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明細書 :新規蛍光化合物およびそれを用いた細胞内コレステロールの検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5240704号 (P5240704)
公開番号 特開2009-091287 (P2009-091287A)
登録日 平成25年4月12日(2013.4.12)
発行日 平成25年7月17日(2013.7.17)
公開日 平成21年4月30日(2009.4.30)
発明の名称または考案の名称 新規蛍光化合物およびそれを用いた細胞内コレステロールの検出方法
国際特許分類 C07D 493/08        (2006.01)
C12Q   1/60        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C07D 493/08 CSPC
C12Q 1/60
C12Q 1/02
G01N 21/78 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 9
出願番号 特願2007-262203 (P2007-262203)
出願日 平成19年10月5日(2007.10.5)
審査請求日 平成22年9月13日(2010.9.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145364
【氏名又は名称】国立大学法人群馬大学
発明者または考案者 【氏名】山田 圭一
【氏名】穂坂 正博
【氏名】吉原 利忠
【氏名】飛田 成史
【氏名】片貝 良一
【氏名】竹内 利行
個別代理人の代理人 【識別番号】100100549、【弁理士】、【氏名又は名称】川口 嘉之
【識別番号】100089244、【弁理士】、【氏名又は名称】遠山 勉
【識別番号】100126505、【弁理士】、【氏名又は名称】佐貫 伸一
審査官 【審査官】冨永 保
調査した分野 C07D 493/08
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
JP0005240704B2_000007t.gif
nは1~5の整数、Rは炭素数1~4のアルキルを示す。
【請求項2】
nが2であり、Rがメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物を細胞に添加し、蛍光を測定することを特徴とする、細胞内コレステロールの検出方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の化合物を含む、コレステロール検出キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は新規蛍光化合物に関する。本発明はまた、当該化合物を用いた細胞内コレステロール検出法および検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
固定化された組織でコレステロール分布を観測するプローブとしてポリエンマクロライド系抗生物質であるフィリピン(Filipin)IIIが用いられてきた。しかし、生体膜コレステロールに結合するフィリピンIIIは、生体膜の高コレステロールドメインに結合して孔をあけ、細胞障害を惹起する。フィリピンIIIの他にも、θ-トキシン、コレラトキシンB なども生体膜のスフィンゴ脂質に結合するのでリピッドラフトの観察に用いられるが、主に形質膜のコレステロールを染色し、細胞内オルガネラのコレステロール分布全体を観察するのには適さない。さらに、フィリピンIIIは蛍光消光が早く、それを認識する抗体もないことから、抗体染色可能な新規プローブの開発が望まれてきた。
一方、アンホテリシンBはポリエンマクロライド系抗生物質である(非特許文献1)が、コレステロールの検出の目的に応用されたことはなかった。

【非特許文献1】M. Murata et al. Org. Lett. 2002, 4 , 2087-2089.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、細胞内コレステロールの検出などに有用な、新規な蛍光化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、アンホテリシンB(AmB)にダンシル基を導入した新規AmB誘導体の合成に成功した。そして、この化合物が脂質膜中のコレステロールと安定な複合体を形成することから、この化合物を用いることにより細胞内のコレステロールを蛍光染色や抗体染色によって感度よく検出できることを見出し、本発明を完成させた。
【0005】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】
JP0005240704B2_000002t.gif
nは1~5の整数、Rは炭素数1~4のアルキルを示す。
(2)nが2であり、Rがメチルである、(1)の化合物。
(3)(1)または(2)の化合物を細胞に添加し、蛍光を測定することを特徴とする、細胞内コレステロールの検出方法。
(4)(1)または(2)の化合物を含む、コレステロール検出キット。

【発明の効果】
【0006】
本発明の新規蛍光化合物は、従来品より蛍光強度が強く、免疫染色も可能であることから固定細胞及び生細胞中のコレステロールの可視化に幅広く適用できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明の化合物は、以下の一般式(I)で表される。
【化2】
JP0005240704B2_000003t.gif


ここで、nは1~5の整数、Rは炭素数1~4のアルキルを示す。なお、Rは互いに異なっていてもよい。一般式(I)の化合物としては、nが2であり、Rがメチルである、下記の化合物が特に好ましい。
【化3】
JP0005240704B2_000004t.gif

【0008】
この化合物は下記の合成方法によって、アンホテリシンBとダンシル化エチレンジアミンを反応させることによって合成することができる。なお、nが2であり、Rがメチルである化合物以外の化合物も原料を代えることによって同様にして合成することができる。
【化4】
JP0005240704B2_000005t.gif

【0009】
本発明の化合物は、蛍光を発する。したがって、蛍光標識剤や蛍光プローブとして使用することができる。
特に、本発明の化合物は、細胞内に取り込まれ、コレステロールと同様の挙動を示すため、細胞内コレステロールの検出に好適に使用することができる。
【0010】
具体的には、本発明の化合物を細胞に添加し、蛍光顕微鏡などで蛍光を測定することによって、細胞内コレステロールの分布などを検出することができる。
検出対象の細胞の種類は特に制限されないが、コレステロールを蓄積する培養細胞が好ましい。生細胞において直接蛍光を観察してもよいし、細胞を固定化してから蛍光を観察してもよい。
本発明の化合物を単独で添加する場合、例えば、同化合物をDMSOなどに溶解させて添加することができる。
本発明の化合物は培養細胞の培地中に加えることができる。その添加濃度は細胞の種類によっても異なるが、好ましくは、0.5μM~50μMである。
蛍光顕微鏡などの蛍光測定装置を使用することによって本発明の化合物による蛍光を検出することができる。
なお、本発明の化合物を認識する抗体を用いて検出することも可能である。そのような
抗体としては、本発明の化合物に含まれるダンシル基に対する抗体(Molecular Probes 社:Anti-Dansyl Antibody(Catalog.#:A-6398))が挙げられる。
【0011】
本発明はまた、本発明の化合物を含むコレステロール検出キットに関する。該キットは、また、本発明の化合物に対する抗体を含むものであってもよい。

【実施例】
【0012】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例では、上記一般式(I)においてn=2、R=メチルの化合物をダンシル化アンホテリシンB (Amp-en-Ds) と呼ぶ。
【0013】
合成例
1.mono-N-dansyl-ethylendiamine (Ds-en)の合成
エチレンジアミン 3.34ml (50mmol)を蒸留ジクロロメタン40mlに溶解させ、室温下で攪拌した。この溶液にDansyl chloride 2.698g (10mmol)を10分かけて少しずつ加え、室温で15時間反応させた。反応混合物に水50mlを加え、分液ロートに移した。有機相を水、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥させた。これを減圧濃縮後、残渣にヘキサンを加えて生じた淡黄色固体を濾取してDs-en 2.04g (6.95mmol)を得た。(収率69.5%(Dansyl chlorideを基準に算出))
m.p.: 153-154℃, 1H NMR (300MHz, CDCl3) δ8.54 (1H, d, J=8.5Hz), 8.30(d, 1H, J=8.6Hz), 8.25 (d, 1H, J=7.3Hz), 7.56 (dd, 1H, J1=8.5Hz, J2=7.6Hz), 7.52 (dd, 1H, J1=8.5Hz, J2=7.6Hz), 7.18 (d, 1H, J=7.4Hz), 2.90 (dd, 2H, J1=5.3Hz, J2=6.5Hz), 2.89 (s, 6H), 2.69 (dd, 2H, J1=5.3Hz, J2=6.5Hz)
【0014】
2.ダンシル化アンホテリシンB (Amp-en-Ds) の合成
N-Fmoc-アンホテリシンB(N-Fmoc-Amp)は文献既知の方法にて合成した。(文献:M. Murata et al. Org. Lett. 2002, 4, 2087-2089.)N-Fmoc-Amp 55mg (0.044mmol)をDMF5mlに溶解させ、氷冷撹拌下Ds-en 16 mg (0.05mmol) , PyBOP (商標:Benzotriazol-1-yl-oxytripyrrolidinophosphonium hexafluorophosphate)27 mg (0.05mmol), DIEA (diisopropylethylamine)18μl (0.106mmol)を加え、氷冷下で1時間、室温で15時間撹拌した。DMFを減圧留去後、残渣に蒸留ジエチルエーテルを加え析出した沈殿を濾取した。得られた粗精製物をジエチルエーテル-メタノールで結晶化を行い、Fmoc-Amp-en-Ds 46 mg (0.032mmol)を得た。(収率73%)これを2%DBU(ジアザビシクロウンデセン)/DMF溶液5 mlに溶解させ、室温で10分間処理してFmoc基の除去を行った。減圧濃縮後、得られた残渣に蒸留エーテルを加え、生じた沈殿を濾取した。この沈殿を蒸留ジエチルエーテルで洗浄し乾燥させてAmp-en-Ds 38 mgを得た。(定量的)Amp-en-Dsの1H NMRスペクトル(300MHz, DMSO-d6)を図1に示す。
m.p.: > 300℃, 大気圧イオン化質量スペクトル (APCI-MS, positive) m/z=1199.9 ([M+3H]+)
【0015】
【化5】
JP0005240704B2_000006t.gif

【0016】
実施例2:Amp-en-Dsの吸収・蛍光スペクトル
Amp-en-DsとアンホテリシンB(Amp)の紫外吸収スペクトルは、紫外・可視分光光度計 (JASCO, Ubest V-550 UV/VIS)で測定した。試料は分光測定用MeOHに溶解させ、光路長1cmの角型石英セルを用いて室温にて測定した。蛍光スペクトルは、蛍光分光光度計 (Hitachi, F-4010)で測定した。測定には紫外吸収スペクトル測定と同じ試料溶液を用い、光路長1cmの角型石英セルを用いて室温にて測定した。
結果を図2および3に示す。Amp-en-DsはアンホテリシンBの吸収に加えて、ダンシル基の吸収が確認された。また、約510nmに蛍光が観察された。
【0017】
実施例3:培養細胞での蛍光測定
マクロファージ細胞(RAW264.7)にアンホテリシンB, Amp-en-Ds, フィリピンIII のDMSO溶液 (濃度5μM, 75μM) を1時間取り込ませ、蛍光顕微鏡にて染色画像を撮影した。(図4)
上二段は、ホルマリンで固定化された細胞に各化合物を5μM, 75μM加えた場合、下二段は、生細胞に各化合物を5μM, 75μM加えた場合の顕微鏡画像である。
その結果、Amp-en-Dsは細胞内に取り込まれ、公知のコレステロールプローブであるフィリピンIIIよりも強い蛍光を示すことがわかった。アンホテリシンBのみでは蛍光は見られなかった。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】Amp-en-Dsの1H NMRスペクトル。
【図2】Amp-en-Ds(実線)及びAmp(破線)の紫外吸収スペクトル(MeOH)。
【図3】Amp-en-Ds(実線)及びAmp(破線)の蛍光スペクトル(MeOH 励起波長340nm)
【図4】アンホテリシンB, Amp-en-Ds, またはフィリピンIII (濃度5μM, 75μM)によるマクロファージ細胞(RAW264.7)の蛍光染色結果を示す図(写真)。上二段は、ホルマリンで固定化された細胞に各化合物を5μM, 75μM加えた場合、下2段は、生細胞に各化合物を5μM, 75μM加えた場合の蛍光染色結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3