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明細書 :pH指示用共重合体、それを用いたpHモニタリング装置及びpH測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5665187号 (P5665187)
公開番号 特開2012-163484 (P2012-163484A)
登録日 平成26年12月19日(2014.12.19)
発行日 平成27年2月4日(2015.2.4)
公開日 平成24年8月30日(2012.8.30)
発明の名称または考案の名称 pH指示用共重合体、それを用いたpHモニタリング装置及びpH測定方法
国際特許分類 G01N  31/00        (2006.01)
G01N  31/22        (2006.01)
FI G01N 31/00 C
G01N 31/22 123
請求項の数または発明の数 14
全頁数 16
出願番号 特願2011-025104 (P2011-025104)
出願日 平成23年2月8日(2011.2.8)
審査請求日 平成26年2月5日(2014.2.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
発明者または考案者 【氏名】鈴木 隆之
【氏名】小山 将輝
個別代理人の代理人 【識別番号】100083806、【弁理士】、【氏名又は名称】三好 秀和
【識別番号】100100712、【弁理士】、【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
【識別番号】100095500、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 正和
【識別番号】100101247、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 俊一
【識別番号】100098327、【弁理士】、【氏名又は名称】高松 俊雄
審査官 【審査官】草川 貴史
参考文献・文献 特開昭55-137106(JP,A)
特開2010-207770(JP,A)
特開昭63-185984(JP,A)
特開平07-300484(JP,A)
特表2005-530156(JP,A)
特開平06-192213(JP,A)
欧州特許出願公開第00698608(EP,A1)
米国特許第05489400(US,A)
調査した分野 G01N 31/00-31/22
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
イオン性部位及び重合性部位を含む単量体成分(A)と、pH指示部位及び重合性部位を含む単量体成分(B)と、電気的中性部位及び重合性部位を含む単量体成分(C)を含んで共重合してなるpH指示用共重合体。
【請求項2】
前記pH指示部位の固有のpH変色域と異なるpH変色域を有する請求項1記載のpH指示用共重合体。
【請求項3】
前記単量体成分(A)のイオン性部位が陰イオン性部位であり、下式(I)~(VI)で表す陰イオンのいずれかが陽イオンと塩を形成している基である請求項1または2記載のpH指示用共重合体(ただし、式(II)のRはアルキル基及び水素原子のいずれかであり、式(IV)のR~Rのいずれか一つは単結合であり、残りの二つは同一又は異なるアルキル基であり、式(V)のRはアルキル基である。)
【化1】
JP0005665187B2_000009t.gif

【請求項4】
前記単量体成分(A)のイオン性部位が陽イオン性部位であり、-NR(3-n)(Rはアルキル基、nは0~3の整数)、又は陽イオン化したヘテロ環が、陰イオンと塩を形成している基である請求項1または2記載のpH指示用共重合体。
【請求項5】
前記単量体成分(B)のpH指示部位が、水中で可逆的なプロトン化を示すpH指示薬の分子骨格をもつ請求項1~のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【請求項6】
前記単量体成分(B)のpH指示部位が、メチルイエロー、クリスタルバイオレット、ブロモフェノールブルー、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエローRのいずれかである請求項記載のpH指示用共重合体。
【請求項7】
前記重合性部位は付加重合性のアクリルロイル基、メタアクリルロイル基、アクリルロイルオキシ基、メタアクリルロイルオキシ基、ビニル基、及び縮合重合性のカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、環状エーテル基のいずれかである請求項1~のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【請求項8】
前記単量体成分(C)の電気的中性部位は、電気的に中性でかつ親水性の部位で、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボニル基のいずれかを有する請求項1~7のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【請求項9】
前記イオン性部位及びpH指示部位は、重合性部位と直接結合しているか、又は、アルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、-CO-NH-の少なくとも一種を介して結合している請求項1~のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【請求項10】
請求項1~のいずれか記載のpH指示用共重合体を備えるpHモニタリング装置。
【請求項11】
請求項1~のいずれか記載のpH指示用共重合体を用いるpHの測定方法であって、pH指示部位の固有の変色域と異なる範囲のpHが変色域である前記共重合体の呈色によりpHを測定する方法。
【請求項12】
前記単量体成分(A)対単量体成分(B)の比率が異なる複数のpH指示用共重合体を同時に用いる請求項11記載のpHの測定方法。
【請求項13】
イオン性部位が陰イオン性部位であるpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位固有の変色域よりも高いpHを測定する請求項11または12記載のpHの測定方法。
【請求項14】
イオン性部位が陽イオン性部位であるpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位固有の変色域よりも低いpHを測定する請求項11または12記載のpHの測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水のpHを測定するためのpH指示用共重合体、それを用いたpHモニタリング装置及びpH測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水、空気(大気)、地質などを長期間にわたって調査し管理する環境モニタリングのうち、pHのモニタリングは河川、湖沼、水槽、廃水等の水質の変化を発見しやすく測定も容易なので、様々な分野から着目されている。
【0003】
一般に用いられている水のpH測定方法は、比色分析と電気化学分析とに大別される。しかし、水質のモニタリングは間断なく長期間であり、その都度pH試験紙やpH指示薬を消費して人為的に測定する従来の比色分析は適していない。また、一種類のpH指示薬で検出できるpH値の幅は限られるので、水のpH変動幅が広い場合は多種類のpH指示薬が必要になる。
【0004】
一方、電気化学分析ではpH電極を有するpHメータを用いて測定するが、正確に長期間作動させるためには電圧を一定値に維持するための頻繁なメンテナンスが欠かせない。また、水に含まれる成分が酸化還元反応により電極表面に析出したり、微生物や異物が電極に付着したりすると測定を阻害するため、電極からそれらを除去し清掃する必要がある。さらに、pHメータは適正な使用温度域が制限される。
【0005】
比色分析において、基本の化合物を軸として置換基を替えて水素イオンの結合のしやすさを段階的にシフトさせた誘導体群を合成して用意することにより、幅広いpHに対応して検出することが提案されている(非特許文献1参照)。
【0006】
また、フェノールレッド色素化合物をポリマー系支持体に結合させ、生理学的pH指示薬として使用すること(特許文献1参照)や、化学指示薬とシリコーンゴム重合体で形成された、pHを測定するセンサー(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平6-192213号公報
【特許文献2】特表平9-502528号公報
【0008】

【非特許文献1】S. Trupp, et al., Sensors and Actuators B, 150, 206(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし上記の誘導体群は合成が困難であり、収率も低いため、広いpH域を網羅するモニタリングのために多種類を準備することは実用的でない。また、上記生理学的pH指示薬及び上記センサーはいずれも生体の血液中のpHを測定するものであるので、pHの範囲は限定される。
【0010】
そこで本発明者らは、既存のpH指示薬に基づいて、より広いpH領域で、比色分析により水のpHを連続して検出し測定することを検討した結果、共重合体の各セグメントのうち、高密度の陰イオン性セグメントの周辺に、水中の水素イオンが移動して集中する現象(マニング理論に基づく効果)に着目して本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち本発明は、以下の(1)~(15)に関する。
【0012】
(1) イオン性部位及び重合性部位を含む単量体成分(A)と、pH指示部位及び重合性部位を含む単量体成分(B)とを含んで共重合してなるpH指示用共重合体。
【0013】
(2) さらに、電気的中性部位及び重合性部位を含む単量体成分(C)を含む前記(1)記載のpH指示用共重合体。
【0014】
(3) 前記pH指示部位の固有のpH変色域と異なるpH変色域を有する前記(1)または(2)記載のpH指示用共重合体。
【0015】
(4) 前記単量体成分(A)のイオン性部位が陰イオン性部位であり、下式(I)~(VI)で表す陰イオンのいずれかが陽イオンと塩を形成している基である前記(1)~(3)のいずれか記載のpH指示用共重合体(ただし、式(II)のRはアルキル基及び水素原子のいずれかであり、式(IV)のR~Rのいずれか一つは単結合であり、残りの二つは同一又は異なるアルキル基であり、式(V)のRはアルキル基である。)
【化1】
JP0005665187B2_000002t.gif

【0016】
(5) 前記単量体成分(A)のイオン性部位が陽イオン性部位であり、-NR(3-n)(Rはアルキル基、nは0~3の整数)、又は陽イオン化したヘテロ環が、陰イオンと塩を形成している基である前記(1)~(3)のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【0017】
(6) 前記単量体成分(B)のpH指示部位が、水中で可逆的なプロトン化を示すpH指示薬の分子骨格をもつ前記(1)~(5)のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【0018】
(7) 前記単量体成分(B)のpH指示部位が、メチルイエロー、クリスタルバイオレット、ブロモフェノールブルー、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエローRのいずれかである前記(6)記載のpH指示用共重合体。
【0019】
(8) 前記重合性部位は付加重合性のアクリルロイル基、メタアクリルロイル基、アクリルロイルオキシ基、メタアクリルロイルオキシ基、ビニル基、及び縮合重合性のカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、環状エーテル基のいずれかである前記(1)~(7)のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【0020】
(9) 前記単量体成分(C)の電気的中性部位は、電気的に中性でかつ親水性の部位で、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボニル基のいずれかを有する前記(2)~(8)のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【0021】
(10) 前記イオン性部位及びpH指示部位は、重合性部位と直接結合しているか、又は、アルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、-CO-NH-の少なくとも一種を介して結合している前記(1)~(9)のいずれか記載のpH指示用共重合体。
【0022】
(11) 前記(1)~(10)のいずれか記載のpH指示用共重合体を備えるpHモニタリング装置。
【0023】
(12) 前記(1)~(10)のいずれか記載のpH指示用共重合体を用いるpHの測定方法であって、pH指示部位の固有の変色域と異なる範囲のpHが変色域である前記共重合体の呈色によりpHを測定する方法。
【0024】
(13) 前記単量体成分(A)対単量体成分(B)の比率が異なる複数のpH指示用共重合体を同時に用いる前記(12)記載のpHの測定方法。
【0025】
(14) イオン性部位が陰イオン性部位であるpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位固有の変色域よりも高いpHを測定する前記(12)または(13)記載のpHの測定方法。
【0026】
(15) イオン性部位が陽イオン性部位であるpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位固有の変色域よりも低いpHを測定する前記(12)または(13)記載のpHの測定方法。
【発明の効果】
【0027】
本発明の共重合体は合成が容易なので、予測されるpH範囲に対応して単量体成分の比率を変更した共重合体を揃えることにより、広範囲の、又は精度の高いpHの指示薬として使用できる。また、pH指示部位の固有の変色域と異なるpH範囲で変色するので、所定のpH領域を測定する際に、従来のpH指示薬の代わりに、安価なpH指示部位や取扱い性のよいpH指示部位を用いた共重合体を使用できる。この共重合体を水に不溶な成形体にすれば、長期的に間断なくかつ無人化して、水のpHをモニタリングするのに最適である。また、水中の含有物、水温、モニタリングの現場の環境等に影響されずに、pHを容易にリアルタイムで知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例で作製した共重合体P(NIPAAm-SEMA-AABMA)のサンプル1~5のpH6.4の水中での紫外可視吸収スペクトルを測定したグラフである。
【図2】図1のサンプル1~5内のNIPAAm重合率と、410nm(実線)及び550nm(破線)における吸光度との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例で作製した上記サンプル1~5のNIPAAm重合率と、pH7.6の水中の410nm(実線)及び550nm(破線)における吸光度との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例で作製した上記サンプル1~5のNIPAAm重合率と、pH8.0の水中の410nm(実線)及び550nm(破線)における吸光度との関係を示すグラフである。
【図5】本発明の別の実施例で作製したサンプル6の420nm(破線)及び550nm(実線)における吸光度と、pHの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の比較例で作製したサンプル7の420nm(破線)及び550nm(実線)における吸光度と、pHの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
高密度の陰イオン性セグメントを有した共重合体を水性の溶液に投入すると、各セグメントのうち、高密度の陰イオン性セグメントの近傍はマイナスの電荷密度が高いため、その周辺、さらに共重合体の主鎖全体の周辺に、溶液内からプラスの水素イオン(ヒドロニウムイオンH)が集まる現象(以下、「局所濃縮」という。)が生じる。よって、この局所濃縮している領域は溶液全体からみれば酸性側にシフトしているといえる。このような対イオンの局所濃縮現象は、マニング理論によって説明することができる。

【0030】
ここで、もしも局所濃縮の領域内にpH指示薬を含むセグメントがあれば、上記により溶液全体よりも酸性側の呈色を示すことになる。陰イオン性セグメントの比率が多いほど、より局所濃縮が進むので、より酸性側にシフトした呈色を示す。

【0031】
これとは逆に、上記共重合体に陰イオン性セグメントの代わりに陽イオン性セグメントが含まれると、溶液中の水素イオンは高密度の陽イオン性セグメントと静電的に反発するため、pH指示薬を含むセグメントへも水素イオンが届きにくい。よって、溶液全体よりも呈色はアルカリ性側にシフトする。

【0032】
本発明におけるpHモニタリング対象である水とは、純水のほか、有機又は無機の溶質が溶解した水溶液、極性溶媒と水との混合物、水に不溶又は難溶な物質を含むコロイド溶液や懸濁液等、pHを測定可能な水性の液相を含むものとする。

【0033】
本発明のpH指示用共重合体は、イオン性部位及び重合性部位を含む単量体成分(A)と、pH指示部位及び重合性部位を含む単量体成分(B)とを含む共重合体である。好ましくは、共重合体を水に馴染ませるため、及び局所濃縮の強弱を調整するため、さらに電気的中性部位及び重合性部位を含む単量体成分(C)を含む。共重合体内の前記単量体成分(A)、単量体成分(B)、単量体成分(C)由来のセグメントを以下、それぞれセグメントA、B、Cという。

【0034】
本発明の共重合体の一例を下式(VII)で示す。下式(VII)において、セグメントCの電気的中性部位はN-イソプロピル基が置換したアミノ基とする。セグメントAの陰イオン性部位はスルホン酸ナトリウムエチル基である。セグメントBのpH指示部位はパラ位のジメチルアミノフェニルアゾフェニル基であり、スルホ基と結合するとpH指示薬のメチルオレンジに相当し、水素原子が結合するとメチルイエローに相当する。
【化2】
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【0035】
例えばメチルイエロー(pH変色域:赤2.9~黄4.0)をセグメントBに含む通常の共重合体は、pH4.0未満になると、式(VIII)の二重結合のN原子の一方が水素イオン化することにより、橙色から赤色へ変色する。しかし、本発明の共重合体は、セグメントAの周囲に水素イオンが局所濃縮されているため、その多量の水素イオンをセグメントB内のメチルイエローが検出する。したがって、メチルイエロー固有の変色域4.0よりも高いpHの水中であっても、式(IX)から二重結合のN原子の一方が水素イオン化して式(X)となり、もしも水素イオン化が充分に多く生じれば共重合体は赤色に呈色する。このように、本発明の共重合体は、pH指示部位の固有のpH変色域と異なるpH変色域を有することができる。

【0036】
なお、このときセグメントAの陰イオン性部位は、上記セグメントBの水素イオン化と関与しない。
【化3】
JP0005665187B2_000004t.gif
【化4】
JP0005665187B2_000005t.gif
【化5】
JP0005665187B2_000006t.gif

【0037】
次に、本発明の共重合体の各部位及び適する単量体成分について説明する。

【0038】
<重合性部位>
各単量体成分の重合性部位は、共重合体を生成できれば特に限定されず、(メタ)アクリルロイル基、(メタ)アクリルロイルオキシ基、ビニル基のように不飽和結合で付加重合できる基、また、アミノ基、カルボキシル基、アルデヒド基、環状エーテル基のように縮合重合できる基等が挙げられる。

【0039】
<イオン性部位>
イオン性部位のうち、陰イオン性部位としては、下式(I)~(VI)で表す陰イオンが陽イオンと塩を形成している基を挙げることができる。また、アルコール性水酸基を有するハロゲン化アルキル基も使用できる。
【化6】
JP0005665187B2_000007t.gif

【0040】
ここで、式(II)のRはアルキル基及び水素原子のいずれかである。式(IV)のR~Rはいずれか一つは単結合であり、残りの二つは同一又は異なるアルキル基である。式(V)のRはアルキル基である。前記アルキル基は、炭素数3以下が好ましい。さらに、R~Rのうち単結合はRが好ましい。

【0041】
また、陽イオン性部位としては、-NR(3-n)(Rはアルキル基、nは0~3の整数)が陰イオンと塩を形成している基を挙げることができる。ここで、Rの炭素数は少ないほうが好ましく3以下がより好ましく、1が特に好ましい。nは3、即ち全てアルキル基で置換されているのが好ましい。また、4-エチルピリジニウムイオンやN-メチルイミダゾリウムイオンのように陽イオン化したヘテロ環と陰イオンとが塩を形成している基が挙げられる。入手しやすさ、取り扱いやすさの点で-NR(3-n)が好ましい。

【0042】
前記陽イオンは、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンが挙げられ、陰イオンは塩素イオン等のハロゲンイオンが挙げられる。局所濃縮の傾向が強い点で陰イオン性部位を用いるのが好ましく、中でも式(I)は、対になる陽イオンとの解離度が顕著に高いので局所濃縮が進行するため、好ましい。

【0043】
単量体成分(A)は、2-(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸ナトリウム塩、N,N,N-トリメチル-(2-メタクリロイロキシエチル)アンモニムクロリド、メタクリロイルオキシエチル4-エチルピリジニウムクロリド、メタクリロイルオキシエチルN-メチルイミダゾリウムブロミド等が挙げられる。

【0044】
<pH指示部位>
pH指示部位は、水中で可逆的なプロトン化を示すpH指示薬の分子骨格をもつ。前記pH指示薬は重合性部位と結合しても可逆的なプロトン化が損なわれないことが好ましい。一般に使用されているメチルイエロー、クリスタルバイオレット、ブロモフェノールブルー、メチルオレンジ、フェノールフタレイン等のpH指示薬の他、スピロピラン、スピロオキサジン等も使用できる。これらのうち、陰イオン性部位と組み合わせる共重合体の場合は、メチルイエロー、クリスタルバイオレット、ブロモフェノールブルーが好ましい。陽イオン性部位と組み合わせる共重合体の場合は、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、アリザリンイエローRが好ましい。

【0045】
単量体成分(B)はジメチルアミノアゾベンゼン(メタ)アクリレート、スピロピラン(メタ)アクリレート、5-[(p-ニトロ-m-ビニル-フェニル)アゾ]サリチル酸ナトリウム等が挙げられる。

【0046】
上記pH指示部位を有するセグメントBは共重合体内の含量が多すぎると共重合体の呈色が濃すぎて変色を検出しにくいので、pH指示部位の呈色の強さに応じて含量を調節する。共重合体を膜状等に成形体にする場合、単量体成分(B)が上述のジメチルアミノアゾベンゼン(メタ)アクリレートであれば2.0モル%以下が好ましく、スピロピラン(メタ)アクリレートであれば、0.5モル%が適している。また、セグメントBに対してセグメントAが増加するほど、水素イオン又は電子の局所濃縮がより進行してセグメントBの変色域がより移動するので、電気的に中性なセグメントCを加えることにより、局所濃縮によるセグメントAとセグメントBとの静電的相互作用の強さを調整することができる。

【0047】
セグメントAとBのモル比、又はセグメントA~セグメントCのモル比は、pH指示部位の固有のpH変色域と、測定する水において検出すべきpH範囲とから適宜判断して選択する。セグメントBの含有率は一定とし、セグメントC/セグメントAの含有比を変えて複数の共重合体を予め作製し、pH変色域を確認して含有比にフィードバックするのが好ましい。共重合体のセグメントA~Cのモル比の測定が困難な場合は、単量体成分(A)~(C)の配合比を転用してもよい。

【0048】
<電気的中性部位>
電気的中性部位は、静電的相互作用を調整するため、また、共重合体を水に馴染ませたり水に不溶または難溶にしたりするために適宜加えられる。電気的に中性であり、かつ親水性の部位が好ましい。具体的にはアミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボニル基等が挙げられ、これらの基のいずれかを有するのが好ましい。

【0049】
単量体成分(C)は(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコールのエーテル、アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸のエステル、これらの電気的に中性な誘導体などが挙げられる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等は共重合体を水に不溶または難溶にできる。前記誘導体は、例えば式(VII)のように末端をアルキル基等で置換したものが挙げられる。前記アルキル基は、親水性及びイオン性部位の周囲の電荷密度に影響しないように、N-イソプロピル基、N-プロピル基、N-メチル基、N-エチル基等の短いアルキル基、エーテル結合を含む短いアルキル基、シクロアルキル基が好ましい。

【0050】
重合性部位と、イオン性部位、pH指示部、電気的中性部位のそれぞれとは、直接結合しているか、又はアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、アミド結合(-CO-NH-)の少なくとも一種を介して結合しているのが好ましい。これらの基のうちでは、アルキレン基、エーテル結合が特に好ましい。このアルキレン基及び上記電気的中性部位のアルコキシ基は、イオン性部位の周囲の電荷密度に影響しないように、置換基を含まないのが好ましく、少ない炭素数が好ましく、3以下が好ましい。

【0051】
上記重合性部位、イオン性部位、pH指示部、電気的中性部位は、各部位の作用を妨げない限り、置換されていてもよい。さらに、セグメントAの局所濃縮作用及びセグメントBの呈色作用を妨げない範囲で、三次元重合用の架橋剤等の電気的に中性な単量体成分や、重合開始剤を含んで重合しても良い。前記架橋剤はN,N'-メチレンビスアクリルアミド等を使用できる。架橋剤は共重合体を成形体とするために用いられ、含有量は共重合体中、数モル%程度で充分である。架橋剤を加えると、共重合体は水に不溶または難溶になるため成形することができ、かつゲル状になり水と馴染みやすい。

【0052】
本発明の共重合体は、重合性部位のみからなる重合体を作製した後、電気的中性部位等を置換反応により結合させる製造方法も可能であるが、立体障害等による反応効率の点から、各単量体成分及び必要に応じて他の成分を、通常の共重合反応により重合させて得る製造方法が好ましい。

【0053】
本発明のpH指示用共重合体を用いて、pH指示部位の固有の変色域とは異なる、連続した広い範囲のpHを測定する一例を挙げる。まず、陽イオン性部位と、本来の変色域が(黄色)7~8(赤色)であるスピロピランのpH指示部位とを含む本発明の共重合体を、セグメントA~Cのモル比を任意に設定して、水に不溶な膜状に作製する。図5に、この共重合体を浸漬した水のpHと、共重合体の420nm(黄色、破線)及び550nm(赤色、実線)における吸光度との関係を示す。この共重合体のpH指示部位は、本来は酸性ほぼ全域で黄色(420nm極大)であるが、図5に示すように、プロットの交点pH3.6付近を超えると共重合体は赤色を呈色しはじめる。すなわち、pH指示部位固有の変色域よりも低いpHを呈色により測定できる。

【0054】
次に、pH指示部位固有の変色域よりも高いpHを測定する、別の測定の一例を挙げる。まずセグメントBの含有率が一定で、(セグメントC/陰イオン性のセグメントA)の含有比の異なる複数の共重合体を用意する。図3に、pH指示部位がメチルイエロー(pH変色域:赤色2.9~黄色4.0)である共重合体のセグメントCの比率と、共重合体の410nm(黄色、実線)及び550nm(赤色、破線)における吸光度との、pH7.6での関係を示す。図3に示すように、メチルイエローは本来pH7.6で黄色であるが、プロットの交点よりも左側のセグメントCの比率の場合は、共重合体は赤色を呈色する。そして、交点に近い共重合体を選択すれば、pH7.6前後の水のpHが狭い範囲で変化しても、呈色で検出することができる。

【0055】
これらを総合して、所望のpH範囲を呈色変化が網羅できるように、セグメントCの含有率の異なる複数の共重合体を用意すれば、共重合体の呈色により、広い範囲のpHを連続して測定することができる。

【0056】
本発明の共重合体は、ヒドロキシアルキルメタクリレートや架橋剤を単量体成分に加えると水に不溶または難溶になるため、用途に合わせて膜状、管状、繊維状、網状など任意の形状の形状に成形し、pHモニタリング対象の水に浸漬して連続して使用することができる。厚み調整及び呈色の測定が容易である点で膜状のものが好ましい。一方、水に溶解する共重合体は、固体又は水溶液の状態で通常のpH指示薬と同様に、pHモニタリング対象の水を採取したサンプルに滴下して使用できる。

【0057】
上記pH指示用共重合体を備えるpHモニタリング装置を作製することができる。pH指示用共重合体は、セグメントAの含有率の異なる二種類以上を備えるのが好ましい。さらに、必要に応じて、モニタリング対象である水をpH指示用共重合体と接触するように導入/排出する手段、共重合体の呈色を読み取り数値化する変換手段、前記変換手段で得られた数値をpHに変換し、予め設定したpH範囲内であるかを判定する手段、およびpHを記録する手段の少なくともいずれかを備えるかまたはそれらと接続されているのが好ましい。

【0058】
具体的な上記変換手段は、共重合体の紫外可視光の吸光度や反射率を測定して吸収スペクトルや反射スペクトルを得られる分光光度計、共重合体の色をマンセル表色系やL*a*b*表色系のような各種表色系で表す色彩計等が挙げられる。

【0059】
水自体に着色がある場合は、その着色分を呈色の読み取りから除外するように予め変換手段に組み込んでおくことが好ましい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
(実施例1~5)
(1)陰イオン性セグメントAを含む三元系共重合体P(NIPAAm-SEMA-AABMA)ゲルの合成(式(VII)参照)
以下の手順で、単量体成分(A)~(C)を表1記載の配合比で配合した五種類の三元系(ただし、サンプル1は二元系)共重合体サンプル1~5を合成した。なお、NIPAAm及びSEMAの配合量は、サンプル3の配合量を挙げた。
【実施例】
【0062】
陰イオン性の単量体成分(A)として2-(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸ナトリウム塩(SEMA)を342mg(1.94mモル)、単量体成分(B)としてメチルイエローとメタクリル酸とを反応して得られたジメチルアミノアゾベンゼンメタクリレート(AABMA)を6mg(1.94×10-2mモル)、単量体成分(C)としてN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)を428mg(2.0mモル)、架橋剤としてN,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)を15.4mg(0.1mモル)用意し、これらを2ミリリットルのジメチルスルホキシド(DIMSO)に溶解させた。窒素ガス下で30分攪拌した後、重合反応開始剤アゾビスイソブチロニトリルAIBNを10.9mg(0.067mモル)添加して混合した。混合物をガラス板2枚の間に挟み、60℃で5時間保持することにより反応を進行させた。
【実施例】
【0063】
反応生成物をガラスから剥がし、水中に一日浸漬して精製した後、真空乾燥させて、0.600グラム(収率98%)の薄膜の共重合体P(NIPAAm-SEMA-AABMA)のサンプル3が得られた。このサンプル3は、水には不溶で水を吸収してゲル状になった。
【実施例】
【0064】
NIPAAm及びSEMAの配合比を変えた以外は同様にして、サンプル1、2、4、5を合成した。
【表1】
JP0005665187B2_000008t.gif
【実施例】
【0065】
(2) pH調整水における共重合体紫外可視吸収スペクトルの測定
上記(1)で得たサンプル1~5を、純水(pH=6.4)内に浸漬させ、二時間放置した後、水中での紫外可視吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す。また、このスペクトルに基づき、サンプル1~5内のそれぞれのNIPAAm重合率と、410nm及び550nmにおける吸光度との関係を図2に示す。図2中、実線は410nmのグラフであり、破線は550nmのグラフである。
【実施例】
【0066】
サンプル1~5を浸漬する純水のpHを、7.6及び8.0に調整した以外は同様にして、NIPAAmの配合比と、410nm及び550nmにおける吸光度との関係をグラフにした。pH=7.6の結果を図3に、pH=8.0の結果を図4に示す。pH=7.6では、サンプル1から5にかけて、赤色から黄色に段階的に呈色しているのが目視で観察できた。また、pH=8.0では、サンプル1から5にかけて、赤味がかった橙色から黄色に連続的に呈色しているのが目視で観察できた。
【実施例】
【0067】
以上から、本来pH4.0以上では一律に黄色であるメチルイエローをpH指示部位に有するサンプル1~5を使用することにより、pH6.4以上をpH変色域とし、さらにpH6.4と7.6と8.0という狭い範囲を精度よく区別することができることがわかる。例えば、サンプル4(セグメントC/セグメントAの配合モル比がほぼ3/1)に着目すると、pH6.4では550nmの吸収(赤色寄り)が強く、pH7.6では410nm及び550nmの吸収がほぼ同程度(橙色)で、pH8.0では410nmの吸収(黄色寄り)が強くなる。
【実施例】
【0068】
(3) 耐久性
サンプル1~5をpH=6の純水に浸漬して、水温20℃で3ヶ月放置した後、紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、放置前のスペクトルとほとんど変化がなかった。
【実施例】
【0069】
(実施例6、比較例1)
(1) 陽イオン性セグメントAを含む二元系共重合体P(TMMEACl-SPMA)ゲルの合成
スピロピランメタクリレート(SPMA、別名1´,3´,3´-トリメチル-6-(メタクリロイルオキシ)スピロ(2H-1-ベンゾピラン-2,2´-インドール))は、水中でのpHの変色域は(黄色)7~8(赤色)であることが知られているので、pH指示部位用単量体成分(B)として使用した。
【実施例】
【0070】
以下の手順で、共重合体サンプル6を合成した。陽イオン性の単量体成分(A)としてN,N,N-トリメチル-(2-メタクリロイロキシエチル)アンモニムクロリド(TMMEACl)を814mg(0.845mモル)、単量体成分(B)としてSPMAを27.8mg(0.08モル)、架橋剤としてN,N'-メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)を15.4mg(0.1mモル)用意し、これらを2ミリリットルのエタノールに溶解させた。窒素ガス下で30分攪拌した後、重合反応開始剤アゾビスイソブチロニトリルAIBNを10.9mg(0.067mモル)添加して混合した。混合物を実施例1~5と同様に、反応を進行させ、精製し、真空乾燥させて、薄膜の共重合体P(TMMEACl-SPMA)のサンプル6が得られた(収率97%)。
【実施例】
【0071】
(2) セグメントAを含まない共重合体ゲルの合成
比較のために、MBAAmを15.4mg(0.1mモル)、陽イオン性単量体成分TMMEAClの代わりに電気的中性単量体成分(C)であるNIPAAm(前出)を1g(8.9mモル)、SPMAを34mg(0.1モル)用いた以外は(1)と同様にして共重合体P(NIPAAm-SPMA)サンプル7を合成した(収率98%)。これらのサンプル6、7は、水には不溶で水を吸収してゲル状になった。
【実施例】
【0072】
(3) pH調整水における共重合体紫外可視吸収スペクトルの測定
上記で得たサンプル6を、pH=3.0、3.7、4.5及び6.4の純水内に浸漬させ、二時間暗所で放置した後、水中での紫外可視吸収スペクトルを測定した。このスペクトルに基づく、pHと、サンプル6の420nm及び550nmにおける吸光度との関係を図5に示す。
【実施例】
【0073】
同様にしてサンプル7を測定した紫外可視吸収スペクトルに基づく、pHと吸光度との関係を図6に示す。図5及び図6中、実線は550nmのグラフであり、破線は420nmのグラフである。
【実施例】
【0074】
pH=3.0から6.4にかけて、サンプル6は橙色から赤色に段階的に呈色しているのが目視で観察できた。これにより、一方、陽イオン性セグメントAを含まないサンプル7は、同じpH範囲で黄緑色から、橙色がかった黄色であった。
【実施例】
【0075】
以上から、本来酸性ではサンプル7のように黄色であるSPMAをpH指示部位に有するサンプル6は、陽イオン性セグメントAを含むことにより、pH3~4近辺をpH変色域とし、さらにpH3.0と3.7という狭い範囲を精度よく区別できることがわかる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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