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明細書 :植物油廃液の処理方法およびその処理方法で得られる成分を用いて肥料を製造する方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3603114号 (P3603114)
公開番号 特開2002-186960 (P2002-186960A)
登録日 平成16年10月8日(2004.10.8)
発行日 平成16年12月22日(2004.12.22)
公開日 平成14年7月2日(2002.7.2)
発明の名称または考案の名称 植物油廃液の処理方法およびその処理方法で得られる成分を用いて肥料を製造する方法
国際特許分類 C02F  1/22      
C05F  5/00      
FI C02F 1/22 A
C05F 5/00 ZAB
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2000-385624 (P2000-385624)
出願日 平成12年12月19日(2000.12.19)
審査請求日 平成12年12月19日(2000.12.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391016956
【氏名又は名称】九州工業大学長
発明者または考案者 【氏名】白井 義人
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100068814、【弁理士】、【氏名又は名称】坪井 淳
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
審査官 【審査官】齊藤 光子
参考文献・文献 特公昭51-049598(JP,B1)
特開2000-024644(JP,A)
特開昭54-029756(JP,A)
調査した分野 C02F1/24
B01D9/00-9/04
特許請求の範囲 【請求項1】
植物油廃液を凍結させる工程と、該凍結させた植物油廃液を融解する工程と、該融解工程において発生する液相を固相から分離回収する工程を具備する植物油廃液の処理方法であって、該植物油廃液が、椰子、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー及びヒマワリからなる群から選択される植物から植物油を製造する工程で生成する廃液であり、該液相の回収が、該融解工程中に発生する液相を経時的に前期融出分および後期融出分に分取することにより行われ、該後期融出分を回収することにより植物油廃液中に含有される有機成分および無機成分からなる群の少なくとも1種の成分の含有量を低減させる植物油廃液の処理方法。
【請求項2】
該植物廃液が、椰子から椰子油を製造する工程で生成する廃液である請求項1の植物油廃液の処理方法。
【請求項3】
該植物油廃液中に含有される有機成分および無機成分が、植物油廃液に溶解した固形分である請求項1又は2の植物油廃液の処理方法。
【請求項4】
該後期融出分の分取を開始する時の決定が、BOD値、COD値並びに窒素含有量、リン含有量、カリウム含有量およびアンモニア含有量からなる群から選択される少なくとも1つの値を指標として行われる請求項1ないし3のいずれか1項に記載の植物油廃液の処理方法。
【請求項5】
該液相を固体から分離する工程が、該凍結させた植物油廃液を篩上にのせ、該篩を通して滴下する液体成分を経時的に回収することにより行われる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の植物油廃液の処理方法。
【請求項6】
該篩が、メッシュサイズ40~400の篩である請求項5に記載の植物油廃液の処理方法。
【請求項7】
該前期融出分が第1番目~第n番目(nは1以上の自然数)の画分に経時的に分別され、該後期融出分が第(n+1)番目~第(n+m)番目(mは1以上の自然数)の画分に経時的に分別され、第n番目に含有される有機成分および無機成分の少なくとも1種の成分の濃度が、凍結前の植物油廃液に含有される該少なくとも1種の成分の濃度の30%~100%の範囲内の濃度にまで下がったとき、該第(n-1)番目までの画分を該前期融出分とし、第n番目の画分以降を該後期融出分として回収する請求項1ないしの何れか1項の植物廃液の処理方法。
【請求項8】
該後期融出分の少なくとも一部を、微生物処理を含む生物的手法、活性炭処理、蒸発法および膜分離法を含む物理化学的手法、並びに亜臨界化学反応および超臨界化学反応を含む化学的手法による処理の少なくとも1つの手法に供することを含む、廃液の資源化、有機成分および無機性分の低減化、並びに廃液からのエネルギー回収の少なくとも1つによる再処理工程を更に具備する請求項1ないしの何れか1項に記載の植物油廃液の処理方法。
【請求項9】
該植物油廃液が、植物から植物油を搾取することにより生成されるものであり、該搾取後に得られる固形廃棄物を燃焼する際に生じる燃焼エネルギーを、該凍結のためのエネルギーの少なくとも一部および/又は請求項に記載する各々の再処理のためのエネルギーの少なくとも一部に用いる請求項1ないしの何れか1項に記載の植物油廃液の処理方法。
【請求項10】
植物油廃液を凍結させる工程と、該凍結させた植物油廃液を融解する工程と、該融解工程において発生する液相を固相から分離回収する工程であって、該液相の回収が、該融解工程中に発生する液相を経時的に前期融出分および後期融出分に分取することにより行われる工程を具備し、該植物油廃液が、椰子、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー及びヒマワリからなる群から選択される植物から植物油を製造する工程で生成する廃液であり、次のa成分のみにより、又は次のa成分と、b成分およびc成分の少なくとも1方とを混合すことにより、植物油廃液から肥料を製造する方法:
(a成分) 該分離工程で得られた固相の少なくとも一部、
(b成分) 該前期融出分の少なくとも一部、
(c成分) 該後期融出分の少なくとも一部。
【請求項11】
植物を採取する工程と、該採取した植物から植物油を製造する工程と、該植物油製造工程で発生した植物油廃液を回収する工程と、該植物油廃液を請求項10に記載される肥料を製造する方法に供することにより得られた肥料を該植物の生長のための肥料として用いる工程を具備し、該植物油廃液が椰子、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー及びヒマワリからなる群から選択される植物から植物油を製造する工程で生成する廃液である植物油廃液をリサイクルする方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、植物油廃液の処理方法に関する。
具体的には、本発明の植物油廃液の処理方法は、パームオイルのような植物油を植物から搾取する際に副生成物として発生する植物油廃液を処理する方法であって、植物油廃液中に含有される有機成分および無機成分のうち少なくとも1成分の含有量を低減させるための方法に関する。
【0002】
また、本発明は、植物油廃液から肥料を製造する方法にも関する。
具体的には、本発明の植物油廃液から肥料を製造する方法は、上記植物油廃液の処理方法において得られる成分を利用して肥料を製造する方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、植物油廃液のリサイクル方法にも関する。
具体的には、本発明の植物油廃液のリサイクル方法は、上記植物油廃液から肥料を製造する方法により得られる肥料を、植物生育のための肥料として施すことにより植物油廃液をリサイクルする方法に関する。
【0004】
【従来の技術】
マレーシアを中心とした油椰子の産地は熱帯に属し、遺伝子資源の多様性と高温による反応活性の高さが大きな特徴である。椰子油の製造工程では搾油工程で油の洗浄目的を中心に大量のプロセス水が使われ、同時に大量の高濃度の廃液(椰子油廃液)が排出される。現在、椰子油廃液はラグーンと呼ばれる嫌気性処理池で主に処理されている。ラグーンは全長が1kmを超えることも珍しくなく、数ヶ月の滞留時間を掛けて廃液の有機成分が様々な微生物によって最終的にメタンに還元されている。椰子油廃液は一般に5万ppmを超えるCODをもつ汚染度の高い廃液であるが、これらの汚濁有機成分は、従って、無為にラグーンから大気に放出されている。さらに、まったく自然に依存した廃液処理法であるため、しばしば、不十分な処理のまま処理水が河川に放流される。
【0005】
一方、椰子油工場では椰子房や椰子の実から搾油された後に残る繊維分等大量の固形廃棄物が排出され、工場内に必要なエネルギーはこれらを燃焼させて得られているが、まだまだ余っている。そのため、廃液そのものを蒸発して処理する蒸発処理法が試みられている。しかし、椰子油廃液に含まれる1万5千ppmを超える懸濁固形分(以下、「SS」ともいう。)のため、蒸発釜に残る残渣の除去等に問題がある。また、廃液の有機成分濃度が余りに高いため、廃液を蒸発させても凝縮水の清澄度は高くない。
【0006】
他方、最近、椰子油廃液の肥料としての効果が認められつつあり、廃液を油椰子プランテーションにリサイクルする試みもなされているが、廃液が量的に膨大であり、廃液全量をリサイクルすることは困難である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、掛かる問題を解決することを目的とする。
具体的には、本発明は、植物油廃液中に含有される有機成分のような環境を悪化させ得る成分量を低減させることのできる植物油廃液の処理方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、植物油廃液の廃棄量を減らし、有効利用し得る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、以下の植物廃液の処理方法、植物油廃液から肥料を製造する方法、および植物油廃液をリサイクルする方法を提供する。
【0009】
(1) 植物油廃液を凍結させる工程と、該凍結させた植物油廃液を融解する工程と、該融解工程において発生する液相を固相から分離回収する工程を具備する植物油廃液の処理方法であって、該植物油廃液が、椰子、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー及びヒマワリからなる群から選択される植物から植物油を製造する工程で生成する廃液であり、該液相の回収が、該融解工程中に発生する液相を経時的に前期融出分および後期融出分に分取することにより行われ、該後期融出分を回収することにより植物油廃液中に含有される有機成分および無機成分からなる群の少なくとも1種の成分の含有量を低減させる植物油廃液の処理方法。
(2) 該植物廃液が、椰子から椰子油を製造する工程で生成する廃液である上記(1)の植物油廃液の処理方法。
【0010】
) 該植物油廃液中に含有される有機成分および無機成分が、植物油廃液に溶解した固形分である上記(1)又は(2)の植物油廃液の処理方法。
【0011】
) 該後期融出分の分取を開始する時の決定が、BOD値、COD値並びに窒素含有量、リン含有量、カリウム含有量およびアンモニア含有量からなる群から選択される少なくとも1つの値を指標として行われる上記(1)ないし(3)のいずれか1に記載の植物油廃液の処理方法。
(5) 該液相を固体から分離する工程が、該凍結させた植物油廃液を篩上にのせ、該篩を通して滴下する液体成分を経時的に回収することにより行われる上記(1)ないし(4)のいずれか1に記載の植物油廃液の処理方法。
(6) 該篩が、メッシュサイズ40400の篩である上記(5)に記載の植物油廃液の処理方法。
【0012】
) 該前期融出分が第1番目~第n番目(nは1以上の自然数)の画分に経時的に分別され、該後期融出分が第(n+1)番目~第(n+m)番目(mは1以上の自然数)の画分に経時的に分別され、第n番目に含有される有機成分および無機成分の少なくとも1種の成分の濃度が、凍結前の植物油廃液に含有される該少なくとも1種の成分の濃度の30%~100%の範囲内の濃度にまで下がったとき、該第(n-1)番目までの画分を該前期融出分とし、第n番目の画分以降を該後期融出分として回収する上記(1)ないし()の何れか1の植物廃液の処理方法。
【0015】
) 該後期融出分の少なくとも一部を、微生物処理を含む生物的手法、活性炭処理、蒸発法および膜分離法を含む物理化学的手法、並びに亜臨界化学反応および超臨界化学反応を含む化学的手法による処理の少なくとも1つの手法に供することを含む、廃液の資源化、有機成分および無機性分の低減化、並びに廃液からのエネルギー回収の少なくとも1つによる再処理工程を更に具備する上記(1)ないし()の何れか1に記載の植物油廃液の処理方法。
【0016】
) 該植物油廃液が、植物から植物油を搾取することにより生成されるものであり、該搾取後に得られる固形廃棄物を燃焼する際に生じる燃焼エネルギーを、該凍結のためのエネルギーの少なくとも一部および/又は上記()に記載する各々の再処理のためのエネルギーの少なくとも一部に用いる上記(1)ないし()の何れか1に記載の植物油廃液の処理方法。
【0017】
10) 植物油廃液を凍結させる工程と、該凍結させた植物油廃液を融解する工程と、該融解工程において発生する液相を固相から分離回収する工程であって、該液相の回収が、該融解工程中に発生する液相を経時的に前期融出分および後期融出分に分取することにより行われる工程を具備し、該植物油廃液が、椰子、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー及びヒマワリからなる群から選択される植物から植物油を製造する工程で生成する廃液であり、次のa成分のみにより、又は次のa成分と、b成分およびc成分の少なくとも1方とを混合すことにより、植物油廃液から肥料を製造する方法:
(a成分) 該分離工程で得られた固相の少なくとも一部、
(b成分) 該前期融出分の少なくとも一部、
(c成分) 該後期融出分の少なくとも一部。
【0018】
(1) 植物を採取する工程と、該採取した植物から植物油を製造する工程と、該植物油製造工程で発生した植物油廃液を回収する工程と、該植物油廃液を上記(10)に記載される肥料を製造する方法に供することにより得られた肥料を該植物の生長のための肥料として用いる工程を具備し、該植物油廃液が椰子、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー及びヒマワリからなる群から選択される植物から植物油を製造する工程で生成する廃液である植物油廃液をリサイクルする方法。
【0019】
【発明の実施の態様】
まず、本発明の植物油廃液の処理方法(以下、「本発明の処理方法」ともいう。)を詳細に説明する。
本発明の処理方法を適用する植物油廃液として、パームオイル廃液を例に挙げて以下に説明するが、本発明の処理方法を適用することのできる植物油廃液はこれに限定されるものではなく、例えば、ダイズ、ゴマ、ツバキ、オリーブ、落花生、トウモロコシ、綿実、米糠、サフラワー、ヒマワリ等の植物由来の油を製造する過程で生じる廃液、さらには、家庭や事業所からの排水であって、これらの植物油を含有するもの、あるいはそれら由来の炭化水素製品を含むもの、さらに、酒、ワイン等の酒類製造工程で生じる廃液にも適用することができる。
【0020】
パームオイル廃液とは、椰子の実から椰子油を圧搾し、パームオイルを得る一連の工程から生成する副生成物をいう。具体的には、図2に示すように、パームオイルは、椰子の実の皮を剥ぎ、果実を圧搾することにより得られる。この過程からは、皮由来の副生成物、果実圧搾後の浄化工程で得られる副生成物、果実圧搾後の果皮由来の副生成物等が生成する。本発明の方法で処理することのできる植物油廃液は、通常、これらの副生成物から、房や繊維に代表される固形分を搾油工程で物理的に除いた後、油と水で洗浄した後の水溶液をいう。この椰子油廃液には、懸濁固形分(SS)としてセルロース、ヘミセルロース、リグノセルロースなどと、溶解有機成分として低分子脂肪酸(有機酸)などと、溶解無機成分としてアンモニア、リン、カリ、マグネシウムなどが含まれている。
【0021】
本発明の処理方法の各工程を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の処理方法の工程を含むブロック図である。
図1に示すように、本発明の処理方法は、植物油廃液を凍結させる工程と、該凍結させた植物油廃液を融解する工程を具備し、この融解工程において発生する液相を固相から分離回収する。
本発明の処理方法では、固相と液相を分離するために凍結および融解工程を施すことにより、固形分を効率よく分離できることを利用したものである。
【0022】
本発明の処理方法において、凍結手段および凍結に要する時間等の凍結条件は、椰子油廃液を凍結状態にし得る条件であれば、特に制限はない。また、解凍手段および解凍に要する時間等の融解条件も、凍結した懸濁液を融解させ、融解中に発生する液相を2以上の融出分に分別し得る条件であれば、特に制限はない。一例をあげると、1リットル(以下、「L」とも表記する。)程度の椰子油廃液の場合、-2℃~-20℃で0.5~24時間程度冷却することにより懸濁液を凍結させた後、10℃~80℃で0.3~24時間程度加熱、あるいは放置することにより融解させることができるが、これらの範囲に限定されるものではない。
【0023】
凍結を終了してから融解を開始するまでの時間に特に制限はなく、また、融解させる場所は、凍結させた場所であってもそれ以外であってもかまわない。
【0024】
本発明の処理方法の特徴の一つは、上記融解工程において発生する液相を固相から分離回収する点にある。
すなわち、本発明の処理方法では、融解工程において発生する液相を経時的に前期融出分および後期融出分に分取する。融解工程の前期融出分には、廃液が含有していた有機成分および無機成分が高濃度に含有される一方、時間が経過するにしたがって分取される後期融出分中に含有される有機成分および無機成分濃度は次第に低下していく。したがって、前期融出分を廃液から除去することにより後期融出分の有機成分および無機成分の含有量を、原料となる廃液の含有量よりも顕著に低減させることができる。
【0025】
ここで、融解工程における前期融出分および後期融出分について説明する。
本発明の処理方法の融解工程において融解時に発生する液相は、前期融出分および後期融出分の2つの部分に分別する。
【0026】
前期融出分と後期融出分との切替えは、所望する処理の程度、具体的には、本発明の処理後の廃液中に含有される有機成分および/又は無機成分の低減の程度等に応じて適宜設定することができる。一例を挙げると、前期融出分は、融解が開始してから、融出する液相中の有機成分および/又は無機成分の何れか1種の濃度が、原料として用いる植物油廃液中に含有されていたその成分の濃度程度になるまでの融出分とし、その後に融出する液相を後期融出分とすることができる。上述したように、融解工程の初期に得られる画分には高濃度の有機成分および/又は無機成分が含有される一方、時間が経過するにしたがってこれらの成分の濃度が低下していく。したがって、ある成分の濃度が原料である植物廃液の濃度とほぼ等しくなった融出分までを前期融出分として分別することにより、後期融出分に含有されるその成分の濃度を原料である植物廃液中の濃度よりも低くすることができ、本発明の目的を達成することができる。
【0027】
本発明の処理方法において、前期融出分および後期融出分は、それぞれ1又はそれ以上の画分に経時的にさらに分別することが好ましい。分別する画分の総数は、処理すべき植物油廃液の量、廃液中の溶解固形分の量および懸濁固形分の量などに応じて適宜設定することができる。
【0028】
具体的には、植物油廃液に含有される1つの成分(A成分)に注目し、各画分中のA成分の濃度をモニターする。ある画分中のA成分の濃度が、処理前の植物油廃液のA成分濃度の30%~100%にまで低下した場合に、その画分以降を後期融出分とし、それよりも前の画分を前期融出分として回収することができる。しかしながら、後期融出分をどの時点で開始するかは、どの程度にまでA成分濃度を低減化するか、さらには、後期融出分に再処理を施すか否か等に応じて決定されるべきものであり、上記範囲に限定されるものではない。例えば、COD値のような廃液として河川等に放流できる法的基準値等に適合するために必要であれば、分取する画分のCOD値が、処理前の植物油廃液の30%よりも小さくなった後の画分を後期融出分とすることができる。一方、後期融出分から有機酸のような工業的に有用な成分を回収し、再資源化する場合には、処理前の植物油廃液の濃度の100%よりも大きい、例えば120%程度の画分から後期融出分とすることができる。また、指標とする成分に応じて各画分の濃度分布の態様が異なることも考慮して、どの時点の融出分までを前期融出分とするかを決定することが好ましい。
【0029】
本発明の処理方法において、有機成分の含有量の指標としては、COD値、BOD値のような値を利用することができる。COD値およびBOD値の測定は、定法により行うことができる。また、無機性分の含有量の指標としては、リン、カリ、アンモニウム等肥料成分として有用な無機成分の含有量を利用することができる。無機成分は、例えば、融出液の電気伝導度を測定することにより行うことができる。
【0030】
本発明の処理方法において、固相と液相の分離方法は、廃液中の懸濁固形分(SS)の少なくとも一部分を液相から分離することができれば特に制限はなく、例えば、凍結させた植物廃液をネットのような篩上に乗せ、滴下する液体成分を回収することにより行うことができる。使用する篩は、椰子油廃液に含有されるSSの大きさなどに応じて適宜設定することができるが、通常、メッシュサイズ10~1000程度のものを用いることができ、40~400程度のものが好ましい。
【0031】
本発明の処理方法では、後期融出分のうち、そのままでは資源エネルギーとならない不要な部分を再処理することにより、廃液の資源化、処理液に含有される有機成分および/又は無機成分の量のさらなる低減化、廃液からのエネルギー回収を行うことができる。
【0032】
具体的には、資源エネルギーとならない不要な部分を、次のような追加処理の少なくとも1つに供する:微生物処理を含む生物手法、活性炭処理、蒸発法および膜分離法を含む物理化学的手法、並びに亜臨界化学反応および超臨界化学反応を含む化学的手法。
【0033】
微生物処理の一例としては、メタン醗酵による処理も可能である。
活性炭処理に供することにより、残存有機物を吸着除去することができる。
【0034】
蒸発法に供することにより、大部分の清澄な浄化水と少量の濃縮廃液が得られる。この再処理により浄化した処理水は植物油製造段階におけるプロセス水として利用することも可能である。また、濃縮廃液は原廃液にリサイクルして再び本発明の処理方法に供することができる。この蒸発法に供する処理液は、本発明の処理方法を経ているので、植物油廃液に含有されていたSSの大部分がすでに除去されている。したがって、従来の問題点であった蒸発釜の保守管理が極めて容易になるという効果を有する。
膜分離法には、例えば、電気透析膜、逆浸透膜のような膜を用いる処理が含まれる。
【0035】
本発明の処理方法において、凍結工程に利用するエネルギーおよび上記追加処理のためのエネルギーの少なくとも一方は、椰子油の製造工程で副生成物として発生する房や実などの固形廃棄物の燃焼エネルギーを用いることがエネルギーコストの観点などから好ましい。
【0036】
次に、本発明の植物油廃液から肥料を製造する方法(以下、「本発明の肥料製造方法」ともいう。)について詳細に説明する。
【0037】
本発明の肥料製造方法は、上記本発明の処理方法における液相を固相から分離する工程で得られる固相の少なくとも一部分(a成分)のみにより、又は前記a成分と、本発明の処理方法における前期融出分の少なくとも一部分(b成分)および/又は本発明の処理方法における後期融出分の少なくとも一部分(c成分)とを合せることにより、植物油廃液から肥料を製造する方法である。
【0038】
上記a~c成分の混合の組み合わせおよびその割合は特に制限はなく、生成する固相に含有されるSSの量、融解液中の有機成分および無機成分の量等に応じて適宜設定することができる。また、a成分としては、本発明の処理方法で得られる固相の少なくとも一部であればよいが、全量であることが肥料の有効性の観点などから好ましい。
【0039】
上述したように、固液分離工程で得られる固相には、セルロース、ヘミセルロース、リグノセルロースなど椰子油廃液中に懸濁していた固形分と、椰子油廃液中に溶解していた有機酸などの有機物と、アンモニア、リン、カリ、マグネシウムなどの無機物が含まれている。これらの成分のうち、特に、アンモニア、リン、カリは、肥料として有用な成分(以下。「肥料有効成分」ともいう。)である。
【0040】
本発明の肥料製造方法により製造される肥料は、特に上記b成分を用いることにより、肥料中に含有される肥料有効成分の濃度を未処理の植物油廃液中に含有される肥料有効成分の濃度よりも顕著に高くすることができる。
【0041】
本発明の肥料製造方法により製造された肥料は、椰子油プランテーションなどの植物を栽培するための肥料として施すことにより植物油廃液をリサイクルすることができる。このような植物油廃液をリサイクルする態様も本発明に含まれる。
【0042】
上記従来技術の欄で述べたように、椰子油廃液は量的に膨大であることから廃液全量をリサイクルすることが困難であった。これに対して、本発明の肥料リサイクル法を油椰子に適用して得られる肥料は、従来肥料として用いていた未処理の椰子油と比較して肥料有効成分の濃度が顕著に高い。したがって、リサイクルに回すことのできる廃液の量を増加させることができる結果、廃棄部分を低下させることができ、廃液を有効利用できる。さらに、廃棄物量を減らし、自然環境への悪影響を抑えることもできる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
椰子油廃液をマレーシア、クアラルンプール郊外、デンキルに位置する椰子油工場から得た。これを一定量(200g)カップに入れ、-20℃のフリーザーで一夜凍結させた。翌朝、凍結した椰子油廃液を400メッシュのプラスチック篩の上に置き、室温(25℃)で融解させた。融解液は、融解開始時から、各画分の量を20~25mLづつ9画分に分取した。
【0045】
以下の表1に画分毎のCOD値、TS(総固形分)およびSS(懸濁固形分)の濃度を示す。原料とした椰子油廃液中の総CODは、30900mg/L、TSは、45180mg/L、SSは、17500mg/Lであった。
【0046】
【表1】
JP0003603114B2_000002t.gif【0047】
上記表1に示すように、第1~3画分までのCOD値が、原料である椰子油廃液中のCOD値よりも高かった。これらの第1~3画分までを前期融出分とし、第4~9画分を後期融出分として回収した。前期融出分のCOD(51700mg/L)は、椰子油廃液のCODの約1.7倍であった。
また、この1~3フラクションとSS残渣を混合させることで、濃縮液肥としての利用が可能となる。
【0048】
(実施例2)
別の椰子油廃液(200mL、COD:24900mg/L)を用いて、実施例1と同様に-20℃まで冷却し、室温で融解させた。表2にフラクション毎のCOD値、TS(総固形分)およびSS(懸濁固形分)の濃度を示す。
【0049】
【表2】
JP0003603114B2_000003t.gif【0050】
上記表2に示すように、第1~3画分までのCOD値が、原料である椰子油廃液中のCOD値よりも高かった。これらの第3画分までを前期融出分とし、第4~9画分を後期融出分として回収することにより、椰子油廃液中の有機成分の量を大幅に低下させることができる。
【0051】
(実施例3)
別の椰子油廃液(200mL、COD:274000mg/L)を用いて、-80℃にまで凍結したこと以外は実施例1と同様に実施した、室温で融解させた。表3にフラクション毎のCOD値、TS(総固形分)およびSS(懸濁固形分)の濃度を示す。
【0052】
【表3】
JP0003603114B2_000004t.gif【0053】
上記表3に示すように、第1~4画分までのCOD値が、原料である椰子油廃液中のCOD値よりも高かった。これらの第4画分までを前期融出分とし、第5~9画分を後期融出分として回収することにより、椰子油廃液中の有機成分の量を大幅に低下させることができる。
【0054】
(実施例4)
以上、比較的小スケールでの実施例を説明したが、本発明の処理方法、本発明の肥料製造方法、および本発明のリサイクル方法は、特に、椰子油プランテーションに近接する椰子油製造工場において排出される椰子油廃液に適用した場合に有用である。図2には、これらの本発明の方法を、椰子油プランテーションから得られる椰子から椰子油を製造する工場において排出される廃液等に適用した場合の物質収支を示す。
【0055】
図2に示すように、本発明の各方法を実際の椰子油プランテーションに適用することにより、従来は廃棄され、環境に悪影響を及ぼすこともあった椰子油工場から生成される副生成物を肥料などに資源化できるとともに、廃棄物を環境に悪影響を及ぼさない状態にすることができる。また、本発明の各方法の実施のためのエネルギーは、廃棄物の燃焼エネルギーを転用することができるので、実施のためのエネルギーコストを低く押えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の工程を説明するブロック図である。
【図2】図2は、標準的な椰子油工場での物質収支を説明する図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1