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明細書 :栽培植物局部冷却装置および栽培植物局部冷却方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5470667号 (P5470667)
公開番号 特開2010-051190 (P2010-051190A)
登録日 平成26年2月14日(2014.2.14)
発行日 平成26年4月16日(2014.4.16)
公開日 平成22年3月11日(2010.3.11)
発明の名称または考案の名称 栽培植物局部冷却装置および栽培植物局部冷却方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 601Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 6
出願番号 特願2008-217109 (P2008-217109)
出願日 平成20年8月26日(2008.8.26)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成20年2月28日 国立大学法人愛媛大学主催の「愛媛大学農学部生物環境情報システム学専門教育コース平成19年度卒業論文・修士論文発表会」において文書をもって発表
審査請求日 平成23年8月12日(2011.8.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147254
【氏名又は名称】国立大学法人愛媛大学
発明者または考案者 【氏名】高山 弘太郎
【氏名】仁科 弘重
【氏名】有馬 誠一
【氏名】羽藤 堅治
個別代理人の代理人 【識別番号】100119367、【弁理士】、【氏名又は名称】松島 理
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 国際公開第2007/058347(WO,A1)
特開昭62-294014(JP,A)
特開昭55-61733(JP,A)
特開2000-139240(JP,A)
調査した分野 A01G 7/00
A01G 9/24
特許請求の範囲 【請求項1】
栽培植物の成長点を一定の高さに固定する植物工場に設置する栽培植物局部冷却装置であり、栽培植物の成長点のみに対して細霧を吐出する栽培植物の成長点の高さに設けられた細霧ノズルと、細霧の吐出を制御する制御装置とを有し、栽培植物の成長点のみに水滴を付着させる栽培植物局部冷却装置。
【請求項2】
栽培植物の葉温を測定する葉温測定装置を有し、葉温測定装置が出力する葉温データに基づいて成長点のみに対して細霧の吐出を行う請求項1に記載の栽培植物局部冷却装置。
【請求項3】
成長点を一定の高さに固定して植物を栽培し、栽培植物の成長点の高さに設けられた細霧ノズルにより栽培植物の成長点のみに対して細霧を吐出して水滴を付着させることによって栽培植物の成長点を冷却する栽培植物局部冷却方法。
【請求項4】
葉温測定装置により葉温を測定し、葉温データに基づいて成長点のみに対して細霧の吐出を行う請求項3に記載の栽培植物局部冷却方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培植物の局所に対して冷却を行うための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビニールハウスや植物工場などによって、野菜や果物などの植物を栽培することは盛んに行われているが、夏場において室温が上昇することによって栽培植物に過大なストレスがかかることを防止するために、冷房が行われている。
【0003】
ビニールハウスや植物工場などの冷房として、細霧ノズルによって細霧を室内に吐出して、顕熱を潜熱化することによって室内の気温を下げることが非特許文献1や特許文献1,2などに記載されている。これらの文献に記載されている細霧吐出は、室内全体の冷房を目的としたものであり、例えば栽培植物よりできるだけ離れた場所より、ビニールハウスの全体に対して広く細霧を吐出している。

【特許文献1】特開2007-319023号公報
【特許文献2】特開2003-9678号公報
【非特許文献1】古在豊樹、後藤英司、富士原和宏、最新施設園芸学、P93,2006年1月、朝倉書店
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1、特許文献1および特許文献2などの細霧による冷房は、短時間で室温を下げることができるという効果を有する。しかし、冷房効果の持続時間は短い。図1は従来の細霧冷房による室温の変化を示すグラフである。細霧を噴出後すぐに室温は低下し始めるが、約30秒後には室温は上昇に転じる。結局、2分程度しか冷房効果は持続しない。
【0005】
また、室内全体に大量の水を細霧として吐出する必要があり、エネルギー効率は高くない。さらに、栽培植物の部位によって冷却の必要性は異なるので、植物全体を一律に冷却するのでは適切な環境制御は行えない。
【0006】
この発明は、栽培植物の最も冷却を必要とする部位のみを効果的に冷却することができる冷却装置および冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を解決するために、本発明の栽培植物局部冷却装置は、栽培植物の局所に対して細霧を吐出する細霧ノズルと、細霧の吐出を制御する制御装置とを有し、栽培植物の局所に水滴を付着させる。栽培植物の葉温を測定する葉温測定装置を有し、葉温測定装置が出力する葉温データに基づいて細霧の吐出を行うようになすことが好ましい。
【0008】
また、本発明の栽培植物局部冷却方法は、細霧ノズルにより栽培植物の局所に対して細霧を吐出して水滴を付着させることによって栽培植物の局所を冷却するものである。葉温測定装置により葉温を測定し、葉温データに基づいて細霧の吐出を行うことが好ましい。さらに、栽培植物の成長点に対して細霧を吐出するように細霧ノズルを設け、細霧によって栽培植物の成長点を冷却するようにすることもできる。

【発明の効果】
【0009】
この発明の栽培植物局部冷却装置および栽培植物局部冷却方法によれば、栽培植物の冷却を必要とする部位に細霧を吐出して水滴を付着させ、これを蒸発させることによって、効果的に冷却を行うことができる。冷却効果の持続時間は長い。また、水やエネルギーの消費は小さくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明を実施するための最良の形態について説明する。図2は栽培植物局部冷却装置の概要を示す側面図、図3は同正面図である。ビニールハウス1内に設置された植物工場に適用した例である。
【0011】
ビニールハウス1内には栽培ベッド2が設けられており、この栽培ベッド2で植物3が栽培されている。植物としては、例えばトマト、キュウリ、ナス、パプリカなどに適用することができる。
【0012】
パイプ4は栽培ベッド2に沿って設けられており、このパイプ4に細霧ノズル5が設けられている。細霧ノズル5は微細な水滴を吐出するもので、例えば細霧冷房用として市販されているノズルを使用することができる。
【0013】
従来の細霧冷房においては、できるだけ細霧が植物体に付着しないようにするため、細霧吐出部は植物体から離れた位置に置かれており、栽培ベッドとそれに隣接する栽培ベッドの間の天井付近に設置されている。しかし、この発明では、細霧ノズル5は、植物体の冷却を行うべき部位に細霧が吐出される位置に設けられる。
【0014】
冷却対象の部位としては、細胞分裂が盛んで植物の発育に重要な成長点や、花芽などが挙げられるが、ここでは成長点を選択している。トマトなどの植物工場における栽培では、栽培期間中、成長点が一定の高さに固定されるため、この高さに合わせてパイプ4および細霧ノズル5を設置する。水はポンプ(図示省力)によって水タンク6からパイプ4を介して細霧ノズル5へ供給される。
【0015】
また、この栽培植物局部冷却装置は細霧の吐出を制御する制御装置7を有する。制御装置7によってポンプの作動・停止を制御してもよいが、制御弁8の開閉によって細霧の吐出を制御することもできる。例えば室内に設けられた温度計や湿度計などによって、制御装置7は植物の水ストレスの状態を予測し、冷却が必要となったときに細霧を吐出させることができる。ここでは、葉温測定装置9としてサーモグラフィ(サーモトレーサー、NEC三栄:TH9100MLN)を使用し、冷却対象部位付近の葉温を観測し、その葉温データに基づいて細霧の吐出を制御している。サーモグラフィを植物3から3m程度の距離において測定した。
【実施例1】
【0016】
つぎに、この発明の実施例について説明する。愛媛県松山市樽味にある愛媛大学農学部附属制御化農業実験実習施設の調節温室にて実施した。栽培植物としては、トマトの桃太郎ファイト(Salanum Iycopersicum.cv.Momotaro-Faito)を使用した。
【0017】
植物の葉面に細霧を吐出し、葉温および光合成速度を測定した。葉温はサーモトレーサーにより測定した。光合成速度は、LED冷光光源(LI-COR:6400-02B)を使用し、光強度PPF700 μmol m-2-1で、光合成蒸散測定装置(LI-COR:LI-6400)を用いて測定した。トマト葉をリーフチャンバーに固定し、気温、葉温、光合成速度が安定した後、リーフチャンバーを開け、葉面の裏側に細霧を吐出し、再びリーフチャンバーを閉めて葉温と光合成速度を測定した。図4は葉温および光合成速度の時間変化を示すグラフである。
【0018】
細霧の吐出によって葉温が低下したことが確認できる。しかも、葉温低下は10分程度も持続しており、従来の細霧冷房に比べて植物体への冷却効果の持続時間が大幅に向上していることがわかる。
【0019】
これまでは、植物に細霧を直接吐出すると水滴が付着し、光合成が阻害されると考えられてきた。そのため、細霧冷房においては吐出ノズルを植物からできる限り遠ざけて設置していた(例えば特許文献1の0022段落)。しかし、この発明の葉温測定装置および栽培植物局部冷却方法によれば、細霧の吐出量を適切に管理する限り、光合成を阻害せずに葉温を低下させることができる。図4においても、光合成速度がほとんど低下しないことがわかる。なお、吐出時に光合成速度のグラフが落ち込んでいるのは、リーフチャンバーの開閉によってデータが一時的に取得できなかったことによるものであり、光合成速度の低下を示すものではない。
【0020】
以上、この発明の葉温測定装置および栽培植物局部冷却方法によって、光合成を阻害せずに葉温を低下させることができる。冷却効果は長時間持続する。従来の細霧冷房に比べて、はるかに少ない細霧の吐出でよく、水やエネルギーの消費は小さい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の細霧冷房による室温の変化を示すグラフである。
【図2】栽培植物局部冷却装置の概要を示す側面図である。
【図3】同正面図トマトである。
【図4】葉温および光合成速度の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0023】
1.ビニールハウス
2.栽培ベッド
3.植物
4.パイプ
5.細霧ノズル
6.水タンク
7.制御装置
8.制御弁
9.葉温測定装置(サーモグラフィ)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3