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明細書 :有機半導体材料および有機薄膜トランジスタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5392706号 (P5392706)
登録日 平成25年10月25日(2013.10.25)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 有機半導体材料および有機薄膜トランジスタ
国際特許分類 H01L  51/30        (2006.01)
H01L  51/05        (2006.01)
H01L  51/40        (2006.01)
H01L  29/786       (2006.01)
H01L  21/336       (2006.01)
C07C  13/62        (2006.01)
C07D 495/04        (2006.01)
FI H01L 29/28 250H
H01L 29/28 100A
H01L 29/28 310J
H01L 29/78 618B
H01L 29/78 618A
C07C 13/62
C07D 495/04 101
請求項の数または発明の数 9
全頁数 22
出願番号 特願2009-077398 (P2009-077398)
出願日 平成21年3月26日(2009.3.26)
審査請求日 平成23年12月5日(2011.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
発明者または考案者 【氏名】森口 哲次
【氏名】永松 秀一
【氏名】高嶋 授
【氏名】岡内 辰夫
【氏名】溝口 勝大
【氏名】金藤 敬一
【氏名】早瀬 修二
個別代理人の代理人 【識別番号】100099508、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 久
【識別番号】100093285、【弁理士】、【氏名又は名称】久保山 隆
【識別番号】100116296、【弁理士】、【氏名又は名称】堀田 幹生
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含むことを特徴とする有機半導体材料。【化1】
JP0005392706B2_000037t.gif

(但し、R1は、非置換もしくは置換の炭素数3から8の分枝アルキル基、または、非置換もしくは置換の炭素数3から10のシクロアルキル基を表し、
2は、水素原子、または、非置換もしくは置換のチオフェン残基を少なくとも1つまたは2つ以上組み合わせて構成された構造を表し、Xは、硫黄原子を表す。)
【請求項2】
前記化合物が、点対称中心を有する請求項1記載の有機半導体材料。
【請求項3】
前記一般式(1)が、下記一般式(1A)である請求項1記載の有機半導体材料。【化3】
JP0005392706B2_000038t.gif

【請求項4】
前記化合物が、結晶性を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の有機半導体材料。
【請求項5】
前記一般式(1)において、R1が、イソプロピル基、t-ブチル基、または、アダマンチル基である請求項1から4のいずれかに記載の有機半導体材料。
【請求項6】
前記一般式(1)において、R1が、t-ブチル基である請求項1から4のいずれかに記載の有機半導体材料。
【請求項7】
少なくともゲート電極、ゲート絶縁層、有機半導体層、ソース電極、ドレイン電極を有する有機薄膜トランジスタであって、
前記有機半導体層が、請求項1から6のいずれかに記載の有機半導体材料からなることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載の有機半導体材料を含む有機溶媒を塗布することで形成することを特徴とする有機半導体層の製造方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の有機半導体材料を蒸着することによって、有機半導体層を形成することを特徴とする有機半導体層の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体材料および該有機半導体材料からなる有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、キャリア輸送性を有する有機化合物を利用した有機電子デバイスの開発が活発に行われている。このような有機化合物は、有機EL素子用の発光材料、電荷注入材料、電荷輸送性材料あるいは有機レーザー発振素子へ応用されている(例えば、特許文献1、2)。また、このような有機化合物の有機薄膜トランジスタへの応用が期待されている。薄膜トランジスタは、液晶表示装置などの表示用スイッチング素子として広く用いられており、従来、この薄膜トランジスタにはアモルファスや多結晶のシリコンが用いられてきたが、安価かつ生産性の面から有機半導体材料を用いたトランジスタが提案されている。かかる有機半導体材料として使用される有機化合物として、種々の報告がなされている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2000-12330号公報
【特許文献2】特開平6-59486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トランジスタ、有機EL素子用の発光材料、電荷注入材料、電荷輸送性材料あるいは有機レーザー発振素子などに使用される有機半導体層としての実用に供するためには、有機半導体材料としてのキャリア移動度が高いことに加え、酸素や水分に対する耐久性及び加工性に優れ、かつ、各種電極材料との化学的、物理的及び電気的な接合特性が優れることなど総合的な性能が不可欠である。
【0005】
また、p型有機半導体には一般的に平面性保持、かさ高い置換基阻害の減少による整列性が必須とされているが、有機溶媒への溶解性の問題や、結晶性、積層性において、分子設計対象構造が極めて限られており、それらの概念にとらわれない新しい構造分子での半導体特性の発現が期待されている。
【0006】
かかる状況下、本発明の目的は、キャリア(正孔)移動度と安定性が高く、容易な製造プロセスで成膜が可能な有機半導体材料と、該材料を有機半導体層に用いた有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ある特定の構造を有する化合物を含有する有機半導体材料が、上記目的を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を含む有機半導体材料。【化1】
JP0005392706B2_000002t.gif


【発明の効果】
【0009】
本発明の有機半導体材料は、十分なキャリア移動度を有し、各種電極材料との化学的、物理的及び電気的接合特性に優れており、かつ、空気や水分への安定性が高いため、有機薄膜トランジスタ用の有機半導体層として実用上総合的な高性能を有し、好適に使用することができる。さらに一般的な有機溶媒への溶解性が高いため、簡便な塗布法によって薄膜を形成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の有機半導体材料からなる有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタの概略構成例(断面図)を示す図である。
【図2】本発明の有機半導体材料からなる有機半導体層を有する有機薄膜トランジスタの他の概略構成例(断面図)を示す図である。
【図3】実施例1の有機薄膜トランジスタの出力特性を示す図である。
【図4】実施例1の有機薄膜トランジスタの伝達特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき詳しく説明する。
(有機半導体材料)
本発明の有機半導体材料は、下記一般式(1)または下記一般式(2)で表される構造を有する化合物を含むことを第1の特徴とする。なお、以下、一般式(1)で表される化合物を「本発明の化合物1」、下記一般式(2)で表される化合物を「本発明の化合物2」ということがある。

【0012】
【化5】
JP0005392706B2_000004t.gif

【0013】
本発明の化合物1は、R1を置換基として有する環員数が4の縮環芳香族分子(置換ピレン)部位と、その両側に六員環と複素元素Xの五員環からなる環員数が2の縮環芳香族分子部位とからなる共役環状構造を介し、R2部位を有する構造である。
また、本発明の化合物2は、R1を置換基として有する環員数が4の縮環芳香族分子(置換ピレン)部位と、その両側に2つの六員環からなる環員数が2の縮環芳香族分子部位とからなる共役環状構造を介し、R2部位を有する構造である。

【0014】
本発明の化合物1および2の特徴は、環員数が4の縮環芳香族分子部位と環員数が2の縮環芳香族分子部位とが単一平面上から対称となるよう歪みを有することにある。
このような単一平面上から対称となるよう歪みを有するため、外場により分子内π電子雲の対称性が崩れにくくなり、分子の揺動が抑えられるという効果がある。

【0015】
さらに、R2が上記環員数が2の縮環芳香族分子部位の対称の位置に置換していることが望ましく、具体的には以下の一般式(1A)、(1B)、(2A)、(2B)及び(2C)が挙げられる。この中でも、一般式(1A)または(2B)が好ましい。【化7】
JP0005392706B2_000006t.gif

【0016】
更に分子内での予め歪ませた束縛構造は、分子内的に注入された正孔キャリアにより形成されるヤンテーラー的分子変形に対し緩和速度の向上を提供し、正孔キャリアの捕獲時間を短縮する換算質量の低量化作用をもたらす。

【0017】
さらに、前記束縛構造は、分子外的にはπ電子共役系の分子間相互作用を強め、分子間での正孔キャリア輸送性能を高めると同時に正孔キャリア輸送を分子外の分極トラップ等から遮蔽する。

【0018】
結果として、本発明の化合物1および2は、p型半導体として、高い分子間相互作用を有しながらも分子面の歪みにより大きなバンドギャップを有し、安定性に優れるという性質を有する。

【0019】
以下、R1、R2、Xについて更に詳しく説明する。

【0020】
上記一般式(1)または上記一般式(2)において、R1は、非置換もしくは置換の炭素数3から8の分枝アルキル基、または、非置換もしくは置換の炭素数3から10のシクロアルキル基であり、本発明の化合物1および2の有機溶媒への溶解性を向上させるという性質がある。
炭素数3から8の分枝アルキル基としては、イソプロピル基、t-ブチル基、t-ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。
炭素数3から10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、複合脂環式炭化水素基であるアダマンチル基などが挙げられる。これら中でも、イソプロピル基(化学式中「i-Pr」と表記する。)、t-ブチル基(化学式中「t-Bu」と表記する。)、または、下記式(3)で表されるアダマンチル基(化学式中「Ad」と表記する場合がある。)が好適であり、t-ブチル基が特に好適である。
また、これらの分枝アルキルおよびシクロアルキル基の水素原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のハロゲン原子(好適にはフッ素原子)に置換されていてもよい。【化12】
JP0005392706B2_000011t.gif

【0021】
上記一般式(1)または上記一般式(2)において、R2は、水素原子、または、非置換もしくは置換のチオフェン残基、非置換もしくは置換のピロール残基、非置換もしくは置換のフラン残基を少なくとも1つまたは2つ以上組み合わせて構成された構造である。

【0022】
さらに、より好適な具体例としては、下記式(4)で表される非置換のオリゴチオフェン残基(n=0~6)、下記式(5)で表される非置換のオリゴピロール残基(n=0~6)、下記式(6)で表される非置換のオリゴフラン残基(n=0~6)、下記式(7)で表される非置換のオリゴビチオフェン残基(n=0~3)やこれらの複合オリゴ残基(但し全体の対称性を崩す配列は除く)が挙げられる。

【0023】
【化13】
JP0005392706B2_000012t.gif

【0024】
また、上記一般式(1)におけるXは、硫黄原子、窒素原子、または、酸素原子を表す。ここで、Xと、R2を構成する複素環残基の複素原子とは同じでも異なっていてもよいが、両者が同じである方が合成が容易である場合が多い。

【0025】
また、本発明の化合物のうち、結晶性を有するものが特に好ましい。結晶性を有すると、分子間距離が近いため電子移動が容易となり、また、分子間の距離が一定であるため電気的特定が安定となるという利点がある。なお、本発明において、「結晶性を有する」とは、XRDにおいて、実質的に2次の反射が確認できることをいう。

【0026】
以上で示される本発明の化合物1および2は、p型半導体としての性質を示し、酸素や水分を特に取り除かなくても十分なキャリア移動度を有する。

【0027】
また、本発明の化合物1および2は、後述する一般的な有機溶媒に可溶である。そのため、適切な溶媒に溶解し必要に応じ添加剤を加えて調製した溶液をキャストコート、スピンコート、スクリーン印刷、インクジェット法などの塗布法による薄膜の形成が可能である。
溶媒としては、本発明の化合物1および2を適切な濃度まで溶解できるものであればよく、特に制限されないが、具体的にはクロロホルムや1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m-クレゾールなどの芳香族系溶媒、N-メチルピロリドン、二硫化炭素などを挙げることができる。

【0028】
本発明における有機半導体層には本発明の化合物1および2から選ばれる材料の1種類を用いてもよく、また複数を組み合わせてもよく、ペンタセン、チオフェンオリゴマー、フラーレンなどの公知の有機半導体を用いて複数の混合薄膜または積層して用いてもよい。

【0029】
上述のように本発明の化合物1および2は、一般的な有機溶媒に可溶性でありながら、空気および水分に対する安定性を有する。そのため、真空蒸着により基板上に設置することもできるが、塗布法によって簡便な装置で特性が良好で信頼性が高い有機薄膜トランジスタ用の有機半導体層を得ることができる。

【0030】
次に、本発明の化合物の具体例を示すが、あくまでも例示であり、本発明の化合物がこれらに限定されるものではない。

【0031】
【化17】
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【0032】
【化19】
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【0033】
【化21】
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【0034】
【化23】
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【0035】
【化25】
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【0036】
【化27】
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【0037】
【化29】
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【0038】
【化31】
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【0039】
(有機薄膜トランジスタ)
本発明の有機半導体材料を有機半導体層として用いた有機薄膜トランジスタの概略構成例(断面図)を図1に示す。
本発明に係る有機薄膜トランジスタ素子10(以下、単に「トランジスタ素子10」ともいう。)は、基板1上に膜状のゲート電極2、ゲート絶縁層3、有機半導体層4を順次積層し、さらに有機半導体層4の上に、膜状の電荷移動錯体層5を介して一対の膜状のソース電極6およびドレイン電極7が形成した構造を有する。なお、ここで示す構成は、本発明の有機半導体材料を有機半導体層として用いた有機薄膜トランジスタの一実施形態である。本発明の有機半導体材料は該形態に限ることなく、例えば、図2に示すような形態でもよく、あらゆる有機薄膜トランジスタに適用できる。

【0040】
基板1は、トランジスタ素子10の自立性を確保するためのものであり、特に材質が限定されないが、例えばガラス基板、各種樹脂基板、Siなどの半導体基板など各種の基板を好適に用いることができる。ここで、基板の加工性や機械強度の観点からは、Si基板が好適に使用される。また、電子ペーパーなどの用途では、ポリエチレンナフタレート(Polyethylene naphthalate, PEN)などの可とう性の高い樹脂が好適に用いられる。また、本実施形態では基板1とゲート電極2とを別の材質として構成するが、トランジスタ素子10の自立性を確保するという観点からは、ゲート電極2に十分な厚みを持たせて、自立膜(自立層)とすることで、基板として兼用することもできる。

【0041】
ゲート電極2は、ソース-ドレイン電流を制御するために用いられる電極である。ゲート電極2の材料としては、導電性のものであれば特に制限はなく、例えば、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、金(Au)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、スズ(Sn)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)などの金属材料、これら金属の酸化物、酸化インジウム・スズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチアジルなどの公知の導電性ポリマーなどを好適に用いることができる。
基板1を使用する場合のゲート電極2の厚さとしては特に制限されるものではないが、通常、10nm~150nmである。
一方、ゲート電極2を基板として兼用する場合には、十分な自立性を持たせるために、ゲート電極2の厚みは、10μm~0.5mmであることが好ましい。

【0042】
ゲート絶縁層3は、ゲート電極2と有機半導体層4の間に設けられるものである。ゲート絶縁層3を構成する材料は上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではなく、具体的には、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミ(Al23)、または酸化タンタル(Ta25)等の金属酸化膜、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリフッ化エチレン、ポリスチレン、ポリキシリレン、セルロース、プルラン、またはサイトップ等の有機化合物の少なくとも一つで構成される絶縁層であればよい。特にゲート電極2を基板として兼用する場合に好適である、Si基板を使用する場合には、その表面を酸化することで形成することができるSiO2をゲート絶縁層3として用いることができる。
ゲート絶縁層3の厚さは、ゲート電極とソース電極の間の絶縁性を確保できればよく、特に制限されるものではないが、通常、100~1000nmである。

【0043】
なお、ゲート絶縁層3にSiO2を使用する場合、有機半導体層4を構成する本発明の有機半導体材料は疎水性が高いため、その表面を疎水化することが好ましい。SiO2を疎水化することで、ゲート絶縁層3と有機半導体層4の界面のトラップ準位が減少するため、特性が向上する。SiO2を疎水化する方法は、特に限定されず従来公知の方法でよいが、シランカップリングによる方法が好適であり、具体的には、アルキルトリクロロシラン(R-SiCl3)またはアルキルトリアルコキシシラン溶液にSiO2基板を浸漬、キュアリング、リンス処理を経て疎水化する方法が挙げられる。
また、PEN基板などの樹脂基板の場合は、基板自身の疎水性が高いため、特に特別な前処理を行うことなく、好適に使用可能であるという利点がある。

【0044】
有機半導体層4は、本発明の有機半導体材料からなる。有機半導体層4をゲート絶縁層3の上に形成する方法は、特に限定されず、公知の成膜(積層)方法を用いることができる。例えば、本発明の有機半導体材料を適切な溶剤に溶解して調製した溶液を、キャストコート、スピンコート、インクジェット法、アブレーション法などの公知の塗布技術によって形成する方法(以下、塗布法)や、真空蒸着などの気相成膜法などが挙げられる。

【0045】
上述のように塗布法は、設備が簡易でよいため、低コスト化、量産化することが容易になるという利点がある。塗布法において、溶剤としては、本発明の化合物を溶解して適切な濃度の溶液が調製できるものであれば特に制限はないが、具体的にはクロロホルムや1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、o-ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、m-クレゾールなどの芳香族系溶媒、N-メチルピロリドン、二硫化炭素などを挙げることができる。
本発明の化合物は、一般的な有機溶媒に可溶なものが多く、例えば、クロロホルムあるいはトルエンに溶解させて、好適に塗布することができる。

【0046】
気相成膜法は、塗布法より高コストになる場合があるが、有機半導体層に含まれる本発明の化合物の結晶性が高くなる傾向にあるため、より高性能のトランジスタ素子を形成することができる。気相成膜法の中でも、真空蒸着法が薄膜品質の観点から、特に好ましい。

【0047】
有機半導体層4の膜厚としては、特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体からなる活性層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は有機半導体により異なるが、一般に1μm以下であり、特に10~300nmが好ましい。

【0048】
電荷移動錯体層5としては、有機半導体層4と、ソース電極6及びドレイン電極7との間に挿入され、エネルギーギャップを段階的に緩和し、有機半導体層4へ正孔を注入する能力を有し、かつ薄膜形成性に優れた化合物を挙げることができる。
なお、有機半導体層4と、ソース電極6及びドレイン電極7とのエネルギーギャップが大きくない場合には、電荷移動錯体層5を設けなくともよい。
電荷移動錯体層5を構成する電荷移動錯体として、具体的には、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、ジフルオロテトラシアノキノジメタン、フルオロテトラシアノキノジメタン、フェロセン、テトラチオフルバレン、テトラフェニルテトラチオフルバレン、ポルフィリン、フタロシアニンなどを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。

【0049】
ソース電極6、ドレイン電極7は、有機半導体層4の上に設けられた一対の膜状の電極であり、ソース電極6から有機半導体層4を介してドレイン電極7に電流を供給することができる。ソース電極6、ドレイン電極7の材料としては、導電性材料であれば特に制限はなく、上述のゲート電極2と同様の材料を挙げることができる。この中でも、電荷移動錯体層5との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましく、具体的にはCu、Ag、Pt、Auをあげることができ、化学的に安定で触媒活性が小さいAuが特に好適である。
これらの電極の形成方法としては、有機半導体層上にシャドウマスクを配置し、上記を原料として真空蒸着法やスパッタリング法などを用いて電極形成する方法、上記を原料として真空蒸着法やスパッタリング法などを用いて形成した薄膜を、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、金属箔上に熱転写する方法、インクジェットなどによるレジストを用いてエッチングする方法がある。また導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、導電性微粒子分散液を直接インクジェットによりパターニングする方法、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーションなどにより形成する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明の要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
使用した試薬は次の通りである。
「試薬」
ビスホスホニウム塩(Org. Biomol. Chem., 2005, 3, 3590-3593記載の方法に準じて合成)
2-チオフェンカルバルデヒド(東京化成社製)
テトラフルオロテトラシアノキノジメタン(東京化成社製)
5-ホルミル-2,2’-ビチオフェン(東京化成社製)
(2,7-ジ-t-ブチル-1-ピレニルメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド(東京化成社製)
2-チオフェンアルデヒド(東京化成社製)
5-ホルミル-2,2’:5,2’’-ターチオフェン(東京化成社製)
【0052】
「実施例1」
(1)有機半導体材料1の合成
Ar気流下、反応容器内で、ビスホスホニウム塩1.00g(1.06mmol)及びカリウム-t-ブトキシド258mg (2.30mmol)をテトラヒドロフランに懸濁させ、さらに2-チオフェンカルバルデヒド258mg (2.30mmol)を加えて3時間攪拌した。次いで、反応容器を氷水中に投入後塩化メチレンで抽出し、水及び飽和食塩水で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、前駆体1である2,2’-(1E,1’E)-2,2’-(2,7-ジ-t-ブチルピレン-4,9-ジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル)ジチオフェン(2,2’-(1E,1’E)-2,2’-(2,7-di-tert-butylpyrene-4,9-diyl)bis(ethane-2,1-diyl)dithiophene)を合成した。
次いで、Ar気流下、250mg(0.47mmol)の前駆体1及び0.598g(2.35mmol)のヨウ素をベンゼンに溶解させ、高圧水銀灯を3日間照射した。この溶液に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えてヨウ素を除去した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し有機半導体材料1である上記化学式(1S)の化合物(淡い黄色結晶)を得た。収量228mg(0.433mmol)、収率92.1%、MS(EI)=526、融点>300℃であった。なお、化合物の構造はNMRを使用して同定した。
【0053】
(2)有機薄膜トランジスタ1の作製
300nmの熱酸化膜付きシリコンウエハ(住友三菱シリコン製、1×1cm(面積:1cm2)、厚さ:525μm)をゲート電極およびゲート絶縁膜とし、該酸化膜表面をオクタデシルトリクロロシランにて疎水処理を施した。疎水処理後の酸化膜表面を基板温度室温(約25℃)にて、真空蒸着法(蒸着条件:減圧下(4.0×10-6torr程度)において、蒸着速度0.5nm/min、基板温度:室温)により、有機半導体材料1を膜厚が約50nmとなる条件で成膜した。
この有機半導体材料1の表面上に、シャドウマスクを用いて、真空蒸着法により、膜厚が約30nmのテトラフルオロテトラシアノキノジメタンからなる一対の電荷移動錯体層を形成した。さらにその上に、Auからなる、膜厚が約30nmのソース電極およびドレイン電極を形成することで、上述した図1の形状の実施例1となる有機薄膜トランジスタ1を得た。なお、形成したソース電極およびドレイン電極のチャネル長(L)が20μm、チャネル幅(W)が2mmである。
【0054】
「実施例2」
(1)有機半導体材料2の合成
Ar気流下、反応容器内で、ビスホスホニウム塩1.00g(1.06mmol)及びカリウム-t-ブトキシド(t-BuOK)258mg (2.30mmol)をテトラヒドロフラン(THF)に懸濁させ、さらに反応容器に5-ホルミル-2,2’-ビチオフェン446mg (2.30mmol)を加えて3時間攪拌した。次いで、反応容器を氷水中に投入後塩化メチレンで抽出し、水及び飽和食塩水で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し前駆体2である5,5’-(1E,1’E)-2,2’-(2,7-ジ-t-ブチルピレン-4,9-ジイル)ビス(エタン-2,1-ジイル)ジ-2,2’-ビチオフェン(5,5’-(1E,1’E)-2,2’-(2,7-di-tert-butylpyrene-4,9-diyl)bis(ethane-2,1-diyl)di-2,2’-bithiophene)を合成した。
次いで、Ar気流下、200mg(0.288mmol)の前駆体2及びヨウ素366mg(1.44mmol)のヨウ素をベンゼンに溶解させ、高圧水銀灯を3日間照射した。この溶液に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えてヨウ素を除去した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し有機半導体材料2である上記化学式(2S)の化合物(緑黄色結晶)を得た。収量43.6mg(0.064mmol)、収率29.6%、MS(EI)=691、融点>300℃であった。なお、化合物の構造はNMRを使用して同定した。
【0055】
(2)有機薄膜トランジスタ2の作製
有機半導体材料1の代わりに有機半導体材料2を使用した以外は、実施例1と同様にして、上述した図1の形状の実施例2となる有機薄膜トランジスタ2ができる。
【0056】
「比較例1」
(1)有機半導体材料3の合成
Ar気流下、反応容器内で、(2,7-ジ-t-ブチル-1-ピレニルメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド1.6g (2.56mmol)とカリウム-t-ブトキシド(t-BuOK)400mg(3.52mmol)をテトラヒドロフラン(THF)に懸濁させた。2-チオフェンアルデヒド300mg(2.7mmol)を反応容器に加え3時間撹拌した。次いで、反応容器を氷水中に投入し塩化メチレンで抽出し水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式(1P)で表せる前駆体3を得た。
次いで、Ar気流下、前駆体3の2量体895mg(2.12mmol)をベンゼンに溶解させ、ヨウ素1.6g(3eq)を加え高圧水銀灯を50時間照射した後に亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えてヨウ素を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。さらに溶媒を留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し下記式(1R)で表せる有機半導体材料3(黄色結晶)を得た。収量730mg(1.74mmol)、収率82% MS(EI)=420、融点185~187℃であった。なお、化合物の構造はNMRを使用して同定した。
【0057】
【化33】
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【0058】
【化34】
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【0059】
「比較例2」
(1)有機半導体材料4の合成
Ar気流下、反応容器内で、(2,7-ジ-t-ブチル-1-ピレニルメチル)トリフェニルホスホニウムクロライド1.35g(2.16mmol)とカリウム-t-ブトキシド(t-BuOK)300mg(2.64mmol)をテトラヒドロフラン(THF)に懸濁させた。5-ホルミル-2,2’:5,2’’-ターチオフェン600mg(2.17mmol)を反応容器に加え3時間撹拌した。次いで、反応容器を氷水中に投入し塩化メチレンで抽出し水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、下記式(2P)で表せる前駆体4を得た。
Ar気流下、前駆体4の2量体300mg(0.512mmol)をベンゼンに溶解させ、ヨウ素390mg(3eq)を加え高圧水銀灯を54時間照射した。亜硫酸水素ナトリウム水溶液を加えてヨウ素を除去し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去しシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し下記式(2R)で表せる有機半導体材料4(淡黄色色結晶)を得た。収量70mg(0.120mmol)、収率23.3%、MS(EI)=585であった。なお、化合物の構造はNMRを使用して同定した。
【0060】
【化35】
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【0061】
【化36】
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【0062】
(2)有機薄膜トランジスタ4の作製
有機半導体材料1の代わりに有機半導体材料4を使用した以外は、実施例1と同様にして、上述した図1の形状の比較例2となる有機薄膜トランジスタ4を得た。
【0063】
「評価」
評価装置として、Keithley社製2612A型2chシステムソースメータを使用して、作製した実施例1および比較例1、2の有機薄膜トランジスタについて、ソース・ドレイン電極間に-60Vの電圧を印加し、ゲート電圧を-60Vから20Vの範囲(+10Vステップ)で変化させ、それぞれの有機薄膜トランジスタの、真空中および大気中での出力特性および伝達特性を評価した。代表例として、実施例1の大気中での出力特性および伝達特性を図3、図4に示す。また、伝達特性における最大電流値と最小電流値の比をとって、これを有機薄膜トランジスタ1のON/OFF比とした。また、伝達特性の飽和領域から、キャリア移動度を算出した。それぞれの有機薄膜トランジスタのON/OFF比およびキャリア(正孔)移動度を表1に示す。なお、比較例1の有機薄膜トランジスタ3は、測定限界以下であった。
【0064】
【表1】
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【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の有機半導体材料は、有機薄膜トランジスタの有機半導体層として好適に使用することができることに加え、その構造は、かさ高い置換基、ねじれ構造でありp型有機半導体の分子設計基本概念(常識)から全く外れており、本発明による有機半導体概念の拡張に大きく寄与する。また、比較的低温のプロセスで製造でき、かつ塗布プロセスなどの容易な製造プロセスで成膜が可能であり、生産コストの低減が可能である。
該有機半導体材料を用いてなる有機薄膜トランジスタは、各種集積回路(IC)に広く応用できる。また、本発明の有機半導体材料は、優れた電気特性により有機EL素子用の発光材料、電荷注入材料、電荷輸送性材料あるいは有機レーザー発振素子などに広く応用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 基板
2 ゲート電極
3 ゲート絶縁層
4 有機半導体層
5 電荷移動錯体層
6 ソース電極
7 ドレイン電極
10 有機薄膜トランジスタ素子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3