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明細書 :超伝導モーター又は超伝導発電機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5669059号 (P5669059)
公開番号 特開2011-239596 (P2011-239596A)
登録日 平成26年12月26日(2014.12.26)
発行日 平成27年2月12日(2015.2.12)
公開日 平成23年11月24日(2011.11.24)
発明の名称または考案の名称 超伝導モーター又は超伝導発電機
国際特許分類 H02K  55/02        (2006.01)
H02K  21/12        (2006.01)
FI H02K 55/02 ZAA
H02K 21/12 M
H02K 21/12 G
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2010-109575 (P2010-109575)
出願日 平成22年5月11日(2010.5.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 学校法人加計学園岡山理科大学、文部科学省社会連携研究推進事業「地域社会とのコラボレーションによるQOL向上の一体的アプローチ」2009年度研究報告書、平成22年3月発行
特許法第30条第1項適用 学校法人加計学園岡山理科大学、OUSフォーラム2009アブストラクト集、平成21年11月20日発行
特許法第30条第1項適用 平成21年11月12日公開、http://www.csj.or.jp/conference/2009a/proceedings09a_small.pdf
審査請求日 平成25年5月10日(2013.5.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
発明者または考案者 【氏名】河村 実生
個別代理人の代理人 【識別番号】100114535、【弁理士】、【氏名又は名称】森 寿夫
【識別番号】100075960、【弁理士】、【氏名又は名称】森 廣三郎
【識別番号】100126697、【弁理士】、【氏名又は名称】池岡 瑞枝
【識別番号】100155103、【弁理士】、【氏名又は名称】木村 厚
審査官 【審査官】西山 智宏
参考文献・文献 特開2007-089345(JP,A)
特開昭56-088636(JP,A)
特開2004-023921(JP,A)
特開2005-269868(JP,A)
実開平01-058257(JP,U)
特開2002-369473(JP,A)
調査した分野 H02K1/00-1/34
H02K15/03
H02K16/00-16/04
H02K21/00-21/48
H02K55/00-55/06
特許請求の範囲 【請求項1】
通電コイルを備えた固定子と永久磁石を備えた回転子とから構成される超伝導モーター又は超伝導発電機において、
固定子及び回転子は、単一の真空容器に内蔵され、
固定子は、円環状の絶縁体である冷却環に超伝導ワイヤーを前記冷却環の周方向に直交して巻き付けて円環状の通電コイルを構成し、前記冷却環から支持体、熱伝導体及び電気伝導体を引き出すことにより真空容器に対して回転不能に支持させ、真空容器を貫通させた熱伝導体によりクライオクーラーと冷却環とを接続し、同じく真空容器を貫通させた電気伝導体により電力供給源又は電力出力先と超伝導ワイヤーとを接続し、
回転子は、前記支持体、熱伝導体及び電気伝導体を避け、周方向直交断面形状が前記冷却環に相似な形状で固定子を囲む空間を有する回転体から構成され、前記空間の内面である通電コイルの対向面に永久磁石を保持させ、真空容器を貫通させた回転軸を接続し、前記回転軸をシール軸受けにより真空容器に対して回転自在に支持させたことを特徴とする超伝導モーター又は超伝導発電機。
【請求項2】
固定子は、周方向直交断面形状が円形である円環状の冷却環に超伝導ワイヤーを前記冷却環の周方向に直交して巻き付け、周方向直交断面形状が円形である円環状の通電コイルを構成し、前記冷却環の同一円周上から支持体、熱伝導体及び電気伝導体を引き出し、
回転子は、前記支持体、熱伝導体及び電気伝導体を避ける円環状のスリットを設け、周方向直交断面形状が前記冷却環に相似な円形かつ円環状で固定子を囲む空間を有する回転体から構成され、前記空間の内面である通電コイルの対向面に永久磁石を保持させた請求項1記載の超伝導モーター又は超伝導発電機。
【請求項3】
回転子は、回転子の回転軸周方向に極性を揃えた永久磁石を回転体に保持させた請求項1又は2いずれか記載の超伝導モーター又は超伝導発電機。
【請求項4】
回転子は、固定子に構成した通電コイルの巻回半径方向に極性を揃えた永久磁石を回転体に保持させた請求項1又は2いずれか記載の超伝導モーター又は超伝導発電機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、回転効率(供給電力量当たりの回転数)の高い超伝導モーター又は発電効率(回転数当たりの発電量)の高い超伝導発電機に関する。
【0002】
モーター及び発電機の違いは、電力を供給して回転動力を出力する(モーター)か、回転動力を入力して電力を出力する(発電機)かの違いであり、装置構成は同じになるため、以下では主に超伝導モーターについて説明する。
【背景技術】
【0003】
電気抵抗が「0(ゼロ)」になる超伝導現象を利用する超伝導モーターは、例えば特許文献1に見られるように、電流を流す超伝導ワイヤーを冷却する必要がある。特許文献1が開示する超伝導モーターは、回転子にも電機子コイル(図示略、特許文献1[0046])を設け、超伝導ワイヤーで構成される界磁コイルと電機子コイルとの間に、極性の異なるヨークを周方向に互い違いに配置する構成を特徴としている(特許文献1[請求項1]ほか)。界磁コイルを構成する超伝導ワイヤーは、界磁コイルを冷却容器に収容し、前記冷却容器と冷媒タンクとを配管により連結して、冷却容器と冷媒タンクとの間で冷媒を循環させることにより冷却する(特許文献1[請求項4][0011]ほか)。
【0004】
特許文献1は、界磁コイルを積層したパンケーキコイル又はソレノイドコイルとして各界磁コイルを内蔵する個々の冷却容器を小型化し、更に界磁コイルの個数を減らして冷却容器の数も減らしたことにより、超伝導モーター自体の大型化を抑制したり、冷却容器の表面積を小さくして熱の進入を低減して冷却性能を向上させるとしている(特許文献1[0005])。また、冷却容器は、真空断熱層を有する二重構造にすることで、冷媒の昇温を抑制するとしている(特許文献1[請求項10][0016][0017])。
【0005】
このほか、特許文献1は、冷却容器の外周壁と界磁コイルの外周面との距離を前記界磁コイルの径方向の幅の2.5倍~3倍にすることにより、気化した冷媒の気泡が接触することによる冷却性能低下を防止できるとしている(特許文献1[0010])。また、気化した冷媒の気泡が速やかに冷媒タンクへ排出できるように、冷却容器に向けた配管の内径を拡径させた拡径連結部を設けたり、冷却容器の軸線方向全長に等しい配管接続口を設けたりするとよいとしている(特許文献1[0011][0012])。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2009-124886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
超伝導ワイヤーから構成される界磁コイルを備えた固定子のみを冷却容器に内蔵し、冷媒の循環によって超伝導ワイヤーを冷却する場合、特許文献1が明示するように、超伝導ワイヤーが超伝導現象を発現するまで冷却するには、前記界磁コイル単位で冷却容器に内蔵しなければならず、どうしても冷却容器が邪魔になることは否めない。すなわち、超伝導モーターを小型化するには限界がある。また、特許文献1にも見られるように、冷媒が昇温することによる問題に対し、様々な対策を施さなければならず、結局、超伝導モーターの複雑化や大型化が避けられない。これは、超伝導モーターの利用分野が限定される問題を招く。
【0008】
冷媒の循環によって超伝導ワイヤーを冷却する構成は、界磁コイルのみを真空容器に内蔵させる必要から、固定子及び回転子の間に必ず真空容器が介在することになり、固定子及び回転子の距離を縮めることが難しい問題がある。この場合、特許文献1にも見られるように、真空容器の断熱性を高めるために二重構造を採用すれば、、固定子及び回転子の距離はますます遠くなることになる。これでは、せっかく超伝導現象を利用して発生させた高磁場の利用が不十分となり、超伝導モーターとして回転効率や超伝導発電機として発電効率の向上に限界をもたらす。
【0009】
このように、冷媒の循環によって超伝導ワイヤーを冷却する構成は、超伝導モーター又は超伝導発電機の簡素化及び小型化について問題があるばかりか、超伝導現象を利用する点においても好ましくないことが分かる。そこで、超伝導モーター又は超伝導発電機の簡素化及び小型化に加え、超伝導現象を最大限利用して超伝導モーターの回転効率又は超伝導発電機の発電効率を高めるため、超伝導ワイヤーを冷却する構成について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
検討の結果、通電コイルを備えた固定子と永久磁石を備えた回転子とから構成される超伝導モーター又は超伝導発電機において、固定子及び回転子は、単一の真空容器に内蔵され、固定子は、円環状の絶縁体である冷却環に超伝導ワイヤーを前記冷却環の周方向に直交して巻き付けて円環状の通電コイルを構成し、前記冷却環から支持体、熱伝導体及び電気伝導体を引き出すこととにより真空容器に対して回転不能に支持させ、真空容器を貫通させた熱伝導体によりクライオクーラーと冷却環とを接続し、同じく真空容器を貫通させた電気伝導体により電力供給源又は電力出力先と超伝導ワイヤーとを接続し、回転子は、前記支持体、熱伝導体及び電気伝導体を避け、周方向直交断面形状が前記冷却環に相似な形状で固定子を囲む空間を有する回転体から構成され、前記空間の内面である通電コイルの対向面に永久磁石を保持させ、真空容器を貫通させた回転軸を接続し、前記回転軸をシール軸受けにより真空容器に対して回転自在に支持させた超伝導モーター又は超伝導発電機を開発した。本発明の超伝導モーターは、交流モーターであり、通電コイルに交流を印加する。
【0011】
超伝導モーターにおける通電コイルは、界磁コイルとして永久磁石との間で吸引力又は反発力を働かせるほか、回転子が備えた永久磁石に対してローレンツ力を働かせて、回転力を発生させる(厳密には、通電コイルに流れる電子にローレンツ力が働くが、通電コイルは固定子に備えられて位置固定であるので、前記ローレンツ力の反作用が永久磁石に働き、回転子を回転させる)。また、鉄心等のないコアレス構造を採用できることから、鉄損又は銅損を発生させない利点がもたらされる。超伝導発電機における通電コイルは、回転する回転子の永久磁石が、位置固定された通電コイルに対して相対的に磁力線を交差させることにより電磁誘導を起こし、交流を発生させる。
【0012】
真空容器は、断熱素材で形成された金属製又は樹脂製の密閉容器で、好ましくは輻射熱の小さな銀薄膜を内面に形成する。冷却環は、非磁性材料から構成し、後述するように、クライオクーラーからの熱伝導によって冷却するので、熱伝導率が高い(目安としてアルミナの30W/mK以上)絶縁体であることが望ましい。また、冷却環は、クライオクーラーにより超伝導ワイヤーが超伝導現象を発現する程度にまで冷却されるので、前記低温下での強度が十分で、熱膨張係数が金属並みであることが望ましく、輻射熱を抑えるため、真空容器同様、銀薄膜で覆うとよい。この場合、通電コイルと一体に冷却環を銀薄膜で覆ってもよい。回転子は、永久磁石を磁化されない樹脂製の回転体に保持させた構成がよく、輻射熱を抑えるため、冷却環同様、前記回転体を銀薄膜で覆うとよい。この場合、永久磁石と一体に回転体を銀薄膜で覆ってもよい。
【0013】
支持体は、冷却環と真空容器とを結び、真空容器に対して冷却環を回転不能に支持できる断熱性を備えた部材であればよく、例えばピン(棒材)又はフランジ(板材)として構成される。熱伝導体は、クライオクーラーの低温ヘッドと冷却環とを熱的に接続する部材で、冷却環同様、熱伝導率が高い部材であることが好ましく、例えばピン(棒材)として構成される。熱伝導体は、クライオクーラーの低温ヘッドが進退することから、低温ヘッドと冷却環との距離の変化を吸収できる伸縮部位又は可撓部位を備えることが望ましい。電気伝導体は、通電コイルを構成する超伝導ワイヤーと電力供給源又は電力出力先とを電気的に接続する部材で、例えばリード線として構成される。電気伝導体は、超伝導ワイヤーと同程度の電気伝導率を備えながら、熱伝導率の低い超伝導リードが望ましい。
【0014】
本発明の超伝導モーター又は超伝導発電機は、冷媒を用いることなく、真空容器に内蔵させた固定子の冷却環をクライオクーラーの熱伝導によって冷却し、前記冷却環に前記冷却環の周方向に直交して巻き付けた超伝導ワイヤーを冷却する。真空容器は、真空容器に直付けした真空ポンプや排気パイプを介して真空容器に接続された真空ポンプにより内部のガスを排出するが、どうしても一部のガスが残存したり、場合によって外部からガスが侵入したりすることが否めない。本発明は、こうしたガスを、冷却された冷却環により固体化させ、真空容器の真空度を極めて高くする。これにより、超伝導ワイヤーに対する高い断熱性が発揮され、超伝導ワイヤーの冷却状態を維持しやすくする。
【0015】
このように、本発明の超伝導モーター又は超伝導発電機は、冷媒を使用せずに超伝導ワイヤーを冷却するため、固定子及び回転子を個別の真空容器に内蔵させる必要がなく、冷媒が回転子に影響を与えることがないので、固定子及び回転子を同一の真空容器に内蔵できる。これにより、装置全体の小型化を可能になる。これは、通電コイルと永久磁石とを可能な限り接近させて、回転子が備える永久磁石に働くローレンツ力を大きくしたり、固定子が備える通電コイルに発生する誘導起電力を大きくさせて、超伝導モーターとしての回転効率や超伝導発電機としての発電効率を向上させる。
【0016】
通電コイルと永久磁石との位置関係は、固定子及び回転子によって決まる。固定子は、円環状の冷却環に超伝導ワイヤーを前記冷却環の周方向に直交して巻き付けて円環状の通電コイルを構成し、前記冷却環から支持体、熱伝導体及び電気伝導体を引き出し、回転子は、前記支持体、熱伝導体及び電気伝導体を避け、周方向直交断面形状が前記冷却環に相似な形状で固定子を囲む空間を有する回転体から構成され、前記空間の内面である通電コイルの対向面に永久磁石を保持させた構成にする。この場合、周方向に直交する冷却環の断面形状は自由であるが、通電コイルは前記冷却環の周方向直交断面形状に沿うので、回転子の対向面を前記断面形状に相似な形状にすると、前記回転子の対向面の範囲で、通電コイルと永久磁石とを可能な限り接近させることができる。
【0017】
より具体的な固定子は、周方向直交断面形状が円形である円環状の冷却環に超伝導ワイヤーを前記冷却環の周方向に直交して巻き付け、周方向直交断面形状が円形である円環状の通電コイルを構成し、前記冷却環の同一円周上から支持体、熱伝導体及び電気伝導体を引き出し、回転子は、前記支持体、熱伝導体及び電気伝導体を避ける円環状のスリットを設け、周方向直交断面形状が前記冷却環に相似な円形かつ円環状で固定子を囲む空間を有する回転体から構成され、前記空間の内面である通電コイルの対向面に永久磁石を保持させた構成にする。この場合、冷却環は周方向直交断面形状が円形である円環状、すなわちドーナツ状となり、回転体は支持体、熱伝導体及び電気伝導体を避ける円環状のスリットを設けた冷却環に相似な中空のドーナツ状となる。これにより、通電コイルと永久磁石とは、周方向直交断面形状がスリットを除く円弧状である対向面の広い範囲で可能な限り接近させることができる。
【0018】
永久磁石に発生させるローレンツ力や通電コイルに発生させる誘導起電力は、永久磁石が形成する磁力線にも左右される。回転子は、回転子の回転軸周方向に極性を揃えた永久磁石を回転体に保持させてもよい。永久磁石が形成する磁力線は、永久磁石が有するN極及びS極を結ぶように、すなわち回転子の回転軸周方向に架け渡すように形成されるので、永久磁石から磁力線が延びる付近では通電コイルに対して磁力線を直交させることができる。上述した中空のドーナツ状の回転体の場合、回転体の内面全部に対して隣り合う永久磁石を並べてもよいが、同一極性が回転軸を中心とする周方向(以下、回転軸周方向)に長く続くと通電コイルに向けた磁力線が発生しにくくなるので、回転子の回転軸周方向に極性を揃えた永久磁石を前記回転軸周方向に等間隔で断続的に並べるとよい。
【0019】
また、回転子は、固定子に構成した通電コイルの巻回中心(超伝導ワイヤーを冷却環に巻き付ける際の中心)の半径方向(以下、巻回半径方向)に極性を揃えた永久磁石を回転体に保持させるとよい。永久磁石が形成する磁力線は、永久磁石の極性方向、すなわち通電コイルの巻回半径方向に揃えて形成されるので、通電コイルのどの部分に対しても磁力線を直交させることができる。上述した中空のドーナツ状の回転体の場合、回転体の内面全部を同一極性(N極又はS極のいずれか)に揃えた永久磁石にすることになるが、回転軸周方向に連続して同一極性が続く永久磁石の形成は難しいので、回転軸周方向に分割された永久磁石を並べ、全体として、前記回転軸周方向に連続した同一極性を有する永久磁石を構成するとよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の超伝導モーター又は超伝導発電機は、簡素化及び小型化を実現することに加えて、超伝導現象を最大限利用して超伝導モーターの回転効率又は超伝導発電機の発電効率を高めることができる。これは、超伝導ワイヤーの冷却手段を、従来見られた冷媒による冷却に代え、真空容器中において、クライオクーラーが熱伝導で冷却する冷却環を介して冷却することによる効果である。冷却環の冷却は、真空容器に残存するガスを固体化し、冷却環を囲む真空容器の内部の真空度をより高めることにより、超伝導ワイヤーに対する断熱性を高め、超伝導ワイヤーをよりよく冷却できる利点をもたらすほか、冷却を続ける限り、冷却環の断熱性が維持され、冷却状態の維持も容易になる利点をもたらす。
【0021】
超伝導モーター又は超伝導発電機の簡素化及び小型化は、冷媒を用いない冷却手段の採用により、回転子及び固定子を同一の真空容器に内蔵できるようにしたことにより、実現される。回転子及び固定子を同一の真空容器に内蔵しながら、前記真空容器の内部に冷媒を満たすことも考えられるが、熱を排出するために循環させる必要のある冷媒が回転子の回転を阻害するので、好ましくない。本発明は、こうした回転子の回転を阻害する冷媒を用いないため、回転子及び固定子を同一の真空容器に内蔵できる。付言すれば、本発明の超伝導モーター又は超伝導発電機は、冷却環の冷却のために回転子を内蔵した真空容器の内部を真空にすることから、回転子の回転をガスが阻害しない利点もある。
【0022】
また、回転子及び固定子を同一の真空容器に内蔵したことにより、回転子の永久磁石と固定子の通電コイルとを限りなく接近させ、超伝導モーターとしての回転効率や超伝導発電機の発電効率を高めることができる。この場合、冷却環の周方向直交断面形状に等しい通電コイルを構成し、前記冷却環の断面形状に相似な空間を有するドーナツ状における前記空間の内面である対向面に一致させて永久磁石を保持させることにより、周方向直交断面形状が支持体等を引き出すスリットを除く円弧状である広い範囲で通電コイルと永久磁石の磁力線とを対向させて、超伝導モーターとしての回転効率や超伝導発電機の発電効率を最大限まで高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した超伝導モーターの一例における回転軸方向断面図である。
【図2】図1中A-A断面図である。
【図3】固定子をそのまま描いた図1中B-B断面図である。
【図4】固定子を図示略した図1中B-B断面図である。
【図5】固定子及び回転子の組み付け関係を表した斜視図である。
【図6】固定子及び回転子の組み付けた状態を表した斜視図である。
【図7】図3中D-D断面図である。
【図8】別例の超伝導モーターにおける永久磁石の配置関係を表す図1中C矢視部相当断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明を適用して構成される超伝導モーター1は、図1~図4に見られるように、固定子2及び回転子3を共に単一の真空容器5に内蔵する。本例の超伝導モーターは、クライオクーラー5を真空容器4の側面外側に固定し、真空容器4の側面を貫通する熱伝導ピン25により、固定子2を構成する冷却環21と前記クライオクーラー5(正確には低温ヘッド)とを熱的に接続し、また真空容器4の底面に排気パイプ42を貫通させ、そして前記冷却環21の周方向に直交して巻き付けて通電コイル23を構成する超伝導ワイヤー22に接続した超伝導リード26を真空容器4の底面から引き出している。

【0025】
真空容器4は、図1~図4に見られるように、金属製又は樹脂製の扁平な円柱状で、平面視円環状の側面に対し、回転子3の回転軸33を下方から支持する平面視円形の底面と、前記回転軸33をシール軸受け41で支持しながら貫通させる平面視円形の上面とを組み付けて密閉される。上面及び底面は、例えば接着剤やボルト等により側面に対してそれぞれ取り外し不能に固着してもよい。本例は、回転子3を回転させる際に真空容器4の内部が真空になることから、側面に対して上面及び底面が外れる虞がなくなるので、断熱性及び気密性を備えたシールリングを介装して、側面に対して上面及び底面を着脱自在に組み付けただけにしている。側面、上面及び底面は、すべて同素材でもよいし、例えば側面及び上面のみを樹脂製とし、底面のみを金属製としても構わない。真空容器4から冷却環21、そして超伝導ワイヤー22への輻射熱を抑制するため、前記側面、上面及び底面の内側に銀薄膜を形成するとよい。

【0026】
真空容器4の側面は、固定子2の支持ピン24が保持され、冷却環21とクライオクーラー5を熱的に結ぶ熱伝導ピン25が貫通される。本例の支持ピン24は、回転子3の回転体31に形成されるスリット311に合わせて、冷却環21の回転軸半径方向外側から前記半径方向外向きに突出させている。支持ピン24は、低温に冷却される冷却環21を真空容器4に対して回転不能に支持するため、耐熱性及び強度に優れた素材(例えばポリベンゾイミダゾール(PBI)樹脂)が好ましい。また、冷却により冷却環21が微小に収縮し、真空容器4の側面に対して支持ピン24が進退するので、各支持ピン24は断熱性及び気密性を備えたシールリングを介して真空容器4の側面に保持させている。

【0027】
熱伝導ピン25は、クライオクーラー5の低温ヘッドから低温を熱伝導して冷却環21を冷却できるように、熱伝導率の高い素材(例えば銅)から構成する。本例の熱伝導ピン25は、非伸縮部位又は非可撓部位である銅製棒材と伸縮部位又は可撓部位である銅製網材とを組み合わせて構成され、真空容器4に対して進退する低温ヘッドと冷却環21との距離の変化を、前記銅製網材の伸縮又は可撓により吸収させている。クライオクーラー4の低温ヘッドは、真空容器6の側面に接触すると不要な熱を伝導してしまうため、前記側面に開口した貫通孔に低温ヘッドを貫通させ、断熱性及び気密性を備えたシールリングを介装してクライオクーラー5を真空容器6の側面に直付けして低温ヘッドを片持ち支持させることにより、前記低温ヘッドが貫通孔内周に接触しないようにしている。

【0028】
真空容器4の底面は、排気パイプ42及び超伝導リード26を貫通させている。排気パイプ42又は超伝導リード26は、側面又は上面から引き出してもよい。本例の超伝導リード26は、3組に分けられた通電コイル23それぞれへ三相交流を供給するために入出力合わせて6本あり、それぞれ冷却環21の周方向に直交して巻き付けた超伝導ワイヤー22から回転体31のスリット311を通じて回転軸半径方向外向きに引き出し、真空容器4の側面に沿って降ろして、底面を貫通させて電力供給源(図示略)に接続させている。超伝導リード26は、通電コイル23を構成する超伝導ワイヤー22と異なり、熱伝導性の悪い超伝導素材からなり、真空容器4の底面を貫通させる部分にハーメチックシールを用いて、超伝導ワイヤー22に対する断熱性を確保している。

【0029】
排気パイプ42は、真空ポンプ(図示略)が接続され、開閉バルブ421を開いて前記真空ポンプにより吸引して真空容器5内のガスを排出する。本発明では、冷却環21の冷却により、真空容器4中に残存するガスや真空容器4内へ侵入するガスが固体化し、真空容器4内の真空が十分に維持されるので、一定程度のガスが排出された後は開閉バルブ421を閉じて真空ポンプを停止させることができる。これは、超伝導モーター1を駆動している間、常時真空ポンプを働かせなくてよいことを意味し、超伝導モーター1の駆動に要するエネルギーの低減という効果をもたらしている。

【0030】
固定子2は、図1、図3及び図5に見られるように、絶縁体である冷却環21に超伝導ワイヤー22を前記冷却環21の周方向に直交して巻き付けて構成された通電コイル23を、回転軸周方向に等間隔で24個設けている。本例の超伝導ワイヤー22は、広幅かつ扁平な線材であり、3本一組で通電コイル23を構成している。具体的な超伝導ワイヤー22は、ビスマス系線材又はイットリウム系線材が用いられる。通電コイル23は、供給される三相交流に応じて、8個一組(例えばA組、B組及びC組)に分けられる。各組の通電コイル23は、回転軸周方向に順番に並ぶ(A組→B組→C組→A組→…の繰り返し)。超伝導リード26は、各組の通電コイル23を構成する超伝導ワイヤー22毎に接続され、120度位相がずれた三相交流をそれぞれ供給する。

【0031】
冷却環21は、周方向直交断面形状が円形である平面視形状が円環状(いわゆるドーナツ形状)のセラミックスから構成している(図5参照)。セラミックス製の冷却環21は、非磁性かつ絶縁体で、低温下での強度が十分で、熱膨張係数が金属並みである点で優れている。支持ピン24や熱伝導ピン25及び超伝導リード26は、回転軸半径方向の最外周から取り出している。図示された支持ピン24は、熱伝導ピン25を含めて回転軸周方向に等間隔で合計6本(支持ピン24が5本、熱伝導ピン25は1本)であるが、冷却環21を安定して真空容器6に対して支持させるため、支持ピン24の数は多い程好ましい(例えば、隣り合う通電コイル23間毎に1本の支持ピン24を割り当てる)。また、図示を省略するが、輻射熱を抑えるため、通電コイル23を含めて冷却環21全体を銀薄膜で覆ってもよい。

【0032】
回転子3は、図1、図2、図4~図6に見られるように、真空容器4の上面に設けたシール軸受け41に回転自在に支持された回転軸33を貫通保持させた回転体31に、回転軸周方向に等間隔で16個の永久磁石32を保持させて構成される。永久磁石32の個数は、通電コイル23の個数(24個)に対して2/3に設定している。本例の永久磁石32は、後述する半割部材それぞれに16個、合計で32個用いられているが、各半割部材が保持する永久磁石32の極性を揃えているので、回転子3として見た場合、周方向直交断面形状が円形の固定子2(より具体的には通電コイル23)を囲むように、スリット311を除いた円弧状の永久磁石32が回転軸周方向に16個並んだ格好になっている。シール軸受け41は、磁性流体により回転動力を出力する回転軸33周りの気密性、水密性や、真空容器4の形成する真空及び断熱を確保する。

【0033】
回転体31は、周方向直交断面形状が上記冷却環21に相似な円形である空間312を回転軸周方向に延在させて内蔵する平面視円盤で、周方向直交断面形状が半円形である前記空間312の内面である対向面313を回転軸円周方向に延在させた樹脂製半割部材を、固定子2の冷却環21を囲むように重ね合わせて構成している(図5参照)。既述したように、固定子2から突出する支持ピン24や熱伝導ピン25及び超伝導リード26を避けるため、半割部材の回転軸半径方向外側は密着せず、前記支持ピン24や熱伝導ピン25及び超伝導リード26が突出するスリット311を形成する。スリット311の幅(本例では半割部材の外周縁部の上下方向の間隔)は、できるだけ狭いこと望ましく、突出する支持ピン24、熱伝導ピン25及び超伝導リード26のいずれか最も太い部材よりわずかに大きく設定する。

【0034】
永久磁石32は、側面視円弧状で、各半割部材の対向面313に設けられた回転軸半径方向に沿った半円弧状の嵌合溝314に対し、露出する内面(巻回半径方向内側の面)が対向面313に一致するように嵌め込まれる。永久磁石32は、回転体31の対向面313に保持されればよいため、露出する内面が対向面313に一致する必要はなく、永久磁石32が対向面313から突出したり、逆に対向面313から凹んでいたりしても構わない。しかし、通電コイル23にできる限り永久磁石32を接近させ、かつ回転体31が形成する空間312をできるだけ小さくするため、本例の永久磁石32は露出する内面が対向面313に一致させて嵌合溝314に嵌め込んでいる。このほか、図示は省略するが、輻射熱を抑えるため、冷却環21同様、回転体31を銀薄膜で覆ってもよい。この場合、露出する内面が対向面313に一致して嵌め込まれた永久磁石32と一体に回転体31を銀薄膜で覆うとよい。

【0035】
本例の超伝導モーター1は、図7に見られるように、回転子3の回転軸周方向に極性(N極及びS極の並び方向)を揃えた永久磁石32を、隣り合う永久磁石32で極性が互い違いになるようにし、前記回転軸周方向に断続的に並べている。これにより、永久磁石32が形成する磁力線は、隣り合う永久磁石32のN極同士又はS極同士を対向させて、通電コイル23の巻回半径方向(図7中上下方向中心)に延ばし、対向面313が接近する通電コイル23に対して磁力線を直交させることができる。このように磁力線を通電コイル23の巻回半径方向に延ばすには、永久磁石32の幅と永久磁石32相互の間隔との比を1:4にするとよい。この場合、永久磁石32が回転軸半径方向外向きに広がる平面視台形であれば、回転軸半径方向のどこでも前記比率を実現できるが、本例の永久磁石32は同幅なので、回転体31の空間312における回転軸線(図3中D-D分断線中円弧部分が一致)上で、永久磁石32の幅と永久磁石32相互の間隔との比を1:4にしている。

【0036】
超伝導モーター1は、固定子2の通電コイル22に三相交流を流すことにより、通電コイル23を界磁コイルとして永久磁石32との間で吸引力又は反発力を働かせるほか、通電コイル23に流れる電子に働くローレンツ力の反作用を永久磁石32に働かせて、回転子3を回転させる。具体的に、例えば図7左右中央に図示される永久磁石312の左側に位置する通電コイル22に、上面から回転軸半径方向内側を通って下面に向かって電流が流れたとき、永久磁石32からの磁力線(図7中破線矢印参照)が通電コイル23の巻回中心に向かって延びているので、通電コイル23に図7中右方向のローレンツ力が働くが、通電コイル23を有する冷却環21は真空容器6に対して回転不能に固定されているので、前記ローレンツ力の反作用により、回転子3が図7中左方向に回転する(図7中白抜き矢印参照)。本例(図1~図7)が超伝導発電機の場合、回転する回転子3の永久磁石32が位置固定された通電コイル23に対して相対的に磁力線を交差させて電磁誘導を起こし、三相交流を発生させる。

【0037】
永久磁石32は、図8に見られるように、固定子2に構成した通電コイル23の巻回半径方向(断面中心方向)に極性を揃えて回転体31に保持させてもよい。この場合、各永久磁石32から延びる磁力線(図8中破線矢印参照)が通電コイル23の巻回中心に向かって延び、通電コイル23のどの部分に対しても磁力線を等しく直交させることができ、永久磁石32の全周にわたって等しくローレンツ力を発生させることができる。具体的に、例えば極性を巻回半径方向内側にN極、外側にS極を揃え、巻回中心に向かって磁力線を伸ばすように永久磁石32を回転体31に保持させた構成で、通電コイル22に上面から回転軸半径方向内側を通って下面に向かって電流が流れたとき(図8中右回りに電流が流れたとき)、通電コイル23に図8中紙面奥行き方向のローレンツ力が働くが、通電コイル23を有する冷却環21は真空容器6に対して回転不能に固定されているので、前記ローレンツ力の反作用により、回転子3が図8中紙面手前方向に回転する(図8中右側黒点丸記号参照)。本例(図8)が超伝導発電機の場合、回転する回転子3の永久磁石32が位置固定された通電コイル23に対して相対的に磁力線を交差させて電磁誘導を起こし、三相交流を発生させる。
【符号の説明】
【0038】
1 超伝導モーター
2 固定子
21 冷却環
22 超伝導ワイヤー
23 通電コイル
24 支持ピン
25 熱伝導ピン
26 超伝導リード
3 回転子
31 回転体
32 永久磁石
33 回転軸
4 真空容器
41 シール軸受け
42 排気パイプ
5 クライオクーラー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
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