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明細書 :粘膜下膨隆形成用ガス注入装置及びそれを用いた内視鏡

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5257970号 (P5257970)
公開番号 特開2009-095514 (P2009-095514A)
登録日 平成25年5月2日(2013.5.2)
発行日 平成25年8月7日(2013.8.7)
公開日 平成21年5月7日(2009.5.7)
発明の名称または考案の名称 粘膜下膨隆形成用ガス注入装置及びそれを用いた内視鏡
国際特許分類 A61B  17/00        (2006.01)
FI A61B 17/00 320
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2007-270891 (P2007-270891)
出願日 平成19年10月18日(2007.10.18)
審査請求日 平成22年10月13日(2010.10.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】浦岡 俊夫
個別代理人の代理人 【識別番号】100113181、【弁理士】、【氏名又は名称】中務 茂樹
【識別番号】100180600、【弁理士】、【氏名又は名称】伊藤 俊一郎
【識別番号】100114535、【弁理士】、【氏名又は名称】森 寿夫
【識別番号】100075960、【弁理士】、【氏名又は名称】森 廣三郎
【識別番号】100126697、【弁理士】、【氏名又は名称】池岡 瑞枝
審査官 【審査官】森林 宏和
参考文献・文献 特開2005-007161(JP,A)
特開2006-333943(JP,A)
国際公開第2006/051593(WO,A1)
特開2007-075518(JP,A)
調査した分野 A61B 13/00 - 18/28
特許請求の範囲 【請求項1】
消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に粘膜下層に注入針を穿刺し、そのままガスを注入して病変部全体を膨隆させて粘膜下膨隆を形成し、該粘膜下膨隆の形成により粘膜下層を剥離させて病変部を一括切除するための粘膜下膨隆形成用ガス注入装置であって、ガス供給手段と、穿刺手段と、ガス供給手段と穿刺手段とを接続するフレキシブルチューブを備えたことを特徴とする粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項2】
注入されるガスが炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガスから選択される少なくとも1種のガスである請求項1記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項3】
注入されるガスが炭酸ガスである請求項2記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項4】
ガス供給手段が、ガスが圧縮されたボンベ及び減圧弁を有する請求項1~3のいずれか記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項5】
ガス供給手段が、更にガス流量制御手段を備えた請求項1~4のいずれか記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項6】
ガス流量が50ml/s以下である請求項1~5のいずれか記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項7】
ガス供給手段が、ガスが封入された注射器である請求項1~3のいずれか記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置。
【請求項8】
請求項1~のいずれか記載の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置が装着された内視鏡。
【請求項9】
消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に、粘膜下層に注入針を穿刺し、そのままガスを注入して病変部全体を膨隆させて粘膜下膨隆を形成し、該粘膜下膨隆の形成により粘膜下層を剥離させて病変部を一括切除するための粘膜下膨隆形成用ガス注入キットであって、ガス供給装置と、一端に注入針が設けられかつ他端がガス供給手段と接続可能なフレキシブルチューブとからなることを特徴とする粘膜下膨隆形成用ガス注入キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に病変部全体を膨隆させるための装置及びそれを用いた内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
消化管腫瘍に対する内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection;以下「EMR」と略記することがある)は、広く普及している(非特許文献1)。これは、内視鏡下で粘膜下層に局注針を介して局注液を注入することにより、病変全体を隆起させ(粘膜下膨隆形成)、スネアで絞扼(スネアリング)後、高周波電流を用いて病変を切除する方法である。粘膜下膨隆を形成することによりスネアリングを容易にすることができ、また、病変と筋層との距離を十分に保つことにより偶発症である腸管穿孔を予防することができる。EMRでは、局注液として生理食塩水が一般的に使用されてきたが、等張液のため粘膜下膨隆持続時間が短く、局注後からスネアリングまでを手早く進める必要があり、スネアリング自体も難しくなる場合があった。そのため、生理食塩水に代わる様々な局注液の臨床応用が考案されてきたが(特許文献1、非特許文献2、3及び4)、一括で切除できる病変の大きさに制限があり改善が望まれていた。
【0003】
上記EMRにおける技術的な制限を改善した手法として、内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection;以下「ESD」と略記することがある)が考案され、早期胃癌の治療選択の一つとして確立されてきている(非特許文献5)。内視鏡的切除法に求められることは、病理組織学的診断と遺残・再発の面から可能な限り病変を一括切除することである。粘膜下膨隆を形成後に、高周波メスにて直接病変周囲粘膜を切開するとともに粘膜下層を剥離して病変を切除していくこの方法により、腫瘍径が大きな病変でも高い一括切除率が得られるとされている。ESDは手技自体の難易度が高く、熟練を要するとされている。したがって、腸壁の厚みが薄い大腸のESDでは、局注液として粘膜下膨隆持続時間が長いヒアルロン酸ナトリウム水溶液の使用が必須であった(非特許文献6及び7)。しかしながら、形成された粘膜下膨隆の隆起がそれほど高くない場合には穿孔の危険性があり、また、ヒアルロン酸ナトリウム水溶液は他の局注液に比べて高価であり、改善が望まれていた。
【0004】
また、特許文献2には、消化管の病変部を内視鏡的に切除するために粘膜下層内に先端部が挿入されて粘膜下層を剥離する粘膜下層剥離処置具であって、管路が軸方向に延びて設けられ基端側に前記管路と連通された注入口が設けられた処置具本体と、前記管路の先端側に配設され、前記注入口から供給された流体によって膨張可能な膨張部とを備え、前記処置具本体の先端近傍に、柔軟限界と硬質限界との間の外力が加わった際に湾曲変形する柔軟部が設けられていることを特徴とする粘膜下層剥離処置具について記載されている。これによれば、粘膜下層剥離処置具を粘膜下層に挿入する際、誤って強い力で挿入したとしても、柔軟部が湾曲して挿入の際の力を逃がすことができるため、粘膜下層剥離処置具の挿入による穿孔のおそれを低減できるとされている。更にこのことにより、術者の技量に左右されることなく、簡便な方法で粘膜下層剥離処置具の粘膜下層への挿入を実現することができると報告されている。しかしながら、盲目的に粘膜下層に処置具を潜り込ませるため、穿孔の危険性が高く実用化が困難であり改善が望まれていた。
【0005】
一方、非特許文献8には、血管造影及び血管造影による血管内治療の際に陰性造影剤として炭酸ガスを用いたことが記載されている。これによれば、シリンジ内に注入された炭酸ガスを血管内に注入することにより、炭酸ガスによる血管造影下での血管内治療が可能であるとされている。しかしながら、消化管における内視鏡の操作において炭酸ガスを使用することについては記載されていない。
【0006】

【特許文献1】特開2001-192336号公報
【特許文献2】特開2006-333943号公報
【非特許文献1】小田島慎也他,「medicina」,2006年,Vol.43,No.8,p.1294-1297
【非特許文献2】Uraoka T他,「Gastrointestinal Endoscopy」,2005年,Vol.61,No.6,p.736-740
【非特許文献3】Conio M他,「Gastrointestinal Endoscopy」,2002年,Vol.56,No.4,p.513-516
【非特許文献4】Lee SH他,「Gastrointestinal Endoscopy」,2004年,Vol.59,No.2,p.220-224
【非特許文献5】Ono H他,「GUT」,2001年,Vol.48巻,p.225-229
【非特許文献6】Yamamoto H他,「Endoscopy」,2003年,Vol.35巻,p.690-694
【非特許文献7】Fujishiro M他,「Clinical gastroenterology and hepatology」,2007年,Vol.5,No.6,p.678-683
【非特許文献8】四方裕夫他,「日本心臓血管外科学会雑誌」,2005年,Vol.34,No.4,p.237-242
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に病変部全体を膨隆させて粘膜下層を剥離させることができ、しかも隆起が高く安定した粘膜下膨隆を形成することのできる装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に粘膜下層に注入針を穿刺し、そのままガスを注入して病変部全体を膨隆させて粘膜下膨隆を形成し、該粘膜下膨隆の形成により粘膜下層を剥離させて病変部を一括切除するための粘膜下膨隆形成用ガス注入装置であって、ガス供給手段と、穿刺手段と、ガス供給手段と穿刺手段とを接続するフレキシブルチューブを備えたことを特徴とする粘膜下膨隆形成用ガス注入装置を提供することによって解決される。
【0009】
このとき、注入されるガスが炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガスから選択される少なくとも1種のガスであることが好適であり、注入されるガスが炭酸ガスであることがより好適である。ガス供給手段が、ガスが圧縮されたボンベ及び減圧弁を有することが好適であり、ガス供給手段が、更にガス流量制御手段を備えたことがより好適であり、ガス流量が50ml/s以下であることが好適である。また、ガス供給手段が、ガスが封入された注射器であることが好適である。また、上記粘膜下膨隆形成用ガス注入装置が装着された内視鏡が本発明の好適な実施態様である。
【0010】
更に上記課題は、消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に、粘膜下層に注入針を穿刺し、そのままガスを注入して病変部全体を膨隆させて粘膜下膨隆を形成し、該粘膜下膨隆の形成により粘膜下層を剥離させて病変部を一括切除するための粘膜下膨隆形成用ガス注入キットであって、ガス供給装置と、一端に注入針が設けられかつ他端がガス供給手段と接続可能なフレキシブルチューブとからなることを特徴とする粘膜下膨隆形成用ガス注入キットを提供することによって解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘膜下層膨隆形成用ガス注入装置によれば、粘膜下層にガスが注入されて、隆起が高く安定した粘膜下膨隆が形成される。このようにして、病変部全体を膨隆させることができるため、病変部を容易で確実かつ安全に一括切除することができる。更に、隆起の高い粘膜下膨隆の形成により粘膜下層に存在する血管が損傷されることなく露出されて粘膜下層の剥離が起こるため、血管を傷つけることなく病変部を一括切除することができる。したがって、EMRやESDに好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の装置は、消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に粘膜下層にガスを注入して病変部全体を膨隆させるための粘膜下膨隆形成用ガス注入装置であって、ガス供給手段と、穿刺手段と、ガス供給手段と穿刺手段とを接続するフレキシブルチューブを備えたものである。
【0016】
本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置を用いることにより、従来の生理食塩水等の局注液を注入する場合と異なり、粘膜下層にガスを注入することができる。粘膜下層にガスが注入されることにより、生理食塩水等の局注液を注入して形成された粘膜下膨隆と比べて、隆起が高く持続時間が長い粘膜下膨隆が形成される。したがって、病変部を容易で確実かつ安全に一括切除することができる。更に、粘膜下膨隆が形成される際に粘膜下層に存在する比較的太い血管が損傷されることなく露出されて粘膜下層が剥離されるため、病変部を一括切除する際に血管を損傷することがなく手技全体の安全性が保たれる利点を有する。また、生理食塩水等の局注液を注入する場合と比べて、本発明の装置を用いて粘膜下層にガスを注入する場合には、注入抵抗が小さいため操作性が良好である利点も有する。
【0017】
本発明において、消化管とは、食物を消化・吸収するための器官であって、食道、胃、小腸及び大腸等の消化管に咽・喉頭を加えたものの総称をいう。これらの中でも特に大腸は内壁の厚みが薄いため、膨隆形成が不十分であったり膨隆持続時間が短い場合にはESDにより穿孔が生じるおそれがあり、本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置を採用する利点が大きい。
【0018】
本発明において、粘膜下層に注入されるガスは特に限定されず、炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガス、亜酸化窒素ガス(笑気ガス)等が挙げられる。中でも人体に対する安全性を考慮すると、注入されるガスが炭酸ガス、窒素ガス、アルゴンガスから選択される少なくとも1種のガスであることが好ましい。更に人体に対する安全性及び液体への溶解性が高く、特に血管内での塞栓が起こりにくい観点から、注入されるガスが炭酸ガスであることがより好ましい。
【0019】
本発明の粘膜下層膨隆形成用ガス注入装置は、ガス供給手段を備えていることを特徴とする。ガス供給手段としては、一定量のガスを粘膜下層に注入できるのであれば特に限定されない。本発明では、ガス供給手段が、ガスが圧縮されたボンベ及び減圧弁を有することが好ましく、特に、減圧弁を有することで粘膜下層に一定量以上ガスが急激に注入されるのを防ぐことができる。ここで、ガスが圧縮されたボンベは、カートリッジ式のボンベであることが取り扱い性の観点から好ましく、特に、内視鏡への装着が可能なカートリッジ式のボンベであることがより好ましい。
【0020】
本発明において、ガス供給手段が、更にガス流量制御手段を備えたものであることが好ましい。このように、ガス流量制御手段を備えていることにより、病変部の大きさや部位に応じて粘膜下膨隆の大きさを適宜調節することができる。ここで、粘膜下層に注入されるガスの総量は、病変部の大きさや部位に応じて粘膜下膨隆の大きさも異なるため特に限定されないが、通常、3~100ml以下である。
【0021】
本発明において、粘膜下層にガスを注入する際のガス流量(単位時間当たりのガスの注入量)については特に限定されないが、50ml/s以下であることが好ましい。ガス流量が50ml/sを超える場合、粘膜下層に急激にガスが注入されて適切な粘膜下膨隆の形成が困難となるおそれがあり、ガス流量は、30ml/s以下であることがより好ましく、20ml/s以下であることが更に好ましく、15ml/s以下であることが特に好ましい。一方、ガス流量は通常1ml/s以上である。
【0022】
また、本発明において、病変部の大きさや部位により粘膜下膨隆を形成させるために必要なガスの注入量は異なるが、粘膜下層に注入されるガスの1回の注入量が100ml以下であることが好ましい。1回の注入量が100mlを超える場合、過大な粘膜下膨隆が形成されるため、その後の操作を行うためのスペースが確保できなくなるおそれがあり、1回の注入量は50ml以下であることがより好ましい。本発明において、粘膜下層にガスを注入する回数については特に限定されず、1回で注入してもよいし、複数回で注入してもよい。
【0023】
本発明において、ガス供給手段が、ガスが封入された注射器であることも好ましい。ガスが封入された注射器を用いて粘膜下層にガスを注入する方法としては特に限定されず、注射器を手動で操作してガスを注入してもよいし、注射器にガス流量の制御が可能な機械的手段が更に備えられていてもよい。粘膜下層にガスを注入する際のガス流量については特に限定されず、上述のように、ガスが圧縮されたボンベを用いた場合と同様のガス流量であることが好ましい。また、生理食塩水等の局注液を粘膜下層に注入する場合と比べて、本発明の装置を用いて粘膜下層にガスを注入する際の注入抵抗が小さいため、操作性が良好である利点を有する。
【0024】
本発明において、ガスが封入された注射器であるガス供給装置が、注射器に充填されたガスと同一のガスが充填された容器に封入された包装体であることが好ましい。このことにより、注射器に充填されたガス以外のガスが注射器内に混入されるのを防止することができる。また、包装体を開封してすぐに使用することができるため取り扱い性が良好である。
【0025】
本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置は、穿刺手段を備えている。穿刺手段を備えていることにより目的とする箇所に膨隆を形成させることができるとともに、粘膜下層にガスを注入するためのガス供給路を確保することができる。穿刺する方法としては特に限定されないが、粘膜下層に穿刺してそこからガスを注入するためには、注射針のような中空針であることが好ましい。本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置は、上記穿刺手段に加え、ガス供給手段と穿刺手段とを接続するフレキシブルチューブを備えたことを特徴とする。このように、ガス供給手段と穿刺手段とがフレキシブルチューブにより接続されているため、穿刺された箇所から粘膜下層にガスが注入され、粘膜下膨隆が形成される。用いられるフレキシブルチューブとしては、医療用に用いられるカテーテルのような中空のフレキシブルチューブであれば特に限定されない。用いられるフレキシブルチューブの長さや太さとしては、内視鏡に装着して使用可能な長さや太さであれば特に限定されず、フレキシブルチューブの長さは1~4mであることが好ましい。また、フレキシブルチューブの外径は、1~3.5mmであることが好ましい。
【0026】
本発明では、フレキシブルチューブの粘膜下層挿入側の先端部に注入針が設けられてなり、注入針が長手方向に移動することによって、フレキシブルチューブによる注入針の保護が可能であることが好ましい。このように、フレキシブルチューブによる注入針の保護が可能である構成を採用することで、目的とする粘膜下層以外のところに誤って注入針が穿刺されるのを防止することができるため好ましく、更に、注入針が長手方向に移動可能であるため、任意のタイミングで注入針を粘膜下層に穿刺することができる。注入針を長手方向に移動させる方法としては特に限定されないが、フレキシブルチューブの注入針が設けられていない側の端部において注入針の移動操作が可能であることが好ましい。具体的には、フレキシブルチューブが、外層チューブと内層チューブとからなる二層積層構造を有するフレキシブルチューブであって、内層チューブの粘膜下層挿入側の先端部に注入針が設けられてなり、内層チューブが外層チューブ内で長手方向に移動することによって、注入針の移動操作が可能となる実施態様であることが好ましい。
【0027】
本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置の好適な実施態様は、粘膜下膨隆形成用ガス注入装置が装着された内視鏡である。このように、本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置を内視鏡に装着することによって、内視鏡の操作をしながら手元で注入針の移動操作を行うことができるとともに、粘膜下層に注入針を穿刺し、そのままガスを注入して粘膜下膨隆を形成させることができる。
【0028】
また、上記粘膜下膨隆形成用ガス注入装置は、ガス供給手段と、穿刺手段と、ガス供給手段と穿刺手段とを接続するフレキシブルチューブを備えたことを特徴とするが、ガス供給装置と、一端に注入針が設けられかつ他端がガス供給手段と接続可能なフレキシブルチューブとを現場で組み立てて使用するような実施態様であってもよい。すなわち、消化管の病変部を内視鏡的に切除する際に病変部全体を膨隆させるための粘膜下膨隆形成用ガス注入キットであって、ガス供給装置と、一端に注入針が設けられかつ他端がガス供給手段と接続可能なフレキシブルチューブとからなることを特徴とする粘膜下膨隆形成用ガス注入キットであることも本発明の実施態様の一つである。
【0029】
本発明の粘膜下膨隆形成用ガス注入装置を用いることにより、粘膜下層にガスが注入されて隆起が高く安定した粘膜下膨隆が形成される。このように、病変部全体を膨隆させることができるため、病変部を容易で確実かつ安全に一括切除することができる。病変部が一括切除されることにより、詳細な病理組織学的診断が可能となるとともに、遺残や局所再発を防止することができる利点を有する。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。
【0031】
実施例1
炭酸ガスが圧縮されたボンベから炭酸ガスを50mlの注射器内へ注入した。次いで、24Gの注射針を炭酸ガスが封入された注射器に炭酸ガス以外のガスが注射器内に混入しないように装着した。豚の切除胃の粘膜下層に対してガス流量約10ml/sで炭酸ガスを局注して粘膜下膨隆を形成させた。図1で示されるように半球状の大きな粘膜下膨隆が形成された。ESDの手技に準じて粘膜下膨隆の周囲を切開したところ、粘膜下層が部分的にすでに剥離されていることが確認された。このとき、図4に示されるように粘膜下層に存在している比較的太い血管が破れることなく露出されていた。また、図5に示されるように粘膜下膨隆の形成により粘膜下層の部分的剥離が進んでいた。
【0032】
実施例2
窒素ガスを注射器内に封入した以外は実施例1と同様にして豚の切除胃の粘膜下層に対してガス流量約10ml/sで窒素ガスを局注して粘膜下膨隆を形成させた。図2に示されるように半球状の大きな粘膜下膨隆が形成された。
【0033】
実施例3
アルゴンガスを注射器内に封入した以外は実施例1と同様にして豚の切除胃の粘膜下層に対してガス流量約10ml/sで窒素ガスを局注して粘膜下膨隆を形成させた。実施例1及び2と同様に半球状の大きな粘膜下膨隆が形成された。
【0034】
比較例1
生理食塩水を注射器内に注入した以外は実施例1と同様にして豚の切除胃の粘膜下層に対して流量約5ml/sで生理食塩水を局注して粘膜下膨隆を形成させた。図3に示されるように大きな粘膜下膨隆は形成されず、半球状の緩やかな傾斜の粘膜下膨隆が形成された。ESDの手技に準じて膨隆の周囲を切開したところ、粘膜下層の剥離は認められず、血管の露出もなかった。
【0035】
実施例1~3の結果から分かるように、形成された粘膜下膨隆の隆起が高く、粘膜下層の一部が剥離されていた。粘膜下層に存在している比較的太い血管は損傷されることなく露出されており、露出された血管に対して電気凝固による血管処理を速やかに行うことにより、手技全体の安全性が保たれることが分かる。これに対し、生理食塩水を局注して粘膜下膨隆を形成させた比較例1では、得られた粘膜下膨隆の傾斜が緩やかであり、粘膜下層の剥離は認められず、血管の露出もなかった。また、生理食塩水を追加で局注しても粘膜下膨隆の隆起が高くならなかったことを本発明者は確認している。以上のことから、粘膜下層へガスを局注することにより安全かつ容易に病変の一括切除が得られることから、詳細な病理診断が可能となり、遺残や局所再発が極めて少なくなることが期待され、更に患者に恩恵を施すことができる。また、生理食塩水により形成された粘膜下膨隆の持続時間と比べて、ガスにより形成された粘膜下膨隆は安定して持続していたため、安全で確実かつ迅速に病変の一括切除が可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1において炭酸ガスにより形成された粘膜下膨隆の写真である。
【図2】実施例2において窒素ガスにより形成された粘膜下膨隆の写真である。
【図3】比較例1において生理食塩水により形成された粘膜下膨隆の写真である。
【図4】実施例1において炭酸ガスにより形成された粘膜下膨隆の周囲を切開した写真である。
【図5】実施例1において炭酸ガスにより形成された粘膜下膨隆の周囲を切開した他の写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4