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明細書 :体外循環装置用の訓練装置およびそのプログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4999186号 (P4999186)
公開番号 特開2009-217042 (P2009-217042A)
登録日 平成24年5月25日(2012.5.25)
発行日 平成24年8月15日(2012.8.15)
公開日 平成21年9月24日(2009.9.24)
発明の名称または考案の名称 体外循環装置用の訓練装置およびそのプログラム
国際特許分類 G09B   9/00        (2006.01)
G09B  23/28        (2006.01)
FI G09B 9/00 Z
G09B 23/28
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2008-061456 (P2008-061456)
出願日 平成20年3月11日(2008.3.11)
審査請求日 平成23年3月1日(2011.3.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
発明者または考案者 【氏名】末田 泰二郎
【氏名】黒崎 達也
【氏名】二宮 伸治
【氏名】徳嶺 朝子
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100134005、【弁理士】、【氏名又は名称】澤田 達也
審査官 【審査官】加藤 肇
参考文献・文献 特開2007-155897(JP,A)
特開2005-114764(JP,A)
特開2004-321357(JP,A)
特開平08-030185(JP,A)
調査した分野 G09B 9/00
G09B 19/00
G09B 19/24
G09B 23/28-23/34
A61M 1/00-1/36
特許請求の範囲 【請求項1】
生体の血行動態を模擬する模擬循環部と、
前記模擬循環部から模擬血液を脱血する脱血手段と、前記模擬循環部から脱血された前記模擬血液を貯留する貯血部と、前記貯血部に貯留されている前記模擬血液を、人工肺を通して前記模擬循環部へと送血する送血手段とを備える体外循環装置と、
血液循環に関する操作情報を入力する入力部と、
前記操作情報に基づき前記模擬血液を前記模擬循環部と前記体外循環装置との間で循環させるように前記体外循環装置を制御する制御部と、
前記循環によって発生する物理情報を測定する測定部と、
前記操作情報および前記物理情報に基づき、シミュレーション情報をリアルタイムで算出するリアルタイム数値シミュレーション部と、
前記シミュレーション情報を提示するモニタ部と、
を具える体外循環装置用の訓練装置であって、
前記物理情報には、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が少なくとも含まれ、
前記シミュレーション情報の少なくとも一部が、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差を用いてリアルタイムで算出された脱血流量および送血流量を利用して算出される、体外循環装置用の訓練装置。
【請求項2】
請求項1に記載の体外循環装置用の訓練装置において、
前記貯血部内の模擬血液量に関連する情報が、前記貯血部に設置された貯血部圧力センサにより測定された貯血部圧力値であり、
前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が、前記人工肺の入口および出口の模擬血液の圧力を測定する人工肺圧力センサにより測定された前記模擬血液の圧力値であり、
前記貯血部圧力値から前記貯血部内の模擬血液量を算出し、その算出された貯血部内の模擬血液量、並びに前記人工肺の入口および出口の模擬血液の圧力値を用いて前記脱血流量および送血流量をリアルタイムで算出する、体外循環装置用の訓練装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の体外循環装置用の訓練装置において、
前記リアルタイム数値シミュレーション部が、イベント入力、または事前に用意した複数のシナリオから選択されたシナリオを受けて、これを加味した前記シミュレーション情報をリアルタイムで算出する、体外循環装置用の訓練装置。
【請求項4】
体外循環装置用の訓練方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記体外循環装置は、生体の血行動態を模擬する模擬循環部から模擬血液を脱血する脱血手段と、前記模擬循環部から脱血された前記模擬血液を貯留する貯血部と、前記貯血部に貯留されている前記模擬血液を、人工肺を通して前記模擬循環部へと送血する送血手段とを備え、
前記体外循環装置および前記模擬循環部には物理情報を測定する測定部が設けられており、
前記プログラムは、前記コンピュータに、
血液循環に関する操作情報の入力を受け付ける入力ステップと、
前記操作情報に基づき前記模擬血液を前記模擬循環部と前記体外循環装置との間で循環させるように前記体外循環装置を制御するステップと、
前記循環によって発生する前記物理情報を測定するように前記測定部を制御するステップと、
前記操作情報および前記物理情報に基づき、シミュレーション情報をリアルタイムで算出するリアルタイム数値シミュレーションステップと、
前記シミュレーション情報を提示する情報提示ステップと、
を実行させ、更に、
前記物理情報には、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が少なくとも含まれ、
前記リアルタイム数値シミュレーションステップには、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差を用いてリアルタイムで算出された脱血流量および送血流量を利用して前記シミュレーション情報の少なくとも一部を算出するステップが含まれる、プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載のプログラムにおいて、
前記貯血部内の模擬血液量に関連する情報が、前記貯血部に設置された貯血部圧力センサにより測定された貯血部圧力値であり、
前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が、前記人工肺の入口および出口の圧力を測定する人工肺圧力センサにより測定された前記模擬血液の圧力値であり、
前記シミュレーション情報の少なくとも一部を算出するステップが、
前記貯血部圧力値から前記貯血部内の模擬血液量を算出するステップと、
その算出された貯血部内の模擬血液量、並びに前記人工肺の入口および出口の模擬血液の圧力値を用いて前記脱血流量および送血流量をリアルタイムで算出するステップと、
を含む、プログラム。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のプログラムにおいて、
前記リアルタイム数値シミュレーションステップでは、イベント入力、または事前に用意した複数のシナリオから選択されたシナリオを受けて、これを加味した前記シミュレーション情報をリアルタイムで算出する、プログラム。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、体外循環装置用の訓練装置およびそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
重症心疾患の開心術治療において体外循環装置の信頼性は非常に重要であり、更にそれを操作する医療従事者にも高度な技能が求められている。従って、体外循環装置のような生命維持管理装置の操作に従事する臨床工学技師等の技能の習得および維持のため、体外循環技術の教育の重要性が増している。
【0003】
そこで、本発明者らは、体外循環装置を使用した臨床現場において発生し得る様々なトラブルへの対処方法を習得するための訓練装置として、「人体模擬循環回路に接続した人工心肺装置をパソコンで制御してシミュレーション操作訓練を行う装置」を開発した(例えば、特許文献1参照。)。更に本発明者らは、より臨床の実際に即したシミュレーション操作訓練を可能とするため、人体模擬循環回路の血液回路に流量制御弁を設けて人体側の血流変化や血圧変化をリアルに再現することを可能としたシミュレーション操作訓練装置(例えば、特許文献2参照)、および患者の体格等に依存した適切な血行動態をシミュレーション操作訓練装置に作り出すための血行動態算出方法(例えば、特許文献3参照。)を開発し、様々なトラブル事象の再現が可能な訓練装置も提供している。
【0004】
また、体外循環技術の教育現場においては、体外循環装置の操作への慣熟および装置の回路構成理解のために、トラブル事象が発生しない通常の体外循環操作を定量的評価に基づく適切な反復訓練で理解、習得した上でトラブルが発生した場合のシミュレーション操作訓練を行う必要性が指摘されている一方で、体外循環技術のシミュレーション教育を行う指導者が不足していることから、本発明者らは、通常の体外循環操作トレーニングをコンピュータ制御によりインストラクター(指導者)無しで反復実施できるシミュレーション操作訓練装置として「ECCSIM-Lite」を開発し、提供している。そしてこの「ECCSIM-Lite」は、図4に示すように、模擬循環部としての生体モデル2と、体外循環装置3と、入力部としての入力装置4と、制御部としての制御装置5と、測定部としての第1圧力センサ61、第2圧力センサ62、マノメータ64を用いた第3圧力センサ63、および3個の流量計10と、リアルタイム数値シミュレーション部としてのコンピュータ7と、モニタ部としてのモニタ8とを具えている。

【特許文献1】特開2005-114764号公報
【特許文献2】特開2007-155897号公報
【特許文献3】特開2007-140268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術のシミュレーション操作訓練装置においては、血行動態をシミュレーションするために、少なくとも送血流量、脱血流量、人口肺入口・出口の回路内圧、および貯血槽の液量をそれぞれ測定する必要があり、図4に示すように送血流量および脱血流量の測定には流量センサ10を使用していた。そして、流量センサを使用することにより、訓練装置のコストが高くなってしまうだけでなく、軟質回路を使用することに起因する流量センサの誤差の補正が必要となると共に、流量センサの応答特性が問題となることがあった。また、訓練装置が大型化してしまい、可搬性が優れていないといった問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、シミュレーション操作訓練においては模擬血液の温度、密度、粘性などの物性値が殆ど変化しないことに着目し、上記課題を有利に解決した体外循環装置用の訓練装置および体外循環装置用の訓練方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することを目的とする。
【0007】
すなわち、本発明の体外循環装置用の訓練装置は、生体の血行動態を模擬する模擬循環部と、前記模擬循環部から模擬血液を脱血する脱血手段と、前記模擬循環部から脱血された前記模擬血液を貯留する貯血部と、前記貯血部に貯留されている前記模擬血液を、人工肺を通して前記模擬循環部へと送血する送血手段とを備える体外循環装置と、血液循環に関する操作情報を入力する入力部と、前記操作情報に基づき前記模擬血液を前記模擬循環部と前記体外循環装置との間で循環させるように前記体外循環装置を制御する制御部と、前記循環によって発生する物理情報を測定する測定部と、前記操作情報および前記物理情報に基づき、シミュレーション情報をリアルタイムで算出するリアルタイム数値シミュレーション部と、前記シミュレーション情報を提示するモニタ部と、を具える体外循環装置用の訓練装置であって、前記物理情報には、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が少なくとも含まれ、前記シミュレーション情報の少なくとも一部が、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差を用いてリアルタイムで算出された脱血流量および送血流量を利用して算出されるものである。
【0008】
また、本発明のプログラムは、体外循環装置用の訓練方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記体外循環装置は、生体の血行動態を模擬する模擬循環部から模擬血液を脱血する脱血手段と、前記模擬循環部から脱血された前記模擬血液を貯留する貯血部と、前記貯血部に貯留されている前記模擬血液を、人工肺を通して前記模擬循環部へと送血する送血手段とを備え、前記体外循環装置および前記模擬循環部には物理情報を測定する測定部が設けられており、前記プログラムは、前記コンピュータに、血液循環に関する操作情報の入力を受け付ける入力ステップと、前記操作情報に基づき前記模擬血液を前記模擬循環部と前記体外循環装置との間で循環させるように前記体外循環装置を制御するステップと、前記循環によって発生する前記物理情報を測定するように前記測定部を制御するステップと、前記操作情報および前記物理情報に基づき、シミュレーション情報をリアルタイムで算出するリアルタイム数値シミュレーションステップと、前記シミュレーション情報を提示する情報提示ステップと、を実行させ、更に、前記物理情報には、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が少なくとも含まれ、前記リアルタイム数値シミュレーションステップには、前記貯血部内の模擬血液量および前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差を用いてリアルタイムで算出された脱血流量および送血流量を利用して前記シミュレーション情報の少なくとも一部を算出するステップが含まれるものである。
【発明の効果】
【0009】
かかる本発明の体外循環装置用の訓練装置によれば、操作訓練時の送血流量および脱血流量を貯血部内の模擬血液量(貯血量)および人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差(差圧)を用いて算出(間接測定)してシミュレーション情報の算出に用いるので、送血流量および脱血流量を測定するための流量センサを設ける必要が無い。また、流量センサを設ける必要が無いので、模擬血液の回路に軟質回路を使用することによる誤差の補正の必要性が無くなり、更に体外循環の操作の良否を判定する際にセンサの応答特性が問題となることが無い。従って、体外循環装置用の訓練装置の低コスト化およびコンパクト化を実現して、導入および維持が容易で可搬性の高い訓練装置を提供することができる。
【0010】
また、かかる本発明のプログラムによれば、コンピュータに、測定部を制御して貯血量および人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差(差圧)を測定し、その測定値に基づき操作訓練時の送血流量および脱血流量を算出させ、その算出された送血流量および脱血流量を利用してシミュレーション情報を算出させることができるので、送血流量および脱血流量を測定するための流量センサを設ける必要が無い体外循環装置用の訓練方法を実現可能なプログラムを提供することができる。また、流量を流量センサにより測定することなく算出により求めるので、誤差の補正やセンサの応答特性の問題に関する追加のステップをプログラムに含める必要が無い。従って、低コストかつコンパクトな体外循環装置用の訓練方法をコンピュータに実行させることが可能なプログラムを提供することができる。
【0011】
なお、この発明の体外循環装置用の訓練装置は、前記貯血部内の模擬血液量に関連する情報が、前記貯血部に設置された貯血部圧力センサにより測定された貯血部圧力値であり、前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が、前記人工肺の入口および出口の模擬血液の圧力を測定する人工肺圧力センサにより測定された前記模擬血液の圧力値であり、前記貯血部圧力値から前記貯血部内の模擬血液量を算出し、その算出された貯血部内の模擬血液量、並びに前記人工肺の入口および出口の模擬血液の圧力値を用いて前記脱血流量および送血流量をリアルタイムで算出するものでも良い。このように構成すれば、圧力センサを設けるだけで脱血流量および送血流量を算出してシミュレーション情報の算出が可能な訓練装置を提供することができる。従って、病院施設で保有している既存の心肺回路および圧トランスジューサの訓練装置への利用が可能となり、訓練装置の導入および維持のコストを更に抑えることができる。
【0012】
更に、この発明の体外循環装置用の訓練装置は、前記リアルタイム数値シミュレーション部が、イベント入力、または事前に用意した複数のシナリオから選択されたシナリオを受けて、これを加味した前記シミュレーション情報をリアルタイムで算出するものでも良い。このように構成すれば、体外循環の基本操作(送血流量および脱血流量の手動制御)の反復訓練を行う訓練装置のみならず、臨床の現場に即したリアルなトラブル例を再現し得る体外循環装置用の訓練装置についても、流量センサの設置の必要性を無くして低コスト化およびコンパクト化を実現することができる。
【0013】
また、本発明のプログラムは、前記貯血部内の模擬血液量に関連する情報が、前記貯血部に設置された貯血部圧力センサにより測定された貯血部圧力値であり、前記人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差に関連する情報が、前記人工肺の入口および出口の圧力を測定する人工肺圧力センサにより測定された前記模擬血液の圧力値であり、前記シミュレーション情報の少なくとも一部を算出するステップが、前記貯血部圧力値から前記貯血部内の模擬血液量を算出するステップと、その算出された貯血部内の模擬血液量、並びに前記人工肺の入口および出口の模擬血液の圧力値を用いて前記脱血流量および送血流量をリアルタイムで算出するステップと、を含むものでも良い。このように構成すれば、圧力センサを設けるだけで脱血流量および送血流量を算出してシミュレーション情報の算出が可能で、病院施設で保有している既存の心肺回路および圧トランスジューサの利用が可能な訓練装置を用いた訓練方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを提供することができる。従って、体外循環装置用の低コストかつコンパクトな訓練方法を実現可能なプログラムを提供することができる。
【0014】
更に、本発明のプログラムは、前記リアルタイム数値シミュレーションステップでは、イベント入力、または事前に用意した複数のシナリオから選択されたシナリオを受けて、これを加味した前記シミュレーション情報をリアルタイムで算出するものでも良い。このように構成すれば、体外循環の基本操作(送血流量および脱血流量の手動制御)の反復訓練のみならず、臨床の現場に即したリアルなトラブル例を再現し得る体外循環装置用の訓練方法を実現可能なプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。ここに図1は、本発明にかかる体外循環装置用の訓練装置の一実施例の基本的な構成を示す説明図であり、図2は、図1に示す訓練装置においてシミュレーション情報が算出される過程を説明するブロック図であり、図3は、図1に示す訓練装置を用いた訓練の手順を示すフローチャートである。
【0016】
図1に示すように、本発明の一実施例の訓練装置1は、模擬循環部としての生体モデル2と、体外循環装置3と、入力部としての入力装置4と、制御部としての制御装置5と、測定部としての第1圧力センサ61、第2圧力センサ62、およびマノメータ64を用いた第3圧力センサ63と、リアルタイム数値シミュレーション部としてのコンピュータ7と、モニタ部としてのモニタ8とを具える。
【0017】
ここで、生体モデル2は、静脈コンプライアンス等の生体(人、動物など)の血行動態を模擬するように構成されており、体外循環装置3と送血手段および脱血手段を介して接続されて模擬血液(生体の血液と同様の粘度、温度などの諸特性を持つ液体)が生体モデル2と体外循環装置3との間で循環可能なようにされている。また、生体モデル2には、測定部としての血圧センサ(図示せず)および温度センサ(図示せず)が設けられており、血圧および温度が測定されて物理情報としてシミュレーション情報の算出に利用される。
【0018】
体外循環装置3は、生体モデル2に接続された脱血手段としての脱血回路31と、その脱血回路31に接続されて生体モデル2より脱血された模擬血液を貯留する貯血部としての貯血槽32と、その貯血槽32から生体モデル2へと人口肺35を介して模擬血液を送血する送血手段としての送血ポンプ33および送血回路34とを備えており、脱血回路31および送血回路34には、クランプ36が設けられて模擬血液の流量調整および遮断が行えるようにされている。
【0019】
そして、貯血槽32の底面、人工肺35の入口側(模擬血液流入側)の送血回路34、および人工肺35の出口側(模擬血液流出側)の送血回路34には、それぞれ第1圧力センサ61、第2圧力センサ62、および第3圧力センサ63が設けられており、各圧力センサ61、62、63が測定した圧力値はコンピュータ7へと送られる。更に、模擬血液の粘度および温度も図示しないセンサにより測定されてコンピュータ7へと送られている。
【0020】
また、入力装置4は、制御装置5を介して送血ポンプ33に接続されており、操作者9が入力装置4に入力した操作情報に基づき制御装置5が送血ポンプ33を駆動して模擬血液を循環させる。更に、入力装置4は、コンピュータ7とも接続されて操作者9が入力した操作情報、例えば想定患者の情報(性別、身長、体重、および心係数等)に基づいてコンピュータ7がシミュレーション情報を算出できるようにしている。なお、入力されなかった情報については、初期設定値が自動的に設定される。
【0021】
コンピュータ7は、図2に示すように、操作者9が入力装置4を介して入力した想定患者等の入力情報B1、第1圧力センサが検出した、貯血槽32の底面の圧力である第1圧力値B2、第2圧力センサが検出した、人工肺35の入口側の模擬血液圧力値である第2圧力値B3、第3圧力センサが検出した、人工肺35の出口側の模擬血液圧力値である第3圧力値B4、およびその他の情報B5に基づきシミュレーション情報を算出し(B6)、その算出結果をモニタ8に表示する(B7)。ここで、シミュレーション情報には例えば、静脈コンプライアンス、抹消血管抵抗、動脈圧、中心静脈圧、肺動脈圧、循環血液流量、心拍数、不整脈、心拍出量等の血行動態情報、および血液ガス情報、ヘマトクリット、体温等のシミュレーション生体情報、並びに人工肺入口圧、人工肺出口圧、貯血槽液量、脱血流量、送血流量が含まれており、それらの情報は、患者の体循環と肺循環とを含む数値血行動態モデルのシミュレータプログラム等を用いて算出される。
【0022】
そして、この様にシミュレーション情報を算出する際には、第1圧力値B2を用いて貯血槽液量の算出を行うと共に(B8)、第2圧力値B3と第3圧力値B4との差である人工肺の固有抵抗による圧変化(人工肺35の入口と出口との間の圧力差)を算出して、その圧変化の値を用いて送血流量を算出し(B9)、それら算出された貯血槽液量および送血流量を用いて脱血液量を算出することにより(B10)、送血液量および脱血液量をモニタ8に表示し(B7)、または送血液量および脱血液量を用いてシミュレーション情報を算出することができる(B6)。
【0023】
ここで一般に、時刻tにおける貯血槽液量V(P(t))の算出は、例えば模擬血液の密度ρ、重力加速度g、および貯血槽32の底面積Aを用いて貯血槽の底面圧P(t)から数式(1)を用いて算出することができる。
【数1】
JP0004999186B2_000002t.gif
なお、例えば下部で断面積が小さくなっている貯血槽のように、槽高により断面積が変化するような複雑な形状の貯血槽を使用する場合には、時刻tにおける貯血槽の水位h(t)と、貯血槽液量VR‐H(h(t))との関係を校正曲線として与えることで、貯血槽の底面圧P(t)から数式(2)および数式(3)を用いて貯血槽液量V(P(t))を算出することができる。
【数2】
JP0004999186B2_000003t.gif
【数3】
JP0004999186B2_000004t.gif
また、時刻tにおける送血流量Qは、模擬血液温度T、模擬血液粘度η、実験定数λを用いて人工肺入口圧P(t)および人工肺出口圧P(t)から数式(4)を用いて算出することができる。
【数4】
JP0004999186B2_000005t.gif
更に、時刻tにおける脱血流量Qは、微小時間を△tとして送血流量Q、貯血槽液量V(P(t))、時刻tより微小時間△t前の貯血槽液量V(P(t‐△t))から数式(5)を用いて算出することができる。
【数5】
JP0004999186B2_000006t.gif

【0024】
以上のような構成により、図3に示すように、本実施例の体外循環装置3によれば、操作者9が操作情報を入力し(S1)、送血ポンプ33を駆動して模擬血液を循環させ(S2)、その循環によって生じた物理情報を圧力センサ61~63等のセンサが測定し(S3)、その物理情報および操作情報に基づきシミュレーションを行い(S4)、そのシミュレーション結果を表示する(S5)ことができる。そして、これによりシミュレーションを用いて体外循環技術の訓練を行うことができる。
【0025】
このような体外循環装置3によれば、図4に示すような従来技術の訓練装置と異なり、訓練装置1に脱血流量および送血流量を計測するための流量センサ10を設けることなくシミュレーションを用いて体外循環の基本操作の反復訓練を行うことができる。また、流量センサ10を設ける必要が無いので、模擬血液の回路に軟質回路を使用することによる誤差の補正の必要性が無くなり、更に体外循環の操作の良否を判定する際にセンサの応答特性が問題となることが無い。従って、体外循環装置用の訓練装置1の低コスト化およびコンパクト化を実現して、導入および維持が容易で可搬性の高い訓練装置1を提供することができる。
【0026】
また、訓練装置1によれば、圧力センサを設けるだけで脱血流量および送血流量を算出してシミュレーション情報の算出が可能であるので、日本体外循環技術医学会が定めた「体外循環教育用標準回路」に標準装備されているセンサ(人工肺入口の圧力センサおよび人工肺出口のマノメータ等)や、病院施設で保有している既存の心肺回路および圧トランスジューサの訓練装置への利用が可能となり、訓練装置1の導入および維持のコストを更に抑えることができる。
【0027】
上述の本発明の一実施例の一変形例として、入力装置4を介して訓練装置1に事前に定められたシナリオ、またはイベントを入力して、これを加味した前記シミュレーション情報をリアルタイムで算出するようにしても良い。この場合、図3に示す物理情報および操作情報に基づくシミュレーションの実施(S4)が、シナリオまたはイベントを加味して算出されることとなる。なお、シナリオまたはイベントの入力は、操作者9若しくは指導者(図示せず)により手動で、またはコンピュータにより自動でなされる。
【0028】
ここで、イベントやシナリオの一例を挙げると、「体外循環開始後、脱血量が少ないのに送血量が多いと、人工心肺装置内の血液レベルが急速に低下してレベルセンサーが鳴り、送血量を落とすか、脱血量を減らすかを行うように訓練者に警告する画面表示および図示しないスピーカからの音声指示を行う。訓練者は警告および音声指示に応じて適切に操作情報を入力する。その後、あまりに体外循環のレベルが低下すると空気を送る危険を図示しないアラームが知らせ、送血ポンプ33が自動的にストップするというシミュレーションがなされる。」といったシナリオが考えられ、その他にも実際の医療現場において発生し得る様々な状況をイベントやシナリオとして入力し得る。
【0029】
この一変形例ように構成すれば、臨床の現場に即したリアルなトラブル例を再現し得る体外循環装置用の訓練装置についても、流量センサの設置の必要性を無くして低コスト化およびコンパクト化を実現することができる。また、事前に定めたシナリオに従い操作者に指示を出して訓練を行えば、訓練を指導者なしで行うことが可能となる。
【0030】
なお、上記の実施例や変形例以外にも、本発明の体外循環装置用の訓練装置は、差圧計を用いて人工肺の入口と出口との間の圧力差を測定しても良い。このようにすれば、人工肺の入口と出口とに圧力センサを別個に設ける必要が無くなり、よりコンパクトな訓練装置を提供することができる。また、貯血槽内の模擬血液量は、圧力センサを用いた測定以外にも、レベル計等を用いて測定を行っても良く、レベル計により直接的に貯血槽内の模擬血液量を測定すれば、貯血槽の模擬血液量を算出する手間を省くことができる。更に、物理情報および操作情報は上述の情報に限定されること無く、様々な情報を用いてシミュレーションを行うことができる。その他、脱血手段や体外循環装置の回路構成は、訓練目的に応じて任意に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
かくして、本発明の体外循環装置用の訓練装置によれば、操作訓練時の送血流量および脱血流量を貯血槽内の模擬血液量(貯血量)および人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差(差圧)を用いて算出(間接測定)してシミュレーション情報の算出に用いるので、送血流量および脱血流量を測定するための流量センサを設ける必要が無い。また、流量センサを設ける必要が無いので、模擬血液の回路に軟質回路を使用することによる誤差の補正の必要性が無くなり、更に体外循環の操作の良否を判定する際にセンサの応答特性が問題となることが無い。従って、体外循環装置用の訓練装置の低コスト化およびコンパクト化を実現して、導入および維持が容易で可搬性の高い訓練装置を提供することができる。
【0032】
また、本発明のプログラムによれば、コンピュータに、測定部を制御して貯血量および人工肺の入口と出口との間の模擬血液の圧力差(差圧)を測定し、その測定値に基づき操作訓練時の送血流量および脱血流量を算出させ、その算出された送血流量および脱血流量を利用してシミュレーション情報を算出させることができるので、送血流量および脱血流量を測定するための流量センサを設ける必要が無い体外循環装置用の訓練方法を実現可能なプログラムを提供することができる。また、流量を流量センサにより測定することなく算出により求めるので、誤差の補正やセンサの応答特性の問題に関する追加のステップをプログラムに含める必要が無い。従って、低コストかつコンパクトな体外循環装置用の訓練方法をコンピュータに実行させることが可能なプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる体外循環装置用の訓練装置の一実施例の基本的な構成を示す説明図である。
【図2】図1に示す訓練装置においてシミュレーション情報が算出される過程を説明するブロック図である。
【図3】図1に示す訓練装置を用いた訓練の手順を示すフローチャートである。
【図4】従来技術の体外循環装置用の訓練装置の基本的な構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 訓練装置
2 生体モデル
3 体外循環装置
4 入力装置
5 制御装置
7 コンピュータ
8 モニタ
9 操作者
10 流量センサ
31 脱血回路
32 貯血槽
33 送血ポンプ
34 送血回路
35 人工肺
36 クランプ
61 第1圧力計
62 第2圧力計
63 第3圧力計
64 マノメータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3