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明細書 :固液分離機能を有する装置及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5231782号 (P5231782)
公開番号 特開2009-109232 (P2009-109232A)
登録日 平成25年3月29日(2013.3.29)
発行日 平成25年7月10日(2013.7.10)
公開日 平成21年5月21日(2009.5.21)
発明の名称または考案の名称 固液分離機能を有する装置及びその製造方法
国際特許分類 G01N  35/08        (2006.01)
G01N   1/28        (2006.01)
B03B   5/00        (2006.01)
B81B   1/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI G01N 35/08 A
G01N 1/28 J
B03B 5/00 Z
B81B 1/00
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 9
全頁数 20
出願番号 特願2007-279211 (P2007-279211)
出願日 平成19年10月26日(2007.10.26)
審査請求日 平成22年10月16日(2010.10.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
発明者または考案者 【氏名】筒井 博司
個別代理人の代理人 【識別番号】100122828、【弁理士】、【氏名又は名称】角谷 哲生
審査官 【審査官】柏木 一浩
参考文献・文献 国際公開第2006/101051(WO,A1)
特開2007-155441(JP,A)
特開2005-140790(JP,A)
調査した分野 G01N 35/08
B03B 5/00
B81B 1/00
G01N 1/28
G01N 37/00
特許請求の範囲 【請求項1】
平板状の本体に流体を通す溝部が形成されており、前記溝部の一の端部に流体の入口が形成されており、他の端部に出口が形成されている固液分離機能を有する装置であって、入口が固液混合物を導入する導入口であり、溝中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が形成されており、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、
前記分離部には固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、溝部の底部と一定の大きさ以上の固体を通さない隔壁とにより構成されており、一定の大きさ以上の固体の通り得る入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部とを備えており、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記固体よりも小さい開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする固液分離機能を有する装置。
【請求項2】
平板状の本体に流体を通す溝部が形成されており、前記溝部の一の端部に流体の入口が形成されており、他の端部に出口が形成されている固液分離機能を有する装置であって、入口が固液混合物を導入する導入口であり、溝中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が形成されており、入口と出口の圧力差により、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、
前記分離部には固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、溝部の底部と一定の大きさ以上の固体を通さない隔壁とにより構成されており、一定の大きさ以上の固体の通り得る入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部とを備えており、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記固体よりも小さい開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする固液分離機能を有する装置。

【請求項3】
前記隔壁が柱体列又は壁体からなることを特徴とする請求項1又は2記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項4】
流路の幅が、上流の方が下流よりも大きいか同等であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項5】
流体の通路となる、上方に開口を有する溝部を形成した本体と、本体の上に位置し少なくとも溝部を覆う蓋体とからなり、前記障壁が本体又は蓋体から他に対し略垂直に形成された柱体列又は壁体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項6】
分離部の最下流部が前記一定の大きさ以上の固体は通過できないようにされていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項7】
固体捕捉部の底部が前記一定の大きさ以上の固体粒子が複数個捕捉されるよう深くなっ
ていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の固液分離機能を有する装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれかの固液分離機能を有する装置を一部分として有することを特徴とするμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイス。
【請求項9】
フォトリソグラフィープロセスを製造工程の一部に用いることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の固液分離機能を有する装置の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、固液分離機能を有する装置、特に液体と固体の混合物から一定の大きさ以上の固体をろ過する機能、例えば、血液から血球を分離する機能を有するフィルタ機能(固液分離機能)を有する装置及びその製造方法、並びにフィルタ機能を有するμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、マイクロマシン技術を応用して、化学分析や合成などの機器・手法を微細化して行うμ-TAS(μ-Total Analysis Systems、 マイクロ トータル アナリシス システムズ)と呼ばれるマイクロ化学デバイスが研究開発されている。μ-TASは、試料の量が少ない、反応時間が短い、分析に好適であるなどのメリットがあり、これを血液分析等の医療用に利用することが期待される。この場合、血液分析を行うには、前処理として血液中の血球分離を行う必要がある。しかし、マイクロオーダーの流路内にフィルタを製造簡易に設置するのは困難であった。例えば、フィルタに不織布等を流路内に液漏れなく取り付けるのは小さいために難しく、また、コストアップにもなるという問題がある。また、濾過部の最初の部分で血球が詰まりろ過効率が悪くなるという問題もあった。
【0003】
血液から赤血球を分離し、使用血液量に対して血漿を、より高率に分離し得る方法が特許文献1に記載されている。特許文献1には、懸濁液中の微細構造体を分画する場発生手段と拘束手段とを有する分画装置(請求項1)が記載され、微細構造体が装置を通って移動するとき経路内に位置し、微細構造体の動作の一部を妨害する妨害体配列(請求項2)が記載され、この妨害体がU字型、V字型などの形状をしていることが記載されている(請求項3)。この分画装置に血液のような固液混合物を流すと、赤血球のような固体(微細構造体)が、U字型、V字型妨害体の内側の窪みに捉えられるようにされている。
【0004】
特許文献1には、微細構造体を移動させる推進力として、電場を用いる静電力の他に水圧、重力なども挙げられている。しかし、水圧や重力の場合は、固液混合体を流動させることにより赤血球のような固体粒子を、一旦U字型、V字型妨害体の内側の窪みに捉えさせることができたとしても、窪みに固体粒子が入ることにより妨害体の内側窪みに向けての流れが止まりあるいは弱まるため、固体粒子を窪みに留めておくことはできず再度浮遊し、窪みから出てしまう。
【0005】
したがって、固液混合体全体を流動させるのではなく、血液のような粘性物から赤血球のような固体粒子のみを移動させて、U字型、V字型妨害体の内側の窪みに入れるには、固体粒子を電場を用い静電力で移動させることが必要となるが、このためには電極の装備と電場コントロールが必要となる。ただし電場を用いて固体粒子を移動させる系では、液が停滞しており固体のみが電場により移動して分離されるが、赤血球程度の大きな粒子になると粘性抵抗が大きいため電気泳動には時間がかかり分離の速度が遅いという問題がある。
【0006】
ところで、簡易安価にμ—TASを製造するために、樹脂製にし、微細型にて凹凸形成をして本体を作り、それに蓋をする構造が製造が簡易、低コストのために望ましいと考えられるが、樹脂製の場合樹脂は電気絶縁体であるので、電気力線はU字型妨害体、Y字型妨害体の内側にはいることなく外側を走る。したがって、電気力線に沿って移動する微細構造体はU字型妨害体、Y字型妨害体の窪みに捕捉されにくい、という問題が生じる。
【0007】
更に分離器を小型にするには、分離部における固体捕捉の面積効率(面積当りの固体捕捉数)が高いことが必要である。

【特許文献1】特表平9-504362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点に鑑み、本発明は、固液混合物を経路に流入させるだけで、液体の流れにより固体が運ばれ、途中で一定の大きさ以上の固体のみ捕捉されて分離するフィルタ機能(固液分離機能)を有する製造容易で安価な小型の装置及びその製造方法、並びにフィルタ機能を有するμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、平板状の本体に流体を通す溝部が形成されており、前記溝部の一の端部に流体の入口が形成されており、他の端部に出口が形成されている固液分離機能を有する装置であって、入口が固液混合物を導入する導入口であり、溝中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が形成されており、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、前記分離部には固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、溝部の底部と一定の大きさ以上の固体を通さない隔壁とにより構成されており、一定の大きさ以上の固体の通り得る入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部とを備えており、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記固体よりも小さい開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする。
請求項2記載の本発明の固液分離機能を有する装置は、平板状の本体に流体を通す溝部が形成されており、前記溝部の一の端部に流体の入口が形成されており、他の端部に出口が形成されている固液分離機能を有する装置であって、入口が固液混合物を導入する導入口であり、溝中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部が形成されており、入口と出口の圧力差により、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部を上流から下流に向けて通過するようにされており、前記分離部には固体捕捉部が複数個設けられており、前記固体捕捉部は、溝部の底部と一定の大きさ以上の固体を通さない隔壁とにより構成されており、一定の大きさ以上の固体の通り得る入り口部と、前記入り口部から入った固体を1個以上収容する収容部と、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部とを備えており、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記固体よりも小さい開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする。
【0010】
本発明でいう固液混合物としては、特に限定されるわけではないが、例えば、血漿と血球を含有する血液が挙げられる。
【0011】
上記発明を図面を参照しつつ説明する。図1は固液分離機能を有する装置Aの一例を示す斜視図である。すなわち、平板状の本体1に流体を通す溝部2が形成されており、前記溝部2の一の端部に流体の入口3が形成されており、他の端部に出口4が形成されている。入口3は固液混合物を導入する導入口であり、溝2中に、一定の大きさ以上の固体を捕捉することにより固液を分離する分離部5が形成されており、入口側から出口側に向けて固液混合物が分離部5を上流から下流に向けて通過するようにされている。前記分離部5には固体捕捉部6、6、6、・・・が複数個設けられている。符号10、11、12で表されるものは、流体の流れる通路であり、通路10は、入口3と分離部5とを結ぶ通路であり、通路11は分離部5と後述の液溜め部8とを結ぶ通路であり、通路12は、液溜め部8と出口4とを結ぶ通路である。
【0012】
なお、図1において、入口3は、溝部2の一の端部に通路10とは別に形成されているが、通路10の端部を入口3として用いても良い。また、出口4も溝部2の他の端部に出口側の通路とは別に形成されているが、出口側の通路の端部を出口4として用いてもよい。
【0013】
図2は、分離部5の一部を拡大して示すと共に、固液分離の状況を説明する平面図である。分離部5には固体捕捉部6が複数個設けられている。固体捕捉部6は、溝部2の底部と一定の大きさ以上の固体を通さない隔壁61、61とにより構成されており、U字型の形状をしている。固体捕捉部6は、一定の大きさ以上の固体7の通り得る入り口部62と、前記入り口部62から入った固体7を1個以上収容する収容部63と、前記収容部63の下流側に設けられた前記固体7よりも小さい開口部64とを備えている。固液分離に際し、固液混合物は矢印で示したように移動し、一定の大きさ以上の固体7は、収容部63に留まり液体は開口部64から下流に流れるようにされている。
【0014】
以下、本発明を説明するための図面中で用いられる符号については、同じ機能を有するものには、紛らわしくならない限りは、原則として同じ符号を用いることにする。
【0015】
上記固体捕捉部6の形状はU字型に限らず、Y字型など種々の形状が可能である。固体捕捉部6の隔壁61は、壁体に開口部64が開口したもの、柱体が列状に並んだ柱体列など種々な形状が可能である。また、捕捉された一定の大きさ以上の固体7が開口部64を塞ぐと流れが途絶え一定の大きさ以上の固体7が再浮遊するため、図3(a)に示すように、開口部64が複数設けられたもの、図3(b)に示すように、隔壁61の内側に突起65が設けられ開口部を塞がないようにしたものなどが好ましい。図3において、矢印は流体の移動方向を示す。
【0016】
また、図3(c)及び図3(d)に示すものは、柱体が列状に並んだ柱体列からなる固体捕捉部6の例である。図3(c)及び図3(d)において、符号66は柱体であり、この柱体66間の隙間が開口部64となる。図3(c)は、柱体列がU字型に並んだ例であり、図3(d)は、柱体列が矩形状に並んだ例である。柱体列からなる固体捕捉部においては、開口部64が多数存在するので、一定の大きさ以上の固体によって開口部が全て塞がれる恐れは少ない。
【0017】
上記装置の大きさとしては、血液から血球を分離して血漿を得る装置として使用する場合の1例を挙げると、分離部5の胴部は縦0.1~10mm、横0.1~10mm、分離部中の固体捕捉部6の高さは4~100μm程度とされる。
【0018】
図1及び図2で示される固液分離機能を有する装置Aにおいて、固液混合物は入口3から入り通路10を通り、分離部5で一定の大きさ以上の固体が分離され、液体が通路11を通り液体溜め8に溜まるようにされている。なお、上記の液体溜め8を減圧にすることにより出口4の機能をもたせるようにしても良い。
【0019】
固液混合物が通路10を通り、分離部5に入り固体捕捉部6で一定の大きさ以上の固体を分離するに際し、分離部5に入った固液混合物が各固体捕捉部に均等に配分されて流れるように、図4に示すように、分離部5内の上流側に固液混合物の拡散部51を設けることが好ましい。前記拡散部51には、例えば、水平断面が菱形の柱状妨害体52、52、52、・・・を多数設けるなどして、固液混合物の通り道53、53、53、・・・を多数確保するのが好ましい。なお、図4においては、固体捕捉部6の図示は省略してある。
【0020】
この装置Aの使用に際して、固液混合物中の液体は入口と出口の間を固体が再浮遊して捕捉部から流出しない程度に実質上続けて流れることが必須である。この移動の推進力としては、入口からの圧力注入、又は、出口からの吸引でもよい。また、入口3に血液を1滴落とし、その一部が通路10を通って毛管現象により分離部5に到達させるようにしても良い。移動速度は、血液から血球を分離する場合は、血球が変形しないように一定の速度にすることが好ましい。
【0021】
このように、装置においては、液体の移動経路中に分離部5がある。液体の流れにより浮遊する固体7が移動し、分離部5中に設けられた固体捕捉部6の一定の大きさ以上の固体7の通り得る入り口部62から固液が流入し、前記入り口部62から入った固体を1個以上収容する収容部63に一定の大きさ以上の固体7が捕捉される。そして、収容部63に固体7と一緒に入った液体は、前記収容部63の下流側に設けられた前記固体7よりも小さい開口部64を通って下流側に流れる。これにより収容部63には一定の大きさ以上の固体7のみが捕捉される。一旦捕捉された一定の大きさ以上の固体が再浮遊しないように収容部63は液体が流れ続けることが必要であり、このため開口部64を捕捉された固体が塞がぬよう、収容部63の下流側の隔壁61の曲率を捕捉される固体の曲率と異なるものにすること、隔壁61に開口部64を複数設けること、隔壁61の内側に突起65を設けること等がなされていることが好ましい。
【0022】
上記収容部63には、1個または複数の一定の大きさ以上の固体を収容する。満杯になっておれば、満杯の収容部は流体抵抗が大きくなり、固液はその収容部に入らず他の収容部を通過し、そこで一定の大きさ以上の固体7が捕捉される。この際、できるだけ、流路抵抗を小さく、分離効率良く、分離部の終端までに完全に一定の大きさ以上の固体7が捕捉されつくすことが必要である。よって分離部における固体捕捉部6の配置が重要になる。
【0023】
この装置Aの使用方法の一例を、血液から血漿を得る際に用いる場合について説明すると、入口3にシリンジの先端を装着し、ピストンによりシリンジ中の血液を注入する。注入血液量としては、装置の大きさによっても変わるが、シリンジを使用する場合は、通常、0.1~1マイクロリットル程度でよい。また、入口3に血液を1滴落とし、その一部が通路10を通って分離部5に到達させるようにしても良い。この場合は、落とす血液量は、通常1~15マイクロリットル程度である。注入された血液は分離部5で血球が除去され、血漿のみが液体溜め(血漿溜め)8に集まる。この血漿に試薬導入口から試薬が注入され混合部で混合されるようにされてもよい(試薬導入口、及び混合部は図示せず)。血漿を装置から取り出し、血糖値、PH等を測定してもよいし、液体溜め(血漿溜め)8に電極等を突き刺し測定してもよいし、予め、液体溜め(血漿溜め)8に電極を設けておいて検出してもよい。更に分離部を覆う蓋及びまたは本体を透明にしておけば分離部の透過光、反射光から血球の捕捉状況を光学特性としてヘマトクリット値相当値を測定することもできる。
【0024】
請求項1又は2記載の本発明は、固液分離機能を有する装置において、前記分離部には、上流から下流へと向かう流路が複数設けられ、前記流路に沿って流路に向けて開口した前記固体捕捉部が複数設けられており、前記一の流路と他の流路とが障壁または前記固体よりも小さい開口部を有する障壁により画されていることを特徴とする。
【0025】
上記請求項1又は2記載の本発明を図面を参照しつつ説明する。図5は本発明で用いられる一つの流路9の一例を模式的に示す平面図である。本発明においては、このような流路9が分離部に複数設けられている。図5において、流路9は他の流路と障壁91によって画されている。障壁91は開口部を有さなくて良いし、または前記固体よりも小さい開口部を有していても良い。障壁91は、一定の大きさ以上の固体を通さなければよく、壁体又は柱体列のいずれかで作製されていることが好ましい。図5は、障壁91が柱体66からなる柱体列によって作製されている例である(なお、図5においては、障壁91が柱体66からなる柱体列によって作製されていることを示すために、複数(4本)の柱体66からの引出線を1つの符号91に結び付けるように描いてある)。障壁91が開口部を有さない場合は、一つの流路と隣接する他の流路との間で固液混合物中の液体の移動は起こらないが、障壁91が前記固体よりも小さい開口部を有している場合は、隣接する他の流路との間で固液混合物中の液体の移動が起こる。いずれにせよ、一つの流路と隣接する他の流路との間で上記開口部よりも大きい固体の移動は起こらない。
【0026】
上記障壁91を柱体列で作製し、この装置を血液から血球を分離して血漿を得る装置として使用する場合の1例を挙げると、赤血球が厚み約2.5μm、直径約8μmの円板状であるので、柱体間の間隔(内法)は1.7~2μm、柱体の高さは10μm程度とされる。
【0027】
さらに、前記流路9に沿って流路9に向けて開口した前記固体捕捉部6が複数設けられている。この場合、流路9に沿って設けられる固体捕捉部6は、固体を捕捉するための固体よりも大きい開口は、流路9の上流又は上流に近い方向に向いていることが固体捕捉の効率が高まるため好ましい。図5においては、固体捕捉部6はその隔壁が柱体66からなる柱体列によって作製されている例であるが、図2、図3(a)又は図3(b)に示したような壁体によって作製されてもよい。
【0028】
次に、この流路9に固液混合物を入れて固液分離する過程を説明する。固液混合物は流路入口92から入り、液体は図の右下方向に流れるが、固体は障害を受けてaで示す経路に沿ってジグザグ状に進行する。そして、進行方向正面に固体捕捉部6の開口があるところで、固体の一部が図中に示したb方向、又はc方向に進んで固体捕捉部6に入り、その収容部に一定の大きさ以上の固体7が捕捉され、収容部に固体と一緒に入った液体は、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部を通って下流側に流れる。これにより収容部には一定の大きさ以上の固体のみが捕捉される。
【0029】
一旦捕捉された一定の大きさ以上の固体が再浮遊しないように収容部には液体が流れ続けることが必要である。固液混合物の一部が固体捕捉部に入った際に、収容部が固体で満杯になっておれば、満杯の収容部は流体抵抗が大きくなり、固液はその収容部に入らず又は入りにくくなり流路に沿ってジグザグに進行し、より下流側で、進行方向正面に固体捕捉部6の開口があるところで、固液混合物の一部がb方向、又はc方向に進んで固体捕捉部6に入り、その収容部に固体7が捕捉され、収容部に固体と一緒に入った液体は、前記収容部の下流側に設けられた前記固体よりも小さい開口部を通って下流側に流れる。
【0030】
このような、過程を繰り返すことにより、固体が分離され流路9の流路出口93においては液体(及び、分離しようとする固液混合物中に上記収容部の下流側の開口部よりも小さい固体があれば、そのものも含まれる)のみが流れることになる。固体捕捉部6の収容部の下流側開口部からでた液体は、他の部分から流れてくる液体と合流し出口方向に流れる。固体捕捉部6の配置は限定されないが、面積効率を上げるためには、流路の両側に規則的に配置されていることが好ましく、又固体捕捉部6同士も隣接していることが好ましい。
【0031】
上記流路の幅は、上流の方が下流よりも大きいか同等であることが好ましい。流れる途中で固体が捕捉されてゆくため、上流程液体中の固体の密度が高く、下流程密度が低いためである。したがって流路の幅は、上流の方が下流よりも大きいか同等であることが面積効率を上げるために好ましい。尚、上流と下流の流路幅が異なる場合には面積効率を上げるには流路幅の大きい上流部は短く、流路幅の小さい下流部は長い方が好ましい。
【0032】
図6は、このような流路を持つ装置の例を示す模式的な平面図である。図6において、R1~R13は1つの流路を表すものとし、M1~M3は固液混合物通路を表すものとする。最上流側の流路R1~R3を含むゾーンをZ1と名付け、次の上流側の流路R4~R7を含むゾーンをZ2と名付け、下流側の流路R8~R13を含むゾーンをZ3と名付ける。それぞれのゾーン内において、そのゾーンを構成する流路の幅は等しく構成した。そして、流路R1の幅>流路R4の幅>流路R8の幅となるようにした。具体的には、R1~R3のそれぞれの流路の幅は例えば20μmとし、R4~R7のそれぞれの流路の幅は15μmとし、R8~R13のそれぞれの流路の幅は10μmとした。ゾーンZ1において、その1つの流路と固体捕捉部との合計の幅をa1、ゾーンZ1の長さをb1と名付ける。ゾーンZ2において、その1つの流路と固体捕捉部との合計の幅をa2、ゾーンZ2の長さをb2と名付ける。ゾーンZ3において、その1つの流路と固体捕捉部との合計の幅をa3、ゾーンZ3の長さをb3と名付ける。そして、a1>a2>a3、b1<b2<b3となるように構成した。
【0033】
この装置を用いて固液混合物を分離する過程を説明する。固液混合物通路M1から固液混合物を流路R1~R3に流す。これにより一定の大きさ以上の固体の一部が分離され、まだ分離不十分の固液混合物が、固液混合物通路M2に溜まる。固液混合物通路M2に溜まった固液混合物が合流した後、次いで固液混合物通路M2から固液混合物を流路R4~R7に流す。これにより一定の大きさ以上の固体の一部が更に分離され、まだ分離不十分の固液混合物が、固液混合物通路M3に溜まる。固液混合物通路M3に溜まった固液混合物が合流した後、次いで固液混合物通路M3から固液混合物を流路R8~R13に流す。これにより一定の大きさ以上の固体が更に分離され、流路R8~R13の出口からは液体(及び、分離しようとする固液混合物中に固体捕捉部の収容部の下流側の開口部よりも小さい固体があれば、そのものも含まれる)が出て来る。
【0035】
請求項記載の本発明は、請求項1~4のいずれか1項に記載の固液分離機能を有する装置において、上方に開口を有する溝部を形成した本体と、本体の上に位置し少なくとも溝部を覆う蓋体とからなり、前記障壁が本体又は蓋体から他に対し略垂直に形成された柱体列又は壁体であることを特徴とする。このように、本体と蓋体が分かれていると、製造し易くなる。
【0036】
請求項記載の本発明は、請求項1~のいずれか1項に記載の固液分離機能を有する装置において、分離部の最下流部が前記一定の大きさ以上の固体は通過できないようにされていることを特徴とする。このように構成すると分離部での固体の分離が完全となる。
【0037】
請求項記載の本発明は、固体捕捉部の底部が前記一定の大きさ以上の固体粒子が複数個捕捉されるよう深くなっていることを特徴とする。このように構成すると、より効率よく一定の大きさ以上の固体を分離した液体を得ることができると共に、装置をより小型化でき得る。
【0038】
請求項記載の本発明は、請求項1~のいずれかの固液分離機能を有する装置を一部分として有することを特徴とするμ-TAS(マイクロ トータル アナリシス システムズ)デバイスである。
【0039】
本発明の固液分離機能を有する装置を製造する方法は、限定されるわけではないが、例えば、フォトリソグラフィープロセスを製造工程の一部に用いる方法が挙げられる。フォトリソグラフィープロセスは例えば以下の工程で行われる。
【0040】
1)基板洗浄工程
基板としては、特に限定されず、例えば、ガラス、プラスチックが挙げられる。洗浄に使用される液体としては、有機溶剤および純水などが挙げられ、洗浄方法としては超音波洗浄が挙げられる。洗浄後、基板の表面の水滴等の液体を完全に蒸発させる。
2)レジストの塗布工程
レジストとしては、特に限定されないが、UVか可視光で感光する樹脂が好ましい。樹脂種としては特に限定されず、例えばアクリル系のものが挙げられる。塗布方法は、基板上にフォトレジストが均一に塗布できる方法であれば、特に限定されないが、例えば、スピンコーターを使用し、遠心力を利用して基板上に塗布する方法が挙げられる。
3)プリベーク工程
プリベークは、塗布後のフォトレジスト中の溶剤を蒸発させ、フォトレジストの密度を高めるために行う。プリベーク条件はフォトレジストの種類により異なる。
【0041】
4)露光工程
塗布したフォトレジストのパターニングはマスクアライナーと金属マスクを用いて行う。具体的には、マスクアライナーを使用し、マスクのパターンを通過した紫外線によりレジストを感光させる。フォトマスクとしては、例えば、ガラス基板上に金属蒸着(Ni、Cr、Au)したものが挙げられ、この場合は、金属蒸着していない部分を紫外線が通過し、フォトレジストに光をあてその部分を硬化させる。
【0042】
5)ポストベーク工程
レジストの感光した部分を反応硬化させる。露光されたフォトレジストの架橋を促進するために行う。基板とフォトレジストの接着強度を高める効果もある。硬化条件は、フォトレジストの種類により異なる。
6)現像工程
感光した部分を残して、感光していない部分を溶かすために、現像液中で現像処理および洗浄を行い、エアスプレイなどを用いて乾燥させる。
【0043】
本発明の固液分離機能を有する装置は、このようにフォトリソグラフィープロセスを用いて基本的に上記の工程により本体を作製し、蓋体を貼り付けることによって製造され得るが、製造しようとする装置の形状に応じて最適の工程は適宜選択され得る。
【0044】
例えば、図7に示した固液分離機能を有する装置Bを製造する場合を例に、本発明の固液分離機能を有する装置とその製造方法を詳しく説明する。図7は、この装置Bの平面図である。この装置Bは、平板状の本体1に流体を通す溝部2が形成されており、前記溝部2は、流体の入口3、分離部5、液溜め部8、出口4及び通路10、11、12から構成されている。通路10は、入口3と分離部5とを結ぶ通路であり、通路11は分離部5と液溜め部8とを結ぶ通路であり、通路12は、液溜め部8と出口4とを結ぶ通路である。
【0045】
分離部5は、通路10からの固液混合物を拡散するための固液混合物拡散部51、内部に柱体66列からなる固体捕捉部が多数設けられた胴部54(なお、胴部54中に設けられた柱体66列は、模式的に描いたものであり、真の柱体66列を表したものではない。したがって、この柱体66列からなる固体捕捉部も図7からは分からない。真の柱体66列は、後述の図8に図示する)、胴部54で万一捕捉しきれずにたどりついた一定の大きさの以上の固体を通さないための完全捕捉部55、及び、完全捕捉部55から出た液体を収束させて通路11に送るための収束部56から構成されている。これらは、上流側から下流側にかけて、固液混合物拡散部51、胴部54、完全捕捉部55、収束部56の順に並んでいる。
【0046】
上記固液混合物拡散部51は、水平断面が三角形状の空間部であり、その中に水平断面が菱形の柱状妨害体52が多数設けられている。
【0047】
上記の胴部54は、水平断面が四角形状の空間部であり、図7の主として胴部と完全捕捉部が位置している部分を拡大して示した図8に見られるように、その中に柱体から構成された固体捕捉部が多数設けられている。上記完全捕捉部55は、水平断面が四角形状の空間部であり、図8に見られるように、その中に柱体間の間隔が捕捉しようとする固体より小さくされた柱体列が設けられている。
【0048】
また、収束部56は、水平断面が三角形状の空間部であり、その中に水平断面が菱形のスペーサ57が多数設けられている。上記スペーサ5は、本体1にフィルムからなる蓋体が被せられたときに、フィルムの当該部分が陥没(凹む)するのを防止するために設けられたものである。
【0049】
また、この図7からは分からないが、入口3、分離部5内の固液混合物拡散部51、液溜め部8、出口4及び通路10、11、12の内底面はガラス基板の表面とされ、分離部5内の胴部54、完全捕捉部55及び収束部56の内底面は上記ガラス基板上に作製されたフォトレジスト硬化層の表面とされている。すなわち、入口3、分離部5内の固液混合物拡散部51、液溜め部8、出口4及び通路10、11、12の深さは、分離部5内の胴部54、完全捕捉部55及び収束部56の深さよりも深くされている。
【0050】
なお、上記のように、深さを変えたもののうち、特に、入口3と分離部5とを結ぶ通路10と分離部5内の固液混合物拡散部51とを深くし、分離部5内の胴部54の深さを浅くした理由は以下のようである。通路10は固体を含む粘性液体を流すにあたり、スムーズな流れを得、かつ流路抵抗を増加させないためには、適度の通路断面積を必要とするため、例えば、通路幅100μm、通路深さ30μmを採用した。これに対し分離部5内の胴部54は固体(例えば、赤血球)の分離を主目的とするために深さを例えば、10μmと浅くし、胴部幅を使用目的に合わせて拡大した。このために、分離部の胴部直前までは流路を深くして流路抵抗を下げ、胴部において深さを浅くする構造を採用した。
【0051】
以下、この装置の製造方法を図9を参照しながら説明する。図9の中央部の1、2、3、4および5の説明は、この装置を製造する際の工程を記したものである。上記の各工程における通路10とその近辺の状態を示す模式的な断面図(図7に示したイ-イ線断面図)を図内の右側に示し、分離部5の胴部54とその近辺の状態を示す模式的な断面図(図7に示したロ-ロ線断面図)を図内の左側に示した。なお、通路10とその近辺の状態を示す模式的な断面図においては、各層の名称が記載されていないが、その各層の名称は、対応する、分離部5の胴部54とその近辺の状態を示す模式的な断面図に記載された名称とそれぞれ同じである。
【0052】
工程1は、レジスト塗布工程であり、ガラス基板上にフォトレジスト第1層を塗布する工程である。これにより、図9でみると、通路10、分離部5の胴部54を含む、ガラス基板上の全てにフォトレジスト第1層が積層されている。
【0053】
工程2は、露光工程1である。この工程は、入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の菱形の柱状妨害体52以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12をマスクして露光する工程である。上記の部分のみに光が当たらないようなフォトマスクを、上記のフォトレジスト第1層に載せた状態でUV光を照射する。これにより、上記部分以外が感光される。図9でみると、通路10はUV光がマスクされた状態で露光されるので感光されず、通路10の外側の本体部分が感光される。また、分離部5の胴部54はUV光がマスクされない状態で露光されるので感光される。
【0054】
工程3は、フォトレジスト第1層の上にフォトレジスト第2層を塗布する工程である。これにより、図9でみると、通路10、分離部5の胴部54を含む、フォトレジスト第1層が積層された層の全てにフォトレジスト第2層が積層されている。
【0055】
工程4は、露光工程2である。この工程は、入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の柱状妨害体52以外の部分;分離部5内の胴部54の柱体列以外の部分;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列以外の部分;分離部5内の収束部56のスペーサ56以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12をマスクして露光する工程である。上記の部分のみに光が当たらないようなフォトマスクを、上記のフォトレジスト第2層に載せた状態でUV光を照射する。これにより、上記部分以外が感光される。図9でみると、通路10はUV光がマスクされた状態で露光されるので感光されず、通路10の外側の本体部分が感光される。分離部5の胴部54では柱体列以外の部分ではUV光がマスクされた状態で露光され、これにより、上記のUV光がマスクされた部分以外、すなわち、柱体列部分が感光される。
【0056】
工程5は、現像工程である。現像により上記のUV光がマスクされた部分のフォトレジスト層が溶解される。これにより、図7に示した固液分離機能を有する装置Bが得られる。図9でみると、フォトレジスト第1層とフォトレジスト第2層が積層された硬化物からなる本体部の間に、ガラス基板を内底面とする通路10が形成されている。分離部5の胴部54では、フォトレジスト第1層の硬化物の上に、フォトレジスト第2層の硬化物からなる柱体列が形成されており、胴部54の外側には、フォトレジスト第1層とフォトレジスト第2層が積層された硬化物からなる本体部が形成されている。
【0057】
尚、他の製造方法としてフォトリソグラフィーにより本体の形状を形成し、これを型とし、あるいはニッケル燐等による無電解メッキを行うことによって型とし、型中に液状の未硬化のモノマー、オリゴマー、樹脂等を注入し、熱、放射線等により硬化させることによって本体を作製することもできる。
【0058】
また、一方、金属型材料に直接リソグラフィー法により電鋳するLIGA( Lithographie Galvanoformung Abformung)法(この方法によると、厚さ100 μm以上のレジスト(感光性有機材料)に直進性の良いシンクロトロン放射(SR)光装置から発生するX線を用い、X線マスクを介してパターンを転写することにより、100μm以上の深さ(高さ)で横方向に任意の形状を持った超精密部品の製造が可能である)にて、例えば柱列の柱を形成するためのアスペクト比の高い深孔を有する型を直接製造し、型に未硬化のモノマー、オリゴマー、樹脂等を注入し、熱、放射線等により硬化させ取り出すことにより本体を作製することもできる。このようにすれば量産性よく生産することができるため好適である。
【0059】
蓋は、上記本体と同様に作製し、本体と接着してもよく、一方、フィルム、シート等を用い本体に接着剤等で張り合わせてもよい。この場合、入口、出口は予め蓋に空けておいてもよく、本体と接着後に開けてもよく、使用時にノズルなどを突き刺して破って入口、出口に相当する穴を形成してもよい。
【発明の効果】
【0060】
請求項1記載の発明によれば、固液混合物を経路に流入させるだけで、液体の流れにより固体が運ばれ、途中で一定の大きさ以上の固体のみ捕捉され液体及び所定の大きさ以下の固体が出口に到達し、且つ流入固液混合物に対し得られる液体の割合が高い。分離時の装置の面積効率が高まりより一層小型化できる。また、液が短時間でスムーズに流れ分離がより早くなる。
請求項2記載の発明によれば、固液混合物を経路に流入させるだけで、その賦勢された液体の流れにより固体が運ばれ、途中で一定の大きさ以上の固体のみ捕捉され液体及び所定の大きさ以下の固体が出口に到達し、且つ流入固液混合物に対し得られる液体の割合が高い。このように、電場が不要のため、電極、電圧装置が不要となり、小型化でき得、製造容易となり低価格となる。また、分離も早く、分離時の装置の面積効率が高まりより一層小型化できる。また、液が短時間でスムーズに流れ分離がより早くなる。
【0061】
請求項4記載の発明によれば、装置の面積効率が高まりより一層小型化できる。また、液が短時間でスムーズに流れ分離がより早くなる。
【0062】
請求項5記載の発明によれば、本体と蓋体が分かれているので装置を製造し易くなる。
【0063】
請求項記載の発明によれば、分離部での分離が完全となる。
【0064】
請求項記載の発明によれば、装置をより一層小型化でき得る。
【0065】
請求項記載の発明によれば、より効率よく固体を分離した液体を得ることができるフィルター機能を有するμ—TASを得ることができる。
【0066】
請求項記載の発明によれば、本発明の固液分離機能を有する装置をより容易に製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げる。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0068】
図7に示した固液分離機能を有する装置を、図9に記載した工程に従って製造した。
【0069】
製造しようとする固液分離機能を有する装置の設計図
設計図は、上記のように、図7及び図8で示したものと同様である。各構成部分の寸法は、以下の通りである。
「入口3と分離部5とを結ぶ通路10」:幅100μm×長さ10mm。
「分離部5と液溜め部8とを結ぶ通路11」:幅100μm。
「液溜め部8と出口4とを結ぶ通路12」:幅100μm×長さ10mm。
【0070】
「入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の柱状妨害体52以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12」:内底面をガラス基板とし、深さは30μm。
「分離部5内の胴部54の柱体66列以外の部分;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列以外の部分及び分離部5内の収束部56のスペーサ56以外の部分」:ガラス基板上に設けられた厚さ20μmのフォトレジスト硬化層を内底面とし、深さは10μm。
「柱状妨害体52」:ガラス基板上に設けられ、高さは30μm。
「分離部5内の胴部54の柱体66列」:ガラス基板上に設けられた厚さ20μmのフォトレジスト硬化層上に設けられ、高さは10μm。
「分離部5内の完全捕捉部55の柱体列」:ガラス基板上に設けられた厚さ20μmのフォトレジスト硬化層上に設けられ、高さは10μm。
「分離部5内の収束部56のスペーサ」:ガラス基板上に設けられた厚さ20μmのフォトレジスト硬化層上に設けられ、高さは10μm。
【0071】
分離部5内の胴部54の柱体66列:3.4μm×3.4μm×高さ10μmの4角柱からなる柱体66からなる列とした。
分離部5内の障壁が柱体66列からなる流路の幅:7μm。
上記障壁の隣り合う柱体66間の間隔:1.7μm。
分離部5内の固体捕捉部の隔壁を形成する隣り合う柱体間の間隔:1.7μm。
分離部5内の固体捕捉部:形状は矩形とし、入り口部の柱体間の間隔は7μm、幅は12μm、奥行き12μm。
分離部5の胴部54の大きさ:通路に平行な方向に500μm、通路に垂直な方向に600μm。
【0072】
分離部5内の完全捕捉部55の柱体列:3.4μm×3.4μm×高さ10μmの4角柱からなる柱体からなる列とし、隣り合う柱体間の間隔を1.7μmとした。
完全捕捉部55の大きさ:通路に平行な方向に100μm、通路に垂直な方向に600μm。
【0073】
フォトマスクの作成
まず、ガラス基板上にフォトレジストを塗布し、光造形装置レーザーソリューション社製ACCULAS SI-C1000(Solid Image Creator)を用いて必要とするマスクパターンを露光し、現像後真空蒸着装置を用いてCr、Auを蒸着し、リフトオフ工程を経て、ガラス基板上に金属薄膜のフォトマスクを定法に則り作製した。
【0074】
作製したフォトマスクは以下の2枚である。
フォトマスク1:本体全体の面積以上の大きさのフォトマスクであって、「入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の菱形の柱状妨害体52以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12」をマスクする(上記の部分のみに光が当たらないようにする)フォトマスクである。
フォトマスク2:本体全体の面積以上の大きさのフォトマスクであって、「入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の柱状妨害体52以外の部分;分離部5内の胴部54の柱体66列以外の部分;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列以外の部分;分離部5内の収束部56のスペーサ56以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12」をマスクする(上記の部分のみに光が当たらないようにする)フォトマスクである。
【0075】
上記の固液分離機能を有する装置を以下のフォトリソグラフィ工程にて作製した。
1)フォトレジストレジスト第1層塗布工程
定法により洗浄した厚み1mmのガラス基板上にフォトレジスト第1層を塗布する。
レジストとしては、アクリル系の厚膜レジストである商品名SU-8(化薬マイクロケム株式会社製)を使用し、スピンコーター(ミカサ株式会社製、型式MS-A100)にて、約20μmの厚さに塗布した。
【0076】
2)プリベーク
ホットプレート上で、65℃で4分、95℃で7分間加熱することによりプリベークした。これにより、フォトレジスト中に含まれる溶剤を蒸発させた。
【0077】
3)露光工程1
マスクアライナー(ミカサ株式会社製、型式MA-20)を用いて、前記フォトマスク1を上記のフォトレジスト第1層に載せた状態で、UV光を照射条件5~10mj/cmで照射した。これにより、フォトレジスト第1層の、「入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の菱形の柱状妨害体52以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12」の部分が感光されず、本体上の溝部2以外の部分、分離部5内の固液混合物拡散部51の菱形の柱状妨害体部分、分離部5の胴部54、分離部5の完全捕捉部、及び分離部5の収束部54が感光された。
【0078】
4)フォトレジストレジスト第2層塗布工程
フォトレジスト第1層の上にフォトレジスト第2層を塗布した。レジストとしては、フォトレジスト第1層と同様の商品名SU-8(化薬マイクロケム株式会社製)を使用し、スピンコーター(ミカサ株式会社製、型式MS-A100)にて、約10μmの厚さに塗布した。
【0079】
5)プリベーク
ホットプレート上で、65℃で4分、95℃で7分間加熱することによりプリベークした。これにより、フォトレジスト中に含まれる溶剤を蒸発させた。
【0080】
6)露光工程2
マスクアライナー(ミカサ株式会社製、型式MA-20)を用いて、前述のフォトマスク2を上記のフォトレジスト第2層に載せた状態で、UV光を照射条件3~8mj/cmで照射した。これにより、フォトレジスト第2層の、「入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の柱状妨害体52以外の部分;分離部5内の胴部54の柱体66列以外の部分;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列以外の部分;分離部5内の収束部56のスペーサ56以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12」が感光されず、本体上の溝部2以外の部分、分離部5内の固液混合物拡散部51の菱形の柱状妨害体52、分離部5の胴部54の柱体66列、分離部5の完全捕捉部55の柱体列、及び分離部5内の収束部54のスペーサ56が感光された。
【0081】
7)ポストベーク
ホットプレート上で、65℃で1分、95℃で3分間加熱することによりポストベークした。これにより、露光(感光)されたフォトレジストの架橋を促進すると共に、ガラス基板とフォトレジストとの接着強度を高めた。
【0082】
8)現像工程
シャーレ内の現像液(化薬マイクロケム社製、SU-8 Developer)中で現像処理および洗浄を行い、上記のマスクされた部分(感光されなかった部分)のフォトレジスト層を溶解した。次いで、エアスプレイを用いて乾燥させた。これにより、ガラス基板上に、入口3;分離部5内の固液混合物拡散部51の柱状妨害体52以外の部分;液溜め部8;出口4及び通路10、11、12が形成された。また、ガラス基板上に、フォトレジスト第1層の硬化物が積層されてなる、「分離部5内の胴部54の柱体列以外の部分;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列以外の部分及び分離部5内の収束部56のスペーサ56以外の部分」が形成された。更にまた、ガラス基板上に、フォトレジスト第1層の硬化物が積層され、更に、そのフォトレジスト第1層の硬化物の上にフォトレジスト第2層の硬化物が積層されてなる、「柱状妨害体52;分離部5内の胴部54の柱体66列;分離部5内の完全捕捉部55の柱体列及び分離部5内の収束部56のスペーサ」が形成された。
【0083】
以上のようにして、固液分離機能を有する装置が得られた。得られた固液分離機能を有する装置の各部分の寸法は、ほぼ設計値通りであったが、柱体はその最上部付近では、水平断面が3.4μm×3.4μmよりも小さく、その最下部付近では、水平断面が3.4μm×3.4μmに近かった。そのため、得られた固液分離機能を有する装置において、固体捕捉部の隣り合う柱体間の間隔は下部(基部)では、1.7μmに近いが、先端部付近では、1.7μmよりも大きくなっていた。
【0084】
また、分離部5内の固液混合物拡散部51内に設けられた水平断面が菱形の柱状妨害体52の存在により、入口3に続く流路10からの固液混合物が、分離部5の胴部54へ到達する時間が中心部分も端部分も同時にすることが可能となった。
【0085】
得られた固液分離機能を有する装置の分離部の胴部の一部を、共焦点顕微鏡(オリンパス株式会社製、OLS3000MS)を用いて得られた像を画像処理して作製した3D表示画像を図10に示した。なお、図10において、左上の写真は装置の分離部の胴部の一部を上方から見た写真である。
【0086】
また、得られた装置の分離部の、胴部の一部と完全捕捉部の一部を上方から見た拡大写真を図11に示した。図11において、左側が胴部54の一部であり、右側が完全捕捉部55の一部である。
【0087】
9)蓋付きの固液分離機能を有する装置の製作
次いで、入口と出口に対応する部分に予め開けておいた貫通孔を有する透明フィルム(200ミクロン厚PET(ポリエステル)フィルム)の裏面に、光硬化樹脂SU-8(化薬マイクロケム株式会社製)をスピンコートで塗布したものを、蓋体として、上記で得られた固液分離機能を有する装置の本体の上方に貼り付け、露光させて硬化させることにより、蓋付きの固液分離機能を有する装置を作製した。
【0088】
(血液からの血球のろ過)
上記で得られた固液分離機能を有する装置を用いて、ランセットを用いて指先から得られた血液1滴(約10マイクロリットル)を入口3に落とした。血液は、入口3に溜まり、その一部が毛管現象により通路10を通過し、分離部5を通過した。通路10内を通過する血液は鮮血色であるが、分離部5を通過し、液溜まり8に溜まった液体は薄黄色透明であった。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の固液分離機能を有する装置は、液体と固体の混合物から一定の大きさ以上の固体をろ過する機能を有するので、例えば、血液から血球を分離する機能を有する固液分離機能を有する装置などとして、臨床検査分野などに利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】液分離機能を有する装置の一例を示す斜視図である。
【図2】分離部の一部を拡大して示すと共に、固液分離の状況を説明するための平面図である。
【図3】固体捕捉部の例を示す平面図である。
【図4】分離部内の上流側に固液混合物の拡散部が設けられた例を示す平面図である。
【図5】本発明で用いられる一つの流路の一例を模式的に示す平面図である。
【図6】流路を持つ分離部の一例を示す模式的な平面図である。
【図7】本発明の固液分離機能を有する装置の一例を示す平面図である。
【図8】図7の主として胴部と完全捕捉部が位置している部分を拡大して示した図である。
【図9】本発明の固液分離機能を有する装置の製造方法の一例を説明するための断面図である。
【図10】実施例で得られた固液分離機能を有する装置の分離部の胴部の一部を、共焦点顕微鏡を用いて得た画像を画像処理して作製した3D表示画像である。図10において、左上の写真は装置の分離部の胴部の一部を上方から見た写真である。
【図11】実施例で得られた固液分離機能を有する装置の分離部の、胴部の一部と完全捕捉部の一部を、上方から見た拡大写真である。
【符号の説明】
【0091】
1 本体
2 溝部
3 入口
4 出口
5 分離部
51 固液混合物拡散部
52 柱状妨害体
53 通り道
54 胴部
55 完全捕捉部
56 収束部
57 スペーサ
6 固体捕捉部
61 隔壁
62 入り口部
63 収容部
64 開口部
65 突起
66 柱体
7 固体
8 液体溜め
9 流路
91 障壁
92 流路入口
93 流路出口
10、11、12 通路
A、B 固液分離機能を有する装置
R1~R13 流路
M1~M3 固液混合物通路
Z1 流路R1~R3を含むゾーン
Z2 流路R4~R7を含むゾーン
Z3 流路R8~R13を含むゾーン
a1、a2、a3 1つの流路と固体捕捉部との合計の幅
b1 ゾーンZ1の長さ
b2 ゾーンZ2の長さ
b3 ゾーンZ3の長さ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図9】
7
【図8】
8
【図10】
9
【図11】
10