TOP > 国内特許検索 > エストロゲン関連疾患の判定方法 > 明細書

明細書 :エストロゲン関連疾患の判定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5804341号 (P5804341)
公開番号 特開2012-034633 (P2012-034633A)
登録日 平成27年9月11日(2015.9.11)
発行日 平成27年11月4日(2015.11.4)
公開日 平成24年2月23日(2012.2.23)
発明の名称または考案の名称 エストロゲン関連疾患の判定方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12N   5/071       (2010.01)
C12N   5/09        (2010.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
C12Q 1/68 A
C12N 5/00 102
C12N 5/00 202A
C12N 5/00 202U
A01K 67/027
C12Q 1/02
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 30
出願番号 特願2010-178128 (P2010-178128)
出願日 平成22年8月6日(2010.8.6)
審査請求日 平成25年7月25日(2013.7.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】水上 洋一
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】戸来 幸男
参考文献・文献 特表2003-531565(JP,A)
特開2006-141301(JP,A)
国際公開第2006/005468(WO,A1)
山口医学,2010年 6月,vol.59, no.3,p.140[NO.2]
J. Steroid. Biochem. Mol. Biol.,2010年 1月,vol.118, no.1-2,pp.7-12
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12Q 1/68
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
ヒトGPR30遺伝子のORFに存在する一塩基多型を検出することを含むことを特徴とする子宮筋腫の判定を補助する方法であって、一塩基多型が、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型である方法。
【請求項2】
ヒトGPR30遺伝子のORFに存在し、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型を含むGPR30を発現し、野生型GPR30を発現する細胞株に比べて細胞死の程度が低いことを特徴とする細胞株。
【請求項3】
請求項記載の細胞株に被検物質を接触させ、1)細胞の増殖の程度を分析し、細胞の増殖を抑制する物質を選択する工程;又は2)細胞死の程度を分析し、細胞死を促進する物質を選択する工程;を含む子宮筋腫の治療薬のスクリーニング方法。
【請求項4】
ヒト又は非ヒト動物のGPR30遺伝子のORFに存在し、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型、又は非ヒト動物のGPR30ホモログ遺伝子に保存された、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基に相当するシトシンがチミンである一塩基多型を含むGPR30を発現することを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項5】
請求項記載の変異GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物に被検物質を投与し、子宮筋腫の大きさを測定し、子宮筋腫を縮小させる物質を選択する工程を含む子宮筋腫の治療薬のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、膜結合型女性ホルモン受容体GPR30(G-protein coupled receptor 30)遺伝子のORFに存在する少なくとも1種の一塩基多型を解析するエストロゲン関連疾患の判定方法や、GPR30を標的としたエストロゲン関連疾患の治療薬のスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ある集団で1%以上の遺伝子の変異が観察されるものを多型といい、特に一塩基だけが変異したものを一塩基多型(SNP;single nucleotide polymorphism)と呼ぶ。これまでに、ヒトゲノムには1億4千2百万のSNPが同定され、1.9キロ塩基ごとに1つの頻度でSNPが存在すること、そして、そのうち6万個のSNPがエキソン(コーディング領域と非翻訳領域)に存在していることなどが明らかになっているが(非特許文献1)、各SNPの詳細な機能についてはほとんど明らかになっていない。
【0003】
タンパク質のコーディング領域(ORF;オープンリーディングフレーム)におけるミスセンスSNPは、タンパク質におけるアミノ酸配列の変更を伴い、その機能に影響を与える可能性がある。タンパク質の機能に関与するSNPは、個人の体質、薬剤に対する応答、疾患の発症や悪化等に関連している可能性高いことから、重要であるといわれている。特に疾患と関連のあるSNPは臨床分野での疾患の診断や薬剤の使い分けのマーカーとして有用であり、オーダーメイド医療の実現化につながると期待されている。
【0004】
女性ホルモンの一種であるエストロゲン(E2)は多彩な生理作用を有しており、エストロゲンによる調節は内分泌系、生殖器、骨組織、血管系で重要な役割を担っている。そして、その異常は異常骨吸収、心血管疾患、中枢神経系傷害及びがんなど種々の疾患の発生や進行に関与すると考えられている。エストロゲンによる調節を受ける細胞には、エストロゲンを認識する受容体タンパク質が存在し、そのシグナルを伝達していると考えられている。そのため、エストロゲン受容体の同定とその機能や制御メカニズムについて明らかにすることは、これらの疾患を治療・予防において、極めて重要である。
【0005】
エストロゲン受容体として、細胞内に存在するDNA結合型の核内受容体ER(Estrogen Receptor)が同定され、多くの研究がなされている。そして、ER結合性のタモキシフェンやラロキシフェンは、選択的エストロゲン受容体調節薬として、様々なエストロゲンに関連する疾患の治療薬として現在広く用いられている。
【0006】
その一方で、エストロゲンは血管の弛緩作用や細胞内Ca2+の流入など、転写が関与しない急性期の反応を引き起こすことも知られており、細胞膜上にもエストロゲン受容体が存在することが示唆されていた。その実体は長らく明らかではなかったが、オーファン受容体であったGPR30(G-protein coupled receptor 30)が、エストロゲンの細胞膜受容体として同定され(非特許文献2、3)、子宮筋腫や乳がんなどエストロゲン関連疾患との関連が注目されている。細胞膜上のエストロゲン受容体を標的とした治療薬は、従来の核内エストロゲン受容体ERをターゲットとした治療薬に対し、難治性を示すタイプの患者に有効であることが期待できる。さらに、細胞膜型エストロゲン受容体をターゲットとする薬剤は、必ずしも細胞内や核内に侵入する必要がないため、副作用の低い治療薬開発も期待できる。
【0007】
ヒトGPR30は、1128塩基、375アミノ酸からなる、推定分子量が約41kDaの7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体のひとつである。本発明者らはGPR30を特異的に認識する抗体を開発し、ラット脳組織の内在性GPR30及びHeLa細胞に過剰発現させたFLAG-GPR30が細胞膜上に局在すること、HeLa細胞に発現させたFLAG-GPR30がエストロゲン応答性を有し、エストロゲン依存的に細胞内カルシウム濃度の上昇を引き起こすことや、エストロゲン依存的に細胞内へ取り込まれることを明らかにしている(特許文献1、非特許文献4、5)。核内受容体ERには結合せず、GPR30に結合する特異的アゴニストG-1(1- (4- (6-Bromobenzo [1,3] dioxol-5-yl) -3a, 4, 5, 9b-tetrahydro-3H-cyclopenta [c] quinolin-8-yl) -ethanone)の発見(非特許文献6)や、GPR30ノックアウト動物を用いた解析(非特許文献7~10)により、GPR30の生物学的機能の解析が進み、免疫系や循環系、血糖調節における機能が明らかになりつつある。しかしながら、GPR30の生殖器における発現や機能、エストロゲン関連疾患との関連は明らかではない。
【0008】
非特許文献7~10のGPR30ノックアウトマウスにエストロゲン関連疾患の表現型が見られないことから、未知の変異によるGPR30の機能の異常がエストロゲン関連疾患の病態に関連している可能性が考えられる。その一方で、本発明者らが別途作製したGPR30ノックアウトマウスは早期の胎生致死であるという異なる結果も得られている。この理由については明らかではないが、いずれにしてもGPR30とエストロゲン関連疾患との関連を明らかにするためには、ノックアウトマウス以外を用いた解析、例えば未知の変異によるGPR30の機能の異常に着目した解析が重要だと考えられる。
【0009】
また、胃癌の組織及び細胞特異的に、GPR30の3’非翻訳領域における2塩基の欠失が検出され、胃癌との関連が示唆されている(非特許文献11)。この3’非翻訳領域における変異により、GPR30の3’非翻訳領域に存在するalternative splicing form、LERGU(Leucine Rich Protein in GPR30 3’UTR)にフレームシフトが起こり、変異LERGUが胃癌の進展に関与している可能性が推測されているが、GPR30の発現や機能への影響、エストロゲンシグナルとの関連は全く明らかではない。
【0010】
NCBIが提供するSNPデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SNP)を利用した検索では、GPR30のORFにおいて9個のSNPが存在することが確認できる。しかし、これらのSNPによるGPR30の機能への影響や、疾患との関連は全く明らかではなく、GPR30のORFにおけるSNPと疾患との関係の有無等を明らかにするためには、疾患患者の組織の解析及びその結果の健常者組織の解析結果との比較が必要であった。
【先行技術文献】
【0011】

【特許文献1】特開2008-143795
【0012】

【非特許文献1】The IternationalSNP Map Working Group, Nature, vol.409, 928-933 (2001)
【非特許文献2】Revankar. C. M. et al., Science, 307, 1625-1630 (2005)
【非特許文献3】水上洋一, 実験医学, vol.27, No.13, 2080 (2009)
【非特許文献4】Funakoshi T. et al., BBRC, 346, 904-910 (2006)
【非特許文献5】Kimura M. et al., J. Biol. Chem, vol.276, No.28, 26453-26460 (2001)
【非特許文献6】Bologa. C. G. et al. Nature Chemical Biology 2, 207-212 (2006)
【非特許文献7】Wang. C. et al. Mol. Endocrinol., 22, 636-648 (2008)
【非特許文献8】Wang. C. et al. J. Immunol., 182, 3294-3303 (2009)
【非特許文献9】Haas. E. et al. Circ. Res., 104, 288-291 (2009)
【非特許文献10】Martensson. U. E. et al. Endocrinology, 150, 678-698 (2009)
【非特許文献11】Kakinuma N et al. Cancer Sci., vol.96, No.3, 191-196 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、エストロゲン関連疾患組織に存在するGPR30の遺伝子多型を同定して、かかる遺伝子多型をもつGPR30の機能を明らかにすることにより、エストロゲン関連疾患の判定方法やエストロゲン関連疾患の治療薬のスクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、エストロゲン関連疾患患者のGPR30遺伝子のORFに存在するSNPを同定し、かかるSNPをもつGPR30が野生型GPR30のもつアポトーシス誘導機能を損なっていることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は〔1〕ヒトGPR30遺伝子のORFに存在する一塩基多型を検出することを含むことを特徴とする子宮筋腫の判定を補助する方法であって、一塩基多型が、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型である方法からなる。
【0017】
さらに、本発明は、〔〕ヒトGPR30遺伝子のORFに存在し、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型を含むGPR30を発現し、野生型GPR30を発現する細胞株に比べて細胞死の程度が低いことを特徴とする細胞株や、〔〕上記〔〕記載の細胞株に被検物質を接触させ、1)細胞の増殖の程度を分析し、細胞の増殖を抑制する物質を選択する工程;又は2)細胞死の程度を分析し、細胞死を促進する物質を選択する工程;を含む子宮筋腫の治療薬のスクリーニング方法や、〔〕ヒト又は非ヒト動物のGPR30遺伝子のORFに存在し、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型、又は非ヒト動物のGPR30ホモログ遺伝子に保存された、配列番号1に示される塩基配列の14番目の塩基に相当するシトシンがチミンである一塩基多型を含むGPR30を発現することを特徴とするトランスジェニック非ヒト動物や、〔〕上記〔〕記載の変異型GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物に被検物質を投与し、子宮筋腫の大きさを測定し、子宮筋腫を縮小させる物質を選択する工程を含む子宮筋腫の治療薬のスクリーニング方法からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、子宮筋腫等のエストロゲン関連疾患の検査のターゲットを追加し、さらに創薬のターゲット及びスクリーニングの手法を提供することができる。また、本発明の手法によって大量のサンプルを高速で検査することが可能になり、患者のGPR30における変異の有無を判定して予防や治療の方針を検討する、オーダーメイド治療が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】野生型GPR30過剰発現によりエストロゲン存在下HeLa細胞の増殖が抑制されるが、変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現では、エストロゲン存在下HeLa細胞の増殖抑制効果が野生型GPR30に比べて低いことを示す図である。
【図2】14C>Tの変異型GPR30を過剰発現させたHeLa細胞(T14)はエストロゲン存在下で野生型GPR30発現HeLa細胞よりも増殖するが、30G>A及び789G>A変異型GPR30を過剰発現させたHeLa細胞(A30及びA789)は、エストロゲン存在下で野生型GPR30過剰発現(G30)と同程度に細胞増殖を抑制されることを示す図である。
【図3】野生型GPR30によるHeLa細胞の増殖抑制効果が、エストロゲン濃度に依存しないことを示す図である。G30は野生型GPR30を示す。
【図4】変異型GPR30(14C>T)によるHeLa細胞の増殖抑制効果が野生型GPR30過剰発現よりも低いことが、エストロゲン濃度に依存しないことを示す図である。G30は野生型GPR30を、G30-T14は変異型GPR30(14C>T)を示す。
【図5】変異型GPR30(47C>T)によるHeLa細胞の増殖抑制効果が野生型GPR30過剰発現よりも低いことが、エストロゲン濃度に依存しないことを示す図である。G30は野生型GPR30を、G30-T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図6】野生型GPR30過剰発現によりエストロゲン存在下HeLa細胞のアポトーシスが誘導されるが、変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現では、エストロゲン存在下HeLa細胞のアポトーシス誘導が野生型GPR30に比べて低いことを示す図である。pGFPは空ベクター(コントロール)、GPR30-T14は変異型GPR30(14C>T)、GPR30-T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図7】野生型GPR30及び変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現による、HeLa細胞の増殖への影響を示す図である。G30は野生型GPR30、T14は変異型GPR30(14C>T)、T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図8】野生型GPR30及び変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現による、MCF-7細胞の増殖への影響を示す図である。G30は野生型GPR30、T14は変異型GPR30(14C>T)、T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図9】野生型GPR30及び変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現による、3T3細胞の増殖への影響を示す図である。G30は野生型GPR30、T14は変異型GPR30(14C>T)、T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図10】野生型GPR30及び変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現による、HEK293T細胞の増殖への影響を示す図である。G30は野生型GPR30、T14は変異型GPR30(14C>T)、T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図11】野生型GPR30及び変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現による、CHO細胞の増殖への影響を示す図である。G30は野生型GPR30、T14は変異型GPR30(14C>T)、T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図12】野生型GPR30及び変異型GPR30(14C>T、47C>T)過剰発現による、H9c2細胞の増殖への影響を示す図である。G30は野生型GPR30、T14は変異型GPR30(14C>T)、T47は変異型GPR30(47C>T)を示す。
【図13】野生型GPR30遺伝子型の子宮筋腫組織と変異型GPR30(14C>T)遺伝子型の子宮筋腫組織において、ERαのmRNA発現量は同程度であることを示す図である。
【図14】変異型GPR30(14C>T)遺伝子型の子宮筋腫組織におけるGPR30のmRNA発現量が、野生型GPR30遺伝子型の子宮筋腫組織と比較して多いことを示す図である。
【図15】サザンハイブリダイゼーションによりGLA-GFP遺伝子を検出し、作製したトランスジェニックマウスのジェノタイピングを行った一例を示す図である。N.Cはネガティブコントロールを表し、Mはサイズマーカー(1kb ladder;New England Biolab社製)を表す。
【図16】GPR30遺伝子のプロモーター領域配列の下流にGFP遺伝子を有するDNAを遺伝子導入したトランスジェニックマウスにおける、GFPのmRNAの発現量を、G3PDHをコントロールとして用い、定量した結果を示す図である。
【図17】GPR30遺伝子のプロモーター領域配列の下流にGFP遺伝子を有するDNAトランスジェニックマウスにおける、GPR30のmRNAの発現量を、G3PDHをコントロールとして用い、定量した結果を示す図である。
【図18】GPR30遺伝子プロモーター依存的にGFPタンパク質が発現するトランスジェニックマウスの血管において、GFPタンパク質が発現していることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者は、子宮筋腫及び乳がんのGPR30遺伝子ORFに存在するSNPを同定し、かかるSNPにより癌細胞におけるGPR30のアポトーシス誘導機能が低下し、子宮筋腫や乳がんの病態が再現されることを見いだした。かかる知見に基づいて、GPR30遺伝子ORF内のSNPを利用することにより、エストロゲン関連疾患の新たな診断、予防法、治療薬の開発が可能になる。以下、本発明の実施の形態についてさらに具体的に説明する。

【0021】
<GPR30遺伝子のORF>
本発明におけるヒトGPR30遺伝子としては、例えばGenbankのアクセッション番号AF027956、GI:2739106を例示することができ、GPR30遺伝子のORFとしては、配列番号1に示される塩基配列や、配列番号2に示されるアミノ酸配列を例示することができる。

【0022】
<エストロゲン関連疾患>
本明細書における「エストロゲン関連疾患」としては、エストロゲンとの関連が知られている疾患であれば特に限定はされないが、例えば女性特有の組織、子宮や卵巣、乳房における筋腫やがん等を挙げることができ、好ましくは子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜増殖症、子宮内膜がん、子宮体がん、胞状奇胎、絨毛がん、卵巣腫瘍、卵巣嚢腫、卵巣がん、線維腺腫、乳腺症、乳がんを挙げることができ、さらに好ましくは子宮筋腫や乳がんを挙げることができる。

【0023】
<エストロゲン関連疾患の判定方法>
本発明におけるエストロゲン関連疾患の判定方法は、GPR30遺伝子のORFにおける少なくとも1種のSNPを検出することにより、エストロゲン関連疾患の発症の可能性、エストロゲン関連疾患の発症の有無、あるいは発症しているエストロゲン関連疾患のタイプを判定する方法である。

【0024】
GPR30遺伝子のORFに存在するSNPの好ましい具体例としては、
(1)GPR30遺伝子DNA領域であって、配列番号1に記載の塩基配列の14番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型;
(2)GPR30遺伝子DNA領域であって、配列番号1に記載の塩基配列の47番目の塩基がシトシンではなくチミンである一塩基多型;
を挙げることができ、本明細書においてはそれぞれ(1)14C>T、(2)47C>Tと表記する場合がある。

【0025】
また上記(1)及び(2)の塩基配列における変異は、
(1)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるGPR30における、5番目のセリンがフェニリアラニンである変異;
(2)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるGPR30における、18番目のプロリンがロイシンである変異;
に相当し、本明細書においてはそれぞれ(1)S5F、(2)P16Lと表記する場合がある。

【0026】
例えば、GPR30遺伝子ORFの塩基配列の14番目あるいは47番目の塩基がチミンである場合には、野生型GPR30によるアポトーシス誘導が減少しており、エストロゲン関連疾患が発症している、あるいは発症の可能性が高いと判定することができる。また発症している場合には、その疾患のタイプが従来の核内受容体ERをターゲットとした薬剤に対し難治性のタイプである可能性が示唆される。反対に、GPR30遺伝子ORFの塩基配列の14番目あるいは47番目の塩基がシトシンである場合には、エストロゲン関連疾患の発症の可能性が低いと判定することができる。また発症している場合には、従来の核内受容体ERをターゲットとした薬剤による治療効果が期待できる。

【0027】
本明細書において、疾患の「判定」とは、疾患発症の有無の判断、疾患発症の可能性の判断(罹患危険性の予想)、疾患の遺伝的要因の解明、疾患が発症した場合の治療薬による効果の予測などをいい、判定のためのデータを収集する行為は含まれるが、医師による診断行為は除外される。また、疾患の「判定」は、上記のSNPの検出法による結果と、所望により他の多型分析(VNTRやRFLP)又は他の検査結果と合わせて行うこともできる。

【0028】
<検出対象>
SNP検出の対象としてはゲノムDNAが好ましいが、cDNAやmRNAを使用することもできる。また、上記対象を採取する試料としては、一般的に核酸採取に用いられる任意の生物学的試料であればよく、例えば血液、骨髄液、精液、腹腔液、尿等の体液や、組織細胞、体毛等を挙げることができる。ゲノムDNA等は、これらの試料より常法に従い抽出、精製し、調製することができる。また、遺伝子多型を検出するためのテンプレートは、採取したゲノムDNA等でも、PCR法や他の公知の増幅方法、例えばNASBA法、LCR法、SDA法、LAMP法等で増幅された増幅産物でもよい。

【0029】
<検出方法>
SNPの検出は、高分解能融解曲線解析(HRM法)によると、大量のサンプルを高速で解析できる点で好ましい。HRM法は、温度上昇に伴う二本鎖DNAから一本鎖DNAへの解離(融解)が、その長さ、GC含量、あるいは相補性などにより変化がするという特性に基づき、二本鎖PCR産物の融解曲線を分析することにより、その特性を調べる手法である。HRM法による遺伝子解析は、PCR反応により標的配列が増幅されること、増幅産物が色素等により検出可能な形態であること、色素を検出しつつ温度を上昇させることで二本鎖DNAから一本鎖DNAへの解離を測定、融解曲線データを取得し、ソフトウェアによりその形を認識、分析するシステムであれば特に制限されず、例えば、DNA色素存在下で、かかる色素を検出するに適した励起、蛍光波長を放射もしくは検出することができる適切な検出機器を備えたサーマルサイクラーでPCRによる増幅反応、温度上昇を順次行い、DNA色素を検出して融解曲線を解析する例を挙げることができる。さらに具体的には、例えば、蛍光色素SYTO9(Invitrogen社製)とTaq polymerase Expand High Fidelity PLUS(Roche社製)を含むPCR反応液を調製し、Rotor-Gene(登録商標)Q(QIAGEN社製)を用いてPCR反応及び融解曲線を取得し解析する方法を挙げることができる。また、LightCycler 480 High Resolution Meltingマスターミックス(Roche社製)によりPCR反応液を調製し、LightCycler(登録商標)480(Roche社製)によりPCR反応及び融解曲線を取得する方法も挙げることができる。

【0030】
GPR30のORFに存在する少なくとも1種のSNPを含むDNA領域を増幅する場合に使用するオリゴヌクレオチドプライマーの選択は、例えば、SNP部位を含む連続する少なくとも10塩基以上、好ましくは100~1000塩基、より好ましくは200~600塩基の配列、又はその相補配列を増幅しうるものであれば特に制限されず、また、その長さが10~50塩基、より好ましくは10~35塩基、更に好ましくは18~25塩基、特に好ましくは18~22塩基であるオリゴヌクレオチドを挙げることができる。例えば、配列番号1の塩基配列において、25~186塩基の増幅に(5’-cttgaaagctgcacggtgca-3’:配列番号3)と(5’-cgagaggaacaggccgatca-3’:配列番号4)、130~377塩基の増幅に(5’-aatgggacaggtgagctct-3’:配列番号5)と(5’-atgtcgtagtaccgctcgt-3’:配列番号6)、130~634塩基の増幅に(5’-aatgggacag gtgagctct-3’:配列番号7)と(5’-ggacatccgc gaaacaga-3’:配列番号8)、279~518塩基の増幅に(5’-ccccgacctgtacttcatcaac-3’:配列番号9)と(5’-tggtgcttggtgcggaac-3’:配列番号10)、388~634塩基の増幅に(5’-tgcaccttcatgtcgctctt-3’:配列番号11)と(5’-ggacatccgcgaaacaga-3’:配列番号12)、591~929塩基の増幅に(5’-cctgcagcacaccgacga-3’:配列番号13)と(5’-ttgacaatgtggcccgtga-3’:配列番号14)、591~821塩基の増幅に(5’-cctgcagcacaccgacga-3’:配列番号15)と(5’-ggcagccagcagacgaag-3’:配列番号16)、695~929塩基の増幅に(5’-gtgctactccctcattgtccg-3’:配列番号17)と(5’-ttgacaatgtggcccgtga-3’:配列番号18)、874~1095塩基の増幅に(5’-gctccctgcaagcagtct-3’:配列番号19)と(5’-ctcggtgctgtctggaatg-3’:配列番号20)、874~1230塩基の増幅に(5’-gctccctgcaagcagtct-3’:配列番号21)と(5’-ctgaccgcagtttagagaca-3’:配列番号22)、1000~1230塩基の増幅に(5’-aagctgaggctgtacattga-3’:配列番号23)と(5’-ctgaccgcagtttagagaca-3’:配列番号24)を使用することができる。またプライマーは、前記のSNP部位を含む所定塩基数の配列を増幅するためのプライマーとして機能し得る限り、その配列において1又はそれ以上の置換、欠失、付加を含んでいてもよい。

【0031】
SNPの検出は、他の公知の遺伝子多型検出方法、例えばマイクロアレイ(DNAチップ)によるSNP検出法、制限酵素断片長多型分析法(RFLP;Restriction fragment length polymorphism)、ジデオキシ法やMaxam-Gilbert法等の公知の方法により直接配列決定するダイレクトシークエンシング法、変性勾配ゲル電気泳動法(DGGE;denaturing gradient gel electrophoresis)、一本鎖コンフォメーション多型解析(SSCP;single strand conformation polymorphism)、対立遺伝子特異的PCR(allele- specific PCR)、ASO(allele-specific oligonucleotide)によるハイブリダイーゼーション法、ミスマッチ部位の化学的切断(CCM;chemical cleavage of mismatches)、HET(heteroduplex method)法、PEX(primer extension)法、RCA(rolling circle amplification)法、Light CyclerによるMelting Point法、TaqMan法、Invader法、シングルヌクレオチドプライマー法、SNaPshot法、MassArray法、Pyrosequncing法、SNP-IT法、BeadArray法、Scorpion法、MALDI-TOF/MSによる質量分析等を用いることができる。

【0032】
<エストロゲン関連疾患診断用キット>
上述のプライマーは、これを含むエストロゲン関連疾患診断用キットとして有利に使用することができる。また、GPR30遺伝子DNA及びGPR30遺伝子のORF内にSNPをもつDNAや、これらDNAを含むプラスミドは、かかる診断キットにおいてコントロールとして利用することができる。本発明の診断キットは、ほかに遺伝子多型の分析法に使用される制限酵素、ポリメラーゼ、ヌクレオシド三リン酸、核酸標識分子、緩衝液等を含んでいてもよい。

【0033】
<変異型GPR30発現細胞>
本発明の細胞株としては、ヒトGPR30遺伝子のORFに存在する少なくとも1種のSNPを含むGPR30を発現し、野生型GPR30を発現する細胞株に比べて細胞死の程度が低い細胞株であれば特に制限されず、上記SNPとしては前記14C>Tや47C>Tを具体的に例示することができる。これらSNPを含むヒトGPR30遺伝子のORF領域を含むDNAを動物細胞用発現ベクターに挿入して変異型GPR30組換えベクターを作製し、かかる組換えベクターを宿主細胞株に導入することにより、変異型GPR30を発現する、好ましくは、SNPを含むヒトGPR30遺伝子がゲノムDNAに組み込まれて変異型GPR30を安定的に発現する、本発明の細胞株を調製することができる。宿主細胞の種類は特に制限されず、例えば哺乳動物細胞株、好ましくはヒト由来細胞株、さらに好ましくはヒト子宮頸がん由来細胞HeLaを挙げることができる。なお、野生型GPR30を発現する細胞株はコントロールとして用いることができる。

【0034】
GPR30発現細胞を作製するための動物細胞用の発現ベクターとしては、発現を起こさせるだけでなく、抗生物質耐性遺伝子等のマーカー遺伝子や、プロモーター等の発現を調節する制御配列を含んでいるものが好ましい。動物細胞用のプロモーターとしては、例えば、サイトメガロウイルスのIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。かかる動物細胞用の発現ベクターとして、pcDNA3(Stratagene社製)、p3xFLAG-CMV10(Sigma-Aldrich社製)、pEGFP-C3(Clontech社製)等を具体的に例示することができる。変異型GPR30や野生型GPR30を安定的に発現する安定発現株は、薬剤耐性遺伝子を含む発現ベクターを利用して変異型又は野生型GPR30発現配列を細胞内に導入し、選択薬剤を用いて、変異型又は野生型GPR30発現配列がゲノムDNAに組み込まれ、変異型又は野生型GPR30タンパク質を発現する細胞を選択することにより取得することができる。例えば、変異型又は野生型のGPR30配列を挿入した、ネオマイシン耐性遺伝子を含む発現ベクターをトランスフェクションした細胞を、0.1~2.0mg/mlのG418硫酸塩を含む細胞培養液中で1週間~1ヶ月かけて培養し、安定発現株を選択する方法により取得することができる。

【0035】
また、細胞に遺伝子を導入する方法としては、細胞の種類に応じて適切な方法を用いることができる。具体的には、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、感染が挙げられ、FuGENE(登録商標)6 Transfection Reagent(Roche社製)やLipofectamine 2000(Invitrogen社製)等を用いる方法を例示することができる。

【0036】
<変異型GPR30発現細胞を用いたエストロゲン関連疾患の治療薬のスクリーニング方法>
本発明のエストロゲン関連疾患の治療薬のスクリーニング方法は、上記の変異型GPR30発現細胞株に被検物質を接触させ、1)細胞の増殖の程度を分析し、細胞の増殖を抑制する物質を選択する工程;又は2)細胞死の程度を分析し、細胞死を促進する物質を選択する工程を備えている。スクリーニング方法として、具体的には、被検物質存在下、もしくは被検物質及びGPR30リガンド/アゴニスト存在下で変異型GPR30発現細胞株の細胞増殖又は細胞死を測定して細胞増殖が減少/細胞死が増加する物質、好ましくは野生型GPR30発現細胞株と同程度に、細胞増殖が減少/細胞死が増加する物質を選択する方法を例示することができる。上記GPR30のリガンドの例としてはエストロゲン、GPR30のアゴニストの例としてはG-1が挙げられる。被検物質としては、任意の物質を使用することができ、例えば、個々の低分子合成化合物でもよいし、天然物抽出物中に存在する化合物でもよく、あるいは化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリー、コンビナトリアルライブラリーでもよい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。

【0037】
<細胞増殖の測定方法>
細胞増殖の測定方法としては、観測開始時点及び1点以上の任意の時間経過後に細胞数や細胞構成因子の量を測定する方法により細胞増殖を解析する方法を挙げることができる。例えば、顕微鏡下で直接に培養ディッシュ上の細胞を数える方法や、一度培養ディッシュから剥がしてから血球計算盤やフローサイトメトリーなどを用いて細胞数を測定する方法が挙げられる。測定に用いる細胞は、蛍光タンパク質の過剰発現や蛍光標識された抗体や分子により蛍光標識されていてもよく、また、以下に挙げる各種染色方法などにより染色したものを用いることができる。例えば、細胞質、核などの細胞構成因子や、細胞に発現させたタンパク質を、トリパンブルーやクリスタルバイオレット、DAPI、Hoechst、ヨウ化プロピジウム(PI)、BrdUや[H]チミジン取り込み法、免疫蛍光染色や各種染色試薬により染色する例が挙げられる。また、例えば細胞をBrdU存在下で培養してDNAにBrdUを取り込ませ、蛍光標識した抗BrdU抗体などによりアッセイ中に取り込まれた核酸量を測定する方法や、還元発色試薬により生細胞中の脱水素酵素活性を測定するMTT法やWST法により、間接的に細胞数を計測する方法も挙げられる。

【0038】
生細胞の増殖を経時的にモニターする方法としては、顕微鏡によるタイムラプス観察の他、Roche社製のxCELLigenceも利用することもできる。xCELLigenceは、底面にくし型の電極を集積した組織培養E-プレート上で細胞を培養し、電気的インピーダンスを測定することにより、細胞に標識物を取り込ませること無く、リアルタイムで細胞イベントをモニターするものである。インピーダンスの測定からは、細胞の生物的な状態に関する定量的な情報を取得することができ、生存活性、形態、細胞数などを定量することができる。

【0039】
<細胞死の測定方法>
細胞死の測定方法としては、細胞死を起こしつつある細胞を検出できる方法、好ましくはアポトーシスの特徴を検出する方法であれば特に限定されず、例えば、細胞を固定してSYTOX(登録商標)Green(Invitrogen社製)で染色し、顕微鏡観察によりアポトーシスの特徴である核の断片化を起こしている細胞数を測定したり、蛍光標識アネキシンVによりアポトーシスを起こしつつある細胞の表面に露出するフォスファチジルセリンを検出し、染色された細胞をフローサイトメトリーで測定する方法を挙げることができる。

【0040】
<変異型GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物>
本発明のトランスジェニック非ヒト動物としては、ヒト又は非ヒト動物のGPR30遺伝子のORFに存在する少なくとも1種のSNP、好ましくは14C>Tや47C>Tを含むGPR30を発現する非ヒト動物であれば特に制限されず、全身又は部分的に、一時的又は継続的に変異型のGPR30タンパク質を発現していてもよい。例えば、変異型GPR30発現配列を組み込んだウィルスベクターを非ヒト動物の子宮組織に注射する方法や、初期発生胚に接触させて感染させる方法や、前核期受精卵やES細胞にかかるベクターをマイクロインジェクションにより導入する方法で作製されたトランスジェニック非ヒト動物を挙げることができ、好ましくは、トランスジェニック非ヒト動物におけるGPR30の発現が、テトラサイクリンによる誘導やCre/LoxPシステムにより、時期、あるいは組織特異的に制御される例を挙げることができる。また、非ヒト動物の種類としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、モルモット、ハムスター、ラット、マウス等を挙げることができるが、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス又はラットが好ましく、なかでもモルモット、ハムスター、マウス、ラット等の齧歯目がより好ましく、とりわけマウスが好ましい。

【0041】
変異型GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物の一例として、変異型GPR30発現トランスジェニックマウスを挙げることができる。トランスジェニックマウスは、プロモーター下流に変異型GPR30配列含むターゲティングベクターを作製し、かかるベクターを制限酵素で切断しリニアなDNAとした後に受精卵にマイクロインジェクションし、仮親のマウスにて発生させる方法で得ることができる。また、ターゲティングベクターは、GFP(Green Fluorescent Protein)などのマーカーを適宜含むことができ、かかるマーカーを検出することにより、遺伝子導入を確認することができる。

【0042】
<変異型GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物を用いたエストロゲン関連疾患の治療薬のスクリーニング方法>
本発明におけるGPR30発現トランスジェニック非ヒト動物を用いたエストロゲン関連疾患の治療薬のスクリーニング方法は、上述の変異GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物、好ましくは変異GPR30発現マウスに被検物質を投与し、子宮筋腫の大きさを測定し、子宮筋腫を縮小させる物質を選択する工程を備えている。スクリーニング方法として、具体的には、GPR30発現トランスジェニック非ヒト動物に、塗布、注射、経口投与等の手段により候補物質、あるいは候補物質及びGPR30リガンド/アゴニストを投与し、子宮筋腫のサイズを評価し、候補物質の非存在下の条件と比較して子宮筋腫のサイズが縮小する物質、好ましくは同種の野生型動物と同程度に、子宮筋腫が縮小する物質をエストロゲン関連疾患の治療薬として選択する方法を例示することができる。上記GPR30のリガンドの例としてはエストロゲン、GPR30のアゴニストの例としてはG-1が挙げられる。被検物質としては、任意の物質を使用することができ、例えば、個々の低分子合成化合物でもよいし、天然物抽出物中に存在する化合物でもよく、あるいは化合物ライブラリー、ファージディスプレーライブラリー、コンビナトリアルライブラリーでもよい。化合物ライブラリーの構築は当業者に公知であり、また市販の化合物ライブラリーを使用することもできる。子宮筋腫のサイズを評価する方法としては、子宮を解剖して組織染色や免疫染色により筋腫又は正常組織を染色し、子宮筋腫のサイズを測定する方法を挙げることができる。また、GPR30発現配列及びIRES(Internal ribosome entry site)-GFP配列を含むウィルスベクターを非ヒト動物の子宮組織に注射して子宮筋腫を引き起こし、候補物質の投与前及び投与後に、in vivo蛍光イメージング装置を用いてトランスジェニック非ヒト動物生体内のGFP蛍光を測定することにより子宮筋腫を可視化し、子宮筋腫のサイズを測定する方法も好適に例示することができる。

【0043】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
<HMR法による一塩基多型検出の条件の確立>
臨床サンプルにおけるGPR30の未知変異を検出するために、高速に大量サンプルの測定が可能なHRM法によるSNPの条件を確立した。GPR30の1128塩基のORFを、表1で示される211~505塩基の各領域に分け、これらの領域を増幅するためのプライマー(配列番号3~24)を作製した。表2で示される9個の既知のSNPを導入した変異型GPR30DNA配列をもつプラスミドを作製し、これらをポジティブコントロールのテンプレートとして用いて、塩濃度、4種類のTaq polymerase及び4種類の蛍光色素の組み合わせについて至適条件を検討した。表1に示すように、Mg2+ 1.5~2.5mM存在下でTaq polymerase Expand High Fidelity PLUS(Roche社製)及び蛍光色素SYTO9(Invitrogen社製)を用いた組み合わせの条件が最も高感度であった。
【実施例1】
【0045】
ヒト子宮検体の正常部位から抽出したゲノムDNAをテンプレートとして用い、SNP検出のためのPCRにおいて増幅する領域を含むGPR30の領域を増幅し、pBluescriptまたはpFLAGにクローニングした。これらをテンプレートとして用い、確立したPCR条件にてSNP解析を行った結果、表2に示すように9個の既知のSNPを検出することができた。すなわち、本手法により大量のサンプルを高速でスクリーングすることが可能になった。
【実施例1】
【0046】
【表1】
JP0005804341B2_000002t.gif

【実施例1】
【0047】
【表2】
JP0005804341B2_000003t.gif
【実施例1】
【0048】
<臨床サンプルのGPR30の一塩基多型の検出>
正常検体100例及びヒト子宮筋腫71例、乳がん25例の検体から、ゲノムDNAを抽出し、HRM法によりGPR30のORFに存在する変異を検出した。さらにHRM法の結果を評価するため、DNAシークエンサーを用いて全サンプルにおけるGPR30のORFの配列を調べ、SNPを確認した。その結果、子宮筋腫サンプルでは表3に示す7個のSNPが同定され、そのうち14番目のシトシンがチミンに変異した14C>T(S5F)を子宮筋腫に特異的なGPR30における新規SNPとして見いだした。さらにこのSNPの遺伝子型に、子宮筋腫サンプルとコントロールサンプルとの間で統計学的に有意な差があることを見出した。この変異は乳がんサンプルでは検出されず、筋腫の約12%で検出された。
【実施例1】
【0049】
【表3】
JP0005804341B2_000004t.gif
【実施例1】
【0050】
また乳がんのサンプルを用いた解析では、表4に示すように別のアミノ酸変異C47T(47C>T、P16L)が乳がんサンプルの8%で検出され、本変異は子宮筋腫サンプルでは検出されなかった。
【実施例1】
【0051】
【表4】
JP0005804341B2_000005t.gif
【実施例1】
【0052】
<GPR30の培養細胞への過剰発現>
(GPR30発現ベクター)
ヒトの正常腎臓から作製したcDNAクローンを鋳型にして、開始コドンと停止コドンをそれぞれ含むプライマーのセットでGPR30遺伝子のDNA配列を増幅し、制限酵素EcoRV処理にて平滑末端にしたpBluscript SK(-)にクローニングした。その後、このクローニングされたベクターを鋳型にして、N末端側にBamHIサイトとHindIIIサイトをそれぞれ含むプライマーでGPR30DNA配列を増幅し、pFLAG(Sigma社製)にサブクローニングした。それぞれがN末端側にNotIサイトを含むプライマーを用いて、両端にNotIサイトをもつFLAG-GPR30DNA配列を増幅し、pIRES-GFP(Clontech社製)のマルチクローニングサイトにサブクローニングして、FLAG-GPR30とGFPが同時に発現するベクターを構築し、GFPの発現を確認してから実験を行った。本ベクターはGPR30配列下流にIRES及びGFP配列をもつため、pIRES-GFPのCMVプロモーターによって転写されたGPR30配列及びGFP配列をコードするmRNAから、FLAG-GPR30タンパク質とGFPタンパク質がそれぞれ発現する。GFP蛍光を検出することで、トランスフェクションされたFLAG-GPR30発現細胞を選別したり、細胞のGFP蛍光を蛍光顕微鏡下で観察することにより、トランスフェクション効率を確認することができる。
【実施例1】
【0053】
SNPを有する変異型GPR30DNA配列は、テンプレートとしてメチル化酵素を持つ大腸菌で増やしたpUC-GPR30と、変異の入ったフォワード及びリバースプライマーとを用いてPCR反応を行い、反応後に反応液を制限酵素DpnIで処理をしてから大腸菌にトランスフォームしてクローンを回収することにより作製した。このようにして変異を導入した領域のDNA配列をpCMV-FLAG-GPR30-IRES-GFPの同領域と置換して、FLAG-GPR30(30A>G)、FLAG-GPR30(789G>A)、FLAG-GPR30(14C>T)及びFLAG-GPR30(47C>T)発現ベクターを作製した。
【実施例1】
【0054】
実験で使用したHeLa、MCF-7、3T3、CHO、H9c2細胞は、FBS 10%、ペニシリン 100μg/ml、ストレプトマイシン 100IU/ml及びフェノールレッド 15μg/mlを含むDMEM培地を用いて5%CO、37℃で培養した。FBSにはエストロゲンが含まれるため、エストロゲンやG-1を添加する場合はエストロゲンを除去する必要があるが、FBSを含まない培地では細胞が育たない。そのため、エストロゲンやG-1を添加する場合は、トランスフェクションする前まで細胞を上述のFBSを含む培地で培養し、トランスフェクション前にチャコール処理してエストロゲンを除去したFBS 10%、ペニシリン 100μg/ml及びストレプトマイシン 100IU/mlを加えた、フェノールレッドを含まないDMEMに培地を置換することで、再現性よいデータを得ることができるようになった。トランスフェクションは、エレクトロポレーションにより、マイクロポレーターMP-100(Digital Bio社製)を用いて行った。
【実施例1】
【0055】
<HeLa細胞の細胞増殖におけるGPR30の機能>
野生型及び2種の変異型GPR30(14C>T、47C>T)とエストロゲン関連疾患の病態との関連性を調べるため、組織培養E-プレート上のヒト子宮頸がん由来細胞HeLa細胞に野生型又は変異型GPR30発現ベクターをトランスフェクションし、エストロゲン100nM存在下の細胞の増殖を、xCELLigence(Roche社製)を用いて測定した(図1)。グラフ縦軸はCell impedance(細胞増殖の指標)を、横軸は経過時間を表す。以下図2~5、図7~12も同様である。本実験で用いたヒト子宮頸がん由来HeLa細胞は癌細胞由来であるため、対照(control)では細胞が増加するが、野生型GPR30の過剰発現では、細胞の増殖が見られなかった。しかし14C>T又は47C>Tの変異型GPR30の過剰発現では、野生型GPR30による細胞増殖抑制効果の減少が見られた。
【実施例1】
【0056】
また、子宮筋腫サンプルで検出された30G>A及び789G>Aの変異型GPR30についても、同様にHeLa細胞に過剰発現させ、細胞の増殖を調べた(図2)。14C>Tの変異型GPR30が野生型GPR30よりも低い細胞増殖抑制効果を示したのに対し、30G>A及び789G>Aの変異型GPR30は、野生型GPR30と同程度の細胞増殖の抑制効果を示した。すなわち、エストロゲン関連疾患サンプルから検出されたSNPのなかでも、14C>T及び47C>T変異はGPR30の細胞増殖抑制効果を減少させるが、30G>A及び789G>A変異はGPR30の細胞増殖抑制効果に影響を与えず、GPR30遺伝子のORFにおけるSNPによる細胞増殖抑制効果の減少は、14C>T及び47C>T変異に特異的なものであることがわかった。
【実施例1】
【0057】
HeLa細胞に空ベクター又は野生型GPR30発現ベクターを導入し、0μM、0.1μM又は1μMのエストロゲン処理を行った後、図1と同様の手法により細胞の増殖を調べた(図3)。同様に、HeLa細胞に野生型GPR30又は14C>T変異型GPR30発現ベクターを導入し、0μM、0.1μM又は1μMのエストロゲン処理を行い細胞の増殖を調べた結果を図4に示す。また、HeLa細胞に野生型GPR30又は47C>T変異型GPR30発現ベクターを導入し、0μM、0.1μM又は1μMのエストロゲン処理を行い細胞の増殖を調べた結果を図5に示す。空ベクター、野生型GPR30、14C>T変異型GPR30又は47C>T変異型GPR30をトランスフェクションしたHeLa細胞は、いずれの場合もエストロゲン濃度依存的に細胞増殖が亢進することが確認された。
【実施例1】
【0058】
次に、野生型GPR30及び、14C>T及び47C>T変異型GPR30過剰発現による細胞増殖抑制が、アポトーシス誘導によるものか検証した。空ベクター、野生型、又は変異型GPR30発現ベクターをHeLa細胞に導入し、100nM エストロゲンで24時間処理した細胞を、ヨウ化プロピジウム(PI)とCy5(GE Healthcare社製)標識アネキシンVで染色してフローサイトメトリー(BD FACSCalibur;Becton Dickinson 社製)で解析した。生細胞は細胞膜に損傷受けていないのでPI色素は細胞内に透過しないが、細胞膜に損傷を受けている細胞は、PIが細胞内へ透過するため染色される。まず、GFP発現でゲートをかけてベクターが導入された細胞のみを選択し、さらにその後PI染色でゲートをかけて死細胞を除去した後、Cy5標識アネキシンVの染色を検出することによりアポトーシス細胞をカウントした(図6)。
【実施例1】
【0059】
その結果、アポトーシスを起こした細胞(右半分;M1領域)がコントロールの細胞では40.2%であるのに対し、野生型GPR30過剰発現では70.2%と増加していることがわかった。さらに、14C>Tや47C>Tの変異型GPR30過剰発現では、アポトーシスを起こしている細胞の割合(それぞれ60.1%、60.2%)がコントロールより多く野生型GPR30より少なかった。この結果は図1の実験結果とよく対応しており、野生型GPR30過剰発現では癌細胞にアポトーシスが誘導されて細胞が死ぬことにより細胞増殖が低下するが、14C>Tや47C>Tの変異型GPR30では、このアポトーシス誘導機能が低下したために野生型GPR30過剰発現ほどの細胞増殖低下が起こらないと考えられる。
【実施例1】
【0060】
<HeLa細胞以外の細胞増殖における、変異型GPR30の機能>
子宮頸がん細胞(HeLa細胞)以外の細胞におけるGPR30及び変異型GPR30過剰発現による細胞増殖への影響を調べるために、以下6種類の細胞に野生型GPR30、14C>T又は47C>T変異型GPR30をトランスフェクションし、図1と同様の手法にて細胞の増殖を調べた。
1)ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞(図7)
2)ヒト乳ガン由来MCF-7細胞(図8)
3)マウス上皮由来3T3細胞(図9)
4)ヒト腎臓由来HEK293T細胞(図10)
5)チャイニーズハムスター卵巣由来CHO細胞(図11)
6)ラット心臓由来H9c2細胞(図12)
【実施例1】
【0061】
1)HeLa細胞では、図1及び図3~5の結果と同様に、野生型GPR30過剰発現により細胞増殖が強く抑制され、変異体GPR30過剰発現ではその細胞増殖抑制効果が減少したのに対し、2)~6)の各細胞では、HeLa細胞で得られた結果は再現されなかった。2)~6)の細胞はHeLa細胞と異なり、過剰発現させたFLAG-GPR30が適切な細胞内輸送を経て細胞膜上に局在しない、またエストロゲンシグナルを伝達できない可能性が考えられる。
【実施例1】
【0062】
HeLa細胞におけるFLAG-GPR30(14C>T)又はFLAG-GPR30(47C>T)の過剰発現ではFLAG-GPR30(野生型)過剰発現で見られる細胞増殖の抑制機能が損なわれており、子宮筋腫や乳がんといったエストロゲン依存性疾患における細胞の過剰な増殖という病態を再現している。すなわち、本実験系はエストロゲン依存性疾患の再現系であり、この系を用いてエストロゲン依存性疾患の治療薬のスクリーニングを行うことができる。
【実施例2】
【0063】
<ヒト子宮筋腫におけるGPR30発現量>
GPR30遺伝子のORFに変異を含まない子宮筋腫の臨床サンプル及びGPR30遺伝子に14C>T変異を含む子宮筋腫の臨床サンプルの組織、各約5mgよりMagNA Pure LC mRNA Isolation kit2 (Roche社製;cat no.03172627001)を用いてmRNAを抽出し、表5に示す反応液を調製した。ランダムプライマーはTOYOBO社製(cat no.FSK-301)を使用した。この反応液をGeneAmp PCR system 2700(Applied bio systems社製)を用いて65℃で5分間ヒートショックし、その後氷上に1分間置いて冷却した。
【実施例2】
【0064】
【表5】
JP0005804341B2_000006t.gif
【実施例2】
【0065】
このヒートショック後のmRNAをテンプレートとして用い、表6に示す反応液を調製し、GeneAmp PCR system 2700(Applied bio systems社製)を用いて25℃で5分間、37℃で60分間、65℃で20分間順次反応させて逆転写反応を行い、cDNAを得た。逆転写酵素(Reverse Transcriptase)はM-MuLV Reverse Transcriptase(NEB社製 cat no.M0253L)を使用した。
【実施例2】
【0066】
【表6】
JP0005804341B2_000007t.gif
【実施例2】
【0067】
得られたcDNAをテンプレートとして用い、表7に示す反応液を調製し、表8及び表9に示す条件のReal-time PCRにてGPR30、ERα、G3PDH(グリセルアルデヒド3リン酸脱水素酵素)のmRNA量を定量した。GPR30の増幅に使用したプライマーは配列番号25及び26、ERαの増幅に使用したプライマーは配列番号27及び28、G3PDHの増幅に使用したプライマーは配列番号29及び30に示される配列である。G3PDHの発現量をコントロールとして用いたΔΔCt法により、各サンプルにおけるERα及びGPR30の相対発現量を算出した結果を図13及び図14に示す。
【実施例2】
【0068】
【表7】
JP0005804341B2_000008t.gif
【実施例2】
【0069】
【表8】
JP0005804341B2_000009t.gif
【実施例2】
【0070】
【表9】
JP0005804341B2_000010t.gif
【実施例2】
【0071】
GPR30における変異の有無にかかわらず、ERαのmRNA発現量は同程度であったが(図13)、GPR30のmRNA発現量は14C>T変異を含む子宮筋腫サンプルのほうが多かった(図14)。GPR30に14C>T変異を含む子宮筋腫では、GPR30が14C>T変異により細胞死誘導機能が低下しているため、GPR30に変異を含まない子宮筋腫に比べGPR30の発現が高く、それにもかかわらず、筋腫が発生している可能性が考えられる。
【実施例3】
【0072】
<GPR30遺伝子プロモーター依存的にGFPタンパク質が発現するトランスジェニックマウス>
GPR30遺伝子のプロモーター領域配列の下流にGFP遺伝子を有するDNAを遺伝子導入し、GPR30遺伝子プロモーター依存的にGFPタンパク質が発現するトランスジェニックマウスを作製した。ゲノムライブラリーのGPR30遺伝子の染色体領域が挿入されているBacpacクローンから、制限酵素SalIおよびEcoRVで切り出した7.1kbのGPR30遺伝子を含む配列を、pBluescriptにクローニングした。次に、N末端側にSpeIサイト、EcoRVサイトをそれぞれ含むプライマーのセットで、GPR30遺伝子のプロモーター領域5.8kb(転写開始点までの領域であり、本明細書において、GLA(GPR30 Long Arm)と表すこともある。)とpBluscriptが連結したDNA配列をPCR反応で増幅した。N末端側にSpeIサイト、EcoRVサイトをそれぞれ含むプライマーのセットで、pEGFP-N1からEGFP(Enhanced Green Fluorescent Protein)-SV40 polyA配列を増幅し、増幅されたSpeI-EGFP-SV40 polyA-EcoRVを、上述のGPR30のプロモーター領域とpBluscriptが連結したDNA配列にin fusionクローニングで組み込み、ターゲティングベクターpBluescript-GLA-EGFP-SV40 polyAを作製した。ターゲティングベクターを制限酵素SalIおよびEcoRVで切り出し、全長約6.8KbのリニアなDNAを精製し、このDNAをC57/BL6マウスの受精卵にマイクロインジェクションした。遺伝子を導入した受精卵をマウスの仮親に戻し、生まれたマウスのジェノタイピングを、ゲノムDNAにおけるGLA-GFP遺伝子をEGFPプローブを用いたサザンハイブリダイゼーション法で検出することにより行い、GLA-GFPを有するトランスジェニックマウスを選別した。図15に、No.3及びNo.11マウスを掛け合わせて生まれたマウスのジェノタイピングの結果を一例として示した。
【実施例3】
【0073】
遺伝子が導入されたマウスを交配し、1590、1591、1592の3系統の、染色体に遺伝子が挿入されているトランスジェニックマウスを得た。これらのマウスは、表10に示す所見を示した。これら3系統のマウスそれぞれより、表10に示す部位の組織を採取しGPR30遺伝子及びGFP遺伝子の発現を調べ(図16、図17)、GPR30遺伝子及びGFP遺伝子の発現量に相関があるマウスを選別した。これら3系統のうち、1592系列のマウスは、GPR30の発現と相関するGFPの発現が観察された。1592系列のマウスは、GPR30プロモーター依存的にGFP遺伝子が発現していると考えられる。
【実施例3】
【0074】
【表10】
JP0005804341B2_000011t.gif
【実施例3】
【0075】
GPR30遺伝子プロモーター依存的にGFPタンパク質が発現するトランスジェニックマウスの血管では、図18に示すようにGFPタンパク質が発現していることが確認された。このトランスジェニックマウスを利用することで、マウスを生きたまま、GPR30の発現を解析することが可能であり、例えば、ホルモン周期とGPR30の発現の関係を観察することができる。また、今回確立した実施例3の手法によると、GFPの代わりにGPR30配列を挿入したターゲティングベクターを作製してマウスに遺伝子導入することにより、14C>Tや47C>Tの変異型GPR30を発現するトランスジェニックマウスを作製することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
GPR30遺伝子における変異を検出することにより、疾患の予防又は治療法の判定に用いることができる。また、野生型及び変異型GPR30を過剰発現した細胞を用いたスクリーニングにより、GPR30を標的としたエストロゲン関連疾患の予防又は治療薬剤を開発する方法を提供する。
図面
【図13】
0
【図14】
1
【図16】
2
【図17】
3
【図1】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図4】
7
【図5】
8
【図6】
9
【図7】
10
【図8】
11
【図9】
12
【図10】
13
【図11】
14
【図12】
15
【図15】
16
【図18】
17