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明細書 :チオール化合物の同時連続分析方法およびそれに使用する同時連続分析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5119554号 (P5119554)
公開番号 特開2010-048568 (P2010-048568A)
登録日 平成24年11月2日(2012.11.2)
発行日 平成25年1月16日(2013.1.16)
公開日 平成22年3月4日(2010.3.4)
発明の名称または考案の名称 チオール化合物の同時連続分析方法およびそれに使用する同時連続分析装置
国際特許分類 G01N  30/84        (2006.01)
G01N  30/74        (2006.01)
G01N  30/88        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI G01N 30/84 A
G01N 30/74 F
G01N 30/88 C
G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2008-210564 (P2008-210564)
出願日 平成20年8月19日(2008.8.19)
審査請求日 平成23年6月28日(2011.6.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】598015084
【氏名又は名称】学校法人福岡大学
発明者または考案者 【氏名】吉田 秀幸
【氏名】山口 政俊
【氏名】能田 均
【氏名】轟木 堅一郎
【氏名】井上 高志
個別代理人の代理人 【識別番号】240000039、【弁護士】、【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
審査官 【審査官】赤坂 祐樹
参考文献・文献 特開2008-185364(JP,A)
特開昭62-273437(JP,A)
特開平06-050953(JP,A)
中村洋、田村善蔵,蛍光検出高速液体クロマトグラフィーによる生体内チオール及びジスルフィドの同時定量,分析化学,1988年 1月 5日,37(1),35-40
調査した分野 G01N 30/00-30/96
特許請求の範囲 【請求項1】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による試料中のチオール化合物の同時連続分析方法であって、
上記チオール化合物を酸化型チオール類と第1還元型チオール類とに分離する分離工程と;
上記分離酸化型チオール類を還元剤によって還元して第2還元型チオール類に変換し、
上記第1および第2還元型チオール類を蛍光誘導体化試薬によって誘導体化する誘導体化工程および、
上記分離工程で分離した酸化型チオール類を還元しないで、第1還元型チオール類のみを誘導体化する誘導体化工程と;
からなる上記同時連続分析方法によって上記試料中の酸化型チオール類と還元型チオール類とを連続して分析することを特徴とするチオール化合物の同時連続分析方法。
【請求項2】
請求項に記載のチオール化合物の同時連続分析方法において、前記還元剤がホスフィン類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析方法。
【請求項3】
請求項に記載のチオール化合物の同時連続分析方法において、前記ホスフィン類がトリアルキルホスフィン類、トリシクロアルキルホスフィン類、トリアリールホスフィン類またはトリ(アルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはアリール)ホスフィン類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析方法。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のチオール化合物の同時連続分析方法において、前記蛍光誘導体化試薬が、ピレン類、アントラセン類、アクリジン類、クマリン類、シアニン類、ダンシル類、フルオレセイン類、ローダミン類、インダセン類、オキソキノキサリン類またはベンゾキサジアゾール類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析方法。
【請求項5】
試料中のチオール類を酸化型チオール類と還元型チオール類に同時連続分析するための高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるチオール化合物の同時連続分析装置であって、
上記試料中のチオール類を酸化型チオール類と第1還元型チオール類とに分離する分離部と;
上記分離酸化型チオール類を第2還元型チオール類に還元する還元部と;
上記第1および第2還元型チオール類を蛍光誘導体化試薬を用いてそれぞれ誘導体化する誘導体化部と;
蛍光測定部と;
上記分離部と上記蛍光誘導体化部とを結合し、上記還元部を含む第1流路と;
上記分離部と上記蛍光誘導体化部とを結合し、上記還元部を含まない第2流路と;
からなることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置。
【請求項6】
請求項に記載の同時連続分析装置において、上記第1流路に上記還元部を構成する還元カラムが設けられていることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置。
【請求項7】
請求項に記載のチオール化合物の同時連続分析装置において、前記還元カラムに還元剤が充填されていることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置。
【請求項8】
請求項に記載のチオール化合物の同時連続分析装置において、前記還元剤がホスフィン類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置。
【請求項9】
請求項またはに記載のチオール化合物の同時連続分析装置において、前記ホスフィン類がトリアルキルホスフィン類、トリシクロアルキルホスフィン類、トリアリールホスフィン類またはトリ(アルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはアリール)ホスフィン類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置。
【請求項10】
請求項に記載のチオール化合物の同時連続分析装置において、前記蛍光誘導体化試薬が、ピレン類、アントラセン類、アクリジン類、クマリン類、シアニン類、ダンシル類、フルオレセイン類、ローダミン類、インダセン類、オキソキノキサリン類またはベンゾキサジアゾール類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置。
【請求項11】
請求項ないし10のいずれか1項に記載のチオール化合物の同時連続分析装置を用いたチオール化合物の同時連続分析方法の実施において、上記分離部で分離した酸化型チオール類および第1還元型チオール類を含む試料を第1流路に送液し、該第1流路に設けた上記還元部で上記分離酸化型チオール類を第2還元型チオール類に変換した後、上記第1および第2還元型チオール類を上記蛍光誘導体化部に送液し蛍光誘導体化試薬で誘導体化して上記蛍光測定部で測定することからなるチオール化合物の同時連続分析方法。
【請求項12】
請求項11に記載のチオール化合物の同時連続分析方法において、上記分離部で分離した酸化型チオール類および第1還元型チオール類を第2流路に流して還元せずに誘導体化して蛍光測定することによって第1還元型チオール類のみを測定することを特徴とするチオール化合物の同時連続分析方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、試料中のチオール化合物の同時連続分析方法およびそれに使用する同時連続分析装置に関するものであり、更に詳細には、試料中に含まれるチオール化合物の酸化型および還元型チオール類の同時連続分析方法およびそれに使用する同時連続分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、医薬、環境、食品などの分野で使用されていて、HPLC 検出は、測定対象物質の物理的・化学的性質を検知することに基づいて行われ、吸光度、電気化学、質量分析(MS)、蛍光、化学発光などが検出器として用いられている。目的の化学物質がかかる検出器に対して無応答であったり、または十分に応答しない場合、そのままでは HPLC での検出ができなかったり、または不十分であったりする。そのような場合には、目的物質を、いわゆる誘導体化等の化学反応などによって検出器に対して強い応答を示す物質に変換することによって HPLC での検出を可能にすることが可能である。誘導体化法の中でも、蛍光誘導体化法が汎用されていて、そのために必要な蛍光誘導体化試薬も多くのものが開発されている(非特許文献1)。
【0003】
蛍光誘導体化試薬の中には、目的物質を標識するための反応部位と発蛍光に関与する蛍光部位(発蛍光団)とが同一分子内に共存しているものがあり、そのような試薬として、例えば、ピレン、アクリジン、アントラセン、クマリン、シアニン、ダンシル、フルオレセイン、ローダミンなどが知られている(例えば、非特許文献1-4参照)。これらの蛍光性誘導化試薬を使用して試料中の微量成分を検出するとき、試料中に存在する多種多量の共存物質を誘導体化するために蛍光性誘導体化試薬が過剰に添加されることがしばしばあり、このように過剰に添加した蛍光性試薬が測定対象物質の分析の妨げの要因となることがある。これらの問題点を解決する試みもなされていて、前処理法や分離技法を改善するばかりではなく、無蛍光性の試薬を用いる発蛍光誘導体化法の開発(非特許文献5-7)や、特殊な蛍光現象(蛍光偏光、時間分解蛍光、蛍光移動エネルギー移動など)を導入した誘導体化法の開発(非特許文献8-10)が試みられている。
【0004】
本発明者らは、かかる特殊蛍光現象の1つであるエキシマー蛍光を導入した誘導体化法を開発して、多官能性の被験物質をピレン試薬で多点標識することにより、ピレンの通常の波長領域(モノマー蛍光:360-420 nm)よりも長波長域のエキシマー蛍光領域(440-540 nm)で蛍光検出して、複数官能基を有する特定化合物のみを選択的に分析することを可能にした。これにより、本発明者らは、ポリアミン、ポリフェノール、ポリカルボン酸のような多官能性化合物の分析法を開発し、生理活性物質、医薬品、農薬、環境ホルモンなどの簡便でかつ高選択的な定量を可能にした(例えば、非特許文献11参照)。
【0005】
一方、チオール化合物には、分子内に複数のチオール構造(スルフヒドリル基;-SH)を有するポリチオール類、ならびにチオール構造を1カ所有するモノチオール類が存在する。生体内にもシステイン類やグルタチオンなどとして、様々な形のチオール化合物が存在している。また、モノチオール類ならびポリチオール類はそれぞれが酸化型および還元型として共存し、お互いが相補的に異なる機能を有しているため、それらを同時に計測する必要がある。
【0006】
還元型チオール化合物は、一般的には、各種蛍光試薬で誘導体化した後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離することによって分析することができる。このとき、ピレン試薬を用いるとポリチオール類の検出波長は450-500 nm、すなわちエキシマー蛍光、であるのに対して、モノチオール類の検出波長は360-420 nm、すなわちモノマー蛍光、と大きく異なるため、エキシマー蛍光を検出することで、モノチオール類の妨害を受けることなく、ポリチオール類を選択的に検知することができる。また、かかるチオール化合物のうち、酸化型チオール類は、誘導体化の前に還元剤で還元することで、エキシマー蛍光もしくはモノマー蛍光で検出することができる。
【0007】
ポリチオール類は、蛍光プレラベル分析法によって高感度でかつ高選択的に検出可能であることから、この蛍光プレラベル分析法が近年広く利用されている。しかし,これまで報告されている分析法では、酸化型ならびに還元型チオール類の総量、もしくは還元型チオール類しか測定することができないため、酸化型チオール類の量は、酸化型および還元型チオール類の総量から、還元型チオール類の量を差し引いて算出していた。現在のところ、ポリチオール類の酸化型と還元型とを同時に簡便に測定する方法は皆無であるといえる。なお、LC-MS分析法を用いれば、理論上は、酸化型チオール類と還元型チオール類とが混在する状態でも、そのまま計測できると考えられるが、そのような方法論の論文は、これまで知る限りでは存在していない。そこで、酸化型および還元型ポリチオール類を同時に簡便に測定することができる方法の開発が待たれていた。

【非特許文献1】山口政俊,能田均:ぶんせき、291(3), 204 (1999)
【非特許文献2】Y. Ohkura, M. Kai, H. Nohta: J. Chromatogr. B., 659, 85 (1994)
【非特許文献3】M.Yamaguchi, J. Ishida: "Modern derivatizationmethods for separation sciences", T. Toyo'oka(Ed.), p. 99 (1999), (John Wiley and Sons Ltd. New York)
【非特許文献4】K.Fukushima, N. Usui, Y. Santa, K. Imai: J. Pharm. Biomed. Anal., 30, 1655(2003)
【非特許文献5】S. Uchiyama,et al.: Anal. Chem., 73, 2165 (2001)
【非特許文献6】K. Gyimesi-Forras, et al.: J. Chromatogr.A, 1083, 80 (2005)
【非特許文献7】T. Yoshitake, et al.: Biomed. Chromatogr., 20, 267 (2006)
【非特許文献8】K. Abe,et al.: BUNSEKI KAGAKU, 44, 555 (1995)
【非特許文献9】K.Matsumoto, et al.: J. Chromatogr. B, 773, 135 (2002)
【非特許文献10】M. Yoshitake, et al.: Anal. Chem., 78, 920 (2005)
【非特許文献11】H.Yoshida, et al.: BUNSEKI KAGAKU, 55(4), 213-221(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、上記エキシマー蛍光誘導体化法と、酸化型と還元型のチオール化合物を同時にかつ選択的に分析することが可能である HPLC-オンライン還元法とを組合せた HPLC-オンライン還元-エキシマー蛍光誘導体化分析法によって、試料中に含まれるチオール化合物の酸化型チオール類と還元型チオール類とを同時にかつ選択的に分析することを可能にすることができることを見出して、この発明を完成するに至った。
【0009】
そこで、この発明は、チオール化合物の同時連続分析方法であって、まず試料中のチオール化合物を酸化型チオール類と還元型チオール類に分離し、還元剤を用いて酸化型チオール類を還元型チオール類に還元した後、元来存在する還元型チオール類と酸化型チオール類を還元して変換した還元型チオール類とをピレンなどによる標識をして蛍光検出することができることから、試料を HPLC へ注入するだけで、酸化型と還元型のチオール化合物を同時にかつ選択的に分析することができるという画期的な HPLC-オンライン還元-蛍光誘導体化分析方法に基づくチオール化合物の同時連続分析方法である。
【0010】
したがって、この発明は、チオール化合物の同時連続分析方法によって、試料中に含まれるチオール化合物の酸化型チオール類と還元型チオール類とを同時にかつ選択的に分析することができるチオール化合物の同時連続分析方法を提供することを目的としている。
【0011】
また、この発明は、酸化型と還元型のチオール化合物を同時にかつ選択的に分析することができる HPLC-オンライン還元-蛍光誘導体化分析方法を適用することができる HPLC-オンライン還元-蛍光誘導体化分析システムに基づくチオール化合物の同時連続分析装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、この発明は、酸化型と還元型のチオール化合物を同時にかつ選択的に分析することができるチオール化合物の HPLC-オンライン還元-蛍光誘導体化分析方法に基づくチオール化合物の同時連続分析方法を提供することである。
【0013】
より具体的には、この発明は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による試料中のチオール化合物の同時連続分析方法であって、上記チオール化合物を酸化型チオール類と第1還元型チオール類とに分離する分離工程と;上記分離酸化型チオール類を還元剤によって還元して第2還元型チオール類に変換する還元工程と;上記第1および第2還元型チオール類を蛍光誘導体化試薬によって誘導体化する誘導体化工程と;からなる上記同時連続分析方法によって上記試料中の酸化型チオール類と還元型チオール類とを連続して分析することからなるチオール化合物の同時連続分析方法を提供する。
【0014】
この発明は、その好ましい態様として、上記分離工程で分離した酸化型チオール類を還元しないことで、第1還元型チオールのみを誘導体化する誘導体化工程をさらに含んでいることからなるチオール化合物の同時連続分析方法を提供する。
【0015】
この発明は、その好ましい態様として、上記還元剤が、例えば、トリプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、ジ-t-ブチルメチルホスフィン、ジ-t-ブチルネオペンチルホスフィン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン等のトリシクロアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン、トリ(4-クロロフェニル)ホスフィン、トリ(o-またはp-トリル)ホスフィン、ジフェニル(o-トリル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン類または t-ブチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン等のトリ(アルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはアリール)ホスフィン類などのホスフィン類であることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析方法を提供する。
【0016】
この発明は、その好ましい態様として、上記蛍光誘導体化試薬が、ピレン類、アントラセン類、アクリジン類、クマリン類、シアニン類、ダンシル類、フルオレセイン類、ローダミン類、インダセン類、オキソキノキサリン類またはベンゾキサジアゾール類であることからなるチオール化合物の同時連続分析方法を提供する。
【0017】
この発明は、その別の形態として、酸化型と還元型のチオール化合物を同時にかつ選択的に分析することができる HPLC-オンライン還元-蛍光誘導体化分析方法を適用することができる HPLC-オンライン還元-蛍光誘導体化分析システムに基づくチオール化合物の同時連続分析装置を提供する。
【0018】
この発明は、その好ましい態様として、試料中のチオール類を酸化型チオール類と還元型チオール類に同時連続分析するための高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるチオール化合物の同時連続分析装置であって、上記試料中のチオール類を酸化型チオール類と第1還元型チオール類とに分離する分離部と;上記分離酸化型チオール類を第2還元型チオール類に還元する還元部と;上記第1および第2還元型チオール類を蛍光誘導体化試薬を用いてそれぞれ誘導体化する誘導体化部と;蛍光測定部と;からなることを特徴とするチオール化合物の同時連続分析装置を提供する。
【0019】
この発明は、その好ましい態様として、チオール化合物の同時連続分析装置が、上記分離部と上記蛍光誘導体化部とを結合し、上記還元部を含む第1流路と;必要に応じて、上記分離部と上記蛍光誘導体化部とを結合し、上記還元部を含まない第2流路と;をさらに含んでいるチオール化合物の同時連続分析装置を提供する。
【0020】
この発明は、その好ましい態様として、チオール化合物の同時連続分析装置が、上記第1流路に上記還元部を構成する還元カラムがさらに設けられているチオール化合物の同時連続分析装置を提供する。
【0021】
この発明は、その好ましい態様として、前記還元カラムに、例えば、トリプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリシクロヘキシルホスフィン等のトリシクロアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィン類またはトリ(アルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはアリール)ホスフィン類などのホスフィン類からなる還元剤が含まれているチオール化合物の同時連続分析装置を提供する。
【0022】
この発明は、その好ましい態様として、前記蛍光誘導体化試薬が、ピレン類、アントラセン類、アクリジン類、クマリン類、シアニン類、ダンシル類、フルオレセイン類、ローダミン類、インダセン類、オキソキノキサリン類またはベンゾキサジアゾール類であるチオール化合物の同時連続分析装置を提供する。
【0023】
さらに、この発明は、その別の形態として、上記チオール化合物の同時連続分析装置を用いた上記チオール化合物の同時連続分析方法であって、上記分離部で分離した酸化型チオール類および第1還元型チオール類を第1流路に流し、該第1流路に設けた上記還元部で上記分離酸化型チオール類を第2還元型チオール類に変換した後、上記蛍光誘導体化部で蛍光誘導体化して上記蛍光測定部で第1還元型チオール類および第2還元型チオール類を測定するとともに、必要に応じて、上記分離部で分離した酸化型チオール類および第1還元型チオール類を第2流路に流して還元せずに誘導体化して蛍光測定することによって第1還元型チオール類のみを測定することからなるチオール化合物の同時連続分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係るチオール化合物の同時方法は、試料を HPLC へ注入するだけで、試料中に含まれるチオール化合物を酸化型チオール類と還元型チオール類に同時にかつ選択的に分析することができるという画期的な HPLC-オンライン還元-エキシマー蛍光誘導体化分析方法ならびにこの方法に適用できる同時連続分析システムである。また、この発明は、酸化型チオール類と還元型チオール類の分析の更なる選択性と感度を高めることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
この発明に係る方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による試料中のチオール化合物の同時連続分析方法であって、上記チオール化合物を酸化型チオール類と第1還元型チオール類とに分離する分離工程と;上記分離酸化型チオール類を還元剤によって還元して第2還元型チオール類に変換する還元工程と;上記第1および第2還元型チオール類を蛍光誘導体化試薬によって誘導体化する誘導体化工程と;からなる同時連続分析方法によって上記試料中の酸化型チオール類と還元型チオール類とを連続して分析することができるチオール化合物の同時連続分析方法である。この発明の同時連続分析方法によれば、試料を HPLC へ注入するだけで、試料中に含まれるチオール化合物を酸化型チオール類と還元型チオール類に同時にかつ選択的に分析することができる画期的なチオール化合物の連続分析方法である。
【0026】
この発明においては、まず、試料を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分離カラムに注液することにより、試料中に含まれるチオール化合物を、酸化型チオール類と還元型チオール類とに分離する。この発明に使用できる試料としては、特に限定されるものではなく、試料中にチオール化合物が含有されているものであればいずれでもよく、チオール化合物として、リポ酸やチオクタミドなどの酸化型チオール類と還元型チオール類が混在している試料が好ましい。かかる試料としては、例えば、チオクト酸注射液等のαリポ酸(チオクト酸)を含有する医薬品製剤、チオクト酸アミド等のチオクタミドを含有する医薬品製剤、リポ酸を含有する様々なサプリメント等、上記製剤やサプリメント等を服用した時のαリポ酸やチオクタミド等の尿や血液等の生物試料などが挙げられる。また、この発明は、システイン含有ペプチドであるオキシトシン、バソトシン、バソプレシン等のペプチドホルモンなどを含む試料の測定にも適用できる。
【0027】
この分離によっては、酸化型チオール類と還元型チオール類が、いかなる順序で溶出してくるかは、分析対象物の構造や分離カラムの性質などにより変化するので特定することはできない。しかし、この発明では、酸化型チオール類と還元型チオール類を含む溶出液は還元工程に連続的に送液することができることから、酸化型チオール類と還元型チオール類の溶出順序は考慮する必要はない。
【0028】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の分離カラムから溶出した溶出液は、連続して還元剤が配置されている還元工程に送液されて、溶出液中の分離酸化型チオール類だけが還元剤によって還元されて対応する還元型チオール類に変換される。つまり、酸化型チオール類のS-S結合(ジスルフィド結合)が還元剤によって還元されてそれぞれーSH基(スルフヒドリル基)に変換される。
【0029】
なお、試料中の酸化型チオール類を分離する前に還元型チオール類に還元して変換すると、酸化型チオール類と還元型チオール類の総量は計測することができるが、酸化型チオール類と還元型チオール類との個別定量はできないことに注目すべきである。したがつて、酸化型チオール類の還元型への変換は、還元型チオール類から分離した後にする必要がある。
【0030】
この発明において使用できる還元剤としては、ホスフィン類などの還元剤を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、酸化型チオール類を還元することができるものであればいずれも使用することができる。かかるホスフィン類としては、例えば、トリプロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-t-ブチルホスフィン、ジ-t-ブチルメチルホスフィン、ジ-t-ブチルネオペンチルホスフィン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン等のトリアルキルホスフィン類、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン等のトリシクロアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィン、トリ(4-クロロフェニル)ホスフィン、トリ(o-またはp-トリル)ホスフィン、ジフェニル(o-トリル)ホスフィン等のトリアリールホスフィン類または t-ブチルジフェニルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン等のトリ(アルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはアリール)ホスフィン類などを挙げることができる。このうち、トリアルキルホスフィン類が好ましく、そのうちでもトリ-n-ブチルホスフィンがより好ましい。
【0031】
上記のようにして酸化型チオール類を還元して還元工程を通過した試料には、試料に当初から含有されていた還元型チオール類(以下、「第1還元型チオール類」ともいう)と、還元工程で酸化型チオール類が還元されて生成した還元型チオール類(以下、「第2還元型チオール類」ともいう)とが含まれていることになる。なお、この発明はチオール化合物の分析が可能であるところから、試料に当初から還元型チオール類が含有されていない場合でも、この発明を適用することができる。したがって、この発明は、試料中に酸化型チオール類または還元型チオール類が含有されているかどうか不明の場合であっても適用することができる。
【0032】
上記のようにして還元工程を通過した試料は、続いて誘導体化工程に送液される。誘導体化工程においては、試料中の第1還元型チオール類と第2還元型チオール類のいずれもが誘導体化される。
【0033】
この発明においては、様々な形式の誘導体化法を使用することができる。かかる誘導体化法としては、例えば、上述したような無蛍光性の試薬を用いる発蛍光誘導体化法(例えば、非特許文献5-7参照)や、特殊な蛍光現象(蛍光偏光、時間分解蛍光、蛍光共鳴エネルギー移動、分子内エキシマー蛍光など)を導入した誘導体化法(例えば、非特許文献8-11参照)などが挙げられる。
【0034】
エキシマー蛍光とは、例えば、ピレン類、アントラセン類などの蛍光寿命が比較的長い芳香族蛍光分子が互いに近接して存在するとき、基底状態では安定な二量体を形成しないが、1つの分子が励起光を吸収して励起状態になると、他の基底状態の分子と会合して励起二量体(エキシマー)を形成し、このエキシマーからの発光現象をいう。このエキシマー蛍光には、2個の蛍光分子間から発生する分子間エキシマー蛍光と、同一分子内に存在する2箇所の発光団の間で発生する分子内エキシマー蛍光とがある(非特許文献11)。
【0035】
この発明においては、エキシマー蛍光現象を誘導体化分析に導入することで、従来の誘導体化法では困難であった対象物質1分子当たり1個の発光団が導入された誘導体と複数個導入された誘導体とを分光学的に識別することができる分子内エキシマー蛍光誘導体化法を使用するのが好ましい。この方法によって、複数個の反応部位を有する測定対象物質に複数のピレン構造等を持つ蛍光誘導体化試薬を導入し、その誘導体化された測定対象物質から発光されるエキシマー蛍光を検出することで目的化合物の選択的分析をすることができる。つまり、これにより、反応液中に過剰に存在する蛍光試薬や試料中に多種多量に共存する単一反応部位のみ有する測定妨害物質の影響を受けることなく、目的化合物を選択的に分析することができる。
【0036】
つまり、この発明において使用できる蛍光誘導体化試薬は、チオール化合物の還元型チオール類のスルフヒドリル基(SH)を還元すると共に、励起光を吸収して励起状態になってエキシマー蛍光を発光することができる芳香族蛍光分子をその還元型チオール類のスルフヒドリル基(SH)に結合することができるものであればいずれも使用することができる。かかる芳香族蛍光分子としては、例えば、ピレン類、アントラセン類、アクリジン類、クマリン類、シアニン類、ダンシル類、フルオレセイン類、ローダミン類、インダセン類、オキソキノキサリン類、ベンゾキサジアゾール類などが挙げられる。したがって、この発明で使用できる蛍光誘導体化試薬としては、例えば、Nー(1ーピレニル)マレイミド (NPM)、Nー[4ー(5,6ージメトキシー2ーフタルイミジル)フェニル]マレイミド (DPM)、Nー[4ー(6ージメチルアミノー2ーベンゾフラニル)フェニル]マレイミド (DBPM)、Nー[4ー(6ーメチルアミノー2ーベンゾフラニル)フェニル]マレイミド (MBPM)、Nー(9ーアクリジニル)マレイミド (NAM)、Nー[4ー(2ーベンズオキサゾリル)フェニル]マレイミド (BPM)、4ー(1ーピレン)ブタノイルクロライド (PBC)、4ー(1ーピレン)ブタン酸Nーヒドロキシサクシニミジルエステル (PSE)、4,4ージフルオロー4ーボラー3α,4αージアザーsーインダセン(BODIPY)ーNー(2ーアミノエチル)マレイミド、6,7ージメトキシー4ーメチルー3ーオキソキノキサリンー2ーカルボニルクロライド (DMEQ)、7ーフルオロベンズー2ーオキサー1,3ージアゾールー4ースルホンアミド (ABD-F)などが挙げられる。これらの蛍光誘導体化試薬うち、好ましいのはピレン類であり、更に好ましいのは Nー(1ーピレニル)マレイミド (NPM) である。
【0037】
この発明においては、上記のようにしてチオール化合物を誘導体化して、使用した誘導体化試薬の持つ固有の励起光を照射することによりエキシマー蛍光が生じるので、その蛍光を分析することにより試料中のチオール化合物の酸化型と還元型のチオール類を同時に連続的に分析することができる。代表的なエキシマー蛍光発現化合物としての N-(1-ピレニル)マレイミド (NPM) の場合、励起波長 345 nm の励起光を照射すると、モノマーからの普通蛍光は 375 nm 付近に蛍光極大が存在するが、エキシマー蛍光は 485 nm 付近に長波長シフトする。これにより試料中の酸化型と還元型のチオール類は、モノチオール類もポリチオール類も同時にかつ連続的に分析することができる(図1参照)。
【0038】
ここで、図2を参照して、この発明に係る HPLC-オンライン還元-エキシマー蛍光誘導体化システムに基づく酸化型チオール類および還元型チオール類の同時連続分析装置 (HPLC) を用いたチオール化合物の同時連続分析方法について説明する。
【0039】
図2に示すように、移動相1は、HPLC による測定試料の測定を円滑にかつ迅速に行うとともに、誘導体化反応の促進作用、pH調整作用、酸化防止、金属による妨害の低減などの作用効果を有する溶媒等から構成されているのがよく、かかる移動相としては、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンと EDTA とのメタノール水溶液を使用するのが好ましい。移動相1を入れた容器2からポンプ3によって HPLC 装置内に汲み上げた移動相1中に、測定対象物としての試料をインジェクター4によって注液し、分離カラム5に送液される。なお、移動相1の組成条件は、測定試料の種類等によって適宜調整するのがよい。この HPLC の分離カラム5によって、試料中のチオール化合物は、酸化型チオール類と還元型チオール類(第1還元型チオール類)とに分離される(分離工程)。分離カラム5から溶出された溶出液は、インジェクター6により順次流路7を通って還元カラム8に送液される。還元カラム8には、上記還元剤が充填されていて、溶出液に含まれる酸化型チオール類を還元(還元工程)して還元型チオール類(第2還元型チオール類)に変換して次の誘導体化工程に送液される。ただし、溶出液中の第1還元型チオール類は、還元剤で還元されないので、そのまま還元カラム8を通過して次の誘導体化工程に送液される。
【0040】
一方、分離カラム5で分離された酸化型チオール類と還元型チオール類とを含む溶出液の1部を、必要に応じて、流路7とは別の流路9に送液することができる。この流路9には還元カラムが配置されていないので、溶出液中の酸化型チオール類は還元されずにそのまま通過して次の誘導体化工程に送液される。つまり、流路9を通過した溶出液には、試料中のチオール化合物の酸化型チオール類と還元型チオール類(第1還元型チオール類)とが含まれていることになる。
【0041】
次の誘導体化工程では、流路7あるいは流路9から送液されてきた試料に対して、蛍光試薬溶液10を入れた容器11からポンプ12で汲み上げた蛍光試薬溶液10を注入する。蛍光試薬溶液10は、例えばピレン類などの蛍光誘導体化試薬に適切な溶媒などとを混合して調製することができる。このようにして調製した試料と蛍光試薬溶液10の蛍光誘導体化試薬との混合液は反応チューブ13に送液される。なお、反応器は、反応チューブに限定されるものではなく、目的に適うものであればいずれの形状でもよい。この反応チューブ13において、試料中の還元型チオール類と蛍光試薬溶液10の蛍光誘導体化試薬とは反応して、還元型チオール類は誘導体化される。この誘導体化反応は蛍光試薬溶液10中で行われるが、反応温度ならびに反応時間は、試料中のチオール化合物の種類や使用蛍光誘導体化試薬などにより適宜変えることが可能である。
【0042】
一方、流路9から送液された試料中の酸化型チオール類は、蛍光誘導体化試薬で誘導体化されないので、そのまま測定試料中に残存していることになる。ただし、この試料中に存在してた還元型チオール類(第1還元型チオール類)は、当然のことながら、誘導体化工程で蛍光誘導体化試薬により誘導体化される。
【0043】
誘導体化工程完了後、測定試料は、蛍光検出器14とインテグレータ15を備えた蛍光測定工程に送液され、所定の励起波長を有する励起光を照射して、誘導体化還元型チオール類が定性・定量分析できる。なお、蛍光測定法は、当該技術分野においては慣用されている手法で実施することができる。
【0044】
つまり、図1に示すように、この発明によれば、試料中の還元型ポリチオール類(第1還元型チオール類)は、蛍光誘導体化試薬で誘導体化されて、そのエキシマー蛍光を測定することにより分析することができる。一方、試料中の酸化型ポリチオール類は、還元剤で還元型ポリチオール類(第2還元型チオール類)に一旦還元して、蛍光誘導体化試薬で誘導体化して、そのエキシマー蛍光を測定することにより分析することができる。また、試料中のモノチオール類は、蛍光誘導体化試薬で誘導体化されて、そのモノマー蛍光を測定することにより分析することができる。したがって、試料中のポリチオール類とモノチオール類とは、蛍光の差違により分離分析できる。
【0045】
これに対して、試料中の酸化型チオール類と還元型チオール類は、酸化型チオール類を還元型チオール類に変換して誘導体化して、そのエキシマー蛍光を測定することによって分析することができる。また、上記したように、還元カラムを配置した流路とは異なる還元カラム不配置の別の流路を送液した酸化型チオール類を同様に処理することによって、試料中に当初含まれていた酸化型チオール類の妨害を受けることなく、原初試料中の還元型チオール類のみを定量分析することができる。しかも、この発明に係るチオール化合物の同時連続分析方法は、試料をその装置に注入するだけで実施できるという大きな利点がある。
【実施例1】
【0046】
測定試料としては、酸化型・還元型を示すポリチオールである DL-チオクト酸(αリポ酸)とDL-6,8-チオクタミド(医薬品)を使用した。αリポ酸は、ヒト体内で様々な酵素の補酵素として機能し、近年特定保健用食品として認可された。ピレン蛍光誘導体化試薬としては N-(1-ピレニル)マレイミド(NPM)を用いた。
【0047】
上記化合物をオンライン還元ポストラベル HPLC システム(図2参照)で分析したときの具体的な HPLC 条件は、以下の通りである。
HPLC 条件
分離カラム:XBridgeTMC18(内径 3.0 mm × 長さ 15 cm、粒径5 μm、Waters社製)
還元カラム:XBridgeTMC18(内径 2.1 mm × 長さ 3 cm、粒径5 μm、Waters社製)にインジェクターより注入したトリ-n-ブチルホスフィンを保持させたもの
移動相:10 mM トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよび 5 mM EDTA・2Na を溶解した 35% (v/v) メタノール (0.4 mL/min)
誘導体化液:50 μM NPM(アセトニトリルで調製)(流速 0.4 mL/min)
蛍光検出:励起波長 345 nm、エキシマー蛍光 485 nm
【0048】
上記還元カラムは、移動相送液状態において、図2のインジェクター6より最適濃度のトリーnーブチルホスフィン(還元剤)を注入して作成した。還元剤注入後、30分間ほど移動相の送液をした。なお、48時間の連続運転時でも還元力の低下は一切認められなかった。ただし、溶出力の強い溶媒を送液すると、注入した還元剤のカラムからの剥離が見られた。これらのことは、作成した還元カラムは耐久性が十分であり、カラムの洗浄・初期化・還元剤再充填が容易であることを示している。
【0049】
ルーチン分析のためには、移動相溶液だけでなく、ポストカラム誘導体化試薬(蛍光試薬)溶液の安定性も欠かすことのできない因子である。アセトニトリルで調製した NPM 溶液は、外気を絶った状態で遮光保存すれば、1週間以上安定に存在し、ばらつきのない良好なデータを連続的に与えることを確認した。
【0050】
被検体であるリポ酸およびチオクタミドの混合液 5 μL をインジェクター4よりオンライン還元ポストラベル HPLC システムへ注入し、上記 HPLC 条件で分析して、エキシマー蛍光波長において分析を行った。その分析結果をクロマトグラムで示す(図3)。
【0051】
図3で示すように、還元カラムを通過する条件(流路7)でリポ酸およびチオクタミドの酸化型・還元型混合液を分析すると、リポ酸(酸化型)→リポ酸(還元型)→チオクタミド(酸化型)→チオクタミド(還元型)の順番に分離され、検出された。これに対して、還元カラムを通過しない条件(流路9)でリポ酸およびチオクタミドの酸化型・還元型をそれぞれ分析すると、いずれも還元型のみがピークを与えた。これらの結果は、流路の切り替えだけで、酸化型・還元型の構造確認が容易に行えることが示された。なお、図3中、左二つのクロマトグラムは、還元カラム非通過のデータである。
【実施例2】
【0052】
リポ酸およびチオクタミドの検量線を作成するために、リポ酸およびチオクタミドの酸化型・還元型サンプルを、それぞれ 0.5 mM、1 mM、2.5 mM、5 mM、10 mMと段階的になるよう調製し、オンライン還元ポストラベルHPLCシステムに 5 μL 注入し、実施例1と同様に処理して、エキシマー蛍光波長において分析を行った。上記条件で分析して得られた検量線および検出限界値を図4に示す。この結果から、試料注入という簡便な操作だけで、いずれの化合物も極めて高感度かつ高選択的な計測が可能であることが明らかになった。
【実施例3】
【0053】
酸化型のシステイン含有ペプチドであるバソプレシン、バソトシンおよびオキシトシンについて、実施例1と同様に HPLC システムを用いて分析を行った。その分析結果をクロマトグラムで示す(図5)。還元カラムを通過する条件(流路7)でシステイン含有ペプチドを分析すると、各ペプチドが検出された。これに対して、還元カラムを通過しない条件(流路9)では各ペプチドがピークを与えなかった。これらの結果から、リポ酸関連化合物だけでなく、システイン含有ペプチドの計測にも応用できることが確認された。なお、図5中、左のクロマトグラムは、還元カラム非通過のデータである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
この発明は、医薬品、サプリメント等の試料を始め、尿や血液等の生物試料中のチオール化合物の酸化型・還元型チオール類を、HPLC システムに試料注入するという簡便な操作だけで、いずれのチオール化合物も極めて高感度かつ高選択的に計測することが可能であるところから、特に医薬品・補助食品分野の検査部門において有用に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】チオール化合物のオンライン還元-エキシマー蛍光誘導体化法の概念を示す説明図。
【図2】HPLC-オンライン還元-エキシマー蛍光誘導体化システムを示す図。
【図3】リポ酸・チオクタミド混合液から得られたクロマトグラムを示す図(実施例1)。
【図4】リポ酸およびチオクタミドについての検出限界および検量線を示す図(実施例2)。
【図5】システイン含有ペプチド混合液から得られたクロマトグラムを示す図(実施例3)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4