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明細書 :生ゴミをリサイクルする方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4006518号 (P4006518)
公開番号 特開2003-260450 (P2003-260450A)
登録日 平成19年9月7日(2007.9.7)
発行日 平成19年11月14日(2007.11.14)
公開日 平成15年9月16日(2003.9.16)
発明の名称または考案の名称 生ゴミをリサイクルする方法
国際特許分類 B09B   3/00        (2006.01)
B65F   1/00        (2006.01)
FI B09B 3/00 ZABC
B09B 3/00 ZBPD
B09B 3/00 304Z
B65F 1/00 J
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2002-381840 (P2002-381840)
分割の表示 特願2000-043113 (P2000-043113)の分割、【原出願日】平成12年2月21日(2000.2.21)
出願日 平成14年12月27日(2002.12.27)
審査請求日 平成14年12月27日(2002.12.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】白井 義人
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】星野 紹英
参考文献・文献 特開2001-232331(JP,A)
調査した分野 B09B 3/00 ~ 5/00
B65F 1/00
C05F 9/02
C08J 11/16
特許請求の範囲 【請求項1】
ポリ乳酸を介する生ゴミのリサイクル方法において、
(1)生ゴミをポリ乳酸袋に収容する工程と、
(2)前記工程1でポリ乳酸袋に収容した生ゴミを回収する工程と、
(3)前記工程2で回収した生ゴミとポリ乳酸袋を殺菌状態にした後に乳酸発酵に供し、乳酸を得る工程であって、
前記菌状態が、前記ポリ乳酸袋に収容された生ゴミとアルカリ性溶液との混合物を得ることにより創製されるものであり、前記アルカリ性溶液に含有されるアルカリの量が、前記生ゴミを菌状態にするために充分であり、かつ生成する乳酸量に対して等モル以下である工程と、
(4)前記工程3で得た乳酸からポリ乳酸袋を製造する工程と、
(5)前記工程4で製造したポリ乳酸袋に生ゴミを収容する工程と
を具備することにより、前記工程1に戻ることを特徴とする生ゴミをリサイクルする方法。
【請求項2】
前記殺菌状態が、工程3での乳酸発酵に悪影響を及ぼさない細菌数以下の状態であることを特徴とする請求項1に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【請求項3】
前記アルカリ性溶液が、アンモニア、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、及び炭酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩からなる群から選択されるアルカリ性化合物の水溶液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【請求項4】
前記工程3の乳酸発酵が、連続法又は半回分法により行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【請求項5】
前記工程3の乳酸発酵が、回分法により行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【請求項6】
前記工程2のポリ乳酸袋に収容された生ゴミが、乾燥状態にあることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【請求項7】
前記工程2のポリ乳酸袋に収容された生ゴミが、湿潤状態にあることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生ゴミをリサイクルする方法に関する。
より詳細には、本発明は、生ゴミをポリ乳酸袋に収容し、これを回収し、回収した生ゴミを乳酸発酵に供することにより乳酸を得、この乳酸を用いてポリ乳酸袋を製造し、このポリ乳酸袋に生ゴミを収容することにより、生ゴミをリサイクルする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴミの焼却によるダイオキシンの発生を初めとして、ゴミによる環境破壊が大きな問題になっている。家庭やレストラン等の事業所から廃棄される生ゴミについては、これを堆肥化したり、これを原料として乳酸発酵することにより、資源化する試みが成されている。乳酸発酵法により生ゴミを処理する方法は、生成物である乳酸を生分解性プラスチックの原料として用い得ることから、有効な生ゴミの資源化法の一つであると考えられている。
【0003】
しかしながら、家庭や事業所から廃棄される生ゴミは、通常、ポリエチレン等の非生分解性の袋に収容された状態で回収されている。このような生ゴミを乳酸発酵により資源化するためには、予め、生ゴミとポリエチレン袋等を分別するための煩雑な前処理工程が必要となり、生ゴミの資源化コストを上昇させる原因となっている。さらに、分別したポリエチレン袋等は、焼却、埋め立て等により廃棄せざるを得ず、環境破壊の問題は完全には解決されていない。
【0004】
ポリ乳酸袋中で乾燥された生ゴミを原料として乳酸発酵を行うことが非特許文献1に記載されている。この非特許文献1には、ポリ乳酸袋で乾燥された生ゴミに水を加え、間歇pH制御法により自然乳酸発酵を行うことが記載されている。この間歇pH制御法によれば、標準生ゴミであれば乾燥させても覆水することにより自然乳酸発酵ができることが記載されている。また、この非特許文献1には、乳酸菌Lactobacillus rhamunosusを植菌し、発酵pHを酸性側(pH6)に制御することも記載されている。
【0006】
また、生ゴミ等の有機廃棄物を原料にして高い選択性と濃度で乳酸を廉価に生成させることを目的とする、有機廃棄物を原料とする乳酸の製造方法が特許文献1に記載されている。具体的には、この特許文献1には、有機廃棄物を主体とする原料を発酵させて弱酸性とする発酵工程と、弱酸性となった前記原料にアルカリ剤を添加してpHを上昇させるアルカリ剤添加工程とを繰り返して行い、乳酸を製造する方法が記載されている。
【0009】
【非特許文献1】
白井義人、他1名、ポリ乳酸袋中で乾燥された生ゴミを原料とする乳酸発酵、化学工学会秋季大会研究発表講演要旨集、日本、1999年 8月26日、32巻、137頁
【特許文献1】
特開平11-285397号公報
【特許文献2】
白井義人、他2名、生ゴミのL乳酸発酵、化学工学会年会研究発表講演要旨集、日本、1999年、64回、200頁
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するために成されたものであり、具体的には、環境破壊を伴うことなく、生ゴミを処分する方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題は、次の生ゴミのリサイクル方法により解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、次の方法を提供する。
【0012】
(I) ポリ乳酸を介する生ゴミのリサイクル方法において、
(1)生ゴミをポリ乳酸袋に収容する工程と、
(2)前記工程1でポリ乳酸袋に収容した生ゴミを回収する工程と、
(3)前記工程2で回収した生ゴミとポリ乳酸袋を殺菌状態にした後に乳酸発酵に供し、乳酸を得る工程であって、
前記滅菌状態が、前記ポリ乳酸袋に収容された生ゴミとアルカリ性溶液との混合物を得ることにより創製されるものであり、前記アルカリ性溶液に含有されるアルカリの量が、前記生ゴミを滅菌状態にするために充分であり、かつ生成する乳酸量に対して等モル以下である工程と、
(4)前記工程3で得た乳酸からポリ乳酸袋を製造する工程と、
(5)前記工程4で製造したポリ乳酸袋に生ゴミを収容する工程と
を具備することにより、前記工程1に戻ることを特徴とする生ゴミをリサイクルする方法。
【0013】
(II) 前記殺菌状態が、工程3での乳酸発酵に悪影響を及ぼさない細菌数以下の状態であることを特徴とする(I)に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【0014】
(III) 前記アルカリ性溶液が、アンモニア、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、及び炭酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩からなる群から選択されるアルカリ性化合物の水溶液であることを特徴とする(I)又は(II)に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【0015】
(IV) 前記工程3の乳酸発酵が、連続法又は半回分法により行われることを特徴とする(I)ないし(III)のいずれか1に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【0016】
(V) 前記工程3の乳酸発酵が、回分法により行われることを特徴とする(I)ないし(III)のいずれか1に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【0017】
(VI) 前記工程2のポリ乳酸袋に収容された生ゴミが、乾燥状態にあることを特徴とする(I)ないし(V)のいずれか1に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【0018】
(VII) 前記工程2のポリ乳酸袋に収容された生ゴミが、湿潤状態にあることを特徴とする(I)ないし(V)のいずれか1に記載の生ゴミをリサイクルする方法。
【発明の実施の形態】
以下、本発明の生ゴミのリサイクル法について詳細に説明する。
本発明の方法において用いる生ゴミとは、通常、家庭、レストラン等から廃棄される食物を含むゴミを意味する。食物には加熱等による加工前のものも、加工後の、いわゆる残飯も含まれる。また、装置に閉塞等の支障がない限りにおいては、あるいは、添加微生物に毒性を示さない限りにおいては、紙、プラスチック、木片のような、通常、「燃えるゴミ」として廃棄されるものの中に含まれるものが混入していてもよい。
【0019】
通常、本発明の方法において用いる生ゴミを構成する材料としては、野菜、果物、肉・魚等の海産物、飯、パン、茶かす等が含まれるが、これらに限定されるものではない。例えば、焼酎蒸留粕やビール麦汁粕、おから、糖蜜、廃棄でんぷん粉、あるいは生産調整された農産物、魚のあら等漁業廃棄物等の適切な組み合わせでもかまわない。
【0020】
本発明の生ゴミをリサイクルする方法の各工程のブロック図を図1に示す。
【0021】
本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程1において、生ゴミをポリ乳酸袋に収容する。
ポリ乳酸袋は、本発明者が関与する科学技術庁の大型プロジェクトである生活者ニーズ対応研究を通じ、生ゴミの搬送に用いることを提案しているものである。ポリ乳酸袋は、市販されているものを用いることができる。
【0022】
ポリ乳酸袋に収容した生ゴミは、周囲の気温、湿度等により異なるが、50℃程度の雰囲気に放置することにより、通常、1週間~10日間でポリ乳酸袋外に生ゴミの水分が放出され、乾燥状態になる。ここで、乾燥状態とは、含水量30%以下をいう。本発明の方法では、このような乾燥状態になった生ゴミをリサイクルに供することも、湿潤状態の生ゴミをリサイクルに供することもできる。ここで、湿潤状態とは、乾燥状態よりも含水量が多い状態をいう。
【0023】
なお、本発明において、生ゴミを収容すべきものをポリ乳酸袋と規定しているが、ポリ乳酸により形成されるものであり、生ゴミを密封状態で収容することができ、生ゴミの水分を外に溶出し得るものであればその形状、厚み等は特に制限はない。
【0024】
次に、本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程2において、工程1でポリ乳酸袋に収容した生ゴミを回収する。回収の方法に特に制限はなく、例えば、従来、市町村等で行っている回収方法で行うことができる。工程2で回収するものには、ポリ乳酸袋と生ゴミ以外の物質が含まれないことが好ましい。
【0025】
次に、本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程3において、工程2で回収した生ゴミを乳酸発酵に供し、乳酸を得る。
【0026】
本発明の工程3には、第1の態様が含まれる。また、工程3には、参考態様として、第2の態様がある。図2及び図3に、それぞれ第1の態様及び第2の態様の各工程のブロック図を示す。
【0027】
図2に示すように、本発明の工程3の第1の態様において、乳酸発酵には、(A)本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程2で回収したポリ乳酸袋に収容された生ゴミとアルカリ性溶液との混合物を得る工程と、(B)微生物を用いる乳酸発酵に前記工程Aで得られた混合物を供し、乳酸を得る工程と、(C)前記工程Bの乳酸を、後述する工程4のポリ乳酸袋の原料に供する工程が含まれる。
【0028】
図3に示すように、工程3の第2の態様において、乳酸発酵には、(a)本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程2で回収したポリ乳酸袋に収容された生ゴミと、ポリ乳酸袋とを分別する工程と、(b)前記工程aで分別した生ゴミを殺菌する工程と、(c)前記工程bで殺菌した生ゴミを微生物による乳酸発酵に供し、乳酸を得る工程と、(d)前記工程aで分別したポリ乳酸袋とアルカリ性溶液とを混合し、乳酸を得る工程と、(e)前記工程c及び工程dで得られた乳酸を合わせ、これを後述する工程4のポリ乳酸袋の原料に供する工程が含まれる。この第2の態様については、後述する。
【0029】
以下、本発明の工程3で行う乳酸発酵の第1の態様について説明する。
第1の態様の工程Aにおいて、生ゴミとアルカリ性溶液とを混合する。
【0030】
用いる生ゴミの量に特に制限はなく、混合に用いるための反応槽の容量等に応じて適宜設定することができるが、第1の態様を効率よく行うためには、乾燥重量で10%前後の生ゴミ濃度であることが好ましい。一例を挙げると、10リットル(以下、「L」と表記する。)程度の容量の反応槽に対して、乾燥重量で1kg(湿潤状態で5kg)程度の生ゴミを用いることができる。反応槽の容量は、原料として用いる生ゴミの量等に応じて適宜設定することができるが、本発明の方法を家庭等から回収される生ゴミを用いて実施する場合、例えば、500m3程度の大きさの反応槽に適用することができる。反応槽の容量が大きいと、反応槽に連結される導管等の径も大きくし得るので、アルカリに溶解し得ない物質による導管の閉塞等の可能性を低くすることができる。
【0031】
生ゴミと混合すべきアルカリ性溶液としては、生ゴミと混合して混合物の液性をアルカリ性に、好ましくはpH値を9.5以上にし得るものであり、かつ次の工程Bにおける乳酸発酵に悪影響を及ぼさないものである限り特に制限はない。一例を挙げると、アンモニア、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、及び炭酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩(例えば、炭酸カルシウム)の水溶液を用いることができる。
【0032】
アルカリ性溶液の量は、以下に詳細に説明する工程Bにおける乳酸発酵により生成する乳酸に対して、等モル量以下のアルカリ物質に対応する量を用いることができる。
【0033】
乳酸発酵により生成する乳酸の量は、用いる生ゴミの種類、用いる微生物の種類等により異なる。従って、アルカリ性溶液の使用量は、本発明の方法を適用する前に、予め少量の生ゴミ試料を乳酸発酵に供し、生成する乳酸量を測定し、その値から概算しておくことが望ましい。
【0034】
アルカリ性溶液の使用量が少なすぎると、アルカリ性に耐性の弱い細菌の充分な殺菌が行えず、その結果、次の工程Bにおいて、殺菌されずに残留している雑菌が繁殖し得るので好ましくない。
【0035】
生ゴミとアルカリ性溶液は、混合を充分行うために撹拌することが好ましい。撹拌時間は、生ゴミとアルカリ性溶液との混合が充分に行われる限り、特に制限はない。本発明の方法を家庭等から回収される生ゴミを用いて実施する場合、通常、滞留時間を2日~10日程度に設定することができる。
【0036】
生ゴミとアルカリ性溶液の混合は、室温(10~30℃)で行うことができるが、ポリ乳酸袋の分解、あるいは効率的な殺菌の観点からは50~80℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0037】
第1の態様の工程Aで得られる混合物において、糖濃度は、通常、50g/L~100g/Lの範囲に設定することができる。
【0038】
本発明の生ゴミをリサイクルする方法において、リサイクルに供する生ゴミには、通常、Bacillus属、Pseudomonas属、Closeridiam属等の一般細菌が含まれていることが知られている。本発明の方法において、生ゴミに含まれる細菌は、この態様1の工程Aで用いるアルカリにより殺菌され、好ましくは、殺菌状態にある生ゴミとアルカリ性溶液との混合物が、次の工程Bに供される。ここで、「殺菌状態にある」とは、工程Aで得られる混合物中の細菌数が、工程Bにおける乳酸発酵に悪影響を及ぼさない数であることをいう。具体的には、工程Bにおける反応槽内の細菌濃度が、5万CFU/ミリリットル(以下、「mL」と表記する。)以下であることが好ましい。通常、生ゴミ中には、1千万CFU/mL程度の細菌が含まれているので、工程Aで得られる混合物に含有される細菌数が、1/100以下になれば充分に殺菌したことになる。細菌のコロニー数は、日本生物工業会編、生物工学実験書に記載される方法により計測することができる。
【0039】
上述した第1の態様の工程Aのアルカリ性溶液の使用は、殺菌を目的とするものである。殺菌は、従来行われている蒸気により行うこともできる。しかしながら、蒸気による殺菌方法は、エネルギーと時間を要するため、また、耐圧構造を持った高価な装置が必要になり、生ゴミのリサイクルに要するコスト上昇をもたらすことがある。したがって、コスト等を考慮すると、アルカリ性溶液の使用が好ましい。
【0040】
第1の態様の工程Bにおいて、前記工程Aで得られた混合物の存在下に微生物を用いた乳酸発酵をする。微生物を用いた乳酸発酵としては、連続法、半回分法及び回分法のいずれの方法でもよい。
【0041】
ここで、連続法とは、発酵に供する物質、具体的には、上記工程Aで得られた混合物を、発酵槽に連続的に供給し、供給流量と等しい流量で発酵液を発酵槽から回収する方法をいう。ただし、連続的に供給とは、一瞬たりとも供給が途絶えないことを意味するものではなく、一定の間歇をおいて断続的に供給することも含まれる。この場合、発酵液の回収流量は、供給流量と等しくする。
【0042】
また、半回分法とは、発酵に供する物質、具体的には、上記工程Aで得られた混合物の発酵槽への供給は連続的であるが、発酵液は回収せず、発酵槽に残留させる方法をいう。この半回分法における連続的供給も、連続法の場合と同様に、一瞬たりとも供給が途絶えないことを意味するものではなく、一定の間歇をおいて断続的に供給することが含まれる。
【0043】
また、回分法とは、上記工程Aで得られた混合物の発酵槽への供給が一旦行われた後は、発酵液は回収されずに、発酵槽に残留させる方法をいう。
【0044】
乳酸発酵に用いる微生物に特に制限はなく、生ゴミに作用して乳酸を生成し得るものであれば特に制限はない。微生物の一例としては、乳酸菌、Lactobacillus属、Streptococcus属、Pediococcus属、Leucomostoc属を挙げることができる。これらのうち、乳酸菌は、乳酸のみを生産するホモ乳酸菌が工業生産の観点から好ましく用いることができる。これらの乳酸菌は、例えば、ATCC、IFO等のカタログに記載されているものを用いることができる。
【0045】
連続法による乳酸発酵の条件は、用いる微生物の種類、その至適pH、至適温度、糖消費速度、乳酸生成速度、工程Aで得られる混合物の量、用いる発酵槽の大きさ等に応じて適宜設定することができる。
【0046】
工程Bでの滞留時間は、2~10日、好ましくは、2.5日~7日の範囲に設定することができる。この滞留時間は、本発明の方法において用いる生ゴミを家庭等から収集してくる頻度等も考慮したものである。
【0047】
発酵槽中の微生物濃度は、109~1010CFU/mLの範囲に設定することができる。
【0048】
発酵槽の容量は、原料として用いる生ゴミの量等に応じて適宜設定することができるが、本発明の方法を家庭等から回収される生ゴミを用いて実施する場合、例えば、500m3程度の大きさの発酵槽に適用することができる。
【0049】
発酵槽中のpHは、発酵が進むにつれて、工程Aで用いるアルカリ性物質の量や、生成する乳酸の量に応じて変化し得る。従って、必要に応じて、硫酸等の酸性物質のようなpHを調節し得る物質を添加することにより至適pHに調節することができる。しかしながら、このような工程は、追加の工程になり、本発明の方法を実施するためのコスト上昇を招く。従って、工程Aで用いるアルカリ性物質の量を、生成する乳酸と等モル量以下になるように設定することが好ましい。
【0050】
発酵槽のpH値は、4~9の範囲、好ましくは4.5~6.0の範囲に、温度は、20~80℃の範囲、好ましくは、30~70℃の範囲に設定することができる。発酵時間は特に制限はなく、微生物が乳酸発酵を行い得る条件下にある限り、連続して行うことができる。発酵槽中の雰囲気は、用いる微生物に応じて嫌気的にも好気的にもすることができる。微生物は、発酵槽中で遊離の状態にあっても、例えば、ウレタンフォームのような担体に担持されていてもよい。
【0051】
一方、半回分法による乳酸発酵の条件は、発酵槽から発酵液を回収しないこと以外は、連続法による発酵条件と同様に設定することができる。
【0052】
本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程3における乳酸発酵は、通常、乳酸発酵に用いられる装置を用いて実施することができる。以下に、連続発酵法を行う場合の装置の一例を図4を参照して以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
図4は、本発明の工程3の第1の態様において用い得る連続発酵装置の概略図である。
図4の連続発酵装置は、発酵部I、生ゴミ含有アルカリ溶液供給部II、及び発酵液回収部IIIから構成されている。なお、図4の装置は温度制御装置を備えていないが、必要に応じて発酵部Iには温度制御手段を設けることができる。
【0054】
図4に示す装置において、発酵部Iには、発酵槽1がある。微生物5を、発酵液7中に懸濁させる。発酵槽1は、気圧調整手段9、撹拌手段11a、11b、発酵液のレベル制御手段13a、13bを備えている。レベル制御手段13a、13bは、後述するポンプ21と連動し、発酵槽1内の発酵液7の液面レベルを所定の位置に維持し、発酵槽内の発酵液量が一定となるように制御する。生ゴミ含有アルカリ溶液供給部IIには、本発明の工程Aにより調製された生ゴミとアルカリ性溶液との混合物が充填されている。容器15から生ゴミ含有アルカリ溶液17を、ライン19により、ポンプ21を用いて発酵槽1へ導く。発酵槽1の底面付近に出口31を設け、発酵液7を、ライン33を通り、ポンプ35を用いて回収部IIIのコレクタ39に回収する。
【0055】
次に、本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程3の参考態様である第2の態様について説明する。
図3に示すように、第2の態様の乳酸発酵には、(a)本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程2で回収したポリ乳酸袋に収容された生ゴミと、ポリ乳酸袋とを分別する工程と、(b)前記工程aで分別した生ゴミを殺菌する工程と、(c)前記工程bで殺菌した生ゴミを微生物による乳酸発酵に供し、乳酸を得る工程と、(d)前記工程aで分別したポリ乳酸袋とアルカリ性溶液とを混合し、乳酸を得る工程と、(e)前記工程c及び工程dで得られた乳酸を合わせ、これを後述する本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程4のポリ乳酸袋の原料に供する工程が含まれる。
【0056】
この第2の態様の工程aにおいて、生ゴミとポリ乳酸袋の分別方法は、分別が完全に行える限り特に制限はなく、例えば、ポリ乳酸袋を破砕することにより分別することができる。
【0057】
態様2の工程bにおいて、分別した生ゴミを殺菌する。殺菌方法は、工程bにおける乳酸発酵に悪影響を及ぼさない数以下の細菌数になればに特に制限はなく、例えば、上述した第1の態様のアルカリ性溶液を用いて行うことも、蒸気により行うこともできる。蒸気により殺菌する場合の条件としては、例えば、120℃、2気圧で行うことができる。
【0058】
殺菌を蒸気により行う方法及びそれに用いる装置は、従来、行われている方法及び装置で行うことができる。
【0059】
第2の態様の工程cにおいて、殺菌した生ゴミを微生物による乳酸発酵に供し、乳酸を得る。この乳酸発酵は、上述した第1の態様の連続法又は半回分法により行うことも、回分法で行うこともできる。
回分法で行う場合、乳酸発酵終了時の発酵液のpH値が3.5~5.0の範囲に設定することが、防腐の観点から好ましい。
【0060】
一方、第2の態様の工程aで分別したポリ乳酸袋は、アルカリ性溶液と混合することにより溶解させ、乳酸を得る(工程d)。
用いるアルカリ性溶液を構成するアルカリ物質としては、上記第1の態様で述べたアルカリ性溶液を用いることができる。
【0061】
アルカリ性溶液の量は、ポリ乳酸袋を溶解させた後の反応液のpH値が9.0~14の範囲になるように設定することがポリ乳酸袋の溶解の観点から好ましい。一例を挙げると、1kg程度の重量のポリ乳酸袋に対しては、25重量%の濃度のアンモニア水を4L程度用いることができる。
【0062】
工程2の工程eにおいて、上記工程c及び工程dで得られた乳酸を合わせ、本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程4、すなわち、ポリ乳酸袋を製造する工程におけるポリ乳酸袋の原料に供する。
乳酸からポリ乳酸袋を製造する方法は、例えば、「生分解性プラスチックハンドブック」、土肥義治編に記載されている。
【0063】
上記工程4で得られたポリ乳酸袋を、本発明の生ゴミをリサイクルする方法の工程1において、生ゴミを収容するためのポリ乳酸袋として利用することにより、生ゴミのリサイクルが完成する。
【0064】
【実施例】
本発明の実施例を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
家庭から排出される生ゴミのモデルとして野菜40、果物30、肉・魚14、飯10、茶かす6(何れも重量)の割合で調整した合成ゴミを以下の実施例で用いた。
【0066】
(実施例1)
上記合成ゴミ500gを5gのポリ乳酸袋(島津製作所社製)に入れ、室温で1日間経過したもの(含水量80%)を、回収し、1%アンモニア水500mLの入ったタンクに入れた。そのまま袋を溶解させ、生ゴミとアンモニア水を混合した。予め1Lのバイオリアクターに同様な生ゴミと水の混合物を500mL仕込み、これを回分発酵させた。発酵温度は37℃、回分発酵4日目からアンモニア水中で処理された生ゴミを用いて連続発酵を開始した。乳酸菌にはLactobacillus rhamnosusを用いた。生ゴミの滞留時間は4日とした。実施結果を図5及び図6のグラフに示す。
【0067】
図5は、合成ゴミとアンモニア水との混合物(37℃)中の細菌数を、合成ゴミ単独(アンモニア無添加)の場合、及び合成ゴミとアンモニア水とを混合する際の温度を70℃にした場合の細菌数と比較したものである。
図5において、縦軸は、細菌数を表す。横軸は、合成ゴミにアンモニア水を添加した後の時間を表す。
【0068】
図5の結果から、アンモニアを添加することにより、混合物中の細菌数は顕著に減少し、大きな殺菌効果があることが明らかである。細菌数の減少幅は、混合物の温度を70℃に設定したほうが、37℃に設定した場合よりも大きいことが明らかである。
【0069】
図6は、連続発酵を開始した後の発酵液中の乳酸、酢酸及び蟻酸の量とpHの変化を示すグラフである。
図6において、縦軸(左)は、pHを表し、縦軸(右)は、各酸の濃度を表す。横軸は、連続発酵を開始してからの時間を表す。
【0070】
図6の結果から、本発明の生ゴミのリサイクル方法の工程3で行う乳酸発酵により、安定に乳酸のみが生成していることが明らかである。
【0071】
(参考例1)
上記合成ゴミ500gを5gのポリ乳酸袋(島津製作所社製)に入れた。70℃で3日経過後、含水量が30%になったものを、収集後、ポリ乳酸袋を破砕し、内容の生ゴミと破砕されたポリ乳酸袋を分けた。生ゴミには500gの水を加え、発酵槽に入れて蒸気殺菌を施した。発酵温度は37℃、pH6に調整した。乳酸菌にはLactobacillus rhamnosusを用いた。一方、ポリ乳酸袋の方は25%アンモニア水50mLに入れて溶解させた。発酵槽は乳酸の発生に伴ってpHが低下するが、pHを6に制御するために、このポリ乳酸袋を溶解したアンモニア水を添加した。ポリ乳酸は25%アンモニア水中で完全に溶解し、乳酸アンモニアとしてアンモニア水中に共存したが、pH調整のためこれらを添加した際、発酵槽に加えら生成乳酸と共存し、精製、合成後、再びポリ乳酸となる。発酵4日後、ポリ乳酸袋を溶かしたアンモニア水はすべてpH調整のため消費され、乳酸濃度は65g/Lに達し、当初見込みどおりの結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の方法の工程を示すブロック図である。
【図2】 図2は、本発明の方法の工程3(第1の態様)の工程を示すブロック図である。
【図3】 図3は、本発明の方法の工程3の参考態様(第2の態様)の工程を示すブロック図である。
【図4】 図4は、本発明の方法を実施するための連続発酵装置の一例の概略図である。
【図5】 図5は、アルカリ性溶液による生ゴミの殺菌状態を表すグラフである。
【図6】 図6は、連続発酵により生成する乳酸等の生成量を表すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
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【図5】
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【図6】
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