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明細書 :バイオ光化学セル及びモジュール及び光化学的処理方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5297699号 (P5297699)
公開番号 特開2009-300271 (P2009-300271A)
登録日 平成25年6月21日(2013.6.21)
発行日 平成25年9月25日(2013.9.25)
公開日 平成21年12月24日(2009.12.24)
発明の名称または考案の名称 バイオ光化学セル及びモジュール及び光化学的処理方法
国際特許分類 G01N  27/416       (2006.01)
H01M  14/00        (2006.01)
B01J  19/08        (2006.01)
B01J  19/12        (2006.01)
B01J  35/02        (2006.01)
FI G01N 27/46 U
H01M 14/00 ZABP
B01J 19/08 A
B01J 19/12 D
B01J 35/02 J
請求項の数または発明の数 8
全頁数 15
出願番号 特願2008-155451 (P2008-155451)
出願日 平成20年6月13日(2008.6.13)
審査請求日 平成23年5月12日(2011.5.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
【識別番号】507033613
【氏名又は名称】株式会社バイオフォトケモニクス研究所
発明者または考案者 【氏名】藤井 有起
【氏名】金子 正夫
【氏名】根本 純一
【氏名】上野 寛仁
個別代理人の代理人 【識別番号】100085947、【弁理士】、【氏名又は名称】小池 信夫
審査官 【審査官】大竹 秀紀
参考文献・文献 特開2006-182615(JP,A)
特表2006-523301(JP,A)
特開2001-029944(JP,A)
国際公開第2006/095916(WO,A1)
特開2006-119128(JP,A)
特開2001-289816(JP,A)
特開平10-288594(JP,A)
調査した分野 G01N 27/416
H01M 14/00
特許請求の範囲 【請求項1】
電導体または半導体アノード電極と酸素還元カソード電極を薄層を形成するように対向させ、当該対向させた電極により、バイオマスを含む有機化合物と無機化合物から選ばれた1種以上の電子供与体を含む溶液または懸濁液からなる液層の薄層を挟みこれを保持するように構成してなる平面型薄型セルであって、当該薄型セルの対向する壁面は、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるための作用電極としての電導体または半導体からなる当該アノード電極と、
及び酸素還元反応を行わせる対極としての酸素還元触媒を担持した当該カソード電極とから構成されるものであり、
かつ、当該対向する電極により液層が上部まで保持され、その壁面の全面が前記薄層を形成する液層と接触しており、
また、当該対向する電極は、当該液層と接する壁面の反対側においてそれぞれ気相と接しており、
さらに前記アノード電極と前記カソード電極を電気的に接続する外部導線と、当該電子供与体を含む溶液または懸濁液及び/又は前記アノード電極に対して外部光源又は内部光源からの光を照射する手段と、及び、空気または酸素を当該溶液または懸濁液に導入する手段を有し、当該電子供与体を酸素共存下光照射下において分解すると同時に発電することを特徴とするバイオ光化学セル。
【請求項2】
前記セルは、前記電子供与体を含む溶液または懸濁液の流入口と流出口を有することを特徴とする請求項1記載のバイオ光化学セル。
【請求項3】
請求項1又は2の記載において、酸素還元カソード電極に坦持する酸素還元触媒として、周期律表の7A族または8族から選ばれる金属またはその酸化物を、単独で用いるかまたは炭素、グラファイトあるいは無機物からなる担体に坦持して用いることを特徴とするバイオ光化学セル。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項の記載において、前記電子供与体を含む溶液または懸濁液中にまたは当該アノード電極を構成する電導体または半導体中に、ハロゲンイオンを存在させることを特徴とするバイオ光化学セル。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項の記載において、前記空気または酸素を当該溶液または懸濁液に導入する手段として、前記カソード電極および酸素還元触媒の担体として気体透過性の多孔質材料を用い、当該カソード電極の当該溶液または懸濁液と接する面の反対側において接している当該気相には空気または酸素を共存させるか流通させることを特徴とするバイオ光化学セル。
【請求項6】
請求項記載のバイオ光化学セルをサブモジュールとし、このサブモジュールを複数個接続してなることを特徴とするバイオ光化学セルモジュール。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載のバイオ光化学セル、又は請求項に記載のバイオ光化学セルモジュールに当該電子供与体を含む溶液または懸濁液を、当該バイオ光化学セル又は当該バイオ光化学セルモジュールに収容し、当該溶液、懸濁液、またはアノード電極に光照射して、当該電子供与体の光分解と電力発生を同時に行うことを特徴とする光化学的処理方法。
【請求項8】
請求項に記載の光化学的処理方法において、当該電子供与体として環境汚染物質を用い、 当該環境汚染物質を光分解浄化すると同時に電力を発生することを特徴とする光化学的処理方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は有機物、無機物やバイオ系化合物、バイオ系廃棄物、環境汚染物質などの光分解浄化と同時電力化、または色々な有機・無機化合物の光電気化学的分析・計測に関係する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオマスなどの環境汚染物質による環境汚染が深刻化し、人類生存環境の悪化や生物種の急速な減少が目立っている。また、化石燃料燃焼による二酸化炭素の大量排出による地球温暖化と、それに起因すると考えられる異常気象、大洪水、永久凍土の消失、氷河の確実な溶解、海面上昇等の現象が世界各地で頻繁に、且つ、高頻度で発生するようになり、人類の生存環境は急速に悪化し、脅かされつつある。かかる深刻な全地球的規模の問題を早急に解決するために、環境汚染物質の分解除去や、新しいエネルギー資源の創製や革新的な省エネルギー技術が強く求められている。環境汚染物質の分解除去法や風力発電、太陽電池による太陽光発電、バイオマス利用などの再生可能な新エネルギー資源、さらに、燃料電池を用いた省エネルギーシステムなどが、これらを解決すべき技術として期待され、普及しつつある。
【0003】
しかしながら、これら新しい分解やエネルギーシステムは、これを実際に経済的に実施するためには、効率やコストなどの面でまだまだ問題があり、バイオマス廃棄物などの環境汚染物質の完全分解浄化や、二酸化炭素排出量を現実的に大幅に削減できる技術は、現実にはまだ存在しないといわざるを得ない。2年前に発効した京都議定書において、各締約国に課される二酸化炭素削減の数値目標についても、容易には達成できるものではなく、特に日本に関しての削減目標を達成することは、その達成も危ぶまれている程のものである。
【0004】
二酸化炭素排出を抑制するために、現在いわゆる燃料電池が注目されている。これは、燃料から電力を得るに際し、単に燃料を燃焼してそのエネルギーで発電機を回して電力を得る火力発電に対し、燃料電池によれば、この燃料を酸素と化合せしめる際に、電極を用いて外部回路を介して当該反応を行わせ、このときに生ずる電荷のやり取りを、電力として直接得ることができるからである。
【0005】
一方また、太陽エネルギーを電力に変えるため、結晶質シリコンやアモルファスシリコン半導体を用いる太陽電池が実現されているが、発電効率が限られているという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、太陽電池のように、太陽エネルギーやその他の光エネルギーを電力に変換でき、再生可能なエネルギー資源として用いうるとともに、さらには、水素やメタノールを使用する燃料電池では、従来用いることができなかった色々なバイオマスや無機・有機の化合物、およびそれらの廃棄物などの電子供与性化合物を燃料として用いることにより、それらの光完全分解浄化と同時に電力発生ができる光物理化学電池が、これまでの太陽電池及び燃料電池に代わる新しい省エネルギー発電システムとして社会の使用に供することができるという新しい着想を得た。その基本的な特許は”光物理化学電池”として2006年3月9日に、出願人;茨城大学、発明者;金子正夫として、国際特許出願した(特許文献1)。また、これを利用するためのセル作製の詳細と利用方法を平成19年7月6日に出願した(特許文献2)。
【0007】
本発明では、この実用化を促進するための高効率化や低価格化をはかるために、さらに優れたセルの作製方法や利用方法を提供することを目的とする。
<patcit num="1"> <text>PCT/JP2006/305185</text></patcit><patcit num="2"> <text>特願2007-178425</text></patcit>
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)バイオマスを含む有機化合物と無機化合物から選ばれた1種以上の電子供与体を含む溶液または懸濁液中に浸漬され、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるための作用電極として電導体ないし半導体からなるアノード及び酸素還元反応を行わせる対極としてカソードと、前記アノードと前記カソードを電気的に接続する外部導線と、電子供与体を含む液体を収容するセル(容器)と、該溶液または懸濁液及び/又は前記アノードに対して外部光源又は内部光源からの光を照射する手段とを有し、かつ空気ないし酸素を該液体に吹き込むことを特徴とするバイオ光化学セル。
【0009】
(2)バイオマスを含む有機化合物と無機化合物から選ばれた1種以上の電子供与体を含む溶液または懸濁液中に浸漬され、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるための作用電極として電導体ないし半導体からなるアノード及び酸素還元反応を行わせる対極としてカソードと、前記アノードと前記カソードを電気的に接続する外部導線と、電子供与体を含む液体を収容するセル(容器)と、該溶液または懸濁液及び/又は前記アノードに対して外部光源又は内部光源からの光を照射する手段とを有し、かつ空気ないし酸素を該液体に吹き込むことにより、電子供与体の光分解と電力発生を同時に行うことを特徴とする光化学的処理法。
【0010】
(3)環境汚染物質を含有する溶液または懸濁液中に浸漬され、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるための作用電極として電導体ないし半導体からなるアノード及び酸素還元反応を行わせる対極としてカソードと、前記アノードと前記カソードを電気的に接続する外部導線と、電子供与体を含む液体を収容するセル(容器)と、該溶液または懸濁液及び/又は前記アノードに対して外部光源又は内部光源からの光を照射する手段とを有し、かつ空気ないし酸素を該液体に吹き込むことを特徴とする環境汚染物質の光分解浄化と電力発生を同時に行う光化学的処理法。
【0011】
(4)バイオ光化学セルにおいて、セルの大きさが1cm×1cmから100cm×100cmの間にあり、または面積で1cm2から10,000cm2の間にあり、かつアノードとカソードが挟む液体層が0.1cmから50cmの間の厚さにあるバイオ光化学セルをサブモジュールとし、このサブモジュールを単独で使用するかまたは複数個接続したことを特徴とするバイオ光化学セルモジュール。
【0012】
(5)において、酸素還元カソードに坦持する触媒として、周期律表の7A族または8族から選ばれる金属ないしその酸化物を、単独または炭素やグラファイトあるいは無機物などの担体に坦持して用い、かつ空気や酸素を単に共存させるかあるいは吹き込むことを特徴とするバイオ光化学セル。
【0013】
(6)有機・無機化合物または/およびバイオマスなどの電子供与性化合物を含む液体または懸濁液中に浸漬され、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるための作用電極として電導体ないし半導体からなるアノード及び酸素還元反応を行わせる対極としてカソードと、前記アノードと前記カソードを電気的に接続する外部導線と、電子供与体を含む液体を収容する容器と、該液体及び/又は前記アノードに対して外部光源又は内部光源からの光を照射する手段とを有するバイオ光化学セルを用いて、前記電子供与性化合物を含む液体または懸濁液に光照射して生成物中の二酸化炭素及び窒素を分析しまたは光電流を発生させて、その生成物や光電流値と液中の溶質濃度の関係をあらかじめ測定して検量線を求めておき、未知濃度の液体または懸濁液の検体について生成物中の二酸化炭素及び窒素を分析し、または光電流を測定して、未知検体の溶質濃度またはトータルオーガニックカーボン(TOC)またはトータル酸素需要量(TOD)を決定することを特徴とする分析方法。
【0014】
(7)電子供与体はバイオマスを含む有機化合物、他の有機化合物、及び無機化合物から選ばれた1種以上である。前記容器は前記液体の流入供給口と流出口を有してもよい。液体または懸濁液または電導体または半導体に光増感剤やハロゲンイオンを添加して存在させてもよい。
【0015】
(8)前記バイオ光化学セルを用いた化学実験用あるいは教材用に小型化・簡素化した光化学セルでもよい。光化学セルを複数接続して光化学セルモジュールが構成される。
前記電子供与体を化学的に分解して無害化することを特徴とする化学処理方法が実施できる。前記電子供与体を化学的に分解して発電を行うことができる。また、本発明により、前記センサを備えた計測器が提供される。
【0016】
(9)前記バイオ光化学セルおよびモジュールまたはそれらの利用方法において、参照電極を挿入し、アノードに電圧を印加して電位を規制した状態で光電流を発生させることを特徴とするバイオ光化学セルおよびモジュールおよびそれらの利用方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、種々の有機、無機化合物あるいはバイオマス廃棄物を太陽光などの光照射下において分解し、同時に効率よく発電することができる。これをバイオ光化学セルに利用すれば、環境浄化、発電、分析、測定、検出、教材等に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について補足説明すれば、以下のとおりである。
(i)光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるために、作用電極として電導体ないし半導体、および対極として酸素還元用電極が、バイオマス、有機・無機化合物、ないしはその他の電子供与体を含む液体中に設置され、作用電極と対極は外部導線でつながれ、該作用電極ないし該液体に外部光源ないし内部光源からの光が当たり、さらに空気や酸素を吹き込むように工夫が施されたバイオ光化学セル。セルの形態としては、たとえば円筒型で内部に照射光源があり、たとえば照射光源カバーの外壁は半導体アノード電極、セルの外側の内壁は酸素還元カソードとなる。あるいは、半導体アノード電極と酸素還元カソードが電子供与体溶液の薄層を挟んで薄型セルを構成し、外部から光照射する。
【0019】
(ii)薄型セルにおいては、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるために、アノード電極として電導体ないし半導体、および対極カソードとして酸素還元用電極が、バイオマス、有機・無機化合物、ないしはその他の電子供与体を含む液体層を挟むように設置され、さらに液体の流供給口と流出口が設置されかつ前期アノード電極ないし液体に光が照射されるように、またさらに空気や酸素を吹き込むように工夫された薄層型バイオ光化学セル。その一例は図1で示される。
【0020】
(iii)請求項1から5のバイオ光化学セルにおいて、セルの大きさが1cm×1cmから100cm×100cmの間にあり、または面積で1cm2から10,000cm2の間にあるバイオ光化学セルをサブモジュールとし、このサブモジュールを単独で使用するかまたは複数個接続したことを特徴とするバイオ光化学セルモジュール。複数以上つなぐ時は、必要に応じてそれら複数のセルの中を互いに液体ないし懸濁固体を含む液体が出入りするように、および/または液中に空気または酸素を吹き込むための装置が付され、また液体ないし懸濁固体を含む液体の流供給口と流出口が設置されかつアノード電極とカソード対極が必要な電力を発生するように導線で直列ないし並列に接続されたバイオ光化学セルモジュ-ル。
【0021】
(iv)前記バイオ光化学セルないしバイオ光化学セルモジュ-ルにおいて、バイオ光化学セルないしバイオ光化学セルモジュ-ルの内部にバイオマス、有機物・無機物あるいはそれらの廃棄物などの電子供与性化合物の溶液または懸濁状の液体を入れないしは互いに流通させ、酸素共存下において、さらに色素増感剤の非共存下または共存下で、さらにはハロゲンイオンの共存下または非共存下で、アノード電極表面ないし液体部に外部ないし内部から光照射することにより、バイオマス、有機物・無機化合物あるいはそれらの廃棄物である環境汚染物質などを光分解して浄化すると同時に電力を発生させる方法とそのためのバイオ光化学セル及びモジュ-ル。
【0022】
(v)有機・無機化合物または/およびバイオマスなどの電子供与性化合物を含む液体または懸濁液中に浸漬され、光化学的反応または光電気化学的反応を行わせるための作用電極として電導体ないし半導体からなるアノード及び酸素還元反応を行わせる対極としてカソードと、前記アノードと前記カソードを電気的に接続する外部導線と、電子供与体を含む液体を収容する容器と、該液体及び/又は前記アノードに対して外部光源又は内部光源からの光を照射する手段とを有するバイオ光化学セルを用いて、前記電子供与性化合物を含む液体または懸濁液に光照射して生成物中の二酸化炭素及び窒素を分析しまたは光電流を発生させて、その生成物や光電流値と液中の溶質濃度の関係をあらかじめ測定して検量線を求めておき、未知濃度の液体または懸濁液の検体について生成物中の二酸化炭素及び窒素を分析し、または光電流を測定して、未知検体の溶質濃度またはトータルオーガニックカーボン(TOC)またはトータル酸素需要量(TOD)を決定することを特徴とする分析方法。
【0023】
(vi)前記バイオ光化学セルないしバイオ光化学セルモジュ-ルにおいて、計測器としてセンサ部用の光源点灯装置、光電流の測定回路とその補正回路、分析結果を計算処理して出力する演算素子、結果の数値を表示する表示素子を備えた計測器。およびこの計測器と請求項10におけるセンサ部を用いて液体ないし気体検体中の未知濃度の物質濃度や、TOCやCOD、TODなどを計測する方法。
【0024】
(vii)前記発明において、請求項1から7において用いられるセルないしモジュ-ルを化学実験用あるいは教材用に小型化・簡素化したセルないしモジュ-ル。
【0025】
(viii)前記発明において、酸素還元用に多孔性の対極が、片面はイオン交換膜ないしイオン交換用隔壁を介して、作用電極が存在する液体部と接しており、反対側の面が酸素を含有する気相と接する構造を持つ光学セルないしモジュ-ル、ないしセンサ部。およびこれらを用いて光分解や計測を行う方法。
【0026】
(ix)バイオ光化学セル及びモジュールまたはそれらの利用方法において、参照電極を挿入し、アノードに電圧を印加して電位を規制した状態で光電流を発生させることを特徴とするバイオ光化学セルおよびモジュールおよびそれらの利用方法。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
(光電流の発生及び光物理化学電池)
【0028】
本発明によるバイオマス、有機・無機の電子供与性化合物やそれらの廃棄物の光分解浄化と同時電力発生の動作の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図2は、本発明のバイオ光化学セルの一例であって、電子供与性化合物として、たとえばバイオマス廃棄物を使用し、これを含む水系媒体等の当該液相媒体中に、作用電極(アノ-ド)として、紫外域のナノスケ-ル超多孔質半導体電極(図ではフッソドープの電導性ガラスFTO上に被覆した超多孔質二酸化チタン薄膜電極(FTO/TiO2)、または電導率が10-5Scm-1以上のn型可視域半導体からなる電極を挿入し、さらに酸素を還元できる導電性電極、例えば白金等からなる対極を酸素還元用カソード電極として挿入し、当該アノ-ド電極とカソ-ド対極300を外部導線で接続し外部回路を構成してなる電池であり、当該液相媒体中に空気または酸素を吹き込む電池である。
【0030】
当該光アノード電極に太陽光のような光を照射することにより、図2に示したように、当該アノ-ドの価電子帯(VB)から伝導帯(CB)に電子(e)が励起し、当該価電子帯(VB)には正孔(h)が残る。この正孔が、バイオマスやバイオマス廃棄物等の電子供与性化合物を酸化分解し、二酸化炭素(CO2)とプロトン(H)または/および窒素(N)を生ずる。酸化分解を受けるのが炭素化合物の時には二酸化炭素とプロトンを生ずる。
【0031】
一方、励起した電子(e)は、外部回路を通じて、カソード白金等の対極に渡り(すなわち外部回路に光電流(電子流の矢印と逆方向)を生じせしめ)、そこで当該液相媒体中に共存させた酸素を還元し、水を生ずる。このときには、図2に示したように、プロトン(H)も、当該反応に関与する。
【0032】
このようにして、バイオマスや有機・無機化合物、たとえばアンモニア等の電子供与性化合物が、照射した光の助けを借りて、外部回路を経由して液相媒体中に共存(溶存)する酸素と反応して窒素と水を生ずるのである。すなわち、本発明の光化学電池によれば、従来型の燃料電池では燃料として使用できなかった、バイオマス廃棄物等の不燃性化合物、さらには、水等であっても、照射光で活性化することにより、分解することができるので、光化学電池の燃料として利用できるのである。すなわち、本発明の光化学電池によれば、水素を一旦発生させることなく、または、水素を経由せずに、光電流を発生させる燃料電池を構成できるのである。対極カソードでは酸素を還元することが重要なので、空気や酸素を液中に吹き込むことが重要である。この吹き込みは直接セル中で行ってもよいが、一度液体をセル外に取り出してから空気や酸素を吹き込むのも効果的である。
【0033】
上記の光化学電池においては、電子供与性化合物の光分解を促進するために、酸化触媒を当該アノ-ド電極と共に用いる。また、照射する光に関し、太陽光スペクトルの約半分を占める可視光を効率よく利用するためには、色素などの増感剤を当該半導体電極と一緒に用いることも好ましい。さらにまた、対極における酸素還元を効率よく行わせるためには、酸素の還元触媒を当該対極と組み合わせて用いることにより、さらに好ましい結果を与える。以下、さらに詳細に説明する。
【0034】
本発明において、光アノード電極として使用可能なものは、(a)紫外域における多孔質半導体電極、または(b)キャリヤ密度が1013cm-3以上、及び/または電導率が10-5Scm-1以上のn型可視域半導体である。
【0035】
(a)紫外域における多孔質半導体電極としては、二酸化チタンが良好な結果を与えるが、その他、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化タングステン、炭化ケイ素などの多孔質の紫外域半導体が用いられる。そのとき、結晶からなる半導体は表面が平らなため、光化学反応に有効に用いられる半導体表面はきわめて小さく、効果が低い。光電気化学反応が起こる光アノード/液相の接触面積を大きくするため、実効表面積が見かけの電極面積の数100倍から1000倍以上の超多孔質半導体材料を用いることが重要である。
【0036】
これら紫外域電導体は、本来は半導体であり、それ自身電導体ではないが、このように実効表面積の大きい多孔質体として構成されているため、当該実効表面積が見かけの電極面積より数百倍から1千倍以上となっており、紫外光照射下においては、多数の電子が液相から注入される結果、多数のキャリヤ電子が内部に存在するのと同じことになる。すなわち、これら紫外域多孔質電導体は、紫外光照射条件下ではあたかも電導体と同様に振舞うのである。
【0037】
また(b)キャリヤ密度が1013cm-3以上、及び/または電導率が10-5Scm-1以上のn型可視域半導体としては、シリコン、ガリウムヒ素、チタン酸ストロンチウム、セレン化カドミウム、リン化ガリウムなどのn型可視域半導体を光アノード電極として用いることができる。さらに好ましくは、キャリヤ密度が1016cm-3以上、及び/または電導率が10-2Scm-1以上のn型可視域半導体が用いられる。
【0038】
本発明の光化学電池においては、光照射された光アノードにおいて、その価電子帯から伝導帯に電子が励起し、当該価電子帯に正孔が残り、当該正孔が、バイオマス等の燃料を酸化分解し、二酸化炭素と窒素とプロトン(H)を生ぜしめるものであるが、このとき、従来のごとく通常の可視域半導体などの電極を使用した場合では、光照射により生じた正孔がこの可視域半導体電極を溶解してしまうので、実用的に用いることはこれまでできなかった。
【0039】
またアノ-ド材料を多孔質電極とするためには、例えば、半導体材料の粉末を、電導性材料からなる基板上に塗布してから焼結し、多孔質半導体膜とすることが好ましい。透明導電性基板材料としては、透明電導性ガラス(ITO等)、金属、金属薄膜、炭素など色々な材料を用いることができる。また、塗布後の焼結時の加熱により、当該基板である電導性ガラスは、その電導度が低下することが起こりうる。その場合は、フッ素ドープの材料を用いることにより、当該電導度の低下を少なくすることができ、好ましい。
【0040】
(対極カソード電極)
本発明における対極カソード電極においては、周期律表の7A族または8族から選ばれる金属ないしその酸化物を触媒として用いる。例えばMn、Ru、Ir、Pt、Niなどの金属やその酸化物が用いられる。二酸化マンガンは特に活性が高い。これらは単独で使用してもよいが、あるいは炭素、多孔質炭素、グラファイト、あるいはこれらを任意の組成で混合・圧縮したものや、他の無機、有機の担体に坦持して用いられる。さらにはこれらの複合触媒膜等を透明電導性ガラスやステンレスなどの、或いはこれらに白金微粒子や二酸化マンガンを坦持した電極、白金黒電極など、いずれも用いることができる。
【0041】
さらには、カソード電極および酸素還元触媒の担体として気体透過性の多孔質材料を用いることによって電子供与体液体または懸濁液がカソードの液体または懸濁液と接する面の反対側において気相と接するようにし、気相には空気または酸素を共存させると、光分解効率および発電特性が向上する。
【0042】
(バイオ光化学セルモジュ-ル構成)
本発明におけるバイオ光化学セルは、電導体ないし半導体からなるアノ-ドと、酸素還元用のカソ-ド電極からなり、またセル外部ないし内部から光照射ができることを特徴とする。アノ-ドまたはカソ-ド、あるいはアノードとカソード両方がセル壁を兼ねることもできる。また、内部照射装置を備えることも有効である。
【0043】
アノ-ドないしカソ-ドどちらかの電極を透明にして、アノードとカソードで比較的薄い液層をはさむ平面型のセルは、一例として図1で表される。このような平面型セルは、特に太陽光を光源に用いるときは有効である。空気または酸素を吹き込むための装置を附し、空気または酸素を吹き込むと光分解と発電の効率が増す。
【0044】
透明電極は電導性ガラスを用いるため、その電気抵抗が比較的大きい。その問題をできるだけ緩和するためには、比較的面積の小さく従って電気抵抗値が低い単位セルを複数以上組み合わせることにより、効率の高いモジュ-ルを構成できる。
【0045】
隣接する連結した単位セルを通して、液体ないし懸濁液体を流通させることにより、大量の液体を処理できる。このようなモジュ-ル単位を数多く組み合わせることにより、大量の溶質を光分解浄化し、大電力を発生することが可能になる。
【0046】
本発明におけるバイオ光化学セルが電子供与性化合物等を光分解して光電流を発生するとき、その光電流値はその電子供与性化合物の濃度に比例する。これを利用すると、色々な化合物の濃度やTOC、TODなどを計測できる、全く新しい光センサを構築できる。このような光センサによる分析・計測を行うには、アノードとカソードおよび微小型光源をコンパクトにまとめてセンサ部を作るのが好ましい。このセンサ部を、センサ部における光源点灯装置、光電流の測定回路とその補正回路、分析結果を計算処理して出力する演算素子、結果の数値を表示する表示素子を備えた計測器と用いて、検体中の物質の未知濃度を計測できる。この光センサに基づく分析計はこれまでにないまったく新しい原理に基づいて化合物濃度を測定するので、従来技術では不可能であった色々な測定が可能になる。トータルオーガニックカーボン(TOC)やトータル酸素需要量(TOD)などを決定できる。
【0047】
後に詳しく述べるように、本発明は上記の分析のみならず、色々なバイオマスや有機・無機の化合物、あるいはそれらの廃棄物を光分解・浄化するとともに、電力エネルギーを発生する一種の燃料電池として利用することができる。このような光化学デバイスは今後ますます発展する研究・応用分野である。このような観点から、研究開発におけるラボ用のバイオ光化学セルとして簡便に用いることができれば研究を著しく促進できると予想される。また、環境問題やエネルギー資源問題の重要性が極めて高くなった今日、学校などにおける教材として大きな需要がある。この観点から、ラボ用や教材としての利用を目的とした、簡素化、小型化したバイオ光化学セルやモジュ-ルは価値が高い。
【0048】
(電子供与性化合物等)
本発明におけるバイオマス、有機物・無機物あるいはそれらの廃棄物などの電子供与性化合物としては、水自体を燃料として使用できることが特筆されるほか、アンモニア、尿素、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、さらにはブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール等の高級アルコール等、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、炭化水素(メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニリン、アントラセン等)、そのほかの有機化合物類(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸等有機酸、及びこれら酸のエステル、ケトン、エーテル、メチルアミン、エチルアミン等アミン、酸アミド、フェニルアラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、チロシン)、糖類(グルコース、ショ糖等)、アガロ-ス、セルロ-スなどの多糖類、タンパク質、リグニンなどの高分子化合物、さらには無機化合物(金属塩等)等、アノード電極に対して、電子供与体として働く化合物やそれらの廃棄物など、何でも用いることできる。
【0049】
これらのうち、水以外の化合物は、水溶液やその他の溶液として用いることができる。なお、液体燃料等からなる液相媒体中に、ハロゲンイオン、NaSO、NaOH等無機或いは有機の電解質を共存させると、当該液相媒体の電導性が高まり、分解・変換効率を上げることができる。また、当該液相媒体中には空気や酸素を吹き込み、また、可視光を有効に利用するために色素増感剤や、あるいは酸素を有効に利用するためにカソード対極に酸素還元触媒を共存させることも好ましい。
【0050】
さらに、本電池で用いられる電子供与性化合物としては、現在エネルギーを加えて処理している人間や動物の排泄物(畜産排泄物、し尿、工場排水、生ゴミ、農業廃棄物、廃油など)を用いることができる。さらにまた、種々のバイオマス、例えば木材、植物の葉、茎、セルロース、リグニン、その他の多糖類(グルコース、カラゲニン、デン粉、セルロース、キチン、キトサン等)、タンパク質類(ゼラチン、コラーゲン等)等の固体ないしスラリーや溶液を用いることもできる。これらの廃棄物は環境汚染の主要原因となるが、本電池により光分解することにより浄化されるので、当該光化学電池にて分解と発電に使用した後、環境中に放出できるとともに、同時に発生する電力を利用できる。
【0051】
(酸素)
本発明の光物理化学電池においては、対極カソード電極の活物質は、酸素を代表とする電子受容体なので、当該液相媒体中のカソ-ド電極近傍に酸素または電子受容体を共存(通常は、溶存酸素として共存)させることが条件である。当該酸素は、基本的に1気圧の酸素が使用できるが、酸素混合ガス、たとえば空気でもよい。当該電池内の酸素の圧力を1気圧以上に高めると、液相媒体中の溶存酸素濃度が高まる等の理由のために、光物理化学電池の特性が向上する。なお、酸素は、純酸素ガスをそのまま、または窒素ガス等で任意の濃度に希釈して供給してもよい。空気や酸素はセル中に吹き込むと効果が高いが、セルから液体を一度外部に取り出してから吹き込んでもよい。また分解して酸素を発生させる化合物(例えば過炭酸ナトリウム等)を液相媒体中に存在せしめてもよい。また、空気を使用する場合は、ゼオライト等の分子ふるい的吸着剤や酸素富化膜を使用するシステムにより、酸素濃度を高めた酸素富化ガスを使用することも好ましい。空気や酸素をセル内に吹き込むことによりバイオ光化学セルの活性を高めることができる。
【0052】
(照射光)
本発明において、バイオ光化学セルの半導体電極に照射する光は、再生可能エネルギー資源の創製という観点からは、太陽光を用いることが好ましいが、その他、人工光源等いずれも用いることができる。例えば、水を電子供与体として用いる場合には、理論的には少なくても1.23eV以上の光エネルギーを照射することが必要である。これは波長が約1000nm以下の光に相当する。
【0053】
またアンモニアを電子供与体とする場合には、理論的には少なくても0.057eV以上の光エネルギーでよく、これは波長が約20μm(赤外領域)以下の電磁波に相当する。
【0054】
このように、本発明で使用する電子供与体を活性化するのに必要な光(電磁波)エネルギーの大小の差異について、水を燃料とする場合とアンモニア燃料の場合を比較する。水燃料の場合は、当該水の電子供与性は極めて弱いので、活性化するのに比較的大きなエネルギーを要するのに対し、アンモニア燃料の場合は、その電子供与性は水素に近いほど大きいため、活性化するのには僅かなエネルギーのみで足りる。
【0055】
本発明において、太陽エネルギーをできるだけ有効に変換利用するためには、太陽スペクトル中の割合が高い、可視部から近赤外部の光を用いるのが好ましい。また、人工光源を用いる場合の人工光源としては、燃料を活性化できる電磁波を発生する光源なら何れでもよく、通常の可視光源、キセノンランプ、ハロゲンランプ(白熱灯)、タングステンランプ、照明用のランプ、水銀ランプ(高圧、超高圧)紫外光源、赤外光源、高周波電磁波、LEDなどいずれも好適に使用することができる。
【0056】
光源は外部から照射してもよいし、バイオ光化学セルやモジュール中に組み込んで電極・セルまたはモジュールと一体化してもよい。センサや分析計の場合には、一定の光量での光照射が望ましいので、一体化するのがよい。光源からレンズや反射鏡あるいは光学ファイバ-を用いて光を誘導し、照射するのもよい。
【0057】
(酸化触媒)
本発明において、光アノード電極と組み合わせてその表面を水の酸化触媒で修飾すると、特に水そのものを電子供与体として用いる場合には、良好な結果を与えるため好ましい。当該水の酸化触媒としては、白金、ルテニウム、イリジウム、マンガンなどの金属やその酸化物、あるいは、ルテニウム、マンガンなどとアンモニアやポリピリジン配位子、ポルフィリン、フタロシアニンなどとの金属錯体などが好適に用いられる。かかる金属錯体は触媒活性が高く、良好な結果を与える、ルテニウムやMnのアンミン錯体は活性が高く好ましい。また、当該酸化触媒は、後記実施例にも示したように、液相媒体中に共存させることも好ましい。
【0058】
なお、水の酸化触媒としては、さらに詳しくは、本発明者により提案されている種々のものが好適に使用可能である(たとえば、前記引用特許文献等を参照。)。
【0059】
(増感剤)
本発明においては、光アノード電極として、紫外域における多孔質半導体等の紫外域材料を用いる場合は、紫外光を照射することが好ましいが、可視光をも利用しうるようにするために、増感剤を作用極に吸着させるか、及び/又は前記電子供与体の溶液または懸濁溶液からなる液相媒体中に、これら増感剤を共存させることが好ましい。
【0060】
増感剤としては、有機、無機の色素増感剤が一般に用いられる。例えばルテニウム、イリジウムなどとポリピリジンなどとの種々の金属錯体が増感剤として良好な結果を与える。特にビス又はトリス(ビピリジン誘導体配位子)ルテニウム錯体は、後記実施例に示すように活性が高く好ましく、またフェナントロリンやターピリジンのRu錯体も好ましい結果を与える。また、色々な金属イオンやポルフィリンやフタロシアニンあるいはそれらの誘導体及びこれらの金属錯体を用いることができる。色々なバイオマスに含まれる天然の色素も効果的である。
【0061】
(作動温度)
本発明の光物理化学電池の作動温度は、通常室温でよいが、一般には-40~300℃の範囲が選択され、さらには、-20~100℃の範囲がより良好な結果を与える。
【0062】
(参照電極)
バイオ光化学セルおよびモジュールにより電力を発生させて利用することが目的の場合には、参照電極を用いずに、光アノードと酸素還元カソードの2極系で光化学反応を行わせることが望ましい。しかしながら分析などへの応用のためには、用いる電子供与性化合物が発生する光電流の値をその電子供与性化合物に関わる情報として利用するので、安定な光電流が得られる工夫をすることが望ましい。そのために、光アノードと酸素還元カソードに加えて参照電極を3本目の電極として挿入し、その参照電極に対して固定した電圧を光アノードに印加することにより、安定なかつ大きな光電流を発生させることが可能である。参照電極としては通常電気化学で用いられる銀—塩化銀、甘コウ(塩化水銀)電極、標準水素電極などのほか、フェリ/フェロシアン化鉄のように、予め電位を決定した金属や金属錯体などの電極を参照電極として用いることができる。
【0063】
以下、実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。またMとあるのはモル濃度(mol dm-3)である。
【実施例1】
【0064】
し尿の主成分である尿素は自然界に存在するウレアーゼの作用により速やかにアンモニアに変わるので、し尿処理のモデルとして、アンモニアの光分解浄化を行った。薄層単位セル(図1)において、有効電極面積4cm×4cm、液層厚さ0.25cmのセルを、ナノスケ-ル超多孔質二酸化チタン半導体薄膜(約10μm厚さ)被覆のフッ素ド-プ電導性電極(FTO)作用極(5cm×5cm)と、白金薄膜被覆FTO対極(5cm×5cm)、及びネオプレンゴムスペーサー(厚さ2.5mm)から作製した。この単位セルの液層に、1.7Mアンモニア水溶液4mlを入れ、空気を該液体に吹き込みながら太陽光照射と近い条件になるように、500Wキセノンランプにより白色光強度100mWcm-2でアノード側から光照射し、ガスクロマトグラフで発生窒素を定量することによりアンモニアの分解率を調べたところ、9時間で92%分解無害化して同時に電力を発生し、アンモニアからみた電力へのエネルギー変換効率は約40%であった。反応初期と9時間後の発電特性は表1のようになった。ここで、Jsc/mAcm-2は短絡光電流密度、Voc/Vは開放光起電力、曲線因子(FF)は、実際のI-V特性曲線とX-軸及びY-軸で囲まれる面積(Wreal、すなわち実際の出力電力)を、光起電力がゼロすなわち回路を短絡したときの光電流(Jsc)と、開回路のときの光起電力(Voc)で囲まれる面積(Wideal=JscxVocで、理想的な場合の出力電力)を除した値(=Wreal/Wideal)である。なお空気を吹き込まない時は、初期の光電流値、光起電力、及び曲線因子は吹き込んだ時と同等であったが、数分後にはこれらの値は著しく低下し、空気吹き込みの効果は顕著であった。
【表1】
JP0005297699B2_000002t.gif

【実施例2】
【0065】
実施例1において、アンモニア水の代わりに0.5Mグリシン水溶液を用い、さらに電解質として0.1Mの硫酸ナトリウムを添加し、実施例1と同様に光反応を行った。空気吹き込み有り無しの発電I(光電流)-V(光起電力)特性の比較により、空気吹き込みにより発電特性は向上し、かつ著しく安定な特性を与えた。
【実施例3】
【0066】
カーボン紙/白金—炭素触媒/ナフィオンカチオン交換体膜/白金—炭素触媒/カーボン紙からなる複合体とステンレスステイール網からなるカソードを用い、これを3mm厚さのネオプレンゴムスペーサーを挟んでFTO/TiO2薄膜アノードと組み合わせてバイオ光化学セルを作製し、カソ-ドの液相と接する面の反対側は空気相とした。0.5Mグリシン水溶液に0.1Mの硫酸ナトリウムを添加した溶液4mlをセル内に入れ、100mWcm-2の強度の白色光を照射し、I-V特性を測定した。Jsc 0.47mAcm-2、Voc 1.08V、 FF 0.57が得られ、グリシンの電力へのエネルギー変換効率は50%に達した。
【実施例4】
【0067】
薄層単位セル(図1)において、セル大きさを2cm×2cm(以下かっこ内は有効電極面積;1cm×1cm)から3cm×3cm(2cm×2cm)、5cm×5cm(4cm×4cm)、6cm×6cm(5cm×5cm)、10cm×10cm(9cm×7cm)、さらには20cm×20cm(19cm×16cm)へと大きくして、ナノスケ-ル超多孔質二酸化チタン半導体薄膜(約10μm厚さ)被覆のフッ素ド-プ電導性電極(FTO)アノードと、白金薄膜被覆FTOカソード、及びネオプレンゴムスペーサー(厚さ2.5mm)から作製した。0.5Mグリシン水溶液に0.1Mの硫酸ナトリウムを添加した溶液4mlをセル内に入れ、空気を吹き込みながら100mWcm-2の強度の白色光を照射した。2cm×2cmセルから10cm×10cmセルまでは紫外光強度が疑似太陽光で白色光強度が100mWcm-2の時8.3mWcm-2になるようにし、20cm×20cmセルでは紫外光強度は3mWcm-2であった。I-V特性を測定し、得られたパラメータを表2に示した。同じ紫外光強度では
大きさによらず同等の特性となり、これらから、モジュールを作製する単位となるサブモジュールとして、1cm×1cmないし10cm×10cmないし20cm×20cm程度のバイオ光化学セルを用いることができる。
【表2】
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【実施例5】
【0068】
MnO2をPtの代わりに酸素還元触媒としてカソードで用いた。0.3gMnO2と0.3g活性炭を乳鉢でよく混合し、5wt%ナフィオンカチオン交換体アルコール溶液20μl中に懸濁させて1X1cm2のカーボン紙上にのせ、これを30wt%NaOH水溶液中、40℃で17時間処理した。これに銀ペーストを用いて銅線を附し、カソード電極とした。薄型セル(電極実効表面積1cmX1cm)によりFTO/TiO2アノードと上記カソードを電極として用い、空気下、100mWcm-2で光照射して、0.5Mアンモニア水溶液を光分解し、光電池特性として、Jsc 0.31mAcm-2、Voc 0.88V、FF 0.37と、Pt触媒と同等な特性を得た。
【実施例6】
【0069】
実施例5において、0.1Mグリシン水溶液を用いて、実施例5と同様に光反応を行い、MnO2のターンオーバー数が6.5時間で3.0となり、触媒として作用していることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施例によるバイオ光化学セルの構成と構造を示す斜視図及び正面図である。
【図2】本発明バイオ光化学セル作動原理を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 半導体光アノード(FTO/TiO2
2 酸素還元カソード(ITO/Pt)
3 厚さ5mmのネオプレンゴムスペーサー
4 空気吹き込み管
5 液体部
6 照射光
7 半導体光アノード(FTO/TiO2
8 酸素還元カソード(ITO/Pt)
図面
【図1】
0
【図2】
1