておいたMnO(SIGMA-ALDRICH製:純度99.999%)0.012gとを、ボールミルに投入し、エタノールを容器の7分目まで添加した後、5mmφ10個、2mmφ50個のジルコニアボールを加えて150rpmの速度で容器を24時間回転し続けた。その後内容物を100℃で乾燥し、乳鉢で粉砕して一様に混合された粉末(BaTiとMnOとの混合粉末)を得た。

【0023】
次に、粉末にバインダとしてポリビニルアルコールを1wt%添加して、5mmφの金型に投入し、500MPaで10分間加圧してペレットを作製した。なお、ペレットの高さは約4.5mm、重さは約0.3gとなった。

【0024】
<焼成>
このペレットを、900℃、1000℃、1100℃、1150℃、1200℃、1250℃で5時間焼成した。なお、昇温工程において、バインダを除去するために600℃×4時間のステップをいれ、その後設定温度まで昇温するようにプログラムした。

【0025】
焼成したものには、焼成温度の高いものほど明瞭な斑点が確認されたので、ペレットを粉砕し、再度ポリビニルアルコールを1wt%添加して、同様の金型を用いて成形し、同一の温度にて再度焼成し直した。なお、このときも、昇温のプログラムはバインダ除去の工程も含めて1回目の焼成と同一のプログラムに従った。

【0026】
<物性評価>
図1に、2回の焼成後の焼成物表面の様子と焼成温度との関係を示した。図示したように、焼成温度が高いほど斑点が目立つが、二度目の焼成では一度目の焼成のような目立つ斑点は観察されなかった。図2に、斑点の大きさと焼成温度および焼成回数の関係を示した。なお、金属顕微鏡で確認したところ、1回目の焼成のときに現れた斑点の大きさは、80μm~100μmの大きさであった。

【0027】
図3に、焼結度と焼成温度および焼成回数の関係を示した。図示したように、1回の焼成では時間が短かったのか、バインダ散逸による空隙が大きかったのか、焼結度は大きくないものの、1150℃以上では2回の焼成により焼結度が80%を超え、セラミックス化が進んでいることが確認できる。特に1200℃以上では2度の焼成により、焼結度が85%を超え、1250℃の場合には、ほぼ100%セラミックス化していることが確認できる。なお、焼結度は、BaTi単結晶の密度(5.2g/cm)を基準としてペレットの体積と重量とから算出した。

【0028】
次に、2回焼成後のXRDパタンを測定した。結果を図4に示す。図示したように、ピークの強度は若干異なるが、1250℃まで原料粉末すなわちBaTi結晶とほぼ同一のパタンを有し、本来なら分解するはずの温度であっても分解せず単一相の結晶型を維持することが確認できた。

【0029】
以上から、Mnを助剤として用いると、一般的にチタン酸バリウム系結晶のセラミックス化温度といわれている1300℃より50℃も低い当業者であっても想定外の温度でセラミックス化が可能であり、しかも、分解する温度とされる1150℃以上であっても分解せずにセラミックス化が可能であるという、驚くべき二つの結果となることが確認できた。

【0030】
次に、2回焼成後の誘電率と温度および測定周波数との関係を調べた。図5には1100℃の焼成物を、図6には1150℃の焼成物を、図7には1200℃の焼成物を、図8には1250℃の焼成物をそれぞれ示した。また、図9には、測定周波数が1MHzの場合の各焼成温度における焼成物の誘電率と温度との関係を重ねて示した。

【0031】
図から明らかなように、焼成温度が1200℃である場合には、Tcが320℃~330℃にあり、その誘電率実数部ε’は150以上であって、特に、焼成温度が1250℃である場合には、誘電率実数部ε’は350以上となり良好な強誘電性を示すことが確認できた。常圧(大気圧)における通常の焼成方法で得られるこの値は大きなものである。

【0032】
以上より、原料粉末を任意の形状に成形して1200℃以上好ましくは1250℃以上で焼成することにより強誘電性を有するセラミックスが得られることが確認できた。なお、単結晶の場合は、配向性があり、b軸方向ではε’が30000となるが、本方法は粉末により成形するためε’が350程度になる。ただし、従来知られている方法により、適宜若干の配向性を持たせるようにすればε’を1000程度とすることも可能である。

【0033】
最後に、Mn添加量と誘電率との関係を調べた。図10は、誘電率と温度およびMn添加量の関係を示した図である。1250℃で2回焼成した焼成物を検討した結果、Mnは0.2wt%~0.8wt%添加で強誘電性を示すことが分かった。なお、図示は省略するが、いずれも、XRDパタンはBaTi系の単一相結晶であった。

【0034】
このように、本発明によれば、成形性のよいBaTi系強誘電性セラミックスを得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、従来の生産ラインでおこなわれている、原料スラリーからグリーンシートを経て積層セラミックスコンデンサへとつづく、一連の工程でのコンデンサ作製が可能となる。また、サーミスタに用いられているPTCセラミックスの代替も可能となる。また、FRAMとしての応用も可能である。
図面
【図2】
0
【図3】
1
【図4】
2
【図5】
3
【図6】
4
【図7】
5
【図8】
6
【図9】
7
【図10】
8
【図1】
9