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明細書 :無線通信端末、無線通信方法及びプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5692854号 (P5692854)
公開番号 特開2012-169935 (P2012-169935A)
登録日 平成27年2月13日(2015.2.13)
発行日 平成27年4月1日(2015.4.1)
公開日 平成24年9月6日(2012.9.6)
発明の名称または考案の名称 無線通信端末、無線通信方法及びプログラム
国際特許分類 H04M  11/00        (2006.01)
H04M   1/00        (2006.01)
H04W  88/02        (2009.01)
H04W  92/18        (2009.01)
FI H04M 11/00 302
H04M 1/00 R
H04W 88/02
H04W 92/18
請求項の数または発明の数 7
全頁数 20
出願番号 特願2011-030195 (P2011-030195)
出願日 平成23年2月15日(2011.2.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 (1)平成22年8月16日に開催された社団法人電子情報通信学会「新世代ネットワーク・ワークショップ2010」で発表(2)平成22年9月16日に開催された社団法人電子情報通信学会「2010年ソサイエティ大会」で発表(3)IEEE発行「2011 IEEE International Conference on Consumer Electronics(ICCE)」(平成23年1月9日)(4)平成23年2月7日に開催された国立大学法人電気通信大学「平成22年度3月期 情報ネットワークシステム学専攻 修士論文発表会」で発表(5)平成23年2月11日に開催された社団法人映像情報メディア学会「映像情報メディア学会 コンシューマエレクトロニクス・マルチメディアストレージ研究会」で発表
審査請求日 平成25年12月16日(2013.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
発明者または考案者 【氏名】笠井 裕之
【氏名】成松 宏美
個別代理人の代理人 【識別番号】110000925、【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
審査官 【審査官】齋藤 浩兵
参考文献・文献 特開2009-123142(JP,A)
特開2005-167838(JP,A)
特開2004-274192(JP,A)
特表2010-514301(JP,A)
調査した分野 H04M 11/00
H04M 1/00
H04W 88/02
H04W 92/18
特許請求の範囲 【請求項1】
他の無線通信端末との間で無線通信を行う無線通信部と、
前記無線通信部で送信させる蓄積情報を保持すると共に、前記無線通信部で受信した蓄積情報を保持する記憶部と、
無線通信を行うアクセスポイントをランドマークとして利用して、当該無線通信端末の現在位置に対応したエリアを検出するエリア検出部と、
他の無線通信端末に対して、前記記憶部に記憶された蓄積情報に、前記エリア検出部が検出したエリアに基づいたエリア情報を付加して前記無線通信部から送信させると共に、前記無線通信部が他の無線通信端末から受信した蓄積情報を、その蓄積情報に付加されたエリア情報で示されるエリア内に当該無線通信端末がいる間、前記記憶部で保持させ、付加されたエリア情報で示されるエリアから離れた場合に前記記憶部で保持された蓄積情報を破棄する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記エリア検出部が検出するアクセスポイントの変化に基づいて、検知したアクセスポイントのリストを作成する
無線通信端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記記憶部に記憶された情報が既に保持された無線通信端末を検出又は推定して、その検出又は推定した無線通信端末以外の他の無線通信端末に対して、前記記憶部に記憶された蓄積情報を前記無線通信部から無線送信させる
請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記制御部は、記憶部が記憶した蓄積情報を保持した端末についての情報保持端末リストを作成し、作成された情報保持端末リストに基づいて、前記記憶部に記憶された蓄積情報が既に保持された無線通信端末を判断する
請求項記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記制御部は、前記無線通信部が認識したエリア内の他の無線通信端末の台数又はエリア内の他の無線通信端末の密度に応じて、前記記憶部が記憶した蓄積情報を保持させるエリアの拡大又は縮小を行う
請求項記載の無線通信端末。
【請求項5】
前記制御部は、前記エリア検出部が検出するアクセスポイントの変化に基づいて、各アクセスポイントの位置関係のテーブルを動的に構築し、その構築したテーブルに基づいて、前記記憶部が記憶した蓄積情報を保持させるエリア情報を生成させる
請求項記載の無線通信端末。
【請求項6】
無線通信機能を備えた無線通信端末に適用される無線通信方法において、
無線通信を行うアクセスポイントをランドマークとして利用して、当該無線通信端末の現在位置に対応したエリアを検出し、
他の無線通信端末に対して、当該無線通信端末が記憶した蓄積情報に、前記エリアの検出で得たエリア情報を付加して前記無線通信機能で送信させ、
前記無線通信機能で他の無線通信端末から受信した蓄積情報を、その蓄積情報に付加されたエリア情報で示されるエリア内に当該無線通信端末がいる間、当該無線通信端末で保持させ、付加されたエリア情報で示されるエリアから離れた場合に、当該無線通信端末に保持された蓄積情報を破棄し、
前記エリアを検出する際のアクセスポイントの変化に基づいて、検知したアクセスポイントのリストを作成する
無線通信方法。
【請求項7】
無線通信機能を備えた無線通信端末に実装されるプログラムにおいて、
無線通信を行うアクセスポイントをランドマークとして利用して、当該無線通信端末の現在位置に対応したエリアを検出する検出工程と、
他の無線通信端末に対して、当該無線通信端末が記憶した蓄積情報に、前記エリアの検出で得たエリア情報を付加して前記無線通信機能で送信させる送信工程と、
前記無線通信機能で他の無線通信端末から受信した蓄積情報を、その蓄積情報に付加されたエリア情報で示されるエリア内に当該無線通信端末がいる間、当該無線通信端末で保持させ、付加されたエリア情報で示されるエリアから離れた場合に、当該無線通信端末に保持された蓄積情報を破棄する蓄積情報処理工程と、
前記エリアを検出する際のアクセスポイントの変化に基づいて、検知したアクセスポイントのリストを作成するリスト作成工程とを有する
プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アドホック通信を行う無線通信端末、及びその無線通信端末で実行される無線通信方法、並びにその無線通信端末に実装されるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれが無線通信端末を所持するユーザの間で、何らかの情報を共有する場合、例えば各ユーザが特定のネットワークサービスに加入して、そのネットワークサービスで提供されるサーバにアクセスして、必要な情報をアップロードさせることが行われている。アップロードされた情報は、サーバにアクセスしたユーザの端末に表示させることができ、情報が共有化される。この場合、無線通信端末は無線アクセスポイントなどの無線基地局を介して無線通信(インフラモード通信)を行う。
【0003】
また、複数台の無線通信端末の間でのデータ通信として、基地局を経由せずに2台の端末間で直接無線通信を行うアドホック通信機能(アドホックモード通信)を利用して、近隣の他の無線通信端末との間でデータ転送を行うことも実用化されている。例えば、特定のゲームプログラムが実装された2台の端末が近接したとき、アドホック通信処理で、その2台の端末間で直接データ転送を行い、ゲームの実行状況などのデータの転送処理を行う場合がある。このような近接した2台の無線通信端末の間でデータ転送を行う処理は、例えば「すれ違い通信」と称される通信処理として実用化されている。
【0004】
さらに、複数の無線端末間に動的にネットワークを構築して通信する通信機能(アドホックネットワーク通信)では、直接無線通信ができない端末同士の無線情報を、他の無線通信端末が仲介端末となって中継することで通信範囲を拡大可能なマルチホップ通信ネットワークの技術が研究開発され製品化されている。
【0005】
特許文献1には、無線通信端末を所持する人同士がすれ違った際に、メッセージの送受信を行うシステムについての記載がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2010-251858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のアドホック通信やアドホックネットワークの通信による、近接した2台の無線通信端末間でのデータ通信の場合、情報が共有される端末は、その時にリアルタイムで通信が到達可能な端末だけとなる。また、インフラモード通信を利用して複数台の端末で共有させる場合には、特定のサーバにデータをアップロードさせることで行われているが、情報が共有できるのは、そのサーバにアクセスできる端末に限られ、汎用性が高いとは言えない問題があった。また、サーバにアクセスするためのネットワークのインフラストラクチャが必要であり、ネットワークインフラストラクチャがない環境で、何らかの情報を共有することは不可能であった。
【0008】
ネットワークインフラストラクチャがない環境で異なる時刻に通りすぎる端末にデータを配信することを想定した場合には、例えば、特定の1台の無線通信端末がデータの配信元となって、近隣の不特定の無線通信端末にアドホック通信を繰り返し行うことで、その配信元端末が配信した回数だけ、近隣の多数の端末に同じ情報を配ることができる。
具体的な例を想定すると、例えば特定の建物内で何らかのイベントが開催され、そのイベントを宣伝するために、その建物の近くの場所に配信元端末を用意して、その配信元端末からアドホック通信で、その建物の近くを通過した者が所持する端末(受信端末)に対して、イベントを宣伝する情報を送信したとする。このようにすることで、建物の近くを通過した通行人が所持した端末に対して、イベント宣伝情報が配信されることになる。
【0009】
ところが、このような配信処理で多数の端末に配信を有効に行うためには、配信元端末からの配信を長時間継続して繰り返し行わないと、次々に新たに建物の近くを通り過ぎる人の端末に対して情報を配信できないものであり、効率がよい配信処理とは言えない。
【0010】
また、イベント宣伝情報などを受信した受信端末では、その受信情報は、表示などのために使用されるだけである。例えば受信端末が、イベントが開催されている建物から遠く離れてしまったときには、受信端末の所持者にとって、意味のない情報になってしまう。このため、このような情報配信が街頭で行われていたとしても、意味のない情報が端末内に貯まってしまう可能性が高く、配信を受ける側にとっても、使い勝手がよいとは言えない。
【0011】
本発明の目的は、ネットワークインフラストラクチャがない環境で、異なる時刻に特定のエリアに存在する複数の無線通信端末間で、効率的に良好に情報を共有できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信端末は、他の無線通信端末との間で無線通信を行う無線通信部と、無線通信部で送信させる蓄積情報を保持すると共に無線通信部で受信した蓄積情報を保持する記憶部と、無線通信を行うアクセスポイントをランドマークとして利用して、当該無線通信端末の現在位置に対応したエリアを検出するエリア検出部と、他の無線通信端末に対して、記憶部に記憶された蓄積情報に、エリア検出部が検出したエリアに基づいたエリア情報を付加して無線通信部から送信させると共に、無線通信部が他の無線通信端末から受信した蓄積情報を、その蓄積情報に付加されたエリア情報で示されるエリア内に当該無線通信端末がいる間、記憶部で保持させ、付加されたエリア情報で示されるエリアから離れた場合に記憶部で保持された蓄積情報を破棄する制御部とを備え、制御部は、エリア検出部が検出するアクセスポイントの変化に基づいて、検知したアクセスポイントのリストを作成する
【0013】
また本発明の無線通信方法は、無線通信機能を備えた無線通信端末に適用される無線通信方法において、無線通信を行うアクセスポイントをランドマークとして利用して、当該無線通信端末の現在位置に対応したエリアを検出し、当該無線通信端末が記憶した蓄積情報に、エリアの検出で得たエリア情報を付加して他の無線通信端末に無線通信機能で送信させ、無線通信機能で他の無線通信端末から受信した蓄積情報を、その蓄積情報に付加されたエリア情報で示されるエリア内に当該無線通信端末がいる間、当該無線通信端末で保持させ、付加されたエリア情報で示されるエリアから離れた場合に、当該無線通信端末に保持された蓄積情報を破棄し、エリアを検出する際のアクセスポイントの変化に基づいて、検知したアクセスポイントのリストを作成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、特定のエリア内で無線通信端末に配信された情報が、そのエリア内で他の無線通信端末に中継伝送されて、異なる時刻に当該エリア内に存在する複数の無線通信端末で配信情報を共有できるようなる。そして、それぞれの無線通信端末が特定のエリアから離れた場合には、その配信情報が破棄され、配信情報が特定のエリア内の端末だけで蓄積される情報として有効に機能するようになる。
【0015】
この場合、情報を保持させるエリア情報は、無線通信を行うアクセスポイントをランドマークとして利用したエリアとすることで、アクセスポイントの検出が可能な無線LANなどの通信機能を利用して、簡単かつ良好にエリアの指定ができるようになる。
【0017】
また、記憶された情報が既に保持された無線通信端末を検出又は推定して、その検出又は推定した無線通信端末以外の他の無線通信端末に対して、記憶された蓄積情報を無線通信部から無線送信させることで、蓄積情報が既に記憶された無線通信端末に対して情報が伝送されることがなくなり、蓄積情報がエリア内に無制限に転送されてしまう事態を効果的に防止できるようになる。
【0018】
この蓄積情報が既に記憶された無線通信端末を除外する処理として、例えば、記憶した蓄積情報を保持した端末についての情報保持端末リストを作成し、作成された情報保持端末リストに基づいて、蓄積情報が既に保持された無線通信端末を判断することで、簡単かつ的確に蓄積情報が保持された無線通信端末を判断できるようになる。
【0019】
また、認識した他の無線通信端末の台数又は密度に応じて、記憶した蓄積情報を保持させるエリアの拡大又は縮小を行うことで、蓄積情報がエリア内のいずれかの無線通信端末に保持される可能性を適正にコントロールできるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態例によるシステムの概要を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態例による無線通信端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態例によるエリア登録例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施の形態例によるデータ構成を示す説明図である。
【図5】本発明の一実施の形態例によるリレーデータ受信処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の一実施の形態例によるリレーデータ送信処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の一実施の形態例によるエリア制御処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施の形態例による位置変化状態の一例を示す説明図である。
【図9】図8例の位置変化で検出されるアクセスポイントの例を示す説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態例による蓄積情報伝達例を示す説明図である。
【図11】本発明の一実施の形態例による登録エリアの拡大例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施の形態例を、以下の順序で説明する。
1.システムの概要(図1)
2.無線通信端末の構成例(図2)
3.アクセスポイントを利用したエリア登録例(図3)
4.データ構造例(図4)
5.リレーデータ受信処理例(図5)
6.リレーデータ送信処理例(図6)
7.エリア制御処理の流れの例(図7)
8.アクセスポイントのエリアレベル設定例(図8,図9)
9.リレー動作の例(図10)
10.登録エリアの拡大縮小例(図11)
11.変形例

【0022】
[1.システムの概要]
図1を参照して、本発明の一実施の形態例のシステムの概要を説明する。
図1の例では、建物B1,B2,B3,B4で囲まれた屋外の環境で、4台の無線通信端末100a,100b,100c,100dが、それぞれ別のユーザに所持されて、随時位置が移動しているとする。各無線通信端末100a,100b,100c,100dは、例えばIEEE802.11規格で規格化された無線LAN(Local Area Network)方式で、比較的近距離の無線通信を行う機能を有する。無線通信端末100a~100dの具体例については後述するが、無線LAN機能を備えた端末であれば、どのような構成の端末でもよい。例えば、スマートフォンとしての無線電話端末、その他の無線電話端末、ビデオゲーム用端末、オーディオプレーヤ、パーソナルコンピュータ装置としての端末など、各種用途の無線通信端末が適用可能である。

【0023】
そして、図1に示した建物B1,B2,B3,B4で囲まれた箇所の近傍に、特定の情報(以下、この情報を蓄積情報と称する)を保持するストレージエリアとしてのエリアSA1,SA2を設定する。このエリアSA1,SA2は、円形のエリアで示してあるが、円形である必要はない。エリアSA1,SA2は、位置情報又は位置になり得る情報で特定するようにしてある。例えば、端末が現在位置を測位する機能を有する場合には、端末の絶対位置でエリアを指示するようにしてもよい。絶対位置の情報の場合、特定の1点から半径100m以内の範囲として指定したり、あるいは、1辺が100mの四角形の範囲を指定する等、様々なエリアの指定が可能である。
以下に説明する本実施の形態例では、無線LAN用のアクセスポイントをランドマークとして利用した例としてある。すなわち、アクセスポイントから送信される情報を、位置に相当する情報として扱って、エリアSA1,SA2を設定するようにしてある。例えば、あるアクセスポイントから送信される信号が受信できる範囲をエリアSA1とし、別のアクセスポイントから送信される信号が受信できる範囲をエリアSA2とする。但し、後述するように各エリアは1つのアクセスポイントからの信号が届く範囲とは限らず、1つのエリアが複数のアクセスポイントからの信号が届く範囲で形成される場合もある。

【0024】
図1の例では、ほぼ円形にエリアSA1,SA2が形成されて、そのエリアSA1,SA2の近傍に複数の無線通信端末100a~100dが存在している状態を示している。エリアSA1,SA2は、例えば半径数十m程度のエリアとする。但し、後述するようにエリアの広さは可変する場合もあり、エリアの広さは自由に設定が可能である。以下の例では、蓄積情報を保持するエリアSA1,SA2が、無線LAN用のアクセスポイントで設定される場合として、説明する。

【0025】
各無線通信端末100a,100b,100c,100dは、エリアSA1,SA2内に設置されたアクセスポイントと無線通信を行うことで、このアクセスポイントを経由して、インターネットなどにアクセスすることも可能であるが、この例では、各無線通信端末100a,100b,100c,100dは、アクセスポイントからの無線信号を、位置(エリア)の確認用として利用する。すなわち、アクセスポイントは、それぞれのアクセスポイントのIDなどを示す識別信号を定期的に送信しており、その識別信号を各無線通信端末100a~100dで受信して検出させる。例えば、無線通信端末100aでエリアSA1内に設置されたアクセスポイントからの識別信号を受信できたとき、この無線通信端末100aは、エリアSA1内にいると判断する。
したがって、各無線通信端末100a,100b,100c,100dは、アクセスポイントが使用する無線LAN機能部と同じ規格で無線通信機能を有していれば、アクセスポイントに接続できず、インターネットなどへのアクセスができない端末であっても、使用可能である。

【0026】
本実施の形態例では、各無線通信端末100a,100b,100c,100dは、それぞれの端末が備えた無線LAN通信部に用意されたアドホック通信機能(アドホックモード)を利用して、近隣の無線通信端末と直接無線通信を行う。すなわち、各無線通信端末100a,100b,100c,100dの無線LAN通信部では、近隣に他の無線通信端末の存在を認識したとき、アドホック通信機能でその認識した無線通信端末と直接無線通信を行って、情報を無線伝送させる。
図1例では、特定の1台の無線通信端末100aが、エリア内で共有したい蓄積情報を保持した端末である。そして、この無線通信端末100aが、無線通信端末100bの存在を認識し、その無線通信端末100bと直接無線通信が可能と判断したとき、図1に示すように無線通信端末100aからの無線通信Maで、蓄積情報を無線通信端末100bに送信する。この無線通信Maで蓄積情報を送信する際には、エリアについての情報(例えばアクセスポイントリスト)などを付加する。アクセスポイントリストで示されたアクセスポイントは、蓄積情報を保持するエリア(ストレージエリア)を示す情報として使用される。付加される情報の詳細例については後述する。

【0027】
蓄積情報を受信した無線通信端末100bは、その蓄積情報に付加された情報で示されたアクセスポイントからの信号が受信できる状態であるとき、受信した蓄積情報を端末内の記憶部に記憶させて保持しておく。さらに、無線通信端末100bが蓄積情報を保持した状態で、エリアSA1内を移動し、図1例で端末100b′として示した位置となったとき、さらに別の無線通信端末100cの存在を認識したとする。この認識した無線通信端末100cと直接無線通信が可能と判断したとき、図1に示すように無線通信端末100bからのアドホック通信機能による無線通信Mbで、保持した蓄積情報を無線通信端末100cに送信し、無線通信端末100cで保持させる。
このようにしてエリアSA1内、又はエリアSA1の近傍にいる無線通信端末の間で、アドホック通信機能を利用した端末間直接通信により、蓄積情報の送信が行われ、蓄積情報がエリアSA1内のいずれかの端末で保持されることになる。

【0028】
そして本実施の形態例では、蓄積情報を保持した各無線通信端末100a,100b,100cが、エリアSA1から外れた位置となって、エリアSA1内のアクセスポイントからの信号が受信できなくなったとき、保持した蓄積情報を破棄(消去)するようにしてある。
図1例では、無線通信端末100aがエリアSA1から外れた位置となり、その後、エリアSA2内の端末100a′として示す位置になった状態を示してある。無線通信端末100aはエリアSA1から外れた位置になることで、保持した蓄積情報は破棄される。そして、無線通信端末100a′がエリアSA2内の位置になった状態では、別の蓄積情報を保持した無線通信端末100dからの無線通信Mbで、別の蓄積情報が伝送されて、その受信した蓄積情報を、無線通信端末100a′が保持する。このエリアSA2で無線通信端末100a′が保持した蓄積情報は、無線通信端末100a′の位置がエリアSA2外になったとき、破棄される。なお、ここでの破棄とは、端末内のメモリから完全にデータを消去する場合と、メモリのデータ管理処理で消去されたデータとして扱う場合のいずれでもよい。メモリのデータ管理処理で消去(破棄)されたデータとして扱う場合には、メモリには、該当するデータが記憶されたままである可能性もある。

【0029】
この図1例に示した原理で、各端末でエリアと関係づけられた蓄積情報を保持するようにしたことで、ネットワークに接続されたサーバなどを使用することなく、各々の端末が、各エリア内だけで情報を保持する仮想ストレージとして機能し、保持された情報を共有できるようになる。すなわち、協調分散型モバイル仮想ストレージシステムが構成されることになる。
なお、図1を参照したここまでの説明は、本実施の形態例の基本的な処理原理を示したものであり、詳細な処理動作は、この図1例とは異なる場合がある。例えば図1例では、個々のアクセスポイントのエリアSA1,SA2を、それぞれ蓄積情報が保持される1つ1つのエリアとしたが、実際には複数のアクセスポイントのエリアを組み合わせて、情報を保持するエリアを形成するのが好ましい。

【0030】
[2.無線通信端末の構成例]
図2は、無線通信端末100a,100b,100c,100d(図1)の構成例を示した図である。この図2の端末構成は、仮想ストレージとして処理を行う上で必要な構成のみを示し、端末が備える他の機能処理部については省略してある。
本実施の形態例の無線通信端末は、アプリケーション実行部101を備える。このアプリケーション実行部101を用いて、利用者はエリアに紐づいた仮想ストレージに蓄積される情報を利用したサービス(対戦ゲーム、メッセージサービスなど)を利用することができる。
アプリケーション実行部101は、アプリケーションインターフェース部102を介してアプリケーションデータベース103に記憶された蓄積情報などのデータを読み出し、アプリケーションの実行処理を行い、必要によりアプリケーションデータベース103の蓄積情報を更新させる。あるいは、アプリケーションの実行により、新たな蓄積情報をアプリケーションデータベース103に記憶させる。アプリケーションデータベース103や後述するコントロールデータベース113は、半導体メモリやハードディスクドライブなどの記憶部を使用して構成される。

【0031】
また本実施の形態例の無線通信端末は、無線LAN通信部である無線通信処理部121を備え、無線通信処理部121にアンテナ122が接続してある。無線通信処理部121で受信したデータは、受信コントロール部114の制御で、アプリケーションデータベース103に記憶される。また、アプリケーションデータベース103に記憶された蓄積情報を、リレーコントロール部111の制御で読み出し、送信コントロール部115を介して無線通信処理部121に送って、無線送信させる。また、アプリケーションデータベース103に記憶された蓄積情報を、リレーコントロール部111を介してリレーデータ処理部112に送り、蓄積情報についての処理を行う。リレーコントロール部111は、リレーデータ処理部112では、例えば蓄積情報の多重化処理や分離処理などが行われる。

【0032】
また、無線通信処理部121での無線信号の受信状況のデータを、アクセスポイントモニタ部116に供給して、受信したアクセスポイントについてのデータをアクセスポイントモニタ部116で判別する構成としてある。アクセスポイントモニタ部116は、アクセスポイントで形成されるエリア内にいることを検出するエリア検出部として機能し、アクセスポイントモニタ部116で判別したアクセスポイントについてのデータは、アクセスポイントリストとしてコントロールデータベース113に記憶される。

【0033】
リレーコントロール部111は、リレーデータの送信や蓄積などを制御するリレーデータの制御部として機能する。すなわち、リレーコントロール部111が、このコントロールデータベース113に記憶されたアクセスポイントリストを参照して、アプリケーションデータベース103に記憶された蓄積情報についての処理を実行させる。

【0034】
[3.アクセスポイントを利用したエリア登録例]
図3は、アクセスポイントの情報を利用してエリア登録を行う例を示した図である。
図3の例では、蓄積情報が生成された端末M0で、その蓄積情報に付加させるアクセスポイントリストで、エリアAP-AとエリアAP-BとエリアAP-Cの3つのエリアのアクセスポイントの情報を示した例である。この場合には、図3で太い実線で示すように、3つのエリアAP-A、AP-B,AP-Cのいずれかのエリアに属する位置であるとき、蓄積情報を保持するエリアとなる。

【0035】
[4.データ構造例]
図4は、蓄積情報のデータ構造例を示した図である。
図4を参照してデータ構造を説明すると、図4の最上段に示すように、蓄積情報は、蓄積情報本体を構成するリレーデータと、そのリレーデータの先頭に付与されたヘッダとで構成されている。リレーデータが複数存在する場合には、リレーデータ1,リレーデータ2,・・・と各リレーデータが連続して配置されて、多重化してある。多重化されたリレーデータの先頭に配置されるヘッダ内には、データIDとリレーデータナンバーとが配置してある。

【0036】
それぞれのリレーデータには、先頭部分にリレーデータヘッダが配置してあり、残りの部分に、ペイロードであるアプリケーションデータが配置してある。アプリケーションデータは、図2に示したアプリケーション実行部101でアプリケーションを実行する際に使用されるデータである。例えば特定のアプリケーションを実行した際に、端末が備える表示部で表示させるデータである場合には、表示させる文字などのテキストデータなどが配置される。

【0037】
リレーデータヘッダは、リレーデータIDと、リレーデータサイズと、アプリケーションIDと、タイムスタンプと、リレーコントロールでと、リレーデータタイプとが配置してある。アプリケーションIDは、使用するアプリケーションプログラムの識別コードである。タイムスタンプは、リレーデータを最初の端末で生成させた際の日時などを示すデータである。リレーコントロールデータは、リレーデータの保存、破棄、他端末への伝送などをコントロールするためのデータである。このリレーコントロールデータは、図2のコントロールデータベース113に記憶される。

【0038】
リレーコントロールデータは、アンカーエリアインフォと、リレーコントロールアルゴリズムパラメータとで構成される。
アンカーエリアインフォには、後述する図9に示すアクセスポイントのエリアに付与されたレベルであるアクセスポイントリストナンバーと、アクセスポイントリストとが配置される。

【0039】
リレーコントロールアルゴリズムパラメータには、リレーアルゴリズムと、検出端末ナンバーと、端末についての各種検出データと、検出端末リストと、エリアレベルと、エリアレベルテーブルとが配置してある。

【0040】
[5.リレーデータ受信処理例]
次に、図5のフローチャートを参照して、無線通信端末でのリレーデータの受信処理の流れを説明する。
このリレーデータの受信処理は、リレーコントロール部111の制御で実行される。まずリレーコントロール部111は、リレーデータの受信があるか否かを判断する(ステップS21)。この判断で、新たなリレーデータの受信がないと判断した場合には、ステップS21での判断が繰り返される。

【0041】
ステップS21の判断で、リレーデータの受信があると判断した場合には、リレーデータ処理部112でリレーデータを構成する各データの分離処理を行い(ステップS22)、その分離処理されたリレーデータに、分析対象となるデータの受信があるか否かを判断する(ステップS23)。この判断で、分析対象となるリレーデータの受信がない場合には、ステップS21の判断に戻る。

【0042】
ステップS23の判断で、分析対象となるリレーデータを受信したと判断した場合には、アプリケーションデータベース103に同じリレーデータの記憶があるか否かを判断する(ステップS24)。この判断で同じリレーデータの記憶がないと判断した場合には、該当するリレーデータをデータベース103に書き込ませ(ステップS25)、ステップS23の判断に戻る。また、ステップS24の判断で同じリレーデータの記憶が既にデータベース103にある場合には、該当するリレーデータを破棄した後(ステップS65)、ステップS23の判断に戻る。但し、アプリケーションデータベース103内に存在する受信時刻情報を更新する。

【0043】
[6.リレーデータ送信処理例]
次に、図6のフローチャートを参照して、無線通信端末でのリレーデータの送信処理の流れを説明する。
このリレーデータの送信処理はリレーコントロール部111の制御で実行され、リレーコントロール部111は、送信対象候補となるリレーデータのデータベース103での蓄積があるか否かを判断する(ステップS31)。この判断で、送信対象候補となるリレーデータのデータベース103での蓄積がないと判断した場合には、ステップS31での判断が繰り返される。

【0044】
ステップS31の判断で、送信対象候補となるリレーデータのデータベース103での蓄積があると判断した場合には、リレーデータを送信するタイミングと送信先の端末を判断するアルゴリズムを実行する(ステップS32)。このアルゴリズムの実行で、送信対象のリレーデータがあるか否かを判断し(ステップS33)、送信対象のリレーデータがないと判断した場合には、ステップS31の判断処理に戻る。

【0045】
ステップS33の判断処理で、送信対象のリレーデータがあると判断した場合には、送信対象のリレーデータを多重化する(ステップS34)。送信対象のリレーデータが1単位のデータだけである場合には、多重化は必要ない。そして、ステップS34での多重化の処理を行った後(あるいは多重化をすることなく)、リレーデータを送信させる(ステップS35)。リレーデータを送信した後、ステップS33の判断処理に戻る。

【0046】
[7.エリア制御処理の流れの例]
次に、図7のフローチャートを参照して、無線通信端末でのエリア制御処理の流れについて説明する。
エリア制御処理とは、無線通信端末の現在位置に応じて、アプリケーションデータベース103が保持したリレーデータの保存継続又は破棄を実行する処理である。さらに、周辺端末状態に応じて、リレーエリアを拡大または縮小することで、リレーエリアのサイズを変更する制御を実行する処理である。
図7に従って説明すると。まず、リレーコントロール部111は、アクセスポイントモニタ部116がモニタした結果から、現在の端末が存在するエリアに変化があるか否かを判断する(ステップS11)。この判断で、エリアに変化がない場合には、ステップS11でのエリア変化判断を随時繰り返し実行する。

【0047】
そして、ステップS11での判断で、エリアに変化がある場合、つまり検出されるアクセスポイントに変化があった場合には、変化したエリア内で送信対象候補となるリレーデータの蓄積が、データベース103にあるか否かを判断する(ステップS12)。この判断で、送信対象候補となるリレーデータの蓄積がない場合には、ステップS11でのエリア変化判断に戻る。

【0048】
ステップS12の判断で、送信対象候補となるリレーデータの蓄積がアプリケーションデータベース103にある場合には、リレーコントロール部111がリレーエリア制御アルゴリズムを実行する(ステップS13)。このリレーエリア制御アルゴリズム実行時には、現在端末が存在しているエリアのチェックも行われる。

【0049】
ステップS13でのリレーエリア制御アルゴリズムの実行で、リレーデータを引き続き蓄積する必要があるか否かを判断する(ステップS14)。この判断で、現在のエリアが、リレーデータを引き続き蓄積するエリアであると判断した場合には、エリアの変化により生じたエリア制御情報の変更分のコントロールデータベース113への書き込みが行われる(ステップS15)。ステップS15での書き込みの後、ステップS12の判断に戻る。
また、ステップS14の判断で、現在のエリアが、リレーデータを蓄積するエリアでないと判断した場合、該当するリレーデータをアプリケーションデータベース103から破棄し(ステップS16)、ステップS12の判断に戻る。

【0050】
[8.アクセスポイントのエリアレベル設定例]
本実施の形態例においては、それぞれの無線通信端末でアクセスポイントのエリアを管理する場合に、エリアにレベルを付けてリストを作成し、そのリストを他の無線通信端末と共有する構成としてある。
図8及び図9を参照してリストが作成される例について説明する。まず、図8に示すように、5つのアクセスポイントAP-A,AP-B,AP-C,AP-D,AP-Eによる無線通信可能なエリアが、それぞれ一部のエリアが隣接したエリアと重なった状態で存在しているとする。
この図8に示すようなエリア構成とされた領域を、1台の無線通信端末を持ったユーザが移動したとする。図8に示した位置T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7,T8は、無線通信端末の一定時間ごとの位置を示している。
このような位置の移動があった場合に、作成されるアクセスポイント(エリア)のレベル設定例を示したのが、図9である。図9では、検出アクセスポイントAP-A~AP-Eの「AP-」を省略して、検出エリアA,B,C,D,Eと示してある。

【0051】
図9のリストについて説明すると、位置T1では、アクセスポイントAP-Aの信号だけを検出した状態であり、アクセスポイントAP-Aをレベル0に定義する。
次の位置T2では、アクセスポイントAP-A,AP-Bの信号を検出した状態である。このときには、新たに検出されたアクセスポイントAP-Bを、アクセスポイントAP-Aに隣接したアクセスポイントと判断して、アクセスポイントAP-Aのレベル0より1段階レベルが低いレベル1に設定する。
位置T3では、アクセスポイントAP-A,AP-B,AP-Cの信号を検出した状態である。このときにも、新たに検出されたアクセスポイントAP-Cを、アクセスポイントAP-Aに隣接したアクセスポイントと判断して、アクセスポイントAP-Aのレベル0より1段階レベルが低いレベル1に設定する。
位置T4では、アクセスポイントAP-B,AP-Cの信号を検出した状態であり、レベル設定に変更はない。

【0052】
位置T5では、アクセスポイントAP-C,AP-Dの信号を検出した状態である。このときには、新たに検出されたアクセスポイントAP-Dを、アクセスポイントAP-Cに隣接したアクセスポイントと判断して、アクセスポイントAP-Cのレベル1より1段階レベルが低いレベル2に設定する。
位置T6では、アクセスポイントAP-C,AP-Eの信号を検出した状態である。このときにも、新たに検出されたアクセスポイントAP-Eを、アクセスポイントAP-Cに隣接したアクセスポイントと判断して、アクセスポイントAP-Cのレベル1より1段階レベルが低いレベル2に設定する。
位置T7では、アクセスポイントAP-Eの信号だけを検出した状態であり、レベル設定に変更はない。

【0053】
そして、位置T8では、アクセスポイントAP-A,AP-Eの信号を検出した状態であり、アクセスポイントAP-EがアクセスポイントAP-Aに隣接したアクセスポイントであると判断し、アクセスポイントAP-Eのレベルを、アクセスポイントAP-Aのレベル0より1段階低いレベル1に変更する。

【0054】
このようにして、アクセスポイントAP-Aを基準(レベル0)として、そのアクセスポイントに近い位置にあるアクセスポイントについてのリストが作成される。このようにして作成されたアクセスポイント(エリア)のレベルのリストは、例えば図4に示したリレーコントロールアルゴリズムパタメータ内のエリアレベルテーブルのデータとして、リレーデータに付加される。

【0055】
なお、このようにエリアレベルテーブルのデータはリレーデータに付加されて送信させるものであるため、それぞれの無線通信端末内に保持されたエリアレベルテーブルとは相違する場合がある。そのような場合には、エリアレベルテーブルを統合させる更新処理を行う。このような更新を繰り返すことで、より精度の高いエリアレベルテーブルが作成されるようになる。
このようにエリアレベル(アクセスポイントレベル)を作成しておくことで、それぞれの無線通信端末は、受信できたアクセスポイントの信号から、現在の位置関係が判るようになり、アクセスポイントと紐付けられたリレーデータのリレー処理を適正に行えるようになる。

【0056】
前記のエリアレベルテーブルは、アクセスポイントAP-Aを基準としたテーブルであるが、全てのアクセスポイントを平等に扱うテーブルとして、各アクセスポイントとの距離(隣接,あるいは1つの他のアクセスポイントを介して隣接など)をインデックスとしたテーブルを形成することも可能である。たとえば、前記の例であれば、アクセスポイントAP-Bの隣接アクセスポイントとして、AP-A,AP-C,AP-Eが、1つ離れたアクセスポイントとして、AP-Dが記載されているテーブルを構築することが可能である。前記エリアテーブルでは、基準アクセスポイントAPにより内容は一部重複しているにも関わらず、全く異なるテーブルが形成される冗長な作りになっているのに対して、本テーブルでは、全ての情報が平等に管理されるため単一のテーブルを管理すれば良く伝送及び管理効率も優れる。

【0057】
[9.リレー動作の例]
次に、本実施の形態例でのリレー制御動作で、リレーデータの送信対象となる無線通信端末を選択する処理について説明する。
本実施の形態例の場合には、隣接した2台の無線通信端末の間でアドホック通信モードにより通信を行って、リレーデータを相手の無線通信端末に伝送させて、受信側の無線通信端末で受信したリレーデータを保持させる。ここで、送信側の無線通信端末は、受信側の無線通信端末が既に同じデータを格納しているか否かを事前に問い合わせることなく、リレーデータを送信するようにしてある。このようにしてあることで、単純な通信プロトコルでデータ伝送が行われる。

【0058】
ここで、受信側の無線通信端末が既に同じデータを格納しているか否かを事前に問い合わせないと言うことは、同じ端末に対して同じリレーデータを重複配信させる可能性があり、何も対処をしないと、無線通信処理に大きな負荷をかけてしまう可能性がある。
また、もう1つの問題として、エリア内でリレーデータを共有する無線通信端末の数を適正に管理する必要がある。例えば、エリア内で、非常に少ない台数の無線通信端末だけがリレーデータを保持しているとすると、その少ない台数の無線通信端末が、全て設定されたエリアの外に出てしまって、リレーデータがどの無線通信端末にも保持されず、失われてしまう可能性がある。

【0059】
したがって、リレーデータを送信する場合の相手の無線通信端末の選定する際には、エリア内で検知される端末数と、リレーデータを保持した端末の台数の統計情報と、端末情報などを利用して、エリア内のリレーデータ非保持端末の台数を推定して、その推定した結果に基づいて、選択的にリレーデータを送信させる処理が行われる。

【0060】
次に、図10を参照して、選択的にリレーデータを送信させる処理の例について説明する。
図10の例では、無線通信端末Mxが、リレーデータを保持して、周辺の端末に送信するものとする。ここで、無線通信端末Mxの周辺には、複数台の無線通信端末Ma,Mb,Mc,Md,Me,Mf,Mg,Mh,Miが存在しているとする。無線通信端末Mxは、その端末の位置を中心としたエリアTxが無線通信可能な範囲である。同様に、無線通信端末Ma,Mbは、それぞれの端末の位置を中心としたエリアTa,Tbが無線通信可能な範囲である。
また、図10の例では、無線通信端末Mxの周辺の複数台の無線通信端末Ma~Miの内で、黒丸で示した端末Ma,Mb,Mf,Mg,Mhが、リレーデータが直接又は間接的に伝送されて保持した端末であり、白丸で示した端末Mc,Md,Me,Miが、リレーデータの保持状態が未知の端末であるとする。

【0061】
これらの状態から、無線通信端末Mxでは、以下に示す数式に基づいた計算処理を行う。ここで、各記号の定義を示す。
all:検出された全端末の数
hold:リレーデータを保持した検出された端末の数
unkall:データ保持状態が未知の検出された端末の数
unkhold:データ保持状態が未知端末の中で、データを保持していると推定される端末の数
hold:データを保持していると推定される全端末の数
all:更新前の検出された全端末の数
hold:更新前のリレーデータを保持した検出された端末の数
relay:リレーされる端末の数

【0062】
これらのデータの内で、例えばリレーデータを保持した端末の数については、図4に示したリレーコントロールアルゴリズムパラメータ内の端末番号の検出データから判断できる。

【0063】
まず、無線通信端末Mxでは、データ保持状態が未知端末の中で、データを保持していると推定される端末の数eunkholdを、次式(1)で計算を行う。
unkhold=nunkall×(hold/mall) ・・・(1)
ここで、nunkallは、無線通信端末Mxがアドホック通信モードで検出されているエリア内の未知の状態の端末の数である。

【0064】
次に、データを保持していると推定される全端末の数eholdを、次式(2)で算出する。
hold=nhold+eunkhold ・・・(2)

【0065】
さらに、無線通信端末Mxからリレーデータを送信する端末の台数lrelayを、次式(3)で算出する。
relay=(nall-ehold)/(nhold+1) ・・・(3)
このようにして決定した端末数lrelayの無線通信端末に対して、無線通信端末Mxから無線伝送でリレーデータを送信させ、受信側の端末でリレーデータを保持させる。
このような制御を行うことで、エリア内の通信相手に対して、リレーデータを保持したことを問い合わせることなくリレーデータを送信させて、エリア内の適正な台数の端末にリレーデータを保持させることが可能になる。

【0066】
[10.登録エリアの拡大縮小例]
次に、リレーデータを保持するエリアの拡大処理例について、図11を参照して説明する。
図11(a)は、アクセスポイントと通信が可能なエリアAP-11内に存在する無線通信端末M1~M8の位置を示したものである。この図11(a)の状態では、エリアAP-11が、リレーデータを保持するエリア(斜線を付与したエリア)であるとする。すなわち、エリアAP-11内の8台の無線通信端末M1~M8が、リレーデータを保持している可能性が高い状態であるとする。

【0067】
この図11(a)の状態から、エリアAP-11内の端末が外に移動して行き、図11(b)に示すように、エリアAP-11内には、2台の無線通信端末M1,M2だけがいる状態になったとする。このような状態になると、エリアAP-11内にいる端末で、エリアAP-11内の端末の数又は密度の低下が検出される。このエリア内の端末台数は、例えばアドホック通信モードで周辺端末を探索することで検出され、エリア内の端末の密度については、例えば過去に検出された端末の履歴から推定できる。この履歴としては、リレーデータに含まれる他の端末での受信履歴を参照することで、より正確に推定できる。

【0068】
例えば無線通信端末M1において、検出された端末台数又は密度が、例えば予め決められた閾値以下となった場合に、端末の数又は密度が低下したと判断される。この端末の数又は密度が低下したと判断した場合には、リレーデータを保持するエリアを、隣接したアクセスポイントのエリアまで拡大する処理を行う。図11(b)の例では、隣接したアクセスポイントのエリアAP-12に、多数の無線通信端末M11,M12,M13,M14,M15が存在している状態であるとする。

【0069】
このとき、エリアAP-11内のリレーデータを保持した端末M1又はM2は、リレーデータを保持するエリアを、エリアAP-11にエリアAP-12を追加して拡大する処理を行う。すなわち、図11(c)に斜線を付与した範囲で示すように、リレーデータを保持するエリアを、エリアAP-11,AP-12とする。
このようにすることで、エリア拡大後にある程度時間が経過することで、エリアAP-12内の無線通信端末M11,M12,M13,M14,M15までリレーデータが送信されて、リレーデータを保持する端末の台数がある程度確保され、リレーデータの消失を防止できるようになる。

【0070】
なお、拡大するエリアについては、例えば図9に示した隣接エリアのレベルに基づいて、元のエリアにレベルが近いエリアから選定することで、適正な拡大エリアの選定ができる。

【0071】
また、リレーデータの付加データでは、エリアの拡大後も元のエリアがAP-11であり、エリアAP-12については、拡大したエリアであることが判るようなデータ構造とすることが好ましい。このようにすることで、再びエリアAP-11内の端末台数が増加したときに、エリアAP-12をリレーデータ保持エリアから外して、リレーデータ保持エリアを縮小して元のエリアに戻す処理が可能になる。

【0072】
[11.変形例]
なお、上述した実施の形態例において、エリア判定に無線LANのアクセスポイントを使用するのは1つの例であり、その他の処理でエリアや絶対的な位置を判断して、端末自身の位置や情報を保持するエリアを判断するようにしてもよい。例えば、各無線通信端末が、GPS(Global Positioning System)と称される人工衛星から送信される信号(測位用信号)の解析で現在位置を測位する測位部を備えた構成としてもよい。このような測位部を備えた場合、その測位された絶対的な位置を基準として、情報を保持するエリアを設定することができる。

【0073】
あるいは、無線通信端末として、無線電話機能を備えた端末である場合、無線基地局からの信号を、アクセスポイントからの信号の代わりに扱って、エリアを設定するようにしてもよい。

【0074】
また、上述した実施の形態例では、端末内の蓄積情報を破棄として、端末内のメモリから完全にデータを消去する場合と、メモリのデータ管理処理で消去されたデータとして扱う場合とがあると説明したが、例えば、端末内の蓄積情報を破棄する際に、消去データ用のフォルダに移すことで、破棄処理したと扱うようにしてもよい。このようにすることで、例えば、端末があるエリアから外に出て、そのエリアに紐づけられたデータを破棄して、消去データ用のフォルダに移動させた状態で、その後さらに、その端末が再び同じエリアに戻ってきたとき、その消去データ用のフォルダに移動されたデータを、蓄積情報として戻すようにしてもよい。

【0075】
また、上述した実施の形態例では、エリアに紐づいて各端末に保持された情報は、いつまで保持されるかについては、特に説明しなかったが、例えば、最初に蓄積情報が生成されてから、ある程度時間が経過したとき、破棄するようにしてもよい。この時間による処理は、例えば図4に示したデータ構造中の、リレーデータヘッダ内のタイムスタンプを各端末が判断することで可能である。また、蓄積情報を受信した端末では、その受信した蓄積情報に対する何らかのコメントを付加して、新たな蓄積情報として、さらに他の端末に送信させるようにしてもよい。

【0076】
また、上述した実施の形態例では、図2に示したアプリケーション実行部101を備えて、アプリケーション実行部101でアプリケーションが実行された状況で、蓄積情報についての処理を行うものとして説明したが、アプリケーションの実行とは無関係に蓄積情報の処理を行ってもよい。また、アプリケーション実行部を備えない無線通信端末で同様の処理を行うようにしてもよい。すなわち、その端末自身では、アプリケーションに基づいて、蓄積情報を利用した表示などの処理を行わず、単に端末が備える記憶部を、エリア内の仮想ストレージとしてだけ利用してもよい。

【0077】
また、上述した実施の形態例においては、複数の無線通信端末間の送受信により同じ時刻または異なる時刻に特定エリアに存在する複数端末間での情報共有について述べた。しかしながら、これらの取得情報を当該エリアを離れても無線通信端末内に蓄積し続けることで、その後、基地局やアクセスポイント、直接通信、あるいは有線ネットワークによりインターネットや企業ネットワークなどのインフラネットワークに接続した際、当該取得情報をサーバや他端末,クラウドサービスへ送信,収集,管理することが可能である。これにより、取得情報の地図情報へのマッピングによる可視化や、データ処理による特徴抽出などを行うことで、更なるネットワークサービスに利用することも可能となる。

【0078】
また、ここまで説明したそれぞれの処理工程(検出工程、送信工程、受信工程、蓄積情報処理工程など)を実行させるプログラム(ソフトウェア)を作成して、そのプログラムを無線通信端末に実装させることで、既存の無線通信端末を、実施の形態例で説明した無線通信端末として機能するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100a,100b,100c,100d…無線通信端末、101…アプリケーション実行部、102…アプリケーションインターフェース部、103…アプリケーションデータベース、111…リレーコントロール部、112…リレーデータ処理部、113…コントロールデータベース、114…受信コントロール部、115…送信コントロール部、116…アクセスポイントモニタ部、121…無線通信処理部、122…アンテナ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10